「呪符術死闘編」 #67 『白虎の符』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #67 『白虎の符』の巻
(ヒラヒラヒラ・・・)
呪符が舞い落ちた。
一枚の呪符が。
白虎の符だ。
それと同時に、
(スゥ~)
白虎が消えた。
死頭火の白虎が。
雪女の右手を銜(くわ)えて放さなかったあの白虎が。
(プッ、シューーー!!)
死頭火の腹部から血飛沫(ちしぶき)が上がった。
腹部を真横に一刀(いっとう)。
符術が敗れたダメージだ。
「グハッ!?」
死頭火は苦痛に顔を歪めた。
一方、雪女は・・・
その時既に大きく息を吸い終わっていた。
氷針息吹を吐き出すのに充分な量の息を。
氷針息吹を吐き出すのに充分な量の息を。
そして息を止めた。
そのままユックリと狙いを定めた。
苦痛と恐怖に引き攣った顔で自分を見つめている死頭火のその顔に。
苦痛と恐怖に引き攣った顔で自分を見つめている死頭火のその顔に。
左腕は相変わらず軍駆馬が食い込んだままだが、自由になった方の右手をユックリと降ろしながら、
徐(おもむろ)にその死頭火に向かい勝ち誇ったように、
徐(おもむろ)にその死頭火に向かい勝ち誇ったように、
(ニヤッ)
笑った。
余裕のヨッチャンこいたのだ。
だが、
そのこいたヨッチャンが・・・
余計だった。
・
・
・
・
・
つづく
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「呪符術死闘編」 #66 『氷針・・・』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #66 『氷針・・・』の巻
(サッ!!)
死頭火が握っていた軍駆馬を離した。
(ゴロンゴロンゴロン・・・)
回転して雪女の髪を避けた。
(ブヮーーーン!! バサッ!!)
雪女の髪が降り積もった雪面を打った。
間一髪、死頭火はその攻撃から逃れた。
だが、
回転から止まって顔を上げた瞬間、
回転から止まって顔を上げた瞬間、
『ハッ!?』
死頭火の顔が青ざめた。
目の前にいる雪女が、大きく息を吸っていたからだ。
目の前にいる雪女が、大きく息を吸っていたからだ。
氷針息吹のために。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #65 『逆立つ髪』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #65 『逆立つ髪』の巻
(バババババ、バーーー!!)
再び雪女の長髪が逆立った。
そのまま勢い良く顎を上げ頭を大きく後ろに倒した。
髪を後ろへ大きく振りかぶったのだ。
髪を後ろへ大きく振りかぶったのだ。
(バシッ!!)
豊かな黒々とした長髪の先が雪女の背後の地面に積もった雪を打った。
次の瞬間、
雪女は架空の目の前の人間に頭突きを食らわすように頭を振り下ろした。
雪女は架空の目の前の人間に頭突きを食らわすように頭を振り下ろした。
(ブヮーーーン!!)
恐ろしい唸り音を発して死頭火目掛け雪女の髪が回転して来た。
狙いは死頭火の背中。
危うし死頭火!?
さぁ、どうする!?
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #64 『雪女の左腕』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #64 『雪女の左腕』の巻
「キェーーーィ!!」
鋭く甲高(かんだか)い気合一閃、雪女の頭上高くジャンプして来た死頭火が雪女目掛け空中から軍駆馬を振り下ろした。
(ブヮーーーン!!)
激しい唸りを上げながら軍駆馬が雪女を襲う。
しかし、
白虎に右腕を銜えられ雪女は動けない。
白虎に右腕を銜えられ雪女は動けない。
(ブヮーーーン!!)
その動けない雪女の頭上目掛けて軍駆馬が来る。
終に、雪女真っ二つか!?
だが、
軍駆馬が雪女を真っ二つに断ち切ろうとしたその瞬間。
雪女が驚くべき行動に出た。
軍駆馬が雪女を真っ二つに断ち切ろうとしたその瞬間。
雪女が驚くべき行動に出た。
(スゥ~~~)
自由に動く左手を頭上に上げ、振り下ろされた軍駆馬を左上腕で受け止め、頭をガードしたのだ。
しかし、唯ガードしたのではない。
雪女はその左腕の肩から指先までを氷に変えていたのだ。
(ブヮーーーン!!)
軍駆馬が雪女の腕を捕らえた。
死頭火の腕を持ってすれば、本来ならそのまま一気に腕ごと雪女を真っ二つに出来たであろう。
だが、
今の死頭火は既に満身創痍。
残念ながら普段の力を発揮するまでには至らなかった。
今の死頭火は既に満身創痍。
残念ながら普段の力を発揮するまでには至らなかった。
(ガキ!!)
軍駆馬は雪女の氷の左上腕に食い込んだ所で止まってしまった。
それは雪女の左上腕を叩き割り、体を脳天から真っ二つにするまでには至らなかった。
(ズサッ!!)
軍駆馬の柄を握ったまま死頭火が着地した。
雪女の右腕に食い付いている白虎の脇にだ。
しかし、
その軍駆馬の刀身は雪女の氷に変わった左上腕に食い込んでいる。
その軍駆馬の刀身は雪女の氷に変わった左上腕に食い込んでいる。
雪女は雪女で左腕はその状態。
右腕は死頭火の白虎に銜(くわ)えられたまま。
右腕は死頭火の白虎に銜(くわ)えられたまま。
お互い身動きが取れない。
雪女と死頭火。
死頭火と雪女。
死頭火と雪女。
二人は睨(にら)み合った。
互いの息が掛かる距離で。
互いの息が掛かる距離で。
そして・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #63 『背後から』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #63 『背後から』の巻
突然、
(シュッ!!)
何かが飛んで来た。
雪女に向かって何かが。
白虎の背後から雪女の正面に向かって・・何かが・・確かに・・飛んで来た。
死頭火だ!?
それは死頭火だった。
それは白虎の影に隠れていた死頭火だった。
それは白虎の影に隠れていた死頭火だった。
死頭火は雪女に気付かれないよう白虎の背後に身を隠し、白虎の動きに合わせながら雪女に近付いていた。
そして、
白虎が雪女の腕を銜(くわ)えた直後、軍駆馬を大上段に振りかぶり、白虎の背後から一気に飛び出し、そのまま雪女に斬り掛かったのだ。
白虎が雪女の腕を銜(くわ)えた直後、軍駆馬を大上段に振りかぶり、白虎の背後から一気に飛び出し、そのまま雪女に斬り掛かったのだ。
この時死頭火は、それまで着ていた羽織袴を脱いでいたため、その豊かな胸を固定するために胸に巻かれた純白の晒(さら)しと頭に巻かれた黒い鉢巻以外、何も身に着けてはいなかった。
クッ!?
こ、これはエロい!?
エ、Hだ~~~!?
瑞々(みずみず)しく色白で美形の死頭火。
いまだ白髪(しらが)一つない豊かな黒髪は、時代劇に良く登場するヤンチャな姫が若武者に化ける時に結うような髪型。
その上に黒い鉢巻。
胸には真っ白な晒し。
それ以外で身に付けている物といったら両手に持つ軍駆馬のみ。
いまだ白髪(しらが)一つない豊かな黒髪は、時代劇に良く登場するヤンチャな姫が若武者に化ける時に結うような髪型。
その上に黒い鉢巻。
胸には真っ白な晒し。
それ以外で身に付けている物といったら両手に持つ軍駆馬のみ。
こ、これは刺激的だ!?
全裸じゃないからなおさらだ!?
例えば、
全裸に手袋、あるいはスカーフ。
といった、
スッポンポンより
全裸にチョッと。
全裸にチョッと。
クッ!?
ククククク・・・
コ、コレ!?
コレですよコレ。
コレが最高!!
又、
腋毛はキチンと処理されていた。
だが・・・
だが・・・
だが・・・
エヘヘヘヘ。
残る・・・
イヒヒヒヒ。
残るは・・・
ウフフフフ。
・・・・・・ア・ソ・コ・の・ケ!?
ケケケケケ!!
『スズメの子 そこのケそこのケ お馬が通る』
ジャンジャ、ジャーーーン!!
み、見たい!!
こ、これは見たい!!
これは ツウ 好みだ!!
アタシ好きよ。 こういふの・・・
イャーーー、いいっすネェ。 ホンマ~。
イャーーー、いいな~。 このシチュエイション。
マァ!! なんて美味しい。。。
雪女は身構えようとした。
しかし、身動きが取れなかった。
白虎に腕を銜(くわ)えられたままだからだ。
そしてその白虎消滅までには、まだ僅かに時間が必要だった。
しかし、身動きが取れなかった。
白虎に腕を銜(くわ)えられたままだからだ。
そしてその白虎消滅までには、まだ僅かに時間が必要だった。
『ぬ、抜けぬ!?』
雪女がもがいた。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #62 『始末した・・・』の巻
2017-03-31
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #62 『始末した・・・』の巻
(ズボッ!!)
雪女は、
残忍に吼(ほ)え猛(たけ)りながら大口を開けて襲い掛かって来た白虎を、逆にその口の中に右手を突っ込んで始末した。
・・・・・・筈だった。
だが、
その瞬間、
雪女がその右手を突っ込んだ正にその瞬間、
雪女がその右手を突っ込んだ正にその瞬間、
(ガブッ!!)
