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タイタン2011 #83

#83




「どうする人間? 我等の仲間となってここに住するか?」

ゼウスが不良に聞いた。
それに続きヘラが、

「ソナタなら我等が飲み物であるネクタルと食べ物であるアンブロシアをたったの一口ずつ口にするだけで、我等の仲間入りが出来るはずじゃ」

そう言って、


(クィッ!!)


イリスに顎でネクタルとアンブロシアを持って来るように指図(さしず)した。
それを受け、


(コクッ)


イリスが頷いて、ネクタルとアンブロシアを取りに行こうとした。

だが・・・

これに対し不良が予想外の行動に出た。

「フッ」

ほくそ笑んだのだ。
しかも、

「フッ、ハハハハハハ。 ハハハハハハ。 アッ、ハハハハハハ・・・」

笑い出してもいた。
それも腹を抱えての大笑いだ。

大丈夫か不良?
そんな、神々を愚弄(ぐろう)ようなマネをして?
大丈夫なのか?

「ん!? 人間!? ナゼ笑う? 何がそんなにおかしい?」

ゼウスが不可解だという顔をして聞いた。
それはヘラも同じだった。
又、その場の神々も皆、同様だった。
釈然としないという顔をしている。

「これが笑わずにいられるか」

不良が答えた。

「ヌッ!? どういう意味じゃ?」

今度はヘラが聞いた。
そのヘラに向かって不良が言った。

「だってそうだろ。 確かにここは・・この場所は・・アンタら神々にとってはいい場所かも知れん。 だが俺に、否、俺達人間にしてみれば、ここは決して居心地の良い場所ではない。 ここを居心地が良いと思える人間はそれこそ聖人君子のみ。 ヘラクレスがそうなのかどうかは知らんが、俺達凡人にしてみればここは単に窮屈な場所に過ぎん。 面白くもなければ楽しくもない、単なるつまらん場所に過ぎんのだ」

「なーに~、人間!? 我等がオリンポスを侮辱する気か!?」

ポセイドンが怒り心頭だ。

「いぃや~。 侮辱なんかしちゃいないさ。 なるほどここはキリスト教徒どものほざく神の国よりかは遥かにましだ。 あのありもしない天国と地獄を対比させ、脅して賺(すか)して布教のため、食い物にする信者獲得のため、言葉巧みにありもしない天国を誇大宣伝するキリスト教徒どものほざく所のあの 『神の国』 という名の地獄よりもな。 だがな、ポセイドン」

「何だ?」

「俺がこのままここに残るという事は、それはイコール、俺が神になるという事だ。 だが俺は人間だ、神にはなれぬ。 だからだ。 だからそう言ったんだ。 アンタだってついこの間、俺に向かって言っただろ。 『・・・!! 人間ごときがー!! カスのクセに、クズのクセに、ゴミのクセにー!! ・・・』 と。(#67 http://00comaru.blog.fc2.com/blog-entry-4295.html 参照) だから仮になれたとしたって、俺に神になろうなんて気持ちは更々ない。 そんな気持ち、俺には更々ないんだ。 第一、そんな柄(がら)でもないしな」

「あぁ、余(よ)もソチのような詰まらんヤツを同席させるのは願い下げだ!?」

ポセイドンの怒りは収まらない。

「それは俺のセリフだ」

不良が言い返した。
それを聞き、


(プチッ!!)


終に、ポセイドンが切れた。

「ウ~ム。 人間!? 言わせて置けば、生意気なぁー!! もう、許さん!!」

そう言ったその時には、


(ガシッ!!)


いつの間にか手にしていたトライデントを握る手にポセイドンは力を込めていた。
このトライデントはポセイドンが念力で、その場に瞬間移動させたのだった。


(グイッ!!)


不良に向け、ポセイドンがトライデント振りかざした。










その時・・・











つづく







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タイタン2011 #82

#82




「その人間をここ(オリンポス)に住まわせる」

アルテミスがキッパリとそう言い切った。
それを聞き、

「ヌッ!? ナ、ナント!?」

ゼウスは驚いた。

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

他の神々も皆同じだった。

「アルテミスよ、どういう意味じゃ?」

再び、ゼウスが問い質(ただ)した。
ここからは暫し、アルテミスとゼウスの会話となる。

「我等がオリンポスに、その者のために一席設けるという事じゃ」

「つまり、我等の仲間にするという事か?」

「その通りじゃ。 その人間にはその値打ちがある」

「それは認められぬ」

「ナゼじゃ?」

「そのような前例がないからじゃ」

「前例?」

「そうじゃ、前例じゃ」

「前例なら、あるではないか。 ヘラクレスという」

「ん!? ヘラクレス? ヘラクレスか・・・。 しかし、ヘラクレスには我等の血が入っておる。 じゃが、ソヤツには・・・」

【ヘラクレスは、ペルセウスの孫娘のアルクメネー(父はエレクトリオン)がゼウスにだまされて身ごもった子・・・即ち、デミゴッド( demigod )である : 作者】

「否、その人間にも我等と同じ・・・」

ここまでアルテミスが言った時、

「余計な事を申すでない! アルテミス!!」

ヘラが割って入った。

「その通りじゃ!!」

ポセイドンも我慢し切れず、それに続いた。
そしてポセイドンがそのまま一気に、

「ふざけた事を抜かすな! アルテミス!! そのような雑魚(ざこ)を我等と同席に加えるなど、言語道断!!」

アルテミスに向かって激しく捲(ま)くし立てた。

「いぃや、ポセイドン!! ふざけておるのはソチじゃ!!」

アルテミスが厳しく言い返した。

「なーに~?」

「ならばソチは運命の予言を覆せると申すのか? ん? ソチ自身の運命の予言を」

「そ、それは・・・」

ポセイドンが言葉に詰まった。
そのポセイドンにアルテミスが追い討ちを掛けた。

「それ見た事か。 この者はソチにも出来ぬ、否、ソチだけではない神々の王であるゼウスにも出来ぬ事を為(な)し遂(と)げた者じゃ。 それをいつまでも女々しく妬(ねた)んでおるでない。 ビッグ・スリーの名が泣くぞ、ポセイドン」

