小説(その他)ランキング
小説(その他)ランキング

これ・↑・ポチってしてね


アリスのお家 2017年02月
fc2ブログ

アリスのお家

創作お話作ってます。。。

『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #13 『コミニュケイション』の巻

#13 『コミニュケイション』の巻




「92です」

突然!!

ナナの意思とは無関係にこの言葉が口を突いて出た。

それは、
外道の 「乳のサイズは?」 という思わぬ問い掛けに意表を突かれ、自分の意思とは全く無関係に条件反射的に口を突いて出てしまったのだった。

そしてナナの声は掠れていた。
ここ数日、言葉を殆んど発していなかった為だ。

このナナの 「92です」 という答えに、今度は外道が反応した。

「ウム。 揉(も)みごろだ」

外道が力強く頷いた。

外道は・・・・・・正直者だった。

「・・・」

ナナは、外道に乗せられてつい正直に答えてしまった事を後悔しているのだろう、

『ハッ!? し、しまった』

という表情を浮かべ、ただ黙っている。
しかし、外道から目は切れなかった。
なんとなく気まずそうだ。
一方外道はといえば、相変わらずナナの目を見つめる事は見つめてはいたが、 “感覚の目” は別だった。

そぅ。

外道の感覚の目は全く別の物を見つめていたのだ。
そしてその全く別の物・・・

そ、れ、は、

チチだーーー!!

ナナのチチだーーー!!

ナナのデカチチ、はみチチだーーー!!

ジッとナナの乳を見つめていたのじゃった。
それもスッゴク揉(も)みたそうに。

このやり取りを見るに絶えず、

「コホンコホンコホン!! あ、あの~。 破瑠魔様。 そ、その様なお話は・・・」

大河内が横から嘴(くちばし)を容(い)れた。
予想外の方向に進展しつつある話の成り行きが全く見えず、目が泳いでいる。
秀吉の心中を察しての事もあってだが。
その秀吉はといえば、どうリアクションして良いか分からぬといった風で目をパチクリしているだけだった。

外道が大河内に言った。

「あ!? いやいや。 そうでしたそうでした。 アハ、アハ、アハハハハ!! しっかし、コレも又、その~、ナンです。 関係者とコミニュケイションを取る手段の一つという事で。 事実、ナナさんは口を開いた。 ドウです? 違いますかな? アハ、アハ、アハハハハ!! 心配ご無用、心配ご無用。 アハ、アハ、アハハハハ!!」

「は、はい。 ま、まぁ、そうではございますが・・・」

大河内もリアクションに困っている。

それを尻目に、
再びナナの方に向き直り外道が言葉を掛けた。

「ところでナナさん」

「はい」

「聞かせてもらいましょう。 貴方の言葉で」 (キリッ!!)

いきなり凛々(りり)しい・・・






外道であった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #12 『外道の問い掛け』の巻

#12 『外道の問い掛け』の巻




「乳(チチ)のサイズは?」

ナナが顔を上げた。
思いがけない問い掛けに反射的に取った行動だ。

外道と目が合った。
二人は暫(しば)しの間、見詰め合った。

やはりナナは美しかった。

腰まで届きそうな長くて美しい黒髪。
色白で卵形の顔。
細く、濃く、優美にカーブした眉。
綺麗に通った鼻筋。
上品でプックラとした唇。そのラインが美しい。

そして、もっとも特徴的な点。

それは、
美しい黒曜石(こくようせき)を思わせる様な “黒く濡(ぬ)れた瞳”。
しかし、
決して下品でもなければ嫌らしくもない。
が、
ナナの瞳は確かに、黒く、そして・・・濡れていた。(作者 否 外道好みに)

ナナは目を切りたかった。
だが、
外道の目がそれを許さなかった。
外道の目はどこか人間離れした凄みというか深みというか、かと言って動物のそれとは違う何かがあった。
それがナナの心を惹きつけた。

「ナナさん」

もう一度外道が話し掛けた。

「はい」

素直にナナが返事をした。

「オォー!!」

秀吉、大河内それに3人の世話係の女達から一斉に驚きの声が上がった。
この数日、ナナは全く声を出さなかったからだ。

外道が続けた。

「乳のサイズは?」

『ウッ!?』

ナナはチョッと躊躇(ためら)った。
初対面の相手に、それも見るからにスッケベそうなオッサンに、開口一番乳のサイズを聞かれたからだ。
だが、目を切れない。
外道の目がそれを許さない。
ナナの目を睨み付けるのではなく、静かにジッと外道が見つめている。
見つめる外道のその目をナナは、

『何て、遠~い眼(め)』

言葉ではなく感覚でそう感じた。
と、同時に。
その目の前には一切の嘘、見栄、虚飾といった物が無意味で有る事も感じ取っていた。

ナナは今、外道の前に無防備になっている。
否、無防備にさせられていると言った方が正しいか?
そして奇妙な感覚を味わっていた。

“無防備の安心感”

という奇妙な感覚を。

そして突然、ナナの意思とは無関係に・・・






この言葉が口を突いて出た。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #11 『サイズ』の巻

#11 『サイズ』の巻




「その手械(てかせ)は?」

外道が聞いた。

「はい。 こうして置きませんと、又、夜中に外に出て井戸に飛び込もうとするからでございます」

秀吉が答えた。
表情に、 『困った事になった』 という思いが見て取れた。

「昼間は?」

「はい。 昼間は普通に生活致しております」

「普通に?」

「はい。 あ!? ただし、部屋から出るのは風呂とトイレに行く時だけで後はズーっとこもりっ放しで、この頃ではもう誰とも口を利かなくなり、出した食事にもほとんど手をつけない有様。 ほとほと困っております」

「と、言う事は?」

「はい。 娘がおかしくなるのは、決まって深夜2時から2時半に掛けてなのでございます」

「深夜2時から2時半に掛けて? ・・・。 ウ~ム。 丑三つ時ですな」

「はい」

「チョッと。 お嬢さんと話したいのですが?」

「はい」

頷くと、ナナに向かって秀吉が言った。

「ナナ。 こちらが悪名、 あ!? 否、有名な破瑠魔先生だよ。 悪霊退治で有名な」

「・・・」

ナナは全く反応を示さない。
ただ、
悲しそうに俯(うつむ)いたままジッと押し黙っているだけだった。

語気を強めてもう一度言った。

「ナナ」

「・・・」

やはり無反応だった。

ナナのベッドは西側に枕が来るように置かれてあった。
ナナはその上の中央より、幾分足元寄りに正座している。
つまりナナは東に向いて座っていた。
そのナナの正面に外道は立った。
そして若干前かがみになり、目線をナナと同じにし、顔を覗き込むようにして声を掛けた。

「ナナさん」

「・・・」

だが、ナナは返事をしない。
もう一度聞いた。

「ナナさん」

「・・・」

やはり返事をしない。
そして、もう一度。
今度はもう一言付け加えて。

「ナナさん・・・






乳(チチ)のサイズは?」











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #10 『鎖』の巻

#10 『鎖』の巻




(コンコン)


「入るよ。 ナナ」

そう言って秀吉がナナの部屋に入って行った。
外道、大河内が続く。

外道は部屋に入ると素早く中を見回した。
その視線がベッドに移ったその瞬間、

『オッ!?』

と、驚いた。

ベッドの上には右手と左手に夫々(それぞれ)頑丈そうな手械(てかせ)をはめられた、年の頃なら 18、9 のナナと思われる女性が正座していたからだ。
手械にはゴッツクはないが、そこそこ重さの有りそうな鎖が繋がれている。
各々(おのおの)の鎖の端は夫々(それぞれ)ベッド頭部の、右手の鎖は右脚に、左は左脚に結ばれていた。

ベッドの横にはナナの世話係と思われる25、6歳前後の女が3人、ピッと背筋を伸ばして立っている。
3人共、黒白基調のゴスロリタイプのメイド服を着ている。
即ち、
黒のワンピースに白い付け袖、アクセントとして五十円玉大の黒ボタンの付いた白い立ち襟タイプの付け襟、メイド服用ホワイト・キャップにエプロン姿。
勿論、エプロンも純白だ。
ワンピースのスカート部分は足首付近まであり、その下からはやはり白いパニエが僅(わず)かにのぞいている。
それにホワイトソックス。
靴はシークレットブーツっぽいハイヒール。
色は黒。
一見したところ、アニメ 『ブラックラグーン』 のロザリタ・チスネロス(通称:ロベルタ)を思わせる身なりだ。
それが制服なのだろう。

ナナは美しかった。
俯(うつむ)き加減なので顔全体が見えた訳ではなかったが、美人である事に間違いはない。

外道は、サッっと目を走らせて秀吉と見比べた。

『ホ、ホントに親子か?』

きっと母親似なのだろう、ナナは秀吉とは似ても似つかなかったのだ。
正座しているのでハッキリした事は分からないが、背丈は165cm位有るだろうか?
色白だ。
全体的にホッソリしている。

が、

チャンと出ているところはチャンと出ていた。

チャンと・・・。(ウホッ!?)

白地に花柄の浴衣を着ている。
帯は淡いピンクだ。
その浴衣から胸の膨らみが、はみチチと迄は行かないもののチョビッとだけ・・・。

うん。

チョビッとだけ、

“コンニチハ”

ってね。
それが妙に色っぽい。
手に鎖が巻かれているから尚更だ。


『ウ~ム。 マニアには美味しいスティエィションだ!!』 ・・・かな? かな? かな?


部屋は暖房が充分効いている。
だからその格好でも風邪の心配はなさそうだった。

しかーーーし、

外道が、

『オッ!?』

と、驚いたその訳は実はもう一つ有った。

そ・れ・は、

乳(チチ)のでかさ。。。

そぅ。

ナナの乳のデカさだった。

『デ、デカイ!! 形良くデカイ!! ウ~ム。 も、揉(も)みたい』

外道は思った。

『こんな状況じゃなかったら、モッコリこいちまうょなぁ』

とも、思った。

ナナの部屋は白基調(しろきちょう)で、如何(いか)にも女の子っぽい部屋だった。
間取りは優に40畳はあると思われる。
天井が高い。
普通の家の2階分は有りそうだ。
カーテンと絨毯は淡いピンク。
きちんと整頓されている家具は白で統一されたメルヘンチックなロココ調。
全体が南向きのため部屋の北側隅に豪華なベッドが置かれている。
ベッドの向きは東向きで、サイズはセミダブル。

“その上に、浴衣姿の美女が鎖を掛けられて正座している。 しかもチチデカ君。 加えてはみチチさん”

コ、コレは美味しい!!

外道ならずとも、

オ・イ・シ・イ・!!

『このスティエイションに似合うのは、やっぱ “ムチ” だよな~』

と、まぁ。

先程からそんな事ばかり考えている・・・






外道であった。(作者ではない)











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #9 『ナナ』の巻

#9 『ナナ』の巻




「実は、数日前から娘 『ナナ』 の様子がおかしいのでございます」

意を決して秀吉が言った。

「おかしい? おかしいとは・・・?」

「はい。 それが、で、ございます。 当家には今はもう使ってはおりませんが、古井戸がございまして」

「古井戸?」

「はい。 一週間程前の夜中に娘のナナがその古井戸に飛び込もうと致しておりました。 幸い、偶々(たまたま)通りかかった警備の者が慌てて抱き抱え(だきかかえ)ましたので無事、事無きを得ました。 が、危ういところでございました」

「理由は?」

「はい。 娘に問いただしたのでございますが、本人にも皆目見当がつかない様なのでございます。 ただ・・・」

「ただ?」

「はい。 その晩は遅くまで勉強しており、眠くなったので休もうと思いベッドに入ると直ぐ。 あぁ、娘は今大学に通っております。 又、娘の部屋は洋間になっておりますのでベッドで寝ております。 ベッドに入るや否(いな)や、夢現(ゆめうつつ)になったそうでございます。 すると突然、目の前に観音菩薩様が出現され、その余りの神々しさに目を奪われて夢中で観音経を上げていたらしく・・・。 あ!? 娘は日頃から熱心に観音様を信仰致しており観音経の偈文(げもん)は、ほぼ完璧に暗誦致す事が出来るのでございます。 そして、ハッっと気付いた時には危うく井戸に落ちる寸前で、警備の者に身体を抱き止められていた。 そう申しております」

「ウ~ム。 観音様ですか?」

「はい。 観音様です」

「ナナさんに会えますかな?」

「はい。 部屋におります。 只今ご案内致します」

そう言うと秀吉は、

「オィ!!」

顎で大河内に合図した。
その大河内の案内で、外道と秀吉が並んでナナの部屋に向かった。
屋敷の中は外観とはうって変わって超近代建築だった。
1階から天守閣までエレベーターで移動出来る。

『一体この屋敷はいくら掛かったんだろうか?』

外道はその屋敷の金の掛け方の余りの凄まじさに、返って呆れ果て・・・






そう思った。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #8 『羽柴 精巣 秀吉』の巻

#8 『羽柴 精巣 秀吉』の巻




「旦那様。 破瑠魔様をお連れ致しました」

引き戸越しに大河内が屋敷の主(あるじ)に言った。

「ウム。 ご苦労。 お通ししてくれ」

主の声が聞こえた。

ここは・・・

日本某所にある大豪邸。
否(いや)、むしろお城と言った方がいいか?
形は大阪城の天守閣に擬(ぎ)し、その大豪邸の表札には 『羽柴 精巣 秀吉(はしば・せいそう・ひできち)』 と書いてあった。

そこの応接間での出来事。


(スゥー)


