「戦略編」 #320 『まるでプレデターのように』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #320 『まるでプレデターのように』の巻
突然、
(スゥー)
雪女の前方5メートル付近に人間の、それも男のシルエットが浮かび上がって来た。
初めは薄ボンヤリと。
それが徐々に人の形となり、終にはチャンとした男の姿に変わった。
その男の姿・・・それは内道だった。
その変化の仕方は、まるでハリウッド映画 『プレデター』 に於いて光の屈折のプロテクターで姿を消していたプレデターが、それを解除して徐々に姿を現すシーンを思い起こさせた。
しかし、ナゼそれまで内道の姿が見えなかったのだろうか?
その理由は簡単だ。
内道は “現身隠(うつしみ・がく)しの呪符” を使っていたのだ。
だが、知っての通り念法は同時に二法は使えない。
従って内道が別の技を使った時点で、この “現身隠しの呪符” はその効果を失ってしまう。
もっとも、地べたをガサゴソとチョッと動かす程度なら内道にしてみれば大した事ではないのでその心配はない。
しかし強力な念力技ともなれば話は違う。
そして今、内道は別の強力な念力技を使ったのだった。
現身隠しの呪符を無効とするほどの。
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
一枚の紙切れが宙に舞う。
何か記号か文字のような物が書かれた紙切れが・・・一枚。
それは・・呪符・・現身隠しの呪符だった。
内道がたった今、手放したばかりの。
その内道が雪女を見下ろして言った。
「そうだ! その通りだ!!」
(キッ!!)
雪女が顔を上げ、内道を睨み付けた。
「クッ!? 小癪(こしゃく)な真似をー!!」
雪女はまだ四つんばいのままだ。
予想以上のダメージを負っている。
「見たか雪女。 我が秘技を」
「ヌッ!? 我が秘技じゃとぉ・・・?」
「そうだ雪女。 これが我が秘技・・・」
そぅ・・・
この時内道は秘技を使っていたのだ。
大地の戦士にしか使えない秘技を。
現身隠しの呪符を無効とするほどの秘技を・・・
・
・
・
・
・
つづく
突然、
(スゥー)
雪女の前方5メートル付近に人間の、それも男のシルエットが浮かび上がって来た。
初めは薄ボンヤリと。
それが徐々に人の形となり、終にはチャンとした男の姿に変わった。
その男の姿・・・それは内道だった。
その変化の仕方は、まるでハリウッド映画 『プレデター』 に於いて光の屈折のプロテクターで姿を消していたプレデターが、それを解除して徐々に姿を現すシーンを思い起こさせた。
しかし、ナゼそれまで内道の姿が見えなかったのだろうか?
その理由は簡単だ。
内道は “現身隠(うつしみ・がく)しの呪符” を使っていたのだ。
だが、知っての通り念法は同時に二法は使えない。
従って内道が別の技を使った時点で、この “現身隠しの呪符” はその効果を失ってしまう。
もっとも、地べたをガサゴソとチョッと動かす程度なら内道にしてみれば大した事ではないのでその心配はない。
しかし強力な念力技ともなれば話は違う。
そして今、内道は別の強力な念力技を使ったのだった。
現身隠しの呪符を無効とするほどの。
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
一枚の紙切れが宙に舞う。
何か記号か文字のような物が書かれた紙切れが・・・一枚。
それは・・呪符・・現身隠しの呪符だった。
内道がたった今、手放したばかりの。
その内道が雪女を見下ろして言った。
「そうだ! その通りだ!!」
(キッ!!)
雪女が顔を上げ、内道を睨み付けた。
「クッ!? 小癪(こしゃく)な真似をー!!」
雪女はまだ四つんばいのままだ。
予想以上のダメージを負っている。
「見たか雪女。 我が秘技を」
「ヌッ!? 我が秘技じゃとぉ・・・?」
「そうだ雪女。 これが我が秘技・・・」
そぅ・・・
この時内道は秘技を使っていたのだ。
大地の戦士にしか使えない秘技を。
現身隠しの呪符を無効とするほどの秘技を・・・
・
・
・
・
・
つづく
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「戦略編」 #319 『転がっている物』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #319 『転がっている物』の巻
『ハッ!?』
雪女は、自分が倒れ込んでいる辺りに転がっている物を見て驚いた。
思わず言葉が口をついて出た。
「ヌッ!? こ、これは・・・。 このような物でワラワを・・・」
そこには・・雪女の周りには・・小さい岩と言うべきか?
或いはチョッと大き目の石と言うべきか?
大は握り拳(こぶし)大から、小は小指の先ぐらいの大きさの様々なサイズの石と言うか岩と言うか、そういった物が転がっていたのだ。
それも数(かず)少なからず。
その時雪女の周りには、様々な大きさの石、或いは岩といった物が数少なからず転がっていたのである。
あたかも大きな岩が砕け散ったかのように。
そぅ・・・
あたかも大きな岩が、大小様々な大きさに砕け散ったかのように。
そこへ・・・
・
・
・
・
・
つづく
『ハッ!?』
雪女は、自分が倒れ込んでいる辺りに転がっている物を見て驚いた。
思わず言葉が口をついて出た。
「ヌッ!? こ、これは・・・。 このような物でワラワを・・・」
そこには・・雪女の周りには・・小さい岩と言うべきか?
或いはチョッと大き目の石と言うべきか?
大は握り拳(こぶし)大から、小は小指の先ぐらいの大きさの様々なサイズの石と言うか岩と言うか、そういった物が転がっていたのだ。
それも数(かず)少なからず。
その時雪女の周りには、様々な大きさの石、或いは岩といった物が数少なからず転がっていたのである。
あたかも大きな岩が砕け散ったかのように。
そぅ・・・
あたかも大きな岩が、大小様々な大きさに砕け散ったかのように。
そこへ・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #318 『何かが』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #318 『何かが』の巻
(ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、・・・)
何かが、雪女目掛けて飛んだ。
黒っぽい何かが、数多く。
雪女の背後から。
だが、雪女がそれに気付いた様子は全くなかった。
そして、
(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)
それらはそのまま一気に雪女の背後から、正確に雪女の背中を捉(とら)えた。
鈍い衝撃音と共に。
「グハッ!?」
何が何だかわからぬまま、一声呻(うめ)いて雪女が吹っ飛んだ。
追い討ちを掛けるように、更に数多い何かが雪女目掛けて飛んで来た。
(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)
再びそれらが雪女の体にヒットした。
今度は正面からだった。
「グハッ!?」
雪女が呻いて吹っ飛んだ。
そして、
(ヒューーー!! ドサッ!!)
背中から地上に落下した。
これは堪(こた)えた。
あの最強の妖怪・雪女と言えども、これにはかなりのダメージを受けている。
雪女は、何とか仰向(あおむ)けから体勢を入れ替え四つんばいになった。
だが、起き上がれない。
否、それどころか顔も上げられない。
俯(うつむ)いたままだ。
全身に力が入らないのだ。
さしもの雪女も顔を歪め、苦悶の表情を浮かべ、痛みを堪(こら)えている。
「ゥググッ!?」
雪女が苦しそうに唸った。
そして、顔はそのままで目だけを動かして周りを見回した。
すると・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、・・・)
何かが、雪女目掛けて飛んだ。
黒っぽい何かが、数多く。
雪女の背後から。
だが、雪女がそれに気付いた様子は全くなかった。
そして、
(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)
それらはそのまま一気に雪女の背後から、正確に雪女の背中を捉(とら)えた。
鈍い衝撃音と共に。
「グハッ!?」
何が何だかわからぬまま、一声呻(うめ)いて雪女が吹っ飛んだ。
追い討ちを掛けるように、更に数多い何かが雪女目掛けて飛んで来た。
(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)
再びそれらが雪女の体にヒットした。
今度は正面からだった。
「グハッ!?」
雪女が呻いて吹っ飛んだ。
そして、
(ヒューーー!! ドサッ!!)
背中から地上に落下した。
これは堪(こた)えた。
あの最強の妖怪・雪女と言えども、これにはかなりのダメージを受けている。
雪女は、何とか仰向(あおむ)けから体勢を入れ替え四つんばいになった。
だが、起き上がれない。
否、それどころか顔も上げられない。
俯(うつむ)いたままだ。
全身に力が入らないのだ。
さしもの雪女も顔を歪め、苦悶の表情を浮かべ、痛みを堪(こら)えている。
「ゥググッ!?」
雪女が苦しそうに唸った。
そして、顔はそのままで目だけを動かして周りを見回した。
すると・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #317 『見えない内道』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #317 『見えない内道』の巻
「さっきお前は地べたがどうこう言っていたな。 ならば聞こう。 今お前は何処にいる?」
見えない内道が雪女に問い掛けた。
「クッ!?」
一瞬、雪女は一言唸っただけで何も言えなかった。
しかし、直ぐさま気分を切り替えた。
ここが雪女の凄さだ。
雪女は言った。
「あぁ、確かにソチの言う通りじゃ。 じゃが、宙に舞えば前と同じじゃ」
そして、再び飛び上がった。
上空5メートルの位置に止(とど)まった。
そのまま下を見下ろして言った。
「愚か者め!!」
だが、
「愚か者はお前だ! 雪女!!」
見えない内道がすかさず言い返した。
その瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
「さっきお前は地べたがどうこう言っていたな。 ならば聞こう。 今お前は何処にいる?」
見えない内道が雪女に問い掛けた。
「クッ!?」
一瞬、雪女は一言唸っただけで何も言えなかった。
しかし、直ぐさま気分を切り替えた。
ここが雪女の凄さだ。
雪女は言った。
「あぁ、確かにソチの言う通りじゃ。 じゃが、宙に舞えば前と同じじゃ」
そして、再び飛び上がった。
上空5メートルの位置に止(とど)まった。
そのまま下を見下ろして言った。
「愚か者め!!」
だが、
「愚か者はお前だ! 雪女!!」
見えない内道がすかさず言い返した。
その瞬間・・・
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つづく
「戦略編」 #316 『含み笑う声』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #316 『含み笑う声』の巻
「その通りだ!!」
背後から声がした。
雪女の背後から。
(クルッ!!)
雪女が素早く振り返った。
だが、
内道の姿は見当たらなかった。
「クッ!? 何処(どこ)じゃ内道!? 何処におる!?」
雪女が声を荒げた。
「フフフフフフ・・・」
笑い声がした、内道の。
それも含み笑う声だけが。
だが、
内道の姿は何処(どこ)にもナイドー。
雪女は素早く辺りを見回した。
しかし、辺りに内道の姿は見当たらなかった。
「クッ!? 何処じゃ内道!? 何処におる!?」
再び雪女が声を荒げた。
しかし、
「フフフフフフ・・・」
あるのは内道の含み笑う声だけった。
そして・・・
・
・
・
・
・
つづく
「その通りだ!!」
背後から声がした。
雪女の背後から。
(クルッ!!)
雪女が素早く振り返った。
だが、
内道の姿は見当たらなかった。
「クッ!? 何処(どこ)じゃ内道!? 何処におる!?」
雪女が声を荒げた。
「フフフフフフ・・・」
笑い声がした、内道の。
それも含み笑う声だけが。
だが、
内道の姿は何処(どこ)にもナイドー。
雪女は素早く辺りを見回した。
しかし、辺りに内道の姿は見当たらなかった。
「クッ!? 何処じゃ内道!? 何処におる!?」
再び雪女が声を荒げた。
しかし、
「フフフフフフ・・・」
あるのは内道の含み笑う声だけった。
そして・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #315 『雪ダルマ』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #315 『雪ダルマ』の巻
そこにも内道の姿はなかった。
しかし、その代わりに降り積もった雪で出来た・・雪女の引き起こしている吹雪により、それまでに降り積もった雪で出来た・・等身大の倒れた雪ダルマのような物がそこにあった。
当然、雪女はそれに気付く。
突然、
(ガサゴソ・・・)
それが動いた。
僅(わず)かにではあったが。
「ヌッ!? そこか!!」
そう言うなり雪女が右手五指氷柱を放った。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
五指氷柱が一直線に飛ぶ。
倒れた雪ダルマに向かって。
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
全弾命中!?
それと同時に雪ダルマの動きも止まった。
それを見て雪女がそれまで止(とど)まっていた上空から下りて来た。
(スゥ~~~、 スタッ!!)
静かに着地した。
(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)
ユックリと雪を踏みしめ雪ダルマに近付いた。
こう言いながら、
「散々手間を取らせおって。 どれ、ザマを見てくれようぞ」
そして雪ダルマの表面の雪の一部を左手で撥(は)ねた。
右手の指はまだ復元してはいなかったからだ。
瞬間、雪女の顔が怒りで引き攣った。
「ヌッ!? こ、これは土じゃ、土の塊じゃ」
それは土の塊だった。
大地の戦士・破瑠魔内道操(あやつ)る所の土の塊だったのだ、それは。
しかし、雪女には先程の雪だるまが土の塊だったなどとは分からなかった。
自分自らが降らせている雪が返って仇となって。
みるみる雪女の顔が上気した。
怒りに燃えて、上気した。
そして叫んだ。
「おのれ、内道ー!! 謀りおったなぁ!?」
だが、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
そこにも内道の姿はなかった。
しかし、その代わりに降り積もった雪で出来た・・雪女の引き起こしている吹雪により、それまでに降り積もった雪で出来た・・等身大の倒れた雪ダルマのような物がそこにあった。
当然、雪女はそれに気付く。
突然、
(ガサゴソ・・・)
それが動いた。
僅(わず)かにではあったが。
「ヌッ!? そこか!!」
そう言うなり雪女が右手五指氷柱を放った。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
五指氷柱が一直線に飛ぶ。
倒れた雪ダルマに向かって。
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
全弾命中!?