「クッ!?」

ポセイドンはぐうの音も出なかった。

「ウム。 アルテミスの言う事ももっともじゃ。 どうする皆の者?」

ゼウスがその場の神々に聞いた。

「ゼウスよ、ヌシがそれで良しとするなら、ワラワもそれに従おう」

真っ先にヘラが答えた。

「ウム」

「ウム」

「ウム」

 ・・・

それに釣られるようにポセイドンを除く全神々が首を縦に振った。
すると、ゼウスが・・・


(クルッ)


振り返って不良を見た。










そして・・・











つづく







タイタン2011 #81

#81




「人間!? 何ゆえポセイドンの邪魔をした?」

大神ゼウスが不良に聞いた。
ゼウスはポセイドン同様、3メートル超級の隆々(りゅうりゅう)たる体躯をしている。
ハデスも同様だ。
ゼウス、ポセイドン、ハデスのビッグ・スリーは他の神々より一回り大きかった。
だからビッグ・スリーという訳ではない。
天、海、冥府を司る最高権力神(さいこう・けんりょく・しん)という意味だ・・・ビッグ・スリーという呼び名は。

ここはオリンポス山にあるオリンポス十二神が集う神殿。
そこに不良とオリンポス十二神。
加えて、ポセイドンの息子であり風の神であるアイオロスとヘラの侍女で虹の女神のイリスがいる。
更に、それまでいなかったアルテミスも今はセレーネではなく、その本体のアルテミスとして存在していた。
そこで今、不良の審問(しんもん)が行なわれている。
不良は既に審問を受けるだけの体力は回復していた。
もっとも、まだ左腕の痛みは相当な物があったが、新たな腕の自由は利くようになっていた・・・まるでもとからそういう腕でもあったかのように。
つまりヘパイストスの力作の新たな左腕が、不良の体にほぼ馴染んだという事だ。
しかし、それには八日(ようか)という日数を要した。
医療の神アスクレピウスの力を以ってしても、不良のこの治療には八日という日数が必要だったのだ。

これは不良がこの地にやって来た日から数えて、八日目の出来事である。

「俺は邪魔などしてはいない」

ゼウスの問い掛けを不良がキッパリと否定した、全く臆する事なく。
最早、不良孔雀、怖い物なし。
例え、それがオリンポスの神々相手でも。

「ポセイドンはそうは思ってはおらぬぞ」

ゼウスがここまで不良に言ってからポセイドンを見た。

「だな、ポセイドン」

「あぁ、そうだ」

ポセイドンが答えた。

「誰がどう思おうと、俺は邪魔などしてはいない」

不良が言い張った。

「なら、何をした?」

ゼウスが聞いた。
ここからは暫し、不良とゼウスの会話となる。

「ティアマトの石化」

「ティアマトの石化?」

「あぁ、ティアマトの石化を完了した」

「何のために?」

「俺の世界でヤツが悪さをしたからだ」

「ホゥ~? 悪さな。 何の悪さだ?」

「娘に憑依した」

「娘に憑依?」

「そうだ。 アンドロメダの生まれ変わりと思われる娘にだ。 その娘に憑依した」

「それで?」

「俺はその娘の命が危険にさらされていると思い、ここまで来た。 メドゥーサ・ルックを完了させるためにだ」

「それでアイオロスの行く手を阻(はば)んだのか?」

「その通り」

「ナゼ、アイオロスが風を送るのを知った」

「見た者がいたからだ」

「誰だ?」

「アンドロメダだ」

「アンドロメダ? アンドロメダが見ておったのか?」

「あぁ、そうだ。 正確に言うなら、その生まれ変わりと思われる娘、即ち、暗燈篭 芽枝(あんどうろう・めえだ)だ。 暗燈篭 芽枝が、アンドロメダが見ていたに違いないペルセウスとティアマトの戦いの場面の記憶を持っていたんだ」

「そうか。 暗燈篭 芽枝とやらがか?」

「そうだ」

「じゃが、どのようにしてそれを知った? その娘から聞いたのか?」

「いぃや、違う」

「なら、どうやって?」

「その娘の記憶の中に入った」

「ん!? 娘の記憶の中に?」

「そう、娘の記憶の中にだ。 そしてその記憶を共有する事により、アイオロスの存在を知った」

「それで、アイオロスの邪魔をしに来たのか」

「否、邪魔ではない。 足止めだ。 足止めをしに来たんだ、俺は、ここまで。 アイオロスの足止めのために」

「同じ事であろう」

「まぁ、そうと言えなくもないが・・・」

ここでポセイドンが痺れを切らせて割って入って来た。

「いつまでそのような詰まらぬ話をしておるつもりだ。 早(はよ)ぅ、その人間の処遇を決めぬか」

「まぁ、待て、ポセイドン」

ゼウスが逸(はや)るポセイドンを制した。

「余はコヤツに興味を覚えた」

ゼウスのその言葉を聞き、

「ワラワもじゃ」

透かさずヘラが合いの手を入れた。

「何だ、ヘラ、ソチもか」

「あぁ、ワラワもその人間には興味がある」

「珍しく意見が合(お)うたな、ヘラ」

「フン」

ヘラがゼウスを小バカにするように鼻先三寸でせせら笑った。
ここがゼウスとヘラの面白い関係である。
姉弟であり、夫婦であるんだが、ナゼか余り関係が宜しくないのだ、この二神は。
恐らく、ゼウスの浮気性がその原因と思われる。
何せゼウスの浮気性は酷い物で、もしゼウスが人間なら殆んど病気。
それも超重症の病気。
即ち 『超・淫乱病』、あるいは 『超・性依存症』 としか言いようがないほどの。
だから小バカにされ、チョッと気まずいゼウスであった。
そしてその気まずさを隠すために、