白虎が口を閉じたのだ。
残念ながら、
その牙で雪女の腕を食い千切るまでには至らなかったが。
その牙で雪女の腕を食い千切るまでには至らなかったが。
だが、
それで充分だった。
充分だったのだ、それで。
それで充分だった。
充分だったのだ、それで。
雪女が白虎の口から腕を引き抜く事が出来ない状態になったのだから。
もっとも、
それはホンの一瞬に過ぎなかったのだが。
白虎が消滅する迄の・・・ホンの一瞬に。
それはホンの一瞬に過ぎなかったのだが。
白虎が消滅する迄の・・・ホンの一瞬に。
しかし、
それでもそれで充分だったのだ。
それでもそれで充分だったのだ。
死頭火には・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #61 『呆気(あっけ)なく』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #61 『呆気(あっけ)なく』の巻
勝負は呆気(あっけ)なく付いた。
「ガォーーー!!」
一声激しく吼え猛(ほ・え・たけ)り、白虎が雪女に飛び掛った。
しかし、
その時雪女は、死頭火に止めを刺すため既に右手五指を氷柱(つらら)に変えてあった。
そして雪女はその氷柱に変えた五指を、
まるでハリウッド映画 『プレデター』 がそのリストに装着している “鉤爪(かぎづめ)” のように、
あるいは、漫画 『筋肉マン』 に登場したキャラクターの一人、ウォーズマンの “ベアークロー” のように、
恐ろしい勢いで襲い掛かって来る白虎に突き刺した。
「ガォーーー!!」
凄まじい咆哮を上げ雪女を噛み殺さんばかりに大きく口を開け襲い掛かって来た白虎のその大口の中に、
鉤爪のように、
ベアークローのように、
五指を氷柱に変えた右手を突っ込み白虎の口から後頭部に掛けて刺し貫いたのだ・・・白虎を倒すために。
だが、
それが・・・
失敗だった。
・
・
・
・
・
つづく
勝負は呆気(あっけ)なく付いた。
「ガォーーー!!」
一声激しく吼え猛(ほ・え・たけ)り、白虎が雪女に飛び掛った。
しかし、
その時雪女は、死頭火に止めを刺すため既に右手五指を氷柱(つらら)に変えてあった。
そして雪女はその氷柱に変えた五指を、
まるでハリウッド映画 『プレデター』 がそのリストに装着している “鉤爪(かぎづめ)” のように、
あるいは、漫画 『筋肉マン』 に登場したキャラクターの一人、ウォーズマンの “ベアークロー” のように、
恐ろしい勢いで襲い掛かって来る白虎に突き刺した。
「ガォーーー!!」
凄まじい咆哮を上げ雪女を噛み殺さんばかりに大きく口を開け襲い掛かって来た白虎のその大口の中に、
鉤爪のように、
ベアークローのように、
五指を氷柱に変えた右手を突っ込み白虎の口から後頭部に掛けて刺し貫いたのだ・・・白虎を倒すために。
だが、
それが・・・
失敗だった。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #60 『獰猛(どうもう)な咆哮(ほうこう)』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #60 『獰猛(どうもう)な咆哮(ほうこう)』の巻
「ガォーーー!!」
一声、鋭く獰猛(どうもう)な咆哮(ほうこう)を上げ、その雪の塊が雪女に飛び掛った。
「クッ!?」
一声唸って、雪女は自分に襲い掛かってくるその塊を見上げた。
そして、
『ハッ!?』
息を呑んだ。
それは雪の塊ではなかった。
全身真っ白な毛で覆(おお)われた大きな虎だったのだ。
それは “四霊獣・白虎(びゃっこ)”。
ン!? 四霊獣・白虎!?
式神か!?
そぅ・・・
それは死頭火の放った “式神・白虎の符” だった。
死頭火はまだ死んではいなかった。
降りしきる雪の中、
素早く着ていた黒い戦闘服を脱ぎ、
“変わり身の術”
を使っていたのだ。
雪女は余りにも大きくジャンプし過ぎたため、
又、神楽殿の黒っぽい土台と自分が降らせている雪が返って邪魔となり、死頭火の変わり身の術を見破る事が出来なかった。
だが実は、
これには “前” があった。
刻々と変わる戦況下。
この状況で雪女に大きく右にジャンプさせる。
否、
ジャンプさせるように仕向ける・・・鈴の音を使って。
これも又、瞬時に利(き)かせた死頭火の機転だった。
この戦いの前から既に死頭火は計算していたのだ。
黒色の戦闘服姿の死頭火にとって、神楽殿の黒っぽい土台は当然無視できない存在である事を。
それは、今回使ったような変わり身の術を使う可能性が考えられたからだ。
『攻撃には地の利を最大限生かす』
これは兵法の鉄則。
死頭火は、その兵法の鉄則通りに雪女に攻撃を仕掛けていた。
これまでの雪女への意表をついた連続攻撃・・・それも背後から。
そして、その攻撃が引き起こすであろう雪女の異常なまでの警戒心。
更に降り積もった雪、その上に降り注いでいる粉雪。
加えて神楽殿の黒っぽい土台、といった地の利。
死頭火はそれら全てを計算に入れた上で雪女を攻撃していたのだった。
これこそが “達人” 破瑠魔死頭火の底力だ。
『女切刀呪禁道深奥秘儀 “式神・その参”』
攻撃開始。
・
・
・
・
・
つづく
「ガォーーー!!」
一声、鋭く獰猛(どうもう)な咆哮(ほうこう)を上げ、その雪の塊が雪女に飛び掛った。
「クッ!?」
一声唸って、雪女は自分に襲い掛かってくるその塊を見上げた。
そして、
『ハッ!?』
息を呑んだ。
それは雪の塊ではなかった。
全身真っ白な毛で覆(おお)われた大きな虎だったのだ。
それは “四霊獣・白虎(びゃっこ)”。
ン!? 四霊獣・白虎!?
式神か!?
そぅ・・・
それは死頭火の放った “式神・白虎の符” だった。
死頭火はまだ死んではいなかった。
降りしきる雪の中、
素早く着ていた黒い戦闘服を脱ぎ、
“変わり身の術”
を使っていたのだ。
雪女は余りにも大きくジャンプし過ぎたため、
又、神楽殿の黒っぽい土台と自分が降らせている雪が返って邪魔となり、死頭火の変わり身の術を見破る事が出来なかった。
だが実は、
これには “前” があった。
刻々と変わる戦況下。
この状況で雪女に大きく右にジャンプさせる。
否、
ジャンプさせるように仕向ける・・・鈴の音を使って。
これも又、瞬時に利(き)かせた死頭火の機転だった。
この戦いの前から既に死頭火は計算していたのだ。
黒色の戦闘服姿の死頭火にとって、神楽殿の黒っぽい土台は当然無視できない存在である事を。
それは、今回使ったような変わり身の術を使う可能性が考えられたからだ。
『攻撃には地の利を最大限生かす』
これは兵法の鉄則。
死頭火は、その兵法の鉄則通りに雪女に攻撃を仕掛けていた。
これまでの雪女への意表をついた連続攻撃・・・それも背後から。
そして、その攻撃が引き起こすであろう雪女の異常なまでの警戒心。
更に降り積もった雪、その上に降り注いでいる粉雪。
加えて神楽殿の黒っぽい土台、といった地の利。
死頭火はそれら全てを計算に入れた上で雪女を攻撃していたのだった。
これこそが “達人” 破瑠魔死頭火の底力だ。
『女切刀呪禁道深奥秘儀 “式神・その参”』
攻撃開始。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #59 『雪の塊』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #59 『雪の塊』の巻
(ガサガサガサ・・・)
突然、
一面、積もり積もった雪の中、
大きな雪の塊(かたまり)が動いた。
それは徐々に雪女に近づいたかと思うと、雪女目掛け猛然と襲い掛かって来た。
そぅ・・・
粉雪降り注ぐ白銀の世界の中、どこからともなく現れた真っ白で巨大な塊が・・・
雪女に・・・
猛然と・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ガサガサガサ・・・)
突然、
一面、積もり積もった雪の中、
大きな雪の塊(かたまり)が動いた。
それは徐々に雪女に近づいたかと思うと、雪女目掛け猛然と襲い掛かって来た。
そぅ・・・
粉雪降り注ぐ白銀の世界の中、どこからともなく現れた真っ白で巨大な塊が・・・
雪女に・・・
猛然と・・・
・
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つづく
「呪符術死闘編」 #58 『又しても』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #58 『又しても』の巻
『ヌッ!?』
雪女は驚いた。
と同時に、
(シュッ!!)
反射的に元いた所に大きく飛び退(の)いた。
死頭火が倒れ込んだ所には確かに死頭火の黒い羽織袴はあった。
だが、
死頭火の死体がなかったからだ。
雪女は焦った。
そして急いでその辺一帯を見回した。
死頭火の黒い羽織袴のある辺りから今自分のいる周り、およそ死頭火の隠れられそうな所全てを。
しかし、
死頭火の姿はどこにもなかった。
『クッ!? 又しても!?』
雪女は思った。
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
『ヌッ!?』
雪女は驚いた。
と同時に、
(シュッ!!)
反射的に元いた所に大きく飛び退(の)いた。
死頭火が倒れ込んだ所には確かに死頭火の黒い羽織袴はあった。
だが、
死頭火の死体がなかったからだ。
雪女は焦った。
そして急いでその辺一帯を見回した。
死頭火の黒い羽織袴のある辺りから今自分のいる周り、およそ死頭火の隠れられそうな所全てを。
しかし、
死頭火の姿はどこにもなかった。
『クッ!? 又しても!?』
雪女は思った。
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #57 『結界せよ!!』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #57 『結界せよ!!』の巻
(サササッ!!)
中道が13人の戦士達に素早く目配せした。
『結界せよ!!』
の合図だ。
皆、既に気を取り直していた。
これは流石である。
未(いま)だ軍駆馬を抜くまでには至っていないとはいえ、日頃の並外れた修練の賜物、死頭火の敗北を見るや、即、気分転換し結界の態勢に入った。
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
(サササッ!!)
中道が13人の戦士達に素早く目配せした。
『結界せよ!!』
の合図だ。
皆、既に気を取り直していた。
これは流石である。
未(いま)だ軍駆馬を抜くまでには至っていないとはいえ、日頃の並外れた修練の賜物、死頭火の敗北を見るや、即、気分転換し結界の態勢に入った。
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #56 『命中』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #56 『命中』の巻
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
命中!?
全弾命中だ!?
雪女の五指氷柱が間違いなく死頭火の体を捉えた。
それも5本全部。
(ドサッ!!)
死頭火がその場に倒れ込んだ。
悲鳴を上げるでもなく、言葉を発するでもなく、無言で・・・。
激しく降り積もる雪の中に。
雪女の五指氷柱全てを全身に受け、死頭火が倒れ込んだのだ・・その場に・・激しく降り積もる雪の中に。
(シーン)
死頭火に動きはない。
全くない。
終に終に終に、
女切刀呪禁道最強にして雪女と戦える唯(ただ)一人の戦士、破瑠魔死頭火 堕(お)つ・・・・・・か?
(シンシンシンシンシン・・・)
最早、猛吹雪は終わり静かな降雪に変わっていた。
中道が左腕で隣に立つ外道の肩を抱き寄せた。
外道は言葉なく両目を見開き、動かぬ母、死頭火の姿を見つめている。
中道達も又同様だった。
皆、一様に言葉がなかった。
ただ、心の中で
『死頭火・・・』
『死頭火様・・・』
『死頭火様・・・』
『死頭火様・・・』
・・・
死頭火の敗北を口惜(くや)しむのみだった。
(ズサ、ズサ、ズサ、・・・)
既に復元している右手五指を再び氷柱に変え、
雪女が静かに死頭火に近寄った。
ユックリと油断なく、そして少しずつ。
死頭火の死を確認するために。
死頭火に止(とど)めを刺すために。
・
・
・
・
・
つづく
(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)
命中!?