それと同時に雪ダルマの動きも止まった。
それを見て雪女がそれまで止(とど)まっていた上空から下りて来た。
(スゥ~~~、 スタッ!!)
静かに着地した。
(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)
ユックリと雪を踏みしめ雪ダルマに近付いた。
こう言いながら、
「散々手間を取らせおって。 どれ、ザマを見てくれようぞ」
そして雪ダルマの表面の雪の一部を左手で撥(は)ねた。
右手の指はまだ復元してはいなかったからだ。
瞬間、雪女の顔が怒りで引き攣った。
「ヌッ!? こ、これは土じゃ、土の塊じゃ」
それは土の塊だった。
大地の戦士・破瑠魔内道操(あやつ)る所の土の塊だったのだ、それは。
しかし、雪女には先程の雪だるまが土の塊だったなどとは分からなかった。
自分自らが降らせている雪が返って仇となって。
みるみる雪女の顔が上気した。
怒りに燃えて、上気した。
そして叫んだ。
「おのれ、内道ー!! 謀りおったなぁ!?」
だが、
その時・・・
・
・
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つづく
「戦略編」 #314 『そこに・・・』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #314 『そこに・・・』の巻
(シュッ!!)
雪女が壁の反対側上空に飛んだ。
内道がいる筈の壁の反対側上空に。
そして氷柱(つらら)に変えた右手五指を振り上げた。
その瞬間・・・
又しても雪女は、
『ハッ!?』
とした。
そこにある筈の内道の姿がない。
いる筈の内道がいない。
雪女は思った。
『ど、何処(どこ)じゃ!? 何処におる!?』
その時、
(ガサッ、ゴソッ)
雪女の背後遠くで音がした。
(サッ!!)
反射的に雪女が振り返った。
一言こう言ってから。
「ヌッ!? そんな所におったか」
と。
だが、
そこに・・・
・
・
・
・
・
つづく
(シュッ!!)
雪女が壁の反対側上空に飛んだ。
内道がいる筈の壁の反対側上空に。
そして氷柱(つらら)に変えた右手五指を振り上げた。
その瞬間・・・
又しても雪女は、
『ハッ!?』
とした。
そこにある筈の内道の姿がない。
いる筈の内道がいない。
雪女は思った。
『ど、何処(どこ)じゃ!? 何処におる!?』
その時、
(ガサッ、ゴソッ)
雪女の背後遠くで音がした。
(サッ!!)
反射的に雪女が振り返った。
一言こう言ってから。
「ヌッ!? そんな所におったか」
と。
だが、
そこに・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #313 『念法・壁抜け』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #313 『念法・壁抜け』の巻
とりあえず、ここで解説しておこう。
念法・壁抜けとは・・・
ントー。
どうしよっかなぁ。
いくつか考えついちゃんたんだょなぁ、これがぁ。
ントー。
どれか一個に決めないとなぁ。
ントー。
ど~れにしよっかなぁ。
ントー。
ントー。
ントー。
ヨッシャーーー!!
これじゃ、これ!?
これに決めー!!
ウン。
知っての通り、内道は五大力地輪の戦士。
地輪の戦士は “大地” を自在に操る。
よって内道は、大地から生み出した物を巧みに扱える。
即ち、
今、内道の眼前には土の壁がある。
これは内道自らが造った物だ。
よって内道はこの壁を自在に操れる。
つまり内道は瞬時にこの壁を割り、そこを抜け、直ぐさま閉じたのだ。
これが念法・壁抜けなのである。
って、
誰でも思い付くような、
ツマンナイ技の解説でオジャリますたのでアリンス。。。(一応、三段論法だピョン)
・
・
・
・
・
つづく
とりあえず、ここで解説しておこう。
念法・壁抜けとは・・・
ントー。
どうしよっかなぁ。
いくつか考えついちゃんたんだょなぁ、これがぁ。
ントー。
どれか一個に決めないとなぁ。
ントー。
ど~れにしよっかなぁ。
ントー。
ントー。
ントー。
ヨッシャーーー!!
これじゃ、これ!?
これに決めー!!
ウン。
知っての通り、内道は五大力地輪の戦士。
地輪の戦士は “大地” を自在に操る。
よって内道は、大地から生み出した物を巧みに扱える。
即ち、
今、内道の眼前には土の壁がある。
これは内道自らが造った物だ。
よって内道はこの壁を自在に操れる。
つまり内道は瞬時にこの壁を割り、そこを抜け、直ぐさま閉じたのだ。
これが念法・壁抜けなのである。
って、
誰でも思い付くような、
ツマンナイ技の解説でオジャリますたのでアリンス。。。(一応、三段論法だピョン)
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #312 『念法・・・』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #312 『念法・・・』の巻
『ハッ!?』
再び、雪女は驚いた。
予期せぬ出来事が起こっていた。
突然、
(スゥー)
内道の体が壁の中に吸い込まれるように消えたのだ。
ど、どうした内道!?
何だ何だ!?
何をした!?
何だったんだ、今のは・・・?
そ、れ、は、壁抜け・・・念法・壁抜け。
それは五大力・五輪の内の地輪の使い手、即ち、大地の戦士・破瑠魔内道の最も得意とする技の一つ・・・念法・壁抜けだった。
自在に大地を操る事の出来る内道にとって、その大地から生じた壁を抜ける事などいとも簡単なのだ。
勿論、生身の体のまま抜けたのは言うまでもない。
そこへ、
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
五指氷柱が飛んで来た。
そして、全てその壁に突き刺さった。
「クッ!? 猪口才(ちょこざい)な。 じゃが、いくら壁で避けても所詮は地べた。 どうやらソチの得意は地べたの技。 ならば地べたに着かぬワラワを攻むるのはムリ。
つー、まー、りー、・・・
『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
守るのがやっとじゃ。 違うか内道? どうじゃ、何か申してみよ」
雪女が壁越しに大声で内道を挑発した。
雪女は動こうとはしない。
間を取っている。
そうしながら両手の指が復元するのを待っているのだ。
「・・・」
内道は返事をしなかった。
「如何(いかが)致した内道、何か申してみよ」
再び雪女が声を張り上げた。
「・・・」
相変わらず内道からは何の反応もない。
そして・・・
雪女の指が復元した。
それと同時に・・・
・
・
・
・
・
つづく
『ハッ!?』
再び、雪女は驚いた。
予期せぬ出来事が起こっていた。
突然、
(スゥー)
内道の体が壁の中に吸い込まれるように消えたのだ。
ど、どうした内道!?
何だ何だ!?
何をした!?
何だったんだ、今のは・・・?
そ、れ、は、壁抜け・・・念法・壁抜け。
それは五大力・五輪の内の地輪の使い手、即ち、大地の戦士・破瑠魔内道の最も得意とする技の一つ・・・念法・壁抜けだった。
自在に大地を操る事の出来る内道にとって、その大地から生じた壁を抜ける事などいとも簡単なのだ。
勿論、生身の体のまま抜けたのは言うまでもない。
そこへ、
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
五指氷柱が飛んで来た。
そして、全てその壁に突き刺さった。
「クッ!? 猪口才(ちょこざい)な。 じゃが、いくら壁で避けても所詮は地べた。 どうやらソチの得意は地べたの技。 ならば地べたに着かぬワラワを攻むるのはムリ。
つー、まー、りー、・・・
『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
守るのがやっとじゃ。 違うか内道? どうじゃ、何か申してみよ」
雪女が壁越しに大声で内道を挑発した。
雪女は動こうとはしない。
間を取っている。
そうしながら両手の指が復元するのを待っているのだ。
「・・・」
内道は返事をしなかった。
「如何(いかが)致した内道、何か申してみよ」
再び雪女が声を張り上げた。
「・・・」
相変わらず内道からは何の反応もない。
そして・・・
雪女の指が復元した。
それと同時に・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #311 『反撃』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #311 『反撃』の巻
(ビシビシビシビシビシ・・・)
再び土の壁が出現した。
今度は内道の目の前に。
内道がバリヤを張ったのだ。
壁のバリヤを。
五指氷柱避けの壁のバリヤを。
(ドスドスドスドスドス)
五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)がその壁のバリヤに突き刺さった。
ここまでは内道の狙い通りだった。
だが次の瞬間・・・
今度は内道が、
『ハッ!?』
となった。
背後に気配を感じたからだった。
何かが飛んで来る気配を。
その気配を感じると同時に体が反応していた。
(クルッ!!)
振り返っていた。
すると目前に、
(ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ)
何かが迫っていた。
何かが。
五指氷柱・・・か!?
そぅ、それは五指氷柱だった。
五指氷柱が迫っていたのだ。
そこには雪女の左手五指氷柱が、内道の背後から飛んで来ていた。
雪女は先に投げ付けた五指氷柱がブロックされると分った瞬間、直ぐさま内道の背後の上空に飛び、反撃を開始していたのだ。
そしてそこから、内道の背後から、左手五指氷柱を放っていたのだ。
内道は自らが造った壁が返って邪魔になり、雪女の次の動きが見えなかった。
そこに五指氷柱が飛んで来ていた。
しかも狙いは正確。
一直線で内道の胸。
それも心臓目掛けて。
これが雪女の恐ろしさだなのだ。
『クッ!?』
内道は焦った。
最早、新たな壁を造っている余裕など全くない。
五指氷柱の方が早い。
さぁ、どうする内道?
これを避け切れるのか?
さぁ、どうなんだ内道!?
しか~~~し、
次の瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ビシビシビシビシビシ・・・)
再び土の壁が出現した。
今度は内道の目の前に。
内道がバリヤを張ったのだ。
壁のバリヤを。
五指氷柱避けの壁のバリヤを。
(ドスドスドスドスドス)
五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)がその壁のバリヤに突き刺さった。
ここまでは内道の狙い通りだった。
だが次の瞬間・・・
今度は内道が、
『ハッ!?』
となった。
背後に気配を感じたからだった。
何かが飛んで来る気配を。
その気配を感じると同時に体が反応していた。
(クルッ!!)
振り返っていた。
すると目前に、
(ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ)
何かが迫っていた。
何かが。
五指氷柱・・・か!?
そぅ、それは五指氷柱だった。
五指氷柱が迫っていたのだ。
そこには雪女の左手五指氷柱が、内道の背後から飛んで来ていた。
雪女は先に投げ付けた五指氷柱がブロックされると分った瞬間、直ぐさま内道の背後の上空に飛び、反撃を開始していたのだ。
そしてそこから、内道の背後から、左手五指氷柱を放っていたのだ。
内道は自らが造った壁が返って邪魔になり、雪女の次の動きが見えなかった。
そこに五指氷柱が飛んで来ていた。
しかも狙いは正確。
一直線で内道の胸。
それも心臓目掛けて。
これが雪女の恐ろしさだなのだ。
『クッ!?』
内道は焦った。
最早、新たな壁を造っている余裕など全くない。
五指氷柱の方が早い。
さぁ、どうする内道?
これを避け切れるのか?
さぁ、どうなんだ内道!?
しか~~~し、
次の瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #310 『連続攻撃』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #310 『連続攻撃』の巻
『ハッ!?』
雪女は驚愕した。
顔が引き攣った。
今・・・
それもたった今、ぬりかべのように隆起したためバランスを崩させられたあの土の壁が、今度は自分目掛けて倒れ掛かって来ていたからだった。
(ヒュ~~~!! ドッシン!!)
ぬりかべのような土の壁が激しい音を立てて倒れた。
大地を震わせて雪女のバランスを崩し、地面を隆起させて雪女を這(は)い蹲(つくば)らせ、その上に土の壁を落とす。
大地の戦士・破瑠魔内道。
その見事なまでの連続攻撃だ。
だが、
一瞬早かった。
雪女の方が土の壁の落下よりも一瞬早かった。
雪女は壁に押しつぶされる寸前、
(シュッ!!)
左足で地面を蹴って右に跳び、壁の落下から間一髪脱出していた。
(スタン!!)
雪女が着地した。
そして内道と対峙した。
「なるほど大したヤツじゃ。 このような隠し技を持っておったとは・・・。 単身ワラワに挑むのも伊達ではなさそうじゃ。 面白い。 ならばワラワも本気でソチに引導を渡してくれようぞ」
これを聞き、内道が言った。
「さぁ。 引導を渡すのはどっちかな?」
「フン。 相変わらず口の減らぬヤツ。 じゃが、折角(せっかく)じゃ。 ソチの勇気に免じて名を聞いておこう。 名無しの権兵衛をあの世に、大道のおるあの世に送っても面白ぅない。 ソチの名は? 名は何と申す?」
「破瑠魔内道だ」
「破瑠魔内道・・・か。 覚えておく。 じゃが、何とつまらぬ名じゃ。 破瑠魔大道を思い起こさせるヮ」
「それでもお前の名。 雪女よりはマシだ。 妖怪・雪女よりは遥かにな」
「フン。 一々小賢(こざか)しいヤツ」
そう言うなり雪女が、
(シュッ!!)
