小説(その他)ランキング
小説(その他)ランキング

これ・↑・ポチってしてね


アリスのお家 アリスのニャンコその名は“ポチ”
fc2ブログ

アリスのお家

創作お話作ってます。。。

アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十八話(最終回)

第三十八話(最終回)




今日はじめて知った、
我輩と美琴の話。

美琴と我輩の間にある溝。
浅くはないかも知れない。
しかし、
埋めなければならないし、埋めるつもりだ、我輩。

時間が。
うん。
時間がきっと解決してくれるだろう。
そう思う。
そう信じよう。

今・・・。

アリスは何の屈託(くったく)もなく眠っている。
スヤスヤと眠っている。
運命の羅針盤は、果たしてこのアリス達親子をどこへ誘うのであろうか。
それは、
誰も知らない。
誰にも分からない。

でも、一つだけ。
そう、一つだけ言える事がある。
我輩の願いだ。
そうだ、我輩の願いだ。

大きな声で、そして何度でも我輩はこう言う。

「運命の女神よ!! アリス達親子に幸いあれ!!」



 ・・・



「おっはよー!! ポチ」

「目ー、覚めたの一緒だねー!!」

「ウリウリウリー。 ウリウリウリー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (う!? そ、その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にオメェーのおでこグリグリすんの止めてくれ!! た、頼む、止めてくれ!!)

「ほれ、ポチー。 高い高い高~い。 高い高い高~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (あ、赤ん坊じゃねぇんだから、その 「高い高い高~い」 つーのも止めてくれ。 俺様の “アソコ” がオメェの目の前なっちまうだろ。 は、恥ずかしいじゃねぇか。 オ、オメェ “処女” じゃねぇな)

こうして、華麗にして優雅な我輩の一日が今日も又、

『開始』

されるのであった。




アリスのニャンコその名は“ポチ” お・す・ま・ひ




長い間ご愛読(?)頂きました。

『アリスのニャンコその名は“ポチ”』

は、

本日を持ちましてめでたく

『終了』

させて頂く




はずでした。




bu~~~t




オレ様山公園のオレ様ベンチの上で寝ていた時、ポチの見た

『不気味なおっさん』

の夢。




a~nd




暖かい家族の団欒(だんらん)。
楽しい家族の会話。
その時の何気ない美琴のこの一言から、




新たな物語が、




始まった。




「ねぇ、お姉ちゃん」

「何?」

「さっきママがね。 『ポチがアタシ達の言葉理解してるんじゃないかって』 言ったんだヶど、そんなバカな事あるはずないょね」

「あるょ」

「え?」

「あれ、美琴知らなかった?」

「・・・」

「ポチ、あたしたちの話み~んな理解してるょ。 ね、ポチ」

うん。

「ほら。 ね。 チャーンと分かってるょ」

「エ、エェー!!」 (パパ、ママ、美琴、一斉に)

「ポ、ポチ。 パパの言う事分かってるのか? ん? ホントに分かってるのか? ん? ホントに分かってるなら 『右手』 上げてみなさい。 右手。 ポチの右手」

え!?

み、右手?
右手っていうのは、えぇーっとアリスがお茶碗持つのが左手でお箸持つのが右手だから。
こっちか?
ん?
こっちだな。
良し。

ホィ。 (ポチ右手を上げる)

「オ、オォー!!」 (パパ、ママ、美琴、一斉に)

「こ、こんな事が」 (パパ)

「こ、こんな事が」 (ママ)

「こ、こんな事が」 (美琴)

「ホ、ホントにあるのか~~~~~!!!!!」 (パパ、ママ、美琴、一斉に)

 ・ 
 ・
 ・

アリスのニャンコその名は“ポチ” Part Ⅱ 『激闘! 大銀河血戦!!』

気が向いたら、そ・の・う・ち、

『公開』

乞う、ご期待。

でも、
気が向いたらの話ね。
うん。

そぅ。

あー、くー、まー、でー、もー、

き・が・む・い・た・ら・そ・の・う・ち



そ、し、て、・・・。


次回より

『 Rick's Cafe Tokio 』

連載

の!?

つ・も・り。。。


スポンサーサイト



アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十七話

第三十七話




「美琴に嫌われっちゃったね、ポチ」

なぁ、アリスぅ。
嘘だょな、さっきの話。
作り話だょな、アリスの。

「あのね、ポチ。 続きがあるんだょ、まだ」

まだ?
続き?

「どうして美琴がポチに辛く当たるか」

どうしてだ?

「美琴がポチに辛く当たる訳、ポチ分かる?」

さぁ、どうしてかなぁ?
分かんねぇぞ、俺様。

「ポチが身構えるからだょ」

へ!?

「美琴が近付くとポチ身構えちゃうんだょ」

そ、そうかぁ?
美琴が近付くと俺様、身構えてるか?
今まで気付かなかったぞ、今まで。
こ、今度注意してみるぜ。

「何でか分かる?」

分かんねぇ。

「分かんないょね、多分」

うん。
分かんねぇ。

「ポチのトラウマだょ」

へ!?

「ポチのトラウマが原因なんだょ」

ト・ラ・ウ・マ・?

「あのねポチ」

何だ?

「ポチは気付いてる?」

何を?

「美琴の左目の目じりの傷」

左目の目じりの傷?
美琴の左目の目じりの傷?

・・・。

あ!?

あれ!?
あれって傷だったのか、皺(しわ)じゃなくって。
傷だったのか、あれ。
皺かと思ってたぞ。

「あの傷ね、どうして付いたと思う」

どうしてかな?
分かんね。
どうしてだ?

「ポチが付けたんだょ」

へ!?

「あの傷、ポチが付けたんだょ」

どうやって?

「引っかいて」

え!?

し、知らなかったぞ、そんな話。
い、いつだ?
いつの話だ?

「ポチが家(うち)来て一ヵ月位してからだったかなぁ。 ポチが美琴引っかいたの」

な、何でだぁ?
何で俺様、美琴引っかいたんだ?
何でだぁ。

美琴に殴られたからかぁ?
美琴に蹴られたからかぁ?
美琴にどつかれたからかぁ?

で、逆襲。

かな?

「子守唄だょ」

へ!?

「子守唄が原因だょ。 ポチ、美琴引っかいたの」

こ、子守唄~?
子守唄が原因って・・・。
どしてだ~?
子守唄なんかで引っかくかぁ、普通。

「美琴、声大きいょね」

大きいなんてもんじゃねぇぜ、美琴の声。
悪魔の雄叫(おたけ)びって言うんだぜ、ああゆうの。

「ポチ、いつも美琴と一緒に寝てたんだょ。 美琴の子守唄聞きながら」

ホ、ホントか?
し、知らなかったぜ、そんな事。

「でも、ポチ中々眠んなかった日があったんだょ、理由分かんないけど興奮してて。 でね、美琴がポチ眠らせようと思って、ポチの耳元でいつもより大きい声で歌っちゃたんだ。 そしたらポチびっくりしっちゃってね、突然だったし、まだ子猫っだたし」

で、美琴引っかいちゃったって訳?

「で、美琴引っかいっちゃたんだょ。 『シャー』 って言って」

で、目じりの傷はその時の傷って訳?

「で、目じりの傷はその時付いたんだょ。 幸い目には爪入んなかったから良かったんだヶどね。 危ないトコだったんだょ」

た、確かに危ねぇな、確かに。

「はじめ三本あったんだょ、引っかき傷」

一本しかねぇじゃねぇか。
一本しか。

「二本は浅かったから、カサブタ取れたら消えたヶど。 一本は深かったから痕残っちゃたんだ」

そ、そうか。
それで美琴のヤツ、俺様怨んで意地悪すんだな。

「パパ凄く怒ってね、ポチ捨てるって言ったんだょ。 大事な娘にそれも顔に傷付けたって。 あんなに怒ったパパ見たの初めて。 スッゴク怖かったんだょ」

ホ、ホントか?
ホ、ホントにあのお茶目というか幼稚なパパさんがか?
ホ、ホントか?

「その時も美琴がポチかばって反対したんだょ、ポチ捨てるの」

へ!?

「『ポチ脅かした私が悪いんだ』 って言って」

そ、それが信じらんねぇの。
そ、れ、が。

「でも、その後だょ」

何が?

「その後なんだょ」

だから、何が?

「美琴、声出なくなったの」

何で?

「声、全然出なくなっちゃたんだょ。 美琴」

だから、何で?

「ポチが身構えるようになっちゃたから、美琴見るたびに」

何でだ? 
何で、そんな事ぐれぇで声出なくなっちゃうんだ?
何でだ?

「ショックで」

え!?

「自分を見るたび身構えるポチ見て、美琴ショックで声出なくなっちゃたんだょ。 その位ポチの事、可愛がってたんだょ」

・・・。

「ポチに引っかかれて顔に傷つけられてもかばう位ポチの事可愛がってたんだょ、美琴、ポチの事。 そのポチがさ。 美琴見るたんびに身構えるようになっちゃったんだょ」

・・・。

「アタシだってポチにそんな事されたら悲しいもん」

しねぇょ、アリスにゃ、そんな事。
ゼッテーしねぇょ。

「きっと、美琴もっと悲しかったんだね、自分を見るたび身構えるポチ見て。 だから美琴・・・」

・・・。

「半年位かなぁ」

何が?

「半年位だったと思うょ」

だから、何が?

「声出るようになったの」

そ、そんなに出なかったのか?
そんなに?

「美琴、ホントに頑張りやさんだから、一所懸命ボイス・トレーニングしたんだょ。 声出るようにって。 学校だってチャンと休まず行ったんだょ、声出なくて大変だったのにね。 先生やお友達に助けられたんだって、美琴そう言ってたょ。 声出るようになってから」

ウ~ム。
美琴らしい。
確かに、美琴は頑張りやだもんな。

「『声出るようになれば前みたいに、ポチに子守唄歌ってあげられる』 って言って、一所懸命ボイス・トレーニングしたんだょ。 美琴」

え!?

・・・。

「でも、ダメだったね」

何が?

「ポチ、身構えちゃうもんね。 美琴見ると今でも」

う、うん。
言われてみれば、身構えてるような気も。
条件反射ってヤツかもな。
条件反射。

アハハハハハ。
アハハハハ、ハァ~。

・・・。

「でも、良い事もあったんだょ」

どんな?

「うん。 良い事の方が、大きいかなぁ」

だから、どんな?

「お陰で美琴。 声楽家の才能目覚めたもんね」

そ、そうかぁ、そういう事になるかぁ。
そういう事に。

「あれってポチのお陰だょね。 ポチ良(い)い事したかもね」

そ、それって、褒めてんのか俺様の事。
ナ、ナンカあんまり嬉しくないぞ、あんまり。
褒められてる気ーしないぞ、褒められてる気ー。

「怪我の功名だね」

うん、確かに怪我の功名だ。
うん、怪我の功名。

ま!?

『結果オーライ』

という事で如何(いかが)でしょうか。
結果オーライという事で。

「美琴がもし、世界的なプリマになっちゃたら凄いょね、ポチ」

うん、スゲーぜ。

「なれると思う?」

ウ~ム。

「アタシはなれると思う」

お、俺様も思う。
ってか、なって欲しい。
色々、経緯(いきさつ)聞いちまったから、なおさらそう思う。

そしてアリスも凄い画家になる・・・・・・・・・・ような気がする。

「やっと眠くなって来たね。 さ、寝よっかポチ」

うん。

「夜トイレ行けるようにドア少し開けとくね。 暑くなるけどクーラー切るからね」

うん。

「じゃ、おやすみ。 ポチ」

あぁ。
おやすみアリス。
良(い)い夢見るんだぜ。

な~んか俺様、眠れそうにねぇな~。
そっかー、そんな事があったんか~。
アリスと美琴と俺様。
ウ~ム。
複雑。
ま、考えてもしょうがねぇか~。

ファ~ァ。

うん、チョッと眠くなって来たぞ。
後は、明日だ明日だ。
考えてもしょうがあんめ~。

さ、寝ょ寝ょ、俺様も寝ょっと。

フ~ム。
スヤスヤ、スヤスヤ、スヤスヤ。




第三十七話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十六話

第三十六話




「ポチ、美琴に懐(なつ)いてたんだょ。 アタシより」

エ、エェー!?

「ポチは覚えてないょね。 アタシがポチ拾って来た日の事」

うん。
覚えてない。

「ポチ、ゴミ捨て場に捨てられてたんだょ」

それはさっきママさんに聞いた。

「学校の帰りに通り掛かったら 『ミャー、ミャー』 って鳴く声が聞こえたんだょ、ゴミ捨て場から。 『何だろう?』 って思って近寄ったら、子猫が一匹箱の中にいたんだょ。 それがポチだょ」

・・・。

「チョッとおっき目の箱だったから、他に何匹かいたかもね。 だとしたらポチの兄弟だね、きっと」

ウ~ム。

俺様の兄弟か~。
そうか~。
今まで考えた事なかったヶど、俺様に兄弟がいても不思議じゃないぞ。
猫は多産系だからな。

「でも、箱の中にはポチ一匹しかいなかったんだ。 みんな逃げっちゃったのかもね」

俺様、見捨ててか?

「箱の中でポチずぶ濡れだったんだょ」

な、何でだ?

「あの日は雨だったから」

そっかぁ。

「で、ね。 ポチがあんまり可哀想なんで見過ごせなかったんだ、アタシ」

で、俺様拾ったって訳か?

「で、ポチ拾って帰って来たんだょ」

アリガトょ、アリス。

「『パパ達きっと反対するだろうなぁ』 って思ったけど」

反対されたか?

「反対されなかったょ。 だってポチ弱ってたから」

そんなに弱ってたのか、俺様?

「きっと、長~い事、雨に打たれてたんだろうね。 ポチ死にそうだったんだょ。 だからだと思うんだパパ達反対しなかったの」

フ~ン。

「美琴だょ」

何が?

「美琴がやったんだょ」

だから、何を?

「ポチの体タオルで拭いて、ズーッとポチ抱いて、ポチの体暖めたの」

え!?

ホ、ホントかー!?
み、美琴がそんな事を!?
ホ、ホントかー!?

「あの時、アタシ風邪ひいてたから。 代わりに美琴がズーッとポチの世話したんだょ。 風邪うつすといけないから」

ウ、ウッソー!?
嘘だろー!?
嘘に決まってるよな、嘘にー!?

「運良く、ポチ拾った次の日から3連休だったんだょ。 ポチついてたね」

ど、どしてだ?

「その間、アタシ熱出して寝てたんだ。 でも、ポチはズーッと美琴のブラウスの中に入ってたんだょ。 そうやって美琴、ポチの体冷やさないようにしてたんだょ」

っつー事は・・・。
俺様、美琴のボインボインに挟まれてたって訳?
チョ、チョッと嬉しいような。

「ポチったら、美琴のブラウスの中でウンチやオシッコしたんだょ」

え!?

う、嘘だろー?
ホ、ホントかょ。
し、信じらんねぇぞ、そんな事。
で、
どしたんだ?
その後、美琴どしたんだ?

「そのたんびに美琴、シャワー浴びたんだょ。 1日に何回も」

ホ、ホントか?

「寝る時はもっと大変だったんだょ。 美琴、居間の床の上に寝たんだょポチと一緒に。 布団にウンチされたら拙(まず)いから。 床に座布団引いてね、美琴その上で寝たんだょ。 ポチはその横で、たっくさん敷いた新聞新の上にバスタオルで包んで、その上から美琴と一緒に毛布と掛け布団掛けて。 そうやって寝たんだょ。 アタシ代わって上げたかったヶど、熱出してダウンしてたから」

ホ、ホント・・・。

「でもね。 美琴、一言も文句言わなかったんだょ。 ホントにポチが可愛かったんだね。 塾だって休んだんだょ」

ホ、ホン・・・。

「パパもママもホントは、もし、ポチが元気になれたら捨てるつもりっだたらしいょ。 でも、美琴見てたら出来なくなっちゃたんだって、後でそう言ってたょ」

ホ、ホ・・・。

「もっとも、アタシもパパもママもポチはもうダメだろうって思ってたんだヶどね、ホントはね。 その位ポチ弱ってたから」

ホ、・・・。

「でも、美琴。 『絶対このコ、死なせない』 って頑張ったんだょ。 獣医さんトコ入院させれば良かったんだヶど、たまたま連休で近くの獣医さんも休んでたから」

・・・。

「3日目位だったかなぁ、ポチが自力でミルク飲みだしたの。 それまではガーゼにミルクしみ込ませて、それ吸わせてたんだヶど。 3日目位だったかなぁ」

・・・。

「それから、どんどん元気になってね。 1週間位したら飛び回ってたょ」

・・・。

「でね、看病してる間にいつの間にか美琴が、ポチポチって言うようになってね。 それで、ポチの名前 『ポチ』 になっちゃったんだ」

・・・。

「初めてポチ、お風呂入れたのも美琴だょ。 ポチ、毎日(まいんち)美琴と一緒にお風呂入ってたんだょ」

・・・。

「それとね、これは一番大事なことなんだけどさ。 ポチ雄猫だょね」

・・・。

「飼い猫の雄って、普通、去勢されるょね」

・・・。

「でも、ポチ去勢されてないょね。 何でか分かる」

・・・。

「美琴だょ」

・・・。

「美琴が反対したからだょ」

・・・。

「アタシとパパとママが 『去勢しよう』 って言った時。 美琴が猛反対したんだょ。 『人間の都合で去勢するのは可哀想だょ。 そんな事したらポチがポチじゃなくなるょ』 って猛反対したんだょ美琴。 泣きながら」

・・・。

・・・!?

「ニャ、ニャー」 (ウッ、ウァ~~~)

(ガリガリガリガリガリ・・・) (ドアを引っかく音)

「ニャー」 (ウァ~~~)

(ガリガリガリガリガリ・・・)

「ニャー」 (ウァ~~~)

(ガリガリガリガリガリ・・・)

「どしたのポチ。 トイレ? チョッと待っててね。 今ドア開けるから」

(カチャ、キィ~~~)

ダァー!!

(ガリガリガリガリガリ・・・) (美琴の部屋の戸を引っかく音)

「ニャーニャーニャー」 (美琴ー美琴ー美琴ー!!)

(ガリガリガリガリガリ・・・)

「ニャーニャーニャー」 (美琴ー美琴ー美琴ー!!)

(ガリガリガリガリガリ・・・)

「ニャーニャーニャー」 (美琴ー美琴ー美琴ー!!)

(カタン、ツゥ~~~) (美琴の部屋の戸があく音)

「何だ、うるせぇなー。 『ニャーニャー。 ニャーニャー』。 うるせんだよ!! バカ猫!! 失せろ!!」

(バッ、ターン!!)

へ!?

み、こ、と、・・・。

・・・!?

ホ、ホントかー!?
さ、さっきの話ー!?
ホ、ホントかー!?

う、嘘だー!!
ぜってぇー、嘘だー!!
嘘だと言ってくれー!!

嘘だと~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!




第三十六話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十五話

第三十五話




「美琴だょ。 ポチに 『ポチ』 って名前付けたの」

な、何でー!?
何で美琴が~!?
パパさんじゃなかったのかー、パパさんじゃぁ?

「ほら、ポチって鼻の左っ側(かわ)の白いトコに黒い毛が丸く生えてるよね。 直径1.5cm位で」

あぁ、生えてるぜ。
それがどした。

オットー!?

そう言ゃ、諸君にはまだ我輩の人相。
もとい猫相を教えてなかったな。

教えてやろう。

我輩は、実に綺麗なツートンカラーの猫様である。
白と黒だ。
上半分が黒、下半分が白だ。
と言っても、
正確に二分割されている訳ではない。
斜めに二分割されたような感じになっている。

顔の部分は、真っ黒な顔に真っ白い大きなマスクをしたような感じだ。
それが腹部から下半身にかけて段々黒が勝って行き、足先がチョッと白、尻尾は全部黒でスーッと長くて美しい。

眼は知性に溢れ、
顔は知的で実に凛々しい。

しか~~~し、

ピンクで美しい・・・はず

の!?

鼻の左っ側(かわ)が黒い色素で覆われている。
つまり、
鼻の右側は綺麗なピンクで、左側は黒い。
そしてその鼻の黒い部分が、さっき言った直径1.5cm位の丸く生えた黒い毛と繋がっていて、チョッと離れたトコから見ると口が曲がっているように見える。
そして残念ながら、それが実にバカっぽく、かつ、これは認めたくないのだが、

『ヒョットコ』

みたいに見える。

凛として知的な我輩のこの顔が 『ヒョットコ・フェイス』 だ。
鏡を見る度にがっかりする。

『ヒョットコ・フェイス』
『ヒョットコ・フェイス』
『ヒョットコ・フェイス』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

「この鼻の黒いトコと丸く生えた黒い毛見て、ポチって名前付けたんだょ、美琴。 でも確かに 『ポチッ』 ていう感じするょね、ポチのここんトコ」

そ、そっかー。
そういう理由だったんかぁ、そういう。
妙に納得しちまう理由だ。
うん、そうだ。
妙に納得しちまったぞ。

でも、何で美琴なんだ?
アリスでもなくパパさんでもなくママさんでもなく、何で美琴なんだ?
ん?
何でだ?

「アタシは違う名前にしたかったんだょ、ホントは」

な、なんて名前にしたかったんだ。
なんて名前に。

ハンフリー君か?
ん?
ハンフリー君。
ハンフリー・ボガードみたいだぞ。
こないだ見た 『カサブランカ』 のビデオ。
いかしてたぞ。

『 Here's looking at you, kid. (君の瞳に乾杯)』

って、セリフが決まってたぞ。
で、
ハンフリー君。

ジェイムズ君なんてどうだ。
ジェイムズ・ボンドみたいだぞ。
『007』 みたいだ。
ショーン・コネコネみたいだ。
で、
ジェイムズ君。

でも、ワトソン君はダメだぞ。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だぞ。 ワトソン君は。

『謎は解けたよ、ワトソン君』

なんて言われたら、思わず、

『ホィ』

な~んて返事しちまいそうだからな。

『ホィ』

な~んて。

で!?

アリスは?
アリスはなんて名前にしたかったんだ?
ん!?
なんて名前に?

「ウータン」

ブッ!!

ウ、ウータン!?

 ・
 ・
 ・

ウータン、って!?

おいおい、アリスぅ。
オメェら一体どういうネーミングのセンスしてんだ、どういう。
思わず吹いちまっただろ、思わず。

『ポチ』

『ウータン』

た、頼むぜアリスぅ。
た、頼むぜ。

ここで読者のミンナに問題だ。

問題 我輩に一番相応しいと思われる名前を次の①~③の中から一つ選べ

 ① ポチ

 ② ウータン

 ③ ハンフリー君


チッ、チッ、チッ、チーン

正解は?

 ・
 ・
 ・

やっぱ 『ポチ』 か?
やっぱ?
やっぱそうなるか?
やっぱ?

でも、何で美琴なんだ?
俺様の名付け親。
アリスでもなくパパさんでもなくママさんでもなく、何で美琴なんだ?
何でだ?

『次回、いよいよ明らかになる衝撃の真実。 乞う、ご期待』

ナンチャッテ。。。




第三十五話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十四話

第三十四話




(カチャ、キ~~~) (ドアの開く音)

「おいでー、ポチ~。 もうお仕事済んだから来ても良いょ。 おいでー、ポチ~」

ハッ!?

アリスだ!?
アリスが呼んでる!?
アリスが俺様、呼んでる!?

ダァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

「ニャーニャーニャーニャーニャー」 (ア、アリスーアリスーアリスー。 お、俺様、寂しかったょー。 アリスー)

「うゎー、凄い勢い!? どしたの、ポチ。 ダッシュで来たね」

「ニャーニャーニャーニャーニャー」 (アリスーアリスーアリスー。 寂しかったよー。 アリスー)

「パパ達、どしたのかな」

「ニャーニャーニャー」 (うん。 パパさん、風呂から出たら 『疲れてるから』 って、直ぐ寝ちゃったし。 ママさん、洗い物済んだら今度はパソで株やってるし。 美琴は、美琴で勉強中だし。 俺様ずーっと独りポッチだったんだぜ、ずーっと)

「ヨッコラショっと。 あれ、ポチ重くなったね」

「ニャーニャーニャー」 (うん。 この頃食い過ぎでチョッと太ったかもな)

(トン、トン、トン、トン、トン、・・・) (階段下りる音)

「あら、アリス。 どうしたのポチ抱いて、仕事は?」

「うん、一区切り着いたから。 もぅ、今日はお仕舞い。 ママは?」

「ママはまだまだこれからょ」

「株?」

「そ。 明日の朝一の取引に備えて研究中。 儲けなくっちゃね」

「大変だね、ママも。 もぅ11時だょ」

「11時? 何の何の、まだまだこれからょ。 これからが勝負ょ」

「頑張って儲けてね」

「えぇ。 ・・・。 あ。 そぅそぅ、アリス。 冷蔵庫にジュース買ってあるから、良かったら飲みなさい」

「うん、ママ。 ドッコイショっと。 あ~、重かった。 ホ~ント重くなっちゃって。 ポチ、もっこもこだね」

お!?