引き戸が静かに開いた。

「破瑠魔様でございます」

大河内順三郎に案内されて応接間に外道が入って来た。
純和風金箔張りのだだっ広い部屋には、如何(いか)にも高価そうな屋久杉作り超豪華テーブルセットと胡桃(くるみ)無垢材使用の総革張り彫刻応接5点セットが置かれてあり、天井埋め込みタイプのオレンジ色の自然光蛍光電球が満遍なく室内を照らしている。
明る過ぎず、暗過ぎず、満遍なく。
床板は漆黒とまでは言わないが、上品に濃くすすけた感じで、
漆(うるし)でも塗ってあるのだろうか?
それともワックスが掛けられているのか?
ピッカピカのツルッツルだった。

一人掛けの総革張りの椅子をギーっと鳴らして、一人のオッサンが立ち上がった。
そしてオッサンが言った。

「これはこれは破瑠魔殿、遠路遥遥(えんろはるばる)ようこそお越し下さいました。 ワシがこの屋敷の主、羽柴 精巣 秀吉でございます」

秀吉は40~50歳位の小男で肥満体、狸顔にチョビ髭、いかにもテレビドラマ等で良く見る、所謂(いわゆる) “豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし)” を意識した出で立ちだった。
ただし丁髷(ちょんまげ)は結ってはいない。
一見したところ髪は黒々フサフサだ。
が、
チョッとカツラっぽい気もしないではない。

“ This is 成金”

そんな感じだった。


「破瑠魔です。 (部屋の中を見回して) しっかし、いやはやいやはや、何とまぁ。 物凄い豪邸ですなぁ」

外道がその館を褒めちぎった。
それはそれは実感のこもった声で。

「いやー、お恥ずかしい。 チョッと温泉で儲けましてな。 こういう贅沢をしてみました。 子供の頃からの夢とでも申しましょうか、念願叶いましたといった所です。 ま、どうぞお掛け下さい」

外道が秀吉に対座して座った。
大河内はドアの傍に立っている。

「いやー、圧倒されますなー。 全く持って。 ・・・。 ところで御用の趣は?」

「それなんですが、わざわざ先生にお越し願ったのは他でもない・・・ (チョッと躊躇《ためら》ってから) ・・・。 これから申し上げます事はくれぐれもご内聞という事にして頂きたいのですが」

「“依頼の守秘厳守” それがわたしのモットーです。 ご心配なく」

「有難うございます。 実は・・・。 実はワシの一人娘 『ナナ』 の事でして」

「娘さん?」

「はい」

「娘さんがどうかされましたか?」

「それが・・・。 それがですなぁ・・・」

一瞬、秀吉が・・・






口ごもった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #7 『フィアンセ』の巻

#7 『フィアンセ』の巻




(センちゃん) 「先生ならたった今帰ったょ。 雪ちゃんすれ違わなかった?」

(雪) 「 (否定するように左右に首を振って) ウゥン。 すれ違わなかった。 ナァ~ンだ。 先生もう帰っちゃったんだぁ」

(ブッちゃん) 「先生に何か用だったの?」

(雪) 「ウン。 チョッとね」

(コウちゃん) 「『ウン。 チョッとね』?」

(雪) 「ウン。 アタシね、先生達に食べてもらおうと思ってお酒の肴(さかな)作って来たんだぁ。 腕に縒(よ)りをかけて作ったんだょ。 今日、お休みだからきっとここでセンちゃんさん達と酒盛りしてるんだろうなぁって思って」

(センちゃん) 「うん。 さっきまでね。 でも、どっかの高貴なお方のお使いとかいう人が来て、先生連れってちゃったんだょ」

(雪) 「高貴なお方? ・・・。 高貴なお方って?」

(ブッちゃん) 「それが言おうとしないんだょ、その人」

(雪) 「フ~ン。 そっかぁ。 帰っちゃったんじゃしょうがないな。 ハィ、コレッ。 センちゃんさん達の分。 (センちゃん達に夫々《それぞれ》中に鳥のから揚げやら天ぷらやら、色々酒のツマミの入っているパックを背負ってきたDバッグから出して手渡す) で、コレが先生の分。 ナンだヶどぉ・・・。 先生いないんじゃね。 良かったらコレも食べて (そう言って、同じようなパックを一番大食いのブッちゃんに手渡す) 」

(ブッちゃん) 「いいの? コレもらっちゃって? 先生のなのに」

(雪) 「ウン。 いいょ。 口に合うかどうか分かんないヶど」

(ブッちゃん) 「(否定するように鼻先で右手を左右に強く何度も振りながら) いやー、雪ちゃんの料理は日本一~~~、否、世界一~~~、否、宇宙一~~~、だょ」

(コウちゃん) 「ウンウンウン。 そうそうそう。 宇宙一、宇宙一、宇宙一」

(センちゃん) 「いっつも悪いね雪ちゃん。 アリガト」

(ブッちゃん) 「ホントに美味しい差し入れ。 いつも雪ちゃん、アリガトね」

(雪) 「ウン。 じゃ、アタシ帰るね」

(センちゃん) 「エッ!? もう帰っちゃうの? せっかく来たんだからユックリしていけば?」

(雪) 「ウゥン、アタシこれから塾だから。 ジャ、ねー!! センちゃんさん、ブッちゃんさん、コウちゃんさん。 バイバ~ィ」

(3人) 「バイバ~ィ」

雪は先程チャリを止めた駐輪場に向かった。
チャリに乗るために。

そ、し、て、

再び、パンツが見えないように上手にチャリに乗る雪であった。

とっても上手に!!

ウン。 ホ~~~ント上手に。

スッゲー上手に。

 ・・・

チッキショーーー!!


その駐輪場に向かう雪の後姿を見送りながら。

(センちゃん) 「いや~、いい子だなぁ、雪ちゃんて~」

(ブッちゃん) 「いや~。 ホントに・・・」

(コウちゃん) 「ウンウンウン。 ホント、ホント、ホント」

(センちゃん) 「しっかし、雪ちゃんまだ16歳だろ。 それであんなにボインボインのナイスバディじゃ・・・。 この先一体・・・」

(コウちゃん) 「その上あの器量だもんな~。 色白だし・・・」

(ブッちゃん) 「どうしてあんな綺麗で、モダンで、ナイスバディで、可愛い女子高生の雪ちゃんがよりによってあの H でスケベでド変態の中年の男の外道先生の恋人なんだ!? しかもフィアンセ!! 全く。 世の中、間違(まちが)っとる!!」

(コウちゃん) 「だが、ワシの見たところ。 雪ちゃんの方が先生にお熱のように見えるのだが・・・」

(センちゃん) 「(ピッ!! っとコウちゃんを指差して) コウちゃんは正しい!! いやー、世の中全く分からん」

(ブッちゃん) 「だから余計腹立たしい!!」

(センちゃん、コウちゃん、声を揃えて) 「その通りィー!! ウムウム」

などとほざきまくる・・・






三バカトリオであった。。。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #6 『女子高生』の巻

#6 『女子高生』の巻




最近の女子高生の制服のスカートは短い。

今・・・

短~~~いスカートを穿(は)いた女子高生がチャリに乗っている。
目指すは “女木戸の丘公園” だ。
何か慌(あわ)てているのだろうか?
ギンギンだ。
辺りはもう暗いのに。

しっかし、上手に乗るものだ。
パンツが見えそうで見えない。
ホッッッ、ントにもうチョィなんだが、見えない。
ホッッッ、ントにもうチョィなんだが。
ホッッッ、ントに・・・(クソッ!!)


(キキキキ、キーーー!!!)


ブルー・シャンティの近くにある駐輪場で止まった。
そのブルー・シャンティでは、センちゃん、ブッちゃん、コウちゃんの3人が焚き火を囲んで酒盛りの真っ最中だ。

「ワハハハハハ!!」

何やら楽しそうだ。
チョッと覗(のぞ)いてみよう。

(センちゃん) 「やっぱ、 OL のパンツはピンクだよな~。 エヘヘヘヘ」

(ブッちゃん) 「ピンク!? ウン。 ピンクはいい、ピンクは~。 エヘヘヘヘ」

(コウちゃん) 「でもよー、白だって捨てたもんじゃないぜ。 白も、まんざら。 OL の純白のパ、ン、ツ。 エヘヘヘヘ」

(3人一緒に) 「ウムウム。 エへッ、エヘッ、エヘヘヘヘ」

まぁまぁ、3人共まぁ、脂下(やに)がっちゃって、まぁ。

と、そこへ・・・


(タタタタタ・・・)


先ほどの女子高生が小走りにやって来た。

そして、

「センちゃんさん、ブッちゃんさん、コウちゃんさん。 今晩は」

(センちゃん) 「今晩は」

(ブッちゃん) 「今晩は」

(コウちゃん) 「今晩は」

3人と挨拶を済ませると、やおら辺りを見回した。
何かを探している様だ。
見つからないのか?
怪訝(けげん)そうな顔でセンちゃんに聞いた。

「先生は?」

センちゃんがそのパンツの見えそうな女子高生に向かってこう言った。

「先生? 先生ならたった今帰ったょ。 雪(ゆき)ちゃん・・・」

と。

そぅ。

パンツが見えそうで見えないこの少女は、その名を・・・






“雪” といった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #5 『さる高貴なお方』の巻

#5 『さる高貴なお方』の巻




老紳士が言った。

「私奴(わたくし・め)、ある屋敷の執事をしております大河内順三郎と申します。 我が主(あるじ)の使いでやって参りました」

「主? 主とは?」

外道が聞いた。

「ま、真に申し訳ございませんが、それを今、ここで申し上げる訳には参りません。 さる高貴なお方とのみ・・・」

「なら、そのさる高貴なお方がこの私に何の用かな?」

「も、申し訳ございません。 それもここで申し上げる訳には・・・」

「それでは話にならんだろう」

「い、いや。 ですが、そ、その~・・・」

大河内は言葉に詰まった。
外道から目を切り、目線を下げた。
額に汗がにじんでいる。
ポケットからハンカチを取り出してそれを拭った。
再び顔を上げ、外道を見た。
その瞬間。


(ビクッ!!)


大河内は驚愕した。

『ハッ!?』

と、息を飲んでいる。 
微動だに出来ない。
まるで金縛りにでも逢っているかの様だ。

外道を見つめる大河内の目を突き刺す様に、否、射抜く様にと言うべきか?
ジッと見つめる二つの目があったからだ。

二つの目が・・・

勿論、外道の目である。
それは夕暮れの中なのに、怪しく輝いていた。
確かに焚き火の火を映してはいたのだが、それとは別の何かの。

そぅ、

“外道の体の中から発せられた何か”

の、

輝きだ。

大河内は瞬(まばた)き一つ出来ない。

空気が重い。
暗いせいもあるが。
すごい緊張感だ。
外道の気迫のせいか。

センちゃん、ブッちゃん、コウちゃんの3人も又、不意の出来事に身動き取れず、この二人のやり取りを固唾(かたず)を飲んで見守る事しか出来なかった。

すると・・・

外道がユックリと腕を組み静かに目を瞑(つぶ)り、

「ウ~ム」

考え込んだ。
沈思黙考し始めた。

それでもまだ、大河内は微動だに出来ない。
センちゃん達も相変わらず固唾を飲んで見守っているだけだ。

その状態が暫(しば)し続いた。

それでも大河内はまだ・・・。
センちゃん達も・・・。

そのまま、どの位経ってからだろうか?

緊張感が少し和らいだに違いない。
大河内が動いた。
そして口を開いた。

「破瑠魔先生のご高名を拝聴致しまして、我が主(あるじ)がどうしても先生にご相談致したい事があると申しております。 お願いでございます。 何卒(なにとぞ)、この私奴(わたくし・め)とご同道願えませんでしょうか? 何卒。 お願い申し上げます。 これ、この通りでございます」

いきなり、大河内順三郎がその場で這(は)いつくばり、外道に土下座をした。
突然の出来事に、呆気(あっけ)に取られて呆然(ぼうぜん)とする脇役三人衆であった。

それに気付かずにか?
あるいは気付いてもそれを無視してか?

外道は目を瞑(つむ)り、まだ沈思黙考したままだ。
大河内は地面に這いつくばった状態で外道の顔を見上げている。

緊張感が若干緩んだとはいえ、辺りの空気はまだ重い。
その状態が1分以上続く。
その1分が・・・外道を除く4人には1時間以上に感じられた。

その時、


(クヮッ!!)


不意に、外道が目を明けた。


(ジロ!!)


大河内の目を見て、


(ニヤッ!!)