真上に飛び上がった。
地上5メートルの高さだ。
そのまま留まった。
透かさず右手を振り上げ、そのまま一気に振り下ろした。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
五指氷柱だ。
(ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ)
それは内道目掛けて、内道の胸目掛けて飛んで来る。
狙いは正確。
命中、間違いなし!?
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
『ハッ!?』
雪女は驚愕した。
顔が引き攣った。
今・・・
それもたった今、ぬりかべのように隆起したためバランスを崩させられたあの土の壁が、今度は自分目掛けて倒れ掛かって来ていたからだった。
(ヒュ~~~!! ドッシン!!)
ぬりかべのような土の壁が激しい音を立てて倒れた。
大地を震わせて雪女のバランスを崩し、地面を隆起させて雪女を這(は)い蹲(つくば)らせ、その上に土の壁を落とす。
大地の戦士・破瑠魔内道。
その見事なまでの連続攻撃だ。
だが、
一瞬早かった。
雪女の方が土の壁の落下よりも一瞬早かった。
雪女は壁に押しつぶされる寸前、
(シュッ!!)
左足で地面を蹴って右に跳び、壁の落下から間一髪脱出していた。
(スタン!!)
雪女が着地した。
そして内道と対峙した。
「なるほど大したヤツじゃ。 このような隠し技を持っておったとは・・・。 単身ワラワに挑むのも伊達ではなさそうじゃ。 面白い。 ならばワラワも本気でソチに引導を渡してくれようぞ」
これを聞き、内道が言った。
「さぁ。 引導を渡すのはどっちかな?」
「フン。 相変わらず口の減らぬヤツ。 じゃが、折角(せっかく)じゃ。 ソチの勇気に免じて名を聞いておこう。 名無しの権兵衛をあの世に、大道のおるあの世に送っても面白ぅない。 ソチの名は? 名は何と申す?」
「破瑠魔内道だ」
「破瑠魔内道・・・か。 覚えておく。 じゃが、何とつまらぬ名じゃ。 破瑠魔大道を思い起こさせるヮ」
「それでもお前の名。 雪女よりはマシだ。 妖怪・雪女よりは遥かにな」
「フン。 一々小賢(こざか)しいヤツ」
そう言うなり雪女が、
(シュッ!!)
真上に飛び上がった。
地上5メートルの高さだ。
そのまま留まった。
透かさず右手を振り上げ、そのまま一気に振り下ろした。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
五指氷柱だ。
(ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ)
それは内道目掛けて、内道の胸目掛けて飛んで来る。
狙いは正確。
命中、間違いなし!?
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #309 『まるで妖怪・ぬりかべ』の巻
2017-04-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #309 『まるで妖怪・ぬりかべ』の巻
(ビシビシビシビシビシ・・・)
地面が・・・隆起した。
雪女の足元が、雪女の足元付近の地面が、雪女の足元付近の地面だけがイキナリ隆起した。
そして壁を造った。
土の壁だ。
厚さ1メートル、幅3メートル、高さ5メートル位か?
その形状は、まるで妖怪・ぬりかべを思わせる。
(ゴロンゴロンゴロン・・・)
突然の事にバランスを崩し、そのまま地面に転がり込む雪女。
雪女は両手、両足、両膝を地面に突いて這(は)い蹲(つくば)った。
四つん這(ば)いだ。
その状態のまま思わず口走った。
「クッ!? こ、これは何とした事じゃ!?」
そして、
(キッ!!)
内道を睨もうと顔を上げた。
その瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ビシビシビシビシビシ・・・)
地面が・・・隆起した。
雪女の足元が、雪女の足元付近の地面が、雪女の足元付近の地面だけがイキナリ隆起した。
そして壁を造った。
土の壁だ。
厚さ1メートル、幅3メートル、高さ5メートル位か?
その形状は、まるで妖怪・ぬりかべを思わせる。
(ゴロンゴロンゴロン・・・)
突然の事にバランスを崩し、そのまま地面に転がり込む雪女。
雪女は両手、両足、両膝を地面に突いて這(は)い蹲(つくば)った。
四つん這(ば)いだ。
その状態のまま思わず口走った。
「クッ!? こ、これは何とした事じゃ!?」
そして、
(キッ!!)
内道を睨もうと顔を上げた。
その瞬間・・・
・
・
・
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・
つづく
「戦略編」 #308 『大地の戦士』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #308 『大地の戦士』の巻
(ピシピシピシピシピシ・・・)
雪女の振り上げてあった右手五指が完全に氷柱(つらら)と化した。
その右手を大きく後ろへ反らせた。
弾みをつけたのだ、五指氷柱を投げ付けるために。
狙いは内道の胸。
一気に、雪女が右手を振り下ろそうとした。
だが、
一瞬、内道の方が早かった。
「兵(いくさ)に臨んで闘う者は、皆、陳列して (我が) 前に在り!! 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!! キェ~~~イ!!!」
気合一閃、内道が九字を切った。
(ビシビシビシビシビシ・・・)
辺りが・・女切刀が・・女切刀の里が震撼する。
内道の九字で。
それは大地さえも揺るがせる。
(グラグラグラグラグラ・・・)
まるで地震、大地震だ。
内道が起している大地震だ。
それは、女切刀呪禁道1400年、最強の達人・破瑠魔内道その人の起す大地震だった。
そぅ・・・
地輪顕色 “青” の戦士・破瑠魔内道。
彼こそは “地” の技を使う大地の戦士なのだ。
(ヨロヨロヨロ・・・)
一瞬、雪女はバランスを崩した。
五指氷柱は投げられない。
そして思った。
『ヌッ!? こ、これは・・・』
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ピシピシピシピシピシ・・・)
雪女の振り上げてあった右手五指が完全に氷柱(つらら)と化した。
その右手を大きく後ろへ反らせた。
弾みをつけたのだ、五指氷柱を投げ付けるために。
狙いは内道の胸。
一気に、雪女が右手を振り下ろそうとした。
だが、
一瞬、内道の方が早かった。
「兵(いくさ)に臨んで闘う者は、皆、陳列して (我が) 前に在り!! 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!! キェ~~~イ!!!」
気合一閃、内道が九字を切った。
(ビシビシビシビシビシ・・・)
辺りが・・女切刀が・・女切刀の里が震撼する。
内道の九字で。
それは大地さえも揺るがせる。
(グラグラグラグラグラ・・・)
まるで地震、大地震だ。
内道が起している大地震だ。
それは、女切刀呪禁道1400年、最強の達人・破瑠魔内道その人の起す大地震だった。
そぅ・・・
地輪顕色 “青” の戦士・破瑠魔内道。
彼こそは “地” の技を使う大地の戦士なのだ。
(ヨロヨロヨロ・・・)
一瞬、雪女はバランスを崩した。
五指氷柱は投げられない。
そして思った。
『ヌッ!? こ、これは・・・』
その時・・・
・
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つづく
「戦略編」 #307 『臨戦態勢』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #307 『臨戦態勢』の巻
(ビュービュービュービュービュー・・・)
吹雪の音が激しさを増した。
雪女がボルテージを上げたのだ。
雪女、既に戦闘モード。
(スゥー!!)
そして、その吹雪の音がまるでその合図ででもあったかのように雪女が右足を半歩後ろに引き、体を半身にして身構えた。
(ピシピシピシピシピシ・・・)
その五指が直に氷柱(つらら)に変わり始めた。
五指氷柱だ。
(サッ!!)
右手を高く振り上げた。
透(す)かさず内道も戦闘態勢に入った。
(スッ!!)
胸の前に両手を挙げた。
そのまま結ぶ不動剣印。
口には、
「オン マリシエイ ソワカ。 オン マリシエイ ソワカ。 オン マリシエイ ソワカ」
魔利子天真言(まりしてん・しんごん)。
そのまま透かさず、
「フゥー!!」
結んだ剣印に力強く息吹を掛ける、女切刀呪禁道秘術・早九字の構え。
両者一歩も引かない。
引こうとはしない。
互いに臨戦態勢だ。
ここを以って、
『女切刀呪禁道1400年随一の達人・破瑠魔内道 vs 人類史上最強の妖怪・雪女』
その決戦の火蓋が・・・
切って落とされたのである。
終に・・・
・
・
・
・
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つづく
(ビュービュービュービュービュー・・・)
吹雪の音が激しさを増した。
雪女がボルテージを上げたのだ。
雪女、既に戦闘モード。
(スゥー!!)
そして、その吹雪の音がまるでその合図ででもあったかのように雪女が右足を半歩後ろに引き、体を半身にして身構えた。
(ピシピシピシピシピシ・・・)
その五指が直に氷柱(つらら)に変わり始めた。
五指氷柱だ。
(サッ!!)
右手を高く振り上げた。
透(す)かさず内道も戦闘態勢に入った。
(スッ!!)
胸の前に両手を挙げた。
そのまま結ぶ不動剣印。
口には、
「オン マリシエイ ソワカ。 オン マリシエイ ソワカ。 オン マリシエイ ソワカ」
魔利子天真言(まりしてん・しんごん)。
そのまま透かさず、
「フゥー!!」
結んだ剣印に力強く息吹を掛ける、女切刀呪禁道秘術・早九字の構え。
両者一歩も引かない。
引こうとはしない。
互いに臨戦態勢だ。
ここを以って、
『女切刀呪禁道1400年随一の達人・破瑠魔内道 vs 人類史上最強の妖怪・雪女』
その決戦の火蓋が・・・
切って落とされたのである。
終に・・・
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つづく
「戦略編」 #306 『憐憫の情』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #306 『憐憫の情』の巻
「哀れなヤツはソチのほうじゃ」
勝ち誇ったように雪女が内道に言った。
「・・・」
意味が分らず内道は黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「分らぬようじゃな。 ならば聞くが良い。 かつてワラワは情けを掛けた。 憐憫(れんびん)の情を。 あの大道にじゃ。 それが仇となって我一族は亡んだ。 それと同じじゃ、今のソチは」
「・・・」
内道はまだ黙っていた。
雪女が更に続けた。
「まだ分らぬか? ン? 要(い)らぬ情けは却(かえ)って仇という事じゃ。 つまりたったの今、ソチの命運は尽きたという事じゃ。 ワラワの手に掛かって死ぬるという事じゃ。 無様に、惨めに、哀れに死ぬるという事じゃ。 それもこれも目の前におったワラワに気付かず神像の方を斬った、あの愚か者の大道の不始末の所為(せい)じゃ。 恨むが良い、大道を。 あの世でタップリと大道に戯言(ざれごと)をホザクが良い。 ソチの不始末の所為でこのような目に合(お)ぅてしもぅたとのぅ。 ソチの斬りそこのぅたワラワにこのような目に合わされたとのぅ。 ソチのお陰で無様にもこのようになってしもぅたとのぅ。 アーハハハハハハ。 アーハハハハハハ。 アーハハハハハハ。 ・・・」
雪女が例の覚めた笑いを始めた。
ここで始めて、それまで黙って聞いていただけの内道が口を開いた。
「言いたい事はそれだけか?」
一頻(ひとしき)り笑ってから雪女が応じた。
「・・・。 あぁ、それだけじゃ」
そして、
「・・・」
「・・・」
これ以後二人は黙って対峙した。
どちらも動こうとはしない。
互いに相手の眼(め)を見つめている。
二人の間にあるのは、
(ビュー、ビュー、ビュー、ビュー、ビュー、・・・)
吹きすさぶ吹雪の音だけ。
雪女の起こす吹雪の音だけ。
ただ、それだけだった。
暫し二人は睨み合った。
さぁ、先に仕掛けるのはどっちだ?
しかし二人とも動かない。
ピクリとも動こうとはしない。
静かに時だけが過ぎて行く。
だが、
突然・・・
・
・
・
・
・
つづく
「哀れなヤツはソチのほうじゃ」
勝ち誇ったように雪女が内道に言った。
「・・・」
意味が分らず内道は黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「分らぬようじゃな。 ならば聞くが良い。 かつてワラワは情けを掛けた。 憐憫(れんびん)の情を。 あの大道にじゃ。 それが仇となって我一族は亡んだ。 それと同じじゃ、今のソチは」
「・・・」
内道はまだ黙っていた。
雪女が更に続けた。
「まだ分らぬか? ン? 要(い)らぬ情けは却(かえ)って仇という事じゃ。 つまりたったの今、ソチの命運は尽きたという事じゃ。 ワラワの手に掛かって死ぬるという事じゃ。 無様に、惨めに、哀れに死ぬるという事じゃ。 それもこれも目の前におったワラワに気付かず神像の方を斬った、あの愚か者の大道の不始末の所為(せい)じゃ。 恨むが良い、大道を。 あの世でタップリと大道に戯言(ざれごと)をホザクが良い。 ソチの不始末の所為でこのような目に合(お)ぅてしもぅたとのぅ。 ソチの斬りそこのぅたワラワにこのような目に合わされたとのぅ。 ソチのお陰で無様にもこのようになってしもぅたとのぅ。 アーハハハハハハ。 アーハハハハハハ。 アーハハハハハハ。 ・・・」
雪女が例の覚めた笑いを始めた。
ここで始めて、それまで黙って聞いていただけの内道が口を開いた。
「言いたい事はそれだけか?」
一頻(ひとしき)り笑ってから雪女が応じた。
「・・・。 あぁ、それだけじゃ」
そして、
「・・・」
「・・・」
これ以後二人は黙って対峙した。
どちらも動こうとはしない。
互いに相手の眼(め)を見つめている。
二人の間にあるのは、
(ビュー、ビュー、ビュー、ビュー、ビュー、・・・)
吹きすさぶ吹雪の音だけ。
雪女の起こす吹雪の音だけ。
ただ、それだけだった。
暫し二人は睨み合った。
さぁ、先に仕掛けるのはどっちだ?
