『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #44 『チッチャイ外道』の巻
2017-02-28
#44 『チッチャイ外道』の巻
ント~~~
ント~~~
ント~~~
しゃー無い、解説しちゃおう。
外道念法 『影留め』 とは?
この名前で、
きっと読者の皆さんはもう何と無く分かっちゃてるよね、多分?
その通りー!!
“五寸釘の様な物”
つまり、外道お手製の五寸釘状の投げ針。
その針に外道の念(エネルギー)を込める事により、それは外道の分身に変わる。
それは一見針の様に見える。
だが、
それを良~く見ると、実は、それは針の様で針じゃない。
そ、れ、は、
“チッチャイ外道”
なのだ。
それを直接本体にではなく影に投げつけ、
投射された影をそれが投射されている場所(この場合は地面)に留(と)める。
それにより、
間接的にその影の本体の動きを止(と)める。
この時、
良~く観察すると
チッチャイ外道達が、
「ウンコラセ、ウンコラセ、ウンコラセ、・・・」
って、仕事しちゃってるのだ。
地面に影を縫いこむお仕事を。
但し、このチッチャイ外道を “見る” 為には “眼力” が必要なのだ。
即ち、眼力の無い者にチッチャイ外道は “見えない”。 ただの “五寸釘の様な物” にしか “見えない”。
そぅ・・・
それが影留め。
外道念法 『影留め』。
そして、
知っての通り、この屋敷の庭の照明は昼間の様に明るい。
当然、
影もボンヤリとではなくクッキリと出る。
影留めを使うのに充分な程。
だから、
技は掛かった。
しかし、
外道は何故(なぜ)・・・・・・直接ナナに技を掛けなかったのか?
例えば、百歩雀拳を。
それは勿論、
無傷でナナの動きを止める為である。
以上。
種明かしは実にカンタン。
DEATH た。
かかかかか。。。
・
・
・
・
・
つづく
ント~~~
ント~~~
ント~~~
しゃー無い、解説しちゃおう。
外道念法 『影留め』 とは?
この名前で、
きっと読者の皆さんはもう何と無く分かっちゃてるよね、多分?
その通りー!!
“五寸釘の様な物”
つまり、外道お手製の五寸釘状の投げ針。
その針に外道の念(エネルギー)を込める事により、それは外道の分身に変わる。
それは一見針の様に見える。
だが、
それを良~く見ると、実は、それは針の様で針じゃない。
そ、れ、は、
“チッチャイ外道”
なのだ。
それを直接本体にではなく影に投げつけ、
投射された影をそれが投射されている場所(この場合は地面)に留(と)める。
それにより、
間接的にその影の本体の動きを止(と)める。
この時、
良~く観察すると
チッチャイ外道達が、
「ウンコラセ、ウンコラセ、ウンコラセ、・・・」
って、仕事しちゃってるのだ。
地面に影を縫いこむお仕事を。
但し、このチッチャイ外道を “見る” 為には “眼力” が必要なのだ。
即ち、眼力の無い者にチッチャイ外道は “見えない”。 ただの “五寸釘の様な物” にしか “見えない”。
そぅ・・・
それが影留め。
外道念法 『影留め』。
そして、
知っての通り、この屋敷の庭の照明は昼間の様に明るい。
当然、
影もボンヤリとではなくクッキリと出る。
影留めを使うのに充分な程。
だから、
技は掛かった。
しかし、
外道は何故(なぜ)・・・・・・直接ナナに技を掛けなかったのか?
例えば、百歩雀拳を。
それは勿論、
無傷でナナの動きを止める為である。
以上。
種明かしは実にカンタン。
DEATH た。
かかかかか。。。
・
・
・
・
・
つづく
スポンサーサイト
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #43 『俺の名だ』の巻
2017-02-28
#43 『俺の名だ』の巻
「破瑠魔。 破瑠魔外道(はるま・げどう)。 ・・・。 俺の名だ」
長~い沈黙を破って外道が言った。
「はー、るー、まー、げー、どー、うー、ダー?」
「そうだ」
「げー、どー、うー、とー、やー、らー。 ナー、ニー、をー、しー、たー?」
「教えて欲しいか?」
「・・・!?」
ナナは怪訝(けげん)そうな表情を浮かべ、無言で外道を見ていた。
既(すで)に表情に氷の微笑は無い。
「教えてやろう。 お前の動きを封じたのだ」
「ナー、ニー? うー、ごー、きー、をー、ふー、うー、じー、たー、ダー、トー?」
「そうだ。 動きを封じた」
「フン!! ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
ナナは、
否、
何者かに憑依されたナナは、小馬鹿にした様に一旦せせら笑ってから再びあの嬌声を上げながらもがいた。
が、
やはり無駄だった。
「無駄だ!! 止めておけ」
しかし、
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
もう一度、
もう一度無駄な努力を繰り返した。
そして、
(ピタッ)
諦めたのか?
動きを止めて再び外道に冷たい視線を向けた。
「だから無駄だ!! 言ったろう? 既にお前の動きは封じてあるのょ。 我が念法 『影留め』 でな」
「ねー、んー、ぽー、うー、かー、げー、どー、めー?」
「そうだ。 外道念法影留めだ。 お前はもう動けない」
解説しよう。
外道念法影留めとは?
で、
解説しよう。
と、
思ったがー。
思ったがー。
しか~し、
コレここで解説しちゃうと~~~!?
解説しちゃうと~~~!?
外道シリーズ二部、三部、・・・と続けたいのに~~~、
続けたいのに~~~。
第一部であんまり一杯解説しちゃうと~~~!?
解説しちゃうと~~~!?
ネタが無くなっちゃうしな~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どうしよう?
エッと~~~
エッと~~~
エッと~~~
どうしよう?
ント~~~
ント~~~
ント~~~
・
・
・
・
・
つづく
「破瑠魔。 破瑠魔外道(はるま・げどう)。 ・・・。 俺の名だ」
長~い沈黙を破って外道が言った。
「はー、るー、まー、げー、どー、うー、ダー?」
「そうだ」
「げー、どー、うー、とー、やー、らー。 ナー、ニー、をー、しー、たー?」
「教えて欲しいか?」
「・・・!?」
ナナは怪訝(けげん)そうな表情を浮かべ、無言で外道を見ていた。
既(すで)に表情に氷の微笑は無い。
「教えてやろう。 お前の動きを封じたのだ」
「ナー、ニー? うー、ごー、きー、をー、ふー、うー、じー、たー、ダー、トー?」
「そうだ。 動きを封じた」
「フン!! ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
ナナは、
否、
何者かに憑依されたナナは、小馬鹿にした様に一旦せせら笑ってから再びあの嬌声を上げながらもがいた。
が、
やはり無駄だった。
「無駄だ!! 止めておけ」
しかし、
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
もう一度、
もう一度無駄な努力を繰り返した。
そして、
(ピタッ)
諦めたのか?
動きを止めて再び外道に冷たい視線を向けた。
「だから無駄だ!! 言ったろう? 既にお前の動きは封じてあるのょ。 我が念法 『影留め』 でな」
「ねー、んー、ぽー、うー、かー、げー、どー、めー?」
「そうだ。 外道念法影留めだ。 お前はもう動けない」
解説しよう。
外道念法影留めとは?
で、
解説しよう。
と、
思ったがー。
思ったがー。
しか~し、
コレここで解説しちゃうと~~~!?
解説しちゃうと~~~!?
外道シリーズ二部、三部、・・・と続けたいのに~~~、
続けたいのに~~~。
第一部であんまり一杯解説しちゃうと~~~!?
解説しちゃうと~~~!?
ネタが無くなっちゃうしな~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どうしよう?
エッと~~~
エッと~~~
エッと~~~
どうしよう?
ント~~~
ント~~~
ント~~~
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #42 『長い沈黙』の巻
2017-02-28
#42 『長い沈黙』の巻
(ニヤッ)
顔は笑った。
だが視線は、
だがナナの視線は、
(ゾクッ!!)
と、する程冷たい。
まるで氷だ。
“氷の微笑” だ。
その氷の様に冷たい視線を外道に向け、
ユックリとそして無感情にナナが言った。
「ナーニーをーしーたー?」
ン?
ナンだ!?
どこか可笑(おか)しい!?
何かが変だ!?
何が?
・・・!?
そうだ!? 声だ!?
声が違う!?
ナナの声じゃない!?
それは太くて低い男の声だった。
まるでナナが男で、
そしてその男が、
テレビのニュースで良く見るような変声用の “酸素入りヘリウムガス” を吸い込んで喋ってでもいるかの様だった。
その声は続けた。
「オー、マー、エー、はー、だー、れー、だー?」
相変わらずナナの顔に表情は無い。
1秒、2秒、3秒、・・・
ナナと外道は無言で睨(にら)み合った。
(シーン)
その間(あいだ)、辺(あた)りは物音一つ立たない。
風の音も虫の声も車のエンジン音も無い。
完全な静寂。
今の日本では考えられない事だ。
いくら時が深夜でこの場所が都会で無いとは言え。
チャンと生活感の匂う場所なのに。
まったく音が無い!?
長い沈黙。
気の遠くなる程の。
深い静寂。
気も狂わんばかりの。
2人とも何も喋らない。
黙ってジッと見合っている。
しかし、
ただ黙って見合っているのではない。
互いの力量を量(はか)り合っているのだ。
互いの目を通して。
互いの眼力で。
(ビリビリビリビリビリ・・・)
二人の間には激しい空気の振動がある。
互いの気迫のぶつかり合いによる。
(ギンギンギンギンギン・・・)
二人の周りだけ異様に明るい。
互いのエネルギーの発散により。
しかし、
そこに音は・・・
全く無い。
・
・
・
・
・
つづく
(ニヤッ)
顔は笑った。
だが視線は、
だがナナの視線は、
(ゾクッ!!)
と、する程冷たい。
まるで氷だ。
“氷の微笑” だ。
その氷の様に冷たい視線を外道に向け、
ユックリとそして無感情にナナが言った。
「ナーニーをーしーたー?」
ン?
ナンだ!?
どこか可笑(おか)しい!?
何かが変だ!?
何が?
・・・!?
そうだ!? 声だ!?
声が違う!?
ナナの声じゃない!?
それは太くて低い男の声だった。
まるでナナが男で、
そしてその男が、
テレビのニュースで良く見るような変声用の “酸素入りヘリウムガス” を吸い込んで喋ってでもいるかの様だった。
その声は続けた。
「オー、マー、エー、はー、だー、れー、だー?」
相変わらずナナの顔に表情は無い。
1秒、2秒、3秒、・・・
ナナと外道は無言で睨(にら)み合った。
(シーン)
その間(あいだ)、辺(あた)りは物音一つ立たない。
風の音も虫の声も車のエンジン音も無い。
完全な静寂。
今の日本では考えられない事だ。
いくら時が深夜でこの場所が都会で無いとは言え。
チャンと生活感の匂う場所なのに。
まったく音が無い!?
長い沈黙。
気の遠くなる程の。
深い静寂。
気も狂わんばかりの。
2人とも何も喋らない。
黙ってジッと見合っている。
しかし、
ただ黙って見合っているのではない。
互いの力量を量(はか)り合っているのだ。
互いの目を通して。
互いの眼力で。
(ビリビリビリビリビリ・・・)
二人の間には激しい空気の振動がある。
互いの気迫のぶつかり合いによる。
(ギンギンギンギンギン・・・)
二人の周りだけ異様に明るい。
互いのエネルギーの発散により。
しかし、
そこに音は・・・
全く無い。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #41 『不気味な笑い』の巻
2017-02-28
#41 『不気味な笑い』の巻
(ギギギギギ~~~!!)
ナ、ナナの頭が・・ナナの頭が・・ナナの頭だけがユ~~~ックリ回転したゾーーー!?
それも180度だゾーーー!?
ナナの頭だけがユックリと180度回転したゾーーー!?
体は全く動いてないゾーーー!?
こ、こんな事があっていいのかーーー!?
いい訳ないゾーーー!?
ナンテこったい!?
その姿はまるで、アメリカのワーナーブラザーズ映画 『エクソシスト』 でハリウッド女優リンダ・ブレア演じる “リーガン・テリーザ・マクニール” が、ベッドの上に座ったままの状態から頭だけ180度回転させたのと全く同じであった。
そして、
(チラッ)
ナナは視線を下げて地面を見た。
だが、
地面には、
特に変わった様子は無かった。
ただ、
強い照明でくっきりと出来たナナの影をトレースするかの様に、
“五寸釘の様な物” が十何本か地面に刺さっているだけだった。
そして、
そのうちの何本かをしゃがんで抜き取った外道の姿があった。
視線をナナに向け、
ナナの頭部の影の部分に刺さった五寸釘の様な物を何本かユックリと抜き取った外道の姿が、
そこには有るだけだった。
今、
その地面に刺さった “五寸釘の様な物” は、
確かにナナの影をトレースしている。
頭部を除いたナナの全身の影を。
それは、
確かに“ナナの影” を、
トレースしている。
ナナがそれに気付いたかどうかは分からなかった。
だが、
ナナはその体勢のまま、
(スゥー)
目線を外道に向けて、
外道の目に向けて、
(ニヤッ)
不気味な笑いを浮かべた。
・
・
・
・
・
つづく
(ギギギギギ~~~!!)
ナ、ナナの頭が・・ナナの頭が・・ナナの頭だけがユ~~~ックリ回転したゾーーー!?
それも180度だゾーーー!?
ナナの頭だけがユックリと180度回転したゾーーー!?
体は全く動いてないゾーーー!?
こ、こんな事があっていいのかーーー!?
いい訳ないゾーーー!?
ナンテこったい!?
その姿はまるで、アメリカのワーナーブラザーズ映画 『エクソシスト』 でハリウッド女優リンダ・ブレア演じる “リーガン・テリーザ・マクニール” が、ベッドの上に座ったままの状態から頭だけ180度回転させたのと全く同じであった。
そして、
(チラッ)
ナナは視線を下げて地面を見た。
だが、
地面には、
特に変わった様子は無かった。
ただ、
強い照明でくっきりと出来たナナの影をトレースするかの様に、
“五寸釘の様な物” が十何本か地面に刺さっているだけだった。
そして、
そのうちの何本かをしゃがんで抜き取った外道の姿があった。
視線をナナに向け、
ナナの頭部の影の部分に刺さった五寸釘の様な物を何本かユックリと抜き取った外道の姿が、
そこには有るだけだった。
今、
その地面に刺さった “五寸釘の様な物” は、
確かにナナの影をトレースしている。
頭部を除いたナナの全身の影を。
それは、
確かに“ナナの影” を、
トレースしている。
ナナがそれに気付いたかどうかは分からなかった。
だが、
ナナはその体勢のまま、
(スゥー)
目線を外道に向けて、
外道の目に向けて、
(ニヤッ)
不気味な笑いを浮かべた。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #40 『一瞬の静寂』の巻
2017-02-28
#40 『一瞬の静寂』の巻
(ガクン!!)
突然!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナナが止まった。
不自然な姿勢で。
走っている途中で。
走り掛けの姿勢の “まま” で。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナナは止まった。
まるで、ゆっさゆっさ乳(チチ)を揺らしながら、前がチョィ肌蹴(はだけ)掛かった浴衣姿の女性が走っているビデオを、再生中に一時停止したかの様に。
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
訳の分からない、でかくて甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げてナナが体を動かそうともがいた。
だが、
体は全く動かない。
ただ、
頭だけが上下している。
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
・・・
更に、何度かもがいた。
しかし状況は全く変わらない。
(ピタッ!!)
諦(あきら)めたのか?
ナナの頭の動きが止まった。
(シ~~~ン)
一瞬の静寂。
しかし、
次に我々は・・・
信じられない光景を・・・
目(ま)の当たりにする事になる。
・
・
・
・
・
つづく
(ガクン!!)
突然!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナナが止まった。
不自然な姿勢で。
走っている途中で。
走り掛けの姿勢の “まま” で。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナナは止まった。
まるで、ゆっさゆっさ乳(チチ)を揺らしながら、前がチョィ肌蹴(はだけ)掛かった浴衣姿の女性が走っているビデオを、再生中に一時停止したかの様に。
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
訳の分からない、でかくて甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げてナナが体を動かそうともがいた。
だが、
体は全く動かない。
ただ、
頭だけが上下している。
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
「ウィィィィィ~~~!! リィィィィィ~~~!!」
・・・
更に、何度かもがいた。
しかし状況は全く変わらない。
(ピタッ!!)
諦(あきら)めたのか?
ナナの頭の動きが止まった。
(シ~~~ン)
一瞬の静寂。
しかし、
次に我々は・・・
信じられない光景を・・・
目(ま)の当たりにする事になる。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #39 『普通なら』の巻
2017-02-27
#39 『普通なら』の巻
(ニマァ~)
外道は脂下(やにさ)がっていた。
浴衣のナナに跨(またが)れて。
ダッシュしてたから浴衣の前ナンかも当然、
はーだーけーてー!! (肌蹴て)
(エヘッ!!)
しかも、
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、・・・。
揺(ゆ)れチチだー!!
揺(ゆ)れチチだーー!!
揺(ゆ)れチチだーーー!!
ク、ク、ク、クッソ~~~!!!!!!!!!!
げ、げ、げ、外道めー、いい思いしやがってーーー!!!!!!!!!!
チッッッッッキショー~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
さて、
話は戻って・・・
(タン!!)
着地するが早いか、再びナナが走り始めた。
「ダァァァァァ~~~!!」
って。
ジャンプする直前の速さと全く変わらぬ速さで。
普通ではコレも有り得ない。
だが、今のナナには “普通なら” は全く意味をなさない。
「ダァァァァァ~~~!!」
凄い勢いでナナは井戸に向かっている。
井戸はもう目と鼻の先。
最早打つ手無し。
さぁ、外道ょ!?
何時(いつ)まで脂下がってる気だ?
次はどうする?
また縮地法か?
縮地法で間に合うのか?
どうなんだ外道ょーーー!?
と、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ニマァ~)
外道は脂下(やにさ)がっていた。
浴衣のナナに跨(またが)れて。
ダッシュしてたから浴衣の前ナンかも当然、
はーだーけーてー!! (肌蹴て)
(エヘッ!!)
しかも、
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、・・・。
揺(ゆ)れチチだー!!
