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怒れるオサーンBLOG 深大寺 少年の事件簿
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怒れるオサーンBLOG

いささか思う所があり、当ブログを一時的に政治ブログに変えちゃいます。 因みに管理人の立ち位置は “愛国保守” DEATH。

ウ~ム・・・



やっぱ

“深大寺 少年”

かな~???

ウリが創り出したキャラの中で

イッチ気に入っとんのは

んで、次が

“たっくんママ”



つーこって

『深大寺 少年物(じんだいじ・うくね・もん)』

をシリーズ化したいんだヶど

深大寺 少年、古畑銀三郎、尻餅 胃寒のトリオに

玄龍斎や外道、あるいは小磯運竹斎(こいそ。うんちくさい)、・・・

な~~~んかを交えて



しか~~~し、

残念ながら書いてる時間がないのねんのねんのねん





時間が出来たらその内・・・



んで

次からは・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポチ







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深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #83 最終回

#83 最終回




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻





「あ!?」

少年が声を上げた。
何か閃いたようだ。

「ところで、おじちゃん」

横にいる公園に声を掛けた。

「ん? 何?」

「ここで人、死んだよね、二人も。 後始末どうするの? お祓いするの? それともお経? そういうのキチンとやっといた方が・・・」

「あぁ、その事か。 それなら心配いらないよ。 チャ~ンと手配してあるから」

「チャ~ンと手配?」

「そ」

「どうするの?」

「うん。 霊園(よしぞの)の知り合いの人に紹介してもらう事になってる、高名(こうみよう)な陰陽師(おんみようじ)に頼む事にしたんだ」

「高名な陰陽師?」

「そ。 なんでも凄い法力の持ち主らしいんだ、その人」

「フ~ン。 凄い法力?」

「うん。 聞く所によると、大魔王を封印してしまえる位の法力らしいよ」

「え!? す、凄いんだね、その人。 だ、大魔王を・・・」

「あぁ。 でもって、その奥さんていうのが更に凄くってね。 悪魔はおろか天使でさえ一睨みで、睨み殺せる位凄いらしいよ」

「そ、そんな凄い人って・・・。 ホ、ホントにいるの?」

「ま、話半分ね。 噂だから」

「そ、そうだよね。 話半分だよね。 チョ、チョッと驚いちゃった、アタシ」

「だよね。 初めて聞いたら、み~んなビックリしちゃうよね」

「うん」

ここで突然、

「あ!?」

公園も声を上げた。
先程の少年同様、何か閃いたようだ。

「そうだ!? その陰陽師の先生、占いもやるらしいよ」

「占いも?」

「そ。 だから少年ちゃんも見てもらうといいよ、古畑さんとの事」

「え!?」

予期せぬ展開に意表を突かれ、思わず一声上げて、

「・・・」

少年が黙った。
だが直ぐに、

「うん」

恥ずかしそうに俯(うつむ)き、顔を赤らめ、小声で頷いた。
やはり少年も古畑に気があるのだ。

「何て言われるかな? いい事言われるといいね」

「うん」

「お!? 少年ちゃん。 素直に認めちゃったね」

「あ!?」

「いいっていいって。 女の子なんだから。 無理しなくていいのいいの。 素直が一番」

「うん」

少年が素直に頷いた。

だがその直後、

「あ!?」

少年が再び声を上げた。
又、何か閃いたようだ。

「でも、おじちゃん」

「ん?」

「その陰陽師のセンセって、お名前分かってる?」

「もち(勿論)、分ってるよ」

「なんていう、お名前?」

「あぁ。 エェーっと、確か・・・。 ん?」

一瞬、名前が思い出せず、側(そば)にいる卒婆(そば)に聞いた。

「なんて名前だったっけ? あの先生」

「エェーっと、確か・・・。 おく・・・」

ここまで卒婆が言った瞬間、


(ピッ、コーン!!)


公園が思い出した。

「奥村 玄龍斎(おくむら・げんりゅうさい)だ!? そうそうそう・・・。 奥村 玄龍斎先生だ!!」

「フ~ン。 おくむら・げんりゅうさいセンセ?」

少年がその名を復唱した。



そぅ・・・

その高名な陰陽師。

その人こそ・・・

我等が・・・

あの・・・

奥村 玄龍斎先生・・・  http://00comaru.blog.fc2.com/?q=%E5%A5%A5%E6%9D%91+%E7%8E%84%E9%BE%8D%E6%96%8E

その人・・・

だったのである。



時に、平成22年8月。

前々日までの大嵐が・・・

まるで嘘のように・・・

雲一つない晴天に恵まれた・・・

ある日の・・・

絶海の孤島での・・・

出来事で・・・

あったのであったのであった。










おしまい。。。











深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #83・・・おすまひ







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #82

#82




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム





「みんな帰っちゃったね、おじちゃん」

少年がポツリと言った。
少し寂しそうに。

その日の夕刻、6時の事だった。

場所は、民宿の玄関。
少年はその時、公園と一緒にそこのガラス拭きをしていた。
この民宿には今、客は一人もおらず、明日にならなければ誰も来ない。

公園がそれに答えた。

「なんか急に寂しくなっちゃったね」

「うん」

このやり取りを横目に、卒婆がカウンターの上の固定電話に出ている。

「・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 そうですか。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 承知致しました。 確かにそう伝えて置きます。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 それでは宜しくどうぞ」


(ガチャ!!)


電話を切った。
卒婆が声を上げて、少年と一緒にガラス拭きをしている公園に声を掛けた。
暫(しば)し、卒婆と公園の会話になる。

「アナター!?」

「ん?」

「今、県警から電話で・・・。 犯行に使われたアクアラングとダイバースーツ見つかったって・・・。 海岸の岩陰に隠してあったそうよ。 それに脚立。 やっぱり少年ちゃんの読み通りだったみたい。 自分で用意してたの使ったらしいゎ、緒方先生。 で!? それは海に捨てたって」

「フ~ン。 そうか」

「えぇ。 それから、なくなったあのボーガン。 アレも海の中に捨てられちゃってたらしいゎよ、緒方先生に」

「え!? 緒方先生に?」

「えぇ。 何でも、緒方先生。 流石にボーガン見たら、それで殺意が沸いたんですって、あの娘に。 えぇーっと、なんていったかしら、あの娘・・・」

「早乙女さん?」

「そうそう、早乙女さん早乙女さん。 一瞬、あの早乙女さんをね、ボーガンで射殺そうと思ったんだそうよ、舞台の袖に置いてあったボーガン見た時にね。 それで一度はそれを自分の部屋まで運んだらしいんだけど、少しして冷静になったら、考えが変わったんですって。 それでコッソリ海に投げ込んだそうよ。 もう、有森さんが 『なくなった、なくなった』 って、騒ぎ出した後で、戻すに戻せない状態になってて・・・」

「そうかぁ。 あのボーガン、緒方先生が・・・。 しっかし、考えてみると緒方先生・・・。 チョッと可哀想な人だったな・・・」

それを聞き、

「ダメだよ、おじちゃん、同情しちゃ」

横から少年が嘴を入れて来た。

「ん?」

公園が振り返って少年を見た。
少年がガラスを拭く手を休め、公園を見つめていた。
そして続けた。

「やっぱさっ、悪い事は悪い事だし。 それに全然関係ないココ巻き込んで、スッゴイ迷惑掛けられちゃったんだし。 だからダメだよ、おじちゃん、同情しちゃ」

「あぁ、そうだな。 うん。 そうだな」

公園が自分に言い聞かせるように、頷いた。
一呼吸置いた。
そして溜息混じりに続けた。

「フゥー。 人殺しのあった民宿・・・か」

公園が現実を再認識して、肩を落とした。
その姿を見て、卒婆が言った。
相変わらずポジティブに。
と~っても元気良く。
こんな感じの事を。
公園達にユックリと近寄りながら。