全弾命中だ!?
雪女の五指氷柱が間違いなく死頭火の体を捉えた。
それも5本全部。
(ドサッ!!)
死頭火がその場に倒れ込んだ。
悲鳴を上げるでもなく、言葉を発するでもなく、無言で・・・。
激しく降り積もる雪の中に。
雪女の五指氷柱全てを全身に受け、死頭火が倒れ込んだのだ・・その場に・・激しく降り積もる雪の中に。
(シーン)
死頭火に動きはない。
全くない。
終に終に終に、
女切刀呪禁道最強にして雪女と戦える唯(ただ)一人の戦士、破瑠魔死頭火 堕(お)つ・・・・・・か?
(シンシンシンシンシン・・・)
最早、猛吹雪は終わり静かな降雪に変わっていた。
中道が左腕で隣に立つ外道の肩を抱き寄せた。
外道は言葉なく両目を見開き、動かぬ母、死頭火の姿を見つめている。
中道達も又同様だった。
皆、一様に言葉がなかった。
ただ、心の中で
『死頭火・・・』
『死頭火様・・・』
『死頭火様・・・』
『死頭火様・・・』
・・・
死頭火の敗北を口惜(くや)しむのみだった。
(ズサ、ズサ、ズサ、・・・)
既に復元している右手五指を再び氷柱に変え、
雪女が静かに死頭火に近寄った。
ユックリと油断なく、そして少しずつ。
死頭火の死を確認するために。
死頭火に止(とど)めを刺すために。
・
・
・
・
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つづく
「呪符術死闘編」 #55 『金剛鈴』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #55 『金剛鈴』の巻
若いとはいえ死頭火は闘技の天才。
しかも、
五大力・風輪の使い手。(『#33 『五大力』の巻』参照)
つまり、
金剛薬叉菩薩法の達人。
ゆえに、
金剛鈴の操り人(こんごうれい・の・あやつ・り・びと)。
この、
(チリン、チリン、チリン、・・・)
というどこからともなく聞こえて来る鈴の音こそ、死頭火の念法によって生み出された音だった。
雪女の凄まじい攻撃を受け死頭火は今、全身に激痛が走り動けない状態だ。
よってこの鈴の音は、
雪女に疑心暗鬼を生じさせ、一時的に注意を逸らすために咄嗟(とっさ)に死頭火が仕掛けた技だった。
死頭火が動かなかったのは単に苦しかったからだけではなかったのだ。
念を集中していたためでもあった。
雪女は辺りを見回した。
だが、そこに人気(ひとけ)は全く感じられなかった。
唯、
その雪女がもたらす粉雪が降りしきる中、ジッと動こうとしない死頭火の黒い羽織袴だけが見えていた。
(チリン、チリン、チリン、・・・)
相変わらず鈴の音だけは聞こえている。
もう一度雪女は辺りを見回し、注意深く観察した。
やはりそこに人気は全くなかった。
だが、
人気がないのに鈴の音が。
雪女は思った。
『クッ!? 全く油断ならぬヤツ』
そして大声で、ジッと動かず横を向いたまま雪女を見ようともしない死頭火に向かって叫んだ。
「今度は何を企(たくら)んでおる?」
「・・・」
しかし死頭火は答えない。
それどころかピクリとも動かない。
その時、
(ピタッ!!)
鈴の音が止んだ。
『ン!?』
その位置から怪訝そうに油断なく、ジィーっと雪女は死頭火の様子を窺(うかが)った。
相変わらず死頭火はジッとしたまま動かない。
雪女はもう一度、辺りを見回した。
やはり人気はない。
無論、殺気も。
さっきと同じで。(ナンチッテ・・・ケケケケケ)
それを確認してから、死頭火に向かって再び叫んだ。
「全く!? ソチは何をしてくるか分からぬオナゴよ。 だが、それもこれで仕舞いじゃ」
(スゥー)
雪女は右手を左肩まで振り上げた。
5本の指は全て氷柱に変わっている。
それを真っ白な白銀の世界の真っ黒な戦闘服姿の死頭火目掛け、勢い良く振り下ろした。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
それらは不動の死頭火に向かって一直線に飛んだ。
そして・・・
・
・
・
・
・
つづく
若いとはいえ死頭火は闘技の天才。
しかも、
五大力・風輪の使い手。(『#33 『五大力』の巻』参照)
つまり、
金剛薬叉菩薩法の達人。
ゆえに、
金剛鈴の操り人(こんごうれい・の・あやつ・り・びと)。
この、
(チリン、チリン、チリン、・・・)
というどこからともなく聞こえて来る鈴の音こそ、死頭火の念法によって生み出された音だった。
雪女の凄まじい攻撃を受け死頭火は今、全身に激痛が走り動けない状態だ。
よってこの鈴の音は、
雪女に疑心暗鬼を生じさせ、一時的に注意を逸らすために咄嗟(とっさ)に死頭火が仕掛けた技だった。
死頭火が動かなかったのは単に苦しかったからだけではなかったのだ。
念を集中していたためでもあった。
雪女は辺りを見回した。
だが、そこに人気(ひとけ)は全く感じられなかった。
唯、
その雪女がもたらす粉雪が降りしきる中、ジッと動こうとしない死頭火の黒い羽織袴だけが見えていた。
(チリン、チリン、チリン、・・・)
相変わらず鈴の音だけは聞こえている。
もう一度雪女は辺りを見回し、注意深く観察した。
やはりそこに人気は全くなかった。
だが、
人気がないのに鈴の音が。
雪女は思った。
『クッ!? 全く油断ならぬヤツ』
そして大声で、ジッと動かず横を向いたまま雪女を見ようともしない死頭火に向かって叫んだ。
「今度は何を企(たくら)んでおる?」
「・・・」
しかし死頭火は答えない。
それどころかピクリとも動かない。
その時、
(ピタッ!!)
鈴の音が止んだ。
『ン!?』
その位置から怪訝そうに油断なく、ジィーっと雪女は死頭火の様子を窺(うかが)った。
相変わらず死頭火はジッとしたまま動かない。
雪女はもう一度、辺りを見回した。
やはり人気はない。
無論、殺気も。
さっきと同じで。(ナンチッテ・・・ケケケケケ)
それを確認してから、死頭火に向かって再び叫んだ。
「全く!? ソチは何をしてくるか分からぬオナゴよ。 だが、それもこれで仕舞いじゃ」
(スゥー)
雪女は右手を左肩まで振り上げた。
5本の指は全て氷柱に変わっている。
それを真っ白な白銀の世界の真っ黒な戦闘服姿の死頭火目掛け、勢い良く振り下ろした。
(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)
それらは不動の死頭火に向かって一直線に飛んだ。
そして・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #54 『鈴』の巻
2017-03-30
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #54 『鈴』の巻
(チリン、チリン、チリン、・・・)
ン!?
鈴の音?
突然、
雪女の背後から鈴の音が聞こえ始めた。
五指氷柱で死頭火に止めを刺そうと右手を振り上げた、丁度その時。
『ヌッ!?』
驚くと同時に反射的に雪女は、
(シュッ!!)
右に、
神楽殿の反対側に、
大きくジャンプしてその場から離れた。
別に殺気や人気(ひとけ)を感じた訳ではなかった。
が、
今戦っている相手は、
“油断したら何をして来るか分からない”
という事は既に理解していた。
だから、
死頭火に止めを刺す直前、鈴の音が聞こえたと同時に反射的にジャンプしたのだった。
それも大ジャンプを。
大きく右に10メートル以上。
しかし、
後ろや上や左ではなくナゼ右か・・・?
ナゼか?
それは、
鈴の音は後ろから聞こえた。
雪女はこれまで何度も、死頭火の背後からの攻撃を受けて来た。
故に、
後ろは一番危険なのだ。
なら、上は?
一度、青竜による空中戦を仕掛けられている。
再び繰り返される恐れがある。
左はどうか?
そこには神楽殿が有る。
そして死頭火が、
今戦っている “油断したら何をして来るか分からない・・・ヤツ” が、
その神楽殿にどんな仕掛けを用意しているか分からない。
結局右しか残ってはいなかった。
だから雪女は本能的に右に飛んだのだ。
それも大きく・・・10メートル以上。
だが、
これは死頭火の姿を横から見る事を意味している。
そしてその先には神楽殿があり、その神楽殿の土台は粘土で出来ている。
それも黒っぽい色をした粘土で。
つまり雪女から見た時、
“神楽殿の黒っぽい土台をバックに、黒装束に身を固めた死頭火がいる”
という事になる。
そして、
いくら雪が降っても、殆(ほとん)ど直角に近い角度を持つ土台に積もる事はない。
土台は相変わらず黒っぽいままなのだ。
その神楽殿の黒っぽい土台を背後にした黒色の戦闘服を着た死頭火を見る位置に、
雪女は今・・・
いるのだ。
・
・
・
・
・
つづく
(チリン、チリン、チリン、・・・)
ン!?
鈴の音?
突然、
雪女の背後から鈴の音が聞こえ始めた。
五指氷柱で死頭火に止めを刺そうと右手を振り上げた、丁度その時。
『ヌッ!?』
驚くと同時に反射的に雪女は、
(シュッ!!)
右に、
神楽殿の反対側に、
大きくジャンプしてその場から離れた。
別に殺気や人気(ひとけ)を感じた訳ではなかった。
が、
今戦っている相手は、
“油断したら何をして来るか分からない”
という事は既に理解していた。
だから、
死頭火に止めを刺す直前、鈴の音が聞こえたと同時に反射的にジャンプしたのだった。
それも大ジャンプを。
大きく右に10メートル以上。
しかし、
後ろや上や左ではなくナゼ右か・・・?
ナゼか?
それは、
鈴の音は後ろから聞こえた。
雪女はこれまで何度も、死頭火の背後からの攻撃を受けて来た。
故に、
後ろは一番危険なのだ。
なら、上は?
一度、青竜による空中戦を仕掛けられている。
再び繰り返される恐れがある。
左はどうか?