「で!? ポセイドン。 ソチはどうしたいというのじゃ?」

ゼウスがポセイドンに話を振った。

「決まっておる。 なぶり殺しじゃ」

「ナゼ?」

「ソヤツは無礼にも我等の世界に土足で足を踏み入れた。 だからじゃ」

「ウム。 それは言える」

「なら、決まったな。 なぶり殺しじゃ」

ここまでゼウスに言ってから、ポセイドンがアイオロスを見た。

「ソヤツをタルタロスにぶち込んで置け!! そこで地獄の亡者どもに八つ裂きにさせよ!!」

【タルタロス・・・古代ギリシャ人の考えていた地獄の事。 因みにタルタロスとは “限りない闇の深遠” を表し、大地の外れにあるどこまでも深くて暗い地の底の地獄を意味している。 その深さは相当な物で、天から投げた岩が九日九晩(ここのか・きゅうばん)落ち続け、十日目にして地上に届き、更に九日九晩地中を落ち続け、十日目にして漸(ようや)くこのタルタロスに着くと言われている : 作者】

「まぁ、待て、ポセイドン。 そう早まるな。 まだ決まった訳ではない」

「いぃや、決まった。 我等、神を冒涜(ぼうとく)した罪じゃ。 コヤツを生かしておくという事になれば、他の罪人どもに示しがつかぬ」

それを聞き、

「その通りじゃ!!」

「ポセイドンの言う通りじゃ!!」

「なぶり殺しにせよ!!」

「あぁ、そうじゃ! なぶり殺しじゃ!! なぶり殺しにせよ!!」

 ・・・

オリンポスの神々が皆、口々にポセイドンを支持した。
だが、
ここで一神(いっしん)だけ・・・
そぅ、一神だけ・・・
不良を擁護する神がいた。
ヘラだった。

「それはならぬ」

「ナゼじゃ?」

ゼウスが聞いた。

「この者は、自らの運命を変えた者じゃ。 グライアイ達の予言を覆した者じゃ。 我等ですら出来ぬ事を為(な)した者じゃ。 然(さ)すれば、褒められこそすれ、殺すなどもっての外じゃ。 まして、タルタロスに放り込むなど論外じゃ」

「ウム。 確かに。 ヘラの言う事も一理ある」

ゼウスがヘラの言い分を認めた。
すると、それまでただ黙って見ているだけだったアルテミス(セレーネ)が、ここで初めて口を開いた。

「ワラワもヘラと同感じゃ。 その人間は、確かに力は我等はに遠く及ばぬ。 じゃが、我等に出来ぬ事を為遂(しと)げた者。 これは曲げようもない事実。 つまり、この点に於(お)いて我等を凌いだのじゃ。 ならば、その者は英雄じゃ。 決して罪人などではない。 人間でありながら我等神を凌いだのじゃからな。 その英雄をどうしてタルタロスなどに送って良いものか。 そのような事をすれば示しどころか、我等の正義が疑われる。 違うか? ポセイドン」

「・・・」

渋い顔でポセイドンは黙っていた。

「ならば、ソチはどうしたら良いと思ぅておるのじゃ?」

ゼウスがアルテミスに問い質(ただ)した。
しかしそれに対し、

「・・・」

アルテミスは何も答えなかった。
それは答えられなかったからではなかった。
チョッと間(ま)を取ったのだ。

こぅ・・・










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・述べるために。











つづく







タイタン2011 #80

#80




「雪」

「な~に?」

「不良の安否はどうだ? まだつかめんのか?」

「うん」

ここは不良の診察室。
不良がジャンプしてから既に一週間が過ぎている。

理由は分からないが、暗燈篭 芽枝(あんどうろう・めえだ)は時々目を覚ましては又、深い眠りに落ちるという事を繰り返していた。
そして意識が戻ってもボンヤリとしてまるで夢遊病者。
起き上がる事もままにならない有様。
又、一度(ひとたび)眠りに落ちると、今度は起しても起きないほどその眠りは深かい・・昏睡状態と言っても良いほどに・・という状態だった。
だから食事や排便は自力ではまだ無理なため、又、ここには看護士もいないため、それが違法と分ってはいたが不良の用意してあった点滴を専(もっぱ)ら雪が取り替えていた。
勿論、下(しも)の始末もだ。
これは女性の暗燈篭 芽枝の下の世話を、オスの外道がするのを雪が嫌った事もあってだった。
しかし、その点滴の在庫もそろそろ底を突き始めていた。
まさか不良の戻りがこんなに遅くなるとは誰も思っていなかったからだ。

今・・・

暗燈篭 芽枝の横で外道と雪が話し合っている。
雪はもう回復していた。
あれから一週間も経っていたからだ。
という事は、雪は一週間も家を留守にした事になる。
幸い雪の両親は仕事で、今、日本にいない。
だから、あえて外泊の許可を取る必要はなかった。
又、学校はと言えば、雪は私立高校に通っているため7月第3週目から既に試験休み(事実上の夏休み)に入っている。
だからそちらの心配もする必要はなかった。