「大丈夫よ、アナタ、そんなに気を落とさなくっても。 話はまだ終わってないのよ」

「え!? まだ? まだ何かあるのか?」

「えぇ。 まだ・・・まだあるのよ。 あ、の、ね、今回の事件、厳しくマスコミに緘口令(かんこうれい)が敷かれたんですって」

「緘口令が?」

「そ。 でもね、それだけじゃないのよ。 他にもね、まだあるのよ」

「他にもまだ?」

「そうよ。 あるのよ、あ、る、の・・・。 ま、当たり前と言えば当たり前の事なんだけどね」

「何だ? 何があるんだ? もったい付けずに早く言え」

「ウフッ。 そ、れ、は・・・それはね、ウチが受けた被害の補償もチャ~ンとしてくれるんですって、学校が全部。 あの御不動山学園がね、ゼ~ンブ。 当然、絨毯も」

「ホントか、それ!? ホントか? 絨毯もか?」

公園が一瞬、非常に驚き、反射的に聞いていた。

だが、

同時に、相好(そうごう)も崩れていた。
実に嬉しそうだ。
ニコニコしている。
無理もない。
今回の事件で、精神的にも物質的にも一番被害を被ったのは、なんと言ってもこの公園だったのだから。
従って、その落ち込み方も半端じゃなかった。
だから、この朗報を聞いて相好が崩れない訳がなかったのだ。

卒婆がそんな公園の直ぐ側まで来た。

「えぇ。 絨毯もよ。 なんでも、学校がマスコミに圧力掛けたらしいゎ、上から。 たぶん政治家かなんか使ったのね。 立場上あんまりハッキリした事は言えないんですって。 でも、心配してるだろうからって、内緒で教えてくれたのよ、あの刑事さん・・・。 エェーっと・・・」

「古畑さんか?」

「そうそうそう。 古畑さん古畑さん。 だからウチも余計な事は言わない方がいいんじゃないかって。 つまり事件を大っぴらにね、しない方が、って」

「あぁ、当然だ。 絶対内密にして置かなくっちゃな。 でも・・・。 そうかぁ、でも、それは良かったぁ。 何せあんな事件がマスコミに知られたりしたら、ウチとしても大事(おおごと)だったからなぁ。 殺人事件のあった民宿だなんて噂立てられた日にゃぁ、もう、お客様が寄り付かなくなって・・・。 場合によっちゃ、ここ閉めなきゃならない事だって・・・。 それにあの焦(こ)げた絨毯。 超高価過ぎて、どうしたもんかと思い悩んでいたんだが、あれの補償をしてくれるのは助かる。 掛けてた保険だけじゃ、とってもとっても無理だろう・・・だし」

少年が、我が事のように嬉しそうにニコニコしながら言った。

「良かったね、おじちゃん」

「あぁ、ありがと」

卒婆が、今度はその少年に声を掛けた。

「それからね、少年ちゃん」

「ん?」

「古畑さんがね、近い内、ここに今度はお客様として見えるそうよ。 貴女に会いたいんですって」

「え!?」

「お!? 少年ちゃん。 隅に置けないぞ~、もうそんな。 いつの間に?」

「ゃ、やだ、おじちゃん。 そ、そんな事・・・」

「お!? 顔が赤くなったぞ。 大丈夫かぁ?」

「え!? え!? え!?」

「あなた、ダメよ。 そんなに苛めちゃぁ。 あの刑事さんが積極的なのよ。 傍目(はため)で見てても分ったものね、あの人、この子に好意持ってたの。 一目惚れされちゃったのよね、きっと」

「あぁ、ごめんごめん。 でも、少年ちゃんも満更(まんざら)でもないんだろ、あの刑事さんの事? ハンサムだし、カッコいいし。 えー? どうなんだ? それとも今、誰か付き合ってる人、いるの?」

ここから暫し、少年と公園の会話となる。

「え!? ぅ、うぅん。 付き合ってる人なんかいないよ」

「じゃ、いいんじゃないか、あの刑事さん? ん? どうなんだ?」

「ぅ、うん。 で、でも、年がぁ・・・。 あたしまだ16だし・・・」

「ウ~ム。 そうかぁ、そうだよな~。 年の差がチョッとあり過ぎるかぁ。 ・・・。 あの刑事さん、どう見ても30前後だったよなぁ。 32、3ってとこか? どう思う?」

公園が卒婆に話を振った。

「そうねぇ、30位かしらねぇ。 チョッと離れてるゎねぇ。 ・・・。 でも、誠実そうな人だし、あの若さでもう部下持ってるし、きっとエリートなのね。 もしかしたら刑事さんじゃなくって、上級職のキャリアかも・・・。 だから、チョッと位いいかぁ? 年離れてても。 ね、少年ちゃん」

「え!? え!? え!? でも、まだ決まった訳じゃ・・・そんな事」

「うぅん。 あの刑事さんハッキリ言ったのよ。 『深大寺 少年さんに会いに行きます』 って。 でも、良~く考えてみると随分大胆な話ね。 まぁ、男らしいと言えば男らしいんだけど。 どう?」

「ど、どうって言われても・・・。 ま、まだ、ハッキリ・・・」

「でも、チャンと考えて置かなきゃダメよ。 その時になってからじゃ遅いのよ。 先方は 『貴女がここにいる間に必ず』 って、言って来てるんだから」

「ぅ、うん」

恥ずかしそうに頷き、俯(うつむ)いて考え込む少年であった。
その姿を見て何かを察したのだろう、公園が優しく言葉を掛けた。

「親なら心配いらないよ、少年ちゃん。 兄貴達にはおじちゃんの方から上手く言っとくから。 な、お前」

「あ!?  そうよ、そうよね。 お義兄さん達にもね・・・。 何て言うかしらね、お義兄さん達? この子まだ16だし。 一応、結婚出来る年齢ではあるにはあるけど。 でも、知らせない訳には行かねいゎね、相手が相手なだけに・・・。 ま!? 今、考えても始まらないっかぁ。 その時になってからの話ね」

「そうそう。 その時その時。 でも、悪い話じゃないと思うよ、あの人なら・・・。 だから、少年ちゃん。 真剣に考えときな。 ね」

「うん」

口ごもる少年であった。


でも~、

この時、少年は・・・










ホントはチョッピリ嬉しかったのである。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #81

#81




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「さ、皆さん。 乗船して下さい。 出帆(しゅっぱん)の時間ですよ」

霊園だった。

「は~い」

美雪が返事をした。
そして少年(すくね)を見た。

「じゃ、ね。 少年ちゃん。 又、会えるといいね」

「うん」

それを合図に演劇部員全員が少年達に別れを告げながら乗船した。

「じゃぁ。 皆さん、お送りして来るゎね」

深沙が部員達に手を振って別れの挨拶をしている公園、卒婆、少年に声を掛けた。

そして、


(ポンポンポンポンポン・・・)


イチ達を乗せたアズール415 コンバーチブルが本土を目指して出帆した。
それを少年達がジッと黙って見送っている。
船がどんどん小さくなって行く。
その小さくなって行く船を見つめたまま、

「演劇祭、どうなっちゃうんだろうね? やっぱあの人達の公演、ムリポかなぁ?」

ボソッと少年が呟(つぶや)いた。

「多分、ダメだろうね。 事件が大き過ぎるからね。 それに部員が二人もいなくなっちゃたしね」

やはり船を見つめたまま、公園が静かにそれに答えた。

「お気の毒ぅ」

と、少年。

「ホント、気の毒だね」

と、公園。

しか~し、このマイナーな気分の二人とは対照的に、

「大丈夫よ!! み~んな若いんだから~」

一人、卒婆だけはポジティブだった。


その時・・・


背後から声がした。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? 到頭(とうとう)行っちまいやがったか、アイツら」