しかし二人とも動かない。
ピクリとも動こうとはしない。
静かに時だけが過ぎて行く。
だが、
突然・・・
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・
・
・
つづく
「戦略編」 #305 『一瞬の・・・』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #305 『一瞬の・・・』の巻
「哀れなヤツ」
内道がポツリとそう言ったのは、雪女が元の冷静さを取り戻した直後だった。
それは反射的に口を突いて出た言葉だった。
だが、
この時内道は、そうとは気付かぬ内に決定的な過ちを犯していた。
戦士が決して犯してはならない過ちを。
即ち、内道は雪女を不憫(ふびん)に思っていたのだ。
つまり内道は、雪女の境遇に僅(わず)かではあるが同情していたのである。
これから死闘を演ずる事になる相手に、ホンのチョッと同情してしまっていたのである。
そのホンのチョッとが命取りになるとも気付かずに。
「・・・」
雪女は黙っていた。
だが直に、
(ニヤッ!!)
笑った。
そして、下目使いに内道を見下し含み笑いを浮かべてこう言った。
それも余裕のヨッチャンこいて。
「フフフフフ・・・。 ソチの負けじゃ」
と。
「ン!? 負け?」
内道が反応した。
「あぁ、そうじゃ。 ソチの負けじゃ」
「・・・」
内道は意味がわからず黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「最早、ソチはこのワラワには勝てぬ」
「そんな事は、やってみなければ分らないだろう」
「いぃや。 やらずとも勝負は付いた。 ソチの負けじゃ。 例えソチがどれほどの者であろうと関係ない。 今のソチではどう足掻(あが)いてもこのワラワには勝てぬ」
雪女は見逃さなかったのだ。
内道の一瞬の気の緩みを。
自分に対する同情心から起こった内道の・・・
一瞬の・・・
気の緩みを。
・
・
・
・
・
つづく
「哀れなヤツ」
内道がポツリとそう言ったのは、雪女が元の冷静さを取り戻した直後だった。
それは反射的に口を突いて出た言葉だった。
だが、
この時内道は、そうとは気付かぬ内に決定的な過ちを犯していた。
戦士が決して犯してはならない過ちを。
即ち、内道は雪女を不憫(ふびん)に思っていたのだ。
つまり内道は、雪女の境遇に僅(わず)かではあるが同情していたのである。
これから死闘を演ずる事になる相手に、ホンのチョッと同情してしまっていたのである。
そのホンのチョッとが命取りになるとも気付かずに。
「・・・」
雪女は黙っていた。
だが直に、
(ニヤッ!!)
笑った。
そして、下目使いに内道を見下し含み笑いを浮かべてこう言った。
それも余裕のヨッチャンこいて。
「フフフフフ・・・。 ソチの負けじゃ」
と。
「ン!? 負け?」
内道が反応した。
「あぁ、そうじゃ。 ソチの負けじゃ」
「・・・」
内道は意味がわからず黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「最早、ソチはこのワラワには勝てぬ」
「そんな事は、やってみなければ分らないだろう」
「いぃや。 やらずとも勝負は付いた。 ソチの負けじゃ。 例えソチがどれほどの者であろうと関係ない。 今のソチではどう足掻(あが)いてもこのワラワには勝てぬ」
雪女は見逃さなかったのだ。
内道の一瞬の気の緩みを。
自分に対する同情心から起こった内道の・・・
一瞬の・・・
気の緩みを。
・
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・
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つづく
「戦略編」 #304 『揺るぎない覚悟』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #304 『揺るぎない覚悟』の巻
大道が全てを語り終わった。
ここで初めて、それまで黙って聞いていた善道が口を開いた。
「ならば兄ぢゃ。 くどいようじゃが、再度聞く。 兄ぢゃは最早、即身仏の行を止めるおつもりはないのじゃな?」
「あぁ、ない。 そのためにソナタを呼んだ」
善道は大道の眼(め)をジッと見つめた。
大道も目を逸らす事なく善道の視線を受け止めた。
「・・・」
「・・・」
二人は、そのまま暫らく見つめ合った。
善道は思った。
『ナンと清々(すがすが)しい眼(め)じゃ。 最早、説得の余地などない。 兄ぢゃの決心が変わる事はない』
その時善道は、兄・大道の揺るぎない覚悟をその眼を通して思い知ったのだった。
「ウム」
善道が頷いた。
それは全てを得心した事から起こった自然な反応だった。
善道はそれまで組んでいた胡座(あぐら)から正座に足を組替えた。
そのままジッと大道の眼を見つめた。
そして庵の床に両手を着いた。
大道から眼を切り、深々と頭を下げた。
そしてこう言った。
「兄ぢゃのご入定(にゅじょう)・・・。 この善道、確(しか)と見届けさせて頂き申す」
たったこれだけではあったが、この一連の善道の動き、その流れるような仕種、振る舞いを見て大道は改めてこう思った。
『ウム。 これぞ正に棟梁(とうりょう)。 此(こ)は正に棟梁の器ぞ』
大道も又、足を胡座から正座に組替えた。
善道同様、両手を床に着けた。
善道に対し深々と頭を下げた。
そしてこう言った。
「お頼み申す」
ここまでが、内道の知っている善道の手記に克明に記されていた大道と善道の最後のやり取りの・・・
あらましである。
・
・
・
・
・
つづく
大道が全てを語り終わった。
ここで初めて、それまで黙って聞いていた善道が口を開いた。
「ならば兄ぢゃ。 くどいようじゃが、再度聞く。 兄ぢゃは最早、即身仏の行を止めるおつもりはないのじゃな?」
「あぁ、ない。 そのためにソナタを呼んだ」
善道は大道の眼(め)をジッと見つめた。
大道も目を逸らす事なく善道の視線を受け止めた。
「・・・」
「・・・」
二人は、そのまま暫らく見つめ合った。
善道は思った。
『ナンと清々(すがすが)しい眼(め)じゃ。 最早、説得の余地などない。 兄ぢゃの決心が変わる事はない』
その時善道は、兄・大道の揺るぎない覚悟をその眼を通して思い知ったのだった。
「ウム」
善道が頷いた。
それは全てを得心した事から起こった自然な反応だった。
善道はそれまで組んでいた胡座(あぐら)から正座に足を組替えた。
そのままジッと大道の眼を見つめた。
そして庵の床に両手を着いた。
大道から眼を切り、深々と頭を下げた。
そしてこう言った。
「兄ぢゃのご入定(にゅじょう)・・・。 この善道、確(しか)と見届けさせて頂き申す」
たったこれだけではあったが、この一連の善道の動き、その流れるような仕種、振る舞いを見て大道は改めてこう思った。
『ウム。 これぞ正に棟梁(とうりょう)。 此(こ)は正に棟梁の器ぞ』
大道も又、足を胡座から正座に組替えた。
善道同様、両手を床に着けた。
善道に対し深々と頭を下げた。
そしてこう言った。
「お頼み申す」
ここまでが、内道の知っている善道の手記に克明に記されていた大道と善道の最後のやり取りの・・・
あらましである。
・
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つづく
「戦略編」 #303 『大道の本懐』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #303 『大道の本懐』の巻
「因縁切りじゃ」
大道が言った。
キッパリと。
「因縁切り?」
善道が聞き返した。
意味が分からず。
「そうじゃ。 因縁切りじゃ」
「何の?」
「我等、破瑠魔と妖の因縁じゃ」
「破瑠魔と妖の?」
「そうじゃ。 破瑠魔と妖のじゃ。 ソナタは我等、破瑠魔と妖の因縁譚(いんねん・たん)を親父殿(おやじどの)から聞いてはおらぬのか?」
「否、何も」
「そうか。 聞いてはおらぬのか。 ならば聞かせてやろう。 我等、破瑠魔と妖の因縁譚を」
そう言って、大道がユックリと破瑠魔と妖の因縁話を語り始めた。
先ず、破瑠魔と妖は同属の先祖を持つという所から始めて、一千年前の破瑠魔人道と妖の女・蛮娘(ばんじょう)の悲話。
次に、人道と無道の戦い。
その無道に唆(そそのか)され魔王権現女神像を、妖が盗み出した件。
そのため破瑠魔にはその女神像の写し絵しか存在していない事。
しかし、ナゼかその写し絵は魔王明神とは似ても似つかぬ事。
(これは蛮娘の一件以後、女神像の顔がすっかり変わってしまったのだが、大道達はそんな恐ろしい出来事があったなど全く預かり知らなかったためである)
妖が破瑠魔の追手(おって)から逃れるため、既に妖の名を捨てていた事。
妖 玄丞(あやし・げんじょう)から聞いた玄丞不死身の理由、並びにその娘、妖の姫御子・雪出生の秘密。
その妖の姫御子・雪、並びに女神像手にする箱、加えてそれらと共に妖を討てという魔王権現の神託。
妖 玄丞邸における雪との戦い。
そこで雪が始めて見せた大技・飛行薬叉(ひこう・やしゃ)の術。
雪が飛んで逃げた魔王明神本殿での信じられない出来事。
その本殿出火からの脱出。
そしてその最後に、大道が使った秘技・大炎城結界の事。
大道はこれらを掻(か)い摘(つま)んで善道に話して聞かせた。
それら全てを善道は黙って聞いていた。
最後に大道は、
「ワシは、今申したこれら全てに決着を付けたいのじゃ。 ワシに付き従ぅて命を失のぅた品井山 死孟、(しないやま・しもう)他二十八名。 それにワシがこの手に掛けた妖 玄丞殿、雪殿、妖の衆。 加えて我等、破瑠魔と妖の因縁。 これら全てに決着を付けたいのじゃ。 無論、ワシ一人がどうこうしたからと言ぅて決着が付くとは申さぬ。 じゃが、ワシはそれをせねばならぬ。 せねばならぬのじゃ、善道。 既にこれがワシの本懐なのじゃ。 誰が何と言ほうとワシの決心は変わる事はない。 決して変わる事はないのじゃ」
と、付け加えた。
念を押すように・・・
・
・
・
・
・
つづく
「因縁切りじゃ」
大道が言った。
キッパリと。
「因縁切り?」
善道が聞き返した。
意味が分からず。
「そうじゃ。 因縁切りじゃ」
「何の?」
「我等、破瑠魔と妖の因縁じゃ」
「破瑠魔と妖の?」
「そうじゃ。 破瑠魔と妖のじゃ。 ソナタは我等、破瑠魔と妖の因縁譚(いんねん・たん)を親父殿(おやじどの)から聞いてはおらぬのか?」
「否、何も」
「そうか。 聞いてはおらぬのか。 ならば聞かせてやろう。 我等、破瑠魔と妖の因縁譚を」
そう言って、大道がユックリと破瑠魔と妖の因縁話を語り始めた。
先ず、破瑠魔と妖は同属の先祖を持つという所から始めて、一千年前の破瑠魔人道と妖の女・蛮娘(ばんじょう)の悲話。
次に、人道と無道の戦い。
その無道に唆(そそのか)され魔王権現女神像を、妖が盗み出した件。
そのため破瑠魔にはその女神像の写し絵しか存在していない事。
しかし、ナゼかその写し絵は魔王明神とは似ても似つかぬ事。
(これは蛮娘の一件以後、女神像の顔がすっかり変わってしまったのだが、大道達はそんな恐ろしい出来事があったなど全く預かり知らなかったためである)
妖が破瑠魔の追手(おって)から逃れるため、既に妖の名を捨てていた事。
妖 玄丞(あやし・げんじょう)から聞いた玄丞不死身の理由、並びにその娘、妖の姫御子・雪出生の秘密。