そこには神楽殿が有る。
そして死頭火が、
今戦っている “油断したら何をして来るか分からない・・・ヤツ” が、
その神楽殿にどんな仕掛けを用意しているか分からない。
結局右しか残ってはいなかった。
だから雪女は本能的に右に飛んだのだ。
それも大きく・・・10メートル以上。
だが、
これは死頭火の姿を横から見る事を意味している。
そしてその先には神楽殿があり、その神楽殿の土台は粘土で出来ている。
それも黒っぽい色をした粘土で。
つまり雪女から見た時、
“神楽殿の黒っぽい土台をバックに、黒装束に身を固めた死頭火がいる”
という事になる。
そして、
いくら雪が降っても、殆(ほとん)ど直角に近い角度を持つ土台に積もる事はない。
土台は相変わらず黒っぽいままなのだ。
その神楽殿の黒っぽい土台を背後にした黒色の戦闘服を着た死頭火を見る位置に、
雪女は今・・・
いるのだ。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #53 『敗北の二文字』の巻
2017-03-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #53 『敗北の二文字』の巻
「ハァハァハァ・・・」
苦しいのか、死頭火?
死頭火の呼吸が荒い。
そこへ、
(ズサ、ズサ、ズサ、・・・)
雪を踏みしめながら雪女が近づいて来た。
まるでダメージを与えた獲物に近付くプレデターのように。
一歩一歩、ユックリとユックリと・・・
しかし、確実に確実に・・・
「キッ!?」
死頭火が顔を上げて近付いて来る雪女を見上げ、見すえた。
右膝を地に着けたまま。
軍駆馬を杖代わりにしたまま。
(ズサ、ズサ、ズサ。 ピタ!!)
雪女が立ち止まった。
死頭火との距離約3メートル。
あえて若干距離を取っている。
死頭火がまだ軍駆馬を手離してはいなかったからだ。
それに自分を見つめる死頭火の眼(め)にもまだ、敗北の二文字が読み取れなかったからでもある。
『下手に近付くと、このオナゴには次がある』
雪女はそう直感していた。
よって、迂闊(うかつ)に近付く事を恐れたのだ。
雪女はジッと死頭火の眼を見つめた。
怒りの形相は既に収まっていた。
元通り氷のように冷たい表情だ。
その冷ややかな顔で雪女が言った。
「大したオナゴじゃ。 ワラワにここまで迫るとは・・・。 流石(さすが)はあの内道の妻だけの事はある。 だが、座興(ざきょう)もここまでじゃ」
(サッ!!)
雪女が右手を左肩まで振り上げた、五指を氷柱に変えて。
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
「ハァハァハァ・・・」
苦しいのか、死頭火?
死頭火の呼吸が荒い。
そこへ、
(ズサ、ズサ、ズサ、・・・)
雪を踏みしめながら雪女が近づいて来た。
まるでダメージを与えた獲物に近付くプレデターのように。
一歩一歩、ユックリとユックリと・・・
しかし、確実に確実に・・・
「キッ!?」
死頭火が顔を上げて近付いて来る雪女を見上げ、見すえた。
右膝を地に着けたまま。
軍駆馬を杖代わりにしたまま。
(ズサ、ズサ、ズサ。 ピタ!!)
雪女が立ち止まった。
死頭火との距離約3メートル。
あえて若干距離を取っている。
死頭火がまだ軍駆馬を手離してはいなかったからだ。
それに自分を見つめる死頭火の眼(め)にもまだ、敗北の二文字が読み取れなかったからでもある。
『下手に近付くと、このオナゴには次がある』
雪女はそう直感していた。
よって、迂闊(うかつ)に近付く事を恐れたのだ。
雪女はジッと死頭火の眼を見つめた。
怒りの形相は既に収まっていた。
元通り氷のように冷たい表情だ。
その冷ややかな顔で雪女が言った。
「大したオナゴじゃ。 ワラワにここまで迫るとは・・・。 流石(さすが)はあの内道の妻だけの事はある。 だが、座興(ざきょう)もここまでじゃ」
(サッ!!)
雪女が右手を左肩まで振り上げた、五指を氷柱に変えて。
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #52 『間一髪』の巻
2017-03-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #52 『間一髪』の巻
(ドコッ!!)
死頭火の左わき腹に豊かな雪女の長髪が、まるでバットで叩くようにヒットした。
雪女の黒髪の方が間一髪早かったのだ。
「グハッ!?」
死頭火が吹っ飛んだ。
だが、
そこは無比の “くノ一” 破瑠魔死頭火。
(ゴロンゴロンゴロン・・・)
強烈に振り下ろされた雪女の黒髪が体に当たった瞬間、
大きく右に飛び、打たれた衝撃を和らげると同時に何度か回転して雪女と距離を取っていた。
『アァァァ~~~!?』
それまで言葉を出さずに手に汗握って死頭火を応援していた中道達全員が、落胆の表情を浮かべた。
無理もない。
一瞬・・後一瞬・・後ホンの一瞬・・死頭火が速ければ勝負あったのだから。
しかし死頭火は・・・
死頭火は首をうな垂れ、
左手で打たれた左わき腹を抑え、
立ち上がらずに右膝を地に着けジッとしている。
大地に突き刺した軍駆馬を杖代わりにし、
右手でその柄を握ったまま。
どうした死頭火!?
その姿は!?
肋骨が折れたのか?
それとも何か隠し球でもあるのか?
さぁ、死頭火よ・・・
次はどうする!?
・
・
・
・
・
つづく
(ドコッ!!)
死頭火の左わき腹に豊かな雪女の長髪が、まるでバットで叩くようにヒットした。
雪女の黒髪の方が間一髪早かったのだ。
「グハッ!?」
死頭火が吹っ飛んだ。
だが、
そこは無比の “くノ一” 破瑠魔死頭火。
(ゴロンゴロンゴロン・・・)
強烈に振り下ろされた雪女の黒髪が体に当たった瞬間、
大きく右に飛び、打たれた衝撃を和らげると同時に何度か回転して雪女と距離を取っていた。
『アァァァ~~~!?』
それまで言葉を出さずに手に汗握って死頭火を応援していた中道達全員が、落胆の表情を浮かべた。
無理もない。
一瞬・・後一瞬・・後ホンの一瞬・・死頭火が速ければ勝負あったのだから。
しかし死頭火は・・・
死頭火は首をうな垂れ、
左手で打たれた左わき腹を抑え、
立ち上がらずに右膝を地に着けジッとしている。
大地に突き刺した軍駆馬を杖代わりにし、
右手でその柄を握ったまま。
どうした死頭火!?
その姿は!?
肋骨が折れたのか?
それとも何か隠し球でもあるのか?
さぁ、死頭火よ・・・
次はどうする!?
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つづく
「呪符術死闘編」 #51 『怒髪』の巻
2017-03-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #51 『怒髪』の巻
(バババババ、バーーー!!)
降りしきる雪の中、
雪女の長く豊かな黒髪がイキナリいきり立った 否 逆立った。
正に怒髪天を突くといった状況だった。
雪女が怒り狂っている。
目は釣りあがり、口からは牙。
大忿怒(だいふんぬ)の形相だ。
しかし、
既に雪女の背中には軍駆馬が、
死頭火が手にした軍駆馬が、
殆(ほと)んど触れるか触れないかの位置まで来ている。
後僅(あと・わず)か、
残り後僅かだ。
だが、
(ブーーーン!!)
雪女が信じられない速さで頭を回した。
髪の毛を振り下ろすためにだ。
その長くて豊かな黒髪が死頭火のわき腹目掛け、
(ブヮーーーーーン!!)
凄まじい勢いで唸りを立てて回転して来た。
軍駆馬が雪女を貫くのに後ほんの数センチ 否 数ミリという所で。
どっちが速いか?
軍駆馬か黒髪か?
黒髪か軍駆馬か?
果たして・・・
・
・
・
・
・
つづく
(バババババ、バーーー!!)
降りしきる雪の中、
雪女の長く豊かな黒髪がイキナリいきり立った 否 逆立った。
正に怒髪天を突くといった状況だった。
雪女が怒り狂っている。
目は釣りあがり、口からは牙。
大忿怒(だいふんぬ)の形相だ。
しかし、
既に雪女の背中には軍駆馬が、
死頭火が手にした軍駆馬が、
殆(ほと)んど触れるか触れないかの位置まで来ている。
後僅(あと・わず)か、
残り後僅かだ。
だが、
(ブーーーン!!)
雪女が信じられない速さで頭を回した。
髪の毛を振り下ろすためにだ。
その長くて豊かな黒髪が死頭火のわき腹目掛け、
(ブヮーーーーーン!!)
凄まじい勢いで唸りを立てて回転して来た。
軍駆馬が雪女を貫くのに後ほんの数センチ 否 数ミリという所で。
どっちが速いか?
軍駆馬か黒髪か?
黒髪か軍駆馬か?
果たして・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #50 『勝負の分かれ目』の巻
2017-03-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #50 『勝負の分かれ目』の巻
(パッ、シューーー!!)
死頭火の胸から血飛沫(ちしぶき)が上がった。
あたかも鋭い刃物で切られたかのように。
それは・・・・・・・・・・青竜の符が破られたダメージだ。
(バババッ!!)
飛び散った死頭火の血が降り積もった雪の上に降り注いだ。
しかしそれだけではなかった。
それは雪女の体にも掛かってしまった。
(ピトッ!!)
・・・頬に一滴。
雪女の頬にも一滴掛かってしまったのだ。
『ヌッ!?』
雪女が振り返った。
だが時既に遅し!?
死頭火がその距離後2歩まで迫っていた。
しかし死頭火も苦しい。
呼吸を止めている上に、
背中のみならず胸にもダメージ。
『クッ!?』
死頭火は唸った。
その影響が足に来た。
そのため、僅(わず)か。
ほんの僅かだがスピードが落ちた。
そぅ、ほんの僅か・・・
だけだったのだが。
・
・
・
・
・
つづく
(パッ、シューーー!!)
死頭火の胸から血飛沫(ちしぶき)が上がった。
あたかも鋭い刃物で切られたかのように。
それは・・・・・・・・・・青竜の符が破られたダメージだ。
(バババッ!!)
飛び散った死頭火の血が降り積もった雪の上に降り注いだ。
しかしそれだけではなかった。
それは雪女の体にも掛かってしまった。
(ピトッ!!)
・・・頬に一滴。
雪女の頬にも一滴掛かってしまったのだ。
『ヌッ!?』
雪女が振り返った。
だが時既に遅し!?