いつの間にかその場に来ていた尻餅だった。
幽鬼夫婦も一緒だ。

「この後、尻餅様はいかがなさるおつもりですか?」

公園が聞いた。

「ウム。 先ずは、県警にチョッと顔を出してな。 事件の事も気になるしな。 後の事はそれから考える」

「そうでございますか。 大変でございますね」

「ま、これも性分(しようぶん)てヤツかな。 仕方あんめぇ、事件にかかわっちまった以上・・・。 ウム」

「申し訳ございませんでした」

「うんにゃ、大将が謝るこっちゃねぇ。 災難だよ、災難。 大将の方こそとんだ災難だったじゃねぇか」

「はい」

「そうですよ、マスター」

幽鬼 英作が横から入って来た。

「マスターの方こそいい迷惑だったじゃありませんか」

「いや~。 幽鬼様ご夫妻にも今回の件では大変なご迷惑をお掛け致しまして、誠に面目次第もございません」

「いやいや、そんな事はないですよ。 こんな経験はそうそう出来る事ではありません。 何せ、殺人事件の関係者になったんですからな。 そこの刑事さんなら兎も角、我々一般人がこのような経験・・・。 金を払ったって出来る事じゃ・・・」

ここで英作は鼻胃子を見た。

「な、お前」

「はい」

鼻胃子が頷いた。
英作が少年に近寄った。

「少年さん。 お見事でしたよ」

「テヘッ」

少年が照れ笑いをした。
そこへ尻餅が割り込んで来た。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? 小娘~。 オメェ、やるじゃねぇか」

「そんな事ないですよ」

「うんにゃ、ある!! 良っくぞまぁ、あのクソ生意気なイチの野郎の鼻、明かしてくれた。 礼を言うぜ、ホ~ント。 ったく、あのイチの野郎と来た日(ひ)にゃ・・・」

そこへ卒婆が入って来た。

「さぁさぁ、皆様。 次の便まで小1時間ほどお時間がございます。 食堂までご足労頂きまして、お茶などお召し上がり下さい。 摘み立ての花びらを浮かせたハーブティーなど、ご用意致しますので」

「お!? そいつぁ、いい。 ここのハーブティーは中々だからな」

尻餅だ。

「じゃ、ワタシ達も。 な?」

英作が鼻胃子に聞いた。

「えぇ」

鼻胃子が頷いた。
そして卒婆が先導する形で、みんな後に続いた。
途中、鼻胃子が卒婆に聞いた。

「ここのハーブティーは素晴らしいゎ。 なんの葉っぱでどうやって入れてるのかしら?」

「それは企業秘密・・・トップシークレットでございますゎ、奥様」

「そ。 じゃ、味わいたくなったら又、ここ来なきゃいけない訳ね」

「左様(さよう)でございます」

鼻胃子が並んで歩いている英作を見た。

「なら、近いうちに又、来なくちゃね・・・ここ」

「あぁ」

英作が頷いた。
それを聞き、横から公園が言った。

「そうして頂けると幸いでございます」










と。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #80

#80




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「色々ご面倒、お掛けしました」

美雪が公園(まさぞの)に詫びた。

時は、翌日午後2時。
所は、島の埠頭。

この民宿は基本的に 『チェックインは午前10時以降、チェックアウトは午前10時まで』 となっている。
だが、ここは本土から少し離れた孤島。
従って送り迎えの必要がある。
そのための便は原則・・・
送りは、午前10時00分に島の埠頭からこの民宿のプレジャーボートで。
迎えは、そのプレジャーボートが帰る時に本土の埠頭から。
というのが決まりなのだが、今回は色々あった事と他に予約がなかったため、公園が特別に昼食をサービスしていた。
又、美雪達も帰りの列車の切符を予め買ってあった訳ではなかったので、時間に縛られる心配は全くなかった。
それ故、公園の厚意を安心して受ける事が出来た。
だから現在の時刻は、原則通りなら午前10時00分でなければならないのだが、そうではない午後2時だったのだ。

そして島の埠頭でたった今、美雪が帰りの便に乗船する直前、自分達を見送りに来ていた公園、卒婆、少年に向かって詫びた所だった。

「色々ご面倒、お掛けしました」

と。

「なんの、なんの。 皆様にはなんの落ち度も・・・。 これに懲りずに、宜しかったら又お越し下さい」

公園がそれに答えた。
その公園に、今度は早乙女が詫びた。

「ごめんなさい。 ホントにごめなさい。 ワタシの所為(せい)で、ご面倒お掛けして」

早乙女の眼(め)をジッと見つめて公園が優しく語り掛けた。

「発端(ほったん)は嫉妬からのイジメですか? 褒められた話ではありませんが、今回の事を良い教訓とされてこれからは逆に、イジメを受けている子達の良き理解者になって上げて下さい。 それが冬島 月子さんへの一番の償いになるのではないでしょうか?」

「はい。 もう二度と誰も苛(いじ)めたりなんかしません」

「ウムウム」

公園が静かに頷いた。
次に早乙女は、少年に目を向けた。

「深大寺 少年(じんだいじ・すくね)さんでしたよね?」

「はい」

「ありがとう。 貴女のおかげでワタシ・・・救われたし、目が覚めたゎ。 ホントにありがとう」

「うん」

言うべき事は既に公園が言っているので、少年は早乙女にこれ以上何も言う必要はないと思い、ただ黙って頷いた。

少年にイチが近寄り、声を掛けた。

「少年ちゃん」

『ん?』

少年がイチを見た。

「今回は俺の完敗だ。 でも、君は一体どんな娘(こ)なんだ? 推理小説マニア? それとも親が探偵とか?」

「うぅん。 違いますよ。 普通の女の子ですよ」

「でも、推理は普通じゃなかったぜ」

横から御布施が割り込んで来た。
御布施は少なからず少年に気があるのだ。
それから強引にイチをヘッドロックして、おどけて言った。

「ま。 こんなヤツが相手なら俺でもな。 カッ、カッ、カッ、カッ、カッ・・・」

せせら笑った。

「や、止めてくれよ、先輩」

イチが、もがきながら御布施のヘッドロックを外そうとしている。

すると、

「謙遜しなくたっていいんだよ、少年ちゃん。 大したモンだったよ、君の推理。 それにありがとな、月子の事、色々調べてくれて。 なんか俺、チョッと恥ずかしいよ。 付き合ってた俺よっか、ズッと詳しいんだもんな、君の方が」

有森だった。

「テヘッ」

少年が照れくさそうに笑った。
それから有森に優しく語り掛けた。

「でも、有森さん」

「ん? 何?」

「気を落とさないで下さいね」

「ぁ、あぁ。 ・・・。 うん」

少年の言葉がチョッと心に響いた有森だった。

「ウムウム」

「ウムウム」

銭湯と亀谷は黙って頷いてそのやり取りを見ていた。

「少年ちゃん」

最後に美雪が声を掛けた。

「はい」

「お世話んなっちゃったゎね」

「いぃえ。 ウチ(オペラ座館)として当然の事、したまでですよ」

「うぅん。 素晴らしかったゎ、少年ちゃん。 貴女の推理」

「テヘッ」

少年がチョッと照れた。

「お礼に一つ、いい事教えて上げるね」

「いい事?」

「そ」

「?」

「実はね、少年ちゃん」

ここで美雪がイチを指差した。
そして徐(おもむろ)に勿体(もったい)を付けて、こう言った。

「この金田一 一ったらね。 見掛けによらず IQ が180もあるのよ。 俗に言う大天才なのよ」

と。

だが・・・

美雪のこの言葉を聞いた瞬間、

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

 ・・・

美雪を除く演劇部員全員が、凄まじい形相で驚いた。
早乙女までもだ。
そして、
まるで驚天動地(きようてんどうち)の大騒ぎが始まった。
否、
ちゃぶ台返しの大さわぎが始まった・・・と言った方がいいか?