その妖の姫御子・雪、並びに女神像手にする箱、加えてそれらと共に妖を討てという魔王権現の神託。
妖 玄丞邸における雪との戦い。
そこで雪が始めて見せた大技・飛行薬叉(ひこう・やしゃ)の術。
雪が飛んで逃げた魔王明神本殿での信じられない出来事。
その本殿出火からの脱出。
そしてその最後に、大道が使った秘技・大炎城結界の事。
大道はこれらを掻(か)い摘(つま)んで善道に話して聞かせた。
それら全てを善道は黙って聞いていた。
最後に大道は、
「ワシは、今申したこれら全てに決着を付けたいのじゃ。 ワシに付き従ぅて命を失のぅた品井山 死孟、(しないやま・しもう)他二十八名。 それにワシがこの手に掛けた妖 玄丞殿、雪殿、妖の衆。 加えて我等、破瑠魔と妖の因縁。 これら全てに決着を付けたいのじゃ。 無論、ワシ一人がどうこうしたからと言ぅて決着が付くとは申さぬ。 じゃが、ワシはそれをせねばならぬ。 せねばならぬのじゃ、善道。 既にこれがワシの本懐なのじゃ。 誰が何と言ほうとワシの決心は変わる事はない。 決して変わる事はないのじゃ」
と、付け加えた。
念を押すように・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #302 『訳(わけ)』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #302 『訳(わけ)』の巻
「兄ぢゃ」
善道が大道に話し掛けた。
「何じゃ?」
大道が聞き返した。
「何故(なぜ)じゃ? 何故、即身仏でなければならぬ? 供養なら何も即身仏とならずとも出来る筈じゃ。 他に方法はいくらでもあ・・・」
善道がここまで言った時、これを制して、
「ない」
大道がキッパリとそう言い切った。
「・・・」
言葉を途中で遮(さえぎ)られ、善道は驚いたという表情をして言い掛けたまま黙った。
その善道の眼(め)をジッと見据えて大道が言った。
「ワシが即身仏となるのはの、善道。 申した通り供養のため。 じゃが、それだけではない。 他にも訳があるのじゃ」
「訳!?」
「そうじゃ。 他にも訳があるのじゃ」
「それは? その訳とは・・・?」
不思議そうに問い掛けてくる善道に対し、大道が続けた。
「その訳とはの・・・」
・
・
・
・
・
つづく
「兄ぢゃ」
善道が大道に話し掛けた。
「何じゃ?」
大道が聞き返した。
「何故(なぜ)じゃ? 何故、即身仏でなければならぬ? 供養なら何も即身仏とならずとも出来る筈じゃ。 他に方法はいくらでもあ・・・」
善道がここまで言った時、これを制して、
「ない」
大道がキッパリとそう言い切った。
「・・・」
言葉を途中で遮(さえぎ)られ、善道は驚いたという表情をして言い掛けたまま黙った。
その善道の眼(め)をジッと見据えて大道が言った。
「ワシが即身仏となるのはの、善道。 申した通り供養のため。 じゃが、それだけではない。 他にも訳があるのじゃ」
「訳!?」
「そうじゃ。 他にも訳があるのじゃ」
「それは? その訳とは・・・?」
不思議そうに問い掛けてくる善道に対し、大道が続けた。
「その訳とはの・・・」
・
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・
つづく
「戦略編」 #301 『妙な事』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #301 『妙な事』の巻
善道は黙っていた。
ここへ・・この重磐外裏庵へ・・この大道の住む重磐外裏庵へ来る直前、神剣・軍駆馬を抜いたという事を。
そしてその時、軍駆馬の刃(やいば)をジックリと調べたという事を。
それを善道は黙っていた。
その上で大道に聞いた。
「兄ぢゃ。 一つ聞きたい事がある」
大道が聞き返した。
「何じゃ?」
「兄ぢゃは、真(まっこと)妖の姫御子をお斬りになったのか?」
「あぁ、斬った」
「間違いのぅ軍駆馬でか?」
「無論、そうじゃ」
「それをハッキリ断言出来るか?」
「勿論じゃ」
「なら、斬った後(のち)。 軍駆馬を研(と)いだか?」
「否。 油は打ったが研いではおらぬ」
「フーン。 研いではおらぬのか」
「ナゼそのような事を聞く?」
「否、何・・・。 少し聞いてみたまでじゃ。 そうか、研いではおらぬのか・・・」
「あぁ。 研いではおらぬ。 じゃが、何じゃ? 何か不審な点でもあるのか?」
「い、否。 いい。 何もない。 気にせんでくれ」
「そうか」
「・・・」
善道は黙った。
疑問は晴れなかった。
軍駆馬は本当に、妖の姫御子を斬っているのかという疑問は。
だが、兄・大道が自分の目の前でキッパリ斬ったと言い切ったのでそれで良しとしようと思った。
不承不承(ふしょうぶしょう)ではあったがそれでこの疑問に終止符を打つ事にした。
それは、それ以上の新たな疑問が浮かび上がって来たからだった。
ナゼ大道が即身仏に成らねば成らぬのか、ナゼそこまでしなければ成らないのかという新たな疑問が。
そんな善道の姿を見て大道がボソッと呟(つぶや)いた。
「妙な事を聞くヤツじゃ」
・・・・・・と。
・
・
・
・
・
つづく
善道は黙っていた。
ここへ・・この重磐外裏庵へ・・この大道の住む重磐外裏庵へ来る直前、神剣・軍駆馬を抜いたという事を。
そしてその時、軍駆馬の刃(やいば)をジックリと調べたという事を。
それを善道は黙っていた。
その上で大道に聞いた。
「兄ぢゃ。 一つ聞きたい事がある」
大道が聞き返した。
「何じゃ?」
「兄ぢゃは、真(まっこと)妖の姫御子をお斬りになったのか?」
「あぁ、斬った」
「間違いのぅ軍駆馬でか?」
「無論、そうじゃ」
「それをハッキリ断言出来るか?」
「勿論じゃ」
「なら、斬った後(のち)。 軍駆馬を研(と)いだか?」
「否。 油は打ったが研いではおらぬ」
「フーン。 研いではおらぬのか」
「ナゼそのような事を聞く?」
「否、何・・・。 少し聞いてみたまでじゃ。 そうか、研いではおらぬのか・・・」
「あぁ。 研いではおらぬ。 じゃが、何じゃ? 何か不審な点でもあるのか?」
「い、否。 いい。 何もない。 気にせんでくれ」
「そうか」
「・・・」
善道は黙った。
疑問は晴れなかった。
軍駆馬は本当に、妖の姫御子を斬っているのかという疑問は。
だが、兄・大道が自分の目の前でキッパリ斬ったと言い切ったのでそれで良しとしようと思った。
不承不承(ふしょうぶしょう)ではあったがそれでこの疑問に終止符を打つ事にした。
それは、それ以上の新たな疑問が浮かび上がって来たからだった。
ナゼ大道が即身仏に成らねば成らぬのか、ナゼそこまでしなければ成らないのかという新たな疑問が。
そんな善道の姿を見て大道がボソッと呟(つぶや)いた。
「妙な事を聞くヤツじゃ」
・・・・・・と。
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つづく
「戦略編」 #300 『刃』の巻
2017-04-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #300 『刃』の巻
善道は魔王権現大社内の下界への通路を下ろうとしていた。
すると、大社の中に安置されていた軍駆馬が目に入った。
それを見て善道は、ふと、軍駆馬が気になった。
その場で立ち止まった。
暫らくそのままジッと軍駆馬を見つめていた。
善道は通路を下るのを止め、
(ツカツカツカツカツカ・・・)
軍駆馬に近寄り、辺りを見回した。
誰もいなかった。
それを確認してから、
(スゥー)
軍駆馬に左手を伸ばし、
(ガチャ)
徐(おもむろ)に掴(つか)み上げ、
(スゥー)
今度は右手を上げ柄をつかみ、
(カチャ)
鯉口を切った。
そして、
(スゥーーー)
抜いた。
軍駆馬は簡単に抜けた。
いとも簡単に。
そぅ・・・
この時善道は、いとも簡単に神剣・軍駆馬を抜いたのだった。
しかし、そんな事は如何(どう)でも良かった。
善道にとって軍駆馬を抜いた抜けなかった等、全く問題ではなかったのだ。
軍駆馬を抜いたから如何(どう)。
抜けなかったら如何(いか)に。
善道はそんな事に頓着(とんちゃく)するような人間ではなかった。
これが善道の奥ゆかしさである。
そして善道のここを大道は評価していた。
(ギラン!!)
妖しく光る神剣・軍駆馬。
その刃を善道はジッと見つめた。
何かを観察しているようだった。
暫らくそのまま観察していた。
だが、不審な点でも有ったのだろうか?
善道が首を捻(ひね)った。
軍駆馬の刃(やいば)をジッと見つめたまま、真剣に何か考え込んでいる。
顔に不可解だという表情を浮かべて。
実はその時、善道はこう思っていたのだ。
『奇妙じゃ。 この太刀で兄ぢゃが妖の姫御子を斬ったと聞いておる。 じゃが、この太刀には人を斬った跡が見られぬ。 否、それどころか刃こぼれ一つ見当たらぬ。 如何(いか)に神剣とは言へ妙じゃ。 兄ぢゃは真(まっこと)この太刀で妖の姫御子を斬ったのじゃろうか?』
と。
だが、善道には時間がなかった。
それを覚道達に問い質(ただ)している時間が。
今、こうしている間(あいだ)にも大道の身に迫っている見えない何かかが気掛かりだった。
『父上達に聞いておる間(ま)はない。 直(じか)に兄ぢゃに聞くのが一番じゃ』
そう思い直した。
そして、軍駆馬を元に戻し先を急いだ。
目指すは大道の居所(きょしょ)、重磐外裏庵(えばんげり・あん)。
単身、善道は走った。
走りに走った。
そして3日と掛からず到着した。
大道の待つ重磐外裏庵に。
しかしその間(かん)、善道にはズッと気に掛かっている事が二つあった。
その一つは、
それが何かは分からないが、間違いなく、今、兄大道の身に起こっている異変。
そして二つ目。
それは・・・人を斬った筈なのに、その痕跡が全く見られないどころか刃こぼれ一つない・・・
神剣・軍駆馬の事だった。
・
・
・
・
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つづく
善道は魔王権現大社内の下界への通路を下ろうとしていた。
すると、大社の中に安置されていた軍駆馬が目に入った。
それを見て善道は、ふと、軍駆馬が気になった。
その場で立ち止まった。
暫らくそのままジッと軍駆馬を見つめていた。
善道は通路を下るのを止め、
(ツカツカツカツカツカ・・・)
軍駆馬に近寄り、辺りを見回した。
誰もいなかった。
それを確認してから、
(スゥー)
軍駆馬に左手を伸ばし、
(ガチャ)
徐(おもむろ)に掴(つか)み上げ、
(スゥー)
今度は右手を上げ柄をつかみ、
(カチャ)
鯉口を切った。
そして、
(スゥーーー)
抜いた。
軍駆馬は簡単に抜けた。
いとも簡単に。
そぅ・・・
この時善道は、いとも簡単に神剣・軍駆馬を抜いたのだった。
しかし、そんな事は如何(どう)でも良かった。
善道にとって軍駆馬を抜いた抜けなかった等、全く問題ではなかったのだ。
軍駆馬を抜いたから如何(どう)。
抜けなかったら如何(いか)に。
善道はそんな事に頓着(とんちゃく)するような人間ではなかった。
これが善道の奥ゆかしさである。
そして善道のここを大道は評価していた。
(ギラン!!)
妖しく光る神剣・軍駆馬。
その刃を善道はジッと見つめた。
何かを観察しているようだった。
暫らくそのまま観察していた。
だが、不審な点でも有ったのだろうか?