薄ら笑いを浮かべた。
そして沈黙を破った。

「面白い。 会ってみよう」

と、一言。
その外道の一言で全員の緊張感が一気に解けた。

そして、

「先生!! 大丈夫なのか?」

センちゃんが心配そうな声で聞いた。
他の二人も心配そうに外道を見ている。

「センちゃん、ブッちゃん、コウちゃん。 心配ない。 この人はいい人だ。 それを今俺は見た」

この外道の最後の一言でその場の雰囲気がガラッと変わった。

「ま~た始まったょ。 先生得意の変な日本語」

と、センちゃん。

「『この人はいい人だ。 それを今俺は見た』 って? 先生、文法おかしくないかい」

と、ブッちゃん。

「分け分からん」

と、コウちゃん。

「文法おかしい、おかしくないはどうでもいいんだょ。 見たんだょ俺は、確かにネ」

そう言って、3人に向かって外道はニャッと笑ってウインクをした。
それから、目線を再び大河内に移した。
大河内は相変わらず地面に這いつくばったまま、

「有難うございます、有難うございます」

を連呼している。

「そうと決まれば即断即行、長居は無用。 アンタの主とやらに会わせてもらおう」

そう言いながら外道は、上体を全く前傾しない状態のままスッと立ち上がった。

人は立ち上がる時・・・






重心移動のため若干前傾姿勢を取るのだが・・・。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #4 『謎の老紳士』の巻

#4 『謎の老紳士』の巻




(キキキキ、キー)


女木戸の丘公園横に、この辺りでは場違いな超・高級外車が止まった。
その名も・・・ロールス・ロイス。


(ガチャ、キー、バタン)


一人の上品な老紳士が降り立った。
これ又、場違いな格好である。
黒が際立ったモーニングを着ている。
車のドアをロックすると、何かを探しているのだろうか?
公園内をキョロキョロしながら歩き出した。

女木戸の丘公園はだだっ広いと言うほどではないが、東京ドームの半分位の大きさはある。

その老紳士は、暫(しばら)く何かを探してでもいるかのようにキョロキョロ辺りを見回しながら歩いていたが、突然、 “ブルー・シャンティ” と書かれた看板の前で立ち止まった。
看板といっても板切れに下手っぴな字で “ブルー・シャンティ” と書いた物を杭に釘打ちし、地面に突き刺してあるだけの簡単な物だ。
センちゃんが適当に作った物だった。

「“ブルー・シャンティ” オォ、ここじゃここじゃ」


その時、当のブルー・シャンティでは・・・

4人のオッサンが芋焼酎片手に大いに盛り上がっていた。
おバカなお話、こ、い、て。。。

(センちゃん) 「しっかし、ミラーマンもバッカだよな」

(ブッちゃん) 「ミラーマン? ミラーマンって?」

(センちゃん) 「ほれ、大学教授のウエなんとかっていう手鏡野郎」

(ブッちゃん) 「アー、アー、アレッ!?」

(コウちゃん) 「アレがどしたって?」

(センちゃん) 「なーにが楽しくて、女子高生のパンツなんかで人生棒に振るかね」

(コウちゃん) 「だょな~。 女子高生のパンツなんかそんなに見たいかねぇ?」

(ブッちゃん) 「OLのパンツなら分からんではないがな。 OLのパンツなら」

(コウちゃん) 「だょな~。 OLのパンツなら分からんでもないな。 うん。 確かにOLのパンツならな。 でも、女子高生のパンツじゃぁな。 どうせ色や形なんか在り来りだろうし・・・」

(センちゃん) 「まぁ、セクシーなのは期待薄だわな」

突然、それまで黙って聞いていた外道が、右手に『八方美人』と印刷されたラベルの張ってある焼酎の瓶を握り締め、熱弁を振るい始めた。

「否、そんな事はない。 女子高生はいい。 実にいい。 確かに、OLのパンツはエロいのがエロエロ有ってエーに違いない。 しか~し、女子高生には女子高生にしかない良さというものがある、良さというものが、な!? なっつったって、あの若さだょ、若さ。 うん。 若さ。 あのー、ピチピチのー、ムレムレのー・・・」

そこに先程の老紳士が静かに近付いて来た。
4人は話を止めて老紳士を見た。
老紳士が言った。

「御取り込み中、真に申し訳ございません。 破瑠魔外道(はるま・げどう)という方を探しております。 こちらに来ればお会いできると伺(うかが)って参ったのですが、どなたかご存知の方はいらっしゃらないでしょうか?」

センちゃん、ブッちゃん、コウちゃんの3人が外道を見た。

「破瑠魔は私だが。 貴方は?」

外道が聞いた。






すると・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #3 『ブルー・シャンティ暗黙のルール』の巻

#3 『ブルー・シャンティ暗黙のルール』の巻




(外道) 「お疲れ様ー、カンパーィ!!」

(センちゃん) 「カンパーィ!!」

(ブッちゃん) 「カンパーィ!!」

(コウちゃん) 「カンパーィ!!」


外道は今・・・

この公園で知り合って仲良しになった星野仙二(通称:センちゃん)、田淵幸二(同:ブッちゃん)、山本浩一(同:コウちゃん)の3人と焚き火を囲んで酒盛りの真っ最中だ。
時間はまだ夕方5時過ぎなのにもう薄暗い。
そして寒い。
やっぱり冬だ。
4人はそれを実感しながら楽しく談笑していた。

センちゃんは親分肌で、ここ “ブルー・シャンティ” のボス的存在。
ブッちゃん、コウちゃんは言わばその補佐役。

(一々説明すんの面倒ちぃので、センちゃん達の身長・体重・見てくれ・性格・等に関しては名前を参照の上適当にご想像下さい。 どうせ脇役だし : 作者)

そして、他の10人位いる住人達はこの3人の子分みたいなもんだった。

ここブルー・シャンティには暗黙のルールがある。

“余計な事は、言わない聞かない”

という。

だから、センちゃん達がナゼここの住人になったか?

それは・・・・・・誰も知らない。


4人は今、芋焼酎を飲みながら楽しく盛り上がっていた。

“H” な話を・・・






肴にして。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #2 『分かっている事』の巻

#2 『分かっている事』の巻




破瑠魔外道は易者である。
そして、土曜・日・祝日のみ、この女木戸の丘公園で易を立てて、生計を立てていた。

見料は一件一万円と安くはないが、
その的中率の高さで客が客を呼び客足が耐えることはない。

又、
平日はドコで何をしているかは誰も知らない。

当然、
住所・氏名・年齢などは一切不詳。

分かっている事と言ったら、

身長 : 170cmチョッと?
体重 : 70キロ位?
性別 : おっさん
見たぶり : そこそこ女にもてそう?

更に、
本人の自己申告に依れば、

姓名 : 破瑠魔外道 (はるま・げどう)
年齢 : 35歳?

以上






コレだけだった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #1 『ブルー・シャンティ』の巻

#1 『ブルー・シャンティ』の巻


この 『怨霊バスター・破瑠魔外道』 は、2007/02/22~2007/08/06にかけて 『“怨霊バスター” おっさん 破瑠魔外道・35歳 (第一部)』 として当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ da ピョ~~~ン。

チョッピリ手くわえてっヶど・・・




『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #1 『ブルー・シャンティ』の巻




「兵(いくさ)に臨(のぞ)んで闘う者は、皆、陳列(=陣列・じんれつ)して (我が) 前に在り!! 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!! キェ~~~イ!!!」


(ビュバ~~~!! ビキビキビキ~~~!! ブヮーン!!)


(ヒュ~~~)

(ヒュー)

(ヒュ)

(ヒ)


「フン。 フ、フ、フ、フ、フ。 フッ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ。 ゥワ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ。 ワハハハ、ワハハハ、ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」

「き、効かん・・・お、俺の九字が!? ば、馬鹿な・・・そ、そんな筈は!?」

「ゥワ、ハ、ハ、ハ、ハ!! ・・・。 そんな子供だましの念力がこの俺様に通用するとでも思っているのか。 ワハハハ、ワハハハ、ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」



日本国内某所深夜。

今、二人の男が戦っている。



 ★ ★ ★



話は昨日に戻って。


「ヴッ、ヘックショーィ!! う~、さぶ。 チッキショー!! 暖冬暖冬つっても、やっぱ夜は寒(さ)みーぜ」

と、破瑠魔外道(はるま・げどう)が言った。

「そーなんだよな、昼間はあんなに暖(あった)けーのによ」

と、センちゃんが。

「朝晩はな~」

と、ブッちゃんが。

「やっぱり冬だよな~」

と、コウちゃんが。


ここは、日本のとある痴呆 否 地方にある 『女木戸(めぎど)の丘公園』 テント村。
テント村とは言え、
10人チョィの住人達はテント村等とは全く思っておらず、

“ブルー・シャンティ”

ナンゾというビューティフォーな名前で呼んでいる。

が、

どっから見ても “テント村” だった。











つづく



(注意)
1.シャンティ(shanty) : 小屋、掘っ建て小屋
2.シャンティ(chanty) : (=chantey) 〔水夫の〕 労働歌 《作業に合わせて歌う》
3.シャンティ(shanti) : サンスクリット語(インドの言葉)で、静寂・寂滅・平和の意味のマントラ





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)




『あらからもう3年かぁ。 早いもんだなぁ、月日の経つのなんて。 アッ!? という間(ま)だ』

俺はそんな事を思い出しながら信号が青に変わるのを待っていた。
麻美はまだ俺の存在に気付いてはいないようだった。

信号が青に変わった。

その瞬間、それまで止まっていた時間が一気に動き出した。
まるで100m走の、スタート合図のピストルが撃たれたように。
サッカーの試合開始の審判の笛が吹かれたように。
それまで止まっていた車や人々が一斉に動き出した。
みんな夫々(それぞれ)のリズムとスピードで。
ある者は足早に、ある者はユックリと。
直進車は徐々に加速し、左折車は歩行者が途切れるのを待ち、右折車は対向車に止められている。
それらを俺は肌で感じ取っていた。

初めてだった。
こんな当たり前の事を改めて感じたのは。
否、
当たり前過ぎて見過ごしていたのか?
光や空気や水と同じで、それが余りにも当たり前の存在過ぎて気付かないでいるように。

しかもいつの間(ま)にか日が射している。
強烈な日差しだ。
つい今しがたまでどんよりと曇っていたはずなのに。
そんな事さえも気付かずにいるなんて・・・?
全てがあまりにも当たり前すぎるせいか・・・?

だが・・・

その中にたった一つだけ当たり前じゃない存在があった。
麻美だった。

一歩一歩、確実に俺達の歩く道は近付いた。
俺の歩く道と麻美の歩く道。
あの消化不良の別れから3年。
あの頃の俺達は間違いなく同じ道を歩(ある)いていた。
しかしそれから3年。
今の俺達は全く別々の道を歩(あゆ)んでいる。
その別々の道が今、後ほんの僅(わず)かの時間で再び交わろうとしていた。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)


俺の足音。


(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


麻美の足音。

徐々に狭まる道と道。


(ゴクッ!!)


俺は生唾を飲み込んだ。


(ジトッ!!)


手に汗がにじむ。
緊張している。


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)


胸の鼓動を感じる。
まるで初めて麻美と出逢った時のように。
初めて出逢った女じゃないのに。
昔の恋人のはずなのに。

しかし俺は緊張していた。

『声を掛けるか、掛けざるべきか? ウ~ム』

ハムレットの心境だ。

『掛けるとすればなんて言おぅ?』

こぅか?

『やぁ、麻美。 久しぶり』

それとも昔みたいに、

『俺のベィビィはハッピーかい』

ってか?

ここで俺は歩きながら一回、深く大きく深呼吸をした。
あの最後の電話の時と同じように。


(スゥ~~~。 ハァ~~~)


麻美はもう目前まで来ていた。
伏目がちに歩いている。
まだ俺に気付いた様子は見せない。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)

(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


俺達の距離は後僅(あと・わず)か・・・3メートル位か?
このまま歩けば俺は麻美の左側を、麻美も俺の左側をおおよそ1メートル間隔ですれ違う。
麻美は顔を伏せている。

『どうする? 気付かぬ振りしてすれ違うか? それとも・・・』

もう後2メートル。

『ウ~ム。 良し!!』

俺は麻美に声を掛けようと空いている方の左手を上げようとした正にその瞬間、

『エッ!?』

俺は驚いた。

麻美がニッコリと微笑んだのだ。
しかし、
それは俺にではなかった。
その視線の先には乳母車(うばぐるま)がある。
麻美が両手で押している乳母車が。
そしてその中には赤ん坊が。
その赤ん坊の顔を覗(のぞ)き込んで、麻美がニッコリと微笑んだのだ。
赤ん坊もそれに気付いたようだ、振り返って麻美の顔を見ながらニコニコ笑っている。
恐らく麻美の子供だろう。

それが麻美の答えだった。
麻美はとっくに俺の存在に気付いていたのだ。
もしかすると俺より先に。
そして俺が声を掛けようとした正にその瞬間、

『来る!!』

その気配を感じ取り、我が子に目を落とし微笑んだのだ。
つまり、
その時麻美は無言で俺にこう告げたのだ。

『ほら、見て健ちゃん。 アタシは幸せなのょ。 今のアタシはこんなに幸せなのょ』

と。

この3年の間。
麻美に一体何があったのか俺は全く知らない。
又、知る必要もない。
知ったところで何の意味もないからだ。
旦那はどんな人で、半身不随の父親はどうしたか等・・知ったところで・・何の意味も。

俺はそれを良く承知していた。

だがそれは又、麻美も同じだった。
俺がどこで何をどうしているか等、知る由(よし)もなければ知る必要もなかったのだ。

3年という月日が二人をそう変えてしまっていた。
二人はもう、既に別々の世界に生きていたのだ。

そして俺達はすれ違った。
目を合わせる事なく。
言葉を交わす事なく。
お互い気付かぬ振りをして。
ジリジリ照り付ける強烈な日差しの中。
そのまま振り返らずに、歩調を変えずに、二人の距離を遠ざけるために、俺達は歩き続けた。
互いに待つ人の許(もと)に向かって。

そぅだ!!

実は俺も又、麻美同様、既に一児の父となっていたのだ。
もっとも、まだなり立てのホヤホヤではあったんだが。
生後一ヶ月の男の子の父親に。

現地に着いて2年目に俺は結婚した。
相手は日系三世のブラジル人。
支社長補佐就任1年目に出会い、恋に落ちた。
そして2年目、俺の支社長代理昇格と同時に俺達は結婚した。
支社長代理という立場上、俺は独身という訳には行かなかった。
俺にとって結婚は必須(ひっす)だったのだ。
その一ヶ月後に妻は身ごもり、つい一ヶ月前に男の子を産んだ。
元気ないい子だ、俺に似て。
なかなかハンサムだ。
当然、俺に似て・・・ってな。

ハハハハハ・・・。。。

そして今、俺はその愛する妻と子の待つブラジルへ飛び立つため成田に向かう途中だった。
本社に於(お)ける営業実績報告、並びに対ブラジル投資の戦略会議のため3年ぶりに戻った日本。
久しぶりに再会した両親と兄貴の元気な姿。
そして今日フライト。
当分戻ってくる事のないであろう我故郷(わが・ふるさと)日本。
その日本を離れる前にどうしても立ち寄りたかった場所。
それがこの道。

そぅだ! そうなのだ!!