アリスのヤツ冷蔵庫からジュースを出してグラスに注いでんぞ。
普段ならここでミルクのおねだりすっトコなんだヶどな。
今日は勘弁してやらぁ、今、腹一杯だから。

「ママー、パパは?」

「もぅ寝た」

「美琴は?」

「さぁ、部屋じゃない。 勉強してるんじゃないかしら。 それよりアリス。 ママ、今、大事なトコだからあんまり話し掛けないでね」

「御免なさい。 (ゴクゴクゴク) フゥー、美味しかった。 さ、ポチ、お部屋行くょ。 おいで」

「ニャー」 (うん)

(トン、トン、トン、トン、トン、・・・。 カチャ、キ~~~、パタン!!)

「今夜も熱帯夜になりそうだからクーラー弱にして寝ようね、ポチ」

「ニャー」 (あぁ。 この頃、毎日熱帯夜だな。 いくら夏とはいえ、異常気象だな。 何かやな事起きなきゃ良(い)いヶどな。 な、アリス)

「何か、頭冴えて直ぐ眠れそうにないなぁ」

絵の描き過ぎなんじゃねぇのか、アリス?
それとも目の使い過ぎか。

「眠くなる迄、ポチ。 少しお話しよっか。 うん、そうだね。 ね、ポチ。 お話して上げるね」

何の話するんだ?
ん?
何の話だ?
『昔々、ある所に・・・』
なんてヤツか?

「あのね、ポチ。 ポチは何で自分がポチって呼ばれてるか知ってる?」

知らねぇょ。
でも、大体察しは着いてるぜ。
パパさんだろ、パパさん。

『この猫の名前は、猫だから、猫っぽく、 “ポチ”。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ。 良し。 ポチにケテ~ィ。 ポチで決ま~り。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ』

ナンチャッテ、決まったんだろ。
で、なきゃぁ。
俺様の名前 『ポチ』 なんてなるわきゃねぇょな。
『ポチ』 なんて名前にょ。

「美琴だょ」

え!?

「ポチに 『ポチ』 って名前付けたの、美琴だょ」

エ、エェー!?

み、美琴が~~~!?




第三十四話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十三話

第三十三話




「うゎ~!? 綺麗に食べたねぇ、ポチ~!? 『ポチ皿』 真っ白」

だ~からー、アリスぅ。
ポチ皿じゃねーだろ、ポチ皿じゃぁ。
オレ様茶碗、だろ。
“オ・レ・さ・ま・じ・ゃ・わ・ん”
ったく。
な~にが 『ポチ皿』 だー。

「こっちのミルクのポチ皿もキレーに舐めちゃったね」

だ~からー、アリスぅ。
こっちのミルクのポチ皿じゃねーんだょ。
こっちのミルクのポチ皿じゃぁ。
『オレ様茶碗ミルク・バージョン』
分かった?
『オレ様茶碗ミルク・バージョン』
だっつーの。

言い忘れていたが、オレ様茶碗は2種類ある。
一つは、ミルク・バージョン。
一つは、猫マンマ・バージョン。
だ。
どっちもドンブリ見たいに大きい茶碗だ。
ミルク・バージョンは文句なく大きい茶碗だ。
だが、猫マンマ・バージョンの方は形はまん丸だが多少平べったい、だから皿と言えなくもない。
チョッと微妙だ。
でも、両方とも底は深くなっている。
我輩が、ピチャピチャ食べても 『外に飛び出さないように』 との配慮があるらしい。
だからやっぱり、
『オレ様茶碗』 だ。
いゃ、
『オレ様茶碗』

の!?

はずだ。

しか~~~し、

アリス達は、
『オレ様茶碗』
とは言わない。
前にも言ったように、こう言う。
『ポチ皿』
と。

『ポチ皿』
『ポチ皿』
『ポチ皿』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

「洗わなくてもいい位綺麗に舐めちゃったね。ポチ」

あぁ、アリス。
今日の晩飯は格別だったぞ。
ママさん 『サンクス』。
又頼むぜ、今日みたいなヤツ。

「さ、食器洗ってから、お仕事しよっと」

え!?

もう9時だぞ、アリス。
これから仕事って。

「いいわょアリス。 浸(つ)けとくだヶで、後でママが洗っとくから」

「いいの?」

「いいわょ、浸けとくだヶで。 どの道、パパと美琴の分も洗わなくちゃならないし。 でも、仕事って?」

「うん。 ほら、アタシ会社入ってまだ半年でしょ。 だから辞めるに当たって引継ぎする事たいしてないの。 だからもうイラスト描き始める事になったんだょ」

「え!? じゃぁ、お姉ちゃんいつまで会社行くの?」

「うん、一応今月いっぱい。 でも、うちの会社25日締めだから、8月25日まで。 でも、これから描くイラスト、今の会社の出版物だから全く問題ないんだょ。 今から描いても。 社員として描くから」

「へ~。 凄いなアリス。 やっぱホントに独立するんだ。 うん。 なんかパパまだ実感湧かないなぁ。 まぁ、なんにしても、良かった良かった」

「じゃ、そのイラストが独立後の初仕事になる訳ね」

「うぅん、違うよママ。 これはね、社員としての最後のお仕事。 普通、会社辞めんのって1、2ヶ月必要でしょ。 でも、アタシの場合社長の好意で2週間で辞められるのね。 だからアタシから 『社員としてやらせて下さい』 って、お願いしたの。 『ホントに欲のない子だね』 って、社長達に言われっちゃたヶど。 そのほうがね、後でスッキリするもんね。 『立つ鳥跡を濁さず』 かな」

「そぅ。 じゃ、食べた食器は台所のボールの中に浸けといて頂戴。 後でママが洗っとくから」

「はーい、ママ。 さ、お口シャキシャキしてからお仕事しよっと」

「ニャー」 (なら、俺様も付き合うぜ、アリス)

「ポチは来ちゃダメ!!」

ガーン!!

な、何でだょ、アリス!?
な、何で俺様、行っちゃダメなんだょ!?
な、何でだょ!?

「近くに誰かいると、気が散って集中出来ないから来ちゃダメだょ。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だょ。 ポチ」

そ、そうか。
芸術家って微妙なんだな。
アリス、芸術家だもんな。

『アリスって微妙ね』 ってか?

チッ。

じゃ、しゃーない。
パパさん、たまには俺様と遊ぼうぜ。
たまにはょー。

「さ、風呂入るとするか。 ママ、着替え。 着替えどこにある?」

「後で脱衣籠に出しとくゎ。 (ウフッ) 昼間チャ~ンと洗った純白の下着をね。 良~く洗ったヤツ。 しみ一つなく良~く洗ったヤツ」

「え!? それって、朝の・・・。 あ、あの。 あの下着かな~~~? あ、あの洗濯機ん中入れといたヤツかな~~~?」

「そうょ」

「そ、そうか。 うん。 しみ一つないヤツかな~~~?」

うん。 
そんだぜ、パパさん。
ウンチのしみのないヤツだ。
昼間、ママさん綺麗に洗ってたぜ、パパさん。
パパさんの 『あの』 ウンチのしるし。

「じゃぁ、ママ。 風呂入るから、頼んだょ」

「えぇ、後片付け済んだらね」

あ~ぁ、パパさん風呂入っちゃった。

じゃ、しゃーない。
ママさ~ん。
俺様と、俺様と・あ・そ・ぼ。

「チョッとポチ、邪魔ょ。 ママこれから忙しいんだから、後片付けして、パパの下着出して、食器洗って、それからデイ・トレーディング。 又儲けなくっちゃねー。 今日みたいに。 さ。 後片付け後片付け、っと」

マ、ママさ~ん。

チッ。

ママさんまで。

じゃ、しゃーない。
残るは美琴だけか。
ま、やなヤツだがたまには遊ぶのも良(い)っか、たまにはな。

おぅおぅ、美琴。
お、俺様、オメェと遊んでやっても良(い)いんだぜ。
オメェと遊んでやってもょ。
幸い、俺様、今暇だし。
ま、オメェが遊んでくれってんなら、考えてやんねぇでもねぇんだがな。
考えてやんねぇでもょ。
ま、オメェがどうしってもって言うんならな。
遊んでやっても良いんだぜ、美琴。
遊んでやっても。

「さ、アタシも勉強しなくっちゃ。 オラオラ、ポチ。 邪魔だ邪魔だ」

こ、このアマー!!

い、今。
俺様、足で払ったなー!!
足でー!!

チッキショー!!

く、悔しいぞ。
美琴にまで相手にされなかったぞ。
く、悔しいぞ。
お、俺様、不良になりそうだぞ、不良に。
く、悔しいぞ。

・・・。

フンフンフン、いいんだいいんだいいんだ。
ど~せ俺様の事なんて。
ど~せ。

・・・。

チッキショー!!
大っ嫌いだー! 真っ赤な太陽なんて~~~!!
夕日のバカヤロ~~~!!

グスン。




第三十三話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十二話

第三十二話




「ごっ馳走様ー!! あ~、美味しかったぁ。 ママのカレー最高!! 特に今日のは。 アタシお代わりっちゃた」

「良く食べたねー、アリス」

「うん、ママ。 ホ~ント美味しかったょ」

「ご馳走様。 アタシも2杯食べっちゃった、お姉ちゃんと一緒。 あんまり美味しいんで」

「美琴も、良く食べたねー」

「パパだって食べたぞ。 3杯も。 ママ、ご馳走様」

「お粗末さま」

「ねぇ、見て見て、みんな見て。 ポチまだ食べてるー。 よっぽど美味しいんだね。 ・・・。 ポチ、美味しい?」

う、うっせーなアリス。
食って時に話し掛けんじゃねぇょ、気が散るじゃねぇか。

「お!? ポチのヤツ、お姉ちゃん無視しやがった。 生意気な猫だ。 おぅおぅ、ポチ。 返事ぐらいしたらどうだ、返事ぐらい」

う、うっせーな美琴。
だから~。
食って時に話し掛けんじゃねぇょ、食って時に。
気が散るつってんだろぅ、気が散るって。
ったくょー。

「良(い)いょ良いょ、美琴。 ポチ美味しいんだょ、きっと。 ほら、あんなにガツガツ食べてるょ。 美味しいんだょ、きっと」

う、うめー!! (((^-^)))
うめーよー!!

そ、そうなんだょアリス。
ホ、ホントにうめぇんだょ、今日の晩飯。
最近、 『猫マンマ』 ばっかだったろ、だから。
ホ、ホントにうめぇんだょ、今日の晩飯。

ママさん、サンキュー。
約束通りだったな。
ミルクとカルカン。

「ミルクとカルカン。 ポチにもおすそ分け、って訳。 ミルクは 『特濃』、カルカンは最上級。 もっとも二つともバーゲンで安かったんだヶどね。 でも良かったゎ、丁度アリスの独立祝いになって。 幸先良(い)いゎね、アリス。 ね、パパ」

「あぁ、アリスの船出は絶好調。 これも、日頃のアリスの行いか? いゃ、きっと、天のお導きに相違ない。 うん。 そうだ、天のお導きだ。 神様のお陰だ。 仏様のお恵みだ。 アーメン。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ」

「アハハハハハ。 またまた、パパは大袈裟なんだから。 アリスの日頃の行いょ。 アリスの行いが良かったのょ」

「うん。 そうだそうだ。 パパもそう思う」

「アタシも」

「ワハハハハハ」

「アハハハハハ」

「アハハハハハ」

「パパ、ママ、美琴。 有難う」

「頑張るんだぞ、アリス」

「しっかりね。 ママ、応援してるからね」

「お姉ちゃん。 これで絵本作家になる、お姉ちゃんの夢に一歩近付いたね」

「アリガト、美琴。 でも、まだまだこれからなんだ」

「ダイジョブだょ、お姉ちゃん。 お姉ちゃんなら絶対上手く行くょ」

「だと良(い)んだヶどね」

「ダイジョブだょ、お姉ちゃん。 アタシ絵は得意じゃないから良く分かんないヶど、お姉ちゃんの絵、素人のアタシが見ても 『凄い』 って思うもん。 だから絶対ダイジョブだょ」

「なんてったって、アリスは俺の子だからな。 チャ~ンとパパの血引いてるからな」

「あら!? だったら美琴は、美琴は誰の血引いてるのかしら? (クスッ)」

「美琴? もちろん俺の血・・・。 って、今のママのその笑い。 な、なんかあるな。 な、なんか隠してるな、ママ。 ・・・。 ひょっ、ひょっとして・・・。 み、美琴の父親は他に。 ・・・。 み、美琴ー!! け、血液検査! 血液検査だー!! 病院だー!! 病院行くぞ! 病い~~~ん!!」

「アハハハハハ。 冗談ょ、パパ。 冗談。 パパったらすぐ向きになるんだから。 大丈夫ょ。 ダイジョーブ。 美琴はパパの子ょ、パー、パー、のー、子。 (クスッ) ほら、目と口元なんかパパそっくりじゃない。 それに顔の輪郭も」

「そ、そうか。 だったら良(い)いんだがな、だったらな。 もぅ、ママったら脅かさないでくれょ」

「パパが早とちりなだけょ」

「そ、そうか。 早とちりなだけか、早とちりな、な」

「うん。 そ~だょ、パパ。 パパの早とちりだょ。 だって、美琴、パパにそっくりだもん」

「そ、そうか。 アリス。 そう思うか」

「うん」

「似てないょー、パパなんかに。 アタシはママ似。 ママに似てんの」

「パ、パパなんかに!? こ、こら美琴。 パパなんかにとは何だ、パパなんかにとは」

「良(い)いじゃないの、パパ。 パパはすぐ向きになるんだから。 (ウフッ) ヵ~ヮィ」

プッ、ハァー!!
うめぇー!!
美味かったー!!
ママさん、ご馳走様ー!!

お!?

何だ、4人とも!?
なんか凄~く楽しそうじゃねぇか。
なんか凄~く。
ん?
家族の団欒(だんらん)ってヤツか。
アットホームってヤツか。
なんか凄~く良(い)い雰囲気だぞ。
お陰で今夜はグッスリ眠れそうだぞ。

美味いもん食っちゃたし、アリスは良(い)い感じになって来たし、田原家は雰囲気良いし。

今夜はグッスリ眠れそうだぞ、オ・レ・さ・ま。。。




第三十二話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十一話

第三十一話




「クンクンクン・・・」

お!?

カレーの臭いがつおくて気付かなっかったけど、パパさんチョッと汗臭いぞ。
きっとママさんに何か言われるぞ。
シャワーした方が良(い)いんじゃねぇか。

あ!?

でも今、美琴が入ってるか。
んじゃ、しゃーないな。
後だな後。
美琴の後。

お!?

アリスだ。
アリスが来たぞ。
ちゃんと服着てるぞ。

「あ~、お風呂入ってスッキリしたー。 ママ、ご飯。 早くカレー食べた~い。 あ!? お帰りなさい、パパ」

「はい。 ただいま」

お!?

パパさん、さっきと態度全然違うぞ。
親父みたいだ。
お父さんみたいだ。

「アリス、テーブルの反対側。 ママの前に座りなさい」

「はい」

お!?

ママさん急に顔つき変わったぞ。
チョッと怖いぞ。

「さっきの話だヶど。 会社辞めるってどういう事。 チャンと話してくれるわね。 カレーはその後。 い~ぃ?」

「うん」

そっかー。
ママさんそれが原因だったんだ、さっき機嫌悪く見えたの。
アリスの仕事の事、気にしてたんだ。
そっかー。
うんうんうん。

「え!? 何だアリス、会社辞めるのか? どう言う事だ。 ん? 結婚か? 結婚するのか? ま、まさか 『出来ちゃった結婚』 じゃないだろなー!? 『出来ちゃった結婚』 じゃ~!?」

おいおい、パパさん、何言い出すんだ!?
いきなり飛躍すんじゃねぇょ。
いきなり飛躍。

「またまた、パパは直ぐ飛躍するんだから・・・。 それに私の隣に来ないで。 端っこに座って」

「え!? 何で? ママの隣じゃダメなのか」

「ダメょ」

「何でだ」

「臭いから」

「え!?」

「汗臭いから」

「 (ガーン!!) そ、そんなに臭うか」

「えぇ、とっても」

「うん、臭うょ。 パパ」

すっげー臭うぜ、パパさん。
『オヤジのかほり』 だ。
『加齢臭』 だ。

↑これ、分かってくれたか。 『カレイしゅう』 って読むんだぜ。
『カレー』 に掛けてみたんだが、分かってくれたか?
ん?
分かってくれたか?

「じゃ、一っ風呂浴びて来る」

「ダメょ」

「何でだ?」

「今、美琴が入ってるから」

「そ、そうか。 なら、仕方ない。 端っこにな、端っこに。 ここなら良(い)いか。 ん? ここなら。 どうだママ、アリス。 どうだここなら」

「うん、大丈夫だよ、パパ。 そこなら。 ね、ママ」

「えぇ、そこならね」

カレーが臭うから丈夫だぜ、パパさん。
そこなら。

「そ、そうか。 ここならな、ここなら。 うん。 ここならな。 ウウウウウ・・・」

あ~ぁ。
哀れパパさん! ゲンバレ!!

「ところで!?」

お!?
パパさん素早い。
素早い変わり身。

「さっきの話だがどういう事だアリス。 ん? どういう事だ」

「うん。 あのね、パパ。 こないだ話したでしょ。 牛肉くれた先生の事」

「あぁ、あのすき焼きのか?」

「そ」

「あの先生がどうしたんだ? ん? 口説かれたのか? エ、エッチな関係になったのか? そ、そんでもって子供が出来て、『出来ちゃった結婚』 か? ダ、ダメだ、ゼターィ、ダメだ!! パ、パパ許さんぞそんな事!! ア、アリスー!! オ、オマイという子はいつからそんなふしだらな子に!! パ、パパ、オ、オマイをそんな子に育てた覚えは・・・」

「チョッと、チョッと待ってょパパ。 いきなり興奮して。 アリスはそんな事何も言ってないでしょ」

「お!? おぉ。 そ、そうだったな。 いゃ、その何だ。 つまりその・・・。 つい、な、つい」

「アリスどういう事かチャンと話して頂戴」

「うん。 あのね。 あの先生の書いたアタシが担当した本なんだヶど。 ホントは違う人が挿絵とイラスト描く事に決まってたの。 チャンとしたプロのイラストレーターが」

「え!? そうだったの?」

「うん。 ママ」

「でも、あれ、アンタが描いてたじゃない」

「うん。 そうなんだヶどね、ママ。 話すと長くなっちゃうんだ」

「長くなっても良いからチャンと話しなさい。 パパにも分かるように」

「はい、パパ。 ・・・。 あのね、あの本なんだヶど。 一応アタシが編集担当だったから、先生と打ち合わせがあって。 でね、何回か打ち合わせしてた時、たまたまアタシが絵が好きだっていう話になっちゃって。 でね、先生がアタシの絵見てみたいって言ってくれたの。 たぶん冗談で。 でも、アタシ本気にしっちゃって、描いた絵先生に見せたんだ、次の打ち合わせの時に。 そしたら先生私の絵見て固まっちゃったの、喫茶店で。 見せたの全部で3枚なんだヶど。 そしたら先生が他にもあるかって聞くから、ありますって言ったら。 全部見せろって言うの。 でも、全部はムリだから、ほらアタシ子供の頃から描いてるでしょ、だからムリだって言ったら。

つー、まー、りー、・・・

『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だって言ったら。 じゃぁ、いくつか選んで見せてくれって言うから10枚選んで持ってったの。 そしたらそれ見て先生、又固まっちゃたんだ。 でね、 『こぅ、こぅ、こういう感じの絵を描いてみてくれ』 って言うから。 先生の見てる前で鉛筆で描いたのね、10分位で。 そしたら先生、 『う~ん』 って唸って又固まっちゃて。 『なら、今度は、こぅ、こぅ、こういう感じの絵を描いてみてくれ』 って言う訳。 で、又10分位で描き上げたの、鉛筆で。 そしたら先生又固まっちゃて、 『なら、今度は、こぅ、こぅ、こういう感じの絵を描いてみてくれ』 って、又言うからさ、又10分位で描いたら。 先生今度は固まらずに 『うん、うん』 頷くだけだったの。 で、その日はそれで終わったのね」

「で、どしたの」

「うん、ママ。 次の日アタシが会社に行ったら。 社長に呼び出されたの。 突然なんでビックリしっちゃた」

「で、どしたんだ」

「うん、パパ。 社長に直(じか)に会うの初めてだったから、もう怖くて怖くてドキドキだったんだ。 何で呼び出されたか分かんないし」

「で、どしたの」

「うん、でね。 恐る恐る社長室ノックして入ったら。 社長とあの先生がいたの」

「で、どしたんだ」

「うん、でね。 中に入ってドア閉めたら直ぐに社長がね。 先生と社長、仲が良(い)いって話し始めたの」

「で、どしたの」

「うん、でね。 何の事か良く分かんなかったから。 ただ聞いてるだヶだったの」

「で、どしたんだ」

「うん、でね。 話し終わったら社長がね、 『今作ってる先生の本の挿絵とイラスト。 キミが描きなさい』 って言うの。 ビックリしっちゃた」

「で、どしたの」

「うん、でね。 出来ませんって言ったの。 だって、その本の挿絵とイラスト描く事になってた人とも何度も打ち合わせして顔見知りになってたし、良い人だったし。 だからその人に悪くって」

「で、どしたんだ」

「うん、でもね。 社長にね。 これは先生のたっての頼みだし社長命令だって言われたの」

「で、どしたの」

「うん、でね。 挿絵とイラスト描く事になってた人には別の人が断りいれるから、キミが描きなさいって社長に言われたの」

「で、どしたんだ」

「うん、でもね。 やっぱり挿絵とイラスト描く事になってた人に悪いからって一所懸命断ったの」

「で、どしたの」

「うん。 そしたら先生益々わたしの事気に入っちゃったみたいで、どうしてもキミに描いて欲しいって言って、聞かないの」

「で、どしたんだ」

「うん、でね。 とうとう断り切れなくなっちゃて結局アタシが描く事になっちゃったの・・・。 後はパパも知ってるょね」

「あぁ」

「でね、先生がね 『キミにお礼がしたい』 って言ってね。 お友達の作家の先生たっくさん紹介してくれたの」

「で、どしたの」

「うん、でね。 あの本見て 『今度出す本のイラスト是非キミに描いて欲しい』 って言ってくれる作家の先生が出て来たの。 それも何人も」

「で、どしたんだ」

「うん、でね。 大体は表紙のイラストだけなんだヶど。 本によってはたっくさん 『挿絵』 のある本もあるの」

「で、どしたの」

「うん、それでね。 会社の人達も 『やってみたら』 って言ってくれるし、社長もね。  『キミの才能を今の編集の仕事で埋もれさせるのはもったいない。 是非やってみなさい』 って言ってくれてね。 アタシもやって見ようかなっていう気になったの」

「・・・」

「・・・」

「そうかぁ。 『えぇ話』 やないけー。 それに社長も中々立派だ。 うん。 パパそう思うぞ」

「ホントホント? パパそう思ってくれる?」

「あぁ」

「有難う、パパ。 ・・・。 でね、ママ」

「何?」

「これ引き受けちゃうとね。 今の仕事続けらんなくなちゃうんだ、時間なくって。 だから思い切って会社辞めて独立しようかなって」

「そぅ~。 そういう事だったの。 ・・・。 良(い)い話かもね、アリス。 ね、パパ。 アリスの才能認められて」

「ウ~ム。 『アリスの才能』 かぁ。 ウ~ム」

「まだあるんだょ」

「何にがだ、アリス? まだ何かあるのか?」

「うん、パパ。 社長がね」

「社長が何だ?」

「うん。 社長がね。 もし、アタシが独立したら全面的にバックアップしてくれるって」

「バックアップって?」

「うん、ママ。 アタシを一人の立派な挿絵画家としてお仕事回してくれるんだって。 これ、リストラじゃないんだょ」

「分かってるわょ、それ位」

「でも、才能の世界だから大変だぞ、覚悟は出来てるのか?」

「はい、パパ」

「ウ~ム。 そうか~。 そういう事なら良(い)いんじゃないか。 なぁ、ママ」

「えぇ、そうねぇ。 でも、仕事場は? 仕事はどこでするの」

「お家。 お家だよ、ママ。 お家で仕事出来るんだょ」

「家でか。 ウ~ム」

「パパ、ママ。 お家で、お家で仕事させて下さい。 お願いします」

「・・・」

「・・・」

「良し、アリス!! パパは賛成だ。 ママが良いと言ったらやってみなさい」

お!?

パパさんカッコいぞ。
さっきとは別人だ。

「そういう事ならママも賛成ょ。 やってみなさい、アリス」

ヨッシャー、アリスー!!

いかったなー。
俺様、大賛成だぜ。
スッゲー嬉しいぜ。

「賛成ー!! アタシも大賛成だょ、おねーちゃん!! 頑張ってね!!」

「お!? なんだ美琴、聞いてたのか。 って、そのカッコ・・・」

お!?