善道が首を捻(ひね)った。
軍駆馬の刃(やいば)をジッと見つめたまま、真剣に何か考え込んでいる。
顔に不可解だという表情を浮かべて。
実はその時、善道はこう思っていたのだ。
『奇妙じゃ。 この太刀で兄ぢゃが妖の姫御子を斬ったと聞いておる。 じゃが、この太刀には人を斬った跡が見られぬ。 否、それどころか刃こぼれ一つ見当たらぬ。 如何(いか)に神剣とは言へ妙じゃ。 兄ぢゃは真(まっこと)この太刀で妖の姫御子を斬ったのじゃろうか?』
と。
だが、善道には時間がなかった。
それを覚道達に問い質(ただ)している時間が。
今、こうしている間(あいだ)にも大道の身に迫っている見えない何かかが気掛かりだった。
『父上達に聞いておる間(ま)はない。 直(じか)に兄ぢゃに聞くのが一番じゃ』
そう思い直した。
そして、軍駆馬を元に戻し先を急いだ。
目指すは大道の居所(きょしょ)、重磐外裏庵(えばんげり・あん)。
単身、善道は走った。
走りに走った。
そして3日と掛からず到着した。
大道の待つ重磐外裏庵に。
しかしその間(かん)、善道にはズッと気に掛かっている事が二つあった。
その一つは、
それが何かは分からないが、間違いなく、今、兄大道の身に起こっている異変。
そして二つ目。
それは・・・人を斬った筈なのに、その痕跡が全く見られないどころか刃こぼれ一つない・・・
神剣・軍駆馬の事だった。
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つづく
「戦略編」 #299 『伝書』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #299 『伝書』の巻
これはそれより3日前。
大道の伝書が善道に届いたその時の事である。
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
『ヌッ!? これは伝書』
突然、目前に舞い落ちて来た紙を見て善道は思った。
直ぐにそれを拾い上げて目を通すと、それは大道からだった。
大道の伝書の符術による物だった。
それにはこう書かれてあった。
『請願の文
我、里を離れてより早六歳(はや・むとせ)。 今日唯今(こんにち・ただいま)千座の修法満行を迎へるなり。 如来加持力(にょらい・かじりき)に因るが故に我神君変化(わが・しんくん・へんげ)の誓願成就間近(せいがん・じょうじゅ・まぢか)なり。 よって冀(こいねがわ)くは我親愛なる実弟善道殿、忽(たちま)ちの内に我元参(わがもと・まい)られたく早漏 否 候。 居場所は重磐外裏(えばんげり)。 我等が小重裏虚(しょう・エリコ)成就せし所これなり。 取り急ぎ大道識』
と。
(注 : “請願” は本来目下の者から目上の者に対する言葉であるが、大道は既に出家し家督を善道に譲っていた。 よって一家の家長宛て故、敢えて請願の文字を使ったのである。・・・って誤魔化しては見たヶんどチョッとムリポ? かな?かな? ホンとは “請願” と “誓願” を掛けたかったのが本音でアリンス。 エッ、ヘ、ヘ、ヘ。 by コ・マ・ル)
これを読み善道は直感した。
兄・大道の身にただならぬ事が起こっていると。
善道はこの請願文の
『忽(たちま)ちの内に』
と
『我神君変化(わが・しんくん・へんげ)の誓願』
という部分に引っ掛かったのだ。
善道は直ちに旅支度を整えた。
事は一刻の猶予なし、そう感じたからだ。
善道は目的を告げず、ただ所要が出来たので暫らく里を離れるとのみ父・覚道、並びに主だった里人達に告げた。
そして速やかに旅立とうとした。
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
これはそれより3日前。
大道の伝書が善道に届いたその時の事である。
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
『ヌッ!? これは伝書』
突然、目前に舞い落ちて来た紙を見て善道は思った。
直ぐにそれを拾い上げて目を通すと、それは大道からだった。
大道の伝書の符術による物だった。
それにはこう書かれてあった。
『請願の文
我、里を離れてより早六歳(はや・むとせ)。 今日唯今(こんにち・ただいま)千座の修法満行を迎へるなり。 如来加持力(にょらい・かじりき)に因るが故に我神君変化(わが・しんくん・へんげ)の誓願成就間近(せいがん・じょうじゅ・まぢか)なり。 よって冀(こいねがわ)くは我親愛なる実弟善道殿、忽(たちま)ちの内に我元参(わがもと・まい)られたく早漏 否 候。 居場所は重磐外裏(えばんげり)。 我等が小重裏虚(しょう・エリコ)成就せし所これなり。 取り急ぎ大道識』
と。
(注 : “請願” は本来目下の者から目上の者に対する言葉であるが、大道は既に出家し家督を善道に譲っていた。 よって一家の家長宛て故、敢えて請願の文字を使ったのである。・・・って誤魔化しては見たヶんどチョッとムリポ? かな?かな? ホンとは “請願” と “誓願” を掛けたかったのが本音でアリンス。 エッ、ヘ、ヘ、ヘ。 by コ・マ・ル)
これを読み善道は直感した。
兄・大道の身にただならぬ事が起こっていると。
善道はこの請願文の
『忽(たちま)ちの内に』
と
『我神君変化(わが・しんくん・へんげ)の誓願』
という部分に引っ掛かったのだ。
善道は直ちに旅支度を整えた。
事は一刻の猶予なし、そう感じたからだ。
善道は目的を告げず、ただ所要が出来たので暫らく里を離れるとのみ父・覚道、並びに主だった里人達に告げた。
そして速やかに旅立とうとした。
だが・・・
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つづく
「戦略編」 #298 『大道の訓戒4』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #298 『大道の訓戒4』の巻
大道が続けた。
「・・・。 そして雪殿。 妖の姫御子・雪殿じゃ」
ここで大道の言葉が、再び切れた。
胸が詰まって言葉が出ないのだ。
善道は驚くと共に、如何(どう)対処して良い物か判断に迷った。
この始めて見る兄・大道の苦悶する姿。
それは善道にとって思いも掛けない事だった。
大道は何かを思い浮かべながら目を善道から逸らし、庵(いおり)の壁の一点を見つめていた。
しかし、
心は遠くを見ているようだった。
何かを思い出し、懐かしんでいるのは明らかだった。
暫らくその状態が続いた。
そして少し落ち着いたのだろう、大道が再び語り出した。
「美しいオナゴじゃった、雪殿は。 そしてそれ以上に心の清い人じゃった。 玄丞殿との戦いで傷つき川に落ち、死に掛けておったワシを自分の屋敷に運び込み手厚く看病してくれた。 それはまるで血肉を分けた親子・兄妹・夫婦がするような手厚い看病じゃった。 わしの命の恩人じゃ。 しかしそれだけではない。 雪殿はワシに好意を持ってくれた。 ワシを慈(いつく)しんでくれた。 そしてワシも雪殿に惚れた。 ワシも雪殿に恋慕したのじゃ、善道。 雪殿はワシに・・ワシに初めて・・生まれて初めて愛しいと思わせたオナゴじゃった。 その愛しいオナゴを、命の恩人である雪殿を、ワシは斬ったのじゃ。 ワシのこの手で斬ったのじゃ。 雪殿の首を刎ねたのじゃ。 軍駆馬での。 ソナタもいずれ抜く事になるであろうあの神剣・軍駆馬での。 ワシは雪殿を斬ったのじゃ」
「・・・」
善道は黙っていた。
だが、
善道は大道の話を聞いて黙っていた他に、黙っていた事がもう一つあった。
それは・・・
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つづく
大道が続けた。
「・・・。 そして雪殿。 妖の姫御子・雪殿じゃ」
ここで大道の言葉が、再び切れた。
胸が詰まって言葉が出ないのだ。
善道は驚くと共に、如何(どう)対処して良い物か判断に迷った。
この始めて見る兄・大道の苦悶する姿。
それは善道にとって思いも掛けない事だった。
大道は何かを思い浮かべながら目を善道から逸らし、庵(いおり)の壁の一点を見つめていた。
しかし、
心は遠くを見ているようだった。
何かを思い出し、懐かしんでいるのは明らかだった。
暫らくその状態が続いた。
そして少し落ち着いたのだろう、大道が再び語り出した。
「美しいオナゴじゃった、雪殿は。 そしてそれ以上に心の清い人じゃった。 玄丞殿との戦いで傷つき川に落ち、死に掛けておったワシを自分の屋敷に運び込み手厚く看病してくれた。 それはまるで血肉を分けた親子・兄妹・夫婦がするような手厚い看病じゃった。 わしの命の恩人じゃ。 しかしそれだけではない。 雪殿はワシに好意を持ってくれた。 ワシを慈(いつく)しんでくれた。 そしてワシも雪殿に惚れた。 ワシも雪殿に恋慕したのじゃ、善道。 雪殿はワシに・・ワシに初めて・・生まれて初めて愛しいと思わせたオナゴじゃった。 その愛しいオナゴを、命の恩人である雪殿を、ワシは斬ったのじゃ。 ワシのこの手で斬ったのじゃ。 雪殿の首を刎ねたのじゃ。 軍駆馬での。 ソナタもいずれ抜く事になるであろうあの神剣・軍駆馬での。 ワシは雪殿を斬ったのじゃ」
「・・・」
善道は黙っていた。
だが、
善道は大道の話を聞いて黙っていた他に、黙っていた事がもう一つあった。
それは・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #297 『大道の訓戒3』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #297 『大道の訓戒3』の巻
「これよりワシは即身仏の行に入る」
と。
「ヌッ!? 即身仏!?」
この大道が口にした思わぬ言葉に驚き、善導が大声を上げた。
静かに大道が繰り返した。
「そうじゃ。 即身仏じゃ」
意表をつかれ、善導は取り乱した。
「な、何を申されるか、兄ぢゃ。 即身仏など以っての外じゃ。 兄ぢゃにはまだやらねばならぬ事があるではないか。 女切刀は、女切刀の里は如何(どう)するおつもりじゃ。 里はまだまだこれからじゃ。 男手が足らぬ、男手が足らぬのじゃ、兄ぢゃ。 ワシ達だけではとてもムリじゃ。
つー、まー、りー、・・・
『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
じゃ。 兄ぢゃに手伝(てつど)うてもらわねば・・・」
「否。 その必要はない。 ソナタなら大丈夫じゃ。 ソナタがおれば里は必ず元の通りになる。 ソナタにはその力がある。 ソナタは頭領の器じゃ。 生まれついての頭領の器じゃ。 ワシには分る、ワシにはそれが良ぅ分る。 故に案ずるな。 ワシがおらずともソナタなら必ず立派にやってのけるに相違ない。 そこで本題じゃ。 ソナタを呼んだのは外でもない。 善道。 頼みがある」
「・・・」
善道は黙っていた。
「ワシの最後をソナタに見届けて欲しい」
「・・・」
まだ、善道は黙ったままだ。
「弟にではなく、ワシと同じ炎の使い手に。 兄としてではなく、大炎城結界を使ぅた者として。 ワシはこれをソナタに頼みたい」
「兄ぢゃ!!」
既に善道の眼はウルウルだ。
「ワシは供養がしたい。 供養がしたいのじゃ、善道。 あの日、あの時、ワシに付き従(したご)ぅた品井山 死孟(しないやま・しもう)他二十八名の者達の。 彼等は、死孟達は、このワシが殺してしもぅたようなものじゃ。 ワシに付き従ぅたばかりに彼等は死んだのじゃ。 だから彼等の供養がしたい。 それに加えてワシがこの手に掛けて殺したあの妖 玄丞(あやし・げんじょう)殿、並びに妖の衆。 そして・・・」
ここで大道は言葉に詰まった。
その大道の表情を見て善道は、
『ハッ!?』
っとした。
兄・大道が涙を浮かべていたからだった。
かつて如何(いか)なる困難が有ろうとも、決して怯(ひる)む事なく立ち向かって行った屈強かつ豪胆な大道がだ。
あの不死身の妖 玄丞をさえ打ち倒した、達人・破瑠魔大道が人前で涙を見せたのである。
そぅ・・・
人前で涙を・・・
初めて・・・
・
・
・
・
・
つづく
「これよりワシは即身仏の行に入る」
と。
「ヌッ!? 即身仏!?」
この大道が口にした思わぬ言葉に驚き、善導が大声を上げた。
静かに大道が繰り返した。
「そうじゃ。 即身仏じゃ」
意表をつかれ、善導は取り乱した。
「な、何を申されるか、兄ぢゃ。 即身仏など以っての外じゃ。 兄ぢゃにはまだやらねばならぬ事があるではないか。 女切刀は、女切刀の里は如何(どう)するおつもりじゃ。 里はまだまだこれからじゃ。 男手が足らぬ、男手が足らぬのじゃ、兄ぢゃ。 ワシ達だけではとてもムリじゃ。
つー、まー、りー、・・・
『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
じゃ。 兄ぢゃに手伝(てつど)うてもらわねば・・・」
「否。 その必要はない。 ソナタなら大丈夫じゃ。 ソナタがおれば里は必ず元の通りになる。 ソナタにはその力がある。 ソナタは頭領の器じゃ。 生まれついての頭領の器じゃ。 ワシには分る、ワシにはそれが良ぅ分る。 故に案ずるな。 ワシがおらずともソナタなら必ず立派にやってのけるに相違ない。 そこで本題じゃ。 ソナタを呼んだのは外でもない。 善道。 頼みがある」
「・・・」
善道は黙っていた。
「ワシの最後をソナタに見届けて欲しい」
「・・・」
まだ、善道は黙ったままだ。
「弟にではなく、ワシと同じ炎の使い手に。 兄としてではなく、大炎城結界を使ぅた者として。 ワシはこれをソナタに頼みたい」
「兄ぢゃ!!」
既に善道の眼はウルウルだ。
「ワシは供養がしたい。 供養がしたいのじゃ、善道。 あの日、あの時、ワシに付き従(したご)ぅた品井山 死孟(しないやま・しもう)他二十八名の者達の。 彼等は、死孟達は、このワシが殺してしもぅたようなものじゃ。 ワシに付き従ぅたばかりに彼等は死んだのじゃ。 だから彼等の供養がしたい。 それに加えてワシがこの手に掛けて殺したあの妖 玄丞(あやし・げんじょう)殿、並びに妖の衆。 そして・・・」
ここで大道は言葉に詰まった。
その大道の表情を見て善道は、
『ハッ!?』
っとした。
兄・大道が涙を浮かべていたからだった。
かつて如何(いか)なる困難が有ろうとも、決して怯(ひる)む事なく立ち向かって行った屈強かつ豪胆な大道がだ。
あの不死身の妖 玄丞をさえ打ち倒した、達人・破瑠魔大道が人前で涙を見せたのである。
そぅ・・・
人前で涙を・・・
初めて・・・
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #296 『大道の訓戒2』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #296 『大道の訓戒2』の巻
「大炎城結界は使(つこ)ぅてはならぬ。 決して使ぅてはならぬ。 もしもいつか、いつの日にかソナタが窮地に陥るような事が起こり、最早、大炎城結界を使わねばこれまでという時が来たとしても、堪(こら)えるのじゃ。 もう一踏ん張り堪えるのじゃ。 それでもダメな時じゃ、大炎城結界を使ぅのは。
つー、まー、りー、・・・
『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
な時じゃ、大炎城結界を使ぅのは。 じゃが、それには・・大炎城結界を使ぅには・・覚悟が必要じゃ」
ここで再び、大道は間を取った。
それから徐(おもむろ)に言った。
「善道よ」
善道が返事をした。
「はい」
それを受け、大道が頷き、続けた。
「ウム。 ソナタは純粋じゃ。 心根が優しい。 そのソナタが例へ如何(いか)なる理由があろうと大炎城結界を使い、例へそれがどのような相手であろうと、その人(にん)を焼き殺すような事になった暁には、終生ソナタはそれを悔(く)ゆる事になる。 これは間違いのない事じゃ」
「・・・」
善導は黙って聞いていた。
そんな善導に大道が呼び掛けた。
「善道よ」
「はい」
「大炎城結界は封印せねばならぬ技じゃ。 決して人(ひと)が使ぅてはならぬ技じゃ。 ワシはそれを痛いほど思ひ知った。 だからこれをソナタに言ひ残して置く」
「言ひ残して置く?」
「あぁ」
「言ひ残して置くとは如何(どう)いふ意味じゃ? 兄ぢゃ?」
顔に不可解だという表情を浮かべ、善導が聞き返した。
だが、大道は何も言おうとせず、黙っていた。
ただ、善導の眼(め)を見つめて。
その眼を通して、あたかも善導の心の中を覗き込むかのように。
その大道の姿を見て、善導も黙った。
そして大道の眼を見つめ返した。
その眼を通して、まるで大道の思いを察(さっ)しようとでもするかのように。
「・・・」
「・・・」
二人は黙ったまま、暫(しばら)く見つめ合った。
その場に生まれた何とも言えぬ緊張感の所為(せい)だろうか?