外道が続けた。

「おかしい!? お前にも分らんとは・・・。 おかしい・・・。 不良のヤツ、一体何を・・・」

「うん。 スッゴイ力が邪魔してる。 バリヤー張ってるみたいな感じだよ」

「今回は相手が相手だからな」

「うん」

「・・・」

外道が黙った。
不良の安否を本気で心配しているのだ。
その不安感丸出しの外道の目を、ジッと雪が見つめている。
雪は雪で、そんな外道が心配なのだ。
そして雪が何かを思ったようだった。

「センセ」

外道に声を掛けた。

「ん!? 何だ?」

「も、一回。 雪、行ってみよっか。 おじちゃんトコ」

「ダ、ダメだ!? ぜ、絶対行っちゃダメだ!?」

「何で?」

「今回は相手が悪過ぎる。 何が出て来るか分らん。 もしポセイドンやその眷属達でも出て来ようものなら大事(おおごと)だ。 ヘカテ一人に敵(かな)わなかったお前が、どうすればポセイドン達に敵う。 だからダメだ、絶対にダメだ」

「うん」

「ックョー!! 俺に、俺にジャンプの力があれば・・・。 俺に、お前達のようなジャンプの力がありさえすれば・・・。 ックショー!!」

「ジャンプの力かぁ・・・。 今度、センセもジャンプの練習した方がいいね」

雪が軽~く言った。

「ジャンプの練習って、あのなぁ~、雪。 そんなに軽~く言うんじゃねぇよ」

「でも、簡単だよ」

「『でも、簡単だよ』 って、お前なぁ・・・」

「簡単なんだヶどなぁ」

この 『簡単簡単』 と無頓着(むとんちゃく)に言ってのける雪に、

「そういうのは才能が必要なの、練習したからってホイホイ出来るモンじゃないの」

チョッとイラッと来た外道であった。

「出来るかも知れないじゃん。 センセだって」

更に追い討ちを掛けるようなこの 『センセだって』 という言葉に、


(カチン!!)


外道のプライドが傷付いた。
ムッとして、

「俺は人間なの。 お前みたいなバケモンとは違うの。 だから練習したって出来ないの」

外道が雪をバケモノ扱いした。

「雪、人間だよ。 バケモンなんかじゃないよ」

「今はな。 でも、元々はバケモンだったの。 女切刀呪禁道(めぎと・じゅごんどう)最強と謳(うた)われた俺の親父も、お袋も敵わなかったほどの・・・」

興奮して、思わず余計な事を・・雪にはまだ言ってはいけない事を・・外道は口走ってしまった。
雪はまだ 『雪女 vs 破瑠魔内道、死頭火の戦い』 の事は聞かされてはいなかったのだ。
薄々感付いてはいたが。
この外道のつれない言葉を聞き、


(ポロッ、 ポロッ、 ポロッ、 ・・・)


雪の目から大粒の涙がこぼれ出した。

「バケモンなんかじゃないもん、バケモンなんかじゃないもん。 雪、バケモンなんかじゃないもん。 ェッ、ェッ、ェッ、・・・」

雪が泣き始めた。
雪は、あの闇の魔神(ましん)、魔女ヘカテに全く問題にされずに敗れたその気持ちの整理が付かない内に、大好きな外道にバケモノ扱いされたのが悲しかったのだ。

「す、済まん、雪。 言葉が過ぎた」

外道が慌てて謝った。
外道は苛立っていたのだ。
不良の安否が分らない事に。
又、自らの力不足に対して。
だから、つい、雪に当たってしまったのだった。

「ェッ、ェッ、ェッ、・・・」

雪は泣き止まない。
その上、不良の消息はつかめない。
更に、暗燈篭 芽枝の点滴の在庫は底を突き掛けている。
加えて、自らの力の限界を思い知り、歯痒(はがゆ)いばかりの・・・










外道であった。











つづく







タイタン2011 #79

#79




「ご報告申し上げます」

風の神アイオロスが言った。

「何事じゃ?」

大神ゼウスが聞いた。

ここはオリンポス山。
そこにあるオリンポス十二神の集う神殿。
その神殿に今、大神ゼウスの他、ヘラ、ポセイドン、ハデス(冥府の主で別名『プルトン』とも言う。 因みに今話題の“プルトニュウム”はこの『プルトン』のローマ読みの『プルート』が『冥王星』に当てられ、その『冥王星=プルート』から来ている)、ヘスチア(ゼウスの姉で、かまどの守り神)、それからゼウスの子供のアポロン、アレス、ヘパイストス、ヘルメス(以上、男神)、それにやはりゼウスの子供のアテナ、アフロディーテ(以上、女神)のオリンポス十二神がいる。
だが、これではトータル11の十一神。
十二神というからにはもう一神いるはずだ。
そしてその残る一神・・・それはアルテミス。
そぅ、アルテミス。
月神アルテミスだ。
セレーネと同じ神格の。
しかし今、そのアルテミスの姿はここにはない。
そしてその理由(わけ)はすぐに分かる。

アイオロスが先ほどの 『何事じゃ?』 というゼウスの問い掛けに、

「ハッ!! ただ今、ヘラ様の神殿より使者が参りまして、例の人間が目覚めたとの事」

そう答えた。

「ん!? 使者? 使者とは誰じゃ?」

今度はヘラが聞いた。

「イリスでございます」

アイオロスが答えた。 【イリスとはヘラの侍女で、虹の神である : 作者注】

「そうか。 なら、イリスをここへ通せ」

ヘラがアイオロスに命じた。

「ハッ!!」

アイオロスがイリスを呼びに行った。
すぐにイリスを連れて引き返して来た。

「詳しく話すのじゃ、イリス」

ヘラが命じた。
ここからは、ヘラとイリスとのやり取りとなる。

「はい。 先ほど、わたくしとセレーネが見守る中、かの人間が目覚めました」

「起き上がれるのか?」

「はい。 支障なく」

「ならばここへ連れてこれるのか?」

「はい。 恐らくは大丈夫かと」

「ウム。 ならば連れて参れ」

「はい。 承知致しました」

イリスがそう返事をして、振り返る事なく、


(スゥ~)