揺(ゆ)れチチだーー!!
揺(ゆ)れチチだーーー!!
ク、ク、ク、クッソ~~~!!!!!!!!!!
げ、げ、げ、外道めー、いい思いしやがってーーー!!!!!!!!!!
チッッッッッキショー~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
さて、
話は戻って・・・
(タン!!)
着地するが早いか、再びナナが走り始めた。
「ダァァァァァ~~~!!」
って。
ジャンプする直前の速さと全く変わらぬ速さで。
普通ではコレも有り得ない。
だが、今のナナには “普通なら” は全く意味をなさない。
「ダァァァァァ~~~!!」
凄い勢いでナナは井戸に向かっている。
井戸はもう目と鼻の先。
最早打つ手無し。
さぁ、外道ょ!?
何時(いつ)まで脂下がってる気だ?
次はどうする?
また縮地法か?
縮地法で間に合うのか?
どうなんだ外道ょーーー!?
と、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #38 『女性が浴衣を着る時』の巻
2017-02-27
#38 『女性が浴衣を着る時』の巻
― 『某・テレビ局のワイドショー番組の街頭インタビュー』 にて ―
(レポーター) 「ここ渋谷では、夏場、浴衣姿の若い女性が目に付きます。 今日は女性達に浴衣について聞いてみたいと思います。 あ!? 丁度今、若い女性二人連れがコッチに来ます。 チョッとインタビューしてみますネ」
そう言ってレポーターの女性が、
(ツカツカツカツカツカ・・・)
二人連れの “若い女A”、 “若い女B” に近付いた。
(レポーター) 「すみませ~ん。 チョッといいかなぁ?」
(A) 「ナンですかぁ?」
(レポーター) 「浴衣について聞きたいんだヶど。 いい?」
(A) 「(Bに向かって) 全然いいょねぇ?」
(B) 「ウン。 全然いい、全然いい」
(A) 「(レポーターに向かって) 全然いいですょ」
(レポーター) 「あのさぁ。 二人とも夏場浴衣って着る?」
(A) 「ウン。 着る着る。 (Bに向かって) 着るょねー」
(B) 「ウン。 着る着る」
(レポーター) 「じゃ、さぁ。 質問なんだヶど・・・。 浴衣ン時ってさぁ。 ブラとかどうしてる? 着(つ)ける? 着けない? どっちィ?」
(A) 「キャ!? ヤダー!? そんな事言うんですかぁ?」
(レポーター) 「ウン。 言ってェ」
レポーターの意外な質問にチョッと面食らった女Aは、
自信なさ気に女Bに同意を求めた。
(A) 「着けない、よ、ね、・・・?」
するとそれに対して、
女Bはキッパリと答えた。
(B) 「ウン。 着けない着けない」
女Bの同意を得た女Aは、すかさず元のキャピに戻って女Bと一緒に、
声を揃えてこう言った。
(A、B一緒に) 「着けませ~ん」
(レポーター) 「じゃ、パンツは? パンツ穿(は)く? 穿かない?」
(A) 「ヤダー!? そんな事~。 アハハハハハ・・・。 アタシ穿かな~い!! アハハハハハ・・・」
(B) 「アタシもー!! アタシも穿かな~い!! アハハハハハ・・・」
(A、Bお互い同士を突っ突き合いながら) 「アハハハハハ・・・」
(レポーター) 「そう。 どうも有り難うー」
(A、Bは笑いながら去って行く) 「アハハハハハ・・・」
(レポーター) 「エ~。 今聞いて頂いた様に、女性は浴衣を着る時下着を着けない人が多いようです。 それではスタジオのみのさ~ん!! みのもんちっちさ~ん!! マイクお返ししま~す」
(みのもんちっち) 「ハ~ィ!! 有難うー!! (改まって) レポーターは滝川クリキントンさんでした。 滝川さんが下着を着けるか着けないかも聞きたかったなぁ。 オジサンとしては、エヘヘヘへ。 ・・・。 はい。 ただ今ご覧頂いた様に女性の多くは浴衣を着る時、パンツを穿いていない事が分かりました。 エヘ、エヘ、エヘ。 全国の良いこの皆さ~ん!! 浴衣姿の女性は、・・・ エヘ、エヘ、エヘ。 (ニヤニヤしながらささやく様に) ノー、ォー、パー、ン。 エヘ、エヘ、エヘ。 エヘ、エヘ、エヘ。 エヘ、エヘ、エッヘッヘヘ」
・
・
・
・
・
つづく
― 『某・テレビ局のワイドショー番組の街頭インタビュー』 にて ―
(レポーター) 「ここ渋谷では、夏場、浴衣姿の若い女性が目に付きます。 今日は女性達に浴衣について聞いてみたいと思います。 あ!? 丁度今、若い女性二人連れがコッチに来ます。 チョッとインタビューしてみますネ」
そう言ってレポーターの女性が、
(ツカツカツカツカツカ・・・)
二人連れの “若い女A”、 “若い女B” に近付いた。
(レポーター) 「すみませ~ん。 チョッといいかなぁ?」
(A) 「ナンですかぁ?」
(レポーター) 「浴衣について聞きたいんだヶど。 いい?」
(A) 「(Bに向かって) 全然いいょねぇ?」
(B) 「ウン。 全然いい、全然いい」
(A) 「(レポーターに向かって) 全然いいですょ」
(レポーター) 「あのさぁ。 二人とも夏場浴衣って着る?」
(A) 「ウン。 着る着る。 (Bに向かって) 着るょねー」
(B) 「ウン。 着る着る」
(レポーター) 「じゃ、さぁ。 質問なんだヶど・・・。 浴衣ン時ってさぁ。 ブラとかどうしてる? 着(つ)ける? 着けない? どっちィ?」
(A) 「キャ!? ヤダー!? そんな事言うんですかぁ?」
(レポーター) 「ウン。 言ってェ」
レポーターの意外な質問にチョッと面食らった女Aは、
自信なさ気に女Bに同意を求めた。
(A) 「着けない、よ、ね、・・・?」
するとそれに対して、
女Bはキッパリと答えた。
(B) 「ウン。 着けない着けない」
女Bの同意を得た女Aは、すかさず元のキャピに戻って女Bと一緒に、
声を揃えてこう言った。
(A、B一緒に) 「着けませ~ん」
(レポーター) 「じゃ、パンツは? パンツ穿(は)く? 穿かない?」
(A) 「ヤダー!? そんな事~。 アハハハハハ・・・。 アタシ穿かな~い!! アハハハハハ・・・」
(B) 「アタシもー!! アタシも穿かな~い!! アハハハハハ・・・」
(A、Bお互い同士を突っ突き合いながら) 「アハハハハハ・・・」
(レポーター) 「そう。 どうも有り難うー」
(A、Bは笑いながら去って行く) 「アハハハハハ・・・」
(レポーター) 「エ~。 今聞いて頂いた様に、女性は浴衣を着る時下着を着けない人が多いようです。 それではスタジオのみのさ~ん!! みのもんちっちさ~ん!! マイクお返ししま~す」
(みのもんちっち) 「ハ~ィ!! 有難うー!! (改まって) レポーターは滝川クリキントンさんでした。 滝川さんが下着を着けるか着けないかも聞きたかったなぁ。 オジサンとしては、エヘヘヘへ。 ・・・。 はい。 ただ今ご覧頂いた様に女性の多くは浴衣を着る時、パンツを穿いていない事が分かりました。 エヘ、エヘ、エヘ。 全国の良いこの皆さ~ん!! 浴衣姿の女性は、・・・ エヘ、エヘ、エヘ。 (ニヤニヤしながらささやく様に) ノー、ォー、パー、ン。 エヘ、エヘ、エヘ。 エヘ、エヘ、エヘ。 エヘ、エヘ、エッヘッヘヘ」
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #37 『頭上1メートル』の巻
2017-02-27
#37 『頭上1メートル』の巻
「キィィィィィ~~~ィ!! リィィィィィ~~~ィ!!」
振り向く外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。
恐るべきジャンプ力だ。
井戸はもう目前。
しかしナゼ、先を走っていた筈のナナが外道を飛び越えたのか?
実は、
外道は縮地法で、ナナの先回りをしてナナの前に出ていたのだ。
井戸に行かせない為に。
そしてナナの来る方に振り向いた。
丁度その時、ナナが外道を飛び越えた。
井戸に行く為に。
それが今だったのだ。
そして・・・
ナナに飛び越えられた瞬間、外道は・・・?
ン!?
外道は全く動かない。
否、
動けない。
目が “点” だ。
どうした外道?
様子が変だぞ!?
何があった?
ン?
>外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。
>外道の頭上1メートルをナナが・・・
>外道の頭上1メートルを・・・
>外道の頭上1メートル・・・
・・・
アッ!?(察し!!)
・
・
・
・
・
つづく
「キィィィィィ~~~ィ!! リィィィィィ~~~ィ!!」
振り向く外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。
恐るべきジャンプ力だ。
井戸はもう目前。
しかしナゼ、先を走っていた筈のナナが外道を飛び越えたのか?
実は、
外道は縮地法で、ナナの先回りをしてナナの前に出ていたのだ。
井戸に行かせない為に。
そしてナナの来る方に振り向いた。
丁度その時、ナナが外道を飛び越えた。
井戸に行く為に。
それが今だったのだ。
そして・・・
ナナに飛び越えられた瞬間、外道は・・・?
ン!?
外道は全く動かない。
否、
動けない。
目が “点” だ。
どうした外道?
様子が変だぞ!?
何があった?
ン?
>外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。
>外道の頭上1メートルをナナが・・・
>外道の頭上1メートルを・・・
>外道の頭上1メートル・・・
・・・
アッ!?(察し!!)
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #36 『大ジャンプ』の巻
2017-02-27
#36 『大ジャンプ』の巻
「キィィィィィ~~~ィ!! リィィィィィ~~~ィ!!」
突然!?
身を翻し、体勢を東から南向きに変え、耳が劈(つんざ)けん程の、鼓膜が破裂しそうな位の、馬鹿でかく甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げて、ナナが飛んだ。
ベッドから部屋の南側の窓まで一気に飛ぶ大ジャンプだ。
優に10メートルは飛んだだろうか?
それも足場の悪い柔らかいベッドの上からだ。
有り得ない!?
普通では絶対有り得ない事だ。
だが、それは現実に起こった。
(ガッ、シャーーーン!!)
窓ガラスが弾(はじ)け飛んだ。
ナナが窓ガラスを蹴破って、そのまま屋敷の外に飛び出し地面まで飛んだのだ!?
ナナの部屋の窓の高さはどう見ても40メートル以上は有る。
そこから地面まで飛んだのだ。
考えられない!?
これ又、普通では絶対考えられない事だ。
だが、ナナはそれをやってのけた。
しかも無傷で。
それどころか着地するや否や、脱兎(だっと)のごとく駆け出していた。
方角は井戸。
井戸の方向だ。
それはナナの部屋から見て東向き、即ち東側に有った。
外道は急いで窓に駆け寄り、見下ろした。
ダッシュするナナ。
その後姿が見える。
『は、速い!!』
外道は思った。
アッ!?
と、いう間にナナの姿が小さくなった。
最早、一刻の猶予も無い。
方向をシッカリ定めて、
間違えない様見定めて、
外道も飛んだ。
ナナを追って。
(シュッ!!)
瞬間、外道が消えた。
“縮地法” を使ったのだ。
・
・
・
・
・
つづく
「キィィィィィ~~~ィ!! リィィィィィ~~~ィ!!」
突然!?
身を翻し、体勢を東から南向きに変え、耳が劈(つんざ)けん程の、鼓膜が破裂しそうな位の、馬鹿でかく甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げて、ナナが飛んだ。
ベッドから部屋の南側の窓まで一気に飛ぶ大ジャンプだ。
優に10メートルは飛んだだろうか?
それも足場の悪い柔らかいベッドの上からだ。
有り得ない!?
普通では絶対有り得ない事だ。
だが、それは現実に起こった。
(ガッ、シャーーーン!!)
窓ガラスが弾(はじ)け飛んだ。
ナナが窓ガラスを蹴破って、そのまま屋敷の外に飛び出し地面まで飛んだのだ!?
ナナの部屋の窓の高さはどう見ても40メートル以上は有る。
そこから地面まで飛んだのだ。
考えられない!?
これ又、普通では絶対考えられない事だ。
だが、ナナはそれをやってのけた。
しかも無傷で。
それどころか着地するや否や、脱兎(だっと)のごとく駆け出していた。
方角は井戸。
井戸の方向だ。
それはナナの部屋から見て東向き、即ち東側に有った。
外道は急いで窓に駆け寄り、見下ろした。
ダッシュするナナ。
その後姿が見える。
『は、速い!!』
外道は思った。
アッ!?
と、いう間にナナの姿が小さくなった。
最早、一刻の猶予も無い。
方向をシッカリ定めて、
間違えない様見定めて、
外道も飛んだ。
ナナを追って。
(シュッ!!)
瞬間、外道が消えた。
“縮地法” を使ったのだ。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #35 『部屋の中』の巻
2017-02-26
#35 『部屋の中』の巻
(ドッ、カーーーン!!!)
ナナの部屋のドアが粉々に吹き飛んだ!!
・・・外道念法秘技・百歩雀拳の威力である。
(シュー~~~、 シュー~~、 シュー~、 シュー、 シュ、 シ・・・)
外道の放ったエネルギーが次第に収束する。
外道の体に戻ったのだ。
(ツカツカツカツカツカ・・・)
外道は素早くドアに歩み寄り、部屋の中に入った。
入ると直ぐに
(サッ!!)
と、部屋の中を見回した。
そして、
「オッ!?」
と、驚いた。
ベッドの上にナナが立っている。
東向きだ。
ドアのある方向、つまり外道の入って来た方向を向いていた。
しかし外道には視線を向けない。
手の鎖が外れている。
否、
切られたようだ。
手かせの所で。
つまり、ナナの手には鎖の切れた手かせのみが嵌(はま)っている。
切れた鎖は無造作に床に転がっていた。
先程2回聞こえた金属が擦(こす)れる様な音。
あれはこの鎖の切れる音だったに違いない。
ベッドの傍らに3人の世話係が倒れていた。
1人はベッドの頭部、足の来る方に残りの2人。
3人の位置と様子からすると吹き飛んだドアの破片による被害はなさそうだった。
3人とも秀吉、大河内同様グォーグォーあの異常な大鼾(おおいびき)を掻(か)いている。
外道はもう一度部屋の中を見回した。
だが、ナナ謂(い)う所の観音様の姿はドコにも無い。
外道はナナの方に向き直り話し掛けた。
「ナナさん」
「・・・」
ナナは無言だった。
もう一度話し掛けた。
「ナナさん」
「・・・」
やはり返事をしない。
目が虚(うつ)ろだ。
外道を見ようともしない。
外道の存在すら気付いていない様子だ。
小刻みに体が震えている。
外道はナナに近付こうとした。
一歩足を踏み出した。
その瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ドッ、カーーーン!!!)
ナナの部屋のドアが粉々に吹き飛んだ!!
・・・外道念法秘技・百歩雀拳の威力である。
(シュー~~~、 シュー~~、 シュー~、 シュー、 シュ、 シ・・・)
外道の放ったエネルギーが次第に収束する。
外道の体に戻ったのだ。
(ツカツカツカツカツカ・・・)
外道は素早くドアに歩み寄り、部屋の中に入った。
入ると直ぐに
(サッ!!)
と、部屋の中を見回した。
そして、
「オッ!?」
と、驚いた。
ベッドの上にナナが立っている。
東向きだ。
ドアのある方向、つまり外道の入って来た方向を向いていた。
しかし外道には視線を向けない。
手の鎖が外れている。
否、
切られたようだ。
手かせの所で。
つまり、ナナの手には鎖の切れた手かせのみが嵌(はま)っている。
切れた鎖は無造作に床に転がっていた。
先程2回聞こえた金属が擦(こす)れる様な音。
あれはこの鎖の切れる音だったに違いない。
ベッドの傍らに3人の世話係が倒れていた。
1人はベッドの頭部、足の来る方に残りの2人。
3人の位置と様子からすると吹き飛んだドアの破片による被害はなさそうだった。
3人とも秀吉、大河内同様グォーグォーあの異常な大鼾(おおいびき)を掻(か)いている。
外道はもう一度部屋の中を見回した。
だが、ナナ謂(い)う所の観音様の姿はドコにも無い。
外道はナナの方に向き直り話し掛けた。
「ナナさん」
「・・・」
ナナは無言だった。
もう一度話し掛けた。
「ナナさん」
「・・・」
やはり返事をしない。
目が虚(うつ)ろだ。
外道を見ようともしない。
外道の存在すら気付いていない様子だ。
小刻みに体が震えている。
外道はナナに近付こうとした。
一歩足を踏み出した。
その瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #34 『百歩雀拳』の巻
2017-02-26
#34 『百歩雀拳』の巻
これは、10年程前の出来事である。
外道はフトした事が切っ掛けで、
“湯出 多饅子(ゆで・たまんこ)著 『多々買え!! 湯麺饅頭(たたかえ・たんめんまん10)』”
なる、内容の良く分からない何と無く胡散臭(うさん・くさ)そうな書籍を手にした。
何気なくパラパラとページを捲(めく)った。
突然、外道の手が止まった。
食い入るように何かを見ている。
そうだ!?
それが “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” 操(あやつ)るところの、 “百歩萬拳” の紹介ページだったのだ。
単純な外道はその本を素直に信じた。
全く疑う事無く。
普通は疑うどころかこう思うのだが、
『そ~んなの・・・絶対無理ーーー!!』
って。
そしてそれ以来、外道は一心不乱にこの “百歩萬拳” という技に取り組んだ。
苦節10年。
終に外道は信じられない事に、このホントに有るのか無いのか如何(いかが)わしい技をとうとう我が物としちゃったのだった。
正にそれは “青天の霹靂(せいてんのへきれき)” とも言うべき “珍事(ちんじ)” であった。
その上さらに、この百歩萬拳に工夫と改良さえ加えちゃったのだ。
それがこの世にも恐るべき最強究極の必殺拳。
“ひ、ゃ、っ、ぽ、じ、ゃ、ん、け、ん”
そぅ、
“百歩雀拳”
だったのだ。
そして、この百歩雀拳には2種類ある。
“百歩雀拳α版(αバージョン)” と “百歩雀拳β版(βバージョン)”。
“百歩雀拳α版(αバージョン)” とはピンポイント攻撃用の技であり、今回外道が使ったのがコレ。
又、
普通に百歩雀拳と言ったらこの “α版(αバージョン)” を指す。
“百歩雀拳β版(βバージョン)” は別名 “ハイパー・百歩雀拳” とも言い、 “α版(αバージョン)” の強力版である。
次に、
ならば何故(なにゆえ) “百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)” なのか?