御布施達が大はしゃぎだ。
まるで、今、世界中で話題沸騰中のあの “日本マクドナルドのCM http://www.youtube.com/watch?v=frl7jR_2hv8 ” に出て来るガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。

そぅ。

あの殆(ほとん)ど病気としか思えないような、画面の中で “基地外” 起こしているあのガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。
これには当の美雪も逆にビックラこいた。

「そ、そ、そ、そんなに驚かなくってもー!?」

一瞬、言葉に詰まった。
それから 『興奮冷めやらぬ』 といった状態でどもりどもり続けた。

「でっ、でっ、でも・・・。 そっ、そっ、それってホントなのよ。 ホッ、ホッ、ホントの話なのよ。 ね。 イッチャン」

「ぁ・・・あぁ。 まぁな」

イチが照れくさそうに口ごもりながらそれを認めた。

「そんなイッチャンに勝っちゃったのよ、貴女。 大したものなのよ、それって。 ・・・。 あ!?」

突然、美雪が何かを思い出したようだった。

「どうかしましたか?」

『不可解だ』 という表情を浮かべ少年が聞いた。

「もしかして・・・。 『オペラ座の怪人』 の仮装舞踏会のシーン。 そこでファントムが床に叩き付けるスコア・・・ファントム自身の手による 『ドンファンの勝利』 っていう名の付けられたスコアなんだけどね。 あれって、もしかして、貴女の勝利の予言かも・・・。 ナンチャッテね」

この言葉にどう反応して良いか分からず、

「あたしの勝利の予言だなんて・・・。 別にそんなぁ・・・」

少年が少し困惑気味に言った。


その時・・・










声がした。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #79

#79




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム

 他





今・・・

時は、その日の夕方。
所は、その離島の埠頭(ふとう)。


(クルッ!!)


古畑 銀三郎が振り返り、

「色々、ありがとう」

と、深大寺 少年に言った。
それに少年が、

「又、来て下さいね。 今度はバカンスで・・・ここ」

そう答えて、ニッコリと微笑んだ。

「あぁ。 必ず・・・」

そこまで言って、古畑はチョッと間を取った。
少年の眼(め)を覗き込むようにして見つめた・・・一瞬ではあったが。
そして一言、こう付け加えた。

「君に会いにね」

と、ニッコリ微笑んで。

「ウフッ」

少年が嬉しそうに笑った。
当然、古畑の眼を見つめて。
チョッといい感じの二人だ。
そのいい感じの二人の内のうちの一人、古畑が体の向きを変え、横にいる拳代に声を掛けた。

「じゃ、行こうか」

「・・・」

拳代が無言で頷いた。
体の前に組んだ拳代の両手には、ハンカチより少し大きめの白い布が被せられている。
掛けられている手錠が、生徒達に見えないようにとの配慮のようだった。

それから古畑の先導で、拳代の他、古畑と一緒に来ていた県警関係者全員が、来る時に乗って来た船に乗り込んだ。
この船は勿論、県警の手配した物だ。


(ポンポンポンポンポン・・・)


船が出帆(しゅっぱん)した。
それをその時、島にいた者達全員が無言で見送った。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

船が見えなくなった。

「やれやれ、とんだ事になっちまったなぁ。 稽古のはずが、現実の事件に。 しかも原作通りのそのまんま」

イチがぼやいた。
それを聞き、尻餅がイチに向かって吠(ほ)えた。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? ぼやきてぇのは、ぁ、こっちだぜー!!」

って、いつもっぽく。
更に続けた。

「と~んだバカンスにしてくれやがったなぁ、テメェら~!! ア~ン!?」

「そんな事、俺らに言われてもなぁ」

イチだ。

「そうよ、あたし達だって被害者なんだから」

今度は美雪だった。
が!?
美雪にしては珍しくブータレている。

「まぁまぁまぁ、皆様。 折角いらして頂いて、まだ、もう一晩残っておいでじゃないですか。 精一杯おもてなし致しますので、そのような事を仰(おっしゃ)らず、今夜一晩だけでもごゆっくりされて下さい」

公園が間に入ってとりなした。

「マスター、ワタシ達はもう二晩あるんだがねぇ」

幽鬼 英作が言った。
横に並んで立っていた妻の鼻胃子が静かに頷いた。
久しぶりの登場だ。

「しかし、ワタシ達も明日(あす)帰る事にするよ。 いいかね、マスター? こんな事があった後じゃぁね」

「はい。 致し方ございません。 一晩、キャンセルという事で宜しゅうございますか? 当たり前ですが、キャンセル料などは、当然、頂きません」

「あぁ。 それで結構。 そうしてくれたまい」

幽鬼が言った。
これに誘発されたのだろうか?
尻餅が突然、公園に向かってこんな事をほざいた。
イチ達を指差して。

「オィ! 大将!! 俺はコイツらと一緒の船にな~んか乗りたかぁねぇ。 だから・・・といって、もう一晩泊まってる時間的余裕もねぇ。 そこで頼みがある」

「なんでございましようか?」

「コイツらが帰った後に帰りてぇ」

「宜しゅうございます。 尻餅様と幽鬼様には、御不動山学園の皆様方がお帰りになった後にもう一便(ひとびん)出して、お送り致します」

そう答えてから公園が、側にいた霊園に聞いた。

「構わんな?」

「あぁ。 夕方もう一便、出すさ」

それを受け、公園が尻餅に確認した。

「それで宜しゅうございますか」

「あぁ、構わん。 そうしてくれ」

このやり取りを小耳に挟んだイチが独り言をほざいた。

「ケッ!! やっな野郎!?」

って。

それから舌打ちなんかも、

「チッ」










って。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #78

#78




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム

 他





「はい! そこまでー!!」

古畑が両手を上に上げた万歳の格好で、興奮して尻餅に食って掛かっている御布施達を制止した。

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

全員が、一斉に古畑を見た。
チョッと間(ま)を取ってから、古畑が拳代に近寄った。

「緒方 拳代さんですね」

「はい」

拳代が頷いた。

「貴女にお聞きしたい事があります。 宜しいですか? もっとも、もう分ってるとは思いますが、何を聞くかは」

「はい」

「では、場所を変えて」

ここで古畑は公園(まさぞの)を見た。

「すいませんが、空いている部屋をお借りしたいのですが・・・」

「1階が宜しいでしようか? それとも2階が・・・?」

公園が聞き返した。

「出来れば1階を」

「なら、1階の110号室をお使い下さい。 他には2階の204、206、208、それと209号室の4室も空いております」

「では、お言葉に甘えて110号室をお借りします」

『ウム』

無言で1回頷き、公園が少年に聞いた。

「悪いが少年ちゃん。 刑事さんを110号室に案内してくれる」

「うん」

公園に返事をしてから少年が古畑に言った。

「ワタシがご案内しますね、刑事さん。 こっちです」

「ありがとう。 でも、チョッと待ってね」

一言、少年に礼を言ってから拳代を見た。

「では、一緒に来てもらいましょう」

それから一緒に来ていた二人の刑事達に呼び掛けた。

「オィ!!」

古畑は一人を尋問係として、もう一人を書記官として連れて来ていたのだった。
最後に尻餅に聞いた。

「取調べは我々だけで行ないたいのですが、宜しいでしょうか?」

「ぉ、おぅ!? 構わんが。 県警の仕事に口出しするのもなんだしな」

「ありがとうございます。 もっとも尻餅さんも一応参考人なので、後程(のちほど)お話を伺う事になるとは思いますが、それも宜しいでしょうか?」

「あぁ、構わん」

「そうですか、ありがとうございます。 では、又・・・。 後程」

「ぁ、あぁ」

古畑が振り向いて少年を見た。

「じゃ、お願い」

「はい」

少年の先導で古畑、拳代、刑事二人が1階の110号室へと向かった。

斯(か)くして・・・

古畑 銀三郎による関係者全ての事情聴取が・・・

ここに・・・










開始される事になったのである。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #77

#77




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者  超ハンサム

 他





「早速ですが、現場を見せて頂きましょう。 宜しいでしょうか? 尻餅さん」

古畑が尻餅に聞いた。

「オッシ、構わん!! こっちじゃ、こっち。 付いて参れ」

エッラそうに、そんな事をほざいちゃう尻餅であった。

古畑が、

「ニカッ」

ってして少年を見た。
それから、


(パチッ!!)