そのまま姿を消した。
不良孔雀を呼びに行ったのだ。

当然・・・










セレーネ(アルテミス)も一緒に。











つづく






タイタン2011 #78

#78




「人間の意識が戻ったのか? 声がしたようだが」

セレーネの背後から声がした。
セレーネが振り返った。
ヘラが立っていた。

「あぁ、戻った。 じゃが、すぐに眠った。 今は寝ておる」

そうセレーネが説明した、不良の今の容態(ようだい)を。

今・・・

ここにはヘラ、セレーネ、そして不良の3人、否、一人と二神しかいない。

「そうか」

そう言って、ヘラが不良の寝ている寝台に近付いた。
そして不良の寝顔を覗き込んだ。
その寝顔を繁々とヘラは見つめた、慈眼(じげん)を以って。
こんな事を呟きながら。

「不良孔雀。 大したヤツじゃ。 アナウロス川でのワラワの試(ため)しにも全く挫(くじ)ける事なく見事こなした上、自らの運命まで変えおった。 死ぬるはずだった自らの運命まで・・・」

「何を申すか、ヘラよ。 あれはソナタが手を貸したからであろうに」

横からセレーネが声を掛けた。
ヘラが顔を上げ、セレーネを見た。

「あぁ、そうじゃ」

「ナゼ?」

「この者を死なせとうなかったからじゃ」

ヘラがもう一度、不良の寝顔に目を移しながらそう答えた。

「フ~ン」

セレーネはその答えに対し納得が行かないようだった。
そのセレーネにヘラがキッパリと言い切った。

「見よ! セレーネ!! この凛々しい寝顔を・・・。 なんと凛々しい。 しかも勇者じゃ。 ペルセウスにも決して引けを取らぬ勇者じゃ。 何せ、人間でありながらあのポセイドンに真っ向勝負(まっこう・しょうぶ)を挑み、自らの命と引き換えにアヤツを出し抜こうとしたのじゃからな。 しかもペルセウスに全く気付かれる事なくアイオロスの邪魔をした。 ペルセウスに全く気付かれる事なく・・・じゃ。 大したヤツじゃ、この者は。 そのような者を・・・そのような兵(つわもの)を、そう安々と死なせて良いはずがあろうか? 否、あろうはずがない。 だからじゃ。 だから手を貸したのじゃ、ワラワは。 そう安々と死なせとうはなかったのじゃ、この者を。 だからワラワは手を貸したのじゃ、この者に。 どうじゃ、セレーネ? ソチはそうは思わぬか?」

「あぁ。 ワラワも今、そう思ぅておった所じゃ」

「だから助けたのじゃ。 それにこの者の名は不良孔雀・・・。 そうじゃ、不良孔雀じゃ。 孔雀はワラワの眷属じゃからのぅ。 その孔雀の名を冠するこの者を如何(いかが)致せば放っておける。 ん? 如何致せば・・・」

「それだけか?」

「ん!? それだけ・・・。 それだけとはどういう意味じゃ?」

「他にもあるのではないのか? 分っておるぞ」

「フン。 詰まらぬ詮索は止めよ、セレーネ。 それ以上言う事は許さぬ」

「あぁ、そうじゃな。 詰まらぬ詮索じゃったな」

「そうじゃ、詰まらぬ詮索じゃ。 そんな事より、ナゼ、ソチがここにおる?」

「そ、それは・・・」

ここでセレーネが言葉に詰まり、


(ポッ!!)


顔を赤らめた。
それを見て、即座にヘラは察した。
セレーネの不良に対する思いを。

「フ~ン。 なるほどな。 そういう事か・・・」

「な、何が 『フ~ン』 じゃ、ヘラよ。 ワ、ワラワは・・・。 ワラワは別に・・・。 そ、そのような・・・。 た、ただ・・・」

「そう取り乱さずとも良い、セレーネ。 ソチの気持ちは良(よ)ぅ分った。 確かにこの人間にはその価値がある。 じゃがな、セレーネ。 この者は普通の人間とは違う。 エンディミオンのような訳には行(ゆ)かぬ。 それを良~く承知して置くのじゃ。 良いな」

「あぁ、分っておる」

「ならば良い」

そう言って、


(クルッ!!)


踵(きびす)を返して、


(スタスタスタスタスタ・・・)


ヘラが寝室を出て行った、不良の側に一人セレーネを残して。
そのヘラの後ろ姿を見送りながらセレーネが呟(つぶや)いた。

「エンディミオンのような訳には行かぬ・・・か」

ポツリと一言・・・そう。










【注】

エンディミオンとは・・・『エンディミオンの眠り』 で!? グーグルせんせに聞いてみて下ちい











つづく







タイタン2011 #77

#77




「馴染むまで・・・その腕が馴染むまで。 確か、さっき君はそう言ったな?」

不良がセレーネに聞いた。

ここはヘラの寝室。

「あぁ、言(ゆ)ぅた」

「どういう意味だ?」

「それは何(いず)れ分る」

「否!? 今知りたい」

不良がキッパリと言い切った。

「・・・」

セレーネが黙った。
そして、何も言わずジッと不良の眼(め)を見つめた。

「・・・」

不良も黙っていた。
ただ、眼でその答えを催促していた。
セレーネがそれを理解した。

「フゥ~」

セレーネが溜め息を付いた。
それから言った。

「仕様(しよう)のないヤツじゃ。 仕方ない。 良く聞くのじゃ、不良孔雀」

「・・・」

「ソナタの左腕は既にない。 ポセイドンのトライデントにもぎ取られてしもぅたのじゃ。 それは承知しておるか?」

「あぁ」

この時点で、ある程度不良の記憶は戻っていた。
時系列で物を考えられるようになったという意味でだ。

「ならば良い。 だからヘラがソナタに新たな左腕を与えたのじゃ」

「!?」

「ヘパイストスに頼んで作らせたのじゃ、ソナタの新たな左腕を。 ヘラがヘパイストスに頼み込んで、作らせたのじゃ、ソナタの左腕を、オリハルコンで、新たにな。 そしてそれをソナタの治療を行(おこの)ぅたアスクレピウスがその腕に縫い付けたのじゃ」