ここは3年前、俺の元から逃げ帰って行く麻美の後ろ姿を見送ったあの道だった。
最後に麻美の姿を見たあの道だったのだ。
そして今日。
俺はわざわざ遠回りをしてここに立ち寄った。
それは想い出・・麻美との想い出・・それを捨て去るために。
明日(あした)のため過去の想い出とサヨナラをするために。

だが、なんと言う運命の悪戯(いたずら)。

『こ、こんな事があるのか!?』

嘘のような麻美との再会。
まるで絵に描いたような、誰かに仕組まれたかのような、麻美との再会。

『コレが天の采配(さいはい)か? 見えざる神の手か?』

そうとしか思えないような偶然の出会い。

『フッ。 まるでマリオネットじゃん。 俺達って。 ・・・。 否、きっと人間全てが・・・』

『運命の出会い・・・か? きっとこういうのを言うんだろうな』

『しっかし幸せそうな麻美の姿も見れたし、もう何も心残りはなくなった』

『最後の最後も又、結果オーライ・・・ってか!?』

 ・・・

頭の中を徒(いたずら)に取り止めのない言葉だけが駆け巡る。

そして今、3年前麻美が俺の元から走り去っていったのと全く同じコースを辿(たど)り、今度は俺が麻美に背を向けたままその道を渡りきった。
信号はまだ青のままだ。

俺は立ち止まった。
腕時計を見た。

針は、

12時03分00秒丁度を告げている。

『フッ。 たったの3分・・・か!? しかもジャストだ』

これがその瞬間の俺の思いだった。

そぅ・・・

12時00分00秒から始まり12時03分00秒に終わった物語。
たった3分間の物語・・・再会という名の。

それから俺は・・・

ユックリと左手を上げた。
右手はバックを持っているのでその替わりに。
そして振り返る事なく手を振った。
やはり振り返る事なく歩き続けているであろう麻美の後ろ姿に向けて。

こう思いながら、

『俺、今日フライト。 じゃ、な、麻美。 ・・・。 サ、ヨ、ナ、ラ』






と。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part10

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part10




『来るわきゃないか』

成田空港。
フライト直前。
俺は、来るはずのない麻美の姿を人込みの中に探していた。
ついにタイムリミット。
いよいよ搭乗アナウンスに従って、ゲートをくぐる事に。
見送りは親父とお袋の二人。
兄貴は仕事の都合でこらんなかった。

「じゃ、父さん、母さん。 行って来るょ。 兄貴にヨロシク」

「あぁ、体に気を付けてな」

と、親父。

「頑張ってネ」

と、お袋。

そして足元に置いてあったハンディ・パソコン入りのブリーフ・ケース(書類カバン)を持ち上げるため屈(かが)もうとしたその時、
お袋が言い難(にく)そうに声を掛けて来た。

「健一」

「なんだい、母さん?」

「お前ホントにいいのかい?」

「何が?」

「麻美ちゃんの事」


(ドキッ!!)


一瞬、

俺は言葉に詰まった。
きっとそれが顔に出たのだろう、今度は親父が、

「朝霧さんがあんな事にさえならなければなぁ・・・」

と感慨深げに言った。
俺は思いっきり虚勢を張った。

「なんだい、父さんも母さんも。 俺の栄転に水差すような事言って。 それにもぅ、俺と麻美は終わったの。 だからそんな心配しなくてもいいんだょ」

「あぁ、そうだな」

「あぁ、そうネ」

「じゃ、俺行くから。 着いたら直ぐ連絡入れるから。 今日はアリガト」

そう言って、俺は床に置いてあったブリーフ・ケースを右手で持ち上げ、親父とお袋に背を向けた。


(スタスタスタスタスタ・・・)


何歩か歩いた。
ゲートをくぐる直前、俺は振り返った。
親父とお袋の姿を見た。
二人とも手を振ってくれていた。
俺もあいている方の左手で二人に手を振った。

しかしその時俺が振り返ったのは、親父とお袋を見るためじゃなかった。
否、
それもあった。

が、本当は・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・麻美。

そぅ、今振り返ったらそこに麻美の姿が・・・

そんな最後の悪あがき。
淡い期待を込めての事だった。

しかし現実は、

『フッ。 やっぱ、来るわきゃないか』






だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part9

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part9




「はい。 朝霧です。 お電話を有難うございます。 ただ今留守にしております。 ピーという音に続けてお名前、ご用件、お電話番号をお話下さい。 折り返しこちらからご連絡させて頂きます。 それではどうぞ。 (ピー) 」

渋谷で会ったあの日以来、俺達は一度も顔を合わせなかった。
というのも麻美が俺を避け続けたからだ。

携帯の電源は切りっぱなし。
尋ねて行っても出てこない。
つーか、いない。
居留守使ってんのか、ホントにいないのか?
必ずいるはずのオヤッさんは半身不随だから出るに出られない。
俺もフライト準備のためそんなに麻美に時間は掛けらんない。

そして麻美に会えぬまま、終にフライト前日。
その夜。
俺は麻美に最後の電話を掛けた。

案の定、留守電のままだった。
メッセージが流れた。
なつかしい麻美の声だった。
チョッと甲高くって、綺麗で、済んでいて、・・・。

それから 「ピー」 っていう音。
その音を聞いてから、

「スゥー。 フゥ~」

俺は一度、深く深呼吸をした。

そしてユックリと一言一言ハッキリと、こうメッセージを残した。
もしかしたら電話の向こうにいてこれを聞いているかも知れない麻美に向かって。

「俺、明日フライト。 じゃ、な、麻美。 ・・・。 サ、 ヨ、 ナ、 ラ」

と。


(ガチャ!!)


さらば俺の初恋。

さらば俺の青春。

さらば俺の恋人。

さらば俺の・・・






あ、さ、ぎ、り、あ、さ、み。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part8

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part8




秒読みだった。

そぅ、秒読みだった。
今更ながらだが、俺と麻美が俗にいうゴール・インするのは秒読みだったのだ。

そしてこの頃では、

「いつまで今のままでいる気?」

双方の親達からもそんな事を言われる始末だった。
もっとも、言われなくても本人達が一番良~~~く分かってはいたんだが。

実を言えば・・・

俺も麻美もそのタイミングを窺(うかが)っていた。
そして俺がそろそろ切り出さなくっちゃと思い始めていたそんな矢先だった、麻美の両親が事故に遭ったのは。
母親は即死。
父親は半身不随。
麻美は一人っ子。
父親の面倒を見なきゃなんない。

『結婚したら一緒に面倒見りゃいいさ』

俺はそう思っていた。

しかし、その時の状況が状況なだけに俺としては、

『結婚話を今切り出すのは間が悪い。 チョッと伸ばそう』

こんな感じだったし、麻美としても、

『ゴメン。 チョッと伸ばしてネ』

そんな風だった。
つまり、麻美の家庭事情がそんななのにこんな言い方はチョッと不謹慎ではあるが、

『ま、焦る事ないか。 今更』

ぐらいの気持ちで、お互い結婚に関しては余裕のヨッチャンこいていた。

だが・・・

そこに突如、降って湧いた俺の転勤話。
状況が一気に逆転。
思いも寄らぬ方向へ。

当然、俺はこの話を受けた。
否、受けざるを得なかった。
断われば失業間違いなし。
ハロー・ワーク通い決定。
かといって新しい働き口がそんなに簡単にホイホイみっかる保障なし。
だから俺はこの話を受けた。

とすれば・・・

当然、そこに待っていた結果は・・・別れ。
そぅ、別れだった。






麻美との・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part7

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part7




「朝霧クンだったっけ」

「はい」

「今日、予定ある? 帰り」

「ないヶど」

「じゃ、一緒に帰んない? 俺と」

「ウン。 いいょ」

「ヨッシャー!! 作戦通りー!!」

「エッ!? 作戦・・・?」

「アッ!? い、いや。 こ、こっちの事こっちの事。 こ、言葉のアヤだょ言葉のアヤ」

「そ」

『フゥ~。 あっぶねぇあっぶねぇ』

「じゃ、さ。 4時、校門。 OK ?」

「ウン。 OK 」

『ナイス!!』

 ・・・

このやり取りが俺と麻美の本編の開始だった。
そしてその日の内に恋人宣言。
以来ズゥ~っと。

しっかし、こうして思い返してみると結構俺達って・・・青春してたじゃん。

それからの10年間、紆余曲折(うよきょくせつ)色々あった。
とはいえ、取りあえずは平穏無事・・全て世は事もなし・・だった。
もっとも、途中何度か別れの危機っぽい事もあるにはあったんだが。
それにコイツはチョッとまぁ言い難いんだが・・・

俺とて木石(ぼくせき)には非(あら)ず。

適当に “ツ・マ・ミ・食・い” な~んかも・・・

エヘヘへへ。

って、まぁな!!

オトコじゃけぇ、ナンせ。
しゃーあんめ。

麻美のヤツはどうだったかな?

多分なかったんじゃないかな。
淡白なヤツだし。
俺にゾッコンだし。

って、甘いか?

おぃおぃ、

「知らねぇトコで、な~にやってっか分かんねぇーゾ!? 女は子宮で考える!!」

な~んて言うんじゃねぇーゾ。
麻美は俺と違ってしっかり者(もん)だし、保守的だからその心配は無用さ。

た・ぶ・ん・・・






かな???

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part6

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part6




「先輩、三中ですょネ? 出身」

「エッ!?」

「三中サッカー部ですょネ? 出身」

「エッ!? ど、どうしてそれを? き、君も三中?」

先ほどのショックから、まだ立ち直れないままの俺。
しどろもどろ状態が続いている。

「ウゥン。 アタシは二中」

「・・・」

「アタシ見てました。 2年前の春の県大会の決勝」

「エッ!? み、見てた?」

「はい」

『ヤ、ヤバッ!!』

俺は一瞬言葉を失った。
というのも、2年前まだ俺が中学3年だった時の事。
サッカー春の県大会に俺は出場していた。
高校受験を控えている俺にとって、それは中学最後の大会だった。
ポジションは、もち FW (フォワード)。
しかもワントップ。
ゼッケンはエース・ストライカーでキャプテンだったから中村俊輔と同じ “10” でも良かったはずだが、残念ながらナゼか “3”。

“エース・ストライカーでキャプテン” ←ここポイント・・・な、ここポイント。

ま、いっか。
“インテル永久欠番3” のジャチント・ファケッティと同じじゃけぇ。
もっともファケッティは FW じゃなく DF (ディフェンダー)だったヶど。

そして俺たちは順当に勝ち上げり・・もち、俺の・・この俺様の活躍もあって。
って、チョッと手前味噌。
しっかしその通り。
そして終に決勝進出。

その決勝戦。

相手は二中。
そぅ、麻美の出身中学だ。

だが、
得点は0対1。
俺達は前半開始早々1点入れられて負けていた。
何度かチャンスはある事はあったんだが、決定打が放てないまま後半戦に。
その後、押しつ押されつの膠着状態(こうちゃく・じょうたい)が続き、終に後半ロス・タイム。
最早、俺達の負けは決定的だった。
俺の中学最後のサッカーが終わりを告げようとしていた正にその時。
残り時間、後数秒。

『これが最後の攻撃になる!!』

誰もがそう思ったその瞬間。
やっと俺は、フォワードとしての責任を果たす事が出来た。
終了間際に放った一か八かの40ヤード超のロングシュート。
これが見事な曲線を描いてゴールに


(パサッ!!)


終に同点。


(ガックリ!!)


うな垂れている相手チームをよそ目に、

「ガッデム!?」

「やったゼ!!」

「やったー!! やったー!!」

 ・・・

オオハシャギする俺達。

当然、延長戦に突入。
だが、両者一歩も引かず無得点。
結局、勝利の行方は PK 戦へ。

俺は PK には絶対の自信があった。
それまで試合で一度も外した事がなかったからだ。
なにせ誰にも真似できない必殺技があったんだからな、その当時の俺様には。
そぅ、必殺技が。
秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 が。
かつて一度たりとも外した事のない、秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 が。
これは今で言うなら日本代表 MF (ミッドフィルダー)、ガンバ大阪・遠藤保仁の 『コロコロゴール』 っぽい。

そして PK 戦開始。
相手が先攻。
アッサリと5人全員に決められた。
だが、コッチだって負けちゃぁいない。
既に4人が決めていた。
俺が5人目だ。
いよいよ真打登場。
秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 炸裂!!

の!?

はずだった。

確実にこれを決め、

『 PK 延長』

に!?

なるはずだった。

それは俺自身も、又、チームメイト達も全く疑ってはいなかった。
もっとも俺を含めて全員が、ドキドキではあったんだが。

しか~し、

事件はそこで起こった。
って、チョッと大袈裟(おおげさ)か。
その時、誰もが信じられない、勿論(もちろん)この俺自身もどうしてそうなったのか、未だに理解出来ない事件が起こった。
春先の椿事(ちんじ) 否 珍事が。

“ほとんど空振りの打ち損じ”

俺が自信たっぷりに振り切った右足が見事に空を切った。
否、
ボールの脇をかすった。
そして俺はズッコケタ。
まるで FRISK の CM のように。
当然、ボールはゴールには飛ばない。
飛んだ方向はアサッテ。
地面に尻餅(しりもち)をついたまま愕然としてゴールを見つめる俺。
泣き崩れるチーム・メイト。

そんな俺等をよそ目に歓喜の胴上げをする相手チーム。
中学生のクセに胴上げだ・・・生意気にも。

それを俺はただ呆然と見つめていた。
不思議と涙は出なかった。
チーム・メイト達は皆、うな垂(だ)れて泣きじゃくっていたのに。

ヒーローが一転してアンチ・ヒーローになった瞬間だった。
バツが悪いったらありゃしない。

『こんな事なら同点ゴールなんか決めるんじゃなかった』

とさえ、思った位だ。

そしてコレがトラウマとなり、俺はもう二度とサッカーボールを蹴る事はなかった、体育の授業以外では。
つまりその日以来、俺はサッカーから完全に足を洗ったっていう訳だ。
なんつったって得意の必殺技。
その名も、秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 を一番大事な試合で物の見事に外しちまったんだからなぁ。
それもみんなの見ている前で。

「ゥゥゥゥ、ウッ・・・」

つ、辛(つれ)えゼ・・・

だが、

事はそれだけでは済まなかった。
その件は卒業までの半年・・・とチョッとの間。
俺様自慢の秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 は、

ケンの

『おっとっとゴール・無様(ぶざま)バージョン』

やら

『おっとっとゴール・俺様バカじゃん』

やら

『おっとっとゴール・俺様ダメじゃん』

やら

 ・・・

やら

 ・・・

やら

 ・・・

ナ~ンつって、揶揄(やゆ)され続けちまう破目に。

「クッ!?」

か、悲しいぜ・・・

「ゥゥゥゥ、ウッ・・・」


アッ!?