一発ウインクを決めた。
それに、


(クスッ)


少年が微笑返した。

大食堂にいる者達全員、立ち上がってその後に続こうとした。
古畑がそれを制して言った。

「あ!? 皆さんはそのままそのまま。 ここにいて下さい。 後で色々、話を聞かせてもらいますから」

ここまでみんなに言ってから、再び少年を見た。
やはり、古畑は少年に少なからず何かを感じているようだった。

「君もここにいてくれるね?」

「はい」

愛くるしい少年であった。
少年も満更(まんざら)ではなさそうだ。


(クルッ)


踵(きびす)を返すと古畑は大食堂から出て行った。
先導するのは勿論、尻餅であるのは言うまでもない。
他の刑事や鑑識係達も二人の後に従った。

少年達はその後ろ姿を見送っていた。
少年に深沙(みさ)が近寄った。

「素敵な人ね」

「うん」

「脈あるゎよ、あの人、少年ちゃんに」

「テヘッ。 そんな事ないよ、深沙姉ちゃん」

「うぅん。 あるゎよ、間違いない。 貴女だって感じてたでしょ」

「・・・。 うん、チョッとね」

「貴女はどうなの?」

「え!?」

「あの刑事さん? どうなの?」

「うん。 素敵な人かも・・・。 でも、年齢差がね、チョッとね。 ・・・」

少年と深沙のそんなやり取りを尻目に、御布施がイチに近寄り、思いっきりイチをからかい始めた。

「オィ! 金田一!! 大したやっちゃなぁ、おまいも」

「ん?」

「なーにがボーガンだ。 ボーガンな~んて、どっからも飛んで来んかったゃんヶ」

「・・・」

「いい加減なやっちゃなぁ、ホ~ンにおまいというヤツは・・・」

ここぞとばかり御布施は言いたい放題だ。

イチはそれに反論出来ず、ただ黙って聞いている。
そのやり取りを小耳に挟んだ少年が、深沙との会話を途中で打ち切り、イチと御布施に近付いた。

「御布施さん。 誰にだって間違い位ありますよ」

「でもなぁ、少年ちゃんとやら」

御布施がイチを、


(クィッ!!)


顎を杓(しゃく)って指し示した。

「コイツの所為(せい)で人一人、殺人犯に仕立て上げられるトコだったんだぞ。 有森の人生、コイツに終わらせられるトコだったんだぞ」

ここで御布施のテンションが一気に上がった。
一言 『コイツ』 と言う度に、今度はイチを右手人差し指で強く指差した。

「コイツだ! コイツ!! コイツの所為でだ!!」

「うん。 それはそうだけどぉ」

そこに有森が割り込んで来た。

「先輩。 もういいんですよ。 さっきも言ったように俺、月子との事みんなにハッキリさせられて返って感謝してる位なんですから。 それに・・・」

有森が口ごもった。


(チラッ)


拳代を見た。
拳代は力なく俯き、ジッと床を見つめている。
有森が続けた。

「月子のお母さんの事も分ったし」

その言葉を聞き、

『ハッ!!』

拳代が顔を上げた。
有森の眼(め)を覗き込むようにして見つめた。

「有森君。 ・・・」

一言、有森の名を呼んだ。
何か言いた気(げ)ではあったが、言葉が出てこないのだろうそこで黙ってしまった。
そんな拳代に有森が語り掛けた。

「先生。 月子は 否 お嬢さんは気丈夫(きじょうぶ)で、素晴らしい女の子でしたよ。 あいつらにあんな事されたのに恨み言一つ言わなかった。 とっても素晴らしい女の子でしたよ。 ・・・」

有森もこれ以上言えなくなってしまった。
目に大粒の涙を浮かべている。

「ありがと、有森君。 月子を好きになってくれて・・・」

拳代もここまでだった。
やはり目に大粒の涙を浮かべている。


(シーン)


そのシーンを目(ま)の当たりにし、誰も何も喋れなくなってしまった。
長い沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは少年だった。

少年がイチに言った。

「金田一さん。 やっぱ、無理だと思いますよ」

「ん!? 何がだ?」

「撃鉄って言うんですかぁ、ボーガンの発射装置。 あれの引っ張り力ってかなり強力なんでしょ。 そんな強力な引っ張り力が必要なボーガンの撃鉄、それ固定するため引っ張ってる紐、置時計の針に付けたカミソリの刃位で切るの。 やっぱ、無理だと・・・。 それにそんな大掛かりなもん作るんだったら、わざわざウチの時計なんか使わないで事前にチャンと用意してたはずだし、もし、有森さん、犯人なら・・・。 それにココ(大食堂)、そんなボーガンみたいにオッキなの隠しとくトコないし・・・」

「ゥ、ウム。 かもな? 俺もそんな気がして来た」

やっとイチが口を開いた。
それに構わず、

「それにしても、時計は一体、誰が、どこに、何の目的で持ってたんだ?」

御布施が誰に言うとはなしに、独り言のようにポツリと言った。


その時・・・


(ドタドタドタドタドタ・・・)


複数人の足音が聞こえて来た。
二つの殺人現場に夫々(それぞれ)何人かずつ残し、尻餅と古畑、それに古畑の部下と思われる刑事二人が帰って来たのだ。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? な~んだオメェら、この辛気(しんき)くせぇ、ぁ、雰囲気はよ~」

尻餅だ。

その尻餅に気付かれないように古畑が 『しょうのないヤッチャなぁ』 つー感じで、肩をすぼめて見せた。
見せた相手は勿論、少年だ。

「クスッ」

少年が笑った。
その笑顔を見て古畑も、

「ニカッ」

ってした。

尻餅に御布施が話し掛けた。

「否、ね、刑事さん。 カウンターの上の置時計の話をしてたトコなんすよ」

「カウンターの上の置時計?」

「はい」

「あれがどうかしたのか?」

「ぃ、否。 大した事じゃないんすけどね。 どこ行っちゃったのかな? って」

「あぁ、あれなら俺がゆんべ部屋に持ってたぞ。 いつの間にか俺の腕時計の目覚まし機能が壊れてたんでな。 代わりに使わせてもらったんだ。 だ~れも居やがらねぇもんだから勝手に持ってたんだけんどな。 それが何か問題でも?」


瞬間・・・


「け、け、け、刑事さん!?」

「け、け、け、刑事さん!?」

御布施と有森が同時に叫んでいた。
そして御布施がイチを指差して、尻餅に食って掛かった。

「そ、それを何でさっき言わなかったんすかぁ!? コイツがボーガンと置時計の話、し始めた時ー!?」

「ん!? ボーガンと置時計?」

「そ、そ、そうっすよ。 置時計でボーガン発射するって話。 コイツがさっきしたじゃないっすかぁ」

「へ!? そんな事、コイツ、ほざいたんか? そりゃ聞いとらんかった。 この事件の所為(せい)でゆんべ、あんま、寝とらんかったもんでな。 つい、チョコっとな。 うん。 つい、チョコっと・・・。 ボンヤリしとった。 うん。 ボンヤリと・・・。 済まん」

「す、済まん? 済まんじゃ済まん!! 済まんじゃ済まんでしょ! 刑事さん!! ったくぅ」

御布施が興奮している。


その時・・・










声がした。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #76

#76




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 他





(ドタドタドタドタドタ・・・)


玄関の方から、数人の足早な足音が聞こえて来た。


(サッ!!)

(サッ!!)

(サッ!!)