美琴だ。
裸だぞ。
バスタオル体に巻いてるだヶだ。
早く服着たほうが良(い)いじゃねぇか、美琴。
パパさん変な目で見てるぞ。

「パパが変な目で見てるわょ美琴、そんな格好で。 早く服着てらっしゃい」

「は~い」

「マ、ママ。 変な目ってなんだ、変な目って」

「アハハハハ。 冗談ょ、パパ。 冗談」

「そ、そっかぁ。 な、なら、いんだが。 なら」

のどかな田原家の
『ほ・の・ぼ・の』
とした会話であった。

いかったなー、アリス。
み~んな賛成で。

も・ち・ろ・ん。

オ・レ・さ・ま・も。。。




第三十一話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三十話

第三十話




「ポチ、まだ出ちゃダメだょ。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だょ。 体拭いてからだょ」

「ニャー」 (うん)

「ポチから先に拭いて上げるね」

「ニャー」 (うん。 ありがとアリス)

「ルンルンルン」

「ニャーニャーニャー」

「ルンルンルン」

「ニャーニャーニャー」

「ルンルンルン」

「ニャーニャーニャー」

「はい、完成ー。 終わったょ、ポチ。 もぅ、出て良(い)いょ」

「ニャー」 (うん)

久しぶりに気分良(い)いぞ~、俺様。
アリスじゃないけどルンルンだ~。
嬉しい話聞いちゃったからな~。

先行ってるぞ、アリス。 リビング。
ルンルンルン。
ルンルンルン。

ガーン!!

み、美琴だ。
美琴が帰ってる。

チッ。

やなもん見ちまったぜ、やなもん。
折角のルンルン気分が台無しだ。

お!?

美琴のヤツ、俺様に気付きやがったぞ。

「おぅおぅ、ポチ」

何だょ。

「やけに嬉しそうじゃねぇか。 ん? やけに」

あぁ、嬉しいょ。
それがどした?

「お前、猫の分際でお風呂入ったんだってな~。 ママに聞いたぞ」

あぁ、入ったょ。
入っちゃ悪(わり)ぃのかょ、入っちゃ。
ん? 
入っちゃ。

「チャ~ンとケツ洗ってから入ったんだろうな。 チャ~ンとケツ洗ってから」

あぁ、チャ~ンとアリスが洗ってくれたょ。
俺様の恥ずかしいトコまでチャ~ンと。

「まぁまぁ、美琴。 女の子がケツだなんてはしたない。 ダメょ、そんな言葉使っちゃ。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ょ、そんな言葉使っちゃ」

「は~い、ママ~」

「外でもそんな言葉使いしてるの」

「うぅん。 してないょ」

「絶対ダメょ、そんな言葉使っちゃ。 い~ぃ、絶対ダメょ」

「は~い、ママ~」

「何、その投げやりな返事!? きちんと返事しなさい!!」

「はい、ママ」

お!?

ママさん。
気合入ってんな。
ママさん言う時ゃ、言うかんな。
それもビシッと。
チョッとこえぇぜ。

「どしたの二人とも?」

お!?

アリスだ。
裸だぞ。
バスタオル体に巻いてるだヶだぞ。
早く服着た方が良いんじゃねぇか、アリス。
誰か来たらどうすんだ。

「誰か来たらどうするのアリス、そんな格好で!! 早く服着てらっしゃい!!」

「はい」

お!?

ママさん、チョッとご機嫌斜めだぞ。
どした?
便秘か?
下痢か?
更年期か?
機嫌悪いぞ。

叱られて、あの美琴がしょんぼりしてる位だ。
チョッと空気重たいぞ。
なんか、居づらいぞ。
早く来てくれ、アリス。
雰囲気悪(わり)ぃぞ。

「ただいマーンモス。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ」

お!?

あのふざけた登場はパパさんだ。
ナイスだパパさん、ナイスだぞ。
グッドタイミングだ。
悪い雰囲気壊したぞ。

「アタシもシャワー浴びてくる。 又、汗かいちゃったから」

お!?

美琴も続いたぞ。
ナイスなタイミングだ。

「シャワーだけ?」

「うん。 シャワーだけ」

「そぅ、早く出てくるのょ」

「はい、ママ」

良し!!

ママさん機嫌直ったぞ。
あっさりと。
意外と単純だ。

「ニャー」 (パパさん、お帰りー)

「お、ポチか。 ん? お出迎えってか」

「ニャーニャーニャー」 (うん、パパさん。 でかしたぞ。 GJ だぞ、 GJ。 \(^O^)/)

「良~し良~し、良い子だ良い子だ」

「ニャーニャーニャー」 (今、チョッと雰囲気悪かったんだぞ、パパさん。 でも良くなったぞ。 パパさんのお陰だ)

「うんうん。 良し良し。 ママ、今夜はカレーか。 約束通りだな」

「えぇ、今夜のカレーは特上ょ。 チョッと良(い)い事あったから」

「何だ? 良い事って」

「ヒ・ミ・ツ」

「ヒ・ミ・ツって・・・? 俺にも言えない事か?」

「そぅ、秘密ょ。  ヒ・ミ・ツ」

「・・・」

「どしたのパパ、固まっちゃって」

「も、もしかして男かー!? 男が出来たのかー!?」

「か・も・ね。 ゥフッ」

「(ガーン!!) マ、ママー!! 浮気かー浮気かー浮気かー!!」

「ゥフッ。 する筈ないでしょ。 う・わ・き・な・ん・か。 ゥフッ」

「そ、その笑い。 そ、その言い方。 あ、怪しい、怪しいぞ、ママー!!」

「そうねぇ。 一回位ならしても良(い)いかな~。 う・わ・き。 ゥフッ」

「・・・」

「アハハハハハ。 冗談ょ、パパ。 冗談」

「ホホホ、ホントに冗談か。 ホホホ、ホントに」

あ~ぁ、見ちゃいらんねーぜパパさん。
まるっきり役者が違いまんなぁ、役者が。
パパさん子ども扱いだぞ。
完璧なまでに子ども扱い。
でもょ、パパさん安心しな。
ママさん浮気なんかしてねぇぜ。
つーかそんな暇ねーょ、ママさんにゃぁ。

あ!?

っと言う間に一日終わっちゃってるぜ。
パパさん達の世話やオンライン・トレードで。

「オンライン・トレードで、今日チョッと儲けたのょ、儲けたの。 だ・か・ら」

「そ、そうか。 な、なら良(い)いんだ、なら。 フゥ~。 オンライン・トレードか。 うんうん。 そうかそうか、オンライン・トレードか」

「安心した?」

「うん、安心した。 う~ん、僕ちゃ~ん、アンシ~ン、ヘンシ~ン、安心仮面。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ」

オットー!!
又これかい。

「アンシ~ンしたら、パラペッパー。 ママちゃん、僕ちゃんアンシ~ンしたら、パラペッパー。 早くカレー、早くカレー食べたいよ~ん。 ママちゃんのカレー」

あ~ぁ、パパさんデレ~っとしちゃって。
見てらんねぇぜ、ったく。
大丈夫かパパさん、大丈夫か~?
そんなに幼稚で。
アリスや美琴の前ですんじゃねぇぞ、そういう真似。
親父の威厳なくなっちまうぞ、親父のイ・ゲ・ン。


┐( -"-)┌



またまた使っちゃったぞ、顔文字。
これって結構便利だぞ。

な、そうだろ。
な。
そう思うょな、読者の諸君。
うん。
俺様、そう思うぞ。

「おい、ポチ」

ん?
何だい、パパさん?

「今夜はカレーだ」

みたいだな。

「明日は 『カレーライス砲』 だ」

え!?
カレーライス砲?
何だ、そのカレーライス砲って?
何の事だ?

「まぁまぁ、パパッたら。 クスッ」

お!?

ママさんのその笑い、なんか気になるぞ。
カレーライス砲に関係あんのか?
ん?
カレーライス砲って何だ?
段々、心配になって来たぞ。
何だ何だ!?
カレーライス砲って、何だ何だ!?
益々、心配になって来たぞ。
何だ何だ何だ!?
カレーライス砲って、何だ何だ何だ!?
何か凄~く気になるぞ、教えてくれ、何だー!?
だ、誰か教えてくれー!!

カレーライス砲って何だ~~~~~!!




第三十話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十九話

第二十九話




「あのね、ポチ」

「ニャー」 (なんだいアリス)

「アタシね。 今度ね。 会社辞めようと思ってるんだょ」

あぁ、知ってるょ。
さっき、ママさんに話してんの聞いてたょ。

「実はね、ポチ」

ん?

「アタシね。 会社辞めて独立するんだょ。 イラストレーターになるんだょ」

「ニャー」 (会社作んのか?)

「お家で仕事するんだょ。 こないだアタシが担当した本、あの本書いた先生がね。 ほら、先週すき焼きしたょね。 あのすき焼きのお肉くれた先生だょ。 ポチも食べたょね、あのすき焼き。 あのお肉くれた先生がね」

すき焼きって、あの俺様を急性アルツ君にした、あの高級和牛か?
あれくれたヤツか、先生って?

「あの先生がね、アタシが描いたイラスト凄く気に入ってくれてね。 お友達の作家の先生たっくさん紹介してくれたんだ。 そしたら、仕事の依頼が一杯来ちゃってさ。 会社の人達み~んなビックリしちゃってね。 大変だったんだ。 それでね、みんながね、折角だから引き受けたらって勧めてくれたんだょ。 アタシもやって見ようかな、って思うんだ」

フ~ン。

「でも、それするとね。 今の仕事と両立出来なくなっちゃうんだ。 だから思い切って会社辞めて独立しちゃおうかな、って考えてるんだ。 ポチ、どう思う?」

そっかー。
そういう理由かぁ。
だったら良(い)いんじゃねぇか、独立しても、会社辞めても。
チョッと安心したぜ、それ聞いて。
それにアリスが家で仕事するようんなったら、いっつも一緒にいられるしな。
アリスの好きにして良(い)いんじゃねぇか。

「ポチも賛成してくれるよね」

「ニャー」 (うん。 俺様、賛成だぜアリス)

ここで一つ補足だ。

実は、アリスは絵が上手い。
それも半端じゃなく上手い。
アリスは高校生の時、美術部に入っていた。
その時の顧問の美術の先生がアリスの進学の時、担任でもないのにわざわざ家庭訪問して来て、

「お宅のお嬢さんの絵の才能は素晴らしい。 美大に進んで本格的に勉強されたなら、もしかすると大変な事になるかもしれませんょ、良(い)い意味で。 幸いお嬢さんは学年トップの成績ですし、東京芸大も決して夢ではないと存じますが」

等と、余計なお節介を焼いた位だ。
その位アリスの描く絵は素晴らしい。
実際、この我輩もかつてアリスの絵のモデルになった事がある。
というより無理矢理(むりやり)させられたのだが。
出来上がった我輩の絵を見た瞬間、身の毛がよだった。
思わず飛びのいて、

『シャー!!』

なんぞと、威嚇の声を上げてしまった位だ。
恥ずかしい話だが、その時まで我輩は自分がどんな姿をしているかま~ったく知らなかった。
だから絵の中にいる我輩が我輩とは分からず、思わず絵の中にいる我輩に反応しちまったって訳だ。
その位、その絵に描かれた我輩はリアルだった。
それも、今にも飛び出して来そうな位にな。

つまり、アリスの描いた我輩は絵であって絵ではなく、


『生きていた』

という事だ。

いゃ~、あん時ゃホ~ント、ビックリこいちまったぜー。
な~んせ、いきなりだったもんな~。
アリスが、

「ほら」

って、描き上げたばかりの絵を我輩の目の前に突き出したのは。
それ見てビックリこいたのなんのって。
今にも絵の中の 『いわゆる我輩』 が飛び出して来そうで。
まぁ。
あん時ばっかりは実に、ジッツリこいたぞ。
今まで忘れてた、すっかり。

しかし、欲のないアリスは画家になりたいなんぞという気はさらさらなく。
『絵を描く事』 その物が好きなだヶであった。
アリスの描きたい絵は本格的な絵よりもむしろ、 『いわさきちひろ』 が描くような絵なのである。

そしてアリスがなりたいのは絵本作家。
そぅ。

『絵本作家になる事』

それがアリスの夢だった。
だから、大学も4大ではなく短大を選んだのだ、学年トップの頭を持ちながら。
それは早く社会に出て経験を積み、良(よ)い絵本を描きたかったからに他ならない。
選んだ学部も美術系ではなく英文科だ。
というのも、アリスの描きたい 『題材』 が、ギリシャ神話や旧約聖書といったヨーロッパ系の物だったからだ。
そして英語を大学で、独学で外国語をいくつか勉強していた。
時々、何やら訳の分からない言葉で話しかけられてチンプンカンプンだった記憶がある。

アリスはオットリした性格の子だ。
だから一見ボーッとしているようにも見える。
だが、
今回の様な話を聞くとアリスはアリスなりにチャ~ンと考えてたんだなぁ、と思う。
これにはチョッと驚きだ。
アリスってボーッとしてるようでも、ホントは賢い子だったんだ。
凄く嬉しいぞアリス、俺様。

「そろそろ出よっか、ポチ。 チョッとのぼせちゃった。 頭、ボーッとなっちゃった」

「ニャー」 (うん)

やっぱりアリスは、ボーッとしていた。




第二十九話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十八話

第二十八話




「さ、ポチ。 お風呂入るょ。 おいで」

『さ、ポチ。 お風呂入るょ。 おいで』 って、アリスぅ。
それどころじゃねぇだろ。
会社どうすんだょ、会社。
ホントに止めちまうのかょ、会社。

「どしたの、ポチー。 おいでー。 一緒に入ろ」

う、うん。

「ポチ、どしたの。 立ち止まったまま、アタシの顔ジィーっと見つめて。 変なポチ。 おいでー!!」

う、うん。

「しょうがないコねぇ、全く。 ほら、抱っこして上げるょ。 ヨッコラショ」

「ニャーニャーニャー」 (ありがとアリス。 でも、俺様心配だぜ)

「久しぶりだね、ポチと一緒にお風呂は入るの。 先に浴室入っててね。 ドッコイショ」

「ニャー」 (うん。 床の上にいるょ)

「お洋服脱ぐから待ってるんだょ。 そしたらシャワーして上げるからね」

「ニャー」 (うん。 待ってるょ)

お!?

アリスが服脱いだぞ。

あ!?

という間だ。
夏場は薄着だ。
だから、

あ!?

という間だ。

「はいポチ、お待たせー。 先にシャンプーして上げるからね。 それから湯船に浸かろうね」

「ニャー」 (うん。 ありがとアリス)

「ルンルンルン」

「ニャーニャーニャー」

「ルンルンルン」

「ニャーニャーニャー」

(ジャブ、ジャブ、ジャブ、ジャブ、ジャブ、・・・)

「は~い。 シャンプー終了~。 奇麗になったね~、ポチ。 はい、湯船にザッブーン」

(ザッブーン!! ピチャ、ピチャ、ピチャ、・・・)

「ポチ泳ぎー。 パチパチパチー」

前にも言ったが我輩は水が怖くない。
だから、お・よ・げ・る、珍しい猫だ。

思い返せば3年前 (本当は2年半チョイ前) のある日。
気が付いたら我輩は、お風呂で泳いでいたのであった。
ピチャピチャと、猫掻きで。

そう言ゃ~、あん時きゃ、大騒ぎだったょなぁ。
思いだすぜ、俺様が始めて泳いだ時。
アリスは体も拭かず素っ裸で飛び出して行ったっけ。
こんな調子で。

「パパー!! ママー!! 美琴ー!! 大変大変大変。 チョッと来てーチョッと来てーチョッと来てー。 急いでー急いでー急いでー」

「ど、どうしたアリス!? 何があったー!? 痴漢かー!? オットー、裸だ。 ア、アリス。 前ぐらい隠しなさい、前ぐらい。 パパ目のやり場に困るじゃないか」

「どしたの大きな声出して。 あら、やだ。 アンタ裸じゃない」

「おねーちゃん。 見っともないょ、そんなカッコで。 はい、バスタオル。 パパが変な目で見てるょ。 お姉ちゃんの大事なトコ」

「うん、ありがと。 美琴」

「コ、コラッ、美琴。 パパ、変な目なんかで見てないぞ。 変な目なんかで。 うん、でも、チョッと気になるかな。 チョッと。 やっぱ、男としてだな。 うん、その~、何だ~。 ・・・」

「パパもママも美琴もそんな事より。 あれ見て、あれ!! 湯船!!」

「何々(なになに)?」 (三人一緒に)

「オォー!!」 (三人一緒に)

「ポチが泳いでるー!!」 (三人一緒に)

「ねねね、凄いでしょ。 凄いよね、絶対凄いよね」

「うん、凄い!!」 (三人一緒に)

「ママ。 チョッと聞いていいか」

「何?」

「猫って泳ぐのか?」

「ウ~ン。 聞いた事ないな~。 そんな話」

「アタシある」

「どこでだ。 美琴」

「テレビの動物特集か何かでやってたの見た事ある」

「フ~ン。 猫って泳げるのか。 パパ初めて知ったぞ」

「ママも」

と!?

まぁ、こんな感じで10分位。
4人共、感心しながら我輩の 『優雅な』 泳ぎに見取れていたっけ。

一方、我輩はと言えば、
優雅どころか 『命がけ』 であった。

ナゼか?

チョッと想像してみてくれたまえ。
我輩が初めて泳いだ時、我輩を抱いたアリスが湯船に浸かっていた。
その湯船からアリスが飛び出した。
つまり、
バスタブに湯は満杯ではなく、少なくともアリスの体積分だけ湯は入ってない。

と!?

言うことは・・・。
湯船から出るには浴槽の縁につかまらなくては出られない。
当時子猫だった我輩が、自力で縁につかまる事は不可能だった。
即ち、我輩が生き残るための唯一の道は、

『泳ぎ続ける事』

以外になかったのである。

そんな事とは露知らず、この 『愚かな』 田原家四人衆は10分もの間。
我輩の 『命がけの泳ぎを』 感心しながら観賞しておったのである。
そして、終に力尽きた我輩がブクブクと湯船に沈むのを見て、初めてそれに気付いたのであった。
とさ。

それからどうしたかって?

そぅ。
それから我輩の意識が戻った時。
心配そうに我輩を見つめるこの 『愚かな』 田原家四人衆の顔が、我輩の目の前にあったのであった。

アリスの布団の上に。

チャンチャン。。。




第二十八話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十七話

第二十七話




お!?

何か臭うぞ。

「クンクンクン」

ガ~ン!!

カ、カレーだ。
カレーの臭いだ。
こ、この臭いは。

ママさんどこだ。
ママさんママさん。

お!?

台所だ、台所にいるぞ。
お玉で鍋かき回してるぞ。
カレー鍋だ。
小皿に注いで舐めたぞ。
味見だ。
『うんうん』 頷いてるぞ。
美味いのか、ママさん。

でもょ~、ママさん。
いくら美味くっても、
俺様、カレーは食えねんだぜ。
辛くって。
シチューなら食えるんだヶどょ~。
シチューなら。
うん、ミルクた~っぷり入りのシチューならな。

お!?
ママさん俺様に気付いたぞ。

「あら、ポチ。 お帰り」

「ニャー」 (うん。 ただいま)

「お、ポチ。 浮かない顔してるな。 さては、メリーちゃんに会えなかったな」

え!?
ど、どして分かるんだ、どして?

「どうだ、ポチ~。 図星だろ~」

うん。
図星だ。
で、でも、どして分かるんだ、どして?

「ホ~ント、お前は分かりやすい猫だ」

そ、そうかぁ。
俺様、そんなに分かりやすいかぁ。

「ポチ。 今日は・・・」

ん!?
今日は?

「ただいまー」

あ!?

アリスだ!?
アリスの声だ、あの声は。

「ニャー」 (アリスお帰りー)

「ポチー。 お迎えに来てくれたんだー」

「ニャー」 (うん)

「ポチーポチーポチー。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (う。 そ、その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にオメェのおでこグリグリすんの止めてくれ!! た、頼むから、止めてくれ)

「ほれ、ポチー。 高い高い高~い。 高い高い高~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (あ、赤ん坊じゃねぇんだから、その 「高い高い高~い」 つーのも止めてくれ!! 俺様の “アソコ” がオメェの目の前なっちまうだろ。 は、恥ずかしいじゃねぇか)

「あら、アリス。 今日は早いのねぇ。 まだ6時半ょ」

「うん、ママ。 丁度ね、仕事の区切り良くってね。 だから早く帰れたんだ。 (クンクン) ママ、今夜はカレーだね。 い~匂い。美味しそう」

「美味しいわょー、ママが腕によりをかけて作ったんだから」

「うん。 早く食べた~い。 もう、お腹ペコペコ」

「でも、先にお風呂入ってらっしゃい。 お湯沸いてるから。 チョッと汗臭うわょ」

「え!? ホント!?」

「ホント。 チョッとだヶどね」

「うん。 じゃ、先お風呂入って来るね。 ポチ、おいでー。 一緒にお風呂入ろ」

「ニャーニャーニャー」 (うんうんうん。 入ろ入ろ)

「あ、それからねぇ、ママ。 あたしパパとママに相談があるんだ」

「何? 相談って」

「うん。 お風呂出てからゆっくり話すね」

「そう。 じゃ、早く出てらっしゃい」

「うん。 ・・・。 あ!? でも、ポチと一緒に入るから長くなっちゃいそう。 だから先言っとくね、内容だけ」

「そう。 何?」

「あたしねぇ。 ママ。 会社辞めようと思うんだ」

「え!?」

え!?




第二十七話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十六話

第二十六話




ジャン!!

オレ様山公園とうちゃ~く。

って言っても、たったの3秒だヶどな。
家から。

あれ~。
やっぱメリーちゃんいないぞ~。
どしたんだ?
もう遅いから山田さん家(ち)帰ったんか。

チェ。

今日は一回も会えなかったぞ。
それに誰もいないぞ。
いっつもいるマダム達やその付属品のガキんちょ達もだ。

あ、そっか。
今5時半だ。
夕食作る時間か。
道理(どうり)で誰もいない訳だ。

どうしよっかな~。
まぁ、折角来たんだから俺様のお気に入りのベンチで少し時間でも潰すか。

オレ様山公園には我輩お気に入りのベンチがある。
木製のベンチだ。
チャンと名前だってある。

『オレ様ベンチ』

どうだ?
良(い)い名前だろ。
中々だろ。
うん。
ナイスなネーミングだ。
我輩が付けた。
ヶど、アリス達ならこう言いそうだ。

『ポチベンチ』

プッ、プププププ。

な、なんてセンスのない。

フゥ~。


 ┐(ー。ー)┌ヤレヤレ


チョッと顔文字なんか使ってみたぞ。↑

↓こんなのもあるぞ。


┐( -"-)┌


↓こんなのも。


┐('~`)┌


なんつっても、ネーミングのセンスねぇからなぁ。
田原家の皆さんは。

プッ、プププププ。

で!?

オレ様ベンチだが。
チョッとおっき目の枝っぷりの良い木の下にある。
その枝が良(い)い感じで東・南・西からの直射日光を遮ってくれる。
周りには他に何もない。
当然、風通しはグッドだ。
オレ様山公園で一番過ごしやすい場所だ。
特に夏場はな。
もっとも、いくら過ごしやすいといっても、風のない蒸し暑い日はやっぱり地獄だ。
他の場所と同じで。
でも、春の暖かい日や小春日和ん時なんかに一眠りするには最高の場所だ、オレ様ベンチの上は。
今日なんかはチョッと暑いが、さっき降った雨のお陰で、まぁまぁだ。

ファ~ァ。

又、眠くなったぞ。
幸い誰もいない事だし、ここでもう一眠り。
良し。
もう一眠りしていこう。
さっき、ママさんに散々イジクリ回されてチョッとくたびれてるしな。
もう一眠り、っと。

「スャスャ、スャスャ、スャスャ、・・・」

・・・。

ファ~ァ。

ウ~ン。
あ~、良く寝た。

お!?

薄暗くなってるぞ。
つーか、真っ暗だ。
ん!?
どこだ、ここは?
どこだどこだ?
なんか変だぞ。
いつもと違うぞ。

ん!?

オヮッ、とー!?
ビ、ビックリした。
目の前に人がいるぞ。

オッサンだ!?

変なカッコしてるぞ。
こっち見てるぞ。
き、気持ち悪い目だ。
逃げよっと。

う!?

何だ何だ!?
か、体が動かないぞ。
どしたどした!?
か、金縛りだ。

変なおっさんも動かないぞ。
気ん持ち悪い目でジッと俺様見てるぞ。
何か言ってるぞ。
俺様に話し掛けてるみたいだ。

どうしよどうしよ。
とっても怖いぞ。

怖いぞ怖いぞ。
とっても怖いぞ。

どうしよどうしよ。
とっても怖いぞ。

(ビクッ!!)

ウ、ウ~ン。

ハッ!?

ゆ、夢か!?
夢だ夢だ。
あ~、良かった。
夢だ夢だ。
変なオッサンの夢だ。

それにしても気持ち悪い夢だったぞ。
脂汗ビッショリだ。
心臓ドキドキだ。
何て気持ち悪い夢だ。
悪夢って奴だ。

メリーちゃんの夢なら大歓迎なんだヶどな~。
オッサンじゃな~、オッサンじゃ~。
そ、れ、も、気持ち悪いオッサンじゃ~。
不気味なオッサンじゃ~。

フゥ~。
こ、怖かった。

ん!?
こ、ここはどこだ?
どこだどこだ、ここはどこだ?