二人とも息を止めている。
そしてこの後、大道の口にした思い掛けない言葉に、善導は飛び上がらんばかりに驚く事になる。
そぅ・・・
その時、大道は・・・
こう言ったのである。
・
・
・
・
・
つづく
「大炎城結界は使(つこ)ぅてはならぬ。 決して使ぅてはならぬ。 もしもいつか、いつの日にかソナタが窮地に陥るような事が起こり、最早、大炎城結界を使わねばこれまでという時が来たとしても、堪(こら)えるのじゃ。 もう一踏ん張り堪えるのじゃ。 それでもダメな時じゃ、大炎城結界を使ぅのは。
つー、まー、りー、・・・
『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
な時じゃ、大炎城結界を使ぅのは。 じゃが、それには・・大炎城結界を使ぅには・・覚悟が必要じゃ」
ここで再び、大道は間を取った。
それから徐(おもむろ)に言った。
「善道よ」
善道が返事をした。
「はい」
それを受け、大道が頷き、続けた。
「ウム。 ソナタは純粋じゃ。 心根が優しい。 そのソナタが例へ如何(いか)なる理由があろうと大炎城結界を使い、例へそれがどのような相手であろうと、その人(にん)を焼き殺すような事になった暁には、終生ソナタはそれを悔(く)ゆる事になる。 これは間違いのない事じゃ」
「・・・」
善導は黙って聞いていた。
そんな善導に大道が呼び掛けた。
「善道よ」
「はい」
「大炎城結界は封印せねばならぬ技じゃ。 決して人(ひと)が使ぅてはならぬ技じゃ。 ワシはそれを痛いほど思ひ知った。 だからこれをソナタに言ひ残して置く」
「言ひ残して置く?」
「あぁ」
「言ひ残して置くとは如何(どう)いふ意味じゃ? 兄ぢゃ?」
顔に不可解だという表情を浮かべ、善導が聞き返した。
だが、大道は何も言おうとせず、黙っていた。
ただ、善導の眼(め)を見つめて。
その眼を通して、あたかも善導の心の中を覗き込むかのように。
その大道の姿を見て、善導も黙った。
そして大道の眼を見つめ返した。
その眼を通して、まるで大道の思いを察(さっ)しようとでもするかのように。
「・・・」
「・・・」
二人は黙ったまま、暫(しばら)く見つめ合った。
その場に生まれた何とも言えぬ緊張感の所為(せい)だろうか?
二人とも息を止めている。
そしてこの後、大道の口にした思い掛けない言葉に、善導は飛び上がらんばかりに驚く事になる。
そぅ・・・
その時、大道は・・・
こう言ったのである。
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #295 『大道の訓戒1』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #295 『大道の訓戒1』の巻
「善道よ、良く聞くのじゃ」
大道が語り出した。
相手は勿論、千座の修法終了直後、即身仏の行に入る直前、伝書の符術にて女切刀の里から呼び寄せていた弟・善道。
ここは破瑠魔大道終焉(しゅうえん)の地・重磐外裏の尾根に構えられた重磐外裏庵(えばんげり・あん)。
「ワシはこの手で多くの人の命を奪った。 その殆(ほと)んどが 否 全てが何らの罪をも犯しておらぬ者達じゃ。 その彼等をワシは焼き殺した。 生きたまま焼き殺したのじゃ。 この手で、ワシのこの手での。 大炎城結界(だいえんじょう・けっかい)での」
「しかし兄ぢゃ。 それは天命ゆえ・・・」
「否。 例へ天命であろうとなかろうと、生きたまま焼き殺した事に違いはない。 ワシは・・ワシの耳には・・ワシの耳の奥には、今でも彼等の断末魔の叫び声が残っておる。 今この瞬間も、彼等の叫び声が耳の中で木霊(こだま)しておる。 これはワシが死ぬまで決して消ゆる事はないであろう。 あの逃げ場を失のぅた人々の絶望と悲しみと苦しみの叫び声は・・・。 地獄じゃった。 あれは、あれこそは正に地獄じゃった。 阿鼻叫喚地獄(あびきょうかん・じごく)じゃ。 そしてその地獄は、ワシが、ワシのこの手が引き起こしたのじゃ。 この三年という年月(としつき)、ワシは心安らかに過した日は一日(いちじつ)として 否 一刻としてなかった。 恐らく未来永劫ないじゃろう。 ワシが生き続ける限りこれは消えぬのじゃ」
「・・・」
善道は黙って聞いていた。
その善道に大道が静かに語り掛けた。
「善道」
と。
「はい」
ジッと大道の眼(め)を見つめ、善道が返事をした。
「ソナタには才(ざえ)がある。 ソナタはそれに気付いておるかも知れぬ、おらぬかも知れぬ。 じゃが間違いのぅソナタには才がある。 ワシには分る。 ワシにはそれが良ぅ分る。 しかもその才はワシ同様、火じゃ。 ソナタはワシ同様火の技を使(つこ)ぅ炎の使い手じゃ。 いずれワシに勝るとも劣らぬ使い手になるじゃろう。 否、恐らくワシ以上じゃ。 だから今、言ぅて置く」
大道はここまで言って言葉を切った。
しかし、その眼(め)は、逸(そ)らす事なく善道の眼を見据えている。
「・・・」
「・・・」
暫し、二人は黙っていた。
一呼吸置いて大道が続けた。
「善道よ」
「はい」
再度、善道が返事をした。
その返事を確認してから大道が再び語り始めた。
「大炎城結界は使(つこ)ぅてはならぬ。 決して使ぅてはならぬ・・・」
と。
・
・
・
・
・
つづく
「善道よ、良く聞くのじゃ」
大道が語り出した。
相手は勿論、千座の修法終了直後、即身仏の行に入る直前、伝書の符術にて女切刀の里から呼び寄せていた弟・善道。
ここは破瑠魔大道終焉(しゅうえん)の地・重磐外裏の尾根に構えられた重磐外裏庵(えばんげり・あん)。
「ワシはこの手で多くの人の命を奪った。 その殆(ほと)んどが 否 全てが何らの罪をも犯しておらぬ者達じゃ。 その彼等をワシは焼き殺した。 生きたまま焼き殺したのじゃ。 この手で、ワシのこの手での。 大炎城結界(だいえんじょう・けっかい)での」
「しかし兄ぢゃ。 それは天命ゆえ・・・」
「否。 例へ天命であろうとなかろうと、生きたまま焼き殺した事に違いはない。 ワシは・・ワシの耳には・・ワシの耳の奥には、今でも彼等の断末魔の叫び声が残っておる。 今この瞬間も、彼等の叫び声が耳の中で木霊(こだま)しておる。 これはワシが死ぬまで決して消ゆる事はないであろう。 あの逃げ場を失のぅた人々の絶望と悲しみと苦しみの叫び声は・・・。 地獄じゃった。 あれは、あれこそは正に地獄じゃった。 阿鼻叫喚地獄(あびきょうかん・じごく)じゃ。 そしてその地獄は、ワシが、ワシのこの手が引き起こしたのじゃ。 この三年という年月(としつき)、ワシは心安らかに過した日は一日(いちじつ)として 否 一刻としてなかった。 恐らく未来永劫ないじゃろう。 ワシが生き続ける限りこれは消えぬのじゃ」
「・・・」
善道は黙って聞いていた。
その善道に大道が静かに語り掛けた。
「善道」
と。
「はい」
ジッと大道の眼(め)を見つめ、善道が返事をした。
「ソナタには才(ざえ)がある。 ソナタはそれに気付いておるかも知れぬ、おらぬかも知れぬ。 じゃが間違いのぅソナタには才がある。 ワシには分る。 ワシにはそれが良ぅ分る。 しかもその才はワシ同様、火じゃ。 ソナタはワシ同様火の技を使(つこ)ぅ炎の使い手じゃ。 いずれワシに勝るとも劣らぬ使い手になるじゃろう。 否、恐らくワシ以上じゃ。 だから今、言ぅて置く」
大道はここまで言って言葉を切った。
しかし、その眼(め)は、逸(そ)らす事なく善道の眼を見据えている。
「・・・」
「・・・」
暫し、二人は黙っていた。
一呼吸置いて大道が続けた。
「善道よ」
「はい」
再度、善道が返事をした。
その返事を確認してから大道が再び語り始めた。
「大炎城結界は使(つこ)ぅてはならぬ。 決して使ぅてはならぬ・・・」
と。
・
・
・
・
・
つづく
「戦略編」 #294 『ホンのチョッと』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #294 『ホンのチョッと』の巻
それはホンのチョッとだった。
そぅ、それはホンのチョッとだったのだ。
だが、そのホンのチョッとが勝負の明暗を分ける事になろうとは・・・
その時内道は、それに全く気付いてはいなかったのである。
「哀れなヤツ」
内道がポツリと言った。
雪女が冷静さを取り戻した直後だ。
それは先ほど取り乱した雪女の姿に対してではなかった。
内道は知っていたのだ。
妖の姫御子・雪の悲しい境遇を。
大道が善道に・・善道だけに・・切々と語っていた雪の境遇を。
大道が即身仏の行に入る直前、弟・善道に切々と語って聞かせていた大道と雪の出会いから最後まで。
内道はそれらを全て知っていたのだ。
友人に解読してもらった善道の手記を通して。
その善道の手記の中にはこう書かれてあった。
「善道よ、良く聞くのじゃ・・・」
から始まって・・・
こぅ・・・
・
・
・
・
・
つづく
それはホンのチョッとだった。
そぅ、それはホンのチョッとだったのだ。
だが、そのホンのチョッとが勝負の明暗を分ける事になろうとは・・・
その時内道は、それに全く気付いてはいなかったのである。
「哀れなヤツ」
内道がポツリと言った。
雪女が冷静さを取り戻した直後だ。
それは先ほど取り乱した雪女の姿に対してではなかった。
内道は知っていたのだ。
妖の姫御子・雪の悲しい境遇を。
大道が善道に・・善道だけに・・切々と語っていた雪の境遇を。
大道が即身仏の行に入る直前、弟・善道に切々と語って聞かせていた大道と雪の出会いから最後まで。
内道はそれらを全て知っていたのだ。
友人に解読してもらった善道の手記を通して。
その善道の手記の中にはこう書かれてあった。
「善道よ、良く聞くのじゃ・・・」
から始まって・・・
こぅ・・・
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・
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・
・
つづく
「戦略編」 #293 『天才』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #293 『天才』の巻
「一つ聞く?」
内道が言った。
「何じゃ?」
雪女が聞き返した。
「お前が妖の姫御子・雪か?」
「フン。 そのような時もあったかも知れぬ。 じゃが、忘れた。 今更どうでも良い事じゃ」
「やはり大道はお前を・・・」
内道がそこまで言った時、言いたい事を察して雪女が内道の言葉を遮った。
「あぁ、そうじゃ。 その通りじゃ。 大道が斬ったのは女神像、魔王明神ご神体の方じゃ。 お陰でワラワはこうして甦れた」
「妖怪としてな、妖怪・雪女としてな」
「フン。 好きに申せ」
「ならば言おう妖の姫御子・雪 否 妖怪・雪女!! お前の魂胆は分かっている」
「ン!? 分かっておるとな?」
「そうだ!! 分かっている。 お前の魂胆は、我等への復讐。 違うか?」
「ホゥ!? だから何じゃ!?」
「だから探す手間を省いてやった」
この言葉を聞きそれまで内道を見下すように話していた雪女の表情が一変した。
それまで含み笑いさえ浮かべていた雪女の表情が急変したのだ。
「だから探す手間を省いてやったじゃと? それで? それで何が言いたい? ン? 手間を省いた代わりに助けて下さいませか? 大道様のような真似はなさらないで下さいませか? 無抵抗の者を殺さないで下さいませか? ・・・」
みるみる雪女の顔に怒りが込み上げて来た。
語気も荒くなった。
「どうかお願いでござりまする。 無抵抗の我等を焼き殺さないで下さいませか? 大道は・・・。 ソチの、ソチのあの大道は、ワラワの一族を。 何もせなんだワラワの一族を。 無抵抗のワラワの一族を。 年寄り、オナゴ、病人、子供、果ては赤子に至るまで。 その全てを焼き殺したのじゃ。 それも生きたままじゃ。 生きたまま無抵抗の者達を皆、焼き殺したのじゃ。 分かるか? 分かるかソチに? ン!? ソチに分かるか、ワラワの怒りが? このワラワの怒りがソチに分かるか? ワラワが・・ワラワが助けたばかりに・・このワラワが助けたばかりに、その助けた相手に我が一族は皆殺しにされたのじゃ。 生きたまま焼き殺されたのじゃ。 生きたまま皆、焼き殺されたのじゃ。 大道に・・あの大道に・・あの破瑠魔大道に・・・。 許さぬ!! 許さぬぞ、決(けっ)して!! 大道は・・あの大道縁(たいどう・ゆかり)の者は・・あの大道縁の者は全て、全てこの手で。 ワラワのこの手でこの世から消してくれようぞ。 地獄を見せてくれようぞ。 ワラワのこの手でな。 ワラワのこの手でソチ達大道縁の者全てに、塗炭(とたん)の苦しみを味わあせてくれようぞ。 アーハハハハハハハハ、アーハハハハハハハハ、・・・」
再び雪女が高笑いを始めた。
しかし目は笑ってはいない。
これは先程と同じだ。
だが、今回の笑いは先程とは違い、高揚した気持ちのやり場をそれに求めての笑いだった。
笑う事によって、気分の高まりにより不安定になったエネルギーを安定させようとの狙いがあったのだ。
そしてその狙い通り、笑い終えると同時に雪女は冷静さを取り戻していた。
あの氷のように冷たい冷静さを。
そぅ、この気分転換の早さ。
こんな所にも又・・・
雪女の天才が・・・