そぅそぅ。
俺、加藤健一でニックネームは “ケン” な、 “ケン”。
実に単純だ。
いかにもってか?
なんせ中学生だから、コレ付けたの。
そして、当然俺は学校一の有名人。


 ★ ★ ★


否、
後で分かった事だが、それ以後俺は・・というより俺の蹴り損じは・・他所(よそ)の中学でも結構有名だったらしい。
これは後日、麻美から聞いた事だ。

「健ちゃん、超有名だったのょ。 あの蹴り損じで」

って、麻美が大笑いしながら教えてくれた。
つーか、
からかわれた。


 ★ ★ ★


ガーーーン!!

『こ、この娘(こ)はよりによってあの過去の忌わしい大事件の目撃者だったとは・・・』

トホホ。

だが、これが結果的に大正解の結果オーライ。
もう俺はな~んにも怖くなくなった。
だから変に自分を良く見せよう、な~んて余計な気持ちはその瞬間一気に吹き飛んじまった。






そして・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part5

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part5




『良し、完璧!! リハーサル通り』

俺は思った。

ここは通学バスの中。
時は、例の件があった翌週月曜日の午前8時。
俺はこの前と同じ、初めて麻美を見つけたバスに乗った。
定期券挿入口に定期を出し入れして顔を上げた。

その瞬間、

『ハッ!?』

仰天した。

目の前に麻美が立っていたのだ。
ジッとコッチを向いて。
まるで俺を待っていたかのように。
否、
待っていたかのようにではなく、間違いなく麻美は俺を待っていた。

一瞬、俺はこの予想外の展開にうろたえた。

『あの娘ともしかしたら同じバスに乗り合わせるかなぁ?』

つー予感。
つーか期待ぐらいは確かにあった。
しかしホントにそうなる確信は全くなかった。
その日その時の俺には。
だからホントにいたので超ビックリ。
しかも目の前に。

だが、俺だって。
俺だって、そういう事があってもいいようにチャ~ンと作戦ぐらい・・・。
そぅ、チャ~ンと。

そして俺は出来るだけ平静を装い、ジッと麻美の目を見つめて挨拶した。

「おはよう。 こないだはゴメン」

と。

『良し、完璧!! リハーサル通り』

俺は思った。

「おはよう。 こないだはゴメン」

何回言っただろうこの言葉。
俺だって次に顔会わせたらどうすべきか位の事は確(しっか)りと考えてあったって訳だ。

「おはよう。 こないだはゴメン」

「おはよう。 こないだはゴメン」

「おはよう。 こないだはゴメン」

 ・・・

俺には確信があった。

『慌てず騒がずハッキリと。 そして爽やかに』

そぅ、ここポイント。

“さ、 わ、 や、 か、 に”

「おはよう。 こないだはゴメン」

って言えたら間違いなく俺はあの娘をゲット出来る。
という確信が。
そしてその通りに言えた。
リハーサル通りだ。

完璧!!

後は彼女。
彼女がどう出るかだ。

既に賽(さい)は投げられた。
次に彼女がどう出るか?
全てはそれに掛かっていた。

「アタシの方こそゴメンなさい。 急に飛び出したりして」

『良し!! いい返しだ』

「否、君が謝る必要ないょ。 やっぱ、あの状況じゃ悪いの俺の方だから。 女の子突き飛ばしちゃったんだから」

「ウゥン。 そんな事ない。 お互い様だょ」

『ヨッシャー!! 作戦通り!! いい流れだ。 この雰囲気を壊さず、かつ、速やかに。 しかし慌てず、騒がず、爽やかに・・・』

俺は思った。
そしてチラッとバスの中を見た。

『良し!! 周りに知った顔はない。 奥の方に何人かいるだけだ。 この会話は聞かれない。 安全だ』

「あぁ、そうだ。 自己紹介まだだったね。 オイラ、アッ!? い、否、お、俺。 い、否、ぼ、僕、・・・」

『ウッ!? し、しまったー!!』

「かかか、加藤健一」

『マ、マズったー!!』

「クスッ」

『ヤ、ヤバ!? わ、笑われたー!!』

「アタシは・・・朝霧麻美。 新入生です。 ヨ、 ロ、 シ、 ク。 加藤先輩」

「エッ!?」

『ナ、ナニー!? こ、この口ぶり!? も、もしかして俺の事知ってんのかぁ!?』

その時俺はかなり動揺していた・・・ようだった。
そんな俺の表情を読み取った上でか?
次に麻美は、

「クスッ」

と笑って一言こう言った。

「か~わぃ」






『クッ!? ななな、何なんだこの展開は~!?』

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part4

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part4




その時、


(ジリジリジリ・・・)


ベルが鳴った。
授業開始のベルだ。

『ハッ!? ヤバッ!? 遅刻だ!?』

俺達は同時に我に返った。
掛ける言葉が見つからず、というより何も言えなかった俺をジャストタイミングで始業のベルが助けてくれたのだ。

「じゃ!!」

逃げるように俺はその場を後にした。

否、正直に言おう。

逃げるようにじゃなくって俺はその場から “逃げた”。
もちろん怖かったからだ。

今思えば妙な話だ。

仮にその時俺がその場で麻美を抱きしめても、恐らく麻美はそれを拒まなかったハズだ。
それどころか抱き返して来たかも知れない。
俺にはソレがチャンと分かっていた。
しかし俺は逃げた。
否、
だからこそ逃げた。
が、正しい・・・か?

ただ、

『初めての出会いは美しくありたい』

そんな淡い思いが先立っちまったって訳だ。

『・・・』

否、違う!!

それは誤魔化しだ。

『怖くてどうしていいか分からない』

こっちが正解だ!!

・・・・・・・・・・って。

「フッ」

昔は、結構俺も純情してたもんだ。
笑っちまうゼ、全く。

さて、話を戻そう。

この出会いは序章だった。
お互いがお互いの存在を認識するためのホンの序章に過ぎなかった。
だが、充分過ぎる序章だった。

そして次だ!!

次の出会いこそが俺と麻美の物語の本編の開始。

そぅ。

俺達の物語の本編の開始は次の出会いからだった。






土・日を挟んだ翌週月曜日の・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part3

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part3




「次は~、○○高校前。 ○○高校前」

バスの車内アナウンス。
俺はそこで降りるため、それまで読んでいた文庫本を手早くリュックに詰め込んだ。
『ボードレール詩集』だ、柄にもなく。
バスが停留場で止まった。
俺は立ち上がろうと顔を上げた。

その瞬間、


(ドキッ!!)


俺はその場で固まった。
目の前にとんでもなく奇麗な娘(こ)がいたからだ。
スリムで背は女子にしては高め。
抜けるような色白。
それを紺系の制服がより一層引き立てている。
パッチリオメメに高い鼻。
プッくらとした唇、そのラインが上品だ。
それらが瓜実型(うりざねがた)の顔の中に実にバランス良く収まっている。
長めの髪を当時も今も珍しいポニーテールに。
かえってそれが新鮮だった。

その娘は丁度俺の反対側に座っていた。
そして俺より一瞬早く立ち上がっていた。
だから間一髪、目は合わなかった。

良かったのか悪かったのか?

つまりその娘は俺の存在に全く気付いてはいなかった・・・ハズだ。

だが、俺は・・・

そぅ、俺は・・・

『なんて奇麗な娘なんだ!?』

これが俺の麻美に対する第一印象だった。
もっとも、その時その娘の名前が 『朝霧麻美』 で、俺よりイッコ年下だという事はまだ全く知らなかったのだが。

しかしその出来事は、

『オンナは奇麗だというただそれだけで、オトコを殺せる』

― そんな感じの言葉をどこかで見聞きした覚えがある ―

正にその言葉を実感した瞬間でもあった。

それから何日か過ぎたある日。

それが起こったのは、校舎の玄関、下駄箱のある所だった。
その日俺は遅刻しそうだった。

『ヤバッ!! 急がなきゃ!!』

そう思いながら大急ぎで下駄箱の蓋を開け、上履きを取り出し、それに履き替え、靴をしまい、蓋を閉じた。
そして左手で教科書やら体操服の入ったデカイバッグをムンズと掴(つか)み、猛然とダッシュ。
下駄箱前に敷かれているスノコから廊下に飛び移った。

その瞬間、

並んで置かれている下駄箱の角から女の娘が小走りに飛び出して来た。
その娘も俺同様焦っていた。
そこは俺からしてみると、勿論彼女からもだが、丁度死角になっていた。

当然、お互い予期せぬ出来事。
不意打ち食らって互いに、

『ハッ!?』

となったが後の祭り。


(ドシン!!)


俺達は激しくぶつかった。
体力の優る俺が右上腕部で彼女の左肩を突き飛ばす格好になった。
信じらんない事に、その娘は弾みで3メートル位ふっ飛んだ。
右肩に濃いブルーのやや大き目のスポーツバッグをかけたまま、それと一緒にだ。
そして半身(はんみ)の体勢で両手を床に着け、両足を揃えて投げ出し、顔を伏せた “オネェ座り” 状態になっている。
幸い怪我はなさそうだった。
それに服装の乱れも。
つまり短めのスカートは無事、めくれてはいなかった。
チョッと残念な気もするが・・・って不謹慎かなっ?
でも、ムッチムチの色白太ももはバッチリだった。

「アッ!? ご免!!」

俺は急いでその娘に駆け寄った。
その娘の足元まで来た時、その娘が顔を上げた。
その瞬間、


(ドキッ!!)


俺はその場で固まった。
その娘は・・・麻美だった。

「アタシの方こそご免なさい」

その時麻美はそう言った。
理由はどうあれ突き飛ばした俺を非難するのが当然のシチュエイションでだ。
そして自力でユックリと立ち上がった。
俺は手を貸すつもりだったのになんにも出来なかった。
ただ黙っていた。

否、

ただ黙ってジッと麻美の目を見つめていた。
そう、その時俺に出来たのはただ黙ってジッと麻美の目を見つめている事だけだった。
思いもよらない出来事に何も考える事が出来なかったのだ。
ただ呆然としてその場に立ち尽くす以外。
もし、周りに他の誰かがいたら又違ったリアクションをしたかも知れない。
だが、こういう時に限って誰もいない。
俺と麻美の二人だけ、そこにいたのは。

運命ってヤツは時々そういう悪戯(いたずら)をする・・・ってか?

もう麻美は立ち上がっていた。
手を伸ばせば届く位置に麻美の顔がある。
目が合った。
俺は動けなかった。
だが、両手でスポーツバッグを持ったまま麻美も又動こうとはしなかった。

それは、

俺がなんにも出来ずにその場で固まったまま、ただ黙ってジッと自分の目を見つめている訳を理解していたからだった。

その時の麻美もまた、思いは同じだったのだ。






俺と。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part2

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part2




「何? 健ちゃん、話って?」

「ウン。 ・・・」

チョッと口ごもる俺。
そんな俺の様子を不可解そうに見つめる麻美。

しばし続くぎこちない間(ま)。

ここは東京は渋谷にあるとあるビルの中にある喫茶店。
駅からさほど遠くない上、窓越しに眺める景色が好きで待ち合わせするには最高の場所。
俺の、否、俺達の秘密の隠れ家・・・って、チョッと大袈裟か。
それでも、まぁ、秘密基地ってトコかな?

その秘密基地で今俺は恋人の朝霧麻美とデート中。
時間は夜の7時。
俺達お気に入りの窓際の4人掛けのテーブル。
俺がベンチシートで麻美が椅子。
向かい合って座っている。
いつも通りだ。
どっちが先に来ようと関係なし。
このテーブルに着ける時はいつも、決まって麻美が椅子で俺がベンチシート。
二人だけの暗黙のルールってヤツだ。

丁度そこへ頼んだコーヒーが運ばれて来た。
慣れた手つきで俺の前にカップと伝票を置いてウェイトレスが戻って行く。
俺よっか早く来ていた麻美の前にはティーカップ。
中には飲みかけのレモンティ。

「ごゆっくりどうぞ」

一言、そう言って立ち去るウェイトレスの後ろ姿を見送ってから、

「ウン。 実は、いい話つーかぁ、困った事になったつーかぁ。 ・・・」

と、またまた口ごもる俺。

「何? 意味分かんない? 分かるように言って」

「ウン。 あのさぁ、麻美。 俺達って結婚すんのかなぁ?」

「エッ!? 突然どしたの、結婚だなんて? 今日の健ちゃん、なんか変だょ」

「ウン。 俺、今日専務に呼ばれちゃって・・・」

「・・・」

「ブラジル行けって言われちゃって・・・」

「ブ、ブラジル!?」

「ウン」

「ど、どういう事?」

「栄転て事。 つまり出世。 それも大出世。 専務は三階級つったけど、五階級位特進の」

「どの位行ってるの?」

「たぶん最低でも3年、いや5年は・・・。 あるいはもっとかも」

「エェー!? そ、そんなに~!?」

「たぶん」

「・・・」

「行ったら行きっぱなしになると思う。 なんせ地球の反対側だし」

「じゃ、じゃぁ、あたし達。 ・・・」

「そ。 一緒に行くか、遠距離恋愛か、それとも・・・」

「・・・」

「・・・」

「い、いつ行くの?」

「明日、返事して。 今月中」

「エェー!? そ、そんな直ぐ~!? あ、あと2週間もないじゃない!?」

「ウン」

「・・・」

「・・・」

「あたし・・・。 あたし行けないょ・・・」

「ウン」

「・・・」

「・・・」

「断われないの?」

「断わったら、俺、会社止めなきゃなんない。 たぶん」

「・・・」

「・・・」

「あたしダメだょ、行けないょ。 ・・・。 パパ、パパの・・・」

「・・・」

「・・・」

「ウン。 分かってる」

「・・・」

「俺も、行けばダイダイ大出世。 行かなきゃ辞表」

「・・・」

「親は兄貴が見てくれてるから、その心配は要らないんだけど・・・。 会社は止めらんない」

「・・・」

「俺、行かなきゃなんない」

「・・・」

「・・・」

「わ、悪いけど、あたし帰るネ」


(ガタッ!!)