【ヘパイストスは “火と鍛冶の神” であり、オリンポス十二神の内の一神である。 又、アスクレピウスはオリンポス十二神の内の一神にして太陽神であるアポロンの子で “医療の神” である : 作者注】

「・・・」

「だから馴染むまでと申したのじゃ」

「そうかぁ」

納得したようにそう言って、不良がもう一度右手で左腕に触れてみた。
確かにそこに何かがあるのは分った。
だが、相変わらず感覚が麻痺していてそれが普通の腕なのか、あるいは単なる金属の棒なのか、そういった区別は全くつかなかった。
そんな不良をセレーネが、

「案ずるでない。 何(いず)れ元のようになる。 それまでの辛抱じゃ」

励ました。

「あぁ」

「必ずや、前のよりもズッと役に立つはずじゃ。 何せあのヘパイストスが丹精込めて作り上げた傑作じゃからな、ソナタのその左腕は。 三日三晩も掛けたのじゃ、ヘパイストスがそれを作り上げるのに。 トロイ戦争の時のアキレウスのあの鎧ですら、たったの一晩で打ち上げたあのヘパイストスが、三日三晩も掛けたのじゃ。 ソナタのその左腕を作り上げるのに」

そうセレーネが、


(クィッ!!)


顎で不良の左腕を指し示しながらそう言った。

「・・・」

不良は黙ってそれを聞いていた。
そして、

「ナゼ?」

ボソッと聞いた。

「ん!? 『ナゼ』?」

セレーネが聞き返した。

「ナゼそこまでしてくれる」

「あぁ、そういう事か・・・。 それはのぅ。 ソナタはヘラの・・・。 否、今は止めて置こう。 これ以上は聞くな。 何(いず)れ分る事じゃ。 一度に何もかも知ろうとするでない。 良いな、不良孔雀」

「あぁ。 分った」

「ならば、今少し休むが良い。 眠れ、眠るのじゃ、不良孔雀。 今は眠るのじゃ」

その言葉がまるで誘発剤にでもなったかのように、


(スゥ~)


不良の意識が遠くなった。
そしてそのまま不良は深い眠りに落ちた。
月神セレーネに見つめられながら。










一瞬にして・・・











つづく







タイタン2011 #76

#76




「人間!? 気が付いたか?」

女の声がした。

それは年若い娘の声だった。
その声は美しく澄んでいて、小声でも良く通る声だった。
それも、あの神々の女王ヘラの声に負けず劣らずの上品さ、清らかさで。

突然・・・

その男の目の前に人の顔が浮かび上がった。
その顔は上から覗(のぞ)き込んでいた。
それは女の顔だった・・・年若い娘の。
しかも、

『ハッ!?』

と、思わず息を呑むほどに美しい。
やはり、ヘラに負けず劣らず・・・

男は反射的に起き上がろうとした。
だが、


(ズキッ!!)


全身に痛みが走った。
そのため、全く体を動かす事が出来なかった。

「ウッ!?」

ただ呻く事だけしか。
その時、

「ならぬ!! まだ無理をしては・・・」

再び同じ娘の声がした。
その娘の声と体の痛みが返って幸いし、男の意識が完全に戻った。
しかし、まだ頭の中は混乱していた。
男は何とか起き上がろうと全身に力を込め、身悶えながら、

「ん!? ここはどこだ!? 俺は、俺はここで一体何を? き、君は、君は何者・・・?」

酷(ひど)く取り乱して、畳み掛けるように男が娘に聞いた。

「落ち着くのじゃ、人間!! そう案ずるな。 怪しい者ではない。 それに、まだ無理をしてはならぬ」

抜けるように真っ白な手で軽く肩を抑えられ、透き通るような美しい声で娘に諭(さと)され、男は少し落ち着きを取り戻した。
体の力を抜き、男は目の前にいる娘の顔を見ようと意識した。

そして見た!!

否、見つめた!!

と言った方が正しかった。
その瞬間、

『ハッ!?』

再び男は驚いた。
否、
息を呑んだ。
男はこう思ったのだ。

『ナ、ナント美しい!?』

と。

「まだ、無理はいかん」

男が落ち着きを取り戻したのを見定めて、娘が言った。
その顔は少しはにかむように微笑(ほほえ)んでいた。
その笑顔が魅力的だった。

「スゥ~~~。 フゥ~~~」

なるべく痛みを感じないように注意しながら男は一度、大きく息を吸い、そして吐いた。
それから娘に聞いた。

「ここはどこだ? 一体・・俺は・・ここで・・何を?」

にっこり笑って娘が応えた。

「ここは神殿。 神界の女王ヘラの神殿。 ソナタは酷い傷を負(お)ぅて倒れたのじゃ。 ポセイドンのトライデントでのぅ。 それを女王ヘラがここまで運んだのじゃ。 ここはそのヘラの寝室。 男は大神ゼウス以外、決して入る事の許されぬヘラの寝室。 じゃが、初めてじゃ、ヘラがゼウス以外の男をここに引き入れたのは。 ましてそれが人間のソナタとは・・・のぅ。 それにソナタは今日まで7日間も意識がなかったのじゃ。 きっとその腕が馴染むまで、その位の日数が必要だったのであろう」