 ・・・

皆、一斉に音のする方に振り返った。


(ドタドタドタドタドタ・・・)


10人程の屈強な男達が大食堂に入って来た。
今、大食堂にいる者達以外、他には誰も入って来るはずのない所へのこの男達の突然の乱入 否 来訪に驚いて、

「な、何だ!? 何だ何だ何だ、オメェら!?」

尻餅が大声でほざいた。
それに対し、一番最初に入って来たその集団のリーダーと思(おぼ)しき年の頃なら30前後で中肉中背、長髪のチョビっとカッチョいいオスが、斜(はす)に構えたかと思うと徐(おもむろ)にワイシャツのポケットに手を入れ、手帳を取り出した。
それを尻餅に突き付けるようにして、こう言った。

「○○県警の古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう)です。 連絡を受けて来ました」

その男達は県警の刑事及び鑑識係達だった。

「ぉぉぉぉぉ!? そりゃ又、予定より随分はえぇじゃねぇか」

尻餅だ。

「貴方は?」

古畑が聞き返した。

その瞬間・・・

「ぉぉぉぉぉ、おぅ!? 良っく聞いたー!!」

 “ Now !? ”

と~~~っても嬉しそうな尻餅だ。

当ったり前だ。
尻餅はこの手の質問が大好物なのだ。
ナゼか?
理由は次の尻餅の吐いたセリフでハッキリする。

「おぅ!? おぅおぅおぅおぅおぅ!? 耳の穴かっぽじって、良~くっ聞きやがれー!! 遠くにあらば音にも聞けー!! ぁ、近くば寄って目にも見よー!!

 真っ赤な太陽 ギュっと掴(つか)みゃ~
 ジュって来ちゃって 熱(あ)っちっち

 俺を・・俺様を・・この俺様を・・一体、ぁ、だ~れだと思っていやがるーーー!!

警視庁にその人ありと謳(うた)われまくってゥン10年・・・。 尻餅 胃寒さまたぁ~、ぁ、お~れのこってぇーーー!!」

って。

この尻餅を軽~くスルーして、少年が古畑に聞いた。
とっても普通に。

「早かったんですね?」

「ん!? 君は?」

「はい。 深大寺 少年です。 さっきお電話でお喋りした」

「あぁ、君が・・・」

そう言った次の瞬間、

『ん!?』

古畑が少年の眼(め)を 否 眼の奥を覗き込んだ。
一瞬ではあったが、二人は見つめ合った。
古畑は少年に、少なからず何かを感じたようだった。
その古畑の視線を受けたまま、少年が言った。

「てっきり、10時頃んなっちゃうかなって、思ってました」

「うむ。 天候の回復が思った以上に早かったんだ。 ところで・・・」

ここまで言った時、横から尻餅が突っ込んで来た。

「コ、コ、コ、コラ~~~!! テ、テ、テ、テメェら、一体! な~~~に無視こいてんじゃー!! コラーーー!!」

って。

少年と古畑が同時に尻餅を見た。
そして古畑が “ニカッ” ってして、

「貴方が有名な本庁の “あの” 尻餅さん? いや~、ご苦労さまでした」

爽やか~に、食って掛かって来た尻餅を軽~くいなしちゃった。

「ぉ、ぉ、ぉ、おうよ。 俺様が有名な・・・。 ん!? 俺様ってそんな有名?」

「そりゃ~、もう~。 はい」

「そ、そ、そ、そうかそうかそうか!? 俺様ってそんな有名かぁ!? ウホッ!!」

有名といわれてシッカリ嬉しい尻餅であった。

 “ Now !? ”

と~~~っても嬉しそうな尻餅だ。

ニッカニカしちゃってさ。
まぁ、とっても嬉しそうにしちゃってさ。
まぁ、とっても・・・

その間、尻餅に気付かれないように古畑が少年にソッと耳打ちしていた。

「ドジでね」

って。

それを聞き、

「クスッ」

かわゆ~く笑っちゃう・・・










少年であった。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #75

#75




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





再度、

「でも、なんで復讐にここ選んだんですか、センセ? ウチ(オペラ座館)スッゴイ迷惑なんだヶど」

少年が拳代に聞いた。
そして公園に言葉を掛けた。

「ね!? おじちゃん」

「あ、ぁあ。 うん」

公園が頷いた。
そのやり取りを見てから拳代が静かに語り出した。
遠い眼差(まなざ)しをして。

「前に一度・・・。 むか~し一度・・・。 来た事があるから、ここに」

「え!? いつ?」

反射的に、公園の口から疑問の言葉が突いて出ていた。

「ここがまだこの民宿になる前。 ・・・。 そして、ここよ、ここだったのよ、ワタシが事故にあったのは・・・」

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

拳代の言った 『事故』 と言う言葉に皆、衝撃を受けた。
それまでは単なる噂話に過ぎなかった拳代の事故。
それが少年の謎解きで、一転、明確な事実となっていたからだった。

「ここで演ずるはずだったの、クリスティーヌ・ダーエをね。 だからここは良く知っているし、絶好の場所だったのよ、復讐に。 ファントムに変身してする復讐に、ここは・・・」

「センセ、確か15年前でしたよね、事故にあったの」

今度は少年が聞いた。
その少年の眼(め)をジッと見つめて、拳代が答えた。

「えぇ。 ワタシが22の時よ。 稽古中に、突然、照明が落下して来てね、それがワタシの右足に直撃。 以来ビッコ、ワタシはビッコ。 ・・・。 あれから15年。 ここも変わったゎ、随分・・・」

ここで拳代は目を閉じ、少し間(ま)を取った。
何かを思い出しているようだった。
暫し、沈黙してから目を明けた。
その目は、再び、遠い眼差しに変わっていた。
その拳代が続けた。

「15年前、ここで大きなパーティがあったの、内輪のパーティだったんだけど、各界のセレブ達を招いての大掛かりなパーティが。 そして、その余興として 『オペラ座の怪人』 を上演するはずだったのよ、ここで。 当時は 『オペラ “座” の怪人』 とは言わず、 『オペラの怪人』 と言っていたゎ。 でも、中味は同じ。 全く同じ。 もっとも台本は、今流行(いま・はやり)の 『アンドリュー・ロイド=ウェバー脚本版』 ではなく、 『ジョセフ・ロビネット脚本版』 だったんだけどね、上演することになっていたのは・・・。 そしてワタシの負傷でそれは中止。 ダンスパーティに変わったゎ、急遽」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

皆、何も言わず黙っていた。
何も話す気にならなかったのだ。
そのままチョッとだけ、ぎこちない沈黙が続いた。

そして・・・

そのぎこちない沈黙を破ったのは公園だった。

「フゥ~。 ここでそんな事が・・・」

公園が溜め息混じりにポツリとそう言っていた。
感慨深げにだった。










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #74

#74




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





突然、

「そう。 あの子は、月子は・・・」

拳代が静かに語り始めた。
少年のいる方を向いて。

「貴女の言う通り、月子はワタシの子。 ワタシが二十歳(はたち)の時に生んだ子よ」

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・


(ザヮザヮザヮザヮザヮ・・・)


みんなに動揺が走った。
それに構わず、拳代は続けた。
全員の視線を一身に受け、大食堂の中を天井を見上げ、時に身振り手振りを交え、狭い歩幅でユックリと歩きながらも全く不自然とはならずに。
何となれば、拳代は元女優である。