死頭火がその距離後2歩まで迫っていた。
しかし死頭火も苦しい。
呼吸を止めている上に、
背中のみならず胸にもダメージ。
『クッ!?』
死頭火は唸った。
その影響が足に来た。
そのため、僅(わず)か。
ほんの僅かだがスピードが落ちた。
そぅ、ほんの僅か・・・
だけだったのだが。
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つづく
「呪符術死闘編」 #49 『勝った!?』の巻
2017-03-29
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #49 『勝った!?』の巻
青竜の全身が・・・
(パリパリパリパリパリ・・・)
氷と化した。
(ピキピキピキピキピキ・・・)
ヒビが入った。
(ビシビシビシッ!! ビシーーー!!)
粉々に砕け散った。
死頭火の青竜が。
式神・青竜が。
式神と言えども所詮は紙。
ただの紙切れ一枚。
それを死頭火の恐るべき呪力を持って実体化したに過ぎない。
しかし、
相手は幼女 妖女(ようじょ)・・・妖女・雪女。
その圧倒的パワーの前には紙屑同然。
ほんの数秒しか持たなかった。
だが、
それで充分だった。
雪女を空中から地上に落とし、
ほんの僅(わず)かでも注意を逸(そ)らす事が出来れば、
死頭火にはそれで充分だった。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
降りかかる粉雪の中、雪女は既に目前。
最早、雪女の背中は死頭火の目と鼻の先。
その距離後僅(きょり・あと・わず)か。
死頭火の歩幅で後4~5歩か?
走りながら死頭火は槍のように手にした軍駆馬を、
(グイッ!!)
懐(ふところ)深く引き込んだ。
アソビを持ったのだ。
雪女の体を刺し貫くために。
その距離・・・残り3歩!!
雪女は死頭火に全く気付いていない。
後は一気に刺し貫くのみ。
『勝った!?』
死頭火は思った。
否、
皆そう思った。
『勝った!?』
と。
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
青竜の全身が・・・
(パリパリパリパリパリ・・・)
氷と化した。
(ピキピキピキピキピキ・・・)
ヒビが入った。
(ビシビシビシッ!! ビシーーー!!)
粉々に砕け散った。
死頭火の青竜が。
式神・青竜が。
式神と言えども所詮は紙。
ただの紙切れ一枚。
それを死頭火の恐るべき呪力を持って実体化したに過ぎない。
しかし、
相手は
その圧倒的パワーの前には紙屑同然。
ほんの数秒しか持たなかった。
だが、
それで充分だった。
雪女を空中から地上に落とし、
ほんの僅(わず)かでも注意を逸(そ)らす事が出来れば、
死頭火にはそれで充分だった。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
降りかかる粉雪の中、雪女は既に目前。
最早、雪女の背中は死頭火の目と鼻の先。
その距離後僅(きょり・あと・わず)か。
死頭火の歩幅で後4~5歩か?
走りながら死頭火は槍のように手にした軍駆馬を、
(グイッ!!)
懐(ふところ)深く引き込んだ。
アソビを持ったのだ。
雪女の体を刺し貫くために。
その距離・・・残り3歩!!
雪女は死頭火に全く気付いていない。
後は一気に刺し貫くのみ。
『勝った!?』
死頭火は思った。
否、
皆そう思った。
『勝った!?』
と。
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #48 『奇(あや)しい輝き』の巻
2017-03-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #48 『奇(あや)しい輝き』の巻
(ギラン!!)
終に神剣・軍駆馬がその全貌を現した。
それは不気味なまでに眩(まばゆ)く輝く。
それは誰の眼(め)にも “名刀” と一目で分かる拵(こしら)えだった。
大きく延びた鋭い切先(きっさき)。
反(そ)りのない直刀(ちょくとう)である筈の上古刀(じょうことう)でありながら、若干反りのある長い刀身。
豪快で、あたかも大波が弾(はじ)けんばかりの濤乱刃(とうらんば)の刃文(はもん)。
表には不動明王を象徴する 『カンマン』 の梵字が、裏には 『魔王権現』 と彫り込みが入れられてある。
それはある者が抜けば神剣に・・・
抜き手によっては妖剣に・・・
そう思えるほど奇(あや)しい輝きだった。
死頭火は雪女の背中を見つめながら、音を立てないように注意してソッと地面に軍駆馬の鞘を置いた。
攻撃の邪魔にならないように。
少しでも身軽になるために。
そして、
(スゥ~)
軍駆馬を地面と平行にし、その “刃(やいば)” を上に向けた。
柄を右手で、刃を下から左手で、槍(やり)を持つように持った。
それから大きく息を吸い、そして止めた。
次の瞬間・・・
全く足音を立てずに雪女に向かってそのまま一直線に突っ込んだ。
雪の上でも全く足音を立てずに走る。
これが無二の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火の体術だ。
しかも、
徒(いたずら)に大上段に構えず、槍のように持つ。
この状況では、これが最上(ベスト)。
そして、瞬時にこの構えを取る。
これからも又、無敵の戦士・破瑠魔死頭火のその戦闘能力の高さが窺(うかが)える。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
音もなく雪女の背後に迫る無双の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火。
雪女はそれに全く気付いてはいない。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
死頭火が迫る雪女に。
既に雪女は目前。
(ギラン!!)
妖しく輝く神剣・軍駆馬。
だが、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
参考 : 『カンマン』 ↓
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%80%80%E6%A2%B5%E5%AD%97&lr=
(ギラン!!)
終に神剣・軍駆馬がその全貌を現した。
それは不気味なまでに眩(まばゆ)く輝く。
それは誰の眼(め)にも “名刀” と一目で分かる拵(こしら)えだった。
大きく延びた鋭い切先(きっさき)。
反(そ)りのない直刀(ちょくとう)である筈の上古刀(じょうことう)でありながら、若干反りのある長い刀身。
豪快で、あたかも大波が弾(はじ)けんばかりの濤乱刃(とうらんば)の刃文(はもん)。
表には不動明王を象徴する 『カンマン』 の梵字が、裏には 『魔王権現』 と彫り込みが入れられてある。
それはある者が抜けば神剣に・・・
抜き手によっては妖剣に・・・
そう思えるほど奇(あや)しい輝きだった。
死頭火は雪女の背中を見つめながら、音を立てないように注意してソッと地面に軍駆馬の鞘を置いた。
攻撃の邪魔にならないように。
少しでも身軽になるために。
そして、
(スゥ~)
軍駆馬を地面と平行にし、その “刃(やいば)” を上に向けた。
柄を右手で、刃を下から左手で、槍(やり)を持つように持った。
それから大きく息を吸い、そして止めた。
次の瞬間・・・
全く足音を立てずに雪女に向かってそのまま一直線に突っ込んだ。
雪の上でも全く足音を立てずに走る。
これが無二の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火の体術だ。
しかも、
徒(いたずら)に大上段に構えず、槍のように持つ。
この状況では、これが最上(ベスト)。
そして、瞬時にこの構えを取る。
これからも又、無敵の戦士・破瑠魔死頭火のその戦闘能力の高さが窺(うかが)える。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
音もなく雪女の背後に迫る無双の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火。
雪女はそれに全く気付いてはいない。
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
死頭火が迫る雪女に。
既に雪女は目前。
(ギラン!!)
妖しく輝く神剣・軍駆馬。
だが、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
参考 : 『カンマン』 ↓
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%80%80%E6%A2%B5%E5%AD%97&lr=
「呪符術死闘編」 #47 『ユックリと・・・』の巻
2017-03-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #47 『ユックリと・・・』の巻
「フーーー!!」
・・・息吹!?
雪女の息吹だ!?
雪女は反射的に自らの息吹の冷気で青竜の吐く白光色の炎を消そうとしていた。
(ボァーーー!!)
青竜の炎。
(フーーー!!)
雪女の息吹。
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
・・・
雪女と青竜の息吹合戦が続く。
今、
相変わらず粉雪が吹き荒れる中、
雪女の全神経は青竜に向けられている。
死頭火に向ける余裕はない。
そして大地に降り立っている。
死頭火と同じ大地に。
死頭火の手の届く・・・・・・・・・・大地に。
そして死頭火は・・・
(グィッ!!)
左手で軍駆馬の鞘を握り締め、
その手を左腰に強く押し付けて軍駆馬を安定させ、
息を殺し、
足音を立てず、
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
雪女の背後に回った。
その距離約10メートル。
(ピタッ!!)
死頭火が立ち止まった。
同時に、雪女の様子を窺(うかが)った。
まだ雪女と青竜の息吹合戦は続いている。
雪女が死頭火に気付いた様子は全く見受けられない。
雪女の背後からその息吹合戦を見つめながら、
(グィ~)
死頭火は左手を体幹から10センチ前方に押し出した。
勿論、軍駆馬を握ったまま。
(カチャ!!)
左手親指で鍔(つば)を強く前に押し出し、軍駆馬の鯉口(こいぐち)を切った。
軍駆馬を引き抜くために。
(スゥ~)
静かに死頭火は軍駆馬の柄(つか)に右手を掛けた。
(スルスルスルスルスル・・・)
ユックリと音を立てずに軍駆馬を引き抜き始めた。
そぅ。
ユックリと、ユックリと・・音を立てずに、音を立てずに・・死頭火は軍駆馬を・・神剣・軍駆馬を・・引き抜き始めた。
ジッと雪女の背中を・・・
見つめながら。
・
・
・
・
・
つづく
「フーーー!!」
・・・息吹!?
雪女の息吹だ!?
雪女は反射的に自らの息吹の冷気で青竜の吐く白光色の炎を消そうとしていた。
(ボァーーー!!)
青竜の炎。
(フーーー!!)
雪女の息吹。
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
(ボァーーー!!)
(フーーー!!)
・・・
雪女と青竜の息吹合戦が続く。
今、
相変わらず粉雪が吹き荒れる中、
雪女の全神経は青竜に向けられている。
死頭火に向ける余裕はない。
そして大地に降り立っている。
死頭火と同じ大地に。
死頭火の手の届く・・・・・・・・・・大地に。
そして死頭火は・・・
(グィッ!!)
左手で軍駆馬の鞘を握り締め、
その手を左腰に強く押し付けて軍駆馬を安定させ、
息を殺し、
足音を立てず、
(ヒタヒタヒタヒタヒタ・・・)
雪女の背後に回った。
その距離約10メートル。
(ピタッ!!)
死頭火が立ち止まった。
同時に、雪女の様子を窺(うかが)った。
まだ雪女と青竜の息吹合戦は続いている。
雪女が死頭火に気付いた様子は全く見受けられない。
雪女の背後からその息吹合戦を見つめながら、
(グィ~)
死頭火は左手を体幹から10センチ前方に押し出した。
勿論、軍駆馬を握ったまま。
(カチャ!!)