・・・。

あ!?

そうか、オレ様山公園だ。
そうだ、オレ様山公園のオレ様ベンチの上だ。

 ♪
 俺様は 街中で一番
 賢いと 言われ~た 猫
 チカラ~は ないけど 素早いぞ~
 だけど ハートは チキン
 ♪

これ、歌だぞ、歌。
チョッとミュージカルっぽく決めてみたぞ。
そぅ。
ミュージカルっぽくな。

お!?

もう、辺りは薄暗いぞ。
帰んなきゃ帰んなきゃ。
お家帰んなきゃ。
急いで急いで。
お家帰んなきゃ。

オレ様山公園から田原家まで、猫ダッシュで3秒だ。

たったのな。




第二十六話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十五話

第二十五話




あ!?

オレ様山公園だ、オレ様山公園!!
思い出したぞー。
メリーちゃんだメリーちゃん。
そうだそうだ、メリーちゃんだメリーちゃんだ。
オレ様山公園行かなくっちゃ。
メリーちゃんに会いに。

今何時だ?
午後5時半だ。
良かったまだ暗くなってない。
急げばまだ間に合う。

くどいようだが、念のために言っておくぞ。
今は8月半ばチョッと前だ。
という設定になっている。
だから午後5時半なら、外はまだまだ明るい。
それに凄く暑い。
これ、念のためだぞ、念のため。

「ニャーニャー」 (ママさんママさん)

「あら、ポチ。 どしたの?」

「ニャーニャーニャー」 (俺様、これからオレ様山公園行って来っかんな)

「ん? どしたの?」

「ニャーニャーニャー」 (ご飯後で良(い)いぞ。 帰った後でな)

「あ。 さては、メリーちゃんトコ行く気だなぁ」

な、何で分かっちまうんだ、何で!?

「そうだろ、ポチ。 図星だろ」

ず、図星だょ。
で、でも何で?

「図星だって顔に書いてあるぞー」

ホ、ホントか?
か、顔に書いてあんのか、そんな事。
ホ、ホントか?

「・・・」

ん!?

な、何だよ、ママさん。
俺様の顔、ジッと見つめて。

う!?

ヤ、ヤナ予感。

「ポチー!! お前ってヤツはーお前ってヤツはーお前ってヤツはー。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの。 や、止めてくれー。 お願いだー)

「高い高い高~い。 高い高い高~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高い~」 つぅーのも止めてくれぇー。 俺様の “アソコ” がママさの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇーか)

「ホレホレホレー。 ホレホレホレー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! り、両手つかんで俺様にフォークダンスさせねーでくれー)

た、頼むぜママさん。
俺様、玩具にしないでくれ。
た、頼むぜママさん。

しっかし、ママさんのこの変身何とかなんねーのか、何とか!?
これさえなきゃ、非(ひ)の打ち所ねぇんだヶどなぁ。
美人だし、賢いし、スタイルいいし、ボインボインだし。
でも、いきなり人格変わるんで付いて行けねぇぜ、ったく。

人呼んで、
『ジキルとママさん』
『超人ハルクママ』
な~ンてな。

・・・。

チョ、チョッとつまんなかったか、これ?
ん?
つ、つまんなかったか?

・・・。

こりゃ又、失礼致しました。

「しっかし、ホ~ント分かりやすい猫ねぇ。 お前って」

そ、そうか?
俺様そんなに分かりやすいか?
いつも言われっヶど。
ママさんの勘が良過ぎるだヶなんじゃねぇのか。
ママさんの勘が。

前にも言ったが、ママさんは勘が良(い)い。
ホントに良い。
ビックリする位だ。
もしかすると、株で大儲けするかも知れない。
大金(たいきん)儲けて白金台に、お・う・ち
なんて事も。
本物のシロガネーゼになっちゃうかも。
ウ~ム。
あり得る。

あ!?

忘れてた。
メリーちゃんメリーちゃん。
オレ様山公園行かなくっちゃ。
どうもママさんの人格転換に付き合わされると調子狂っちまうぜ、ったく。

チッ。

それじゃ、ママさん。
オレ様山公園行って来ま~す。

ご飯は帰ってからで良(い)いょ~ん。




第二十五話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十四話

第二十四話




パニックだ~~~!!

パニックだ、パニックだ、パニックだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。

公園行くか留守番か?
留守番するか公園か?

どうしよう、どうしよう、どうしよう。
パニックだ、パニックだ、パニックだ。

パニックだ~~~!!

(ピキッ!!)

お!?

今、ピキッって来たぞ。

お!?

目まいがするぞ、目まいが。
気が遠く、遠~くなって、目の前真っ暗になって・・・。

・・・。

「ドッコイショっと」

(ドサッ!!)

「ふ~。 今日は買い物いっぱいしちゃったなー。 ん!? あら、やだ、ポチったら。 こんなトコで大の字なって寝ちゃって。 猫なのに」

お!?

なんか遠く、遠~くの方から声が・・・。

「こら、ポチ!! そんなカッコで寝てるとオチンチン丸見えだぞ」

声が聞こえる、声が。
ママさんの声に似て・・・。

「いいのかぁ、ポチ。 写真撮っちゃうぞー」

う!?

な、なんか凄く恥ずかしいような・・・。

(ジーーー!!)

う!?

な、なんか見られてるような・・・。

「ポチー!! なんて可愛んだ、お前ってヤツゎー!! ウリウリウリー。 ウリウリウリー」

何だ何だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ何だ!?
何だ!?

お!?

ママさんが、ママさんが、ママさんがーーー!?

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの。 や、止めてくれー。 お願いだー)

「高い、高い、高~い。 高い、高い、高~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高~い」 つぅーのも止めてくれぇー。 俺様の “アソコ” がママさんの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇか)

「ホレホレホレー。 ホレホレホレー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (りょ、両手つかんで俺様にフォークダンスさせねーでくれ~~~)

た、頼むぜママさん。
俺様、玩具にしねぇでくれ。
た、頼むぜママさん。

ママさんは激情家だ。
だから突然人格が変わる。
時々、意表をつかれて何がなんだか分からない事がある。
今のがそれだ。

「ほ~ら、ポチ。 いっぱい買って来たからねー。 晩御飯楽しみにしてるんだょー」

うん。
分かったょ、ママさん。
楽しみにしてるょ。

「ルンルンルン」

お!?

ママさん、何かあったのか。
良い事あったのか。
ルンルンだぞ。

便秘治ったのか。
愛人でも見つけたか。
ルンルンだぞ。

って、今日なんかあったっけ?

ウ~ム。
分からん。
何も思いだせん。
でも、何かあったような気がするぞ。
それも凄~く大事な何かだ。
う~んと、なんだっけ?
う~んと。
全然、思い出せないぞ。
この頃、記憶力弱くなったような。
困ったぞ。
俺様まだ3歳なのに。
困ったぞ。

前にも言ったが、我輩が田原家に拾われて来たのが3年位前だ。
本当は2年半チョイ位だが、面倒なので3年と言っている。
前にパパさんがそんな事を言っていた。
多分、事実だ。
拾われて来た時、我輩はまだ産まれたばかりだった。
だから、我輩も3歳と思う事にしている。
人間の年齢に当てはめると15、6歳といったところか。
良く分からないが。
まぁ、そんなトコかなって、自分では思っている。
つまり、
『年の頃なら15、6歳の紅顔の美少年』
って訳だ。
オ・レ・さ・ま・は。

で!?

その紅顔の美少年の記憶力が弱くなってしまった。
ナゼか。

も、もしかして
俺様・・・・・・・・・・アルツ君?
つ、つまり・・・・・・・・・・ボ、ケ、か?
こ、この歳で・・・。

ガーン!!

そ、そう言えば思い当たる節があるぞ。

あれは確かぁ・・・。
一週間位前の話だ。
田原家の晩飯が牛肉のすき焼きだった。
それも高級和牛の。
アリスが担当した本の著者からのもらい物だ。
詳しくは知らないが、アリスのお陰でナイスな本が出来てそのお礼にと。
それが高級和牛だった。
それを使ったすき焼きだ。

あぁ、そぅそぅ。
念のためにもう一度言っておくぞ、忘れちゃってる読者のためにな。
アリスは今、出版社に勤めている。
そこで本の編集をやっているらしい。
これ、一応、念のため。

当然、この我輩もそのすき焼きは食べた。
お裾分けに預かっちゃったって訳だ。

もしかすると、
あん時食った牛肉。
ア、アレに当たったかぁ!?

つー、まー、りー、牛肉食ってアルツ君。

うん、
十分考えられるぞ。
あの時の、あのすき焼きの、あの牛肉に当たっちまった。

ガーン!!

こ、この若さでアルツ君かぃ、俺様。
なんてっこたい!!

つー事は、
俺様、その内・・・。
ウンチ床に塗り手繰(たぐ)ったり、歩行困難になったり、道分かんなくなったりするんか?
挙句の果てに、 『ボケ猫』 なんて呼ばれたりするんか?

『ボケ猫』

ウウウウウ。

なんか悲しくなって来るぞ。

『ボケ猫』

『ボケ猫』

『ボケ猫』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

以上総合するとこういう結論になる。
我輩に新しい名前が付く。
ミドルネームだ。
そぅ。
その名も・・・。

ジャンジャ、ジャーン!!

『田原 アルツハイマー ポチ』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

『田原 アルツハイマー ポチ』




第二十四話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十三話

第二十三話




「あら、もうこんな時間。 夕飯の仕度しなっくちゃ」

お!?

もうこんな時間だ。 オレ様山公園行かなくっちゃ。

「ポチ。 買い物行って来るから留守番しててね」

え!?

だ、ダメだぜママさん。
お、俺様これからオレ様山公園行くんだぜ、メリーちゃんに会いに。
だ、だからダメだぜ、ママさん。

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

だぜ、ママさん。

「じゃ、ポチ。 お願いね」

『じゃ、ポチ。 お願いね』

って、ママさん・・・。

お!?

ママさん素早いぞ。

あ!?

という間だ。

あ!?

という間に戸締り済ませたぞ。

ウ~ム。
素早い。
猫みたいだ。
俺様みたいだ。

な~んて、関心してる場合じゃなかったぞ。

ママさ~ん。
俺様これからオレ様山公園行くんだぜ、メリーちゃんに会いに。
だからダメだぜ留守番。
ホントにダメなんだぜ留守番。

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

なんだぜ留守番。

ママさ~ん。
行かねぇでくれー!!
行くんじゃねぇょー!!
俺様一人にしないでくれー!!

って、詰まんねー事言っちまったぜ。
チッ。
三流映画の臭いセリフみたいじゃねーか。
チッ。

(バタン!! カチャ、カチャ)

あ!?

『バタン!! カチャ、カチャ』

って・・・。

あ~ぁ。
あ!?
という間にドアの鍵かけて出て行ったぞ。

ウ~ム
なんて素早い。
猫みたいだ。
俺様みたいだ。

って、関心してる場合じゃないぞ。

ど、どうしよう!?
オレ様山公園行けなくなっちまったぞ。
メリーちゃんに会えないぞ。
ど、どうしよう!?

ここで一言断っておくぞ。

 ① 俺様って、結構生真面目
 ② 俺様って、結構責任感つおい
 ③ 俺様って、結構約束破れない性質(たち)

なんだ。
こう見えてもな。
って、見た事ねぇか。
まぁ、適当に想像しといてくれ、俺様がどんな猫か。
良~し。
そのうち教えてやっからょ。
俺様の 『よ・う・し(容姿)』。
良~し、良~し、そのうちな。

・・・!?

チョ、チョッと外したか?
い・ま・の。
ん?
寒かったか?
ん?

『ピュ~~~』 って、来たか?

・・・!?

って事で本題に戻るぞ。

だから、例え今回みてぇにママさんに一方的に押し付けられたもんでも、つい守ろうとしちまう、オ・レ・さ・ま。
ウ~ム。
なんて律儀な。

エッヘン!!

なんて威張ってる場合じゃなっかたぞ。

どうしよう。

ウウウウウ。

公園行けないぞ。

ウウウウウ。

メリーちゃんに会えないぞ。

ウウウウウ。

悲しいぞ。

どうしよう。
ママさん買い物行ったら小一時間戻らないぞ。

田原家からスーパーまで結構距離がある。
だからママさんはチャリを使う。
ギンギンだ、普通は。
それでも帰って来るまで、小一時間はかかる。
でも、今日は暑い。
だからゆっくり走る。
坂道もあるしな。
つまり、当分帰って来そうにない。

どうしよう。
なんつっても、根っからの良(い)いヤツじゃけー、俺様。

あ~ぁ。
どうしよう。

チッキショー!!

これじゃぁ、まるでハムレットみたいじゃねーか。

『To be, or not to be: that is the question.』

『留守番すべきか? すべきじゃないか? それが問題だ』

ウ~ム。
余計混乱してきたぞ。

どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。

えーぃ!!
めんどうだー!!
今日だけ不良~~~

に!?

なれないオ・レ・さ・ま。

で!?

あった。

あーぁ、あ~。
やっぱ、ハムレットみたいだ。
優柔不断な所が。

ウ~ム。
仕方ない。
正直に言おう。
実は隠してた事があるぞ。
これだ!!

 ④ 我輩は優柔不断である。

トホホ




第二十三話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十二話

第二十二話




ファ~ァ。

あ~、良く寝た良く寝た。
今、何時だ。
4時半かぁ。

お!?

ママさんパソやってるぞ。
キーボード、パシパシだ。

「ニャー。 ニャー」 (何やってんだ? ママさん)

「あら、ポチ」

「ニャー」 (なぁ。 何にやってんだ?)

「どしたの、ポチ。 ママの膝に手ー掛けて。 ママの膝に乗りたいの」

「ニャーニャーニャー」 (そーじゃねーょ、ママさん。 俺様、何にしてるか知りたいんだょ~)

「しょうがないコね~。 ほら」

抱っこして欲しいんじゃねぇょ、ママさん。

あ!?

でも、膝に乗っけてもらったお陰で画面が見えるぞ。
何々?
お、株じゃねーか。

そうかママさん、今オンライン・トレード中か~。
でも、もう取引時間過ぎてねぇか~。
東証、3時迄だろ、確か。

「ポチ。 ダメょ動いちゃ。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ょ動いちゃ。 ジッとしてなさい。 もうチョッとで入力終わるからね」

あぁ、動かねーょ、ママさん。 ジッとしてるょ。

「ほ~ら、終わったー。 入力完了」

何入力したんだ?
エッチな画像か?

「ホ~ント便利になったわねー。 素人でも株取引出来ちゃうのょ、ポチ」

フ~ン。

「それもオンラインだとこうやって入力しとくだヶで、明日の取引開始時間にチャンと売買出来ちゃうんだから。 便利ょねぇ」

フ~ン。
俺様にゃぁ良く分かんねぇヶど、便利そうだな。
俺様にゃぁ良く分かんねぇヶど。

「さて、今日は締めて5万2千円の儲けなりーっと」

ス、スゲーな、ママさん。
そ、そんなに儲けたんか。
ス、スゲーな、ママさん。

「どうだ、ポチ。 スゲーだろー。 ウリ―。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! そ、その 『ウリウリウリー』 って言いながら俺様のおデコにママさんのおデコ、グリグリすんの。 や、止めてくれー、頼むから)

「今夜の晩御飯、奮発しちゃおっかなー」

うんうん。
ママさん。
奮発奮発。

「オカズは何にしょっかな~」

鯛鯛、鯛だぜ、ママさん。
俺様、絶対鯛がいいぜ、鯛。
なんなら、アンコウでも良いぞ、ママさん。
アンコウでも。
マグロなんてどうだ?
マグロなんて・・・。

ん!?

リッチでいいんじゃねぇか、リッチで?

「ヨッシャー!! 今夜はカレーじゃー」

ガーン!!

カ、カレーはダメだぜママさん。
お、俺様、カレーは苦手なんだ。

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

だぜママさん。
カレーはょ~。
カレーは俺様食えねーぜ。
俺様にゃぁ、辛くって。
だ、だからダメだぜママさん。
カレーはょ~。

「シチューも良いかしら」

うんうんうん。
シチューは良いぜ、ママさん。
シチューはょ~。
ミルクた~~~っぷり入ったシチューな、ななな。

「でも、やっぱカレーね。 今朝、パパ食べたいって言ってたし。 良し。 今夜はカレーで決まりだー」

ガーン!!

カ、カレーかよ。

チッ。

ママさ~ん。
俺様食えねーんだぜ、カレーはょ~。
あんまりガッカリさせねぇでくれょな、ったく、もぅ。
あ~ぁ、又今夜も 『猫マンマ』 かょ。
それも煮干の。
チッキショーめ。

マーマさ~ん。
それはねぇだろ~、そ、れ、は。
自分たちだけ良いもん食って、俺様は猫マンマかょ。

差別だ差別だ、裁判だー!!
訴えてやるー!!
ガッデム!!

な~んっつても、虚しいだけだぜ。

ピュ~~~。

なんつっても、俺様、猫だもんな~。
猫が裁判!?
聞いた事ねぇもんなぁ、そんな話。

チッ。

不良になりそうだぜ、俺様。

「そして、ポチには、ミルクとカルカン」

え!?

ミ、ミルクとカルカン!?
ミルクとカルカン、ミルクとカルカン、ミルクとカルカン!?
ミ・ル・ク・と・カ・ル・カ・ン・!?



キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!



って、チョッと顔文字なんか使ってみたぞ。
どうだブログっぽくなったか?
それとも2チャンネルみたいか?

「選んでカルカン。 ポチまっしぐら。 な~んてね」

「ニャーニャーニャー」 (ス、スゲーぜ、ママさん。 ス、スゲーぜ!!)



\(^o^)/



↑こんなのどうだ?

ダメか~?

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

か~?

ならこれは↓?



キャー!!(≧∇≦)素敵ー!!



顔文字って結構面白いぞ。
中々良いぞ。
うん、気に入った。
これからも時々使うぞ。

「でも、・・・」

でも?

「ホ~ント分かりやすい猫よねぇ。 お前って」

そ、そうか?

俺様そんなに分かりやすいか?
な、なんか前にもよう同じな事、言われたような気がするぞ。
前にも。

「フ~ン」

・・・!?

「バカなんだか利口なんだか」

ガーン!!
バ、バカなんだかー!!

こ、この超利口な、こ、この俺様がか~!?




第二十二話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十一話

第二十一話




「フ~ン。 やっぱり考え過ぎだったのかな、ワタシの」

何の考え過ぎだ、ママさん?

「いくら賢くても、猫だものね。 お前は」

うん。
猫だぜ、ママさん。
それがどした?

「人間の言葉、分かる訳ないわょね」

分かるぜ、ママさん。

「やっぱり考え過ぎね、ワタシの」

そんな事ないぜ、ママさん。

「でも、・・・」

ん!?
でも?

「・・・」

お!?

どした、ママさん?
そんなに俺様ジッと見つめて。

「ポチー!! なんて賢いヤツなんだ~、お前ってヤツは~!! ウリー。 ウリウリウリ―。 ウリウリウリ―。 ウリウリウリ―」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! その 『ウリウリウリー』 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの。 止めてくれー!! 頼むから)

「高い高い高~~~い。 高い高い高~~~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高~~~い」 つぅーのも止めてくれー!! 俺様の “アソコ” がママさんの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇか)

「ホレホレホレー。 ホレホレホレー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (お、俺様の両手つかんでフォークダンスしねぇでくれ~~~!!)

た、頼むぜママさん。
俺様、玩具にしないでくれ。
た、頼むぜママさん。

「まぁ、ピーカン。 さっきの雨、嘘みたいだわ。 美琴が出かける前に止んで良かった良かった」

うん、そうだな。
雨止んで良かったな。
って、何て変わり身の早い。

「洗濯物。 少し濡れちゃったから、もう少し干しときましょう」

お!?

ママさん素早いぞ。
あ!?
という間だ。
あ!?
という間に洗濯物干しなおしたぞ。

ウ~ム、素早い。
猫みたいだ。
俺様みたいだ。

お!?

ママさん、又テレビ見始めたぞ。
何に見てんだ?
エッチなヤツか?

ん!?

何々?
お、経済ニュースか?

ママさんはテレビが好きだ。
暇さえあれば見てる。
否、見ていた。
でも、この頃テレビを見る時間がなくなった。
インターネットで株取引を始めたからだ。
デイトレイディングってヤツだ。
結構稼いでるみたいだ。
でも、取引額が少ないので儲けてるとは言えないらしい。
こないだパパさんにそんな事言っていた。

ママさん勘良いからな。
株取引向いてるかもな。
タップリ稼いで鯛の味噌汁作ってくれ。
アンコウでも良いぞ。
リッチなヤツな。
鯛やアンコウなら 『猫マンマ』 でも文句言わねぇぞ、俺様。
ママさん期待してるぞ。
さぁ、晴れた事だし、雨降った後で涼しいし、もう一ちょ、オレ様山公園行ってみっか。

でも、

ふぁ~ぁ。
眠い。
少し眠くなったぞ。
一眠りしてからにしよう。

ママさん、お・や・す・み。

期待してるぞ。
タップリ儲けてくれょ。
鯛な鯛。
アンコウでもいいぞ、アンコウでも。
思いっきり、リッチなヤツな。
ムニャムニャムニャ。

ママさんは今、デイトレーディングで小遣いを稼いでいる。




第二十一話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二十話

第二十話




「ポチ」

何だいママさん。

「・・・」

な、何だよママさん。
俺様の顔じぃ~っと見つめて。
て、照れくせぇじゃねぇか。

な、何だよママさん。
何か言いたげじゃねぇか。
な、何が言いてぇんだ、何が?

ん!?

ま、さ、か、告白?
愛の告白?
この俺様に愛の告白?

だ、ダメだぜママさん。

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

だぜママさん。
そればっかりはょ~。
こ、越えちゃいけねぇ一線だぜ、越えちゃいけねぇ一線。
マ、ママさんの気持ちは嬉しいヶどょ~。
や、やっぱダメだぜママさん。
そればっかりはょ~。
倫理上からも宗教上からも。
や、やっぱダメだぜママさん。

「フ~ン。 ・・・。 妙な猫ね~」

へ!?

妙な猫?

何言うかと思ったら、妙な猫。
どういう意味だょ、ママさん。
この俺様に向かって妙な猫たぁ。
聞き捨てなんねぇぞ、その台詞(せりふ)。
聞き捨てなんねぇぞ。

まぁ、愛の告白よっかは良(い)いヶどょ。
チョ、チョッとホッとしたぜ。
チョ、チョッとな。

「バカなんだか利巧なんだか」

ガ~ン!?

ば、バカなんだか~!?
ど、どう意味だょ、ママさん?
どう意味だ?
美琴にバカって言われんのは慣れってヶどょ。
ママさんに言われっとチョッと堪(こた)えるぜ。
チョッとな。

「フ~ン。 ・・・。 妙な猫ょね~。 お前って、ホントに」

・・・。

「バカ猫だょ。 ママ。 ただの、ばー、かー、ねー、こ」

お、美琴!?
いつの間に。

「あら、美琴。 いつの間に」

「ママとポチがお見合いしてる間に」

してねぇょ。

「まぁ、やだ、お見合いだなんて」

「でもね、結構長い事見詰め合ってたょ。 ママ、コレと」

コ、コレとって。

おぅおぅ、美琴。
この俺様を物みてぇに言うんじゃねぇょ。
物みてぇに。

「さっきポチがね、雨降って来た事教えてくれたのょ。 否、教えてくれたみたいなのょ。 『洗濯物、濡れちゃうょ』 って言ってるみたいだったのょねぇ。 それが・・・」

「ママの勘違いだょ、そんなの」

「勘違い?」

「そうだょ」

「そうかな~?」

「決まってるょ。 そうだょ。 こんなバカ猫、そんな賢い分けないょ」

実は賢い。

「でもね、美琴。 ママ、時々思うんだヶど。 このコ、あたし達の言葉理解してるんじゃないかって」

「ないない、そんな事。 ないない、絶対ない。 ママの考え過ぎだょ」

「そうかしら?」

「そうだょ、ママの考え過ぎ。 ママの」

「・・・」

「もしコイツがそんなに賢かったら、お姉ちゃんが真っ先にそぅ言ぅはずだょ」

「・・・」

「お姉ちゃん、コイツにベッタリじゃない。 今までお姉ちゃん、そんな事言った事ある?」

「いゃ、ないヶど。 でもね美琴、ママね・・・」

「はいはい、そこまでそこまで。 マ、マ、の、考え過ぎ。 ママの」

「・・・」

「おぅおぅ、ポチ」

何だょ。

「ママがな~」

ママさんが何だょ。

「ママがな~」

だからママさんが何だょ。

「お前がアタシ達の言葉、理解してるみたいだってょ」

あぁ、理解してるょ。
それがどした。

「ある分きゃねぇょな、そんな事」

あるょ。

「ねぇょな、そんな事。 このスカスカの頭でょ~」

(ピチッ!!)