椅子を引く大きな音を立て、隣の椅子に置いてあったバッグを引っ手繰(たぐ)るように取り、それを開け、財布を取り出し中から千円札をつかみ出し、テーブルに置くと逃げるように麻美は店を出て行った。
俺の顔を見る事もなく。

突然の麻美のこの行動に一瞬俺は呆然となった。
ただ、麻美を見つめている事だけしか出来なかった。
だが直ぐに、

『ハッ!?』

我に返った。
そして、

「麻美!!」

俺は大声で麻美の名を呼び、横に置いてあったカバンを慌ててつかみ。
伝票をわしづかみにし、急いで会計を済ませ、麻美の後を追った。
店内にいた客の殆(ほと)んどが、何事だという表情を浮かべて俺の様子を好奇心丸出しで見ていた。
しかし、その時の俺にとってそんな事はどうでも良かった。
どうでも良くないのは大切な人。

そぅ。

その時の俺にとって両親の次に、否、それ以上に大切な人の後を追う事だった。


(タタタタタ・・・)


店の外に出た。
麻美が小走りに道を横断していた。
信号は既に赤。
信号無視して俺も渡ろうとした。
一歩足を踏み出した。

その時、


(ププゥーーー!!)


既に車が走り始めていた。
俺は慌てて渡るのを止めた。
一旦クラクションに反応してその音のする方に移した目線を、再び麻美の後ろ姿に向けた。
そして思った。

『もうダメだ!? 追いつけない!!』

渡りきった道の人込みの中に麻美の姿が消えて行く。
俺はその消えて行く後ろ姿を黙って見ていた。
駅まで追い掛ければ追い掛けられたのだが、それをしなかった。
麻美が駅とは反対方向に走って行ったからだ。
だがそれだけではなかった。
俺が最後まで麻美を追わなかった理由、それは・・・。
分かっていたからだ。
麻美が俺に涙を見せたくなかった気持ちが。
そして俺にレモンティ代をおごらせる事なく、ツリさえも無視して立ち去った訳が。

麻美には半身不随の父親がいる。
半年前、交通事故にあった。
同乗していた母親は即死。
運良く生き残った父親は、不遇な体に。
一人娘の麻美は働きながら献身的に父親の介護をしていた。
否、
しなければならなかった。

俺も麻美の両親は良く知っている。
否、俺だけじゃない。
俺の両親、兄貴さえもだ。
何せ付き合い長いから。
もうかれこれ10年位・・・かな?
俺達が付き合い始めて。
そうだ、10年だ。
早いもんだなぁ、月日の経つのって。

そうかぁ、アレからもうそんなに・・・。

俺達が出会ったのは、俺が高校2年、麻美が同じ高校1年の春。
通学途中のバスの中。

そぅ。

あれは俺が高2で、麻美が高1の春の事だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part1

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part1

以下は、2008/7/31~2008/08/10に当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ da ピョ~~~ン。。。
これは恋愛物なのじゃ。
そ、れ、も、・・・た~ったの3分間の。。。




「12時・・・ジャストか~。 フゥ~」

それはどんよりと曇った、しかし蒸し暑い7月ある日の事だった。

『イャー。 しっかし暑い。 言いたかないが、イャー暑い。 こんな時にゃ、よっく冷(ひ)えた冷(つめ)た~~~いビールをグビィーっと一杯・・・。 ってムリか


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ムリか』

俺、加藤健一。
28歳。
リーマン。
一応、知ってる人は知っているっぽい会社の企業戦士。
出世街道にはナントか乗れている・・・ようだ。

今、俺のいるここは信号待ちの交差点。
場所は渋谷。
チッっとバッっか広っぽい道路。
特に何かしてる訳でもないのに、ただ立ってるだけでポタポタ滴(したた)り落ちる汗を拭き拭き、俺は信号が青になるのを待っていた。
手持ち無沙汰だったので何気(なにげ)に腕時計を、チラ見したって訳だ。
すると腕時計の針はジャスト12時00分00秒を告げていた。
気ン持ちいぃーーーぐらいジャストだ。
それからユ~~~ックリと俺は顔を上げた。
そして見るとはなしに道の反対側を見た。
大勢人がいる。
大人に子供、日本人に外国人、老若男女(ろうにゃく・なんにょ)様々だ。
皆、一様に信号が青になるのを待っている。

だが次の瞬間・・・

「アッ!?」

時間が止まった。

俺は思わず声を上げ、その場に立ち尽くしていた。
その大勢の中にいるたった一人の女の姿に目が釘付けになったままで。

『ア、アレは~・・・。 ま、まさか!?』

俺は前に大きく身を乗り出し、もう一度良~~~っく目を凝らしてその女を見つめた。

『否、違う!! まさかなんかじゃない!! アレは~、麻美。 そうだ! 麻美だ!! 間違いない! 麻美だ!!』

俺の目の前、道を挟んだ反対側おおよそ10メートル程先にかつての恋人、朝霧麻美(あさぎり・あさみ)の姿があった。
信号は赤。
偶然の出会いだ。
だが、気付いたのは俺だけ。
麻美はまだ俺の存在には全く気付いてはいないようだった。
俺は一目で分かったのに。

『こ、こんな事があるなんて!?』

俺はまるで絵に描いたような、誰か目に見えない演出家がいて巧みに仕組まれたような、この信じられない再会に驚きと共にある種の感慨めいた物・・つまり運命・・そぅ、運命。

俺はその時運命を感じ取っていたのだ、俺達の過去の回想と共に。
俺と麻美の過去の物語、人生という壮大なドラマの回想と共に間違いなくそれを感じ取っていたのだ・・その時俺は・・確かに。

そして、それが起こったのは今から3年前。
それは今から丁度3年前の7月ある日の事だった。


(トントン。 ガチャ)


「失礼します」

俺は一言(ひとこと)そう言い、


(ギィー、パタン)


伏し目がちに第一会議室に入室し、一礼して顔を上げた瞬間、


(ドキッ!?)


『な、なんだコリャ!? 重役連、揃い踏みジャねぇかぁ。 ま、まいったなぁ』

俺は顔を上げた途端(とたん)大いにビビッタ。
何せ社長を中心に、専務、常務、それに殆(ほと)んどの取締役連中が目の前にデーンと構えているのだ。
丁度、新入社員採用試験の面接時のように。

『ま、まるで面接試験だ!?』

そう思いながら

「第一営業部の加藤です。 部長の加山からこちらへ来るように言われてまいりました」

と俺が言うと。

突然、

「ファーラポルトゥゲス」

と大山専務が訳の分からぬ言葉を口走った。

「エッ!?」

思わず驚きの言葉が口を突いて出た。
すると専務が再び、今度はややユックリ目に同じ事を言った。

「Fala portugues? (ファーラ ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語が話せるか?)

『ン!? ポルトガル語か?』

俺は聞き返した。

「Portuges? (ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語ですか?)

「Sou sim. (ソゥ スィン)」 (そうだ)

「Falo um pouco. (ファーロ ゥン ポゥコ)」 (チョッとだけなら)

「Por que aprendeu o portugues? (ポルケ アプレンデゥ ォ ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語を覚えた理由は?)

「Para Copa do Mundo. De 2002. (パラ コッパ ド ムンド。 ジ ドィス ミゥ ィ ドィス)」 (サッカーワールドカップです。 2002年の)

「Copa do Mundo?」 (ワールドカップ?)

「Sou sim. (ソゥ スィン)」 (そうです)

 ・・・

 ・・・

 ・・・

というような、そんなポルトガル語のやり取りがしばらく続いた。
そして最後に専務が一言こう言った。

「Bem, voce fala portugues, nao esta mal. (ベン ボセ ファーラ ポルトゥゲース ナゥン エスタ マゥ)」 (よろしい。 君のポルトガル語は悪くない)

「Muito obrigado. (ムィント ォブリガード)」 (有難うございます)

ここで専務が意味有り気に社長に目配せ。
すると社長が、

「以上だ。 ご苦労。 下がって宜しい」

そう言った。

「ハッ!! 失礼致します」

俺は訳も分らず、狐にでもつままれたような気分で一礼してその場から退出した。

『今のは一体何だったんだ? ポルトガル語の試験か? しっかし専務があれほど堪能だったとは・・・? それにしても俺が片言とは言えポルトガル語を話せるのを一体ドッから? ・・・』

と、そんな事を思いながら。

あぁ、そぅだ!?

子供ン時からサッカー少年だった俺は、一時は本気で将来はブラジルにサッカー留学したいなんゾと真剣に思い込み、むか~しポルトガル語をチョッとかじった事があった。
それが2002年、日本でワールドカップが行なわれたのを契機に会話位はと思い、暇な時に会話の練習らしき事を始めていた。
まぁ、忙しい身だから本格的にという訳にはゆかず趣味程度ではあったんだが。
その成果が今日チョッと出た・・・かな?

しかしアレは、さっきのアレは一体何だったんだろうか?

そしてその日はそれで何事もなく終わった。
次の日も。
その又、次の日も。

だが、3日後。
再び、今度は専務室に呼ばれた。


(トントン)


「第一営業部の加藤です」

中から声がした。

「入りたまえ」

専務の声だった。


(ギィー)


「失礼致します」


(パタン)


ドアを閉めて一礼してから専務に聞いた。

「何か御用でしょうか?」

「あぁ。 まぁ、楽にしたまえ」

「はい。 有難うございます」

「単刀直入に言おう。 君には至急ブラジルに飛んでもらう事になった」

「エッ!?」

「君の事は調べさせてもらった。 その上での決定だ。 実は、一週間ほど前。 我が社のブラジル支社の支社長が交通事故に遭ってな。 幸い命に別状はなかったのだが、当分現場復帰は難しいとの報告があったんだ。 よって至急、後任を送らねばならなくなった。 ポルトガル語の出来る社員をな。 何人か候補がいた中で君にその白羽の矢が立ったという訳だ。 君のコレまでの実績を評価しての事だ。 それにマァマァ言葉にも不自由はなさそうだしな。 当面は支社長補佐という肩書きになるが・・・。 どうだ? この話受けてくれるな?」

「は、はぁ。 し、しかし・・・」

「何だ? 嫌なのか?」

「い、否。 あ、あまりに突然だったものですから・・・」

「あぁ、そぅか。 まぁ、ムリもない。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

もない。 だが事は緊急を要す。 モタモタしている暇はない。 この人事は異例の大抜擢だ。 三階級特進とでも言った所か・・・。 君にとっても悪い話ではないはずだ。 今すぐにとは言わない。 良く考えて返事は明日中でいい。 我が社は今 BRICs(ブリックス)、取り分けブラジルに一番注目している。 それに見合う投資もしているし、これから更に倍増する予定でもある。 その支社長補佐ともなれば本社の営業部課長、否、次長格だ。 否、もっと上か。 いずれにしてもそこを良く考えるように。 この話受けてくれるようなら今月中にはフライトしてもらう。 速やかに身辺整理をしておくよう。 以上。 下がって宜しい」

「は、はい。 失礼致します」

「ウム」


(ギィー。 パタン)


一礼して部屋を出て直ぐ、俺は思った。

『ブラジルかぁ・・・。 それにしても何て急な。 だが・・・』

会社人間の俺に取ってこの話は、正に青天の霹靂(へきれき)、

『ダルマさんが転んだ』

あ、違うか!?

『幸運の女神様が微笑んだ』

だ!?

そぅ。
それ以外の何物でもない。
何せ、異例の大出世なんだからな。
エヴァ(エヴァンゲリオン)に例えるなら、ヤシマ作戦で初号機が第5の使徒ラミエル(新劇場版では第6の使徒)に対して放った、ポジトロン・スナイパーライフル(陽電子砲)3発分位の威力だ。
もぅ、気分は最高。
ウハウハ状態。
躍り上がらんばかりだ。
問題なんてありゃしない。
断る理由なんて、ナァ~ンも・・・な。

『アッ!?』

あった!?

たったの一つ。
そぅ。
たったの一つがあった!?

そしてそのあった、たったの一つが・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・問題だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』

(第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』




ある真夏のとっても暑い日のチョッピリ暖かい・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、は、な、し~~~


そのヒトはサンタクロースでした。
そしてそれは夢だったのです。

私は朝霧麻美(あさぎり・あさみ)。
ジャスト二十歳(はたち)の女子大生。
子供の時から読書が好きで、気が付いたら国文科に・・・。

私は今、大学の近くのカフェテラスでティータイム中です。
このお店はオープンカフェになっていて、私は歩道の中に出ているテーブルの内の一番端っこのテーブル・・いつものお気に入りのテーブル・・に座っています。
その私の直ぐ脇を色んな人達が通り過ぎて行きます。
サラリーマンにOL、学生に子供、年配の老夫婦に若いカップル、白人に黒人、西洋人に東洋人、etc.・・・。
それこそ様々な人種の色んな人々が私の直ぐ脇を、ある人はユックリと、ある人は早足で、ある人は小走りに・・・、通り過ぎて行きます。
みんな夫々(それぞれ)に人生という長~い旅の中のほんの一瞬の光を受け、影を落として行くのです。
ここに・・・私の座っている直ぐ側に。

って、私ったら今日はチョッピリ哲学者・・・かな?