その理由を述べる前に我々は先ず、百歩雀拳の型を知らねばならない。
“百歩雀拳” の型とは・・・
始めに、
両足を肩幅サイズに広げ、仁王立ちになる。
次に、
静かに呼吸法を始める。
その呼吸に合わせながら、右脚を肩幅分後ろに引く。
同時に、
右手を掌(てのひら)を上に向けて右腰迄引いて来る。
左手は軽く前方に伸ばし掌を垂直に立てる。
その状態で3回ユックリ息を吸い、ユックリ吐く。
目を半眼にし、焦点は定めない。
当然この時、無念無想。
最後にもう一度ユックリ大きく息を吸い込む。
それと同時に右手掌を力を込めてグッと握る。
そして大きく息を吸い込んだ次の瞬間、クワッっと両目を見開き、狙いを定めた目標を見据え、吸い込んだ息を一気に吐きながら下半身はそのままで、右手の人差し指と中指だけを伸ばし力強く前方に掌が下向きになるように突き出す。
このとき左手はやはり力強く左腰まで引き戻す。
以上が百歩雀拳の型である。
上の説明で賢明なる読者諸氏には既にお分かり頂けた事と思うが、この一連の動きの中で右手が順にじゃんけんの
“パー”、 “グー”、 “チョキ”
の形を取る。
それが外道には面白かった。
だから外道はこの技を “百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)” と命名した。
唯それだけの事・・だったので・・ある。
外道という奴は、あんまり物事を深く考えた事がない。
だからそんなツマンナイ理由で、こんな凄まじい天下無敵の必殺拳に、
“拘(こだわら)らないどころか適当かました”
ネーミングをしちゃったのだ。
つまり外道は、
チョッピリお茶目な奴だった。
のであった。
・
・
・
・
・
つづく
これは、10年程前の出来事である。
外道はフトした事が切っ掛けで、
“湯出 多饅子(ゆで・たまんこ)著 『多々買え!! 湯麺饅頭(たたかえ・たんめんまん10)』”
なる、内容の良く分からない何と無く胡散臭(うさん・くさ)そうな書籍を手にした。
何気なくパラパラとページを捲(めく)った。
突然、外道の手が止まった。
食い入るように何かを見ている。
そうだ!?
それが “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” 操(あやつ)るところの、 “百歩萬拳” の紹介ページだったのだ。
単純な外道はその本を素直に信じた。
全く疑う事無く。
普通は疑うどころかこう思うのだが、
『そ~んなの・・・絶対無理ーーー!!』
って。
そしてそれ以来、外道は一心不乱にこの “百歩萬拳” という技に取り組んだ。
苦節10年。
終に外道は信じられない事に、このホントに有るのか無いのか如何(いかが)わしい技をとうとう我が物としちゃったのだった。
正にそれは “青天の霹靂(せいてんのへきれき)” とも言うべき “珍事(ちんじ)” であった。
その上さらに、この百歩萬拳に工夫と改良さえ加えちゃったのだ。
それがこの世にも恐るべき最強究極の必殺拳。
“ひ、ゃ、っ、ぽ、じ、ゃ、ん、け、ん”
そぅ、
“百歩雀拳”
だったのだ。
そして、この百歩雀拳には2種類ある。
“百歩雀拳α版(αバージョン)” と “百歩雀拳β版(βバージョン)”。
“百歩雀拳α版(αバージョン)” とはピンポイント攻撃用の技であり、今回外道が使ったのがコレ。
又、
普通に百歩雀拳と言ったらこの “α版(αバージョン)” を指す。
“百歩雀拳β版(βバージョン)” は別名 “ハイパー・百歩雀拳” とも言い、 “α版(αバージョン)” の強力版である。
次に、
ならば何故(なにゆえ) “百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)” なのか?
その理由を述べる前に我々は先ず、百歩雀拳の型を知らねばならない。
“百歩雀拳” の型とは・・・
始めに、
両足を肩幅サイズに広げ、仁王立ちになる。
次に、
静かに呼吸法を始める。
その呼吸に合わせながら、右脚を肩幅分後ろに引く。
同時に、
右手を掌(てのひら)を上に向けて右腰迄引いて来る。
左手は軽く前方に伸ばし掌を垂直に立てる。
その状態で3回ユックリ息を吸い、ユックリ吐く。
目を半眼にし、焦点は定めない。
当然この時、無念無想。
最後にもう一度ユックリ大きく息を吸い込む。
それと同時に右手掌を力を込めてグッと握る。
そして大きく息を吸い込んだ次の瞬間、クワッっと両目を見開き、狙いを定めた目標を見据え、吸い込んだ息を一気に吐きながら下半身はそのままで、右手の人差し指と中指だけを伸ばし力強く前方に掌が下向きになるように突き出す。
このとき左手はやはり力強く左腰まで引き戻す。
以上が百歩雀拳の型である。
上の説明で賢明なる読者諸氏には既にお分かり頂けた事と思うが、この一連の動きの中で右手が順にじゃんけんの
“パー”、 “グー”、 “チョキ”
の形を取る。
それが外道には面白かった。
だから外道はこの技を “百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)” と命名した。
唯それだけの事・・だったので・・ある。
外道という奴は、あんまり物事を深く考えた事がない。
だからそんなツマンナイ理由で、こんな凄まじい天下無敵の必殺拳に、
“拘(こだわら)らないどころか適当かました”
ネーミングをしちゃったのだ。
つまり外道は、
チョッピリお茶目な奴だった。
のであった。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #33 『百歩・・・』の巻
2017-02-26
#33 『百歩・・・』の巻
「百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)!! 哈(は)ーーー!!」
鋭い外道の声がリビング・ダイニングに響き渡った。
と、同時に、
(サッ!!)
外道が、ジャンケンのチョキの形にした右手をドアに向け勢い良く突き出した。
手の甲を上にして。
(ピカッ!!)
瞬間、
外道の指先が光る。
(バチバチバチバチバチーーー!!)
それは・・・エネルギーの波へと変わり、外道の指先から放たれる。
まるで稲妻の様に。
(ビキビキビキビキビキーーー!!)
それは・・・強大なうねりとなり、一直線に進む。
まるで脈打つ高波の様に。
(バリバリバリバリバリーーー!!)
それは・・・凄まじい速さで、そのまま一気にドアを襲う。
まるで獲物に飛び掛るライオンの様に。
こ、これは!? も、もしや!? は、発勁(はっけい)か!?
そ、それも・・・凄まじいまでの威力を持つ!?
(ドッ、カーーーン!!)
ナナの部屋のドアが一瞬にして吹き飛んだ。
・・・外道念法秘技・百歩雀拳の威力である。
解説しよう。
“発勁” とは?
人間の体内には微量の電流が流れている。
これを “生体電流(せいたいでんりゅう)” と言う。
人間の体内では様々(さまざま)な生体情報が、司令塔とも言うべき大脳から電気信号により神経回路を介して末梢神経領域(まっしょうしんけい・りょういき)まで伝えられている。
一例を挙げよう。
我々は就寝時(しゅうしんじ)であっても、無意識下(むいしきか)においても、休む事のない心臓のポンプ運動、そしてそれによる血液循環。
あるいは呼吸運動、臓器活動、及びそれらに伴なう物質代謝(ぶっしつたいしゃ)。
そういった物が常に行われている。
これらは全て自律神経が働いて、この “生体電流” に調節・管理させているのだ。
否、
この “生体電流” の働きその物を、自律神経の作用と言っても良いかも知れない。
そして、
脳波、心電図、筋電図等は、この “生体電流” を目に見える形(即ち、二次元平面)に波形化した物なのだ。
【結論】
人間の生命維持活動は全て、この “生体電流” が担(にな)うと言っても決して過言ではない。
この生命維持活動においてきわめて重要な要素である “生体電流” を、漢方では “気” という概念で考える。
そして、
この体内を巡る “気” を鍛錬して練り上げ、その練り上げた “気” をエネルギーとして体外に発し、何らかの作用を起こす事(俗に言う “念力”)。
これを “発経” と言う。
次に、
“百歩雀拳” とは?
これは、むかしむかしのお話じゃ。
ある所にそれはそれはツオ~~~ィ拳法家がおったのじゃ。
その拳法家はその名を “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” といった。
この “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” は彼がまだ幼かった頃、毒蛇(コブラ)党という言葉では言い表せぬ程恐ろしい集団に家族を殺され、自身も殺されかけたのじゃ。
断崖絶壁から突き落とされてのぅ。
絶体絶命じゃった。
ところがじゃ。
ところが 『捨てる神あれば拾う神あり』 の例え通り、彼は幸運にも絶壁の下を流れる底の深~い川に落ちたのじゃ。
お陰で一命を取り留めた。
と言うても、意識は既にのぅのぅておったのじゃが。
となれば、そのまま水に飲まれて沈むのが普通じゃ。
じゃが、余程の強運。
彼は水に飲まれて沈む事無く、そのまま流されたのじゃ。
これ又普通なら、意識無く川に流されれば水を飲む。
さすれば水死。
当然そうなる筈じゃ。
じゃが、そうはならなかった。
マッコツ彼は天から愛されておったのじゃろう。
偶々(たまたま)そこを通り掛かった萬 剋殺(まん・こくさい)老師という、これ又すっごくツオ~~~ィ拳法家に救われたのじゃ。
これは奇跡じゃ。
そうとしか言いようが無い。
彼は、天命を賜った童(わらし)じゃったに相違ない。
間違いなくそうじゃ。
そして、
それからじゃ。
それからこの童(わらし)は萬老師のもとで修行を始めたのじゃ。
親の仇を討つ為にのぅ。
それは、
来る日も来る日も、それはそれは過酷な修行じゃったそうな。
それが何と、実に12年間という長きに渡ったのじゃ。
そしてじゃ。
そして終に彼は、萬老師から奥義を授かった。
それはその名を 『豆粒極意書(とうりゅう・ごくいしょ)』 といったそうな。
この極意書は、読んで字の如く極意の記された豆粒(まめつぶ)じゃ。
この時彼はこの豆粒と一緒に、 “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” という名を萬老師に付けてもらったのじゃ。
そしてこの “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” は、見事 “親の仇” 毒蛇党毒蛇三兄弟(コブラとうコブラさんきょうだい)を討ち果たしたのじゃ。
特に、
毒蛇三兄弟《蛇五(ジャンゴ)、蛇六(ジャム)、蛇九(ジャンク)》のうち蛇六(ジャム)、蛇九(ジャンク)を打ち破った技が凄かった。
その技は念力技じゃった。
それは何と、百歩先にいる相手でさえ一瞬にして打ち破るというマッコツ恐るべき技だったのじゃ。
そしてその技の名、それは・・・萬 剋殺(まん・こくさい)老師の名から一字とって付けられた、
“百歩萬拳(ひゃっぽ・まんけん)”
そぅ。
“百歩萬拳” という・・・
名前だったのじゃ。
・
・
・
・
・
つづく
「百歩雀拳(ひゃっぽじゃんけん)!! 哈(は)ーーー!!」
鋭い外道の声がリビング・ダイニングに響き渡った。
と、同時に、
(サッ!!)
外道が、ジャンケンのチョキの形にした右手をドアに向け勢い良く突き出した。
手の甲を上にして。
(ピカッ!!)
瞬間、
外道の指先が光る。
(バチバチバチバチバチーーー!!)
それは・・・エネルギーの波へと変わり、外道の指先から放たれる。
まるで稲妻の様に。
(ビキビキビキビキビキーーー!!)
それは・・・強大なうねりとなり、一直線に進む。
まるで脈打つ高波の様に。
(バリバリバリバリバリーーー!!)
それは・・・凄まじい速さで、そのまま一気にドアを襲う。
まるで獲物に飛び掛るライオンの様に。
こ、これは!? も、もしや!? は、発勁(はっけい)か!?
そ、それも・・・凄まじいまでの威力を持つ!?
(ドッ、カーーーン!!)
ナナの部屋のドアが一瞬にして吹き飛んだ。
・・・外道念法秘技・百歩雀拳の威力である。
解説しよう。
“発勁” とは?
人間の体内には微量の電流が流れている。
これを “生体電流(せいたいでんりゅう)” と言う。
人間の体内では様々(さまざま)な生体情報が、司令塔とも言うべき大脳から電気信号により神経回路を介して末梢神経領域(まっしょうしんけい・りょういき)まで伝えられている。
一例を挙げよう。
我々は就寝時(しゅうしんじ)であっても、無意識下(むいしきか)においても、休む事のない心臓のポンプ運動、そしてそれによる血液循環。
あるいは呼吸運動、臓器活動、及びそれらに伴なう物質代謝(ぶっしつたいしゃ)。
そういった物が常に行われている。
これらは全て自律神経が働いて、この “生体電流” に調節・管理させているのだ。
否、
この “生体電流” の働きその物を、自律神経の作用と言っても良いかも知れない。
そして、
脳波、心電図、筋電図等は、この “生体電流” を目に見える形(即ち、二次元平面)に波形化した物なのだ。
【結論】
人間の生命維持活動は全て、この “生体電流” が担(にな)うと言っても決して過言ではない。
この生命維持活動においてきわめて重要な要素である “生体電流” を、漢方では “気” という概念で考える。
そして、
この体内を巡る “気” を鍛錬して練り上げ、その練り上げた “気” をエネルギーとして体外に発し、何らかの作用を起こす事(俗に言う “念力”)。
これを “発経” と言う。
次に、
“百歩雀拳” とは?
これは、むかしむかしのお話じゃ。
ある所にそれはそれはツオ~~~ィ拳法家がおったのじゃ。
その拳法家はその名を “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” といった。
この “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” は彼がまだ幼かった頃、毒蛇(コブラ)党という言葉では言い表せぬ程恐ろしい集団に家族を殺され、自身も殺されかけたのじゃ。
断崖絶壁から突き落とされてのぅ。
絶体絶命じゃった。
ところがじゃ。
ところが 『捨てる神あれば拾う神あり』 の例え通り、彼は幸運にも絶壁の下を流れる底の深~い川に落ちたのじゃ。
お陰で一命を取り留めた。
と言うても、意識は既にのぅのぅておったのじゃが。
となれば、そのまま水に飲まれて沈むのが普通じゃ。
じゃが、余程の強運。
彼は水に飲まれて沈む事無く、そのまま流されたのじゃ。
これ又普通なら、意識無く川に流されれば水を飲む。
さすれば水死。
当然そうなる筈じゃ。
じゃが、そうはならなかった。
マッコツ彼は天から愛されておったのじゃろう。
偶々(たまたま)そこを通り掛かった萬 剋殺(まん・こくさい)老師という、これ又すっごくツオ~~~ィ拳法家に救われたのじゃ。
これは奇跡じゃ。
そうとしか言いようが無い。
彼は、天命を賜った童(わらし)じゃったに相違ない。
間違いなくそうじゃ。
そして、
それからじゃ。
それからこの童(わらし)は萬老師のもとで修行を始めたのじゃ。
親の仇を討つ為にのぅ。
それは、
来る日も来る日も、それはそれは過酷な修行じゃったそうな。
それが何と、実に12年間という長きに渡ったのじゃ。
そしてじゃ。
そして終に彼は、萬老師から奥義を授かった。
それはその名を 『豆粒極意書(とうりゅう・ごくいしょ)』 といったそうな。
この極意書は、読んで字の如く極意の記された豆粒(まめつぶ)じゃ。
この時彼はこの豆粒と一緒に、 “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” という名を萬老師に付けてもらったのじゃ。
そしてこの “美来斗利偉・湯麺男(びくとりぃ・たんめんまん)” は、見事 “親の仇” 毒蛇党毒蛇三兄弟(コブラとうコブラさんきょうだい)を討ち果たしたのじゃ。
特に、
毒蛇三兄弟《蛇五(ジャンゴ)、蛇六(ジャム)、蛇九(ジャンク)》のうち蛇六(ジャム)、蛇九(ジャンク)を打ち破った技が凄かった。
その技は念力技じゃった。
それは何と、百歩先にいる相手でさえ一瞬にして打ち破るというマッコツ恐るべき技だったのじゃ。
そしてその技の名、それは・・・萬 剋殺(まん・こくさい)老師の名から一字とって付けられた、
“百歩萬拳(ひゃっぽ・まんけん)”
そぅ。
“百歩萬拳” という・・・
名前だったのじゃ。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #32 『一か八か』の巻
2017-02-26
#32 『一か八か』の巻
突然!?
ナナの声が止んだ。
同時に、
(ピタッ!!)
地震のような家の動きも止まった。
嘘のように。
『な、中で何が起こってるんだ!?』
外道はもう一度。
否、二度三度。
(ドカッ!!)
(ドカッ!!)
(ドカッ!!)
ドアに体当たりした。
しかし無駄だった。
『鍵を開けるしかない』
外道は思った。
だが、
外道は鍵を持っていない。
持っていると思われる二人は相変わらずグォーグォーだ。
だからどこにあるか分からない。
その時・・・
部屋のベッドのあると思われる方向から、
(ガチャッ!!)
(ガチャッ!!)
二度。
金属が擦(こす)れるような音が聞こえた。
『な、何だ!? 何が起こってるんだ!?』
外道の心に不安が過(よ)ぎる。
「スゥ~、フゥ~」
外道は一度大きく息を吸い、そして吐いた。
気持ちを抑えたのだ。
パニックにならない為に。
それが功を奏したのか、
『こうなったら、ヤルか!? 一か八か(いちかばちか)・・・!?』
チョッと考えた。
『良し!!』
腹が決まった。
外道はドアから5メートル程の距離まで後退(あとずさ)りした。
そこで仁王立ち。
次に、
静かに呼吸法を始めた。
その呼吸に合わせながら右脚を肩幅分後ろに引いた。
同時に、
両膝を少し曲げ、若干、腰を落としている。
両手は、
右手を掌(てのひら)を上に向けて右腰迄引いていた。
左手は軽く前方に伸ばし掌を垂直に立てている。
その状態で3回ユックリと息を吸い、ユックリと吐いた。
目は半眼。
(ゴゴゴゴゴゴ~~~!!)