「ワタシが妊娠した事を知った広井 玉子(ひろい・たまご)に、ワタシは捨てられた。 遊びだったのよ、広井に取ってワタシは・・・。 そう。 ワタシは単なるオ、モ、チャ。 遊び道具。 ワタシは真剣だったのに・・・。 そのワタシが妊娠。 だから、広井にワタシは捨てられた。 周りはその子を堕(お)ろせと盛んに言ったゎ。 でも、出来なかった。 ワタシに月子を堕ろす事なんて無理だった。 だって・・・。 だって、そうでしょ。 折角・・・。 折角、天から授かった、神からの贈り物である命をそう易々(やすやす)と奪う事なんてワタシにはとても・・・。 だから生んだのよ、あの子を、月子を、冬島 月子を・・・。 兄はそんなワタシの、この世でたった一人の理解者。 陰になり日向になりしてワタシを守ってくれた。 そしてワタシが月子を生むと直ぐ、兄が言ったのよ。 こう・・・ 『この子は俺の子として育てる。 女房も説得して納得させた。 だから安心しろ。 何も心配するな。 全て俺に任せろ。 但し、絶対に親子の名乗りはするな。 それがこの子の幸せのためだ』 って。 それが兄との約束・・・ワタシと兄との固~い約束。 絶対に破る事の出来ないね。 そして懸命にワタシはそれを守った。 いつも遠くから月子を見守っていたの。 でも、運命ってあるのね。 まさか・・・まさか、月子がワタシのいる学校に入学する事になるなんて。 いくら兄が止めても頑として聞かずに 『この学校しかない』 と言い張って、入って来るなんて。 しかも花組。 そう、ワタシが顧問の花組演劇部に入って来るなんて。 嬉しかったゎぁ、あの子が、月子が自分の直ぐ側に来るなんて。 でも、それ以上に辛かったゎ、母と名乗れず、子と呼べず、ただ黙って、ジッと見守っているだけだなんて・・・。 もっともっと、ズッとズッと、辛かった。 ・・・。 それが・・・」

ここで拳代は立ち止まり、そして黙った。
目が微(かす)かに潤んでいる。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

皆も黙っていた。
イチも美雪も御布施も。
驚いた事にあの尻餅までも。
勿論、少年も。

「・・・」

暫し、沈黙が続いた。
少し気まずいその沈黙の中、少年が何かを言ぉうとした。
しかし、その前に拳代が再び話し始めた。
相変わらず天井を見上げ、立ち止まったまま、時に身振り手振りを交えて。

「月子には才能があったゎ。 素晴らしい才能が・・・。 当然よね、ワタシが生んだ子なんですもの。 それに兄と同じ血が流れてるんですものね、あの天才リアクション芸人・冬島 竜兵と同じ血が。 しかし、それ以上に広井 玉子の血。 広井はあんなヤツ。 でも、その才能は群を抜いている。 天才なのよ、広井は。 ワタシが愛したのはその才能。 誰も寄せ付けない素晴らしいその才能。 広井自身はふしだらなだけ。 でも、その才能・・・。 あれは憧れだった、ワタシの・・・ね。 ・・・。 分っていたの、いつかワタシは捨てられるって。 月子の妊娠がその時だっただけ。 それでも良かった、月子を生めたんですもの・・・。 そして今回、月子がクリスティーヌ・ダーエ役に決まった。 勿論、それは部員達のみによる自主決定。 学校側は一切関知しない、部員達のみによる自主決定。 認められたのよ、月子はみんなに、花組の演劇部員全員にね、その才能を。 学園祭の演目、キャスティング、衣装、その他諸々(た・もろもろ)、これら全てを生徒達自身で決める。 それが我が校の伝統ですのもね。 教師のワタシは一言も口出し出来なかったし、しなかった。 でも、月子はヒロイン役を勝ち取った。 自分一人だけの力で。 きっと、これも運命ね。 15年前、ワタシも演じたのよ 否 演じる事になっていたのよ、クリスティーヌ・ダーエを。 でも、そのリハーサル中に事故にあった。 そしてワタシはビッコ。 引退。 その芝居を今度は自分の娘が演じる事に決まった。 しかし、そのために大怪我。 自殺。 ・・・」

再び、拳代は黙った。
みんなも何も喋ろうとはしない。
その場が重たい空気に包まれた。
誰も物音一つ立てなかった。

不意に、


(クルッ!!)


拳代が身を翻して少年のいる方を向いた。
ジッと少年の眼(め)を覗き込んだ。

そして・・・

意を決してこう言った。

「そう。 ・・・。 あなたの言う通り、ワタシが死喪田 歌月よ」

瞬間、

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

その場に異様な緊張感が走った。
そんな中、拳代が少年に聞いた。

「でも、何で分ったの? 貴方にそれが?」

瞬(まばた)き一つせず、ジッと拳代の目を見つめ返していた少年が答えた、キッパリと。

「センセがビッコひいてたから・・・。 それ見て」

「ん!? どういう事?」

「ワタシが始めて死喪田 歌月見た時、歌月はシークレットブーツ履いてました。 足、お悪いのになんでシークレットブーツって思っちゃいました・・・これって、さっき言いましたよね。 ・・・。 その印象ってとっても強かったです。 そして今回の事件。 で、センセもチョッとだヶど、ビッコ。 そして皆さんの事、色々お調べしてる内にセンセの事もたっくさん分っちゃいました。 それで思ったんです。 もし、死喪田 歌月がセンセなら。 センセがシークレットブーツ履いたなら、どうなるかを。 多分、歩き難いですよね。 普通の靴履いてる時よっか、ズッと。 足お悪いの、強調されちゃいますよね、きっと。 だから歩き方から足付いちゃって、センセが死喪田 歌月だって、ばれちゃうかも知れませんよね。 その可能性大ですよね。 歩き方似てれば・・・。 ヶど、もしそれを逆手にとって、ワザと大袈裟にビッコひけば、返ってセンセに見えないかもって・・・。 だからセンセの歩き癖隠すためにわざと大袈裟にビッコひいたんじゃないかなって・・・。 そう思っちゃいました」

「そう~。 ビッコ位でそこまで・・・」

少年の推理を、拳代は感心して聞いていた。
そして、まじまじと少年の顔を見つめながら続けた。

「その通りよ、貴女の言う通り・・・。 フ~ン。 大したものね、貴女・・・」

「いぃえ、お友達です」

「ん!? お友達?」

「はい。 ワタシのお友達みんなが色々アドバイスくれたからです。 ワタシ一人の力じゃありません」 

「いいのよ、謙遜しなくても。 貴女の力よ。 でも、・・・。 友達思いなのね、貴女って。 ・・・。 もし今、月子が生きていて、ここにいたら、そして貴方に出会っていたら、いいお友達になってくれていたかも知れないゎね」

「ワタシもそう思います、会ったことないヶど、きっといいお友達に・・・。 センセのお嬢様だから」

「フッ」

拳代が微笑んだ。
そして一言。

「ありがと」

それから拳代が尻餅の方を向き、五指全部をくっ付けた右手掌(みぎて・てのひら)を上に向けて広げ、それで少年を指し示して言った。

「この娘の言った通り、日高 五里絵を殺したのも、桐生 冬美を殺したのも、私(わたくし)です。 その殺し方も、今、この娘の言った通り・・・」

「ったく、な~んで又、復讐なんて事を?」

全く、やり切れないという表情で尻餅が聞いた。
その言葉を聴いた瞬間、みるみる拳代の表情が険しくなった。
そして声を荒げた。

「あの子は!! 月子は!! 自殺に追い込まれたのよ!! あの3人に!! いぃえ、違うゎ!! 月子は・・・。 あの3人に殺されたのよ!!」

そう言い切った瞬間、拳代は反射的に早乙女を指差した。
同時に、厳しい口調で続けていた。

「月子はたった一つのワタシの宝、ワタシの夢だったのよ!! それを無惨にも、もぎ取られたのよ!! この娘(こ)たち3人に!! この娘たちに殺されたのよ!! 月子は!! でも、自殺。 所詮は自殺。 この娘たちにはなんのお咎(とが)めもなし。 そんな事が許されていいの!? 許されるはずないじゃない!! 当たり前でしょ!! でも、法では裁けない。 この娘たちを法律では裁けない。 法律では裁けないのよ、ここじゃ。 この日本じゃ、この日本の法律じゃ・・・。 だからよ、だからやったのよ、ワタシが・・・。 ワタシが裁くつもりだったのよ。 法で裁けないんなら、ワタシが裁く。 ワタシのこの手でこの娘たちを裁く。 そう決心したのよ、あの日、あの時、あの場所で。 そして二人を殺した。 残りは、残る一人、早乙女 京子は・・・殺さない。 そう。 さっきあの娘(少年)が言ったように、生かさず、殺さず、ジワジワと。 ユックリジックリ、苦しめて。 苦しめて苦しめて苦しめて、そして死に追い込む。 自殺によ。 必ずね。 必ず、自殺に追い込む。 そう誓ったのよ、あの日、あの時、あの病院で、この娘たち3人のヒソヒソ話を立ち聞きした時に・・・」

