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アリスのお家 『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)
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創作お話作ってます。。。

『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)




『あらからもう3年かぁ。 早いもんだなぁ、月日の経つのなんて。 アッ!? という間(ま)だ』

俺はそんな事を思い出しながら信号が青に変わるのを待っていた。
麻美はまだ俺の存在に気付いてはいないようだった。

信号が青に変わった。

その瞬間、それまで止まっていた時間が一気に動き出した。
まるで100m走の、スタート合図のピストルが撃たれたように。
サッカーの試合開始の審判の笛が吹かれたように。
それまで止まっていた車や人々が一斉に動き出した。
みんな夫々(それぞれ)のリズムとスピードで。
ある者は足早に、ある者はユックリと。
直進車は徐々に加速し、左折車は歩行者が途切れるのを待ち、右折車は対向車に止められている。
それらを俺は肌で感じ取っていた。

初めてだった。
こんな当たり前の事を改めて感じたのは。
否、
当たり前過ぎて見過ごしていたのか?
光や空気や水と同じで、それが余りにも当たり前の存在過ぎて気付かないでいるように。

しかもいつの間(ま)にか日が射している。
強烈な日差しだ。
つい今しがたまでどんよりと曇っていたはずなのに。
そんな事さえも気付かずにいるなんて・・・?
全てがあまりにも当たり前すぎるせいか・・・?

だが・・・

その中にたった一つだけ当たり前じゃない存在があった。
麻美だった。

一歩一歩、確実に俺達の歩く道は近付いた。
俺の歩く道と麻美の歩く道。
あの消化不良の別れから3年。
あの頃の俺達は間違いなく同じ道を歩(ある)いていた。
しかしそれから3年。
今の俺達は全く別々の道を歩(あゆ)んでいる。
その別々の道が今、後ほんの僅(わず)かの時間で再び交わろうとしていた。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)


俺の足音。


(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


麻美の足音。

徐々に狭まる道と道。


(ゴクッ!!)


俺は生唾を飲み込んだ。


(ジトッ!!)


手に汗がにじむ。
緊張している。


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)


胸の鼓動を感じる。
まるで初めて麻美と出逢った時のように。
初めて出逢った女じゃないのに。
昔の恋人のはずなのに。

しかし俺は緊張していた。

『声を掛けるか、掛けざるべきか? ウ~ム』

ハムレットの心境だ。

『掛けるとすればなんて言おぅ?』

こぅか?

『やぁ、麻美。 久しぶり』

それとも昔みたいに、

『俺のベィビィはハッピーかい』

ってか?

ここで俺は歩きながら一回、深く大きく深呼吸をした。
あの最後の電話の時と同じように。


(スゥ~~~。 ハァ~~~)


麻美はもう目前まで来ていた。
伏目がちに歩いている。
まだ俺に気付いた様子は見せない。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)

(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


俺達の距離は後僅(あと・わず)か・・・3メートル位か?
このまま歩けば俺は麻美の左側を、麻美も俺の左側をおおよそ1メートル間隔ですれ違う。
麻美は顔を伏せている。

『どうする? 気付かぬ振りしてすれ違うか? それとも・・・』

もう後2メートル。

『ウ~ム。 良し!!』

俺は麻美に声を掛けようと空いている方の左手を上げようとした正にその瞬間、

『エッ!?』

俺は驚いた。

麻美がニッコリと微笑んだのだ。
しかし、
それは俺にではなかった。
その視線の先には乳母車(うばぐるま)がある。
麻美が両手で押している乳母車が。
そしてその中には赤ん坊が。
その赤ん坊の顔を覗(のぞ)き込んで、麻美がニッコリと微笑んだのだ。
赤ん坊もそれに気付いたようだ、振り返って麻美の顔を見ながらニコニコ笑っている。
恐らく麻美の子供だろう。

それが麻美の答えだった。
麻美はとっくに俺の存在に気付いていたのだ。
もしかすると俺より先に。
そして俺が声を掛けようとした正にその瞬間、

『来る!!』

その気配を感じ取り、我が子に目を落とし微笑んだのだ。
つまり、
その時麻美は無言で俺にこう告げたのだ。

『ほら、見て健ちゃん。 アタシは幸せなのょ。 今のアタシはこんなに幸せなのょ』

と。

この3年の間。
麻美に一体何があったのか俺は全く知らない。
又、知る必要もない。
知ったところで何の意味もないからだ。
旦那はどんな人で、半身不随の父親はどうしたか等・・知ったところで・・何の意味も。