「ニャ!!」 (いて!?)

こ、このアマー!!

いてぇじゃねぇか。
デコピンすんじゃねぇょ、俺様のおデコに。

「ほら、ママ。 やっぱりただのバカ猫だょ、コレ」

悪かったな、バカ猫で。

「じゃぁ、ママ。 アタシ塾行って来るから」

おぅおぅ、行け行け。
そんでもって二度と帰って来んなよ、二度と~。

「あら、もぅ行くの。 まだ3時前ょ。 少し早いんじゃない。 時間まで」

「うん、でも先にチョッと図書館寄ってくから」

「そぅ。 帰り、何時ごろ」

「今日は7時位かな」

だーから~。
帰ってくんな。

「そう。 じゃ、気をつけてね」

「うん。 じゃ、行って来まーす」

「はい、行ってらっしゃい」

おぅおぅ、美琴。
俺様にはねぇのか、俺様には。
俺様に 『行って来まーす』 はょ~。
あ~ぁ、挨拶抜きで行っちまいやがったぜ。

チッ。

ホント、口の減らねぇアマだぜ、つったく。

「ポチ」

ん!?
何だいママさん。

「・・・」

な、何だよママさん。
俺様の顔じぃ~っと見つめて。
て、照れくせぇじゃねぇか。

な、何だよママさん。
何か言いたげじゃねぇか。
な、何が言いてぇんだ、何が?

ん!?

ま、さ、か、告白?
愛の告白?
この俺様に愛の告白?

だ、ダメだぜママさん。

つー、まー、りー、・・・

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

だぜママさん。
そればっかりはょ~。
こ、越えちゃいけねぇ一線だぜ、越えちゃいけねぇ一線。
マ、ママさんの気持ちは嬉しいヶどょ~。
や、やっぱダメだぜママさん。
そればっかりはょ~。
倫理上からも宗教上からも。
や、やっぱダメだぜママさん。

「フ~ン。 ・・・。 妙な猫ね~」

へ!?




第二十話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十九話

第十九話




お!?

急に暗くなったぞ。
雲行き怪しいぞ。

お!?

ポツポツ来たぞ。
雨だ!?
早く帰ろう。

オレ様山公園の今我輩のいるベンチから田原家まで、猫の足で10秒だ。
猫ダッシュなら5秒だ。
花壇からなら普通で3秒だ。
これは前に言ったな。
凄く近い、一気だ。
それでもチョッと濡れた。
チョッとな。

お!?

洗濯物まだ干してるぞ。
ママさんに教えなきゃ、雨の事。

オットー!!

言い忘れてたぞ。
田原家には我輩専用の出入り口がある。
パパさんが作ってくれた。
といっても台所の窓を我輩が出入り出来る位開けてあるだけなんだヶどな。
それに泥棒よけの格子が付いている。
結構頑丈なヤツが。
窓は開かないように固定してある。
それも泥棒よけだ。
窓付けクーラーを想像すると分かりやすい。
クーラー横の下側部分が我輩の出入り口になっている。
そんな感じだ。

窓の外には我輩専用の踏み台が置いてある。
窓が高い位置にあるからだ。
内側は、流しに一旦飛び乗ってから出入りする。
隙間風が入らない様に出入り口は板暖簾(いたのれん)になっている。
それでも多少隙間風が入る。
だから冬はチョッと寒い。
夏は夏で窓が開けられないからチョイ不便だ。

が!?

誰も文句を言わない。
我慢してくれている。
我輩のために。

信じられない事だが、あの美琴も一言も文句を言わない。
これは驚きだ。
ホントは 『良いヤツなのかな?』 等と錯覚さえする。
そして裏切られる。
お約束のパターンだ。

そして、この我輩専用の出入り口にはちゃんと名前が付いている。
といっても我輩が付けたんだヶどな。
この我輩が。

そ、の、名、も、 『俺様ドアー』 だ。

どうだ?
中々だろ。

『俺様ドアー』

うん、中々だ。

しかし、アリス達は 『俺様ドアー』 とは呼ばない。
自分たちで勝手に名前を付けている。
こうだ。

『ポチ戸』

・・・!?

おいおいアリス~。
誰が言い出したか知んねえヶんど、ポチ戸はねぇだろ~、ポチ戸はょー。
どういうネーミングのセンスしてんだ、どういう。

チッ。

ポチ戸だってょ~、ポチ戸。

ウウウウウ。

何か悲しくなって来るぞ。

『ポチ戸』

『ポチ戸』

『ポチ戸』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

ま、言ってもしょうがない事なんだヶどもょ。

お!?

美琴がいない。
塾かな。
まだ早(はえ)ぇんじゃねか、塾の時間まで。
それとも二階でお勉強か。
勉強家だからな、美琴は。
だから成績優秀だ。
否、成績優秀だから勉強するのか。

まぁ、どっちでもいいゃ、発声練習終わったんならな。
あの悪魔の雄叫(おたけ)びが終わったんならな。

オットー!!

それどころじゃなかったぜ。
ママさんどこだ。
ママさんママさん。

お!?

いたいた、リビングだリビングだ。
のん気にテレビみてるぞ。
何に見てんだ。
エッチなヤツか?
って、それどころじゃねぇんだ。

「ニャーニャー」 (ママさんママさん)

「ん!? ポチ何? どしたの?」

「ニャーニャーニャー」 (雨だ、雨。 雨降って来たぞ)

「ん? 何? どしたの?」

「ニャーニャーニャー」 (洗濯物、濡れちゃうぞ)

「あら、ポチ。 濡れてるじゃない・・・。 あ!? 雨か!? 洗濯物洗濯物。 入れなきゃ入れなきゃ」

お!?

ママさん。
縁側からツッカケ履いて飛び出したぞ。
素早い。
ウ~ム、猫みたいだ。
ウ~ム、俺様みたいだ。
洗濯物、全部取り込んだぞ。
パパさんのパンツとシャツ、それにパジャマもだ。

あ!?

という間だ。
ウ~ム、素早い。
猫みたいだ。
俺様みたいだ。

「ポチー、おいで~」

「ニャー」 (何だい、ママさん)

「お前、お利巧だったねぇ。 ご褒美あげるょ」

「ニャーニャー。 ニャー」 (何だ何だ、何くれんだ)

「ほ~ら、お前の大好きなミルクだょ。 お腹空いてんだろ」

「ニャーニャー。 ニャー」 (うんうん、空いてる空いてる)

(ピチャ、ピチャ、ピチャ)

プハー、うめー!!

やっぱミルクは好いですなぁ。
実に美味いですなぁ。
きっと、
こんな時言うんだょな。
こういう、セ、リ、フ。

『ウ~ム。 デリシャス』

って。
そぅ、こんな時に。

『ウ~ム。 デリシャス』

って。

我輩はミルクが大好きである。




第十九話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十八話

第十八話




あれー?

やっぱ来てないゃ、メリーちゃん。

メリーちゃんは山田さんちの三毛猫だ。
もちろんメスだ。
名前の通りだ。
名前の通りじゃないのは、この辺では俺様だヶだ。
八百屋の加藤さん家のミケや有田さん家のタマ、池山さん家のミー、古川さん家のトラ、・・・。
み~んな猫っぽい名前だ。
それに引き換え、俺様は・・・。

『ポチ』

・・・!?

ウウウウウ。

何か悲しくなって来るぞ。

『ポチ』

『ポチ』

『ポチ』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

何で俺様だヶこんな名前なんだ。
犬じゃねぇのにょー。
何でこんな名前なんだーーー!?

チッキショー!!

大っ嫌いだー! 真っ赤な太陽なんてー!!

ガッデム!!

思い返せば3年前。
正確には2年半位前。
そう、2年半位前。

の!?

春頃だった。

と!?

思うぞ、確か。
俺様が初めて俺様の名前が 『ポチ』 だって自覚したのは。
そん時は、俺様もまだ子猫だったから自分の名前の意味が良く分かんなくってょ。
素直に反応しちまったぜ。
こんな感じで。

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

んでもってょー、んでもって大騒ぎだ、そん時は。

「ママー!! ママー!! チョッと来てー!! ママー!! ママー!! 早く来てー!! 早く早く!!」

「ど、どしたのアリス? どしたの? 何があったの? そんな大きな声出して?」

「ママ、ママ!! 凄いょ凄いょ凄いょ!! 凄いんだょ、ママ!!」

「何が?」

「ポチがね、ポチがね、ポチがねー!!」

「ポ、ポチがどしたの?」

「ポチがねー!! ポチって名前呼んだら返事するんだょ。 ホントだょ。 ホントに返事するんだょ。 ホントだょ。 可愛いょ」

「ホント?」

「うん、ホントだょホント。 見てて見てて」

「うん。 見てるゎ」

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

「ほらねぇ」

「やだホント。 ホントに返事するゎね。 ママもやってみようかしら」

「うん。 ママも、ママもやってみて」

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

「ポチ」

「ニャー」

「あら、やだ。 ホントにチャンと返事したゎ」

「ねねね、ママ。 凄いでしょ。 凄いょね。 かっわいー!! ほら~、ポチ~!! ウリウリウリー。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー。 かっわいー!!」

「ホントねぇ。 ホント可愛いわね。 パパと美琴が帰って来たら教えて上げなくちゃね。 二人とも何て言うかしらね」

「絶対 『かっわいー!!』 って言うよ。 絶対言うよ。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー。 かっわいー!!」

その後が又、大変だったぜ。
パパさんと美琴の 『ポチポチポチー』 の連呼に一々返事してたんだからな、一々な。
ったく。

まぁ、今となっちゃー、いい思い出なんだヶどもょ。

それにこの頃からだったような気がするぜ。
アリスの 『ウリウリウリー』 が始まったの。

まぁ、どーでもいい事なんだヶどょ。

そんな事よっか。
どしたのかなぁ、メリーちゃん。
朝も来なかったしな~。
涼しくなったら来るかな~。
うん、きっと暑いから来ないんだな。
多分そうだ。
俺様だって来たくて来たわけじゃないもんな。
仕方なしだぜ、仕方なし。
家じゃ、ターザンの雄叫びだもんな。
ターザンの雄叫び。
そぅ。
ターザン美琴の雄叫び。

お!?

これ良(い)いな。

『ターザン美琴』

うん、これ良いぞ。

『ターザン美琴』

うん、中々だ。

ってまぁ、つまんねー事感心しててもな~。
どーすっかな~。
ここいてもアッチーだけだし。
メリーちゃん来そうにねぇし。
かといって、家帰ってもな~。
家帰ってもうるせぇだヶだし。
どーすっかな~。
アッチーけどもうチョッとだけここいて時間潰すか。
うん、そうだそうだ、そうしよう。
ベンチの下ならチョッピリ涼しいし。

しっかし、今日は暑い。
だから、だ~れも来ない。
人間様もだが猫様もだ。

オレ様山公園はこのあたりに住む猫達の溜まり場でもある。
つまり、オレ様山公園では 『猫の集会が行われる』 という事だ。
だが、我輩は一度もその集会に参加した事がない。
というのも、我輩が近付くとみ~んな一斉に逃げてしまうからだ。
蜘蛛の子を散らしたように。
ナゼか我輩は嫌われているらしい。
というより、ナゼだか分からないがみんな我輩を恐れているみたいだ。
『いじめっ子』 つー分けでもねぇのにょ、我輩。

ナゼだ?

ナゾだ!?

ただ、メリーちゃんだけが我輩を恐れない。
そのメリーちゃんが来ない。
だから心配だ。
なんつっても我輩のたった一人の理解者、否、たった一匹の理解猫。

の!?

メリーちゃんだからな。
だからもうチョッと待って。
そんで来なかったら、夕方涼しくなってから又来よう。

うん、そうだそうだ、そうしよう。




第十八話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十七話

第十七話




「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

何だ何だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ何だ!?
何だ!?

「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

又だ又だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ何だ!?
何だ!?

「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

こ、これは!?

みー、こー、とー、だー!!

チッキショー!!
俺様、折角、良(い)い気持ちで寝てんのにー。
ね、寝込みを襲いやがったぜー。
寝込みをょー。

あ!?

これ洒落ね、洒落。
『寝込み』 んとこ。
寝込み = 猫み

 ???

ま、どうでも良い事なんだヶどょ。

しっかし、スッゲー声だ。
ターザンの雄叫びだ。
目覚まし時計の 『チリチリ』 なんて目じゃねぇぐれぇだ。

「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

何だ何だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ何だ!?
何だ!?

チッ!!

ま~た、反応しちまったぜ。
第3波が来ると分かってんだヶどもょ。
そんでも反応しちまうぜ。
『脊髄反射』
ってヤツだ。

美琴は今、お歌のお稽古をしている。
否、正確には 『声楽の練習』 と言うべきか。

正確(せいかく) ≒ 声楽(せいがく)

これ↑分かってくれたか、これ?
ホントは 『声楽の練習』 つーよっか 『発声練習』 つった方が正しいんだヶどもょ。
発声だとなぁ。
うん、発声だとなぁ。

正確 ≠ 発声

だもんな。
だからな。
だから 『声楽』。

俺様、結構好きでょ、こういうの。
つまり何だぁ。

『駄洒落(だじゃれ) = 今、俺様的に流行ってる』

つー事。

これ迄もこれからも。
時々こういうの入れっから、ヨ・ロ・ピ・コ。

ところで美琴だが、発声練習は 『客の間』 でする。
それも窓を全部閉め切って。
雨戸もだ。
声がでか過ぎて近所迷惑になるからだ。
普段は学校の音楽室で練習してるんだが、今は夏休みなので教室を自由に使えないらしい。
苦肉の策だ。

「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

何だ何だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ何だ!?
何だ!?

あ~ぁ、又、脊髄反射しちまったじゃねぇか。
これじゃもう昼寝はムリだな。

つー、まー、りー、・・・

無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

だな。
しかたねぇ、外行くかぁ、外。
オレ様山公園に。

そんな訳で・・・。

ジャン!!

俺様山公園参上。

しか~~~し、

あじーーー!!
あじーよ~~~!!
あじーーー!!
日陰はどこだー!?
どこだ日陰はー!?

今、午後2時前だ。
一番暑い時間だ。
こ~んな時間に外出しなきゃなんねぇなんてょ~、つったく。
な~んて、つい言ってみたくなる可哀想な、おー、れー、さー、まー、であった。
なんて言ってる場合じゃねぇ。
日陰日陰、日陰ん中、入んなきゃ。

オレ様山公園には大きな木が何本か植えてある。
それぞれの木の下にはベンチがある。
だからベンチは木陰になる。
涼しい時はいつもマダム達が占拠している。
ほとんど全部だ。

で!?

マダム達だがやる事はいつも決まっている。
どうでもいい世間話か、お互いの持ち物の褒めっこだ。
それも感心しちまうぐれぇ白々し~く。
本気じゃないのが良っく分かる。
聞いてて歯が浮きそうだ。
一方、ソイツらのガキ共は砂場やブランコなんかで勝手に遊んでいる。
結構ワイルドだ。

我輩が公園で日向ぼっこをしていると、たまにガキが触りに来る。
我輩は誰かに体を触られるのが大っ嫌いだ。
だからすぐ逃げる。
だが、今日みたいに暑い日はさすがにガキもマダムもいない。
いてもチョッとだ。
だからベンチは空いている。
そしてそのベンチの下は、木陰の日陰でダブルで涼しい・・・筈はない。

で!?

結局。
言いたくねぇんだヶどょー。
やっぱりこうなる。

あじーーー!!
あじーよ~~~!!
あじーーー!!




第十七話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十六話

第十六話




あじーーー!!
あじーよ~~~!!
あじーーー!!

アリスの部屋は暑くてたまらん。
部屋の窓は開いてっけど、クーラー利いてねーからアッチーぜ、全く。
やっぱリビングはいいよなークーラー利いてて。

お!?

美琴のヤツ、まだソーメン食ってやがんぞ。
部屋の隅っこ行って寝よっと。
美琴に見らんねぇようにな。

オットー!?

ここで一つ注意しとかねぇとな。
このブログでは、今は 『平成18年8月半ばチョッと前の東京』 つー設定になっている。
だから最近読み始めたキミ。

「この頃、涼しいじゃねぇか」

な~んて言ゎねぇように。

暑いんだ!!

そぅ。
今は非常に、

「あじーーー!! あじーよ~~~!! あじーーー!!」

なのだ。
まぁ、一応断って置くぞ。
これも親切心ってヤツだ。
親切心ってヤツな。
って言ってもチョッとしかいねぇんだヶどょ、読者のヤツらって。

「お!? ポチじゃねぇか」

チッ。

みっかっちまたかー。

「お前、二階行ったんじゃなかったのか~? お姉ちゃんの部屋」

あぁ、行ったょ。
悪(わり)ぃか?

「おぅおぅおぅ、ポチ」

何だょ?

「暑かったんだろ」

え!?

な、何で分かんだ、何で?

「お前、ホ~ント分かりやすい猫だなぁ」

そ、そうか。
お、俺様そんなに分かりやすいか?
なんか同(おんな)じ事、さっきママさんにも言われたような気がするぞ。

「おい、バカ猫!!」

何だょ?

「邪魔んなんねぇように隅っこ行ってろょ」

言われなくったって分かってるょ、そんぐれぇ。
チッキショー!?
一々ムカつくヤツだぜ。
ほら、隅っこだ!!
ここなら文句ねぇだろ、ここなら。
そんな事よっか。
おい、美琴!!
俺様に座布団ぐれぇ出したらどうだ、座布団ぐれぇ。
アリスならすぐ持って来てくれんぞ。
こんな感じで。

「はい、ポチ。 座布団だょ。 床の上で寝ると体に良くないょ。 だから座布団の上で寝ようね。 はい、ポチ。 座布団」

アリスならな、アリスなら。

「おい、ポチ」

何だょ?

「ほら、座布団だ。 体にかけて寝ろ。 風邪ひかねぇようにな」

(ドサッ!!)

う!?

こ、このアマー!!
お、俺様に座布団乗っけやがったなー!!
お、重てぇじゃねぇか。
こ~んな重てぇもん掛けて寝てたら、寝苦しくって眠れる分けねぇだろ。
そんな事も分かんねぇのか。

しっかし、意地の悪(わり)ぃやっちゃなー、オメーってヤツゎょー。
ホ~ント感心しちまうぜ、その意地の悪さ。
ホ~ント。

あ!?

ピッ、コーーーーーン!!
そうか!?
閃いちまったぜ。
この上に乗りゃ良いんだ、この上に。

ヨッコラショっとー。

おぅ、気持ちいいぜ、楽だし。
いゃ~、良(い)いもんですなぁ、クーラーの利いた部屋で座布団の上で寝るのは。
いゃ~、実に良いもんですなぁ。
お陰で快眠できそうですゎ。
お陰で。

ん!?

お・か・げ・?
誰の?
美琴の?

『みー、こー、とー、のー、おー、かー、げー、?』

美琴のヤツがわざわざ座布団持って来てくれたってか、俺様のために。
ウッソだろ。

・・・。

でも、現実にここに座布団があるぜ、現実に。

・・・。

つー事は・・・。

美琴って、もしかしてこの俺様に、ツ、ン、デ、レ?

・・・。

まっさかな。
そんな事あるわきゃねぇょな、あるわきゃぁ。
あの美琴がこの俺様にツンデレ?
ないない。

・・・。

あの美琴が?
この俺様に?
ツー、ンー、デー、レー?

・・・。

ないない。

・・・。

でも、もしあったら?

・・・。

もしあったら?

おい、美琴!!
オメぇもしかして、俺様のためにこの座布団わざわ・・・

「バカ猫」

へ!?

やっぱ、オメぇはやなヤツだーーーーー!!!!!




第十六話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十五話

第十五話




(ズズズズズッ、クチャ、クチャ、クチャ、ゴックン)

「ママ。 このソーメン、どこの?」

「さぁ、どこのっだたかしら。 メーカー名見るの忘れちゃったゎ」

「美味しいね」

「安物なんだけどね。 スーパーで買った」

「フ~ン。 でも、美味しいょ」

「そぅ。 じゃ、きっとゆで方が良かったのね。 ママの」

「うん、そうだね。 ママのゆで方が良かったんだね。 きっと」

昼下がりの一時(ひととき)。
何気ない親子の会話だ。
良(い)い感じだ。

美琴は素直だ。
パパさん、ママさん、アリスと話してる時だヶは。
だが、俺様には凄~く凄~くやなヤツだ。

ナゼだ?

お!!

美琴がこっち向いたぞ。

「おぅおぅ、ポチ」

何だょ?

「さっきから、な~にジロジロ見てんだょ」

見てちゃ悪(わり)ぃのかょ?

「気になんだろー」

そりゃオメェ、自意識過剰ってもんだ。

「女の子が物食ってる時にジロジロ見るのはマナー違反なんだぞ。 知らねぇのか?」

知らねぇょ、そんな事。
ヶど、良(い)いじゃねぇか。
午後の一時の 『家族の団欒』 じゃなかった 『親子水入らずのナイスな会話』。
見てたって。

見てちゃ悪ぃんか?
ん?
見てちゃ。

第一、女の子がそんな物の言い方すんじゃねぇょ。
オメェの方がよっぽどマナー違反なんじゃねぇのか。
そんな口の利き方しってと、嫁いけねぇぞ~。
ん?
良(い)いのか行けなくて?
ん?
良いのか?

「あー、気が散る~!? あっち行けー!!」

あ!?

こ、このアマー!!
こ、この俺様に丸めたティッシュ投げ付けやがったなー!!

う!?

き、汚ったねー!!
このティッシュ、さっきオメェがチンしたティッシュじゃねか。
俺様、ちゃんと見てたんだぞー、オメェがチンしてっとこ。

チッキショー。
オメぇってヤツはょー、オメぇってヤツはょー、オメぇってヤツはょー。
ホ~~~ントやなヤツだぜ、ホ~ント。

パンツはかねぇで俺様、跨(また)ぐゎ。
チンしたティッシュ投げつけるゎ。
やんなちゃうぜ、全く。

「早くあっち行けー!!」

「まぁまぁ、美琴。 ポチが可哀想ょ、そんな事したら。 それに何!? その言葉使い、アンタ女の子なんだからね」

「だってママ。 せっかくママが作ってくれた美味しいソーメン。 アレに見られながらだと不味くなっちゃうんだもん。 早くあっち行けー!!」

ア、アレって。
俺様の事、物みてぇに言いやがって。
チッキショー!!
あっち行きゃ良いんだろ、あっち行きゃ。
はいはい、行きますょ、あっち。
行けば良いんでしょ、行けば。
はいはい、オメェ様のご希望通りにな。
行きますょ、あっち。

美琴のウンコたれー!!
オメェなんか死んじめー!!
チッキショー!!
ホントにやなヤツだぜ、美琴ってヤツはょ~。

でも、まぁ、ミルクは飲めなかったが、さっき飯も食った事だし。
アリスの部屋行って昼寝でもすっか。
その後、オレ様山公園行ってメリーちゃんとデートだ。
メリーちゃん来るかなぁ。
来ると良いなぁ。

さ!?

アリスのお部屋でお昼寝お昼寝っと。

アリスの部屋は洋間だ、前にも言ったが。
そしてアリスは女の子だ。
だから外出する時はドアは閉めるはずだ。
普通、女の子はそうする。
男だってそうするだろう?
事実、美琴は閉めている。
だが、アリスは閉めない。

ナゼか?

我輩のためだ。

我輩には昼寝が必要な事をアリスは知っている。
そしてドアが開いてると、我輩がアリスのベッドでお昼寝するのも知っている。
だからアリスはドアを閉めない。
我輩が出入り出来るようにチョッとだけ開けてくれている。
これがアリスと美琴の違いだ。
そして決定的な違いでもある。
同(おんな)じ親から生まれてこんなに違うもんかと、時々思う。
ホ~ントそう思う。

ハッ!?
そうだ!?

今、このブログを読んでいる 『粋狂』 なキミ。
そうだ、キミだキミ。
キミもそう思ってねぇか?
否、そう思っているに相違ない。
な。
違うか?
ん?
違うか?
違わねぇょな?

・・・。

ウム。
そうだ。
それが普通だ。
そぅ、普通だ。

ホ~~~ント違うんだぜこの二人。
やんなっちゃう位にな。
ま、どうでも良(い)い事なんだヶもどょ。

そんな事よっか、早く二階行って・・・。
アリスのお部屋行って・・・。
お昼寝お昼寝っとー。
そぅ。
昼寝だ昼寝だ。

アリスのお部屋でお昼寝だ~~~!!




第十五話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十四話

第十四話




「あ~、気持ち良かった~」

お!?

美琴が風呂から出てきたぞ。

何だ、裸じゃねぇか。
体にバスタオル巻いてるだヶだぞ。
変なおっさん来たらどうすんだ?
ん?
変なおっさん来たら?

お!?