外道の周りの空間が歪(ゆが)む。
まるで真夏の蜃気楼のように。
(グングングングングン~~~!!)
一回(ひとまわ)りも二回(ふたまわ)りも外道の体が大きくなる。
否、
大きくなった様に感じられる。
外道のエネルギーで。
(ビリビリビリビリビリ~~~!!)
部屋が、
そして、
屋敷全体が共振している。
外道の出す気の波長に合わせて。
外道よ!?
一体お前は・・・何をする気だ!?
外道はもう一度、大きく息を吸い込み始めた。
ユックリと・・・ユックリと・・・。
「スゥゥゥゥゥ~~~!!」
そして吸い込み切った。
次の瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
突然!?
ナナの声が止んだ。
同時に、
(ピタッ!!)
地震のような家の動きも止まった。
嘘のように。
『な、中で何が起こってるんだ!?』
外道はもう一度。
否、二度三度。
(ドカッ!!)
(ドカッ!!)
(ドカッ!!)
ドアに体当たりした。
しかし無駄だった。
『鍵を開けるしかない』
外道は思った。
だが、
外道は鍵を持っていない。
持っていると思われる二人は相変わらずグォーグォーだ。
だからどこにあるか分からない。
その時・・・
部屋のベッドのあると思われる方向から、
(ガチャッ!!)
(ガチャッ!!)
二度。
金属が擦(こす)れるような音が聞こえた。
『な、何だ!? 何が起こってるんだ!?』
外道の心に不安が過(よ)ぎる。
「スゥ~、フゥ~」
外道は一度大きく息を吸い、そして吐いた。
気持ちを抑えたのだ。
パニックにならない為に。
それが功を奏したのか、
『こうなったら、ヤルか!? 一か八か(いちかばちか)・・・!?』
チョッと考えた。
『良し!!』
腹が決まった。
外道はドアから5メートル程の距離まで後退(あとずさ)りした。
そこで仁王立ち。
次に、
静かに呼吸法を始めた。
その呼吸に合わせながら右脚を肩幅分後ろに引いた。
同時に、
両膝を少し曲げ、若干、腰を落としている。
両手は、
右手を掌(てのひら)を上に向けて右腰迄引いていた。
左手は軽く前方に伸ばし掌を垂直に立てている。
その状態で3回ユックリと息を吸い、ユックリと吐いた。
目は半眼。
(ゴゴゴゴゴゴ~~~!!)
外道の周りの空間が歪(ゆが)む。
まるで真夏の蜃気楼のように。
(グングングングングン~~~!!)
一回(ひとまわ)りも二回(ふたまわ)りも外道の体が大きくなる。
否、
大きくなった様に感じられる。
外道のエネルギーで。
(ビリビリビリビリビリ~~~!!)
部屋が、
そして、
屋敷全体が共振している。
外道の出す気の波長に合わせて。
外道よ!?
一体お前は・・・何をする気だ!?
外道はもう一度、大きく息を吸い込み始めた。
ユックリと・・・ユックリと・・・。
「スゥゥゥゥゥ~~~!!」
そして吸い込み切った。
次の瞬間・・・
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #31 『技』の巻
2017-02-25
#31 『技』の巻
「フン!!」
外道は両足を広げて踏ん張り、左手をナナの部屋のドアに押し付けて何とかバランスを保ちながら、
(ドンドンドン)
右手でドアを叩いた。
「ナナさん!! ナナさん!!」
大声で呼び掛けた。
何の反応も無い。
部屋には3人の世話係がいる筈だが。
恐らく秀吉達同様眠らされているのだろう。
「わくぐーあくらーせつ どくりゅうしょきとう ねんぴーかんのんりき じしつぷーかんがい ・・・」
(或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害 ・・・)
相変わらずナナの異常な大声だけは聞こえる。
そしてそれに伴なう激しい揺れも。
『それにしても、ナンと凄まじい声だ!?』
外道は思った。
(ドンドンドン)
「ナナさん!! ナナさん!!」
今度はもっと強く叩き、より一層声に力を込めて叫んだ。
だが、
「がんじゃぎゅうふくかつ けーどくえんかーねん ねんびーかんのんりき じんしょうじえーこ ・・・」
(玩蛇及蝮蠍 気毒煙火燃 念彼観音力 尋聲自回去 ・・・)
状況は変わらない。
否、
ナナの声がより一層大きくなったようにさえ感じられた。
外道は不安になった。
『仕方がない!! 体当たりだ!!』
(ドカッ!!)
外道が右肩から激しくドアにぶつかった。
ドアをぶち破る積もりだった。
だが、流石(さすが)は豪邸。
インナー・ドアとはいえ作りがシッカリしているのでビクともしない。
外道は焦った。
そして一瞬、頭の中をよぎった言葉があった。
『技だ!?』
しかし外道は躊躇(ためら)った。
部屋の中の状況が掴めない。
ナナの位置は大体分かる。
ベッドに鎖で繋がれている筈だ。
この大声も先程見たベッドのあったあの辺りから聞こえて来る。
そしてそのベッドは部屋の北側隅。
つまり部屋の西北角にある。
ドアは同じく部屋の北側東よりだ。
だからナナの心配は要らない。
だが、3人の世話係の女達。
そぅ、あの3人のいる位置が掴めない。
全く掴めない。
もしこの状況で技を使ったら?
彼女達に危害が及んだら?
だから外道は躊躇った。
その時、
(ピタッ!!)
突然・・・
ナナの声が止んだ。
・
・
・
・
・
つづく
「フン!!」
外道は両足を広げて踏ん張り、左手をナナの部屋のドアに押し付けて何とかバランスを保ちながら、
(ドンドンドン)
右手でドアを叩いた。
「ナナさん!! ナナさん!!」
大声で呼び掛けた。
何の反応も無い。
部屋には3人の世話係がいる筈だが。
恐らく秀吉達同様眠らされているのだろう。
「わくぐーあくらーせつ どくりゅうしょきとう ねんぴーかんのんりき じしつぷーかんがい ・・・」
(或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害 ・・・)
相変わらずナナの異常な大声だけは聞こえる。
そしてそれに伴なう激しい揺れも。
『それにしても、ナンと凄まじい声だ!?』
外道は思った。
(ドンドンドン)
「ナナさん!! ナナさん!!」
今度はもっと強く叩き、より一層声に力を込めて叫んだ。
だが、
「がんじゃぎゅうふくかつ けーどくえんかーねん ねんびーかんのんりき じんしょうじえーこ ・・・」
(玩蛇及蝮蠍 気毒煙火燃 念彼観音力 尋聲自回去 ・・・)
状況は変わらない。
否、
ナナの声がより一層大きくなったようにさえ感じられた。
外道は不安になった。
『仕方がない!! 体当たりだ!!』
(ドカッ!!)
外道が右肩から激しくドアにぶつかった。
ドアをぶち破る積もりだった。
だが、流石(さすが)は豪邸。
インナー・ドアとはいえ作りがシッカリしているのでビクともしない。
外道は焦った。
そして一瞬、頭の中をよぎった言葉があった。
『技だ!?』
しかし外道は躊躇(ためら)った。
部屋の中の状況が掴めない。
ナナの位置は大体分かる。
ベッドに鎖で繋がれている筈だ。
この大声も先程見たベッドのあったあの辺りから聞こえて来る。
そしてそのベッドは部屋の北側隅。
つまり部屋の西北角にある。
ドアは同じく部屋の北側東よりだ。
だからナナの心配は要らない。
だが、3人の世話係の女達。
そぅ、あの3人のいる位置が掴めない。
全く掴めない。
もしこの状況で技を使ったら?
彼女達に危害が及んだら?
だから外道は躊躇った。
その時、
(ピタッ!!)
突然・・・
ナナの声が止んだ。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #30 『奴』の巻
2017-02-25
#30 『奴』の巻
『奴か!?』
素早く外道はナナの部屋に近付いた。
そして、
(カチャカチャカチャ・・・)
急いでドアノブを何度か回した。
が、
開かない。
(カチャカチャカチャ・・・)
もう一度やってみた。
しかし、
同じだった。
鍵が掛かっているのだ、内側から。
さっきは掛かっていなかったのに。
「わくちーおんぞくねう かくしゅーとうかがい ねんぴーかんのんりき げんそくきーじしん ・・・」
(或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心 ・・・)
想像を絶した凄まじい読経(どきょう)の声が止む気配は全く無い。
揺れは益々大きくなる。
最早、部屋全体。
そして屋敷そのものが揺れ始めた。
まるで小刻みに揺れ続ける地震の様に。
そしてその揺れは終に、震度5の大地震の時の50階建て超高層マンション最上階プレミアムグレード・ルームの揺れに匹敵するまでになった。
このクラスの震度が報告された時、振幅1メートルともそれ以上とも言われる最上階プレミアムグレード・ルームのあの揺れに匹敵するまでに。
体のバランスを取るのが難しい。
何か手すりのような物にでも捕まっていなければ立っているのが不可能な程だ。
外道は身を翻(ひるがえ)し、激しい揺れの中、這うようにして近くで床に寝そべってグォーグォー大鼾(おおいびき)を掻(か)きながら気持ち良~く寝ている大河内に近付くと、
「大河内さん、大河内さん。 起きて下さい、大河内さん」
大河内の体を大きく揺すって起こそうとした。
しかし、
無駄だった。
起きない!?
大河内は一見、気持ち良さそうにグッスリと眠っている様に見えるが実際は病的な眠り。
そぅ。
何か強い薬物でも与えて眠らせたかの様な、
“病的な眠り”
に堕ちていた。
次に外道は、あの長テーブルの主人の座で眠っている秀吉の元へ今度はテーブルを伝(つた)うようにして近付き、同じ事をした。
だが、
秀吉も又、大河内と全く同じ状態だった。
「わくしゅーきんかーさー しゅそくひーちゅーかい ねんぴーかんのんりき しゃくねんとくげだつ ・・・」
(或囚禁枷鎖 手足被柱械 念彼観音力 釈然得解脱 ・・・)
相変わらず、凄まじいデカさのナナの声が屋敷中に響き渡っている。
それに共振して、
(グラグラグラグラグラ・・・)
激しく屋敷が揺れている。
外道は何とかバランスを保ちながらもヨタヨタと、再びナナの部屋のドアのある所に・・・
急ぎ戻った。
・
・
・
・
・
つづく
『奴か!?』
素早く外道はナナの部屋に近付いた。
そして、
(カチャカチャカチャ・・・)
急いでドアノブを何度か回した。
が、
開かない。
(カチャカチャカチャ・・・)
もう一度やってみた。
しかし、
同じだった。
鍵が掛かっているのだ、内側から。
さっきは掛かっていなかったのに。
「わくちーおんぞくねう かくしゅーとうかがい ねんぴーかんのんりき げんそくきーじしん ・・・」
(或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心 ・・・)
想像を絶した凄まじい読経(どきょう)の声が止む気配は全く無い。
揺れは益々大きくなる。
最早、部屋全体。
そして屋敷そのものが揺れ始めた。
まるで小刻みに揺れ続ける地震の様に。
そしてその揺れは終に、震度5の大地震の時の50階建て超高層マンション最上階プレミアムグレード・ルームの揺れに匹敵するまでになった。
このクラスの震度が報告された時、振幅1メートルともそれ以上とも言われる最上階プレミアムグレード・ルームのあの揺れに匹敵するまでに。
体のバランスを取るのが難しい。
何か手すりのような物にでも捕まっていなければ立っているのが不可能な程だ。
外道は身を翻(ひるがえ)し、激しい揺れの中、這うようにして近くで床に寝そべってグォーグォー大鼾(おおいびき)を掻(か)きながら気持ち良~く寝ている大河内に近付くと、
「大河内さん、大河内さん。 起きて下さい、大河内さん」
大河内の体を大きく揺すって起こそうとした。
しかし、
無駄だった。
起きない!?
大河内は一見、気持ち良さそうにグッスリと眠っている様に見えるが実際は病的な眠り。
そぅ。
何か強い薬物でも与えて眠らせたかの様な、
“病的な眠り”
に堕ちていた。
次に外道は、あの長テーブルの主人の座で眠っている秀吉の元へ今度はテーブルを伝(つた)うようにして近付き、同じ事をした。
だが、
秀吉も又、大河内と全く同じ状態だった。
「わくしゅーきんかーさー しゅそくひーちゅーかい ねんぴーかんのんりき しゃくねんとくげだつ ・・・」
(或囚禁枷鎖 手足被柱械 念彼観音力 釈然得解脱 ・・・)
相変わらず、凄まじいデカさのナナの声が屋敷中に響き渡っている。
それに共振して、
(グラグラグラグラグラ・・・)
激しく屋敷が揺れている。
外道は何とかバランスを保ちながらもヨタヨタと、再びナナの部屋のドアのある所に・・・
急ぎ戻った。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #29 『観音経』の巻
2017-02-25
#29 『観音経』の巻
「せーそんみょうそうぐ がーこんじゅもんぴ ぶっしがーいんねん みょういかんぜおん ・・・」
(世尊妙相具 我今重問彼 佛子何因縁 名為観世音 ・・・)
ナナの声だ!?
突然、ナナの部屋から微(かす)かにではあるが “観音経の偈文(かんのんきょう・の・げもん)” を暗誦するナナの声が聞こえて来た。
直ぐに、
「ぐーぜいじんにょかい りゃつこうふーしーぎ じーたーせんのくぶつ ほつだいしょうじょうがん ・・・」
(弘誓深如海 歴劫不思議 侍多千億佛 発大清浄願 ・・・)
その声は徐々にではあるが大きく成り始めた。
「けーしーこうがいい すいらくだいかきょう ねんぴーかんのんりき かーきょうへんじょうち ・・・」
(假使興害意 推落大火坑 念彼観音力 火坑変成池 ・・・)
ますます大きくなって来た。
まるで、
目の前にナナがいて、その読経する声を聞いている様だ。
その位デカくなった。
ナナの部屋の広さ、ドアの厚さ、及び外道の今いる位置を考えるとかなりの声量という事になる。
(ビリビリビリビリビリ・・・)
窓ガラスが小刻みに揺れている。
これだけの豪邸の窓ガラスだ。
当然ペアグラス。
あるいはトリプル。
否、
もっと頑丈な特注品かも知れない。
その窓ガラスが小刻みに、しかし激しく揺れている。
ナナの声に共振して。
「わくざいしゅみーぶ いーにんしょーすいだー ねんぴーかんのんりき にょにちこーくうじゅう ・・・」
(或在須弥峯 為人所推堕 念彼観音力 如日虚空住 ・・・)
声は・・・・・・どんどんデカくなる!!
それは・・・
とうとう・・・
“世界的ソプラノのサラ・ブライトマンやカンツォーネの女王ミルバが、今、外道の目の前で大声で歌っている”
というレベルにまで達した。
信じられない声量だ。
どう考えても人間が出せる域を遥かに越えている。
確かにナナの声に間違いないのだが。
(カタカタカタカタカタ・・・)
今度は家具が揺れ始めた。
床がナナの声に共振し始めたのだ。
『こ、この声は・・・。 ホ、ホントにナナか!? それとも・・・』
外道は思った。
・
・
・
・
・
つづく
「せーそんみょうそうぐ がーこんじゅもんぴ ぶっしがーいんねん みょういかんぜおん ・・・」
(世尊妙相具 我今重問彼 佛子何因縁 名為観世音 ・・・)
ナナの声だ!?
突然、ナナの部屋から微(かす)かにではあるが “観音経の偈文(かんのんきょう・の・げもん)” を暗誦するナナの声が聞こえて来た。
直ぐに、
「ぐーぜいじんにょかい りゃつこうふーしーぎ じーたーせんのくぶつ ほつだいしょうじょうがん ・・・」
(弘誓深如海 歴劫不思議 侍多千億佛 発大清浄願 ・・・)
その声は徐々にではあるが大きく成り始めた。
「けーしーこうがいい すいらくだいかきょう ねんぴーかんのんりき かーきょうへんじょうち ・・・」
(假使興害意 推落大火坑 念彼観音力 火坑変成池 ・・・)
ますます大きくなって来た。
まるで、
目の前にナナがいて、その読経する声を聞いている様だ。
その位デカくなった。
ナナの部屋の広さ、ドアの厚さ、及び外道の今いる位置を考えるとかなりの声量という事になる。
(ビリビリビリビリビリ・・・)
窓ガラスが小刻みに揺れている。
これだけの豪邸の窓ガラスだ。
当然ペアグラス。
あるいはトリプル。
否、
もっと頑丈な特注品かも知れない。
その窓ガラスが小刻みに、しかし激しく揺れている。
ナナの声に共振して。
「わくざいしゅみーぶ いーにんしょーすいだー ねんぴーかんのんりき にょにちこーくうじゅう ・・・」
(或在須弥峯 為人所推堕 念彼観音力 如日虚空住 ・・・)
声は・・・・・・どんどんデカくなる!!
それは・・・
とうとう・・・
“世界的ソプラノのサラ・ブライトマンやカンツォーネの女王ミルバが、今、外道の目の前で大声で歌っている”
というレベルにまで達した。
信じられない声量だ。
どう考えても人間が出せる域を遥かに越えている。
確かにナナの声に間違いないのだが。
(カタカタカタカタカタ・・・)
今度は家具が揺れ始めた。
床がナナの声に共振し始めたのだ。
『こ、この声は・・・。 ホ、ホントにナナか!? それとも・・・』
外道は思った。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #28 『結界』の巻
2017-02-25
#28 『結界』の巻
(ガクッ!!)
終に外道・・・・・・“堕(お)つ!!”