俺はそれを良く承知していた。

だがそれは又、麻美も同じだった。
俺がどこで何をどうしているか等、知る由(よし)もなければ知る必要もなかったのだ。

3年という月日が二人をそう変えてしまっていた。
二人はもう、既に別々の世界に生きていたのだ。

そして俺達はすれ違った。
目を合わせる事なく。
言葉を交わす事なく。
お互い気付かぬ振りをして。
ジリジリ照り付ける強烈な日差しの中。
そのまま振り返らずに、歩調を変えずに、二人の距離を遠ざけるために、俺達は歩き続けた。
互いに待つ人の許(もと)に向かって。

そぅだ!!

実は俺も又、麻美同様、既に一児の父となっていたのだ。
もっとも、まだなり立てのホヤホヤではあったんだが。
生後一ヶ月の男の子の父親に。

現地に着いて2年目に俺は結婚した。
相手は日系三世のブラジル人。
支社長補佐就任1年目に出会い、恋に落ちた。
そして2年目、俺の支社長代理昇格と同時に俺達は結婚した。
支社長代理という立場上、俺は独身という訳には行かなかった。
俺にとって結婚は必須(ひっす)だったのだ。
その一ヶ月後に妻は身ごもり、つい一ヶ月前に男の子を産んだ。
元気ないい子だ、俺に似て。
なかなかハンサムだ。
当然、俺に似て・・・ってな。

ハハハハハ・・・。。。

そして今、俺はその愛する妻と子の待つブラジルへ飛び立つため成田に向かう途中だった。
本社に於(お)ける営業実績報告、並びに対ブラジル投資の戦略会議のため3年ぶりに戻った日本。
久しぶりに再会した両親と兄貴の元気な姿。
そして今日フライト。
当分戻ってくる事のないであろう我故郷(わが・ふるさと)日本。
その日本を離れる前にどうしても立ち寄りたかった場所。
それがこの道。

そぅだ! そうなのだ!!

ここは3年前、俺の元から逃げ帰って行く麻美の後ろ姿を見送ったあの道だった。
最後に麻美の姿を見たあの道だったのだ。
そして今日。
俺はわざわざ遠回りをしてここに立ち寄った。
それは想い出・・麻美との想い出・・それを捨て去るために。
明日(あした)のため過去の想い出とサヨナラをするために。

だが、なんと言う運命の悪戯(いたずら)。

『こ、こんな事があるのか!?』

嘘のような麻美との再会。
まるで絵に描いたような、誰かに仕組まれたかのような、麻美との再会。

『コレが天の采配(さいはい)か? 見えざる神の手か?』

そうとしか思えないような偶然の出会い。

『フッ。 まるでマリオネットじゃん。 俺達って。 ・・・。 否、きっと人間全てが・・・』

『運命の出会い・・・か? きっとこういうのを言うんだろうな』

『しっかし幸せそうな麻美の姿も見れたし、もう何も心残りはなくなった』

『最後の最後も又、結果オーライ・・・ってか!?』

 ・・・

頭の中を徒(いたずら)に取り止めのない言葉だけが駆け巡る。

そして今、3年前麻美が俺の元から走り去っていったのと全く同じコースを辿(たど)り、今度は俺が麻美に背を向けたままその道を渡りきった。
信号はまだ青のままだ。

俺は立ち止まった。
腕時計を見た。

針は、

12時03分00秒丁度を告げている。

『フッ。 たったの3分・・・か!? しかもジャストだ』

これがその瞬間の俺の思いだった。

そぅ・・・

12時00分00秒から始まり12時03分00秒に終わった物語。
たった3分間の物語・・・再会という名の。

それから俺は・・・

ユックリと左手を上げた。
右手はバックを持っているのでその替わりに。
そして振り返る事なく手を振った。
やはり振り返る事なく歩き続けているであろう麻美の後ろ姿に向けて。

こう思いながら、

『俺、今日フライト。 じゃ、な、麻美。 ・・・。 サ、ヨ、ナ、ラ』






と。

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(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 お・す・ま・ひ





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