冷蔵庫からミルク出したぞ。
グラスに注いで飲み始めたぞ。
美味そうじゃねぇか。

「ニャー」 (美琴~。 俺様にもミルクくれょ)

「オヮ、アー!? あ~、ビックリした!? 何だ、ポチか」

「ニャー」 (『何だ、ポチか』 じゃねぇょ。 ミルクくれょ、ミルク。 俺様にも)

「おぅおぅおぅ、ポチ。 いきなり何だ? 背後から乙女のアンヨに体こすり付けて。 え~? このスケベ猫」

「ニャー」 (なぁ、美琴~。 そんな事言わねぇで、ミルクくれょ、ミルク)

「ミルクか? ん? お前ミルク欲しいんか? ん? うめぇぞ~。 ホレ、ホレ、ホレ」

「ニャー、ニャー、ニャー」 (お、お、お)

チッキショー、俺様の鼻先でこれ見よがしにミルク見せびらかせやがって!!

「ホレ、ホレ、ホレ」

「ニャー、ニャー、ニャー」 (お、お、お)

チッキショー、又やりやがって!!

「ホレ、ホレ、ホレ。 うめぇぞ~」

「ニャー、ニャー、ニャー」 (なぁ、そんなじらさないでくれょ、ミルク)

「ホレ、ホレ、ホレ。 って、やんねぇょ。 誰がやるかお前なんかに」

「ニャー、ニャー、ニャー」 (そ、そんな事言わねぇでくれょ、ミルク。 なぁ、くれょ)

「やーだょ。 おとつい来な。 あー、うめっ」

あ!?

こ、これ見よがしにゴクゴクと。
アァ―!?
ぜ、全部飲みやがった。
ゴクゴクと。
チッキショウー、何てヤツだ!!
下痢すんぞ。
パパさんみたいに。

「あ~、美味かった」

しっかしオメェ、ホ~~~ントやなヤツだな。
オメぇみてぇなヤツは変なおっさんに裸見られちまえ! チッキショー!!

「お、何だ、ポチ。 その反抗的な目は? ん? ミルクが欲しきゃお姉ちゃんにもらえ、お姉ちゃんに。 お前拾ってきたのお姉ちゃんなんだからな」

あぁ、分かったょ。
アリスにもらうょ、アリスに。
アリスが帰って来たらな。

「しっかし、お前。 ホ~~~ントバカ猫だなぁ。 関心すんぞ、あんまりバカなんで」

バカで悪かったな、バカで。

「覚えてないのか? 今朝も同(おんな)じ事やったの。 ん?」

え!?

そ、そうか? 
今朝も同じ事やったんか、今朝も?
覚えてないぞ、全く。

くどい様だが、我輩は猫だ。
猫は記憶力が悪い。
つまり我輩は記憶力が悪い。
“三段論法”
ってヤツだ。

「おらおらおら、邪魔なんだょ~」

お!?

チ、チキショー!!
ま、跨(また)いだな~!?
このアマー!!
俺様、跨ぐんじゃねー!!

おい、美琴!!
オメェ、パンツはいてねぇじゃねぇか。
アソコが丸見えだぞ、アソコが。

「あ!? 今お前、アタシのアソコ見たろ」

見たんじゃねぇょ、見えちまったんだょ。
そんな見たくもねぇもん。

「この、どスケベ猫ー!!」

ど、どスケベ猫って!?
オ、オメェが悪いんだろー、オメェが~。
俺様、跨ぎやがるから。
コッチが言いてぇぐれぇだぜ。
そんな小汚(こきたね)ぇもん見せんじゃねぇょ、バ~カ!!
って。

「おらー、ポチー!!」

コ、コラー!!
止めろ、美琴ー!!
何する気だ?
お、俺様、仰向けにして。
俺様の両足つかんで、何する気だ?

コ、コラー!!
お、俺様の股開くんじゃねー。

コ、コラー!!
や、止めろ、美琴ー!!
お、俺様のアソコ見るんじゃねー!!
は、恥ずかしいじゃねぇか。

「良し良し。 何ともなってねぇな」

あったりめぇだろ。

「おぅおぅおぅ、ポチ」

何だよ?

「スケベな想像はしてねぇよーだな」

するわけねぇだろ。

「してなきゃ良(い)い」

し、してなきゃ良いって・・・。
オ、オメェ、あ、頭おかしいんとちゃうか?
どっこの世界に人間の女のアソコ見て、モッコリする猫がいると思ってんだ?
オメェ、ぜってぇ頭おかしいんとちゃうか?

「美琴ー。 ソーメン出来たわょ~」

「は~い、ママ~」

お!?

台所からママさん来たぞ。

「あらやだ、美琴。 なんてカッコしてるの。 裸じゃない。 誰か来たらどーするの。 早く服着てらしゃい」

「だってママ。 コイツがスケベなんだも」

コ、コイツがスケベって。

「コイツったら、今、アタシのアソコ覗(のぞ)いたんだょ」

ア、アタシのアソコ覗いたって。

「まぁ、やだ、ポチったら。 そんな事したの?」

濡れ衣だー濡れ衣だー濡れ衣だー、ママさん!!
濡れ衣だー!!
マ、ママさんまで・・・。

「って、ポチがそんな事する訳ないでしょ。 早く服着てらっしゃい」

ヨッシャー!!
やっぱママさんだ。
良~、分かっとる。
うん。

「はい、ママ」

(チラッ!!)

お!?

何だ美琴!?
何か言いたそうだな?
ん?
何か?

「おぅおぅおぅ、ポチ。 覚えてろょ」

覚えてぬぇょ。
覚えてるわきゃねぇだろ。
さっき自分が言った事、もう忘れたんか?
何つったって、俺様はバカ猫だかんな。
ばー、かー、ねー、こー。
だから覚えてるわきゃねぇだろ、覚えてるわきゃ。
バ~カ。

ケケケケケ。

我輩は猫である。
猫は記憶力が悪い。
つまり我輩は記憶力が悪い。
“三段論法”
ってヤツだ。

ケケケケケ。




第十四話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十三話

第十三話




“プリマドンナ”

「この言葉にどんな印象持ってるかな? チミ達は? ナンチャッテ」

って、今回はパパさんっポイ台詞(せりふ)でのオープニングだ。

猫の俺様にとっちゃプリマって言えば、やっぱハムだよな~、ハム。
うん。

そしてこの問い掛けに、パパさんなら多分こう言う。
多分な。

『(怪しい)お風呂屋さんの名前だな』

とか、

『そんな名前の(ケバイ)ホテルがあったような、なかったような・・・。 も、勿論入った事はないぞ。 も、勿論入った事は』

わざわざ否定すると反って怪しいんだぜ、パパさん。
反ってな。
何つってもパパさん直ぐ顔に出ちまうヤツだからな。
正直もん、つーか。
間抜け、つーか。
幼稚、つーか。
何でも当てはまっちゃう所がこぇーぜ。

ま!?

そんな事より日本でプリマドンナって言ゃぁ。
そうょなぁ、クラッシクバレーの主役を指すのが一般的か?
『ジゼル』 だの 『白鳥の湖』 だのの主役のバレリーナ。
何を隠そう、この我輩もそう思っていた。

エッヘン!!

しか~~~し、

世界的にはオペラの 『歌姫』 の事を言うらしい。
俺様、最近それを知った。
美琴がパパさん達に話しているのを聞いたからだ。
その時、美琴はこう言った。

「アタシ、オペラのプリマドンナになりたいんだ」

そぅ。

『オペラのプリマドンナになる』

それが美琴の夢だ。


そして・・・


「アーアァー、アァアァ。 アーアァー、アァアァ」

何だ何だ!?
何の騒ぎだ!?
何が起こった!?
何だ!?

これが、初めて美琴の歌声を聴いたときの我輩のリアクションだ。
凄い声量だった。
まるでターザンの雄叫(おたけ)びのようだった。
ハッキリ言って、死ぬかと思ったぞ、あん時は。
全身の毛が逆立ってたからな。
あ~ゆうのを言うんだょな、 『身の毛がよだつ』 って。
そんな感じだったぜ。

ヶど、今は慣れた。
良~く聞くと、とっても上手だ。
美しく良く通る声だ。
だが、油断は禁物だ。
慣れたとはいえ、意表をつかれるとやっぱりビビル。
なんせ凄まじいからなぁ、美琴の声量。
超本格派だ。

でも、

我輩としては超本格派の美琴の歌よりも、調子っぱずれのアリスの鼻歌の方が好きだ。
アリスは今、ギターの練習をしている。
エレキギターだ。
時々、ギターを弾きながら歌っているのを聞く事がある。
ハッキリ言って下手糞だ。

ところが、

あんまり上手くないギターの伴奏。
微妙に外れた歌声。
しかし素直な歌い方。
澄んだ可愛い声。

これ等がまとまると、ある種何とも言えない “味わい” が出て来るから不思議だ。
“ハーモニー” ってヤツか???
上手く言えないが、実に下手糞なんだが又聞きたい。
それも何度も。
そんな感じだ。
こういう言い方が許されるなら、これが一番ピッタリ来る。

『上手に下手糞』

だから半年先、一年後が楽しみだ。

ところで、

田原家のリビングにはピアノが置いてある。
アップライトピアノだ。
6年前の引越しの時、美琴のために新しく買い替えたという話だ。
美琴はグランドピアノが欲しかったらしい。

が、

ママさんの一言でアップライトに決まったという事だ。

「ダメょ、狭いんだから。

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ょ、狭いんだから。 アップライトで我慢しなさい」

ママさん言う時ゃ、言うからな。
きっと、 “ピシャリ!!” って感じで言ったんだろうな。
流石の美琴も何にも言えなっかったらしい所を見ると。

という訳でリビングにピアノがある。

ある日、我輩がそのピアノの横で気持ち良~く 『お・ひ・る・ね』 していた。
猫は眠るのがお仕事だからな。
と、その時だ。
例の 『ターザンの雄たけび』 が起こったのは。
そん時の我輩のリアクションがどうであったか。
そ、れ、は、

「オマエはもう、知っている」

だ。
ろ?
な?

日本には二期会やら藤原歌劇団とかいうオペラを上演する団体があるらしい。
そしてそこへは、
音大を出てから入るのか?
素人でも入れるのか?
そのどっちなのか、詳しい事は知らない。

でも、美琴は・・・。
そう、美琴は・・・。
日本ではなく本場イタリアでやりたいらしい。
だからイタリア留学を希望している。

ママさんは、

「美琴が本気なら・・・」

と前向きだ。

しかしパパさんは、

「ダメだ、ゼタ~ィダメだ!!

つー、まー、りー、・・・

『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だ!! 日本だ日本だ!! 日本で勉強しなさい。 大事な娘をイタリア男の毒牙にかけてなるものか」

と猛反対だ。

イタリア男 = ス・ケ・ベ (助平)

パパさんの認識だ。
自分がスケベだからだ。
きっと。

アリスは、

「フ~ン。 美琴、プリマになりたいんだ。 なれると良いね」

とチョッとピンボケだ。

美琴の声楽の先生は、

「美琴さんには才能があります。 本人の希望、真剣に考えてあげて良いんじゃないですか。 私の考えを申し上げるなら、日本の音大で基礎を作り、声を作ってからでも遅くはないとは思いますが。 でも本人が望むなら、一応私にもイタリアに友人がおりますからご相談に乗る事は可能ですが・・・」

と美琴の才能を高く買っている。

担任の先生は、

「お宅のお嬢さんは成績優秀ですので、芸大を目指す事をお勧めします。 いきなり海外留学それも音楽でというのは我校には前例がないので・・・」

とチョッと消極的だ。

「おぅおぅ、美琴。 オメェ、そんなに簡単にプリマになれると思ってんのか? ケッ、ボォケが。 オメェ、チョッとバッカ、世間様なめてねぇか~? うん? チョッとバッカ」

これが俺様の反応だ。

比べてもらえれば分かる。
我輩が一番正鵠(せいこく)を得ている。
猫の我輩がだ。

だろ?
違うか?
ん?
だろ?
な?

そうだ、我輩が一番だ!!
エッヘン!!

ケケケケケ。

『オペラのプリマドンナになる』

それが美琴の夢だ。




第十三話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十二話

第十二話




「ただ今ー!!」

「あら、美琴。 お帰り。 早かったのねぇ」

「うん、今日は半ドン。 あ~ぁ、お腹減った~。 ママ、ご飯」

「何にする」

「コイツと一緒じゃなかったら、何でもいい」

お!?

な、何だ、美琴。
俺様、指差して 『コイツと一緒じゃなかったら』 って。
その言い草。
第一、この俺様にはねぇのか 『ただ今ー!!』 の挨拶は。
ん?
ねぇのか?

「パンがいい? それともソーメン茹(ゆ)でようか? 暑いから」

「ウ~ン。 どーしようかな~。 ウ~ン。 ・・・。 ソーメン!!」

「じゃ、これから茹でるから、チョッと待っててね」

「うん。 あ、ママ。 アタシ、先、シャワー浴びてくる。 汗びっしょ」 

「そぅ。 じゃぁ、直ぐ出て来るのょ。 その間に茹でとくから」

「うん」

お、美琴がこっち向いてしゃがんだぞ。
俺様に顔近づけて来たぞ。
何する気だ?

「ニャ、ニャー!!」 (コ、コラ、止めろ美琴!!)

右手の人差し指で俺様の鼻先、突付くんじゃねぇー。

「おぅおぅ、ポチ」

何だょ。

「あたしゃ、これからシャワーだ」

それがどした?
勝手にシャワーすりゃ良(い)いじゃねーか。
何で俺様に断んだ?

「覗くんじゃねーぞ、このスケベ猫」

の、覗くわけねーだろ、オメェのシャワーなんか。
な~に、勘違いコイてんだ、オメェは。
な~に、勘違い。

あ!?

分かった。
さてはオメェ、この俺様に一緒に風呂入って貰いてぇんじゃねぇのか~。
ん? ちがーか?
ん? そーだろ?

嫌なこったい!!

だ~れがオメェなんかと・・・。

そんな事より。
おい、美琴。
オメェ、その “ウンコ座り” 止めた方が良いんじゃねぇのか。
その、ウ、ン、コ、す、わ、り。
パンツ丸見えだぞ、パ、ン、ツ。
つっても、見えてんのはブルマーだヶどもょ。
黒のブルマー。

“真っ黒ブルマー痴漢除けバージョン” ってか?

しっかし、オメぇなんだ~。
そんな短けぇスカートでそんな風に股開いてしゃがんじゃって。
人通りのある所でもやってんじゃねぇのか~?
そのウンコ座り。
ん?

気の毒だよなぁ、パパさんみたいな助平なオッサン。

ククククク。

目に浮かぶぜ。

ククククク。

『じょ、女子高生のパンツがー!? じょ、女子高生のパンツがー!?』

喜び勇んでオメーのスカート覗いたら。

ガ~ン!!

『ブ、ブルマーか・・・』

ガックリ。

肩落とすってか。

ケケケケケ。

おい、美琴。
ホンに罪作りなヤツだぜ、オメぇってヤツゎょー。

ケケケケケ。

「おい、ポチ。 付いて来んじゃねーぞ」

だ~れがオメェなんかに。
アリスなら喜んで付いて行っちまうヶどもょ。

ここで我輩の特技を紹介しておこう。

『我輩の特技』

そ、れ、は、

ジャーン!!

『猫掻(ねこか)き』

そぅ。
猫掻きである。
つまり我輩は泳げるという事だ。

思い返せば3年前のある日。
気が付いたら我輩はお風呂で泳いでいたのであった。
それも猫掻きで。
傍(かたわ)らではアリスが髪を洗っていた。
当時のアリスの髪は腰まで届く位長かった。
今はショートだ。
就職と同時に髪を切った。
失恋したからではない。

アリス曰く、

「長髪だとね、ポチ。 髪洗うのに時間掛かっちゃうからだょ。 だからね、ポチ。 髪切ったんだょ」

だ、そうだ。

だが、アリスには可哀そうだが我輩としては、

「失恋したから」

って言って欲しかった。
安心だからだ。

『あぁ、アリスも普通の女の子なんだな~』

そう思えるからだ。
前にも言ったが、アリスは失恋しようにも恋人が出来ない。
と、いうより作る気がない。
アリスが “キモイ女” なら話は別だ。
そぅ。
キモイ女ならな。
しかしアリスは実に可愛い。
恋人が出来ない訳がない位。
だが出来ない。

おい、アリス。 ダイジョブなんか~?
ホ~ント、俺様、心配だぞ~。
って、又ボヤいちまったぜ、つったく~。
いゃ~、その何だ~。

『アリスの事になると、つい向きになってしまう俺様がいる』

な~んてな。

ん?

待てょ、何でこんな話に・・・。

あ!?

そうかそうか。
猫掻き猫掻き。
そうだったそうだった。
猫掻き猫掻き。
猫掻きの話だったな。
うん。
猫掻き猫掻き。

つまり何だ~。
前振りが長かった割には簡単な話だ。
笑っちゃう位だ。

こうだ!!

アリスはお風呂に入る時、いつも子猫の我輩と一緒だった。
という訳だ。
今も時々一緒に入るが。
だから我輩は水が怖くない。
気が付いたら湯船でピチャピチャ泳いでいた。

ね、こ、か、き、で。

だから泳げる。
な。
簡単だったろ?
な?
笑っちゃたか?

これが我輩の特技 “猫掻き” である。
そしてこれにまつわる結構笑える話があるんだが、まぁ、それに関しては別の機会に、という事で・・・。

一方、美琴だが。

言い忘れていた。
美琴は今、夏休みの真っ最中だ。
だが、進学校に通う悲しさか?
サマースクールとかなんとかいうのがあるらしく、時々学校に行く。
大体、午前中で帰って来る。

が!?

遊ぶ時間はない。
塾とお稽古事で一日が終わる。
お稽古事はピアノ、声楽、ヴァイオリンそれにクラッシクバレーだ。
他にも何かやってるらしいが、我輩が知っているのはこれだけだ。

美琴は嫌なヤツだ。

でも、見ていて時々可哀そうになる。
全くと言っていい程、遊ぶ時間がない。
遊びたい盛りなのに。
だが、本人はそんな事は全く気にしてないみたいだ。
美琴は嫌なヤツだが、その努力には頭が下がる。
しかし、ナゼそんなに頑張るのか?
理由は簡単だ。
美琴には 『夢』 がある。
あり余る才能もある。
そして努力を惜しまない。
だからその夢が現実になる日が必ず来る。
これは我輩の直感だ。

チョッと褒め過ぎか?

ま、俺様にはどうでも良い事なんだけどもょ。
なんつっても嫌なヤツだからな、美琴は。

俺様がそんな事を考えているとは露知らず、美琴は今、鼻歌交じりでシャワーを浴びている。




第十二話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十一話

第十一話




「ほ~ら、ポチー。 ご飯だょ~」

「ニャー」 (はーい、ママさん。 今行くぜー)

今日の昼飯は “何・か・な・?” っと。
俺様の大好きなミルクか? 

そ、れ、と、も、・・・。

ガーン!!

ね、猫マンマだ!?
ご、ご飯に味噌汁かけただけの!?

「さぁ、ポチ、お食べ」

食えるかょ、こんなもん。

「ほ~ら、煮干しも入ってるょ」

頭付いてんじゃねぇか~、頭~。
俺様、嫌いなんだょ、煮干しの頭~。

「どしたの、ポチ? お腹減ってんでしょ」

あぁ、減ってるょ。

「早くお食べ。 冷えたらまずいょ」

暖かくってもまずいょ。
あ~ぁ、また猫マンマかょ~。

ママさんはご飯に味噌汁かけるだヶで、アリスみたいにカチャカチャかき混ぜるような真似はしない。
だからカチャカチャかき混ぜるアリスの猫マンマとは一味違う。
元は同じなのに。
煮干しも原型留めているし。

しか~~~し、

マー、ズー、イー!!

どっちもマズイ~~~!!

やっぱ食わなきゃなんねぇのか~、この猫マンマ。
あ~ぁ、今日は厄日だぜ、ったく。
ママさ~ん、たまにはタイとかマグロで出汁(だし)取ってくれょー。
煮干しじゃなくってさぁ。
アンコウ何てどうだ。
良いんじゃねぇか~、リッチで。

「ポチ、どしたの? 早く食べなさい」

はいはい、食べますょ。
食べりゃいいんでしょ、食べりゃ。
はいはい。

う、マズ。

しかし、所詮猫の悲しさ・・・。
というより動物の悲しさか?
腹が減ってるとまずくっても結構食っちまう。
気が付いたら、茶碗をペロペロ舐めている始末だ。
つまり全部食っちまったという事だ。
勿論、煮干しの頭は残したが。

「まぁまぁ。 ポチったら、また頭残したのね」

しょうがねぇだろ~、嫌いなんだから。
ママさんなんか、頭どころか煮干しその物だって食わねぇじゃねぇか。
チャンと見てんだぞ、チャ~ンと。
味噌汁注ぐ時、シッカリ煮干し外してんの。

「全く、しょーがないコねぇ、このコは・・・」

とか何とかブツブツ言いながらも、ママさんは我輩の食器を洗ってくれる。
やっぱママさんは、良(い)いヤツだ。

ところで我輩の食器だが、我輩の食器には名前が付いている。
というより我輩が付けたのだが。
その名も、

『オレ様茶碗』

だ。
うん、中々良いネーミングだ。
我輩は気に入っている。
しかし、アリス達はオレ様茶碗とは言わない。

こうだ!!

『ポチ皿』

・・・!?

センスねぇょな~、センス。
ネーミングの、セ、ン、ス。
ポチ皿だってょ~、ポ、チ、ざ、ら。

ウウウウウ。

何か悲しくなって来るぞ。
第一、茶碗だろー、茶碗。
皿じゃなくって。

ちゃー、わー、ん~~~。

ま、言ってもしょうがない事なんだけどょ。
それにしても、な~。

『ポチ皿』

『ポチ皿』

『ポチ皿』

ウウウウウ。

悲しいぞ。

田原家は全てがこんな調子だ。
だから周りからはおよそ芸術とは無縁のファミリーに見られている。
無理もない事だ。

ところが、田原家には思いもよらない才能が・・・。




第十一話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第十話

第十話




あ~ぁ。

もうお昼だ。
とうとうメリーちゃん来なかったなぁ。

どしたんだ?
何かあったんか?

やっぱ、下痢か?
そうだ、下痢だ!!
うん、下痢だ下痢だ。
下痢に違いない。

なら心配ない、午後には来る。
あー、良かった。
って安心したら腹減って来たぞ。
一旦、家帰って飯にしよう。
うん、飯だ飯だ、飯にしよう。

オレ様山公園の花壇から田原家まで猫の足で3秒だ。
道路を一跨ぎすれば良いだけだからな。

お!?

庭に洗濯物が。

お!?

パパさんのシャツとパンツが。
チャンと真っ白になってるぞ。
パジャマもあるぞ。
こっちも綺麗だ。
ママさん洗濯したのか。
愛してるんだな、パパさんの事。

しっかし不思議だ!?

確かにパパさんは背が高い。
だから押し出しは立派だ。
そこそこ金だって稼いで来る。
だが、幼稚なヤツだ。
ウンチ漏らすヤツだ。
このママさんなら他に幾らでもいい話があったろうに。
何であんなパパさんと?

小指と小指が赤い糸?

そんな美しい話か~!?
あんなパパさんとこのママさんが。

ちがーう!! ちがーう!! ゼタ~ィ、ちがーう!!

こりゃ、前世の因縁だわな。
そう、因縁。

ぜ・ん・せ・の・イ・ン・ネ・ン・!!

『天は今世(こんせ)でママさんに、パパさんという “試練” を与えた』 ってか!?

そうだそうだ、そうに相違ない。
で、なきゃぁ、あのパパさんにこのママさんが・・・。

有得ん!! 有得ん!! ゼタ~ィ、有得ん!!

「あら、ポチ!! 帰ってたの?」

うん。

「お。 元気ないぞー」

そんな事ねーょ。

「さてはメリーちゃんに会えなかったなぁ」

う!?

な、何で分かっちまうんだ? 何で?

「どうだポチ~、図星だろー。 ン?」

うん、図星だ。

ママさんは勘がいい。
それも異常な程だ。
時々ドキッとさせられる。
否、しょっちゅうドキッとだ。

「全くオマエってヤツは、ホント分かり易い猫だ」

え!?

そ、そうかぁ?
お、俺様そんなに分かり易いかぁ?

「ほれ、ポチー。 ウリウリウリー、ウリウリウリー」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (う!? そ、その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの止めてくれ)

「高い高い高~い。 高い高い高~い」

「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高~い」 つぅーのも止めてくれ。 お、俺様の “アソコ” がママさんの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇーか)

ア、アリスと同じ事すんじゃねーょ、ママさ~ん。
い、いっくら若く見えるからって、ママさん歳なんだぜー、と、し。
こ、子供っぽい真似すんじゃねーょ、子供っぽい真似ー。
コイツらやっぱ親子だぜ。
全く同(おんな)じ事しやがる。

否!?

ママさんはアリス以上だ。
その後、我輩を軽く投げ上げたり、頬擦りしたり。
我輩の両手を取り、二本足で立たせ、フォークダンスの真似事させたりと軽く10分はいじくり回す。

“ママさん流猫の可愛がり方”

らしい。

が!?

非常に迷惑だ!!