と、
思われた次の瞬間、
「キェ~~~ィ!!」
気合一閃(きあいいっせん)、外道が立ち上がった。
そして、
間髪(かんぱつ)を入れず
“結界(けっかい)”
を張った。
殆(ほとん)ど外道、本能的に取った行動だった。
“外道の張った結界”
それは、
“地結(ちけつ)” 並びに “四方結(しほうけつ)”。
即ち・・・
両手で “金剛橛印(こんごうけつ・いん)” を組み、
胸の前で大地にエネルギーの楔(くさび)を打ち込む様に観念しながら、3回ユックリと下方を押す。
その時同時に、
「オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!! オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!! オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!!」
と、真言三唱。
次に・・・
両手で “金剛墻印(こんごうしょう・いん)” を組み、
胸の前で四方位(東西南北)にエネルギーの防御壁を張り廻らせる様に観念しながら、時計回りに3回ユックリと廻す。
その時同時に、
「オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!! オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!! オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!!」
と、真言三唱。
コレ即ち、
『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』 の印と真言なり。
解説しよう。
“金剛橛印(こんごうけつ・いん)”とは?
両掌を胸の前で下向きに広げ、左手を上にする。
次に、
左右の親指、人差し指、小指を夫々(それぞれ)付ける。
そして、
左右の中指を左は右手の、右は左手の人差し指と中指の間に挟みこむ。
さらに、
左右の薬指を左は右手の、右は左手の小指と薬指の間に挟みこむ。
これが金剛橛(地結)である。
“金剛墻印(こんごうしょう・いん)”とは?
両掌を胸の前で手前向きに広げ、右手を手前にして重ねる。
次に、
左右の人差し指と小指の先を夫々(それぞれ)付ける。
そして、
左右の中指を左は右手の、右は左手の人差し指と中指の間に挟みこむ。
さらに、
左右の薬指を左は右手の、右は左手の小指と薬指の間に挟みこむ。
この時、
左右の親指は、人差し指の根元に付けて置く。
これが金剛墻(四方結)である。
又・・・
『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』とは?
読者諸氏には聞きなれない名前かも知れない。
軍荼利明王とは “密教(みっきょう)” の五大明王(ごだいみょうおう)五尊中の一尊であり、“仏部(ぶつぶ)”、 “金剛部(こんごうぶ)”、 “蓮華部(れんげぶ)”、 以上 “胎蔵三部(たいぞうさんぶ)《密教では二つの宇宙観を持つ。 即ち、金剛界(こんごうかい)と胎蔵界(たいぞうかい)。 しかしこの二つは夫々(それぞれ)別物では無く、表裏の関係にあると考えられている》”、 の弁事明王(べんじみょうおう)にして南方宝部(なんぽうほうぶ)の “忿怒身(ふんぬしん)”、即ち “教令輪(きょうりょうりん)”。
教令輪とは?
簡単に言えば、
如来(にょらい)を “自性輪身(じしょうりんしん)”、
その如来変化(へんげ)の菩薩を “正法輪身(しょうぼうりんしん)”、
その如来大忿怒(だいふんぬ)の明王を “教令輪身(きょうりょうりんしん)”
と言う。
これらを夫々(それぞれ)、 “自性輪(じしょうりん)”、 “正法輪(しょうほうりん)”、 “教令輪(きょうりょうりん)” と言っても慣例上意味は同じ。
軍荼利とは梵語であり、その意味するところは 『甘露(かんろ)』、あるいは 『安楽』 等となる。
この明王は、別名 『大咲(たいしょう)明王』、 『吉利吉利(きりきり)明王』、 『甘露明王』 等の名で呼ばれ、良く、疫病をもたらす所の 『毘那夜迦天(ビナヤカ・てん)』 即ち、インドの魔性の集団 “ビナヤカ族” の王でガナバチ(時にガネーシャ)、つまり、 『大聖歓喜天』 (俗に言う『聖天さん』)を調伏(ちょうぶく)する。 《聖天さんは、仏教に帰依する前は悪い奴だったのだ》
又、
ヨガの一派に “クンダリーニ・ヨガ” なる物があり、その “クンダリーニ” の象徴がこの 『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』 だ。
と、言う者もいる。
更にこの軍荼利明王は、
“結界の主尊であり、如何(いか)なる者もこの明王の結界には近付けない”
とも言われている。
この “軍荼利結界” により、
外道は何とか踏ん張って眠気を振り払い、
その状態から体勢を立て直した。
そして、
大急ぎで秀吉と大河内を見た。
秀吉は、
(バタッ!!)
主人の座でテーブルにうっ伏(ぷ)している。
眠っている様だ。
グォーグォーと大鼾(おおいびき)を掻(か)いている。
大河内はといえば、
(ドサッ!!)
床に倒れこんでやはり秀吉同様グォーグォー状態だ。
『き、来たか!? そ、それにしてもナンと強力な!!』
外道は驚いていた。
圧倒的な敵の力に。
それは外道の予想を遥かに上回っていたのだ。
と、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
(ガクッ!!)
終に外道・・・・・・“堕(お)つ!!”
と、
思われた次の瞬間、
「キェ~~~ィ!!」
気合一閃(きあいいっせん)、外道が立ち上がった。
そして、
間髪(かんぱつ)を入れず
“結界(けっかい)”
を張った。
殆(ほとん)ど外道、本能的に取った行動だった。
“外道の張った結界”
それは、
“地結(ちけつ)” 並びに “四方結(しほうけつ)”。
即ち・・・
両手で “金剛橛印(こんごうけつ・いん)” を組み、
胸の前で大地にエネルギーの楔(くさび)を打ち込む様に観念しながら、3回ユックリと下方を押す。
その時同時に、
「オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!! オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!! オン・キリキリ・バザラ・ブリツ・マンダマンダ・ウン・ハッタ・!!」
と、真言三唱。
次に・・・
両手で “金剛墻印(こんごうしょう・いん)” を組み、
胸の前で四方位(東西南北)にエネルギーの防御壁を張り廻らせる様に観念しながら、時計回りに3回ユックリと廻す。
その時同時に、
「オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!! オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!! オン・サラサラ・バザラ・ハラキャラ・ウン・ハッタ・!!」
と、真言三唱。
コレ即ち、
『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』 の印と真言なり。
解説しよう。
“金剛橛印(こんごうけつ・いん)”とは?
両掌を胸の前で下向きに広げ、左手を上にする。
次に、
左右の親指、人差し指、小指を夫々(それぞれ)付ける。
そして、
左右の中指を左は右手の、右は左手の人差し指と中指の間に挟みこむ。
さらに、
左右の薬指を左は右手の、右は左手の小指と薬指の間に挟みこむ。
これが金剛橛(地結)である。
“金剛墻印(こんごうしょう・いん)”とは?
両掌を胸の前で手前向きに広げ、右手を手前にして重ねる。
次に、
左右の人差し指と小指の先を夫々(それぞれ)付ける。
そして、
左右の中指を左は右手の、右は左手の人差し指と中指の間に挟みこむ。
さらに、
左右の薬指を左は右手の、右は左手の小指と薬指の間に挟みこむ。
この時、
左右の親指は、人差し指の根元に付けて置く。
これが金剛墻(四方結)である。
又・・・
『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』とは?
読者諸氏には聞きなれない名前かも知れない。
軍荼利明王とは “密教(みっきょう)” の五大明王(ごだいみょうおう)五尊中の一尊であり、“仏部(ぶつぶ)”、 “金剛部(こんごうぶ)”、 “蓮華部(れんげぶ)”、 以上 “胎蔵三部(たいぞうさんぶ)《密教では二つの宇宙観を持つ。 即ち、金剛界(こんごうかい)と胎蔵界(たいぞうかい)。 しかしこの二つは夫々(それぞれ)別物では無く、表裏の関係にあると考えられている》”、 の弁事明王(べんじみょうおう)にして南方宝部(なんぽうほうぶ)の “忿怒身(ふんぬしん)”、即ち “教令輪(きょうりょうりん)”。
教令輪とは?
簡単に言えば、
如来(にょらい)を “自性輪身(じしょうりんしん)”、
その如来変化(へんげ)の菩薩を “正法輪身(しょうぼうりんしん)”、
その如来大忿怒(だいふんぬ)の明王を “教令輪身(きょうりょうりんしん)”
と言う。
これらを夫々(それぞれ)、 “自性輪(じしょうりん)”、 “正法輪(しょうほうりん)”、 “教令輪(きょうりょうりん)” と言っても慣例上意味は同じ。
軍荼利とは梵語であり、その意味するところは 『甘露(かんろ)』、あるいは 『安楽』 等となる。
この明王は、別名 『大咲(たいしょう)明王』、 『吉利吉利(きりきり)明王』、 『甘露明王』 等の名で呼ばれ、良く、疫病をもたらす所の 『毘那夜迦天(ビナヤカ・てん)』 即ち、インドの魔性の集団 “ビナヤカ族” の王でガナバチ(時にガネーシャ)、つまり、 『大聖歓喜天』 (俗に言う『聖天さん』)を調伏(ちょうぶく)する。 《聖天さんは、仏教に帰依する前は悪い奴だったのだ》
又、
ヨガの一派に “クンダリーニ・ヨガ” なる物があり、その “クンダリーニ” の象徴がこの 『軍荼利明王(ぐんだり・みょうおう)』 だ。
と、言う者もいる。
更にこの軍荼利明王は、
“結界の主尊であり、如何(いか)なる者もこの明王の結界には近付けない”
とも言われている。
この “軍荼利結界” により、
外道は何とか踏ん張って眠気を振り払い、
その状態から体勢を立て直した。
そして、
大急ぎで秀吉と大河内を見た。
秀吉は、
(バタッ!!)
主人の座でテーブルにうっ伏(ぷ)している。
眠っている様だ。
グォーグォーと大鼾(おおいびき)を掻(か)いている。
大河内はといえば、
(ドサッ!!)
床に倒れこんでやはり秀吉同様グォーグォー状態だ。
『き、来たか!? そ、それにしてもナンと強力な!!』
外道は驚いていた。
圧倒的な敵の力に。
それは外道の予想を遥かに上回っていたのだ。
と、
その時・・・
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #27 『午前2時』の巻
2017-02-25
#27 『午前2時』の巻
(ボーン、ボーン)
柱時計が午前2時を告げた。
『2時だ!?』
外道は思った。
そして条件反射的に座っていた主賓(しゅひん)の座から立ち上がろうとした。
その時、
(ブルッ!!)
先程井戸で感じたのと同じ悪寒が外道の全身を走った。
そして、
(ガクッ!!)
危うく倒れ込むところだった。
突然の睡魔に襲われたのだ。
それはまるで地の底から腕が・・・。
そぅ。
腕だけがギューンと伸びてきて外道の体を引っつかみ、恐るべき強さで奈落の底迄引きずり込む。
そういった感覚だった。
外道初めての経験である。
「ウッ!?」
テーブルに両手を着け全身全霊の力を込めて外道は踏み止まった。
しかし事は、外道が椅子から完全に立ち上がりきらず脚が屈曲した状態で起こっていた。
だからバランスを崩し、右膝が殆(ほとん)ど床に付きそうな所まで崩れ落ちてしまった。
外道が歯を食い縛って踏ん張っている。
(プルプルプルプルプル・・・)
力を込めた全身の筋肉が震える。
引っ張る力は衰えない。
否、
益々強くなる。
そして、
『眠い!? 異様に眠い!?』
強力な引力、加えて襲い掛かって来る睡魔との闘いだ。
床に膝(ひざ)を着いたら眠ってしまう。
つまり、今、気を抜いたらそのまま一気に睡魔に屈してしまう。
直感的に外道はそれを理解した。
この間、ほんの数秒。
しかし外道にとっては気の遠くなる程長い時間だった。
引っ張る力が更に強くなった。
危うし外道!?
この状況に耐えられるのか~!?
この状況を無事乗り切れるのか~!?
一体全体、外道は・・・
ドウなってしまうのか~~~!?
・
・
・
・
・
つづく
(ボーン、ボーン)
柱時計が午前2時を告げた。
『2時だ!?』
外道は思った。
そして条件反射的に座っていた主賓(しゅひん)の座から立ち上がろうとした。
その時、
(ブルッ!!)
先程井戸で感じたのと同じ悪寒が外道の全身を走った。
そして、
(ガクッ!!)
危うく倒れ込むところだった。
突然の睡魔に襲われたのだ。
それはまるで地の底から腕が・・・。
そぅ。
腕だけがギューンと伸びてきて外道の体を引っつかみ、恐るべき強さで奈落の底迄引きずり込む。
そういった感覚だった。
外道初めての経験である。
「ウッ!?」
テーブルに両手を着け全身全霊の力を込めて外道は踏み止まった。
しかし事は、外道が椅子から完全に立ち上がりきらず脚が屈曲した状態で起こっていた。
だからバランスを崩し、右膝が殆(ほとん)ど床に付きそうな所まで崩れ落ちてしまった。
外道が歯を食い縛って踏ん張っている。
(プルプルプルプルプル・・・)
力を込めた全身の筋肉が震える。
引っ張る力は衰えない。
否、
益々強くなる。
そして、
『眠い!? 異様に眠い!?』
強力な引力、加えて襲い掛かって来る睡魔との闘いだ。
床に膝(ひざ)を着いたら眠ってしまう。
つまり、今、気を抜いたらそのまま一気に睡魔に屈してしまう。
直感的に外道はそれを理解した。
この間、ほんの数秒。
しかし外道にとっては気の遠くなる程長い時間だった。
引っ張る力が更に強くなった。
危うし外道!?
この状況に耐えられるのか~!?
この状況を無事乗り切れるのか~!?
一体全体、外道は・・・
ドウなってしまうのか~~~!?
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #26 『秀吉の不安』の巻
2017-02-25
#26 『秀吉の不安』の巻
「ユックリお休みになれましたかな? 破瑠魔殿」
着替えて客間から出てきた外道に秀吉が聞いた。
秀吉と大河内はズーッとリビングにいた様だった。
「お陰さまで。 始めはあの様な豪華なベッドでは寝付けないかなとも思ったのですが、ナンのナンのとても寝心地良く、お陰でぐっすり眠れました」
「そうですか。 それは良かった」
「イャー。 それにしても素晴らしいと申しますか? 凄いと申した方が正しいか? ナンと見事な屋敷ですなぁ。 我々庶民には想像も出来ない」
「イャイャ、お恥ずかしい」
「大したもんです」
「イャイャ、何と申しましても子供の頃からの夢でしたから。 この屋敷は」
「ウ~ム。 お見事」
「有難うございます」
「ところで話は変わりますが。 先程、ナナさんと一緒にいるとみんな眠ってしまうと申されましたな?」
「はい」
「ならばココにいると眠らずに済みますかな」
「さぁ? それは分かりません」
「ん? 分からない?」
「はい。 と申しますのも、例の時間にここにいた事がございません」
「無い?」
「はい。 ワシと大河内はその時間ワシが玄関、大河内が裏口。 夫々(それぞれ)眼を光らせておりますもので。 もしナナが屋敷の外に出ようものなら大変な事になるので。 もっとも先程ご覧になられました様に井戸には警備の者を付けてはおりますが」
「そうですか。 (チョッと考えてから) 私は今夜、ここにいて様子を見るつもりです。 お二方はどうされますかな?」
「破瑠魔殿がココにいてくださるなら、我々もご一緒させて頂きます。 宜しいでしょうか?」
「もちろん」
「有難うございます。 (大河内に) オィ!! 玄関と裏口には誰か家の者を」
「畏(かしこ)まりました。 直ぐ手配致します」
「ウム」
大河内が部屋から出て行った。
それを横目で見送ってから外道の方に向き直って秀吉が聞いた。
「さて、破瑠魔殿。 そろそろお考えをお聞かせ願えませんでしょうか」
「考え? ・・・。 あぁ、考えですか」
「はい」
「考えは~・・・。 特には」
「エッ!?」
「あ!? イャイャ。 そ、そのですなぁ。 先ず例の観音様とやらを見てみない事には始まりませんので。 話はそれからです」
「そ、そうですか。 特には無いのですか・・・」
チョッピリ不安な・・・
秀吉であった。
・
・
・
・
・
つづく
「ユックリお休みになれましたかな? 破瑠魔殿」
着替えて客間から出てきた外道に秀吉が聞いた。
秀吉と大河内はズーッとリビングにいた様だった。
「お陰さまで。 始めはあの様な豪華なベッドでは寝付けないかなとも思ったのですが、ナンのナンのとても寝心地良く、お陰でぐっすり眠れました」
「そうですか。 それは良かった」
「イャー。 それにしても素晴らしいと申しますか? 凄いと申した方が正しいか? ナンと見事な屋敷ですなぁ。 我々庶民には想像も出来ない」
「イャイャ、お恥ずかしい」
「大したもんです」
「イャイャ、何と申しましても子供の頃からの夢でしたから。 この屋敷は」
「ウ~ム。 お見事」
「有難うございます」
「ところで話は変わりますが。 先程、ナナさんと一緒にいるとみんな眠ってしまうと申されましたな?」
「はい」
「ならばココにいると眠らずに済みますかな」
「さぁ? それは分かりません」
「ん? 分からない?」
「はい。 と申しますのも、例の時間にここにいた事がございません」
「無い?」
「はい。 ワシと大河内はその時間ワシが玄関、大河内が裏口。 夫々(それぞれ)眼を光らせておりますもので。 もしナナが屋敷の外に出ようものなら大変な事になるので。 もっとも先程ご覧になられました様に井戸には警備の者を付けてはおりますが」
「そうですか。 (チョッと考えてから) 私は今夜、ここにいて様子を見るつもりです。 お二方はどうされますかな?」
「破瑠魔殿がココにいてくださるなら、我々もご一緒させて頂きます。 宜しいでしょうか?」
「もちろん」
「有難うございます。 (大河内に) オィ!! 玄関と裏口には誰か家の者を」
「畏(かしこ)まりました。 直ぐ手配致します」
「ウム」
大河内が部屋から出て行った。
それを横目で見送ってから外道の方に向き直って秀吉が聞いた。
「さて、破瑠魔殿。 そろそろお考えをお聞かせ願えませんでしょうか」
「考え? ・・・。 あぁ、考えですか」
「はい」
「考えは~・・・。 特には」
「エッ!?」
「あ!? イャイャ。 そ、そのですなぁ。 先ず例の観音様とやらを見てみない事には始まりませんので。 話はそれからです」
「そ、そうですか。 特には無いのですか・・・」
チョッピリ不安な・・・
秀吉であった。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #25 『深夜1時の目覚まし時計』の巻
2017-02-24
#25 『深夜1時の目覚まし時計』の巻
(ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ぺ~~~。 ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ペケ、ペーペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ・・・)
目覚(めざ)まし時計のお目覚め音楽だ。
曲は “エドワード・エルガー( Edward Elgar )” の 『愛の挨拶( Salut d'amour )』。
時間は午前1時ジャスト。
「ゥ、ゥ~ン」
外道が目覚めた。
「ファ~~~ァ、・・・。 アァ~。 良く寝た。 何時だ? (目覚まし時計を見る) 1時か。 良し」
外道は素早く飛び起きた。
そして、
シャツとパンツ姿のまま (外道は寝る時はいつもシャツとパンツだけだった、冬でも) 照明を点け、部屋備え付けの洗面化粧台で顔を洗った。
タオルで顔を拭きながらフト前を見た。
鏡に顔が映っている。
動きを止めて鏡に見入った。
ウットリとその鏡に映った己の顔に見入っている。
暫(しば)しウットリこいてから一言こう言った。
「イャー。 いっつ見ても、エェ男やなァ~。 ホンマ~・・・」
って。
ついでにこうも思った。
『コレ、この目。 この左右色違いのこの目。 正式名称は虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)。 しか~し!! アニメなんかじゃ金銀妖瞳(ヘテロクロミア)って言うんだょな、こういうの。 カック良いー。 そ・れ・に、この唇!! このキスしたくなるようなこの唇。 コレ、コレが女にはたまらんのじゃー。 コレがー。 エヘ、エヘ、エヘヘヘヘ・・・』
って。
そんでもってそんでもって、
「ニマ~、ニマ~」
ってした。
外道はと~~~っても・・・・・・ナルナルだった。
それから据付の姿見に姿を映し、ポーズを取って再びウットリこいた。
取ったポーズは、ゴリラのポーズ。 ボディ・ビラーの良くやる奴。 あのゴリラのポーズだ。
外道はユックリとボディ・ビラーのやる一連のポーズ、
即ち、ゴリラのタンゴを踊りきった。
それで充分満足したのだろう。
少しく悦に入ってから、フッと力を抜いた。
途端(とたん)に、プクッとお腹が出た。
ポッカリお腹だ!?