見て取れた。
・
・
・
・
・
つづく
「一つ聞く?」
内道が言った。
「何じゃ?」
雪女が聞き返した。
「お前が妖の姫御子・雪か?」
「フン。 そのような時もあったかも知れぬ。 じゃが、忘れた。 今更どうでも良い事じゃ」
「やはり大道はお前を・・・」
内道がそこまで言った時、言いたい事を察して雪女が内道の言葉を遮った。
「あぁ、そうじゃ。 その通りじゃ。 大道が斬ったのは女神像、魔王明神ご神体の方じゃ。 お陰でワラワはこうして甦れた」
「妖怪としてな、妖怪・雪女としてな」
「フン。 好きに申せ」
「ならば言おう妖の姫御子・雪 否 妖怪・雪女!! お前の魂胆は分かっている」
「ン!? 分かっておるとな?」
「そうだ!! 分かっている。 お前の魂胆は、我等への復讐。 違うか?」
「ホゥ!? だから何じゃ!?」
「だから探す手間を省いてやった」
この言葉を聞きそれまで内道を見下すように話していた雪女の表情が一変した。
それまで含み笑いさえ浮かべていた雪女の表情が急変したのだ。
「だから探す手間を省いてやったじゃと? それで? それで何が言いたい? ン? 手間を省いた代わりに助けて下さいませか? 大道様のような真似はなさらないで下さいませか? 無抵抗の者を殺さないで下さいませか? ・・・」
みるみる雪女の顔に怒りが込み上げて来た。
語気も荒くなった。
「どうかお願いでござりまする。 無抵抗の我等を焼き殺さないで下さいませか? 大道は・・・。 ソチの、ソチのあの大道は、ワラワの一族を。 何もせなんだワラワの一族を。 無抵抗のワラワの一族を。 年寄り、オナゴ、病人、子供、果ては赤子に至るまで。 その全てを焼き殺したのじゃ。 それも生きたままじゃ。 生きたまま無抵抗の者達を皆、焼き殺したのじゃ。 分かるか? 分かるかソチに? ン!? ソチに分かるか、ワラワの怒りが? このワラワの怒りがソチに分かるか? ワラワが・・ワラワが助けたばかりに・・このワラワが助けたばかりに、その助けた相手に我が一族は皆殺しにされたのじゃ。 生きたまま焼き殺されたのじゃ。 生きたまま皆、焼き殺されたのじゃ。 大道に・・あの大道に・・あの破瑠魔大道に・・・。 許さぬ!! 許さぬぞ、決(けっ)して!! 大道は・・あの大道縁(たいどう・ゆかり)の者は・・あの大道縁の者は全て、全てこの手で。 ワラワのこの手でこの世から消してくれようぞ。 地獄を見せてくれようぞ。 ワラワのこの手でな。 ワラワのこの手でソチ達大道縁の者全てに、塗炭(とたん)の苦しみを味わあせてくれようぞ。 アーハハハハハハハハ、アーハハハハハハハハ、・・・」
再び雪女が高笑いを始めた。
しかし目は笑ってはいない。
これは先程と同じだ。
だが、今回の笑いは先程とは違い、高揚した気持ちのやり場をそれに求めての笑いだった。
笑う事によって、気分の高まりにより不安定になったエネルギーを安定させようとの狙いがあったのだ。
そしてその狙い通り、笑い終えると同時に雪女は冷静さを取り戻していた。
あの氷のように冷たい冷静さを。
そぅ、この気分転換の早さ。
こんな所にも又・・・
雪女の天才が・・・
見て取れた。
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つづく
「戦略編」 #292 『一人』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #292 『一人』の巻
(スゥーーー。 スタン)
音もなく静かに雪女が地上に降り立った。
(ジィー)
視線を一点に向けたまま逸らさない。
視線の先は勿論、内道。
内道も又、目線を一ヶ所に固定している。
その対象は当然、雪女。
二人は、 ン!? 一人と一匹は、 ン!? 一人と一頭、 ン!? 一人と一個、一本、一丁、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
一間、一尾、一升、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
一妖、二妖、・・・ ン!? 一怪、二怪、・・・ ン!? 一妖怪、二妖怪、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
ウ~~~ム、妖怪の数え方が分からん!!!!!
と、いう訳で、
“一人”
という事でオネゲェ致しやずやの香酢。 やずややずや。。。
二人は、黙って相対峙した。
だが、二人ともただ黙っているのではなかった。
互いに相手の力量を計っているのだ。
暫しの沈黙が続いた。
その沈黙を雪女が破った。
「ソチか? このワラワに対し、先ほどから妙な真似をしておるのは?」
「・・・」
内道は黙っていた。
再び、雪女が言った。
「ソチには見覚えがある。 前にも一度、詰(つ)まらん術を使(つこ)ぅた愚か者じゃ」
「・・・」
やはり内道は黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「ソチは大道縁の者か?」 (あの~、分かってくれてるとは思うヶど、 “大道縁” は 『たいどう・ゆかり』 と読みまする。 『おおみち・ゆかり』 とは読まないでおじゃる。 そこんとこ、ヨ・ロ・ピ・コ)
ここで初めて内道が口を開いた。
「そうだと言ったら?」
「フッ」
思わず雪女が含み笑いを浮かべた。
その笑いは先ほどの高笑いとは違っていた。
声だけでなく、
嬉しそうに “眼(め)” も笑っていたのだ。
そして・・・
然(さ)も楽しげに雪女はこう言った。
「殺す!!」
と。
キッパリ・・・
一言・・・
内道の眼を見据えて・・・
・
・
・
・
・
つづく
(スゥーーー。 スタン)
音もなく静かに雪女が地上に降り立った。
(ジィー)
視線を一点に向けたまま逸らさない。
視線の先は勿論、内道。
内道も又、目線を一ヶ所に固定している。
その対象は当然、雪女。
二人は、 ン!? 一人と一匹は、 ン!? 一人と一頭、 ン!? 一人と一個、一本、一丁、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
一間、一尾、一升、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
一妖、二妖、・・・ ン!? 一怪、二怪、・・・ ン!? 一妖怪、二妖怪、・・・
ントー、
ントー、
ントー、
ウ~~~ム、妖怪の数え方が分からん!!!!!
と、いう訳で、
“一人”
という事でオネゲェ致しやずやの香酢。 やずややずや。。。
二人は、黙って相対峙した。
だが、二人ともただ黙っているのではなかった。
互いに相手の力量を計っているのだ。
暫しの沈黙が続いた。
その沈黙を雪女が破った。
「ソチか? このワラワに対し、先ほどから妙な真似をしておるのは?」
「・・・」
内道は黙っていた。
再び、雪女が言った。
「ソチには見覚えがある。 前にも一度、詰(つ)まらん術を使(つこ)ぅた愚か者じゃ」
「・・・」
やはり内道は黙っていた。
それを無視して雪女が続けた。
「ソチは大道縁の者か?」 (あの~、分かってくれてるとは思うヶど、 “大道縁” は 『たいどう・ゆかり』 と読みまする。 『おおみち・ゆかり』 とは読まないでおじゃる。 そこんとこ、ヨ・ロ・ピ・コ)
ここで初めて内道が口を開いた。
「そうだと言ったら?」
「フッ」
思わず雪女が含み笑いを浮かべた。
その笑いは先ほどの高笑いとは違っていた。
声だけでなく、
嬉しそうに “眼(め)” も笑っていたのだ。
そして・・・
然(さ)も楽しげに雪女はこう言った。
「殺す!!」
と。
キッパリ・・・
一言・・・
内道の眼を見据えて・・・
・
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・
つづく
「戦略編」 #291 『ジックリと』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #291 『ジックリと』の巻
(ゴクッ!!)
(ゴクッ!!)
(ゴクッ!!)
・・・
勝負を見守る13人の戦士達が生唾を飲み込んだ。
「アハハハハハハハハハ・・・」
宙から、
宙の一点から、
吹雪が吹き込んで来る宙の一点から、
ユックリと旋回しながら、
高笑いをしながら、
雪女が舞い降りて来たからだ。
「アハハハハハハハハハ・・・」
高笑いを止める事なく、雪女が内道の頭上10メートルの高さまで降りて来た。
「アハハハハハハハハハ・・・」
まだ高笑いを止めずに旋回している。(何回? 千回。 ナンチャッテ!? ??? ・・・。 フゥ~。 お後が宜しいようで)
それを見て内道は思った。
『これが・・あの・・あの伝説の大技・飛行薬叉の術か?』
と。
「アハハハハハハハハハ・・・」
終に、内道の頭上5メートルまで降りて来た。
相変わらず高笑いをしながら、その高さでユックリと旋回している。
「アハハハハハハハハハ・・・」
まだ笑っている。
しかし、その眼(め)は笑ってはいない。
ジッと内道の眼を見つめている。
雪女は内道を観察しているのだ。
ジックリと。
内道も、頭上5メートル付近を旋回しながら視線を飛ばして来る雪女の眼を見つめたまま逸らさない。
ユックリと頭を回して雪女の動きに合わせている。
再び内道は思った。
『これが妖の姫御子か? なる程、美形だ。 大道が心を奪われたのも頷ける。 チチもデカイし(これは作者が思いました)』
そぅ・・・
その時内道も又、雪女を観察していたのである。
モッコリと 否 ジックリと・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ゴクッ!!)
(ゴクッ!!)
(ゴクッ!!)
・・・
勝負を見守る13人の戦士達が生唾を飲み込んだ。
「アハハハハハハハハハ・・・」
宙から、
宙の一点から、
吹雪が吹き込んで来る宙の一点から、
ユックリと旋回しながら、
高笑いをしながら、
雪女が舞い降りて来たからだ。
「アハハハハハハハハハ・・・」
高笑いを止める事なく、雪女が内道の頭上10メートルの高さまで降りて来た。
「アハハハハハハハハハ・・・」
まだ高笑いを止めずに旋回している。(何回? 千回。 ナンチャッテ!? ??? ・・・。 フゥ~。 お後が宜しいようで)
それを見て内道は思った。
『これが・・あの・・あの伝説の大技・飛行薬叉の術か?』
と。
「アハハハハハハハハハ・・・」
終に、内道の頭上5メートルまで降りて来た。
相変わらず高笑いをしながら、その高さでユックリと旋回している。
「アハハハハハハハハハ・・・」
まだ笑っている。
しかし、その眼(め)は笑ってはいない。
ジッと内道の眼を見つめている。
雪女は内道を観察しているのだ。
ジックリと。
内道も、頭上5メートル付近を旋回しながら視線を飛ばして来る雪女の眼を見つめたまま逸らさない。
ユックリと頭を回して雪女の動きに合わせている。
再び内道は思った。
『これが妖の姫御子か? なる程、美形だ。 大道が心を奪われたのも頷ける。 チチもデカイし(これは作者が思いました)』
そぅ・・・
その時内道も又、雪女を観察していたのである。
モッコリと 否 ジックリと・・・
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つづく
「戦略編」 #290 『地輪』の巻
2017-04-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #290 『地輪』の巻
青羽織(あお・ばおり)に、膝下から足首までを絞った青の伊賀袴(いがばかま)。
胸に青紐で襷掛(たすき・が)け。
腰に青い腰紐。
額に青い鉢巻。
全身、青一色。
今の内道の装束がこれだ。
ナゼか?
それは、内道が五大力(地輪・水輪・火輪・風輪・空輪)の内 “地輪” の技を最も得意としていたからだった。
つまり内道は “大地の戦士” だったのだ。
従って、地輪顕色(ちりん・けんしょく)の青色の羽織袴(はおり・はかま)に青鉢巻。
そして青い腰紐。
これが大地の戦士・破瑠魔内道の戦闘服だ。
この戦闘服に身を包み、雪女を迎え撃つ破瑠魔内道。
果たして内道の・・・
戦法や如何(いか)に?
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つづく
青羽織(あお・ばおり)に、膝下から足首までを絞った青の伊賀袴(いがばかま)。
胸に青紐で襷掛(たすき・が)け。
腰に青い腰紐。
額に青い鉢巻。
全身、青一色。
今の内道の装束がこれだ。
ナゼか?
それは、内道が五大力(地輪・水輪・火輪・風輪・空輪)の内 “地輪” の技を最も得意としていたからだった。
つまり内道は “大地の戦士” だったのだ。
従って、地輪顕色(ちりん・けんしょく)の青色の羽織袴(はおり・はかま)に青鉢巻。
そして青い腰紐。
これが大地の戦士・破瑠魔内道の戦闘服だ。
この戦闘服に身を包み、雪女を迎え撃つ破瑠魔内道。
果たして内道の・・・
戦法や如何(いか)に?
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つづく