左手親指で鍔(つば)を強く前に押し出し、軍駆馬の鯉口(こいぐち)を切った。
軍駆馬を引き抜くために。
(スゥ~)
静かに死頭火は軍駆馬の柄(つか)に右手を掛けた。
(スルスルスルスルスル・・・)
ユックリと音を立てずに軍駆馬を引き抜き始めた。
そぅ。
ユックリと、ユックリと・・音を立てずに、音を立てずに・・死頭火は軍駆馬を・・神剣・軍駆馬を・・引き抜き始めた。
ジッと雪女の背中を・・・
見つめながら。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #46 『攻撃その弐』の巻
2017-03-28
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #46 『攻撃その弐』の巻
(ドコッ!!)
突然、
背後から何者かに突き飛ばされ、雪女がバランスを崩し空中から地上へと吹っ飛んだ。
(ゴロンゴロンゴロン)
雪の上を2度3度回転して雪女は止まった。
「クッ!? 何ヤツ?」
雪女は降りしきる粉雪(こなゆき)の中、宙(ちゅう)を見上げた。
その瞬間、雪女の顔は恐怖と驚愕で引き攣(つ)った。
(ボァーーー!!)
目前に火炎放射器で発射されたような、否、宇宙戦艦ヤマトが発射する波動砲のような、眩(まぶ)しく光る白光色の炎が凄まじい勢いで迫って来ていたのだ。
眩しく光る白光色の炎!?
それは四霊獣・青竜(せいりょう)が口から吐いた炎だった。
青竜は背後から雪女を地上に突き飛ばすと同時にその口から炎を吐いていたのだ。
だが、
この青竜は一体どこから・・・?
・・・?
・・・?
・・・?
ハッ!?
も、もしや!?
この状況下でそんな物を操れる者がいるとするならば・・それは・・ただ一人。
符術の達人、死頭火・・・のみ!?
そぅ。
それは死頭火が体勢を立て直すと同時に放っていた式神(しきがみ) “四霊獣・青竜(せいりょう)の符” だった。
雪女が死頭火の投げ付けた手裏剣を繁々と見ている間に出来た僅(わず)かな隙(すき)。
それを死頭火は逃さなかった。
雪女が余裕のヨッチャンこいてる魔 否 間に、死頭火は素早く次の技を仕掛けていたのだ。
式神・青竜の技を。
女切刀呪禁道深奥秘儀(めぎと・じゅごんどう・じんのうひぎ)・『“式神” その弐(に)』・・・
攻撃開始。
・
・
・
・
・
つづく
(ドコッ!!)
突然、
背後から何者かに突き飛ばされ、雪女がバランスを崩し空中から地上へと吹っ飛んだ。
(ゴロンゴロンゴロン)
雪の上を2度3度回転して雪女は止まった。
「クッ!? 何ヤツ?」
雪女は降りしきる粉雪(こなゆき)の中、宙(ちゅう)を見上げた。
その瞬間、雪女の顔は恐怖と驚愕で引き攣(つ)った。
(ボァーーー!!)
目前に火炎放射器で発射されたような、否、宇宙戦艦ヤマトが発射する波動砲のような、眩(まぶ)しく光る白光色の炎が凄まじい勢いで迫って来ていたのだ。
眩しく光る白光色の炎!?
それは四霊獣・青竜(せいりょう)が口から吐いた炎だった。
青竜は背後から雪女を地上に突き飛ばすと同時にその口から炎を吐いていたのだ。
だが、
この青竜は一体どこから・・・?
・・・?
・・・?
・・・?
ハッ!?
も、もしや!?
この状況下でそんな物を操れる者がいるとするならば・・それは・・ただ一人。
符術の達人、死頭火・・・のみ!?
そぅ。
それは死頭火が体勢を立て直すと同時に放っていた式神(しきがみ) “四霊獣・青竜(せいりょう)の符” だった。
雪女が死頭火の投げ付けた手裏剣を繁々と見ている間に出来た僅(わず)かな隙(すき)。
それを死頭火は逃さなかった。
雪女が余裕のヨッチャンこいてる魔 否 間に、死頭火は素早く次の技を仕掛けていたのだ。
式神・青竜の技を。
女切刀呪禁道深奥秘儀(めぎと・じゅごんどう・じんのうひぎ)・『“式神” その弐(に)』・・・
攻撃開始。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #45 『やはり神剣・軍駆馬・・・』の巻
2017-03-27
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #45 『やはり神剣・軍駆馬・・・』の巻
(ニヤッ)
背中に刺さった死頭火の手裏剣を、体の柔らかさの故か?
いとも簡単に右手で引き抜き、
繁々(しげしげ)とそれを見ながら雪女が無気味な笑いを浮かべた。
手裏剣の傷は何事もなかったかのように瞬時に消えていた。
五指氷柱を放った右手の指も既に復元している。
何という恐るべき生命力か!?
妖女・雪女。
それを倒せるのは、やはり神剣・軍駆馬・・・・・・・・・・のみ。
そこにいる者達全員がそれを思い知った瞬間だった。
体勢を立て直して見上げている死頭火を空中から見下ろし雪女が言った。
「オナゴと思うて油断したヮ。 だがこのような物でワラワを倒せると思うておるのか。 愚か者め」
そして、手にした手裏剣を死頭火に向けて投げ返した。
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ニヤッ)
背中に刺さった死頭火の手裏剣を、体の柔らかさの故か?
いとも簡単に右手で引き抜き、
繁々(しげしげ)とそれを見ながら雪女が無気味な笑いを浮かべた。
手裏剣の傷は何事もなかったかのように瞬時に消えていた。
五指氷柱を放った右手の指も既に復元している。
何という恐るべき生命力か!?
妖女・雪女。
それを倒せるのは、やはり神剣・軍駆馬・・・・・・・・・・のみ。
そこにいる者達全員がそれを思い知った瞬間だった。
体勢を立て直して見上げている死頭火を空中から見下ろし雪女が言った。
「オナゴと思うて油断したヮ。 だがこのような物でワラワを倒せると思うておるのか。 愚か者め」
そして、手にした手裏剣を死頭火に向けて投げ返した。
その時・・・
・
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・
・
・
つづく
#44 『優勢?』の巻
2017-03-27
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #44 『優勢?』の巻
雪女に死頭火。
死頭火に雪女。
次々に繰り出される技の応酬。
13人の戦士達並びに中道、外道が勝負の行方を声を出さずに手に汗握って見守っている。
皆、全身雪塗(まみ)れだ。
一応、木や建物の陰に隠れているとはいえ、吹き殴って来る雪を全てかわす事は無理だった。
その寒さたるや尋常ではない。
本来なら熱くて寝苦しい夏真直中(なつ・まっただなか)の筈なのに。
だが、
皆、その寒さの中誰一人ジッと動かず固唾(かたず)を飲んで見守っていた。
『雪女 vs 死頭火』
の戦いを。
死頭火に雪女。
雪女に死頭火。
互いに一歩も引かない。
否、
若干、雪女優勢か?
あるいは、
地の利も有り死頭火有利か?
『死頭火・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
・・・
中道、外道及び13人の戦士達が祈るような気持ちで死頭火の戦いを見守っている。
雪女と互角に戦っている戦士死頭火の戦いを。
『死頭火・・・勝ってくれ!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
・・・
そう念じながら皆が、
そこにいる15人全員が、
祈るような思いで見守っている。
だが、一人。
否、一人。
この戦いを見守っている者15人中、唯(ただ)一人だけ冷静にこの戦いを見ている者がいた。
それは誰か?
外道だ!?
外道には見えていたのだ。
母、死頭火の勝利が。
相手は圧倒的パワーを持つ雪女。
パワー勝負では勝負にならない。
しかし、死頭火には技が有る。
強力な雪女の攻撃を受けてかわし、受け流して抑え込める技が。
死頭火にはその技が有ったのだ。
外道にはチャンとそれが見えていた。
虹彩異色症(オッド・アイ)の外道の目にはそれがチャンと。
そして外道は確信していた。
『カー様の勝ちだ!?』
・
・
・
・
・
つづく
雪女に死頭火。
死頭火に雪女。
次々に繰り出される技の応酬。
13人の戦士達並びに中道、外道が勝負の行方を声を出さずに手に汗握って見守っている。
皆、全身雪塗(まみ)れだ。
一応、木や建物の陰に隠れているとはいえ、吹き殴って来る雪を全てかわす事は無理だった。
その寒さたるや尋常ではない。
本来なら熱くて寝苦しい夏真直中(なつ・まっただなか)の筈なのに。
だが、
皆、その寒さの中誰一人ジッと動かず固唾(かたず)を飲んで見守っていた。
『雪女 vs 死頭火』
の戦いを。
死頭火に雪女。
雪女に死頭火。
互いに一歩も引かない。
否、
若干、雪女優勢か?
あるいは、
地の利も有り死頭火有利か?
『死頭火・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
『死頭火様ぁ・・・』
・・・
中道、外道及び13人の戦士達が祈るような気持ちで死頭火の戦いを見守っている。
雪女と互角に戦っている戦士死頭火の戦いを。
『死頭火・・・勝ってくれ!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
『死頭火様ぁ・・・勝って下さい!!』
・・・
そう念じながら皆が、
そこにいる15人全員が、
祈るような思いで見守っている。
だが、一人。
否、一人。
この戦いを見守っている者15人中、唯(ただ)一人だけ冷静にこの戦いを見ている者がいた。
それは誰か?
外道だ!?
外道には見えていたのだ。
母、死頭火の勝利が。
相手は圧倒的パワーを持つ雪女。
パワー勝負では勝負にならない。
しかし、死頭火には技が有る。
強力な雪女の攻撃を受けてかわし、受け流して抑え込める技が。
死頭火にはその技が有ったのだ。
外道にはチャンとそれが見えていた。
虹彩異色症(オッド・アイ)の外道の目にはそれがチャンと。
そして外道は確信していた。
『カー様の勝ちだ!?』
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #43 『背後から』の巻
2017-03-27
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #43 『背後から』の巻
(ドスッ!!)
突然、
何かが背後から雪女の背中に突き刺さった。
何かが・・・突然!?
そして、
「ウグッ!?」
雪女が息を詰まらせた。
当然、息は吐けない。
氷針息吹第二弾は。
どうした!?
何が起こった?
雪女に一体何が?
雪女に一体何が起こったんだ?
それは・・・手裏剣。
そぅ、
手裏剣だった。
しかし、そんな物が一体どこから・・・?