冗談じゃねーぜ、ママさん。
俺様は玩具じゃねーんだからょ、俺様使って遊ぼうとすんじゃねーょ。
ママさん直ぐ俺様投げ上げんじゃねーか、あれって一瞬スゲー緊張すんだぜ。
ママさんは楽しいかも知んねえけどょ~。
命懸けなんだぜ、こっちゎー。
命懸け。
分かる? 

い・の・ち・が・け・!!

「おいで、ポチ。 ご飯だよ。 お腹空いてんだろ?」

「にゃー」(うん)

ママさんは異常に勘が良い。




第十話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第九話

第九話




あれ~?

おかしいなぁ、メリーちゃん今日は来てないぞ。
いつもなら、俺様より先にオレ様山公園来てんのに。

ナゼだ? 

ナンカあったんか?
下痢でもしたんか?

メリーちゃんは早起きだ。
というより、山田さん家が早い。
何をしている家か知らないが、7時前にはもう食事は終わっている。
だから大体いつも、メリーちゃんの方が先にオレ様山公園に来ている。

我が田原家も決して遅くはないんだが。

ま、たまにはこういう日があってもいっか。
陽気もいい事だし日向ぼっこでもして待つとするか。

ファ~、眠い。

前にも言ったがオレ様山公園は、わりとリッチな住宅街の一角にある。
だから人通りも多くはない。
特に朝なんかは、誰も来ないなんて事はザラだ。
昼頃からようやく人が集まりだす。
大体が近所の子連れのママさん達だ。
つーか、マダム達だ。
それも見事 “公園デビュー” を済ませたマダム達だ。
あの地獄の公園デビューを既に済ませた・・・な。

たまに新参者が来る。
一目でそれと分かる。
オドオドしているからだ。
勿論、周りからは離れている。
マダムの世界って大変なんだな~。
見ていてツクヅクそう思う。
オイラ猫でよかったぜ。
ホントそう思う。
素直な実感だ。

で!?

マダム達だが、やる事はいつも決まっている。
どうでもいい世間話か、お互いの持ち物の褒めっこだ。
それも白々しく。
本気じゃないのが良く分かる。
聞いてて歯が浮きそうだ。
でも、この公園での唯一の救いは、主(ぬし)が居ない事だ。
そう。
この公園には、主が居ない。
つまり “お局様” が居ないという事だ。
だからほかの公園と違って陰険な雰囲気は余り感じられない。
もっとも、我輩は “ほかの公園” とやらは知らないのだが。

で!?

マダム達がペチャクチャやってる間子供達はどうしているかといえば、
砂場やブランコなんかで遊んでいる。

オレ様山公園には他にジャングルジムや鉄棒、滑り台等がある。
一応フル装備だ。
規模のわりにはな。
トイレだってある。
もちろん人間様用だ。
猫様用ではない。
猫様用は花壇だ。
否、花壇だった昨日までは。

オレ様山公園の大きさはといえば、そうだなぁ、田原家十軒分位かな~。
適当に想像して欲しい。

・・・。

そうだ、その位だ!?

今アンタが想像した、その位の大きさだ。
ご協力ありがとう。

そこに猫とマダム達とその子供達がいるという訳だ。
犬を連れてくるヤツはいない。
子供がいるからだと思う。
暗黙の了解があるらしい。
これは嬉しい事だ。
何といっても犬は天敵だからな~、我輩の。

我輩が砂場で日向ぼっこをしていると、たまに子供が触りに来る。
我輩は誰かに体を触られるのが大っ嫌いだ。
だからすぐ逃げる。
パパさんやママさんに触られるのもいやな位だ。
でも、食い物の為にいつも我慢している。
というのも、パパさんもママさんも猫を抱くのが大好きだからだ。
二人とも我輩を見るとすぐいじくり回そうとする。
暑い日なんかたまったもんじゃない。

美琴に至っては鳥肌が立つ位嫌だ。
もっとも美琴は猫が嫌いだ。
だから我輩を触るような真似は絶対にしない。
これはいい事だ。
ホントは猫じゃなく、我輩が嫌いなだけかも知れないが。

だが、アリスは。
そう、アリスだけは例外だ。
触られても不快感はない。
むしろ嬉しい位だ。
不思議な話だ。
もっとも、 「ウリウリウリー」 と 「高い高い高~い」 は別だが。

アリスは優しい子だ。
そして猫が好きだ。
我輩を見ると直ぐに抱き上げ、撫でてくれる。
我輩も気持ちよくて、ついゴロゴロ喉を鳴らしてしまう。
完全武装解除。
無防備だ。

休みの日などは何時も、我輩を膝の上乗せてノミを捕ってくれる。
これは嬉しい。
ママさんも時々捕ってくれるんで感謝しているんだが、やっぱりアリスの方がいい。

捕ったノミを両手の親指の爪でプチプチ潰しながら、アリスはいつもペチャクチャ独り言を言う。
否、我輩に話し掛けて来る。
我輩は目を瞑ってゴロゴロ喉を鳴らしながら、それを聞いている。

こんな調子だ。

「あのね、ポチ。
 あたしさぁ、今度ギターのアンプ買うんだょ。
 アンプ無いと音小っちゃくってさ。
 良く聴こえないんだょね~。
 夜中なら良いんだけどさ。
 昼間はね、昼間は外うるさくって良く聴こえないから。
 だから買うんだょ。
 お友達に相談したら “ローランドのアンプ” が良いんだって。
 でもねポチ。
 インターネットで調べたら10月に新しいのが出るんだって、だからそれ迄買えないんだょ。
 10月っていったらさ、あと一ヶ月以上あるんだー。
 長いよね、一ヶ月って。
 それ迄我慢しなくちゃなんないのか~。
 あ~ぁ、早く10月なんないかなぁ。
 ねぇ、ポチ。
 あたし絶対、上手になってみせるからね。
 上手んなったらさ、ポチ。
 大塚愛みたいにギター弾きながら歌うんだょ。
 ポチにも聴かせて上げるからね」

「ゴロニャー」 (うん、楽しみにしてるぜアリス。頑張れよ)

アリスは今 “エレキギター” に凝っている。




第九話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第八話

第八話




「ここは公園である。 名前はまだない」

って、ダサいフレーズで出ちまったぜ。
明治時代なら良かったんだろうけどな、こんなんでも。
今じゃチョッとな、うん、今じゃチョッとだ。
ま、どうでもいい事なんだヶどもょ。

と!?

いう訳で、我輩が今いる場所は田原家の道を挟んで真ん前にある公園だ。
初めにも言ったようにこの公園に名前はない。
仮にあっても、

『東京都なんとか市なんとか町なんとか番地公園』

だ。
ちなみに我が田原家は東京都下にある。
だが、この公園 『・・・なんとか番地公園』 では面白くないので、我輩はこう呼んでいる。

『オレ様山公園』

そう。

『オレ様山公園』

名前の由来はパパさんだ。
パパさん、時々 『西郷山公園』 (東京都目黒区にある) に行くらしい。
仕事で近くに行く事があって、たまに立ち寄るそうだ。
パパさんお気に入りの公園だそうだ。
よくママさん達にその話をする。
我輩も横で聞いている。
だからチョッとアレンジさせて貰った。

『オレ様山公園』

うん、中々いい響きだ。

『オレ様山公園』

うん、中々。


全く関係ないが東京都新宿区には、

『おとめ山公園』

というマイナーな公園もある。

「メジャーだ!!」

地元の人達はそうほざく。
だが、マイナーだ。
誰も知らない。
そう、誰も。

さて、この公園から見た我が田原家だが、まぁまぁの造りだ。
決して豪邸ではない。
が、
この辺りはそこそこの人達が住んで居る。
だから割りとリッチな造りの家が多い。
その中にあって見劣りはしない。

白いお家だ。
築25年以上の中古らしいが、詳しい事は知らない。
6年前、パパさんが儲けた金で買ったらしい、バイアグラで儲けた金だ。
我輩が来る3年前の話だそうだ。

この家だが、アリスはとても気に入っている。
でも、ママさんと美琴は好きではないらしい。
というより、この場所が気に入らないようだ。
ホントは二人とも、それこそ西郷山公園の有る目黒区青葉台や港区白金台辺りに住みたいらしい。

白金台といゃー 『シロガネーゼ』 で有名だ。
シロガネーゼか。
うん、ママさんや美琴にはシロガネーゼという言葉がピッタリだ。
二人とも超美人だし、上品だし、スタイル良(い)いし。

だが、一番ピッタリ来るのはアリスだ。
確かに、ママさんや美琴と比べるとアリスは背が低い。
スタイルという点ではこの二人に見劣りする。
でも、アリスはこの二人をはるかに凌ぐ物を持っている。
それは “気品” だ。
天性の “気品” だ。
それに、なんといってもアリスは可愛い。
前にも言ったが、守ってやりたくなるような女の子だ。
しかし、恋人は出来ない。

不思議だ?

本人も欲しがっている様子はない。

ナゼだ?

だからチョッと心配だ。
いつまでも女の子じゃないんだぜアリス。
ダイジョブか?
俺様、チョッと不安だぜ。

オットー!?

もう一人大事な人を忘れていたぜ。
パパさんだ。
パパさんはこのお家が超お気に入りだ。

「駅から20分、スーパーまで10分。 不便だー、不便だー、不便だ~~~!!」

って、ママさんや美琴にブーブー言われてもお構いなし。

「田原さんちの白いお城。 ナンチャッテ、ナンチャッテ、ナンチャッテ」

ナンゾとうそぶいてる。

「なーなー、ポチ。 田原さんちの白いお城。 お茶目でいい名前だよな、お茶目で」

お、俺様に振るんじゃねーょ、俺様に。
第一どこがお茶目だ?
ん?
どこが?

いつもこれだ。
こんな調子だ。

家の名前より、そんな言い方するパパさんの方がよっぽどお茶目だ。
というより幼稚だ。
大丈夫なんかパパさん、いい歳こいてそんなに幼稚で。

「はいはい。 田原さんちの白いお城、田原さんちの白いお城」

ママさんの投げやりな反応だ。

「パパちゃんの白いお城って言ったら。 パパちゃんの・シ・ロ・イ・オ・シ・ロ」

美琴はもっとだ。

二人とももうチッと愛着持った方がいいんじゃねぇか。
住めば都って言うじゃねぇか、住めば都って。
確かに、不便は不便なんだけどもょ。
ま、猫の俺様には関係ねぇか。

だが、ママさんも美琴もパパさんがいない時はそうは言わない。

こうだ!!

『バイアグラ・ハウス』

バイアグラ・ハウスか~。
そんな名前で呼んじゃ、家が可哀そうじゃねぇか~、この家が~。

そして、この家に関していうならパパさんの味方はアリスだヶだ。
もっともそのアリスも、田原さんちの白いお城とは言わない。

夢見る夢子の夢見るアリスは、夢見る夢子の夢見るアリスらしい名前を付けている。

そう、その名も・・・

『アリスのお家』




第八話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第七話

第七話




良し!!

ミルクも飲んだ、ウンチも済んだ。
さぁ、公園でも行ってくっとすっか。
メリーちゃん待っててね~、今行くからね~。

「あら、ポチ」

「にゃー」 (何だいママさん)

「又、公園行くのね? メリーちゃんに会いに」

う!?

マ、ママさん知ってたんか。

「駄目よ、エッチな事しちゃ」

エ、エッチな事って。
そ、そんなにハッキリ言うんじゃねーよママさん。
は、恥ずかしいじゃねーか。

「メリーちゃんは山田さんご自慢の血統書付き猫なんだからね」

知ってるよ、そん位。

「オマエは捨てられてた雑種。 それも生ゴミと一緒に」

え!?

な、何!?
生ゴミと一緒に!?

俺様、生ゴミと一緒に捨てられてたんか?
つー事はゴミ捨て場にか?
なんてこったい!?

「だからメリーちゃんに変な事しちゃダメなのょ。


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

なのょ。 分かったわね?」

お!?

それってママさん聞き捨てなんねーな。
そういうのキャベツ じゃなくって 差別って言うんじゃねーのか、サー、ベー、ツー。
人権団体に訴えられんぞ、ママさん。
って、忘れてた。 
俺様、猫だった。
猫にゃ人権はねーよな、人権は。

チッキショー!!

悔しいぜ。

「それと花壇にウンチしちゃ駄目ょ」

え!?

そ、それも知ってたんか。
でもょーママさん、いいんじゃねーかウンチは。
肥やしじゃん。
な。
肥やし。

「まぁ、オマエがしたんじゃないとは思うヶど」

俺様だょ。

チョッと我慢出来なくってさぁ、やっちまったんょ~。
でもょーママさん。
肥やしじゃん。
な。
肥やし。

かー、だー、んー、のー、こー、やー、し~~~。

だから良(い)いんじゃねぇーかぁ、チョッとぐれぇ。

「此間(こないだ)、子供が踏んだって問題になってたからねぇ」

え!?

そ、そうかぁ、そういう事があったんかぁ。
いくなかったぜー。

「だから駄目よ、ウンチしちゃ」

うん。
分かったよママさん。
もうしねぇょ。
っていうかぁ、しねぇようにするぜ。

「な~んて、猫のオマエに言ってもムダょね。


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ょね」

ムダじゃねーょ。

「分かる訳ないもんね」

それが分かるんだょな~、ママさん。
ナゼか。

ナゼだ?

「さぁ、行っといで」

『さぁ、行っといで』 って、ママさん。
チョッと心配んなっちまったじゃねーか。
も一遍ウンチしてからにしよっと。

我輩のトイレ位置は・・・。

ここで簡単に田原家の間取りを紹介しておこう。

二階は前にも言ったが六畳、六畳、四畳半だ。
一階は十畳位の立派なキッチン付きのリビングダイニング。
L字型だ。
それに玄関、階段、バス、トイレ、洗面所がある。
玄関は吹き抜けになっている。
ここを上手にリフォームすれば二階にもトイレが出来そうだ。
それと小さい床の間付きの八畳の和室。
これは普段使ってはいない。
客間にしているからだ。
その名も 『客の間』。
そのまんまだ。
名付けの親はパパさんだ。
お茶目なパパさんが、お茶目に付けたと威張っていたが、どこがお茶目か分からない。
どこだ?
ん?
どこがお茶目だ?
教えてくれ。
ん?
どこだ?
そしてリビングの端っこに我輩のトイレがある。

さ~。

ウンチだウンチだ、ウンチしよっと。




第七話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第六話

第六話




「じゃ、ママ行って来るよ」

「はい。 行ってらっしゃい」

「おい、ポチ!! しっかり留守番するんだぞ、良いな!? ママに悪い虫が付かないようにだぞ、分かったな!? 何つってもママ美人だからな~。 パパちゃん心配~ィ。 ナンチャッテ、ナンチャッテ、ナンチャッテ。 ワハハハハハ」

「もう、パパったら。 遅刻するでしょ。 早く行きなさい」

「は~い、ママー。 じゃぁなポチ、しっかり頼むぞ、しっかりな。 うん。 ワハハハハハ」

「にゃー」 (分かったよ、パパさん。 心配いらね~ょ)

しっかし、パパさんいい歳こいてデレデレと。
見~ちゃいらんねーぜ、デレデレと。

でもょ~。
気持ち分かんねーでもねえょな~。
何つっても、ママさん美人だからな~。
スタイルいいし、ボインボインだし、肌なんかツベツベだし。
とっても45にゃ見えねーぜ。
25歳で通用すんじゃねーか。
ま、俺様にゃどうでも良い事なんだけどょ。

それよっか、まぁ、慌しいひと時だったぜ。
もう、ヘットヘト。
一日終わった気分だ。

今何時だ?
7時半かぁ。
アリスの 『ウリウリウリー』 が確か6時頃だったょな、確か。
つー事は1時間半。 たったの1時間半!?

おいおい、こんな凄いドラマがたったの1時間半で起こる家なんて他に有るのかょ。
普通ねーんじゃねーか、普通。
慌しくったってもうチットのどかだろぅ。

でもな~。
パパさんの “お漏らし” は別にしても、ここじゃ毎日(まいんち)こうだもんなぁ、ほとんど毎日(まいんち)。
つまり田原家お得意、朝の恒例行事。
まぁ、一言で言うなら何だぁ。

『田原家今日も正常運転』

ってか?

さ!?

ミルクも飲んだことだし俺様も出掛けるとするか。
何処へかって?
決まってるじゃん。
隣の公園ょ、と、な、り、の、こ、う、え、ん。

当田原家には、道を挟んで反対側にチョッとした公園がある。
そこが我輩の遊び場だ。
そこの花壇が我輩の臨時のトイレだ。
ウンチだって出来る。
勿論、ちゃんとしたトイレは田原家の中にある。
俺様専用のトイレがな。
だから公園の花壇は臨時のトイレだ。
そしてその公園はJR中央線の某駅から歩いて20分位の所に有る。
周りは閑静な住宅街だ。
しかし、これ以上は言えない。
今は個人情報保護のうるさい時代だからな。

三軒先の山田さん家の三毛猫メリーちゃん今日も来てっかなぁ?




第六話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第五話

第五話




「あ~、スキッリした」

お!?

パパさん風呂から出て来たぞ。

「あら、パパどしたの? 裸で腰にバスタオルなんか巻いて。 それに頭濡れてるじゃない」

「あぁ、チョッとな。 うん、チョッとシャワーをな。 うん。 トイレで気張ったら汗かいちゃってな。 だからチョッとシャワーをな。 うん。 チョッとシャワーを」

ククククク。

苦しい嘘を。
でも良かったなパパさん、ママさん気が付かなかったみたいで。
トイレからでた時、パパさんのパジャマあんなに臭かったのにな。

「いゃー、トイレと比べてここは冷房が効いてて、快適快適。 やっぱリビングはこうでなくっちゃな。 うん。 しっかし今年の夏は暑い。 もう8月も半ば近いのにこの暑さだ」

それは言える。
確かに今年の夏は暑い。
今年とは平成18年だ。

「パパは人一倍暑がりだから、なお更ね」

「あぁ」

「ところでパパ。 汚れた下着は?」

「うん、洗濯機に入れた」

「パジャマは?」

お!?

雲行きが。
パパさん大丈夫か、雲行きが怪しくなって来たぞ。

「え!? パジャマ」

「そ、パジャマ」

「・・・。 パ、パジャマも洗濯機。 チョ、チョッと汚れてたからな~。 うん」

「汚れてた? 変ね。 昨夜取り替えたばっかりなのにねぇ」

「え!? そ、そうなんだけどさ~。 ・・・。 あ、ほら、昨夜暑かったじゃないか、な。 だから寝汗かいちまってさ~。 汗びっしょ。 な、だから、うん。 そう、そういう事」

「フ~ン。 寝汗ね~。 昨夜、冷房効かせ過ぎて毛布被って寝てた人がいたような、いないような」

あ~ぁ、駄目だこりゃ。
ママさんの目見てみろ、笑ってるぞ。
どうするパパさん、完全にばれてるぞ。
寝汗かいたなんて言わねーで、トイレで汗びっしょで押し通しゃ良かったものを。
こういうのを自爆って言うんか?
それにしてもママさん、性格悪くねーか。 チクチクと。

「いや、その、だからな。 その~。 ・・・。 あ、そうそう、寝汗もそうなんだがな、夜トイレに起きた時にさ~、喉渇いちゃってさ~。 ジュース飲んだんだょ、ジュース。 そん時ジュースこぼしちゃってさ~。 胸にばっちりジュースのしみが。 うん」

「『胸にばっちりジュースのしみが』。 フ~ン。 そんなのあったかしらねぇ。 気が付かなかったな~」

「あ、あったんだょ。 ママが気付かなかっただヶで。 うん、そう、あったんだょ」

「フ~ン。 お尻にはあったような、なかったような」

「う!? ・・・」

プププププ。

も、もう駄目だ。
き、聞いちゃらんねー。

ククククク。

諦めろパパさん。
パパさんの勝てるような相手じゃない。
分かってた事だヶど。
考えてみりゃ~。 猫の俺様にも分かっちまう事が、しっかり者のママさんに分かんないはずねぇんだょな~。
甘かったぜ、俺様も。

「い、否! そんな事はない!! む、胸だ!? た、確かに胸にあったんだ!? 確かに胸にばっちりジュースの印!? なんちゃってなんちゃって」

お!?

パパさん開き直ってやんの。
子供だね~、全く。

「まさかその、 『確かに胸にばっちりジュースの印!? なんちゃってなんちゃって』 とやらを、そのまんま洗濯機に入れたんじゃないでしょうね」

「そ、そのまんま入れる訳ないだろー。 あんな汚い物」

「あんな汚い物?」

あ~ぁ、とうとう語るに落ちたか。

「い、いゃ。 ジュ、ジュースの印だジュースの印。 綺麗ーに綺麗ーに洗ってから入れたぞ。 跡形もない位、綺麗ーに洗ってからな」

「そう、だったら良いのょ。 それならね。 それよりパパ、早くしないと遅刻ょ」

「おぅおぅ。 そうだったそうだった。 遅刻だ遅刻だ。 急がねば」

いょっ、ママさん大人だねぇ。
この勝負ママさんの勝ちー。
って分かってた事なんだヶど。

それからが大変だ。
第二波が来て、パパさん慌ててトイレに飛び込む。
今度は大丈夫だったが、何時第三波がくるか分からない。
チョッと心配だ。
しかし、本人は全く気にしてない様子だ。
のんびりした性格とは裏腹に着替えは素早い。
この辺はアリスと全く一緒だ。
やっぱアリスはパパさんの子だったんだな~。 そう思う。

しっかし、スーツ姿のパパさんか~。
背が高いから押し出しが立派だ。
加えてハンサムだ。
映画スターみたいだ。
だが、さっきお漏らししたヤツだ。
パパさん、会社で粗相(そそう)すんじゃねーぞ~。

こんなパパさんだが、ママさんにとっては頼もしい人なのかも知れない。

「じゃ、ママ行って来るょ。 はい。 行ってらっしゃいのチューは? チュー!! チューしてくんなきゃ、ヤダー。 僕ちゃんチューして欲しいょー。 チュー」

「しょうがない人ねぇ。 はい、チュッ」

否、

ママさんにとってパパさんは・・・第3番目の子であった。




第五話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第四話

第四話




「さ、トイレでも行くとするか」

「待ってパパ、アタシが先」

「『アタシが先』 って、なぁー美琴」

「駄目ょ、パパ。 アタシが先」

「パパ、行きたいんだょ」

「大きいほうでしょ?」

「あぁ」

「だったら絶対、アタシが先」

「何で?」

「だって、パパが入った後、10分以上待たないと入れないから。 臭くて」

「『臭くて』 って、換気扇まわしゃいいじゃないか。 そんなの」

「回して10分なの」

(バタン!!)

「ちぇっ、先に入られたか~。 なんてヤツだ親不孝もんめ。 誰に似たんだー? 全く」

「アナタ」

お!?

出ました。
田原家お家芸。

「誰に似たんだ?」

「アナタ」

本日も絶好調。
いゃ~、朝から期待を裏切りませんな~。
楽しい家族だ。

でもょ、パパさん。
パパさんのトイレ、ホント臭いんだぜ。
幸か不幸かこの俺様もパパさんがトイレから出てきた瞬間に何度か遭遇したが、その臭さといったらアンタ、そりゃぁ、もう・・・。

お!?

パパさん顔色悪(わり)ぃぞ!!
どしたんだ?
何か変だぞ。

(ドンドンドンドンドン・・・)

トイレのドア叩き出したぞ。

「頼む、美琴。 は、早く出てくれ!! パパもお前が着替えてる時ミルク飲んでだなー、チョッと腹に来てんだ。 ポチにねだられんの嫌で一気飲みしてだなー」

な、何ぃー!?

そ、そういうヤツだったんか、パパさんは・・・。

苦しめ~、もっと苦しめ~。
祟りジャー、ミルクの祟りジャー。

「た、頼む、美琴。 は、早くしてくれー!!」

ヤバッ!!

パパさん、顔、青ざめたぞ。
も、もういいだろ美琴、早く出てやれ。
パパさんやばいぞ、かなりやばいぞ。

「た、頼む、美琴~。 た、頼む~。 マ、ママからも言ってくれ」

「美琴~。 早く出てあげなさいー、パパ我慢出来ないって~」

俺からも言ってやるぞ。
美琴~、早く出てやれ。
パパさん死ぬぞ。
死んだらオメェが犯人だ。

(ガチャ!!)

「あーあーあー。 トイレもゆっくり入れねーのか~。 ったく。 ホレ、パパ出たよ」

「どけ、美琴ー!!」

(バタン!!)

「まぁまぁパパったら。 美琴、突き飛ばして」

「ママー。 この家新築するなり、リフォームで2階にトイレ作るかして。 でないと毎日これだょ」

「そうねぇ」

俺様としては新築がいいと思うぞ、俺様の遊び場作ってくれんなら。

ところでママさん気付いてたかぁ?
パパさんの顔。
美琴がドア開ける直前。
パパさん “ヘブンなお顔” になってたぞ。
小声で 『ぁ、ぁ~』 ともって言ってたぞ。
ガンガレ、パパさん!!

「ママ、ちゃんと考えといてね。 行ってきまーす」

「はい、行ってらっしゃい」

おい、美琴!!