娘は男の左腕を指差してそう言った。
その男の左腕には、厳重に包帯が巻かれていた。

『ハッ!?』

男がそれに気付いた。
右手で左腕を触ってみた。
だが、
指が・・全身の感覚が・・麻痺していて全く分からなかった。

「まだ、動くな」

男をそうたしなめながら、娘は男にこう話し掛けていた。

「ソナタの怪我は大変なもの。 良くぞ死ななんだ・・・」

「・・・」

男はそれを黙ってジッと聞いていた。
というより言葉が出せなかった。
聞きながら何があったのかを必死に思い出そうとしていたのだ。
だが、
それは無理だった。
まだここ数日間の記憶がハッキリしないのだ。
しかし男はもう落ち着きを取り戻していた。

きっと、その娘がそうしてくれていたのであろう。
解熱のため、額(ひたい)の上に手ぬぐいが置かれていた。
そして、その置かれた手ぬぐいを替えてくれる娘の仕種を見つめていた。
決して身分卑しからぬと思われる高価そうな純白の内衣キトンとその上に着る外衣ヒマティオンに身を包み、小首を傾(かし)げ、無駄のない動きで、枕もとに置かれた手桶(ておけ)の水で手ぬぐいを洗うその娘の仕種がなんとも言えず優雅だった。

娘は、年の頃なら18才位だろうか。
まだあどけなさが残ってはいるが、上品で美しく真のシッカリした顔立ちだった。
体は細身で、長身。
手足が長い。

その上・・・更に・・・加えて・・・えぇチチじゃ~~~!!
着物の上からチラッと見ただけでも、コメカミに思いっきり力を込めてハッキリそうだと断言出来るほどじゃーーー!!
牛チチじゃー! 牛チチじゃー! 牛チチじゃーーー!!

肌の色は、着ている純白の衣よりも更に白く、まるで抜けるように真っ白。
それが腰まで届くほど長く艶やかで豊かな黒髪に、より一層引き立てられている。

娘が洗ったばかりの手ぬぐいを男の額に乗せようとした時、二人の目が合った。
全くそんなつもりはなかったのだが、思わずボソッと男の口から言葉が漏れた。

こぅ・・・

「ナント、美しい!?」

と。

娘はポッと顔を赤らめ、一瞬手を止め、そして言った。

「そのように見つめられると恥ずかしいではないか」

「あ!? ぁ、いや!? こ、こ、これは済まん」

男はチョッと慌てた。
一呼吸置いた。
そのまま娘が額の上に手ぬぐいを置いてくれるのを見ていた。
それから続けた。

「美しき人よ。 君の名は? 君の名は何という?」

娘は言った。

「マァ!?」

と一言。
そしてチョッと間(ま)を取り、少しはにかみながら続けた。

「ソナタは聞いてばかりじゃ。 自分の事は何も・・・」

その言葉を聞いて再び男は慌てた。

「そ、そうだった、そうだった。 も、物には順序があったな」

こう自分に言い聞かせるように言ってから、続けた。

「先ず、助けてもらい、礼を言う。 このような親切、心より有り難く思う。 俺の名は不良・・・不良孔雀」

そぅ・・・

その男、それは不良孔雀だった。
ポセイドンのトライデントで左腕を失ったあの不良孔雀だった。
その不良孔雀が続けた。

「予想外の出来事で、このような親切を受ける事になった。 残念ながらまだ体の自由が利かない。 ・・・ 」

不良はここで一旦言葉を切った。
呼吸を整え、それからこう言い加えた。

「で。 君の名は? 君の名は何と? 何という? 教えて欲しい?」

娘は改めてその大きく円(つぶ)らな瞳で不良の眼(め)を見つめた。


(ドキ!!)

(ドキ!!)


この瞬間、
二人の間に何かが走った。

何かが・・・。

衝撃!?

電流のような衝撃が!?

それは一瞬にして二人の全身を駆け抜けた。
それも二人同時に。
そして、期待と興奮と不安・・・
の!?
入り混じった複雑な思いを素直に表した目で自分を見つめている不良の眼(め)をジッと見つめ、娘はこう名乗った。

「セレーネじゃ」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と。











つづく







タイタン2011 #75

#75




「ゥ、ゥ~ン!?」

一言軽く唸って、静かに男が目を明けた。

男は・・・

目が霞(かす)んで前がハッキリとは見えずボンヤリとしている。
目の焦点も合わせられない。
頭の中がボーっとしている。

部屋は左程(さほど)明るくはなかった。
しかし暗くもなかった。
まだ、意識がハッキリしない。
再び目を閉じた。
別に眠るためではなかった。
目を開けているのが辛かっただけだ。
そのまま何も考えずにボーっとしていた。
夢と現実を行ったり来たりしている、そんな感じだった。
暫(しばら)くそのままでいると、音がしている事に気が付いた。
その音に注意を払った。


(ケォーン、ケォーン、ケォーン、ケォーン、ケォーン、・・・)


何かの鳴き声のようだった。 (これはクジャクの鳴き声である : コマル)

『鳥か?』

男は思った。
そして、


(ケォーン、ケォーン、ケォーン、ケォーン、ケォーン、・・・)


何も考えずにその音を聞いていた。
相変わらず頭の中がボーっとしていて、何も考えられないのだ。
全身の感覚が麻痺しているようだった。
まるで雲の上にでも寝ているような、そしてそのまま虚空を漂(ただよ)ってでもいるかのような、全くの無感覚。
ただ、
鳥の鳴き声のような音だけが耳の奥で反響しているだけだった。
男は暫(しばら)くジッとその音に耳を傾けていた。
すると、


(ポッ!!)