『ハッ!?』
も、もしやそれは死頭火からか?
そうだ!?
それは死頭火が投じた物だった。
死頭火は雪女の氷針息吹第一弾を回転してかわす直前、手裏剣を投げ付けていたのだ。
降り注ぐ雪の中をまるでブーメランのようにそれは飛び、雪女に全く気付かれる事なく背後から雪女の背中を襲っていたのだ。
比類なき体術を極めた死頭火のみに許される芸当だった。
正に無類の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火・・・その本領発揮の瞬間である。
雪女は思った。
『クッ!? つ、強い!!』
・
・
・
・
・
つづく
(ドスッ!!)
突然、
何かが背後から雪女の背中に突き刺さった。
何かが・・・突然!?
そして、
「ウグッ!?」
雪女が息を詰まらせた。
当然、息は吐けない。
氷針息吹第二弾は。
どうした!?
何が起こった?
雪女に一体何が?
雪女に一体何が起こったんだ?
それは・・・手裏剣。
そぅ、
手裏剣だった。
しかし、そんな物が一体どこから・・・?
『ハッ!?』
も、もしやそれは死頭火からか?
そうだ!?
それは死頭火が投じた物だった。
死頭火は雪女の氷針息吹第一弾を回転してかわす直前、手裏剣を投げ付けていたのだ。
降り注ぐ雪の中をまるでブーメランのようにそれは飛び、雪女に全く気付かれる事なく背後から雪女の背中を襲っていたのだ。
比類なき体術を極めた死頭火のみに許される芸当だった。
正に無類の “くノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火・・・その本領発揮の瞬間である。
雪女は思った。
『クッ!? つ、強い!!』
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #42 『絶体絶命』の巻
2017-03-26
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #42 『絶体絶命』の巻
(ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ・・・!!)
一群の氷針が飛んで来る。
死頭火に向かって飛んで来る。
まるで乱射された散弾銃の弾のように。
しかし、
死頭火は冷静だった。
あたかも体操の選手が床運動で見せるような素早い動きで地面を回転して、この攻撃を避けた。
式神・朱雀の符が破られたために受けたダメージで出血し、痛む背中を物ともせず。
これが破瑠魔死頭火の体術だ。
伊賀の “くノ一(くのいち)” の流れを汲んでいる死頭火だからこそ出来る芸当だった。
だが、
雪女は容赦ない。
「スゥ~~~」
再び大きく息を吸い、それを一気に吐き出そうとした。
第二弾だ!?
雪女が狙いを定めた。
氷針息吹が来る!?
しかし死頭火は・・・
死頭火は前回の攻撃を回転して避けた体勢からまだ態勢を整えてはいない。
今、まともにこの攻撃を喰らったら、如何(いか)に類稀(たぐいまれ)なる体術を身につけている死頭火と言えどもそれを避けるのは100パーセント不可能に近い。
危うし死頭火!?
絶体絶命・・・か!?
だが・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ・・・!!)
一群の氷針が飛んで来る。
死頭火に向かって飛んで来る。
まるで乱射された散弾銃の弾のように。
しかし、
死頭火は冷静だった。
あたかも体操の選手が床運動で見せるような素早い動きで地面を回転して、この攻撃を避けた。
式神・朱雀の符が破られたために受けたダメージで出血し、痛む背中を物ともせず。
これが破瑠魔死頭火の体術だ。
伊賀の “くノ一(くのいち)” の流れを汲んでいる死頭火だからこそ出来る芸当だった。
だが、
雪女は容赦ない。
「スゥ~~~」
再び大きく息を吸い、それを一気に吐き出そうとした。
第二弾だ!?
雪女が狙いを定めた。
氷針息吹が来る!?
しかし死頭火は・・・
死頭火は前回の攻撃を回転して避けた体勢からまだ態勢を整えてはいない。
今、まともにこの攻撃を喰らったら、如何(いか)に類稀(たぐいまれ)なる体術を身につけている死頭火と言えどもそれを避けるのは100パーセント不可能に近い。
危うし死頭火!?
絶体絶命・・・か!?
だが・・・
・
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つづく
「呪符術死闘編」 #41 『息吹』の巻
2017-03-26
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #41 『息吹』の巻
『ハッ!?』
死頭火は驚いた。
一瞬にして火の鳥が消えたかと思った次の瞬間・・・
自分に向かって一群の氷の粒が飛んで来たからだ。
それらは一つ一つがまるで小さい針のようだった。
ン!? 何!?
小さい針のような氷の粒?
そぅ・・・
それは雪女の息吹。
雪女の “氷針息吹” だ。
雪女は死頭火の火の鳥攻撃を避けられないと悟るや、
「フゥーーー!!」
即座に激しく息を吐き出していた。
しかも、唯(ただ)吐き出したのではなく呼気を鋭い氷の粒に変えて。
そしてこの氷針息吹で火の鳥を撃ち落すと同時に死頭火を攻撃したのだ。
火の鳥は消えた。
「キィー!!」
と一声残して。
それと同時に、
(パッ、シューーー!!)
死頭火の背中から血飛沫(ちしぶき)が上がった。
まるで鋭い刃物にでも切られたかのように。
(バババッ・・・)
その血は降り積もった雪の上に音を立てて落ち、その辺りを真っ赤に変えた。
『クッ!?』
死頭火の顔が苦痛に歪(ゆが)む。
その直後、
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
一枚の呪符が激しく降り注ぐ雪の合間を漂(ただよ)うように、既に一面雪で覆われた地面に舞い落ちた。
それは、死頭火の放った “式神の符(しきがみ・の・ふ)” だった。
そうあれは・・あの火の鳥は・・“四霊獣(しれいじゅう)・朱雀(しゅじゃく)”。
死頭火はこの戦いを夫、破瑠魔内道の敗因から得た教訓から、持久戦を避け短期決戦で決着を着けるつもりだった。
故に、
最初から女切刀呪禁道最高難度の “式神戦” を仕掛けていたのだ。
比類なき呪力を持つ死頭火にのみ可能な攻撃だ。
しかし、
この式神戦は痛烈無比ではあるが、同時に消耗するエネルギーも半端ではない。
又、技を破られた時に受けるダメージも破壊的だ。
死頭火の背中の血飛沫はこのダメージに因(よ)る物だった。
よって、
そう何度も何度も繰り返せる程、難度の低い技ではない。
勝負の行方は・・・
いかに効率良く攻撃を仕掛けられるか否かに掛かっていた。
・
・
・
・
・
つづく
『ハッ!?』
死頭火は驚いた。
一瞬にして火の鳥が消えたかと思った次の瞬間・・・
自分に向かって一群の氷の粒が飛んで来たからだ。
それらは一つ一つがまるで小さい針のようだった。
ン!? 何!?
小さい針のような氷の粒?
そぅ・・・
それは雪女の息吹。
雪女の “氷針息吹” だ。
雪女は死頭火の火の鳥攻撃を避けられないと悟るや、
「フゥーーー!!」
即座に激しく息を吐き出していた。
しかも、唯(ただ)吐き出したのではなく呼気を鋭い氷の粒に変えて。
そしてこの氷針息吹で火の鳥を撃ち落すと同時に死頭火を攻撃したのだ。
火の鳥は消えた。
「キィー!!」
と一声残して。
それと同時に、
(パッ、シューーー!!)
死頭火の背中から血飛沫(ちしぶき)が上がった。
まるで鋭い刃物にでも切られたかのように。
(バババッ・・・)
その血は降り積もった雪の上に音を立てて落ち、その辺りを真っ赤に変えた。
『クッ!?』
死頭火の顔が苦痛に歪(ゆが)む。
その直後、
(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)
一枚の呪符が激しく降り注ぐ雪の合間を漂(ただよ)うように、既に一面雪で覆われた地面に舞い落ちた。
それは、死頭火の放った “式神の符(しきがみ・の・ふ)” だった。
そうあれは・・あの火の鳥は・・“四霊獣(しれいじゅう)・朱雀(しゅじゃく)”。
死頭火はこの戦いを夫、破瑠魔内道の敗因から得た教訓から、持久戦を避け短期決戦で決着を着けるつもりだった。
故に、
最初から女切刀呪禁道最高難度の “式神戦” を仕掛けていたのだ。
比類なき呪力を持つ死頭火にのみ可能な攻撃だ。
しかし、
この式神戦は痛烈無比ではあるが、同時に消耗するエネルギーも半端ではない。
又、技を破られた時に受けるダメージも破壊的だ。
死頭火の背中の血飛沫はこのダメージに因(よ)る物だった。
よって、
そう何度も何度も繰り返せる程、難度の低い技ではない。
勝負の行方は・・・
いかに効率良く攻撃を仕掛けられるか否かに掛かっていた。
・
・
・
・
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つづく
「呪符術死闘編」 #40 『勝負有ったか?』の巻
2017-03-26
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #40 『勝負有ったか?』の巻
(スパー!!)
死頭火に向かって、風を切って何かが飛んで来る。
五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)だ!?
3年前、あの内道を襲った五指氷柱が飛んで来た。
雪女が半身の体勢から鋭い勢いで体を捻り、同時に右手を左肩から振り下ろしていたのだ。
(シューーー!!)
それは恐ろしいスピードで飛んで来る。
危うし死頭火!?
五指氷柱は目前だ。
ところが・・・
突然、雪女と死頭火の中間の空間に炎が現れた。
否、
炎じゃない!?
火の鳥だ!?
突然、火の鳥が現れたのだ。
それは思いも寄らない出来事だった。
不意に火の鳥が出現するや、
それは一瞬にして死頭火に向かって飛んで来る五指氷柱を溶かし、
(ビヒューーー!!)
そのまま一気に雪女目掛けて突っ込んだ。
だが、雪女はまだ体勢が整ってはいない。
五指氷柱を投げ付けた直後ゆえ。
しかし火の鳥は既に雪女の目前。
『クッ!? か、かわせぬ!?』
雪女は焦った。
まともにこれがぶち当たったら、いかに雪女と言えども受けるダメージは計り知れない。
命の危険さえ有り得る。
ウ~ム。
イキナリ勝負有ったか?
・
・
・
・
・
つづく
(スパー!!)
死頭火に向かって、風を切って何かが飛んで来る。
五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)だ!?
3年前、あの内道を襲った五指氷柱が飛んで来た。
雪女が半身の体勢から鋭い勢いで体を捻り、同時に右手を左肩から振り下ろしていたのだ。
(シューーー!!)
それは恐ろしいスピードで飛んで来る。
危うし死頭火!?