俺様にゃぁ 『行ってきまーす』 はねえのか、俺様にゃぁ?
あ~ぁ、行っちまいやがった。
俺様には挨拶なしか、なんてヤツだ。

美琴は知らない。
この朝、究極奥義 『超・親不肛門(おやふこうもん)』 を放った事を。

それにママさんは知っていたのだろうか?
パパさんがトイレから出た後、そっとシャワーを浴びに行った事を。




第四話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第三話

第三話




「あーあー。 うるせーな~。 朝っぱらから~。 ポチがどしたって~。 ポチが~」

いよいよ田原家最後の家族の登場だ。
名前は 『美琴(みこと)』 16歳。
現役女子高生だ。
はっきり言って超美人だ。
加えて八頭身のボインボインでもある。
更に成績優秀ときている。
トップクラスらしい。
それも都内有数の名門校の。
性格は姉のアリスとは全く逆で気が強い上に几帳面だ。
美琴がどういうヤツかは我輩に対する態度を見れば追々分かって頂ける事と思う。

が!?

断言しよう。
この美琴ってヤツは、超ーーーーー!!!!! やなヤツだ。
そしてコイツが二階の四畳半の住人だ。
ちなみに六畳の和室はパパさんとママさんが使っている。

「おう、美琴か。 いや、何、な~。 うん、チョッとな~。 うん、チョッとだ。 ワハハハハハ」

「『うん、チョッとな~。 うん、チョッとだ』 じゃないでしょう。 もう、パパったらポチにオナラかけたのょ」

な、何ー!?

オ、オナラかけたってー!?
こ、この俺様に、パパさんがー!?
パパさんがこの俺様に屁かけたってかー!?
ホントかー、それ~?

「そ、れ、が、またー、臭かったのょ~。 可哀そうにポチったら、もろにかけられたもんだからさ。 気絶しちゃってね」

「・・・」

「いや、なに、何だ~。 そのな、うん。 昨夜(ゆんべ)焼肉食っちまったもんからな、うん。 ワハハハハハ。 焼肉砲って訳だ。 ワハハハハハ。 うん、これは効く。 うん、これは」

チ、チッキショー!!
なんてこったい!!

「最低」

「さ、最低って。 オマエ・・・」

おぅ。
そうだそうだ美琴。
もっと言ってやれ、もっと。

お、何だ?
美琴のヤツこっちに来るぞ。
しゃがんで俺様を指差したぞ。
何する気だ?

「おぅおぅ、ポチ」

何だょ?

「気絶したってか~?」

らし~な。
悪(わり)ぃかよ。

「何で死なねんだ?」

え!?

『な、何で死なねんだ?』って・・・。
オ、オメェ、何気(なにげ)にスゲー事、軽~く言うな。

「死にゃ良かったんだ。 こんなバカ猫」

・・・。 (こ、言葉が、言葉が出ねーえ)

「大体、アタシは猫が大っ嫌いなんだょ。 お姉ちゃんと違って」

俺様もオメェが大っ嫌いだょ~。

「ったく、お姉ちゃんもお姉ちゃんだ。 こんなバカ猫拾って来るから、飼わなきゃなんなくなっちゃて」

え!?

お、俺様、拾われて来たんか?
初めて聞いたぞ、そんな話。

「今更そんな事言ってもしょうがないでしょ」

「だってママ。 コイツ、ほ~~~んと可愛くないだもん」

「アリスは可愛いって言ってるぞ」

「パパは黙ってて」

「パパも可愛いと思うがなぁ。 屁もかけられるし」

「だからパパは黙ってて!!」

「はいはい」

「そんな事より美琴、ご飯どうするの? 早く着替えてらっしゃいパジャマのまんまじゃない」

「は~い」

「ご飯にする。 パンがいい?」

「パン」

お!?

パンって言ったぞ。
つーことは、ミルクが出るじゃねーか、ミルクが。
良~し、ここは一つ美琴に甘えるとするか。
嫌だヶど。

ヨッシャ―!!

美琴に続け。
部屋のドア閉める前に入んなきゃ。

(ガチャ!!)

オットー!?
危うくセーフ。

「お!? 何だポチ。 オマエいつの間に人の部屋入ったんだ」

オメェと一緒にじゃねぇか、気が付かなかったんか。
しっかし、オメェほんとスタイル好いな~。

美琴は身長165cmはある、多分。
ママさんもその位ある。
パパさんは180cmを超える大男だ。
しかし、理由は分からないがアリスは148cmしかない。

ナゼだ?

「こら!! バカ猫。 あたしの着替えるとこ見てたのか。 このスケベ猫」

あぁ、見てたよ。
それがどーした。
しっかし、オメェそのみじけぇスカート何とかなんねぇのか?
パンツ見えちまうじゃねぇか。
今日は白か。
ベージュの方が汚れ目立たなくって良いんじゃねぇか。
ま、どうでもいい事なんだけどょ。

お!?

何だ?
真っ黒いパンツ箪笥から出したぞ。

「おい、ポチ。 これ知ってるか? これ」

知らねぇよ。

「これはブルマーっていってだな~。 パパみたいなスケベ親父にスカート覗かれてもだな~。 下着見られないために穿くもんなんだょ」

へ~、ブルマー?

そうか、そんな物が有ったんかぁ。
知らなかったぞ。
コイツも結構考えてるじゃねぇか。
しっかし、階段かなんかで下から見上げて 『見えたー!!』 と思ったら 『真っ黒ブルマーこんにちわ』 ってか。

クククククク。

ガッカリするオッサン達の顔が目の前にちらつくぜ。

クククククク。

オットー!?

忘れてたぞ、こいつに甘えんの。

「ニャー」

「な、なんだょ急に人の足に擦り寄って。 気ん持ち悪(わり)ぃな~。 外出ろ、外」

「フミャー」 (こら!? ドア開けて俺様を蹴り出すんじゃねー)

「美琴~。 仕度出来たわよ~。 何してんの~、早くしなさ~い」

「は~い」

「どけポチ。 邪魔なんだよ」

「フミャ」 (チッキショー、俺様の体を足で払うんじゃねぇ)

コイツほんとにアリスの妹か~?
それにしちゃ性格悪(わり)ぃな。
ま、階段駆け下りるとこなんか似てるっちゃ似てるか。

ところで諸君は疑問に思わんかな。
ナゼ、姉の名前が洋風の 『アリス』 で、妹が純和風の 『美琴』 かって?
実際、我輩にも良くは分からないのだが。
何でも、ママさんがルイス・キャロルの “鏡の国のアリス” が好きで、女の子なら 『アリス』、男の子なら 『ジャヴァウォック』(“鏡の国のアリス” に出てくる変なヤツ)にしたかったらしい。
でもょ~、女の子で良かったょな~、女の子で。
もし、アリスが男の子だったらジャヴァウォックだったんだぜ、ジャヴァウォック。
その名もナント 『田原ジャヴァウォック』。 

クククククク。

そんな名前付けられた日にゃ、アンタ。 反抗期んなったら 『金属バットこんにちわ』 間違いなしだわな、金属バットこんにちわ。

と。
まぁ、アリスは良いとして問題は美琴だ。
ママさんとしては上が 『アリス』 なだけに、下は 『アリサ』 とか 『アイリ』 といった名前にしたかったらしい。
ところが、何故かパパさんが異常に美琴にこだわったらしく、

「僕ちゃん、美琴が良いー!! 美琴がー!!」

とか何とか喚きながら床の上、仰向(あおむ)けんなって手足をバタつかせて半ば強引に決めたとの事だ。
まるで駄々っ子だぜー、駄々っ子。
普通、大人がやるか~、そんな事。
でもな~、パパさんお茶目だからな~。
やりそうな気もしないでもない。
っというよりパパさんならやりそうな気がする。

ウ~ム。

ちょっと怖い。

大方、初恋の相手かなんかの名前が美琴だったんでどうしても付けたかった。
まぁ、そんな所だろう。
ママさんも薄々感ずいているようだが、全く顔に出さない。
これも役者の違いか? 
どう贔屓目(ひいきめ)に見てもパパさんが勝てるような相手じゃないからなぁ~、ママさんは。

オットー!?

こんな事してる場合じゃなかったぞー。
早くしないとミルクが無くなる、我輩の大好きなミルクが。

「お!? おー、ビックリした~!? な~んだ、ポチじゃねぇか。 何だ、いきなり? 人の足に体こすり付けてんじゃねーょ、ビックリすんだろう」

「ニャー」 (美琴~。 ミルクくれょー、ミルク~)

「なんだ、お前~。 急に愛想使って? 気ん持ち悪(わり)ぃな~」

「ン? これか、これ? ン? もしかしてお前ミルク欲しいのか? ン?」

「ニャー」 (うん、欲しいんだょミルク~)

「ホレッ。 ホレホレホレッ。 美味いぞー」

「ニャー」 (な~。 そんなじらさないで、くれょミルク~)

「ホレホレホレ」

「ニャーニャーニャー」

「ホレホレホレ」

「ニャーニャーニャー」

「ホレホレホレ。 って、やんねぇょ。 誰がやるかお前なんかに」

「ニャー」 (そ、そんな事言わねぇーで、くれょミルク。 な。 くれょ~)

「やーだょ。 おとつい来な。 あ~、うめっ」

あ!?

これ見よがしにゴクゴクと。

アァー!?

ぜ、全部飲みやがった、ゴクゴクと。
チッキショウー、何てヤツだ!!
下痢すんぞ。

「あー、美味かった~!?」

しっかし、オメぇってヤツぁ、ホ~~~ントやなヤツだな~。
オメェみてぇなヤツは電車ん中で体触られちめぇ、ギラギラ脂ぎったオッサンに。
チッキショー!!

「お。 何だポチ。 その反抗的な目は? ン? ミルクが欲しきゃお姉ちゃんにもらえ、お姉ちゃんに。 お前拾ってきたのお姉ちゃんなんだからな」

「まぁまぁ美琴。 そんな意地悪して。 いいわょ、ママがやるから。 ホラ、ポチおいで」

「ニャー」 (ヨッシャー、さすがママさん)

「でもなぁ、ママ。 ポチは煮干の頭食わん猫だからなぁ。 あんまり甘やかすのもなぁ」

「パパの言う通りー!!」

「ななな。 だろ? な。 そうだよな、美琴」

そ、そんな事言うんじゃねぇょ、パパさん。
ママさんの気が変わるじゃねぇか、ママさんの気が~。

「良いじゃないの、その位」

よっ。
さすがママさん。
話が分かる。

「誰だったかしらね~。 オナラでポチ気絶させたの」

「ン? ウ~ム。 まぁ、それもそうだな。 うん。 カレーライス砲も控えてる事だしな。 うん。 ま、いっか、ワハハハハハ」

「アハハハハハ。 もう、パパったら。 いい加減にしなさい。 アハハハハハ」

「最低」

「さ、最低って。 オマエ・・・」

何なんだ、コイツらのこの会話は。
ったくコイツら~ったら、この俺様を完璧なまでに玩具(おもちゃ)にしやがって。
なんてヤツらだ、全く。

少しは動物愛護の精神はねぇのかーーーーー!!!!!

「ポチ。 おいでミルクょ」

「ニャー」 (はーい、ママさん)

猫は記憶力が悪い。




第三話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第二話

第二話




「おはよぅ」

「あらパパ。 今日、早いのねぇ」

「うん。 アリスの声で目が覚めた」

当家の主の登場だ。
名前は 『田原武(たはら・たけし)』 45歳。
都内にある小さな企画会社の取締役らしい。
が、何の会社かは良く分からない。
何年か前 “バイアグラ” で一儲けしたと自慢していたが、ブームが去ってからはさっぱりらしく最近は名刺やハンコ、それに印刷物をブローカーでやっているらしい。
又、今流行の自費出版も請け負っているとの事だが、怪しい会社だ。

性格はお人好しでのんびりしている。
アリスはこの性格を受け継いだようだ。
血筋は争えない。
良く書画を好む風流人だ。
勿論、自分でも描く。
無類のカラオケ好きで、歌は玄人裸足(くろうとはだし)だ。
大酒のみでもある。

ついでにママさんの紹介もしておこう。
名前は 『田原明子(たはら・あきこ)』 同じく45歳。
結婚前は女性なら誰でも一度は憧れる。
あの “スッチー” だ。
男も違う意味で憧れるが。

性格はしっかり者だ。
というより、かなり気が強く、ヒトの話に耳を貸さない。
早い話、頑固者である。
それに亭主以上に大酒のみだ。
ただし、悪(わり)ぃがこれをばらした事は内緒にしておいて頂きたい。
心証を害したくない。
というのも、我輩のおまんまはこのヒトがくれるからだ。

この二人の馴れ初めがどうだったかは、分からない。
我輩がこの家に来た時にはすでに子供が二人も居たのだから。
アリスの歳を考えると結婚後20年以上経っていると思われる。
まぁ、猫の目から見ても “似合いの夫婦” ではある。
もっとも、性格が逆ならもっと良(い)いんだが。

会話もこんな感じだ。

「ポチ又、煮干の頭食わなかったのか?」

「そうなのょ」

「妙な猫だ。 普通食うょなぁ~」

「多分ね。 私、猫飼ったの初めてだから分かんないヶど」

お!?

パパさんなんか言いたげにこっち見てるぞ。

「おい、ポチ。 ちょと来い」

「ニャー」 (ン? なんだなんだ? ナンカくれんのか?)

「良し良し、いい子だいい子だ、ここに座れ。 な、鼻をこっちに向けてみろ。 な、こっちだこっち。 良~し良~し。 いい子だいい子だ」

お!? 何すんだ? 

え!? オレ様の鼻をパパさんの尻につけて。

なんだなんだ?

え!? 何すんだ?

(ブッ!!)

「フミャー!!」 (ク、クッセー!!)

へ、屁ーかけやがったー!!

「ヨッシャー!! 狙い通りー。 命中ー!! ウム。 今日も元気だ屁が臭い。 な~んちゃって。 ワハハハハハ」

「アハハハハハ。 パパそんな事したらポチが可哀そうよ。 アハハハハハ」

ブヘッブヘッブヘッ。

チ、チッキショー!!

へ、屁ー、ぶっ掛けやがってー!!

ブヘッブヘッブヘッ。

な、なんてクセー屁だ!!

チ、チッキショー!!

い、一瞬飛びのくのが遅かったぜー。

く!?

め、目にしみる。

ブヘッブヘッブヘッ。

「どうだポチ? いい臭いだろー? なんつったて昨夜(ゆんべ)、焼肉食ってっからなー、焼肉をー。 どーだ~? ニンニク効いてんだろー、ニンニクー。 隠し味は生姜ってかー。 ワハハハハハ」

『ワハハハハハ』 じゃねーだろ 『ワハハハハハ』 じゃ。

お!?

め、目まいがする目まいが。
き、気が遠く遠~くなって・・・。

「わ!? やだ、パパくさぁ~い。 換気扇回ってるから臭いがこっちに来るでしょ。 しょうがないヒトなんだから~、全く。 ほんとポチもいい迷惑ょねぇ。 ねぇ、ポチ。 ・・・。 ウン!? ポチ!? ・・・? あら、パパ。 大変!! ポチ痙攣してるわょ」

「どれどれ。 お!? ホントだホントだ。 ポチのヤツ気絶してるぞ。 ウ~ム。 焼肉砲の威力は凄い!!」

「そんな事感心してる場合じゃないでしょ。 ほら、ポチポチ」

「動いてないなぁー、死んだのか? こら、ポチ!! 屁ぐらいで死ぬな」

「ふざけないでょパパ。 ホントにパパのおならは臭いのょ。 アリスなんかこないだ 『パパのおならはリーサルウエポン』 って言ってた位なんだから」

「リ、リーサリウエポンって・・・!? こらぁ、ポチ!! しっかりせんかー!!」

なんだなんだ?
遠くから声が。

う!?

遠くから。

(ビクッ)

ファ~、ア~。 あー、良く寝た。

お!?

パパさんとママさんの顔がこんな近くに。
なんだなんだ?
ナンカあったのか?

「あ!? 動いた動いた。 生きてる生きてる。 良かったなぁーママ。 ポチのヤツあくびしてるぞー」

「まったく、パパは悪ふざけが過ぎるんだから」

『動いた』 だの 『生きてる』 だの 『悪ふざけ』 だの・・・。
ナ~ンカあったみたいだな~。
何だ~、何があった~?
ウ~ム、思い出せない。
何だ~、何があったんだ~?
ウ~ム。
我輩は猫だ。
猫は記憶力が悪い。
だから残念ながら何も思い出せない。
もっともそのお陰で生きて行けるっちゃー、生きて行けるんだが。
いちいちなんでも覚えてたら、とてもじゃないが精神的に参っちまうからな、きっと。

「お!? そうだ。 ママ、頼みがあるんだが聞いてくれるか?」

「ン? ナ~ニ、頼みって」

「うん。 今夜はカレーにしてくれないか?」

「別に、良(い)いヶど。 どして?」

「うん。 明日は “カレーライス砲” を試して見たい」

「アハハハハハ。 もう、パパったら。 いい加減にしなさい。 アハハハハハ」

え!?

なんだなんだ?
カレーライス砲って何だ?
何の話だ?

え!?

なんか気になるぞ。

え!?

お、教えてくれ、何だ~?
ス、スッゲー気になるぞ、何だ~?

「あーあー。 うるせーなぁ~、朝っぱらから。 ポチがどしたって~。 ポチが~」

ま~た一人、妙なヤツが出て来やがった。
んでもって、こいつの登場で舞台は第三ラウンドに突入する事になる。




第二話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ” 第一話

第一話




「おっ、はよー!! ポチー!! 目ー、覚めたの一緒だねぇー!! ウリーーー!! ウリウリウリーーー! ウリウリウリーーー!!」

「ニャーーー!! ニャーニャーニャー!! ニャーニャーニャー!!」 (ウッ!? そ、その 「ウリウリウリーーー!」 って言いながら俺様の額にオメェーのおでこグリグリすんの止めてくれ。 た、頼むから止めてくれ)

オットー!?

言い忘れていたが我輩は “オス” だ。
もう分かってくれているとは思うが。

そしてこのおでこグリグリの妙な奴は、我輩の住んでいる 『田原家』 の長女 『アリス』 二十歳(はたち)。

名前はアリスだが生粋の日本人だ。
中肉中背。 
美形ではないがなかなかチャーミングな顔立ちをしている。
頭は悪くないんだが、やる事がチョッと抜けているというかなんというか。
俗にいう “天然ボケ”。
そう。
天然ボケの典型だ。

性格はオットリしている。
が、
時に逆ギレする。
まぁ、めったにはしないんだが。

しか~~~し、

キレた時は手に負えない。

今年短大を卒業して東京の出版社に勤務している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・らしい。

何故か恋人は居ない。
不思議な話だ。
我輩の目には 『可愛くて守ってやりたくなるような女』 に見えるのだが。
猫の見る目と人間の見る目は違うらしい。
まぁ、どうでも良(い)い事ではあるが。

さて、

この女だが、コイツが我輩の実質的な飼い主でもある。

「ほれ、ポチー。 高い高い高~~~い。 高い高い高~~~い」

「ニャーニャーニャー!! ニャーニャーニャー!!」 (あ、赤ん坊じゃねぇーんだから、そ、その 「高い高い高~~~い」 つぅーのも止めてくれ。 俺様の 『ア、ソ、コ』 がオメェーの目の前なっちまうだろー、オメェの目の前にー。 は、恥ずかしいじゃねぇーか。 オ、オメェー、しょ、処女じゃねぇーな)

と。
まぁ、こうして我輩のいつもの平凡な一日が始まるのであった。
そしてこうなる。

「アリス~!! 早く起きなさ~い!! ご飯できたよー!!」

「は~い、ママー!! 今行くー!! ほれ、ポチー!! ご飯いくよー!!」

「ニャー!!」 (待ってました)

我輩を抱っこして階段を一気に下るアリス。
パジャマ姿のまんまだ。

アリスの部屋は2階にある。
六畳の洋室だ。
2階には他に六畳の和室と四畳半の洋室があるのだが、その部屋の使用者がどんな奴らかは・・・。
いずれ明らかになる。

「あら、まだ着替えてないの?」

「うん。 ご飯食べてから」

「歯~、磨いたの?」

「うん。 ご飯食べてから」

「『うん。 ご飯食べてから』 って、アンタねぇ。 もう少し女の子らしくできないの。 身だしなみって言うものがあるでしょ、身だしなみってもんが~。 もういい歳なんだから~。 ま~ったく誰に似たのかしらねぇ~。 ホ~ントに、この子は」

「お母さん」

「・・・」

結構笑える会話だ。
退屈はしない。

「ご飯とパンどっち?」

パンって言え、パンって。
パンならミルクが出てくんだろ。
そうすりゃ 俺様もミルクにありつけんだからよー。
な!?
パンって言え、パンって。

「ご飯」

バッカやろ~~~!!
ご飯じゃねぇーだろ、ご飯じゃ~。
そんなにキッパリ言うんじゃねぇょ~。
ご飯だと味噌汁じゃねぇか~。
あ~ぁ、今日も又 “猫まんま” かょ~。

「ほら、ポチご飯だょー。 美味しいょー」

美味しかねぇーょ。

(カチャ、カチャ、カチャ)

だーからぁ~。
そうやってカチャ、カチャ、カチャって、ご飯と味噌汁混ぜんの止めてくんねぇかなぁ。
煮干がくずれちまうんだょ、煮干がぁ~。
煮干の頭が見分け付かなくなっちまうだろ~。
俺様、大っ嫌いなんだょ煮干の頭。

「ペッ、ペッ、ペッ」

「あ!? 又ポチ、煮干の頭残してるー」

わりーかよ。

「まぁまぁ、ぜーたくな猫だこと。 飼い主に似て」

お!?

ママさん言い返したぞ。

「ピキピキピキピキピキ・・・」

お!?

アリスのヤツ切れやがったぞ。
やな予感がするぞ。

「こら、ポチー!! 煮干の頭食えー!!  ほら、食えー!! チャンと食えー!!」

「ニャーニャーニャー!! ニャーニャーニャー!!」 (よ、よせ、バカやろー、よせ。 や、止めてくれー。 頼むー。 煮干の頭、俺様の鼻にくっ付けんのー、止めてくれー!!)

チッキショー!!

俺様に当たりやがってー!!

「あ!? こんな事してたら遅刻しちゃう。 急がなくっちゃ。 ポチー!! 遅刻したらお前のせいだからね!!」

お前のせいだろ。

それからが素早い。
のんきな性格とは裏腹に一気に着替えとトイレを済ます。
勿論、

(シャカシャカシャカシャカシャカ・・・)

歯磨きも忘れない。

「行って来まぁ~す。 ポチ行って来るよー!!」

「ニャー」 (はいはい、行ってらっしゃい)

かくして本日の第一ラウンドは終了だ。




第一話 完


アリスのニャンコその名は“ポチ”

ントー

ポチのヤツが

日記の中で

盛んに

「パクんなー! パクんなー!!」

って

ほざきまくってヤツが

これ DEATH ・↓・




アリスのニャンコその名は“ポチ”


プロローグ





「ファ~。 あ~~~、良く寝た」

オットー!?

のんびり欠伸(あくび)なんかこいてる場合じゃなかった。

「おはよう諸君。 初めまして」

我輩がこの物語の主人公の 『ポチ』 である。

「よろしく」

きっと諸君はこの 『ポチ』 なんぞという名前から、

我輩を

“犬!?”

と思っておるに相違ない。

しか~~~し、

こんな名前でも我輩はれっきとした

“猫!?”

である。

動物学的に言うならば “ねこ科” に分類される純粋な猫なのだ。

もっとも、我輩は雑種らしいが・・・。

しからばなぜ 『ポチ』 なんぞという実に不愉快極まりない名前が付いたかという話はおいおい明らかにして行くとして、まずは本題に入る事にしよう。



プロローグ 完


 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

アリスのニャンコ

Author:アリスのニャンコ
ジョーク大好き お話作んの大好き な!? 銀河系宇宙の外れ、太陽系第三番惑星『地球』 の!? 住人 death 。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

政治 (0)
p.s. I love you (559)
アリスのお家 (111)
ショート・ショート・ショート「セピア色した白い本」 (103)
アリスのニャンコその名は“ポチ” (39)
『 Rick's Cafe Tokio 』 (19)
『奥村玄龍斎ジャー! 文句あるかー!?』 (25)
未分類 (68)
『奥様は魔女っ娘』 (34)
『ミルキー・ウェイ』 (22)
『怨霊バスター・破瑠魔外道』 (150)
妖女 (378)
君に読む愛の物語 (50)
死人帖 (211)
進撃のポチ Part1 (511)
進撃のポチ Part2 (501)
進撃のポチ Part3 (1044)
進撃のポチ Part4 (47)
たっくん家(ち) Part1 (506)
たっくん家(ち) Part2 (322)
クスッと来たら管理人の勝ち (371)
男と女 (24)
深大寺 少年の事件簿 (85)
タイタン2011 (90)

ほうもんしゃ

えつらんしゃ

現在の閲覧者数:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

designed by たけやん