突然、体の中で何かが弾(はじ)けた。
それに同期し、


(ビクッ!!)


体が痙攣(けいれん)した。
それは、それまで遠~くに置いてあった自分の意識が瞬時に戻って来て、いきなり体の中に飛び込んだ。
そんな感覚だった。


(ゾヮゾヮゾヮゾヮゾヮ・・・)


全身の血が、一気に逆流するのを覚えた。
それと共に体温の急上昇も・・・

再び男は目を明けた。
意識は完全に、とは言わないまでもある程度戻っていた。
とは言っても、思考能力は依然として停止したままだったのだが。

目の前は先ほど同様ボンヤリしていてハッキリとは見えない。
明かりが感じられたのでどうやら辺りは暗くはないらしい。
瞬(まばた)きは何度かしたが、目は閉じなかった。
しかし、
徐々に目の焦点を合わせられるようになって来た。
それは丁度、一眼レフカメラの望遠レンズの焦点がユ~~~ックリと合う感覚に似ていた。
終に、焦点が合った。

瞬間・・・

それまで思考が停止していたのが嘘のように一気に記憶が甦(よみがえ)って来た。
まるで真夏の夕立。
いきなり降り出す雷雨のように。

『ハッ!?』

男は素早く目を明けた。
起き上がろうとした。


(ズキッ!!)


全身に激痛が走った。

「ウッ!?」

あまりの痛さに起き上がるどころか動く事さえ出来なかった。

『クッ!? な、何がどうなっているんだ? ・・・。 こ、ここは? ここは一体?』

男は部屋の中を見回すため頭を動かそうとした。
だが、
又しても、


(ズキッ!!)


痛みが走って、

「ウッ!?」

僅かにしか動かせない。
仕方がないので見える範囲でチェックした。

自分は今、どうやらベッドに寝ているようだ。
しかしその大きさは半端じゃない。
寝ている自分が、まるでガリバーのベッドに寝ている小人のようだ。
否、
これは少々、大げさか?
『ガリバーのベッドに寝ている中人のようだ』
と言い換えよう。

更に、動かせる範囲で顔と目を動かしてみた。

建物は全て石造りのようだった。
種類は良く分からないが、恐らく大理石であろう。
天井はどこまでも高く真っ白で、豪華な絵画が描かれている。
画題は、女神とそれを取り巻くニンフ達といった感じだ。
壁も天上同様、どこまでも広く真っ白だった。
当然、そこにも同じような壁画が描かれている。
ゴシック様式の巨大な石柱が何本か見えた。
やはり純白色の。
だが、この状態では床の色までは分からなかった。

他に見えた物と言えば、
ベッドを仕切る淡いピンクの、豪華だが同時に清楚でもあるカーテン。
素材は絹か?
実に上品だ。
それにどこからか分らないが差し込んで来る日差し。
その日差しはかなり強そうに思えた。
それをその豪華で清楚な感じの絹製と思われるピンクのカーテンが適度に和らげている。
部屋の広さは一体どの位あるのか?
目視(もくし)だけではとてもではないが、ハッキリした広さまでは分からなかった。

『ここは一体・・・・・・?』

男は再びそう思った。










その時・・・











つづく







タイタン2011 #74

#74




「何と凛々(りり)しい!?」

月神(げっしん)セレーネが呟いた。

ここは神界の女王ヘラの神殿。
そこに一人の人間の男が眠っている。
その男は深く傷付いていた。
左腕がだ。
そして、セレーネがその男の傍(かたわ)らに寄り添って看病している。
セレーネとは、月の女神であると同時にオリンポスの十二神・・即ち、オリンポスの最高神・・の内の一神にその名を連ねるアルテミスの別名であり、又、この月の女神アルテミスは闇の魔神(ましん)、あの魔女ヘカテと表裏の関係にある。
つまり月の女神アルテミスは、時に月神セレーネに、時に闇の魔神ヘカテにと、三通りにその姿を変えるのである。
勿論、この三神の本体はアルテミスであるのは言うまでもない。
又、月の女神アルテミスは神々の中で最も美しいと言われており、やはりオリンポス十二神の内の一神で太陽神である、あのアポロンの双子の妹でもある。
因(ちな)みにこの太陽神アポロンは、 『フォエボス・アポロン(光り輝くアポロン)』 と賞賛されるほど美しい・・・らすい。。。(ウリはアポロンに会った事ないんで、真偽のほどは知らん。 ヶど、もしかすっと、ウリと同レベルの美しさかも知れん・・・ナンチッテ。 かかかかか。。。 : コマル)
そのアルテミスでありセレーネである月の女神が、その男の寝顔を慈愛のこもった眼差(まなざ)しで繁々と見つめている。
若干、顔を紅潮させながら。
どうやらその男が気に入っているようだ。
思わずセレーネの口から詩が溢れ出した。


こんな詩が・・・


 傷つき倒れた不良孔雀が

 神々の女王の寝台にその身を横たえている時

 月神セレーネが

 彼を見て 恋をして 降り立った

 オリンポスの神座より 女王ヘレの神殿に至り

 彼(か)の者に口づけをして 傍らに身を横たえる

 祝福されたその青年は

 身動(みじろ)ぎもせず 寝返りも打たず

 永久(とわ)にまどろまん

 傷つき倒れた不良孔雀は・・・


と。

そぅ・・・

その深く傷付き、神界の女王ヘラの神殿で寝ていた男・・・

それは・・・

不良孔雀であった。










その時・・・











つづく







プロフィール

コマル

Author:コマル
ジョーク大好き お話作んの大好き な!? 銀河系宇宙の外れ、太陽系第三番惑星『地球』 の!? 住人 death 。

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