そぅ、
“ポッカリお腹”。
つまり、
この頃外道は、
“ポッカリお腹のメタボ君”
だった。
のであった。
・
・
・
・
・
つづく
(ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ぺ~~~。 ペーペケ、ペケペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ペケ、ペーペケ、ペッ、ペッ、ペッ。 ・・・)
目覚(めざ)まし時計のお目覚め音楽だ。
曲は “エドワード・エルガー( Edward Elgar )” の 『愛の挨拶( Salut d'amour )』。
時間は午前1時ジャスト。
「ゥ、ゥ~ン」
外道が目覚めた。
「ファ~~~ァ、・・・。 アァ~。 良く寝た。 何時だ? (目覚まし時計を見る) 1時か。 良し」
外道は素早く飛び起きた。
そして、
シャツとパンツ姿のまま (外道は寝る時はいつもシャツとパンツだけだった、冬でも) 照明を点け、部屋備え付けの洗面化粧台で顔を洗った。
タオルで顔を拭きながらフト前を見た。
鏡に顔が映っている。
動きを止めて鏡に見入った。
ウットリとその鏡に映った己の顔に見入っている。
暫(しば)しウットリこいてから一言こう言った。
「イャー。 いっつ見ても、エェ男やなァ~。 ホンマ~・・・」
って。
ついでにこうも思った。
『コレ、この目。 この左右色違いのこの目。 正式名称は虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)。 しか~し!! アニメなんかじゃ金銀妖瞳(ヘテロクロミア)って言うんだょな、こういうの。 カック良いー。 そ・れ・に、この唇!! このキスしたくなるようなこの唇。 コレ、コレが女にはたまらんのじゃー。 コレがー。 エヘ、エヘ、エヘヘヘヘ・・・』
って。
そんでもってそんでもって、
「ニマ~、ニマ~」
ってした。
外道はと~~~っても・・・・・・ナルナルだった。
それから据付の姿見に姿を映し、ポーズを取って再びウットリこいた。
取ったポーズは、ゴリラのポーズ。 ボディ・ビラーの良くやる奴。 あのゴリラのポーズだ。
外道はユックリとボディ・ビラーのやる一連のポーズ、
即ち、ゴリラのタンゴを踊りきった。
それで充分満足したのだろう。
少しく悦に入ってから、フッと力を抜いた。
途端(とたん)に、プクッとお腹が出た。
ポッカリお腹だ!?
そぅ、
“ポッカリお腹”。
つまり、
この頃外道は、
“ポッカリお腹のメタボ君”
だった。
のであった。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #24 『ナナの寝姿』の巻
2017-02-24
#24 『ナナの寝姿』の巻
「あぁ。 その前にチョッとナナさんの様子を」
そう言って、外道はナナの部屋に近付いた。
大河内は立ち止まって成り行きを見ている。
(コンコン)
「ナナさん。 失礼」
外道がナナの部屋のドアノブを掴んだ。
ドアに鍵は掛かっていなかった。
(ガチャ。 キー)
ドアを開けて部屋の中の様子を伺(うかが)った。
きっと今、一人は休んでいるのだろう、3人いた内の二人の世話係の女達が一斉に外道を見た。
「ナナさんは?」
女の一人が答えた。
「まださっきと同じ。 ズーっとお休みになられたままです」
外道はベッドに目をやった。
先程同様ナナは眠っている。
布団は掛けずに。
ん?
先程同様?
布団は掛けずに?
つー事は、
ナナは浴衣姿で、手に鎖。
且、
“はみチチと迄は行かないもののチョビットだけ。 そぅ、チョビットだけチチコンニチハ状態”
しかも、
その姿で、
“ね、 て、 い、 る”
こ、これは!? これは美味しい!!
このシチュエイションは美味しい!!
と~~~っても オ ・ イ ・ シ ・ イ ・ !!
ナナのその寝姿を見て、
『しっかし、エェ乳(チチ)やなぁ~~~』
(ゴックン)
生唾(なまつば)ゴックンの外道であった。
当然、
今の外道に緊張感は・・・
全く・・・
無い!?
・
・
・
・
・
つづく
「あぁ。 その前にチョッとナナさんの様子を」
そう言って、外道はナナの部屋に近付いた。
大河内は立ち止まって成り行きを見ている。
(コンコン)
「ナナさん。 失礼」
外道がナナの部屋のドアノブを掴んだ。
ドアに鍵は掛かっていなかった。
(ガチャ。 キー)
ドアを開けて部屋の中の様子を伺(うかが)った。
きっと今、一人は休んでいるのだろう、3人いた内の二人の世話係の女達が一斉に外道を見た。
「ナナさんは?」
女の一人が答えた。
「まださっきと同じ。 ズーっとお休みになられたままです」
外道はベッドに目をやった。
先程同様ナナは眠っている。
布団は掛けずに。
ん?
先程同様?
布団は掛けずに?
つー事は、
ナナは浴衣姿で、手に鎖。
且、
“はみチチと迄は行かないもののチョビットだけ。 そぅ、チョビットだけチチコンニチハ状態”
しかも、
その姿で、
“ね、 て、 い、 る”
こ、これは!? これは美味しい!!
このシチュエイションは美味しい!!
と~~~っても オ ・ イ ・ シ ・ イ ・ !!
ナナのその寝姿を見て、
『しっかし、エェ乳(チチ)やなぁ~~~』
(ゴックン)
生唾(なまつば)ゴックンの外道であった。
当然、
今の外道に緊張感は・・・
全く・・・
無い!?
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #23 『遅い夕食』の巻
2017-02-24
#23 『遅い夕食』の巻
「破瑠魔殿。 これからワシ達は、どうすればいいのでしょうか?」
長い沈黙を破って再び同じ質問を秀吉がした。
今、高級レストランを思わせるだだっ広いリビング・ダイニングに、
外道、秀吉、大河内の3人がいる。
中央には、
まるで中世ヨーロッパの貴族が使う様な白いリンネルのテーブルクロスで覆われた、超豪華な長~いテーブルがある。
当然、テーブルの上には超高価な純銀製と思われるアンティーク調のスリーアーム・キャンデラブラ(3本枝の燭台)が乗っている。
各アームには、普通のキャンドルの代わりに上品な香りのアロマ・キャンドルが焚かれていた。
そこに主人と主賓(しゅひん)が座るように秀吉と外道が対峙(たいじ)して座っている。
大河内が世話係だ。
テーブルには、後から後から豪華な食事が運ばれて来る。
調理場で作らせているのだろうか?
フレンチのコース料理だ。
ただし、状況が状況なだけにアルコール類は無い。
料理は、あのブラックラグーンのロベルタを思わせるナナの世話係とは別の制服姿の女が入り口まで運び、それを大河内が受け取り、外道と秀吉の元へと運んだ。
食器は全て、これまた超高価なマイセンのブルーオニオン。
ナイフ、フォーク、スプーンは皆、刻印入りクリストフルのスターリングシルバー925。
そして仕上げのコーヒーは、トアルコトラジャ。
それが、やはりマイセンのコーヒーカップに注がれた。
当然スプーンもスターリングシルバー925のティースプーンだ。
全てがセレブ御用達(ごようたし)だ。
二人はその料理を無言のまま食べ続け、丁度今食べ終わったところだった。
『しっかし、いっくら極上の食いモンでもこんなに食器に傷つけない様気にしながら食ったんじゃ、旨くもなんともねーよな』
本音ではそう思いながら外道が言った。
「ご馳走さまでした」
「お粗末さまでした。 お口に合いましたかな?」
テーブルナプキンで口を拭(ふ)きながら、満足そうに秀吉が聞いた。
「そりゃもう」
一応社交辞令でそう答える外道ではあった。
が、
『合うわきゃねーよ』
そう思っていたのは言うまでも無い。
そして・・・
先程のこの問い掛けがあったのだ。
「破瑠魔殿。 これからワシ達は、どうすればいいのでしょうか?」
という。
「ここで時間が来るのを待ちましょう。 丑三つ時を」
と、外道がそれに答えた。
「丑三つ時を? で? ワシ達は何を・・・?」
「先ずナナさんには見張りを」
「先程の3人では駄目でしょうか? 他に誰かを?」
「否。 彼女達で充分です。 しかし、彼女達は一体いつ休んでおられるのですか?」
「あぁ、それなら昼間ローテーションで一人ずつ。 その間必要があれば、ワシか大河内か手の空いてる方(ほう)が代わって付き添っております」
「なる程なる程。 (部屋の隅のしかし目立つ所にある立派な柱時計を見て) まもなく10時ですな。 シッカリ腹ごしらえも出来た事だし、チョッと遅かったですが」
「も、申し訳ございません」
「あ!? イャイャ。 そういう意味ではありません。 誤解なさらずに。 何せ事情が事情ですからな。 ア、ハハハハハ・・・」
「そう言って頂けますと。 はい」 (汗)
「ところで、空いてる部屋はありますか?」
「ございますが。 何か?」
「えぇ。 丑三つ時にはまだ時間があるのでチョッと一眠り。 休める部屋をお借りしたいのですが」
「あぁ、そういう事でしたか。 ならばナナの隣の客間をお使い下さい」
そして大河内に合図した。
「オィ!! 破瑠魔殿を薔薇(ばら)の間へ」
「畏まりました」
大河内が一礼した。
このフロアーの客間は夫々(それぞれ) “薔薇の間”、 “百合(ゆり)の間” という名前で呼ばれていた。
薔薇に百合?
フムフム。
なる程なる程。
その名に相応しい部屋だった。
勿論、豪華という意味でだ。
なにせ日本の超一級ホテルの最高級スィートルームもマッツァオのグレードだからだ。
大河内が外道に言った。
「破瑠魔様、どうぞこちらへ」
「かたじけない。 (秀吉に) では、後ほど」
「はい。 ごゆっくりお休み下さい」
秀吉の視線を背後に感じながら、大河内の案内で “薔薇の間” へと向かう・・・
外道であった。
・
・
・
・
・
つづく
「破瑠魔殿。 これからワシ達は、どうすればいいのでしょうか?」
長い沈黙を破って再び同じ質問を秀吉がした。
今、高級レストランを思わせるだだっ広いリビング・ダイニングに、
外道、秀吉、大河内の3人がいる。
中央には、
まるで中世ヨーロッパの貴族が使う様な白いリンネルのテーブルクロスで覆われた、超豪華な長~いテーブルがある。
当然、テーブルの上には超高価な純銀製と思われるアンティーク調のスリーアーム・キャンデラブラ(3本枝の燭台)が乗っている。
各アームには、普通のキャンドルの代わりに上品な香りのアロマ・キャンドルが焚かれていた。
そこに主人と主賓(しゅひん)が座るように秀吉と外道が対峙(たいじ)して座っている。
大河内が世話係だ。
テーブルには、後から後から豪華な食事が運ばれて来る。
調理場で作らせているのだろうか?
フレンチのコース料理だ。
ただし、状況が状況なだけにアルコール類は無い。
料理は、あのブラックラグーンのロベルタを思わせるナナの世話係とは別の制服姿の女が入り口まで運び、それを大河内が受け取り、外道と秀吉の元へと運んだ。
食器は全て、これまた超高価なマイセンのブルーオニオン。
ナイフ、フォーク、スプーンは皆、刻印入りクリストフルのスターリングシルバー925。
そして仕上げのコーヒーは、トアルコトラジャ。
それが、やはりマイセンのコーヒーカップに注がれた。
当然スプーンもスターリングシルバー925のティースプーンだ。
全てがセレブ御用達(ごようたし)だ。
二人はその料理を無言のまま食べ続け、丁度今食べ終わったところだった。
『しっかし、いっくら極上の食いモンでもこんなに食器に傷つけない様気にしながら食ったんじゃ、旨くもなんともねーよな』
本音ではそう思いながら外道が言った。
「ご馳走さまでした」
「お粗末さまでした。 お口に合いましたかな?」
テーブルナプキンで口を拭(ふ)きながら、満足そうに秀吉が聞いた。
「そりゃもう」
一応社交辞令でそう答える外道ではあった。
が、
『合うわきゃねーよ』
そう思っていたのは言うまでも無い。
そして・・・
先程のこの問い掛けがあったのだ。
「破瑠魔殿。 これからワシ達は、どうすればいいのでしょうか?」
という。
「ここで時間が来るのを待ちましょう。 丑三つ時を」
と、外道がそれに答えた。
「丑三つ時を? で? ワシ達は何を・・・?」
「先ずナナさんには見張りを」
「先程の3人では駄目でしょうか? 他に誰かを?」
「否。 彼女達で充分です。 しかし、彼女達は一体いつ休んでおられるのですか?」
「あぁ、それなら昼間ローテーションで一人ずつ。 その間必要があれば、ワシか大河内か手の空いてる方(ほう)が代わって付き添っております」
「なる程なる程。 (部屋の隅のしかし目立つ所にある立派な柱時計を見て) まもなく10時ですな。 シッカリ腹ごしらえも出来た事だし、チョッと遅かったですが」
「も、申し訳ございません」
「あ!? イャイャ。 そういう意味ではありません。 誤解なさらずに。 何せ事情が事情ですからな。 ア、ハハハハハ・・・」
「そう言って頂けますと。 はい」 (汗)
「ところで、空いてる部屋はありますか?」
「ございますが。 何か?」
「えぇ。 丑三つ時にはまだ時間があるのでチョッと一眠り。 休める部屋をお借りしたいのですが」
「あぁ、そういう事でしたか。 ならばナナの隣の客間をお使い下さい」
そして大河内に合図した。
「オィ!! 破瑠魔殿を薔薇(ばら)の間へ」
「畏まりました」
大河内が一礼した。
このフロアーの客間は夫々(それぞれ) “薔薇の間”、 “百合(ゆり)の間” という名前で呼ばれていた。
薔薇に百合?
フムフム。
なる程なる程。
その名に相応しい部屋だった。
勿論、豪華という意味でだ。
なにせ日本の超一級ホテルの最高級スィートルームもマッツァオのグレードだからだ。
大河内が外道に言った。
「破瑠魔様、どうぞこちらへ」
「かたじけない。 (秀吉に) では、後ほど」
「はい。 ごゆっくりお休み下さい」
秀吉の視線を背後に感じながら、大河内の案内で “薔薇の間” へと向かう・・・
外道であった。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #22 『超セレブ』の巻
2017-02-24
#22 『超セレブ』の巻
「ワシらはこれからどうすれば・・・?」
心配そうな顔で秀吉が聞いた。
「先ず屋敷に戻って。 詳しい話はそれから」
外道が答えた。
外道達3人が屋敷に着いたのは10分後だった。
しつこい様だがそれ程この庭は広かった。
その間誰一人声を出す者はいなかった。
外道は考えていた。
どうすれば良いかを。
その存在は確かなのだがまだ実体が掴めていない何者かを、どうしたら良いかを。
しかし、
『考えても無駄か? 待つしかないか?』
コレが結局結論だった。
屋敷に着くと外道は “いわゆる” 4階に案内された。
ナゼ “いわゆる” か?
前にも言ったがこの屋敷にはどうも隠しフローが存在していそうだからだ。
そこにはだだっ広いリビングダイニングがあった。
広さがどの位有るのか外道には見当がつかない。
一寸したレストラン位は楽に有りそうだ。
他に、ナナの部屋同様白いロココ調家具で統一された、ゴージャスとしか言い様の無い客間が二つ。
高級デパートに有る様な超豪華トイレにチョイとした銭湯一個分のバスルーム。
そこには地下から汲み上げた温泉が引いてある。
大河内の説明によると泉質は、
“カルシウム(マグネシウム)、炭酸水素塩泉、ナトリウム炭酸水素塩塩化物泉” の “重曹泉” との事だった。
俗に言う “美人の湯” という奴だ。
何から何まで “超セレブ”。
そぅ、
“超セレブ”
それしか表現の仕様が無い。
何をすればこんな屋敷を建てられるのか?
