“男と女” 第17話 『写真 ②』
2019-06-23
第17話 『写真 ②』
このお話は、
第16話 『写真 ①』
の姉妹編ちゃん death。
「フゥ~」
男が吐息(といき)を漏らした。
部屋から女が出て行った痕跡が見られたからだった。
否。
それが感じられたからだった。
男が仕事から帰ってみると、部屋の様子がいつもと少し違っていた。
テレビもラジオもテーブルも、そしていつも二人で寝ているダブルベッドもそのままなのに。
でも、何となくいつもと様子が違うのだ。
男は急いで据え付けのクローゼットの扉を開けて中を見た。
思った通り女の服がなくなっていた。
チェストの引き出しを開けてみた。
やはり女の下着だけが消えていた。
一瞬、男の表情に陰りが見られた。
だが、気を取り直したのだろうすぐにそれは消えた。
そしてラジオのFM放送を点け、それをBGMにしながら手を洗い、着替えを始めた。
部屋着に着替え終わり、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、それを持ってテーブルに着いた。
するとテーブルの上に一枚の写真が置かれてあった。
それはその男と、出て行った女が、初めて一緒に写った写真だった。
(シュポッ!!)
男は左手に持っていた缶ビールのタップを開け、一口、グビッと飲んでからその写真を右手に取り、繁々と見つめた。
思い出が蘇って来た。
初めて出会った頃の楽しくそして懐かしい思い出が。
『あの頃は良かったなぁ・・・』
そう思いながら、女が、写真の中に並んで写っている二人の胸の辺りにカラーペンの白で書き残したメッセージを読んだ。
そのメッセージはこう書かれてあった。
“思い出をありがとう。 サヨナラ”
それを男は言葉に出して読んだ。
「『思い出をありがとう。 サヨナラ』 か・・・」
そしてもう一度、
「フゥ~」
吐息を漏らした。
それからビールと写真を持ったまま静かに目を閉じた。
どうやら思い出に浸っているようだった。
女とのこの5年間の思い出に。
楽しかった事や嫌だった事、それに特に大した理由もなく分かれるに至った事などなどを、考え深げに男は一つ一つそれらを思い出していた。
そして昔を懐かしんで最後にもう一度、
『あの頃は良かったなぁ・・・』
そう思った時、先ほど点けたラジオから歌が流れて来た。
その歌は昔懐かしいヒット曲で、その時の男の心境にピッタリとシンクロしていた。
確か1970年代のJ-ポップの代表曲だったろう。
それはウーニン事(こと)、あの納豆屋 海栗(なっとうや・うに)の名曲・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『あの日にかえりたい』 だった。。。
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第17話 『写真 ②』 お・す・ま・ひ
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