五指氷柱は目前だ。
ところが・・・
突然、雪女と死頭火の中間の空間に炎が現れた。
否、
炎じゃない!?
火の鳥だ!?
突然、火の鳥が現れたのだ。
それは思いも寄らない出来事だった。
不意に火の鳥が出現するや、
それは一瞬にして死頭火に向かって飛んで来る五指氷柱を溶かし、
(ビヒューーー!!)
そのまま一気に雪女目掛けて突っ込んだ。
だが、雪女はまだ体勢が整ってはいない。
五指氷柱を投げ付けた直後ゆえ。
しかし火の鳥は既に雪女の目前。
『クッ!? か、かわせぬ!?』
雪女は焦った。
まともにこれがぶち当たったら、いかに雪女と言えども受けるダメージは計り知れない。
命の危険さえ有り得る。
ウ~ム。
イキナリ勝負有ったか?
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #39 『不敵な眼差し』の巻
2017-03-26
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #39 『不敵な眼差し』の巻
「ホ~。 不敵な眼差(まなざ)しをしておる。 言うだけの事は有りそうじゃ。 だがワラワの敵ではない」
そう言うと雪女は両手を左右に広げた。
(ビュービュービュービュービューーー!!)
風の勢いが更に増した。
(サッ!!)
死頭火が身構えた。
左足を半歩後ろに引き、若干腰を落として重心を安定させ、いつでも抜けるように左手で軍駆馬の鞘を握った。
右手は剣印(グー・チョキ・パーのチョキの形)にし、体の正面で体幹から30センチ程離して指先を雪女に向けている。
その指先からは雪女に向けエネルギーが発せられていた。
雪女の踏み込みを押さえると同時にその位置を掴(つか)み、見失わないためにだ。
『出来る!?』
雪女は思った。
そして言った。
「ただのオナゴではなさそうじゃ。 面白い。 ならばワラワも本気で参る」
(シュッ!!)
雪女は上空高く飛び上がった。
そのまま宙に留まった。
体を捻(ひね)って半身にし、右手を左肩まで上げている。
右手五指を氷柱(つらら)に変えて。
ここを以って終に、
『雪女 vs 破瑠魔死頭火』
その戦闘開始の・・・
ゴングは鳴った。
・
・
・
・
・
つづく
「ホ~。 不敵な眼差(まなざ)しをしておる。 言うだけの事は有りそうじゃ。 だがワラワの敵ではない」
そう言うと雪女は両手を左右に広げた。
(ビュービュービュービュービューーー!!)
風の勢いが更に増した。
(サッ!!)
死頭火が身構えた。
左足を半歩後ろに引き、若干腰を落として重心を安定させ、いつでも抜けるように左手で軍駆馬の鞘を握った。
右手は剣印(グー・チョキ・パーのチョキの形)にし、体の正面で体幹から30センチ程離して指先を雪女に向けている。
その指先からは雪女に向けエネルギーが発せられていた。
雪女の踏み込みを押さえると同時にその位置を掴(つか)み、見失わないためにだ。
『出来る!?』
雪女は思った。
そして言った。
「ただのオナゴではなさそうじゃ。 面白い。 ならばワラワも本気で参る」
(シュッ!!)
雪女は上空高く飛び上がった。
そのまま宙に留まった。
体を捻(ひね)って半身にし、右手を左肩まで上げている。
右手五指を氷柱(つらら)に変えて。
ここを以って終に、
『雪女 vs 破瑠魔死頭火』
その戦闘開始の・・・
ゴングは鳴った。
・
・
・
・
・
つづく
「呪符術死闘編」 #38 『雪女 vs 死頭火』の巻
2017-03-25
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #38 『雪女 vs 死頭火』の巻
(タン!!)
雪女が地面に降り立った。
降り積もった雪で地面はもう真っ白。
死頭火とはその距離約5メートル。
神楽殿の真ん前だ。
そして言った。
「その方か? 先程からワラワに対し妙な真似をしておるのは」
「・・・」
死頭火は黙っていた。
ジッと雪女の眼(め)を見つめている。
「・・・」
「・・・」
雪女も無言で死頭火の眼を見つめ返した。
互いに相手の力量を測っているのだ。
「・・・」
「・・・」
暫(しば)らくその状態が続いた。
が、
再び雪女が口を開いた。
「ワラワに何用じゃ?」
死頭火が静かに答えた。
「アナタを成敗(せいばい)致します」
(二ャ)
雪女が不気味な含み笑いを浮かべ、笑い始めた。
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
それから言った。
「ソチがか? オナゴのソチがこのワラワを。 このワラワを成敗するとな?」
再び笑い出した。
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
「そうです。 私(わたくし)がアナタを成敗致します」
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
一頻(ひとしき)り笑い終えてから、
「フゥ~~~」
っと息を吐き出して雪女が聞いた。
「愚かな。 ソチごときがこのワラワに敵(かな)うと思ぅておるのか?」
「・・・」
死頭火は黙っていた。
ここで雪女の目が死頭火の腰に行った。
「ヌッ!? その太刀には見覚えが・・・」
透(す)かさず、
「そうです。 これは3年前我が夫破瑠魔内道がアナタを刺し貫いた剣です」
左手で腰に差してある軍駆馬の鞘(さや)を抑えて死頭火がそう言った。
「我が夫? ホ~。 ソチはあの内道の妻か?」
「そうです」
雪女は改めてもう一度死頭火を見た。
一見穏やかではあるが、しかし激しい闘志を内に秘め、
燃え盛っている死頭火の眼差(まなざ)しを見つめたのだ。
氷のように冷ややかで、切るように冷たい眼(め)をして。
・
・
・
・
・
つづく
(タン!!)
雪女が地面に降り立った。
降り積もった雪で地面はもう真っ白。
死頭火とはその距離約5メートル。
神楽殿の真ん前だ。
そして言った。
「その方か? 先程からワラワに対し妙な真似をしておるのは」
「・・・」
死頭火は黙っていた。
ジッと雪女の眼(め)を見つめている。
「・・・」
「・・・」
雪女も無言で死頭火の眼を見つめ返した。
互いに相手の力量を測っているのだ。
「・・・」
「・・・」
暫(しば)らくその状態が続いた。
が、
再び雪女が口を開いた。
「ワラワに何用じゃ?」
死頭火が静かに答えた。
「アナタを成敗(せいばい)致します」
(二ャ)
雪女が不気味な含み笑いを浮かべ、笑い始めた。
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
それから言った。
「ソチがか? オナゴのソチがこのワラワを。 このワラワを成敗するとな?」
再び笑い出した。
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
「そうです。 私(わたくし)がアナタを成敗致します」
「アッ、ハ、ハハハハハハ・・・」
一頻(ひとしき)り笑い終えてから、
「フゥ~~~」
っと息を吐き出して雪女が聞いた。
「愚かな。 ソチごときがこのワラワに敵(かな)うと思ぅておるのか?」
「・・・」
死頭火は黙っていた。
ここで雪女の目が死頭火の腰に行った。
「ヌッ!? その太刀には見覚えが・・・」
透(す)かさず、
「そうです。 これは3年前我が夫破瑠魔内道がアナタを刺し貫いた剣です」
左手で腰に差してある軍駆馬の鞘(さや)を抑えて死頭火がそう言った。
「我が夫? ホ~。 ソチはあの内道の妻か?」
「そうです」
雪女は改めてもう一度死頭火を見た。
一見穏やかではあるが、しかし激しい闘志を内に秘め、
燃え盛っている死頭火の眼差(まなざ)しを見つめたのだ。
氷のように冷ややかで、切るように冷たい眼(め)をして。
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・
つづく
「呪符術死闘編」 #37 『雪女登場!?』の巻
2017-03-25
外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第一部 「呪符術死闘編」 #37 『雪女登場!?』の巻
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
風の吹き込んでくる方角から僅(わず)かだが、女の甲高(かんだか)い笑い声が聞こえて来た。
瞬間、
『雪女だ!?』
皆、そう思った。
(ピリッ!!)
その場に緊張感が走る。
終に決戦の時は来た。
(ビューーー!!)
吹雪が更に激しさを増す。
風の流れが女切刀の里の真上を旋回し始める。
全員が里の上空を見上げた。
突然!?
(スッ)
上空高く微(かす)かにではあるが豊かで艶やかで黒々とした美しい長髪以外、全身白一色の女の姿が現れた。
雪女だ!?
雪女は上空を素早く、しかし肉眼で捉(とら)えられる速さで旋回している。
そして、
旋回しながら少しずつ神楽殿に近づき始めた。
少しずつ少しずつ、ユックリとユックリと、確実に確実に、近づいて来る。
近づくにつれその姿が次第に大きくハッキリとして来た。
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
相変わらず甲高い笑い声を上げている。
終に、
地上5、6メートルの高さまで降りて来た。
だが、
まだだ、まだまだ。
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
笑い声を上げながら神楽殿上空を、ユックリとユックリと、旋回している。
確かに笑い声を上げながら。
しかしその眼(め)は笑ってはいない。
その時、雪女は・・・
顔を上げてジッと自分を見つめている死頭火を・・・
ジックリと観察していたのである。
・
・
・
・
・
つづく
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
風の吹き込んでくる方角から僅(わず)かだが、女の甲高(かんだか)い笑い声が聞こえて来た。
瞬間、
『雪女だ!?』
皆、そう思った。
(ピリッ!!)
その場に緊張感が走る。
終に決戦の時は来た。
(ビューーー!!)
吹雪が更に激しさを増す。
風の流れが女切刀の里の真上を旋回し始める。
全員が里の上空を見上げた。
突然!?
(スッ)
上空高く微(かす)かにではあるが豊かで艶やかで黒々とした美しい長髪以外、全身白一色の女の姿が現れた。
雪女だ!?
雪女は上空を素早く、しかし肉眼で捉(とら)えられる速さで旋回している。
そして、
旋回しながら少しずつ神楽殿に近づき始めた。
少しずつ少しずつ、ユックリとユックリと、確実に確実に、近づいて来る。
近づくにつれその姿が次第に大きくハッキリとして来た。
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
相変わらず甲高い笑い声を上げている。
終に、
地上5、6メートルの高さまで降りて来た。
だが、
まだだ、まだまだ。
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ・・・」
笑い声を上げながら神楽殿上空を、ユックリとユックリと、旋回している。
確かに笑い声を上げながら。
しかしその眼(め)は笑ってはいない。
その時、雪女は・・・
顔を上げてジッと自分を見つめている死頭火を・・・
ジックリと観察していたのである。
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つづく