貧乏人の外道には皆目見当がつかなかった。
そして問題の “ナナの部屋” も・・・
このフロアーに有った。
・
・
・
・
・
つづく
「ワシらはこれからどうすれば・・・?」
心配そうな顔で秀吉が聞いた。
「先ず屋敷に戻って。 詳しい話はそれから」
外道が答えた。
外道達3人が屋敷に着いたのは10分後だった。
しつこい様だがそれ程この庭は広かった。
その間誰一人声を出す者はいなかった。
外道は考えていた。
どうすれば良いかを。
その存在は確かなのだがまだ実体が掴めていない何者かを、どうしたら良いかを。
しかし、
『考えても無駄か? 待つしかないか?』
コレが結局結論だった。
屋敷に着くと外道は “いわゆる” 4階に案内された。
ナゼ “いわゆる” か?
前にも言ったがこの屋敷にはどうも隠しフローが存在していそうだからだ。
そこにはだだっ広いリビングダイニングがあった。
広さがどの位有るのか外道には見当がつかない。
一寸したレストラン位は楽に有りそうだ。
他に、ナナの部屋同様白いロココ調家具で統一された、ゴージャスとしか言い様の無い客間が二つ。
高級デパートに有る様な超豪華トイレにチョイとした銭湯一個分のバスルーム。
そこには地下から汲み上げた温泉が引いてある。
大河内の説明によると泉質は、
“カルシウム(マグネシウム)、炭酸水素塩泉、ナトリウム炭酸水素塩塩化物泉” の “重曹泉” との事だった。
俗に言う “美人の湯” という奴だ。
何から何まで “超セレブ”。
そぅ、
“超セレブ”
それしか表現の仕様が無い。
何をすればこんな屋敷を建てられるのか?
貧乏人の外道には皆目見当がつかなかった。
そして問題の “ナナの部屋” も・・・
このフロアーに有った。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #21 『縮地法』の巻
2017-02-23
#21 『縮地法』の巻
『祝! 痴呆!!』 否 『縮地法(しゅくちほう)』
といった。
解説しよう。
一瞬にして相手との間合いを詰める “瞬間移動の技”。
コレを “縮地法” という。
仙術の技の一つとされる。
日本では、もっぱら “ Teleportation (テレポーテーション)” という名で呼ばれる事の方が多い。
(縮地法を Google 先生に聞くと、色々面白い話を教えてくれますょ : 作者)
外道お得意の技だ。
ナナの部屋でのナナの意表をついた素早い動きもコレだった。
ジィーっと、しかし、油断無く外道は井戸の中を覗きこんだ。
手にした懐中電灯のお陰でシッカリと観察が出来た。
先程感じた妙な悪寒と動きは無かった。
が、
強い瘴気は相変わらずだった。
ジックリと慎重にそして丹念に調べた。
その間、約10分。
外道はユックリと井戸から離れた。
体の向きを変えずに。
つまり後ろ歩きでだ。
そして、同じ姿勢のまま鉄格子の外へ出た。
鉄格子の扉を閉めて始めて体の向きを変えた。
先程見せた一瞬の動きと全く正反対の外道のその慎重な行動が、返って秀吉達の不安を煽(あお)った。
より一層である。
それは、瞬(まばた)き一つせず、秀吉達が息を殺して外道の動きに見入っていた事で明らかだった。
ズーンと辺りの空気が重い。
言葉を発する者は誰もいない。
外道が腕組みをして考え始めた。
その動きに合わせるかの様に大河内が鉄格子の扉に鍵をかけた。
(カチャ!!)
鍵の掛かる音がした。
大河内が振り返った。
それを見て、外道が言った。
「瘴気の元が行動を起こすまで待ちましょう」
・
・
・
・
・
つづく
『祝! 痴呆!!』 否 『縮地法(しゅくちほう)』
といった。
解説しよう。
一瞬にして相手との間合いを詰める “瞬間移動の技”。
コレを “縮地法” という。
仙術の技の一つとされる。
日本では、もっぱら “ Teleportation (テレポーテーション)” という名で呼ばれる事の方が多い。
(縮地法を Google 先生に聞くと、色々面白い話を教えてくれますょ : 作者)
外道お得意の技だ。
ナナの部屋でのナナの意表をついた素早い動きもコレだった。
ジィーっと、しかし、油断無く外道は井戸の中を覗きこんだ。
手にした懐中電灯のお陰でシッカリと観察が出来た。
先程感じた妙な悪寒と動きは無かった。
が、
強い瘴気は相変わらずだった。
ジックリと慎重にそして丹念に調べた。
その間、約10分。
外道はユックリと井戸から離れた。
体の向きを変えずに。
つまり後ろ歩きでだ。
そして、同じ姿勢のまま鉄格子の外へ出た。
鉄格子の扉を閉めて始めて体の向きを変えた。
先程見せた一瞬の動きと全く正反対の外道のその慎重な行動が、返って秀吉達の不安を煽(あお)った。
より一層である。
それは、瞬(まばた)き一つせず、秀吉達が息を殺して外道の動きに見入っていた事で明らかだった。
ズーンと辺りの空気が重い。
言葉を発する者は誰もいない。
外道が腕組みをして考え始めた。
その動きに合わせるかの様に大河内が鉄格子の扉に鍵をかけた。
(カチャ!!)
鍵の掛かる音がした。
大河内が振り返った。
それを見て、外道が言った。
「瘴気の元が行動を起こすまで待ちましょう」
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #20 『テレポーテーション』の巻
2017-02-23
#20 『テレポーテーション』の巻
「ハァハァハァハァハァ・・・。 コレでよろしゅうございますでしょうか? ハァハァハァハァハァ・・・」
そう言って大河内が懐中電灯を外道に手渡した。
激しく息を切らせている。
無理もない、この庭の広さを考えたなら。
懐中電灯を取りに行って帰って来るまで優に10分以上掛かっていた。
その間ズーっと走りっぱなしだったのだろう。
大河内を待っている間。
外道は、目を半眼にする、あの “外道流” で辺りをチェックしていた。
井戸の周りは陰気ではあったが、特にそこが “瘴気” の本(もと)ではなかった。
やはり、“井戸”。
そぅ。
全ては “井戸の中” だった。
「ウム。 これで結構です」
手渡された懐中電灯の明るさをチェックして、外道が言った。
そして、
(クルッ!!)
井戸に向かって外道が体を翻したかと思った次の瞬間。
秀吉達は皆、
「ハッ!?」
と我が目を疑う光景を目(ま)の当たりにした。
今、目の前にいた筈の外道が、
もう、井戸の中を覗(のぞ)き込んでいたのだ。
“目にも留まらぬ速さ”
という言葉があるが、
正にそれだった。
まるで、外道がテレポーテーションでもしたかのようだった。
ん!?
テレポーテーション???
そうだ!?
外道は技を使ったのだ!?
井戸の中からの不意の攻撃を防ぐために。
その時、外道には・・・
『秀吉達の意表をついたこの動きにより、先ずこの周囲の気の流れを一時的に撹乱(かくらん)し、それにより瘴気を発する正体不明の何者かのリズムを狂わせ、攻撃のタイミングを与えない』
という狙いがあったのだ。
そして外道が使ったその技の名・・・
それは・・・
・
・
・
・
・
つづく
「ハァハァハァハァハァ・・・。 コレでよろしゅうございますでしょうか? ハァハァハァハァハァ・・・」
そう言って大河内が懐中電灯を外道に手渡した。
激しく息を切らせている。
無理もない、この庭の広さを考えたなら。
懐中電灯を取りに行って帰って来るまで優に10分以上掛かっていた。
その間ズーっと走りっぱなしだったのだろう。
大河内を待っている間。
外道は、目を半眼にする、あの “外道流” で辺りをチェックしていた。
井戸の周りは陰気ではあったが、特にそこが “瘴気” の本(もと)ではなかった。
やはり、“井戸”。
そぅ。
全ては “井戸の中” だった。
「ウム。 これで結構です」
手渡された懐中電灯の明るさをチェックして、外道が言った。
そして、
(クルッ!!)
井戸に向かって外道が体を翻したかと思った次の瞬間。
秀吉達は皆、
「ハッ!?」
と我が目を疑う光景を目(ま)の当たりにした。
今、目の前にいた筈の外道が、
もう、井戸の中を覗(のぞ)き込んでいたのだ。
“目にも留まらぬ速さ”
という言葉があるが、
正にそれだった。
まるで、外道がテレポーテーションでもしたかのようだった。
ん!?
テレポーテーション???
そうだ!?
外道は技を使ったのだ!?
井戸の中からの不意の攻撃を防ぐために。
その時、外道には・・・
『秀吉達の意表をついたこの動きにより、先ずこの周囲の気の流れを一時的に撹乱(かくらん)し、それにより瘴気を発する正体不明の何者かのリズムを狂わせ、攻撃のタイミングを与えない』
という狙いがあったのだ。
そして外道が使ったその技の名・・・
それは・・・
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #19 『井戸の中』の巻
2017-02-23
#19 『井戸の中』の巻
「直接井戸の中を見たいのですが」
秀吉に向かって外道が言った。
「はい」
そう答え、秀吉が大河内に命じた。
「オィ!!」
軽く会釈をして大河内が鉄格子の鍵を開けた。
他の者を残して外道だけがユックリと井戸に歩み寄った。
そして慎重に、且(かつ)注意深く中を覗いた。
井戸は思ったよりも浅かった。
しかし角度の関係か、水面に照明の明かりは直接届いてはいない。
だが、
幸いその晩は雲が薄く、又、丁度切れ目に当たっていた為、月明かりが井戸内部の壁に反射してほんのりと水面を照らしていた。
その水面がきらきら輝いていた。
しかし周りの様子は暗くて良く見えない。
その時、井戸の中で、
(ガサッ!!)
何かが動いたような気がした。
瞬間、
(ブルッ!!)
外道は身震いした。
体の中を何かが突き抜けたのだ。
軽い電気ショックのような何かが。
『瘴気(しょうき)だ! それもかなり強い!!』
外道はとっさに半歩 否 一歩。
井戸から飛びのいていた。
本能的に身の危険を感じての事だった。
と、同時に秀吉の方に振り向いた。
そして言った。
「懐中電灯か何か有りませんか? 何か照らすもの。 何でもいいのですが」
秀吉はうなずき大河内にアゴで指示した。
「ただ今、取ってまいります」
そう言って、大河内が屋敷に向かって走り出した。
「どうです破瑠魔殿? 何か?」
そう言いながら秀吉が鉄格子の中に入って来ようとした。
が、
立ち止まった。
外道が入ってくるなと手で静止したからだ。
「貴方は、否、誰もココへは近付かない方が賢明です」
「やはり何か?」
「はい。 強い霊気が。 それもかなり厄介な」
「そ、そうですか。 強い霊気ですか」
秀吉の顔にはハッキリと、不安と困惑の表情が・・・
現れていた。
・
・
・
・
・
つづく
「直接井戸の中を見たいのですが」
秀吉に向かって外道が言った。
「はい」
そう答え、秀吉が大河内に命じた。
「オィ!!」
軽く会釈をして大河内が鉄格子の鍵を開けた。
他の者を残して外道だけがユックリと井戸に歩み寄った。
そして慎重に、且(かつ)注意深く中を覗いた。
井戸は思ったよりも浅かった。
しかし角度の関係か、水面に照明の明かりは直接届いてはいない。
だが、
幸いその晩は雲が薄く、又、丁度切れ目に当たっていた為、月明かりが井戸内部の壁に反射してほんのりと水面を照らしていた。
その水面がきらきら輝いていた。
しかし周りの様子は暗くて良く見えない。
その時、井戸の中で、
(ガサッ!!)
何かが動いたような気がした。
瞬間、
(ブルッ!!)
外道は身震いした。
体の中を何かが突き抜けたのだ。
軽い電気ショックのような何かが。
『瘴気(しょうき)だ! それもかなり強い!!』
外道はとっさに半歩 否 一歩。
井戸から飛びのいていた。
本能的に身の危険を感じての事だった。
と、同時に秀吉の方に振り向いた。
そして言った。
「懐中電灯か何か有りませんか? 何か照らすもの。 何でもいいのですが」
秀吉はうなずき大河内にアゴで指示した。
「ただ今、取ってまいります」
そう言って、大河内が屋敷に向かって走り出した。
「どうです破瑠魔殿? 何か?」
そう言いながら秀吉が鉄格子の中に入って来ようとした。
が、
立ち止まった。
外道が入ってくるなと手で静止したからだ。
「貴方は、否、誰もココへは近付かない方が賢明です」
「やはり何か?」
「はい。 強い霊気が。 それもかなり厄介な」
「そ、そうですか。 強い霊気ですか」
秀吉の顔にはハッキリと、不安と困惑の表情が・・・
現れていた。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #18 『妖気』の巻
2017-02-23
#18 『妖気』の巻
『妖気だ!?』
先程から、外道は怪しい霊気が立ち込めているのを感じ取っていた。
庭の他の場所とは全く異質の。
それは井戸に近付くにつれ強くなった。
照明で昼間の様に明るいには明るいが、 “気” が暗い。
確かに、明るい筈なのに。
暗くてズ~ンと気が重い。
コレ即ち、 “妖気” なり。
「これが例の井戸でございます」
大河内が言った。
『やはり、ここからだ!!』
外道は思った。
井戸は鉄格子で囲われていた。
その鉄格子の高さは3m位は有りそうだった。
傍に見張り役と思われる屈強そうな大男が二人立っている。
着ている物が黒っぽい。
二人は秀吉に一礼した。
いかにも体育会系でございますと言わんばかりの仕方で。
なんとなく “ゴルゴサーティーンのワンシーン” にでも出てきそうな感じで。
井戸の周りを回りながら外道が聞いた。
「又、随分と頑丈そうな鉄格子ですな」
「はい。 ナナが近付けないようにと急遽、拵(こしら)えました。 井戸の埋め立ても考えたのですが。 それは少し怖かったものですから、代わりにコレを」
「二重、三重のガードという訳ですな。 感心感心」
「はい。 何せナナはワシの大切な大切な一人娘ですので」
「まぁ、アレだけ美しいと。 お気持ちは良~く分かります。 ・・・。 あぁ、ところで奥様は?」
「亡くなりました。 去年」
「そうですか。 それはどうも、失礼な事をお聞きしました。 ・・・。 きっとお綺麗だったんでしょうなぁ」
「はい。 それはもう。 あ!? いや!? 大した事はございませんでした。 身内を褒めてはいけませんな。 アハ、アハ、アハハハハ」
「いやいや。 分かります分かります。 お嬢さんを見れば」
「ナナは、母親に生き写しでございます」
「そうでしょうそうでしょう」
「エッ?」
「あ!? いや!? 別に大意はございません、別に大意は・・・。 いや~、アレだけ美しいお嬢さんですから、さぞや奥様も。 そう思っただけです。 ただそれだけです。 アハ、アハ、アハハハハ」
「そうですか。 それはどうも、恐縮です」
『ふぅ~、危ない危ない。 危うく本音を漏らすところだったゼ。 フゥ~、危ない危ない』
外道は不自然な動きにならないよう注意して、さり気なく秀吉の顔を見た。
秀吉は俯(うつむ)いて考え込んでいる。
思い出にでも浸(ひた)っているのだろうか?
ナナの母親の思い出にでも。
そのナナに全く似ていない秀吉の顔を見て、外道は思った。
『だろうな。 このチンチクリンのおっさんにアレはないわな、アレは・・・』
って。。。
・
・
・
・
・
つづく
『妖気だ!?』
先程から、外道は怪しい霊気が立ち込めているのを感じ取っていた。
庭の他の場所とは全く異質の。
それは井戸に近付くにつれ強くなった。
照明で昼間の様に明るいには明るいが、 “気” が暗い。
確かに、明るい筈なのに。
暗くてズ~ンと気が重い。
コレ即ち、 “妖気” なり。
「これが例の井戸でございます」
大河内が言った。
『やはり、ここからだ!!』
外道は思った。
井戸は鉄格子で囲われていた。
その鉄格子の高さは3m位は有りそうだった。
傍に見張り役と思われる屈強そうな大男が二人立っている。
着ている物が黒っぽい。
二人は秀吉に一礼した。
いかにも体育会系でございますと言わんばかりの仕方で。
なんとなく “ゴルゴサーティーンのワンシーン” にでも出てきそうな感じで。
井戸の周りを回りながら外道が聞いた。
「又、随分と頑丈そうな鉄格子ですな」
「はい。 ナナが近付けないようにと急遽、拵(こしら)えました。 井戸の埋め立ても考えたのですが。 それは少し怖かったものですから、代わりにコレを」
「二重、三重のガードという訳ですな。 感心感心」
「はい。 何せナナはワシの大切な大切な一人娘ですので」
「まぁ、アレだけ美しいと。 お気持ちは良~く分かります。 ・・・。 あぁ、ところで奥様は?」
「亡くなりました。 去年」
「そうですか。 それはどうも、失礼な事をお聞きしました。 ・・・。 きっとお綺麗だったんでしょうなぁ」
「はい。 それはもう。 あ!? いや!? 大した事はございませんでした。 身内を褒めてはいけませんな。 アハ、アハ、アハハハハ」
「いやいや。 分かります分かります。 お嬢さんを見れば」
「ナナは、母親に生き写しでございます」
「そうでしょうそうでしょう」
「エッ?」
「あ!? いや!? 別に大意はございません、別に大意は・・・。 いや~、アレだけ美しいお嬢さんですから、さぞや奥様も。 そう思っただけです。 ただそれだけです。 アハ、アハ、アハハハハ」
「そうですか。 それはどうも、恐縮です」
『ふぅ~、危ない危ない。 危うく本音を漏らすところだったゼ。 フゥ~、危ない危ない』
外道は不自然な動きにならないよう注意して、さり気なく秀吉の顔を見た。
秀吉は俯(うつむ)いて考え込んでいる。
思い出にでも浸(ひた)っているのだろうか?