「(クスッ)」

なんか変、自分でも少し可笑しいです。

今、私は左手にモカの入ったマグカップを持っていて丁度一口すすったところです。


(ゴクッ!!)


ミルクとシュガーでマイルドになっているとはいえチョッピリほろ苦いリキッドが、口の中から食道経由で胃までの間を3秒掛けて、ユックリとしかし短い旅をして行きます。

『フゥ~。 おいしい・・・』

コーヒー大好き人間の私にとって正に至福の一時です。
特に、最初の一口目は・・・。

その美味しいコーヒーの入ったマグカップを持つ反対の手には、一冊の文庫本が握られています。
ナゼかそれは詩集。
著者はポール・ヴェルレーヌ。
本当は源氏物語の一巻目だったはずなのに・・・。

そんな私ですが、今朝夢を見ました。
それも私の夢を。
そこには誰もいなかったのに。
でも私の夢でした。
見知らぬ場所にある、見覚えのない、奇麗で小さい部屋の中に姿の見えな私はいました。
姿の見えない子供の私が・・・。

「おゃ!? どぅしたんだい、お嬢ちゃん? 元気ないネェ」

不意に背後から声が。
太く大きな大人の男の人の、それでいて優しさに満ち溢れた声が。


(スゥ~)


反射的に振り返った私は、チョッとビックリしました。

ナゼかって?

「(フッ)」

簡単です。

私の目の前には真っ白なヒゲを豊かに生やした、お相撲さんのように大きくてデップリしたサンタさんが立っていたからです。
サンタさんは、所々白の入った真っ赤な服と帽子を被(かぶ)ってジッと私を見つめていました。
とても慈愛に満ちた目で。
そしてニッコリと微笑(ほほえ)んだのです。
その姿を見て姿の見えない私も思わずニッコリと微笑み返(がえ)しをしていました。

変ですネ。
姿が見えないのに。
でも、チャンと微笑み返しをしたんですょ。

そしてこう言いました。

「ウン。 独りぼっちで寂しいの」

するとサンタさんは、

「元気をお出し、お嬢ちゃん。 おじさんがいい物を上げよう」

そう言いながら白くて大きな袋の中から、花模様の奇麗な包み紙でキチンと包装された手の平サイズの小箱を取り出し、私の両手の上にソッと乗せてくれました。

「これはなぁに?」

「これはネ。 幸せの魔法の小箱だょ」

「幸せの魔法の小箱?」

「あぁ、そぅだょ」

「開けてもい~ぃ?」

「あぁ、いいょ。 開けてご覧」

私は急いで真っ赤なリボンを解き、包んである奇麗な包装紙を破かないように注意深く開き、その小箱の蓋を開けました。
ワクワクドキドキしていたのを覚えています。

蓋を開けた時、

「チチンプイプイ  アブダカダブラ  ホーヤレホー」

と一言、声が聞こえました。
否、聞こえたような気がしました。

でも・・・

箱の中には何も入ってはいませんでした。
その箱は空っぽだったのです。

「おじちゃん。 ナンにもないょ、空っぽだょ」

不意に私は悲しくなり、半べそをかいてそう言いました。
サンタさんはそんな私を慰めるように、

「いいゃ、チャンと入っていたょ。 何か声が聞こえなかったかい?」

優しくそう聞き返しました。

「ウン。 聞こえた」

「そぅ。 それがプレゼントだょ。 もぅお嬢ちゃんは独りぼっちじゃないょ。 いいかい、幸せを放しちゃ駄目だょ。


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だょ」

最後にそう言い残してサンタさんはソリに乗って空高く飛んで行き、やがて姿は空の彼方に。
私は八頭立(はちとうだ)てのトナカイに引かれるソリに乗ったサンタさんの後ろ姿が、空の果てへと消えて行くのをただ呆然として見上げているだけでした。

そこで目が覚めました。

6月なのにサンタさん。

「(フッ)」

お、 か、 し、 い、 ・・・。

そんな夢を今朝、私は見たのです。

目が覚めた後、チョッピリ私はセンチになっていました。
そんな事をボンヤリ思い出しながら、ヴェルレーヌの詩集を一旦テーブルの上に置き右手でパラパラとページを繰(く)っていました。

『「言葉なき恋唄」 巷(ちまた)に雨の降るごとくわが心にも涙ふる かくも心ににじみ入る このかなしみは何やらん? ・・・。 か。 フーン』

詩の一節を目で追いながら、二口目のコーヒーをすすろうと左手に持ったマグを口元に持ってきた正にその時です。

「あれ!? もしかして・・・?」

不意に誰かに声を掛けられました。
その声に引っ張られ、私は顔を上げました。

「ヤッパリそぅだ!! 君だ君だ!!」

「エッ!? 貴方は?」

「ホラッ!? 僕ですょ、僕。 今朝、新宿の○○書店でぶつかった」

「あぁ、あの時の・・・」

私はチョッとムッとしました。
その人は今朝、私が源氏物語の文庫本を買った書店で私を突き飛ばすようにぶつかり、たった一言、

「ご免!!」

そう言っただけで、ぶつかった弾みで床に落とした本の入ったその書店の紙袋を自分の分だけササッと拾い上げ、逃げるように立ち去って行った無礼なヤツだったからです。

「アッ!? その本その本!! それ!! 僕のですょネ。 僕の」

そう言いながらソヤツは持っていた○○書店の紙袋から源氏物語の文庫本を取り出して私に差し出しました。

「これ、君のでしょ」

「アッ!?」

確かに私が買った本です。
否、だと思います。
状況からして。

「いやぁ。 さっきはホンッッッッットご免。 超急いでたモンで。 君を突き飛ばしちゃったのに、散らばった君の手荷物拾うの手伝いもしないで。 それに間違えて君の袋拾っちゃって。 ホンッッッッットご免」

『私の源氏物語の文庫本を両手で挟んで拝まれた日ニャ、勘弁せぬ訳には行かぬ。 コイツいい奴かも・・・』

「いいですょ。 もぅ済んだ事だし。 じゃぁ、交換しましょ」

そう言って私はヴェルレーヌを彼に差し出しました。
彼も源氏物語を私に。

「あの~。 今一人? 待ち合わせ?」

「一人」

「なら、チョッとここいっ? 貴女とお話しがしたい。 これもきっと何かの縁じゃないかと・・・」

って、チョッと強引。

でも、


(コクッ)


成り行き上、私は無意識に頷いていました。
ま、思ったほど悪い人でもなさそうだったので。

「じゃ、失礼して」

私は彼が俯(うつむ)きがちにテーブルの反対側の椅子に座るのを見ていました。
そして彼が顔を上げました。

その時です。


(ドキッ!!)


突然の出来事にやはり少しばかり取り乱していたのでしょうか、平静さを取り戻し、間近で見る彼の顔はとても美形だったのです。
それまで全く気付きませんでした。
それにスリムで長身。
年齢は24、5位・・・かな?
紺のスーツが良く似合っていて、深くて濃い赤っぽいシルクのネクタイが純白のワイシャツにセンス良く引き立てられています。
それらがバランスよくマッチングしていて彼をモダンな都会っ子に仕立てていました。

一方、私は紺のデニムのジーンズにオレンジのティーシャツ。
それにかかとの高い赤いパンプス。
一見ドコにでもいる普通の女の子ルックです。

『ハ、ハンサム!? チョ、チョッと負けソ』

予想外の展開に付いて行けず私の胸はドキドキしていました。
でも次の瞬間、私は目が “点” になったのです。
彼のこの一言で。

「ワシっ。 あ!? いいい、否、ぼ、僕。 ・・・」

どぅやら私だけではなく、彼もまた緊張していたようです。
強引だった割には。

「プッ!?」

思わず私は吹き出してしまいました。

「(フッ)」

彼も照れ笑いを浮かべています。
この短いやり取りが、二人の間に有った何とも言えない緊張感を一気に吹き飛ばしてくれました。

「僕、加藤健一。 リーマン。 君は?」

「朝霧麻美。 学生、大学生」

「ウ~ム。 朝霧麻美さんかぁ」

「はい」

「実はこの本もう諦めてたんだ。 だから買い直すつもりだったんだ。 でも・・・」

彼はチョッと口ごもりました。

『ン!? でも?』

ここで一旦会話が途切れました。

「何になさいますか?」

ウエイトレスが注文を取りに来たからです。

「あぁ。 コーヒー。 モカ、なければ・・・。 ウ~ン。 彼女と同じの」

そう言って、私の左手にあるマグを右手人差し指で指さしました。

「あの~、これ。 モカなんだヶど」

マグを指差された弾みでそんな余計な言葉が口を突いて出てしまいました。

『ハッ!? し、しまった!? 揚げ足取っちまったゼ』

この時、既に私は彼に何となく好意を寄せ始めていたのです。

『マ、マズイ!?』

彼の心証を害してしまったのではないかと一瞬不安になりました。
下手をすると空気が・・・。

すると彼は、

「ビンゴ!!」

もう一度、今度は力強く弾みを付けて私のマグを指さしてそう言い、

「じゃ、ないかと思ったんだ」

と付け加えました。
そして改めてウエイトレスに向かって一言、

「モカ」

キッパリとそう言い直したのです。

「はい。 モカお一つですネ」

「ウン」

彼のこのチョッと気の利いたって言うかぁ、イナセなって言うかぁ、見事な切り返しのお陰で私は救われました。
空気が悪くならずに済んだのです。
それと同時にそんな彼に完全に心を開いてしまいました。
完全武装解除です。
つまり無防備になっちゃったって事ですネ。
だから、立ち去るウエイトレスの後ろ姿を見送ってから再び私の方を向いた彼に、素直にこう聞くことが出来ました。

「『でも』 って?」

「でも? ・・・。 あぁ!? でも奇遇だねって言うつもりだったんだ。 違う?」

「ウゥン、違わない」

既にわだかまりは全くなし。
会話はもう自然。
たった今出会ったばかりなのに。

『アッ!? 違うか? 二度目だった』

そして・・・

それから30分が過ぎました。
それもアッという間に。
それ程会話が弾んだのです。

でも、そろそろ私は午後の授業に。
彼はもう10分、そこで時間を潰してから得意先との約束の場所に。
お互い行かねばなりません。

その別れ際です。

「麻美さん。 今夜開いてる?」

この時既に、苗字ではなく名前にさん付けです。
早いでしょ。
もう、いい感じになっちゃてたんです。

『アッ!?』

でも断わっとくけど、私はそれ程軽くはありませんょ。
二人の波長がぴったんこカンカンだっただけですょ。
それにお互い付き合ってる人もいなかったし。

「ウン。 開いてるょ」

「良かった。 あのさぁ、食事に誘いたいんだけど・・・。 駄目?


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

駄目?」

「ウゥン。 いいょ」

「ヨッシャー!! デート決定!!」

「(クスッ) ドコで?」

「ウ~ム。 それはまだ考えてはオラヌ。 取りあえず7時にここ。 じゃ、なくってぇ。 新宿の○○書店。 初めてワシラが出会ったトコ。 どう?」

「ウゥン。 初めて出会ったトコは嫌」

「エッ!?」

「(クスッ) 初めて “ぶっかった” トコ。 なら・・・おk」

「ナイス!! それ、採用!!」

「(フッ) なら、7時。 ○○書店。 アチキラがぶっかったトコネ」

「そ」

「最高のハンサムさんで待っててくれる?」

「あぁ。 トビっきりの笑顔で来てくれるんならネ」

「(クスッ) ・・・。 じゃ、ネ。 バーィ」

「ウン。 バーィ」

手を振りながら立ち去る私に向かって手を振る彼に見送られ、私は大学に戻りました。
気分は最高。
もぅ、ルンルンです。
そこでの30分で恋人宣言はまだでした。

ヶど、今夜それは間違いなく・・・。

そして思い出したのです。

何をかって?

そ、れ、は、・・・・・・・・・・今朝の夢。

サンタさんの夢。
幸せの魔法の小箱の夢。

そう、あれは・・あの言葉は・・小箱を開けた時に聞こえたあの言葉は、きっと 『恋の・ジ・ュ・モ・ン(呪文)』。

そうです!!

恋の呪文・・・それがサンタさんの贈り物だったのです。

今日は6月24日。
夏真っ盛り。
真冬の12月24日のクリスマス・イブまで、まだあと半年。
チッチャイ私達二人を乗せてるおっきな地球の休む事のない旅は、太陽の周りをあと半周分残しています。

でも・・・

でも私は今、胸を張ってこう言いたいし、言わせて欲しい。
だってルンルン気分でハッピーだもン。
だから言います。
感謝を込めて。
天に向かって両手を広げ、たったの一言、大きな声で・・・






「メリー・クリスマ~~~ス!!」






(第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その6-(最終回)』

(第三話) 『朝の恋人 -その6-(最終回)』


朝。

JR山手線、高田馬場駅8時17分発、いつもの電車。
ドアが開いたので乗り込んだ。
スゥーっと、引かれるように俺の首、どういう訳か左に振れた。
自分の首のはずなのに。
そしたらそこに彼女がいた。
2m位先だった。

『エッ!? 何で?』

ジッと俺を見つめてる。
悲しみと期待と不安が入り混じったような目をしてた。
しばらくそのまま見つめ合う。
悲しそうな表情に、チョコットばっかズッキンだ。
そして・・・
俺は目を切った。

『参ったなぁ。 ドウしましょ』

な~んて思いつつ、窓から外を眺めていたが、視野に入る彼女の視線が痛い。

少し経ったら目白駅。
着いたら当然ドアが開く。
乗り降りする乗客達を、彼女の視線を感じながら眺めてた。

そしたら、
一人の女性が目に入る。
こっちに向かって走ってる。
ドンドンドンドン近付いて来る。
その娘とドアと競争だ。
どっちが早いか競争だ。

ドアかその娘か?
その娘かドアか?