ナナの母親の思い出にでも。
そのナナに全く似ていない秀吉の顔を見て、外道は思った。
『だろうな。 このチンチクリンのおっさんにアレはないわな、アレは・・・』
って。。。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #17 『気の正邪』の巻
2017-02-23
#17 『気の正邪』の巻
「今のナナには睡眠薬も全く意味が有りません。 何せ相手は夢に出て来るのですから。 起きていても駄目です、意識を無くされて仕舞うのですから。 全く手の打ち様がございません。 一体どうしたら良いか・・・」
不安そうにそう秀吉が言った。
外道が聞いた。
「毎晩、丑三つ時(うしみつどき)に?」
「はい。 毎晩、丑三つ時に」
外道は少し考えた。
それから言った。
「時間はまだタップリ有りますな。 例の古井戸を見せて頂きましょうか。 それから屋敷と庭を一通り。 宜しいかな?」
「はい。 では、ご案内致します。 初めはドコから?」
「屋敷、庭、最後に古井戸の順に」
「承知致しました」
秀吉が大河内に顎で指図した。
「オィ」
「・・・」
大河内が無言で軽く会釈をした。
その大河内の先導に外道と秀吉が続いた。
秀吉の屋敷は兎に角(とにかく)でかかった。
各階の天井が高い。
普通の家の優に2階分だ。
それに、
エレベータの階数は5階迄であったが、
とまらない隠しフロアーも有りそうなのでホントの所は良く分からなかった。
一部屋一部屋丹念に調べるということはせず、何となく気になる部屋だけを覗いた。
一通り各フローをざっと見て回った。
特に霊の障りのような物は感じなかったので、次に庭に向かった。
庭は屋敷にまして広かった。
一体全体、東京ドーム何個分に相当するのか?
3個分位か?
その位だだっ広い。
そして、それを照らす照明が又凄い。
神宮球場や甲子園球場を思わせるような巨大な照明塔がズラーっと庭を囲んでいる。
脚部の一本足の鉄塔の大きさも半端じゃない。
基礎のコンクリート部分だけでも幅2メートル、高さ3メートル位は優に有りそうだ。
そんなのが10基以上も一気に庭を照らしている。
だから庭はまるで昼間のように明るい。
庭がきちんと手入れされているのが、ハッキリと分かる程だ。
大河内によれば、これらの照明の消灯時間は本来夜10時だったのだが、ナナの件以来、今では一晩中点けているとの事だった。
『この庭の維持管理の費用は一体、どの位掛かるのだろうか?』
全く、貧乏人の外道の理解を超えていた。
これだけ広いと場所によって感じられる “気” にも多少の正邪はある。
だが、
特に霊障と言えるほどの物は何もなかった。
そして、いよいよ問題の・・・
井戸へと向かった。
・
・
・
・
・
つづく
「今のナナには睡眠薬も全く意味が有りません。 何せ相手は夢に出て来るのですから。 起きていても駄目です、意識を無くされて仕舞うのですから。 全く手の打ち様がございません。 一体どうしたら良いか・・・」
不安そうにそう秀吉が言った。
外道が聞いた。
「毎晩、丑三つ時(うしみつどき)に?」
「はい。 毎晩、丑三つ時に」
外道は少し考えた。
それから言った。
「時間はまだタップリ有りますな。 例の古井戸を見せて頂きましょうか。 それから屋敷と庭を一通り。 宜しいかな?」
「はい。 では、ご案内致します。 初めはドコから?」
「屋敷、庭、最後に古井戸の順に」
「承知致しました」
秀吉が大河内に顎で指図した。
「オィ」
「・・・」
大河内が無言で軽く会釈をした。
その大河内の先導に外道と秀吉が続いた。
秀吉の屋敷は兎に角(とにかく)でかかった。
各階の天井が高い。
普通の家の優に2階分だ。
それに、
エレベータの階数は5階迄であったが、
とまらない隠しフロアーも有りそうなのでホントの所は良く分からなかった。
一部屋一部屋丹念に調べるということはせず、何となく気になる部屋だけを覗いた。
一通り各フローをざっと見て回った。
特に霊の障りのような物は感じなかったので、次に庭に向かった。
庭は屋敷にまして広かった。
一体全体、東京ドーム何個分に相当するのか?
3個分位か?
その位だだっ広い。
そして、それを照らす照明が又凄い。
神宮球場や甲子園球場を思わせるような巨大な照明塔がズラーっと庭を囲んでいる。
脚部の一本足の鉄塔の大きさも半端じゃない。
基礎のコンクリート部分だけでも幅2メートル、高さ3メートル位は優に有りそうだ。
そんなのが10基以上も一気に庭を照らしている。
だから庭はまるで昼間のように明るい。
庭がきちんと手入れされているのが、ハッキリと分かる程だ。
大河内によれば、これらの照明の消灯時間は本来夜10時だったのだが、ナナの件以来、今では一晩中点けているとの事だった。
『この庭の維持管理の費用は一体、どの位掛かるのだろうか?』
全く、貧乏人の外道の理解を超えていた。
これだけ広いと場所によって感じられる “気” にも多少の正邪はある。
だが、
特に霊障と言えるほどの物は何もなかった。
そして、いよいよ問題の・・・
井戸へと向かった。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #16 『外道流』の巻
2017-02-23
#16 『外道流』の巻
「他に? 他に誰か観音様を見た者は?」
と!?
と~~~っても残念そうに優しくナナを寝かせ付け、ユックリ立ち上がってから秀吉に外道が聞いた。
「それが、他には誰一人として見た者は・・・。 (世話係達を指差して) この3人をズーっとそばにつけておるのですが・・・。 丑三つ時と申すのでございますか? 夜中の2時から2時半の間になりますとこの3人共、皆、急に睡魔に襲われてどう頑張っても気が付いたら眠って仕舞っているそうなのでございます。 その話を聞き、ちなにみワシと大河内二人でナナと一緒にその時間を過ごしてみましたが、やはり3人の言う通り気が付いたらぐっすりと眠っておりました」
外道は大河内、それから3人の世話係に順次目をやった。
大河内は無言で大きく頷き、3人の世話係は肯定するように素早く首を上下に何度か振った、やはり言葉は出さずに。
「この屋敷には他にも人がいるようですが、その人達は?」
「はい。 それが不思議な事にその時間この部屋におる者だけが睡魔に襲われるのでございます。 と、申しますか。 その時間にナナと一緒におる者だけが強烈な眠気に襲われるようなのでございます」
「ウ~ム」
外道は静かに目を瞑(つむ)り、立ったまま考え込んだ。
両腕を組んでいる。
そのまま1分間位考え込んだだろうか?
やがて腕をだらりと落とし、目を半眼にして部屋の中をユックリと歩き始めた。
部屋を調べているようだ。
壁、床、天井、・・・、etc. 。
ユックリと、そして、隈(くま)なく。
しかし、
目の焦点は合ってはいない。
コレが・・・ “外道流” だ。
つまり、
目の焦点をあえて合わせない事により、常人には決して見えないが間違いなくそこに存在している見えざるエネルギーを見る。
これ即ち、外道流。
同じ事を普通の人間が行なっても、外道の様な訳には行かない・・・普通の人間だからだ。
これを行なうにはそれ相応の眼力が必要なのだ。
そして外道にはその眼力があった。
一通りチェックし終えてから、秀吉に向かって外道が言った。
「この部屋には特段変わった様子はないようですな。 霊的な物は何も感じません」
「という事は?」
「おそらくは外部から・・・」
そう言いながら外道は、静かに目を動かし、まだ意識を失ったままのナナに一瞥(いちべつ)をくれた。
・
・
・
・
・
つづく
「他に? 他に誰か観音様を見た者は?」
と!?
と~~~っても残念そうに優しくナナを寝かせ付け、ユックリ立ち上がってから秀吉に外道が聞いた。
「それが、他には誰一人として見た者は・・・。 (世話係達を指差して) この3人をズーっとそばにつけておるのですが・・・。 丑三つ時と申すのでございますか? 夜中の2時から2時半の間になりますとこの3人共、皆、急に睡魔に襲われてどう頑張っても気が付いたら眠って仕舞っているそうなのでございます。 その話を聞き、ちなにみワシと大河内二人でナナと一緒にその時間を過ごしてみましたが、やはり3人の言う通り気が付いたらぐっすりと眠っておりました」
外道は大河内、それから3人の世話係に順次目をやった。
大河内は無言で大きく頷き、3人の世話係は肯定するように素早く首を上下に何度か振った、やはり言葉は出さずに。
「この屋敷には他にも人がいるようですが、その人達は?」
「はい。 それが不思議な事にその時間この部屋におる者だけが睡魔に襲われるのでございます。 と、申しますか。 その時間にナナと一緒におる者だけが強烈な眠気に襲われるようなのでございます」
「ウ~ム」
外道は静かに目を瞑(つむ)り、立ったまま考え込んだ。
両腕を組んでいる。
そのまま1分間位考え込んだだろうか?
やがて腕をだらりと落とし、目を半眼にして部屋の中をユックリと歩き始めた。
部屋を調べているようだ。
壁、床、天井、・・・、etc. 。
ユックリと、そして、隈(くま)なく。
しかし、
目の焦点は合ってはいない。
コレが・・・ “外道流” だ。
つまり、
目の焦点をあえて合わせない事により、常人には決して見えないが間違いなくそこに存在している見えざるエネルギーを見る。
これ即ち、外道流。
同じ事を普通の人間が行なっても、外道の様な訳には行かない・・・普通の人間だからだ。
これを行なうにはそれ相応の眼力が必要なのだ。
そして外道にはその眼力があった。
一通りチェックし終えてから、秀吉に向かって外道が言った。
「この部屋には特段変わった様子はないようですな。 霊的な物は何も感じません」
「という事は?」
「おそらくは外部から・・・」
そう言いながら外道は、静かに目を動かし、まだ意識を失ったままのナナに一瞥(いちべつ)をくれた。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #15 『ジャストフィット』の巻
2017-02-22
#15 『ジャストフィット』の巻
読者の皆さんには、不意に
“スゥ~~~” っと
意識が遠くなったという経験があるだろうか?
めまい、立ちくらみとは違い、 “スゥ~~~” っと意識が遠くなる。
そして、そのまま意識がなくなる。
今のナナがそうだった。
外道の左目に見つめられ、“スゥ~~~” っと意識がなくなった。
外道の目には特徴が有った。
“オッド・アイ”
そぅ、オッド・アイ。
即ち、
“虹彩異色症(こうさい・いしょく・しょう : heterochromia iridis)”
という特徴が。
解説しよう。
“オッド・アイ” 即ち、 “虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)” とは・・・
虹彩の色が左右の目で異なる。
あるいは、一方の瞳の虹彩の一部が変色している症状。
具体例として、左右が金銀色違いの目をした猫がよく取り上げられる。
それともローゼンメイデンの “翠星石”、 “蒼星石” の目と言った方が分かりが早いか?
異常 否 以上。
翠星石、蒼星石とは違い外道の目は、
右目が黒。
左目が茶。
だった。
もっとも、それ程極端な違いという程ではない。
しかし、
一目で左右の目の色の違いに気付く位には違っていた。
その茶色い虹彩をした外道の左目も又ナナの左目を見つめていた。
そしてナナの左目を通してナナの中の何かを掴み、ナナの感情のコントロール機能を即座に遮断したのだ。
それも、いとも簡単に。
そぅ。
電気のスイッチを切る位、いとも簡単に。
これが外道の眼力である。
(ガクッ!!)
外道の腕の中でナナの体の力が抜けた。
普通ならそのままベッドに寝かしつけるところだ。
が、
外道はそうはしなかった。
その時外道が何をしていたか?
そー、れー、は~~~
『こ、このムニュムニュ感が堪らん。 こ、このムニュムニュ感が~~~・・・』
よーく見ると、
外道の腹部にナナの左乳(ひだり・チチ)がフィットしているではないか。
そ、れ、も、
ジャストフィットだ。
ドサクサに紛(まぎ)れてチャッカリ、ナナの乳の感触を楽しんでいる外道であった。
その場には、その事に気付いた者は誰一人いなかった。
外道はそのまましばらくナナの乳の感触を楽しんでから、凄く残念そうにナナを寝かしつけた。
凄く、凄~~~く、残念そうに。
『も、もうチョッとだけ。 ウン。 もうチョッとだけ。 あとチョッとだけ・・・』
ナンゾと・・・
思いながら。
・
・
・
・
・
つづく
読者の皆さんには、不意に
“スゥ~~~” っと
意識が遠くなったという経験があるだろうか?
めまい、立ちくらみとは違い、 “スゥ~~~” っと意識が遠くなる。
そして、そのまま意識がなくなる。
今のナナがそうだった。
外道の左目に見つめられ、“スゥ~~~” っと意識がなくなった。
外道の目には特徴が有った。
“オッド・アイ”
そぅ、オッド・アイ。
即ち、
“虹彩異色症(こうさい・いしょく・しょう : heterochromia iridis)”
という特徴が。
解説しよう。
“オッド・アイ” 即ち、 “虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)” とは・・・
虹彩の色が左右の目で異なる。
あるいは、一方の瞳の虹彩の一部が変色している症状。
具体例として、左右が金銀色違いの目をした猫がよく取り上げられる。
それともローゼンメイデンの “翠星石”、 “蒼星石” の目と言った方が分かりが早いか?
異常 否 以上。
翠星石、蒼星石とは違い外道の目は、
右目が黒。
左目が茶。
だった。
もっとも、それ程極端な違いという程ではない。
しかし、
一目で左右の目の色の違いに気付く位には違っていた。
その茶色い虹彩をした外道の左目も又ナナの左目を見つめていた。
そしてナナの左目を通してナナの中の何かを掴み、ナナの感情のコントロール機能を即座に遮断したのだ。
それも、いとも簡単に。
そぅ。
電気のスイッチを切る位、いとも簡単に。
これが外道の眼力である。
(ガクッ!!)
外道の腕の中でナナの体の力が抜けた。
普通ならそのままベッドに寝かしつけるところだ。
が、
外道はそうはしなかった。
その時外道が何をしていたか?
そー、れー、は~~~
『こ、このムニュムニュ感が堪らん。 こ、このムニュムニュ感が~~~・・・』
よーく見ると、
外道の腹部にナナの左乳(ひだり・チチ)がフィットしているではないか。
そ、れ、も、
ジャストフィットだ。
ドサクサに紛(まぎ)れてチャッカリ、ナナの乳の感触を楽しんでいる外道であった。
その場には、その事に気付いた者は誰一人いなかった。
外道はそのまましばらくナナの乳の感触を楽しんでから、凄く残念そうにナナを寝かしつけた。
凄く、凄~~~く、残念そうに。
『も、もうチョッとだけ。 ウン。 もうチョッとだけ。 あとチョッとだけ・・・』
ナンゾと・・・
思いながら。
・
・
・
・
・
つづく
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #14 『外道の左眼』の巻
2017-02-22
#14 『外道の左眼』の巻
「幻覚は何時(いつ)頃から?」
外道が聞いた。
ナナは言葉に詰まっている。
色々思いを巡らせているのが見て取れた。
突然、目から大粒の涙が溢れ出した。
そして相変わらずの掠れ声で泣き叫んだ。
「ア、アレは幻覚なんかじゃ有りません。 観音様です。 た、確かに観音様ですー。 観音様なんです~~~!! ゥア~~~!!」
ナナが泣き崩れた。
今迄抑えに抑えていた感情が、言葉を発した事により一気に爆発したのだ。
顔を両手で覆いベッドにうっ伏(ぷ)して、声を上げて泣いている。
重い鎖を着けた両手のままで。
突然の出来事に、一瞬の間があった。
次に、
秀吉、大河内、3人の世話係の女が急いでナナに駆け寄ろうとした。
だが、その瞬間。
「ハッ!?」
と、全員が息を呑んだ。
同時にその場で固まっていた。
素早く外道がナナを抱き起こしたからだ。
その素早さはとても人間業(にんげんわざ)とは思えなかった。
今、ナナと対峙していた筈なのに、次の瞬間にはナナの体を左手で抱き抱(だ・き・かか)えていたのだ。
それから強引にナナの両手を、抱き抱えている左手をグッと回して右手を、空いている右手て左手を顔から外した。
というより、顔から剥ぎ取ったと言った方が正しいか?
そして、厳(きび)しくナナに命じた。
「俺の左目を見ろ!!」
「・・・」
ナナは絶句している、半泣きのままで。
そして息を殺して外道の左目を見つめている。
もぅ、
ナナは泣けない。
そぅ、
ナナには泣く事が出来ない
リズムが狂ったからだ。
ナナにはナナの泣くリズムがある。
が、
この余りに素早い外道の一連の動きに、ナナのリズムは付いて行けなかった。
突然の事にナナの心の機能が停止してしまったのだ。
だからもう泣けない。
今のナナに出来る事は、
たったの一つ。
外道の左目を見つめる事・・・
ただ、それだけだった。
・
・
・
・
・
つづく
「幻覚は何時(いつ)頃から?」
外道が聞いた。
ナナは言葉に詰まっている。
色々思いを巡らせているのが見て取れた。
突然、目から大粒の涙が溢れ出した。
そして相変わらずの掠れ声で泣き叫んだ。
「ア、アレは幻覚なんかじゃ有りません。 観音様です。 た、確かに観音様ですー。 観音様なんです~~~!! ゥア~~~!!」
ナナが泣き崩れた。
今迄抑えに抑えていた感情が、言葉を発した事により一気に爆発したのだ。
顔を両手で覆いベッドにうっ伏(ぷ)して、声を上げて泣いている。
重い鎖を着けた両手のままで。
突然の出来事に、一瞬の間があった。
次に、
秀吉、大河内、3人の世話係の女が急いでナナに駆け寄ろうとした。
だが、その瞬間。
「ハッ!?」
と、全員が息を呑んだ。
同時にその場で固まっていた。
素早く外道がナナを抱き起こしたからだ。
その素早さはとても人間業(にんげんわざ)とは思えなかった。
今、ナナと対峙していた筈なのに、次の瞬間にはナナの体を左手で抱き抱(だ・き・かか)えていたのだ。
それから強引にナナの両手を、抱き抱えている左手をグッと回して右手を、空いている右手て左手を顔から外した。
というより、顔から剥ぎ取ったと言った方が正しいか?
そして、厳(きび)しくナナに命じた。
「俺の左目を見ろ!!」
「・・・」
ナナは絶句している、半泣きのままで。
そして息を殺して外道の左目を見つめている。
もぅ、
ナナは泣けない。
そぅ、
ナナには泣く事が出来ない
リズムが狂ったからだ。
ナナにはナナの泣くリズムがある。
が、
この余りに素早い外道の一連の動きに、ナナのリズムは付いて行けなかった。
突然の事にナナの心の機能が停止してしまったのだ。
だからもう泣けない。
今のナナに出来る事は、
たったの一つ。
外道の左目を見つめる事・・・
ただ、それだけだった。
・
・
・
・
・
つづく