タッチの差で間に合った。

「エィ!!」

っとその娘は飛び乗った。
そしたら直ぐに、
待ってましたとばかりにドアがガチャン。


(ガラガラガッシャン!! パ~~~ン!!)


ハァハァ~、ハァハァ~、呼吸を整えて、
照れくさそうに微笑んで、
その娘は俺にこう言った。

「フゥ~、間に合ったぁ。 オッハヨー!!」

歳は二十歳の女子大生。
笑顔の可愛い女子大生。

俺はニッコリ笑ってこう返す。

「おはよう」

そぅ。
その娘が俺の新しい
朝の恋人 『その名は菊乃』。

否(いや)、違う。
朝の恋人 『その名は菊乃』 
そんな女は
もういない。

目の前に、今いるその娘は本物の。
俺の恋人 『その名は麻美』。

そう、

『朝霧麻美(あさぎり・あさみ)』

見つけたのは10日(とおか)前。
ゲットしたのは3日前。
出来立てホヤホヤの恋人だ。

「寝坊しっちゃった?」

「うん。 エヘヘ」

しばらくすると池袋。
後ろがチョッと気になるが、
振り返らずにそのまんま、東口で降りました。

そして一緒に改札口。
そこで二人は右左(みぎひだり)。
俺は会社で麻美は私鉄。

今夜7時に池袋。
パルコでデートのお約束・・・

「じゃ、今夜ね」

「あぁ。 7時ジャスト。 又、ダッシュで来んのかな? さっきみたいに・・・」

「うぅん。 そんな事ないょ、ダイジョブだょ。 エヘヘ」

「ホント?」

「うん」

「良し!! じゃ、7時!?」

「うん、7時。 じゃ、ね!?」

「あぁ。 じゃ、な!?」




(第三話) 『朝の恋人』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その5-』

(第三話) 『朝の恋人 -その5-』




次の日、その次と休日だ。
当然、いつもの電車は来なかった。

早く来い来い月曜日。

もっとも、こっちも予定があった。
土曜は、新宿で親睦会。
ニッチョは、渋谷で懇親会。
一杯機嫌で渋谷で乗って、ほろ酔い加減で馬場に着く。
時計の針は、夜の12時丁度を指している。
浮かれ気分で改札口をチョィ千鳥足で出るはずだった。

が、

その場で俺は凍(い)て付いた。

 ・

 ・

 ・

目の前にはこの俺の “朝の恋人 『その名は菊乃』” が立っている。
それも一人ではなく、男と一緒。
そいつと腕を組んでいた。
何をした後かは、ピンと来た。
受けたショックはデカかった。

一瞬、彼女と目が合った。
彼女は、
サッと目を伏せた。
スッと色をなくしてた。
ぎこちなくすれ違う。
知らぬは相手の男ばかりなり。

現実なんて、ソンなもん。

ルンルン気分は直ぐに失せ、その日はそのまま不貞寝(ふてね)した。
こんな時、眠れないのが普通だが、直ぐにぐっすり眠れた事に、目が覚めてから驚いた。
きっと酒の力(ちから)に違いない。

その日の朝は、チョィ気まずい。
だから1本早い電車に乗った。
当然彼女は乗ってない。

その次の日もおんなじだ。

その次も。

 ・
 ・
 ・

ふと、気付いてみれば菊乃の事は、もうドウでも良くなっていた。

『チョッとモッタイなかったなぁ』

位になっていた。
その気分の変化に・・・
我ながら驚いた。

いつの間にやら乗る電車。
高田馬場駅8時17分発が普通になった。
そして、それから一ヶ月。
彼女の事は忘れてた。

駄菓子菓~~~子(だがしか~~~し)!!

本日の・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その4-』

(第三話) 『朝の恋人 -その4-』




今日は嬉しいハナ金だ。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗ってはいたが、
またまた、いつもと違ってた。

彼女がいたのはドアの側(そば)。
いつもは奥のはずなのになのに。
そして俺を見つめてる。
彼女の覚悟が目に出てた。

『ヨッシャー!! 行くぞー!!』

ナンゾと思ってはみたが、
中々彼女に近付けない。
客が邪魔で近付けない。
彼女は彼女で頑張ってる。
俺と引き離されないよう頑張ってる。
その必死さ、ひた向きさが伝わった。

俺は俺で、その日に限って上手くない。
4人組の学生達が、
やったら邪魔で動けない。
挙句の果てに目白駅。
ヤツ等と一緒に降ろされた。
慌てて乗ってはみたものの、
彼女はズ~っと奥にいた。
と言うより、いなきゃならない状況だった。

そんな彼女にナンの気なしに。
否(いや)、 “反射的に” と言うべきか?

チョッピリ照れくさそうに、首をかしげて肩をすくめる、やれやれポーズを取ってみた。
つーよっか、今流行の “クリオネ” ポーズとでも言うべきか?
もちろん相手は彼女だが。
彼女はにっこり微笑んだ。

『ヤッタゼー!!』

初めて心が通じた瞬間だ。

駄菓子菓子(だがしかし)、
無情にも着いちまったぜ、池袋。

「 Oh! No!! 」

見つめる彼女を見つめながら、後退(あとずさ)りしながら降りました。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その3-』

(第三話) 『朝の恋人 -その3-』




次の日。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
しかし、今日は声なき声は出なかった。
それが、いつもと違ってた。

彼女の視線は俺の頭上の中刷り広告。
しか~し、
目以外の目は、俺だった。
確かにコッチに向いている。

『間違いない。 やっぱり菊乃は俺を・・・。 間違いなく意識してる』

俺のチキンな “はぁと” はドキドキで、まともに彼女を見られない。
だけど情けない事に、見たくて見たくて仕様がない。
だからチラッ、チラッとさり気なく。

そう、チラッ、チラッとさり気なく・・・

駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の目線は変わらない。
当然、心の目線も変わっていない。
目白で乗客が乗り降りしても、その状況に変化なし。
とうとう着いちまったぜ、池袋。
再び気分は複雑だった。

そして、
次の日。

ナゼかその日は木曜日。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
そして、今日も俺は無言で乗った。
彼女も昨日と同(おんな)じだった。
けれども、昨日と一つ違ってた。
心のつぶやきではなく、言葉に出そう。
そう俺は決めていた。

「やぁ、おはよう」

ってな事を、言ってみようと覚悟を決めて、
人ごみを掻(か)き分け掻き分け近付いた。
なんとか彼女の前に出た。

『来る!?』

彼女も察知したようだった。

『いよいよだ』

そう思って、大きく息を吸った・・・

・・・・・・・・・・その時だった。

彼女がサッと体を翻(ひるがえ)し、近寄る俺から逃げちゃった。
逃げたといっても、まぁ、別に。
走って逃げた訳じゃない。
背中をコッチに向けただけなのだが。

駄菓子菓子(だがしかし)、
ホンの一瞬の出来事だったが、彼女の気持ちが伝わった。

『怖い!!』

その気持ちが伝わった。

もっとも、
出鼻をくじかれちまったとはいえこの俺も、

「フゥ~」

チョッピリ安心したのも・・・

・・・・・・・・・・間違いない。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その2-』

(第三話) 『朝の恋人 -その2-』




「おっ、はようー!! 菊乃ー!! 今日も元気か~い?」

なんて又、
彼女の横顔に、心の中でそう告げる。
いつもの朝のご挨拶。
もちろん菊乃は聞いてない。
声なき声の片道切符。
見ているだけで幸せな。
いつもの朝のセレモニー。

JR山手線外回り、高田馬場を午前8時20分に出る電車。
高田馬場~池袋。
月曜日~金曜日。
4分間の物語。
コイツが俺の日課になった。
全く飽きる事がない。

そんなある日。
いつもの電車に飛び乗った。
今日も彼女は乗っていた。

「やぁ、菊乃。 俺のベイビーはハッピーかい?」

心の中でいつものようにそう告げる。
ところがどっこい、その瞬間。
突然、彼女がコッチを向いた。


(ドキッ!?)


『う!? ヤバ!? め、目が合っちまった!?』

そのまま俺は固まった。
そして彼女は少しだけ。
ほんの少しだけ俺を見て、


(スゥ~)


っと、視線を窓の外。

駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の横顔は間違いなくコッチ向き。
目じゃない目が俺を見る。


(バギューン!!)


瞬間、俺は悟ってた。
確かに確かに悟ってた。
『愛の世界』 に踏み込んじまっていた事を。
『男と女の愛の世界』。
もう後戻りなんか許されない。
そんな事など出来っこない。
『男と女の愛の世界』。
確かに俺は踏み込んだ。

それまでは・・・

窓の外、流れる景色を見ている彼女の横顔を、ただ見ているだけで満足だった。
だーから~、
俺の視線に彼女が気付いた事など無頓着。
考えた事すら一度もない。

でも、現実は・・・

そぅ、現実は・・・

もっとも、その日はそこまでだった。
が、
不安定な気持ちで池袋。
先を急ぐ乗客達に、押されるように降りました。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その1-』

(第三話) 『朝の恋人 -その1-』




以下は、 2007/02/14~2007/02/19 にかけて当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ DEATH ょ~~~ん。

チョッピリ手くわえてっヶど・・・                       

内容よっか、リズムで読んでちょ。






(ガラガラガッシャン!! パ~~~ン!!)


「フゥ~、間に合った~」

JR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車内でのハプニング。

俺、加藤健一 (かとう・けんいち)。
25歳。
一応、しがないサラリーマン。

住まいは、東京は新宿の高田馬場。
会社の所在は池袋。
自宅から会社まで、JR山手線高田馬場駅~目白駅~池袋駅間の約4分を加えて、ドア・トゥー・ドアで30分。
朝は決まってJR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車を使う。

それは二ヶ月前の事だった。
その日はチョッと朝寝坊。
家から電車のドアちゃんまで、走りに走って飛び乗った。
危うくセーフでいつもの電車。
チラッと眺めた腕時計。
8時20分を告げていた。

周りの人に息を掻けないように、

「スゥー、ハー。 スゥー、ハー。 ・・・」

下を向いて深呼吸。

お隣、目白駅に着いた頃には治まった。
降りる客が多いので、そこから先はチョッと空(す)く。
顔を上げたら車内刷り、癖になってるいつものチェック。
あちこち眺め回して目線を下げた。
事件が起きたのはその時だ。


(ドキッ!!)


「オットー!?」

おっでれーた。。。

3m先に素敵な女性が立っている。
窓からジーッと、外を流れる景色を眺めてた。
その横顔が美しい。

『綺麗な女性(ひと)だなぁ』

チョッとため息吐いちゃって、そのまま静かに見とれていると、いつの間にやら池袋。
仕方がないので降りました。

次の日、余裕でいつもの電車。
その日も彼女は乗っていた。
さりげな~く車内を見回しちゃって、誰にも見られてないのを確認し、

『チェック完了!!』

ナンゾとそう思い。
ユックリ見惚(みと)れる事にした。

その次の日も同様で、

その次も又同じ。

 ・・・

そんなある日の事でした。
いつものように彼女に見惚れていると、


(ピッ、コーーーン!!)


閃(ひらめ)いた。

『ナンテ名前かな?』

って。

当然、俺には分からない。
だから、適当なのを付けてみた。
いろんな名前を試してみたが、中々いいのが浮かばない。
なんかないかと考えた。

ケイコ、 ユキエ、 ミキ、 ヒロミ、 ・・・。

『ウ~ム』

結局いいのが浮かばない。
そんなこんなで池袋。
着いちゃったので諦めた。
ドアが閉まったその瞬間、


(ピッ、コーーーン!!)


もう一回、閃いた。

『菊乃 (きくの)!?』

ナゼか分からないが、そう閃いた。
そしてコイツが気に入った。

『そうだ! 菊乃!? うん、菊乃。 コレがいい。 良~し、決めた。 菊乃だ! 菊乃!! ホニャララ・菊乃!!』

その瞬間、

彼女は俺の朝の恋人 『菊乃』 になった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





« 新しい記事へ  | HOME |  古い記事へ »

文字サイズの変更

プロフィール

アリスのニャンコ

Author:アリスのニャンコ
ジョーク大好き お話作んの大好き な!? 銀河系宇宙の外れ、太陽系第三番惑星『地球』 の!? 住人 death 。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

政治 (0)
p.s. I love you (559)
アリスのお家 (111)
ショート・ショート・ショート「セピア色した白い本」 (103)
アリスのニャンコその名は“ポチ” (39)
『 Rick's Cafe Tokio 』 (19)
『奥村玄龍斎ジャー! 文句あるかー!?』 (25)
未分類 (68)
『奥様は魔女っ娘』 (34)
『ミルキー・ウェイ』 (22)
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 (150)
妖女 (378)
君に読む愛の物語 (50)
死人帖 (211)
進撃のポチ Part1 (511)
進撃のポチ Part2 (501)
進撃のポチ Part3 (1044)
進撃のポチ Part4 (47)
たっくん家(ち) Part1 (506)
たっくん家(ち) Part2 (322)
クスッと来たら管理人の勝ち (371)
男と女 (24)
深大寺 少年の事件簿 (85)
タイタン2011 (90)

ほうもんしゃ

えつらんしゃ

現在の閲覧者数:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

designed by たけやん