ここで拳代は有森を見た。
この時点で、若干ではあったが興奮も収まり掛けていた。

「有森君。 あの日、病院で、この娘たち3人のヒソヒソ話を立ち聞きしていたのは貴方達二人だけじゃなかったの。 ワタシもいたのよ、あの場に。 貴方達の反対側にね。 月子と貴方の反対側にね。 あの時ワタシもいたのよ、あそこに、あの場所に。 遠目から月子を見守っていたのよ、あの場所で。 その時よ、この娘たちが月子を侮辱するような事を言ったのは。 月子が何も言わない事をいい事に、この娘たちが月子を侮辱するような事を言ったのは、その時よ」

今度は少年を見た。

「そう。 この娘たち3人の話を聞いたあの時だった、復讐を誓ったのは。 後はさっき貴女が言ったゎね、あの通りよ」

「でも、なんでここ選んだんですか、センセ? ・・・」

少年が聞いた。

興味津々といった・・・










表情で。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #73

#73




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「はい。 これからしようと思ってました。 いいですか、こうです。 冬島 竜兵はある日突然、実は自分には隠し子がいると、マスコミに公表しちゃいました。 月子さん2才の時のお話です。 でも、これには嘘があったんです。 実はこの時、月子さんは3才でした。 でも、誰もその事実に目を向けませんでした。 気付かなかったのか、気付いてもスルーしちゃったのか、どっちか分かんないヶどスルーです。 ・・・。 ま、有名人とはいえ、冬島は所詮はお笑いタレント。 だから、大して大騒ぎされる程の事件じゃなかったのかも知れませんね。 どうでもいい事ですよね。 大したニュースになる訳でもないし。 だからです。 だからスルーです。 でも・・・。 じゃ、何で冬島は1年鯖(さば)読んで公表したんでしょうか? この年頃の赤ちゃんって成長早いから、3才児を2才って鯖読むの超危険なのに・・・。 それなのに何ででしょうか? ここが重要なポイントです。 何でだか分りますか、有森さん?」

「うんにゃ、分らん?」

「そうですか、分りませんか? でもね、その理由は簡単なんですよ。 それはね・・・皆さん覚えてますか? 冬島 竜兵が覚醒剤所持で刑務所入った事、あるの」

「覚醒剤所持で刑務所・・・? おぅおぅ、そう言や、そんな事、あったっけか・・・」

「ウムウム。 あったあった、確か・・・」

「そう言や、あったな、そげなこつ・・・」

 ・・・

みんなが口々に勝手な事をほざいている。

「はい。 和尚 学(おしょう・まなぶ)、酒井 法秘(さかい・のりぴ)、田代 馬刺(たしろ・ばさし)と合わせて4人が逮捕されたあの有名な六本木屁漏頭(ろっぽんぎ・へるず)事件です。 あれは月子さんを2才とするその2年半前からの1年間でした、冬島、入所してたの。 だからもし、正直に月子さんを3才と発表しちゃうと、あの時期に・・・つまり冬島がまだ刑務所出る前に相手の女性が着床、妊娠した事になっちゃいます。 計算合いませんよね。 刑務所の中でHな事した事になっちゃいますよね。 それって、絶対ムリポ。 だから冬島は月子さんが3才んなるまで公表するのを避けたんだと思います、直ぐするとマズイんで。 でも・・・。 でもですよ。 もし、その赤ちゃん、緒方センセが入院中に生んだんなら・・あのナゾの半年間に緒方センセがその赤ちゃん生んだんなら・・お話し、しっかり合っちゃいますよね」

ここで少年は、


(チラッ!!)


拳代を見た。

「・・・」

相変わらず無言のまま、拳代は床をジッと見詰めている。
しかし、もう震えてはいない。
真剣に何かを考えているようだった。

少年が続けた。

「どうですか、センセ? ワタシの推理、合ってませんか?」

「・・・」

拳代は無言だ。
代わりに有森が聞いた。
ここから、暫(しば)し有森との会話になる。

「君の言う通り、月子が緒方先生のお子さんなら、なんで冬島 竜兵が自分の子って、公表したんだ?」

「勿論、緒方センセを守るため」

「ん!?」

「このために、ワタシはお友達みんなに頼んで冬島 竜兵の素行、ネットで徹底的に調べ上げてもらっちゃいました。 そしたら色んな事、いっぱい見えて来ました」

「色んな事!? 例えば・・・?」

「はい。 冬島という人はテレビではあんなだけど、実は、と~~~っても誠実な人で、妹思い。 その最愛の妹と生き別れ。 施設にいくら聞いても、妹の引き取り手の情報を開示してもらえず・・今で言う個人情報保護ですね・・成人してから八方手を尽くしては見たものの居所つかめず。 そもそも薬に手を染めたのも妹の居所がつかめない寂しさ、心の痛みもあったみたいです。 もっとも、他にもっと大きな理由(わけ)があったんだヶど・・・」

「大きな訳?」

「はい。 あぁいう、リアクションタレントというのはホ~ント命懸けの仕事っぽいです。 ワタシ達は彼等がテレビん中で苛められてるの見て楽しんじゃってるヶど、苛められてる側は、時に命の危険さえあるみたいで、その受けるストレスは想像を絶する位らしいです。 だから家庭の幸せに恵まれなかった冬島には辛い毎日だったと思います。 だからです。 だから麻薬に手を出しちゃったんだと思います。 でも・・・。 でもそんな時、冬島は一人の少女と再会しちゃいました。 そして乾き切っていた冬島の心を潤したんです・・その少女が・・再会したその少女が。 そしてその少女・・それが・・それこそが妹。 実の妹、冬島 拳代・・即ち、緒方 拳代・・つまり緒方センセだったんです。 あのテレビ番組のハプニングご対面コーナーで出会った実の妹の緒方センセだったんです。 そしてその日以来、冬島はそれまでの自堕落な生活を全て洗い直して、懸命に更正して、一所懸命働いて、陰ながら秋元 爽邪苛(あきもと・さわやか)として活動してる緒方センセを見守っていたんです。 そうです、見守っていたんです。 絶対、そうだったに違いありません。 そんなある日、アイドルとして芽が出始めてまだ間もない緒方センセ 否 秋元 爽邪苛が広井 玉子(ひろい・たまご)にダマされて妊娠・・・そして出産。 これはアイドルにとって致命的ですよね。 凄いゴシップだから・・・。 何て言っても妊娠に出産なんですからね。 だからそれに耐え切れず、そして妹を守るため、冬島はその子を引取って、直ぐ公表すれば怪しまれちゃうから、暫らく時期を待って、そして頃合見計らって自分の娘としてマスコミに紹介。 それが月子さん、冬島 月子さん」

ここで少年は拳代を見た。

「違いますか、センセ?」

「・・・」

拳代は何も語らない。

「センセ。 いつまで黙ってるんですか? お調べしちゃえば分かっちゃう事なんですよ」

少年が厳しく言い放った。
それから尻餅を見た。

「それは刑事さんのお仕事ですよね」

「ぉ、お~よ。 ぁ、おいらの、ぁ、お仕事でぇ~~~ぃ!!」

久しぶりに尻餅登場。
もち、歌舞伎調だ。

だが・・・










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #72

#72




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「じゃ。 さっき、聞き掛けて止めちゃったヤツ、行っちゃいますね」

少年がみんなに言った。
そして拳代に聞いた。
ここからは暫(しば)し、拳代との会話になる。

「センセの旧姓です。 センセ、チャンとみんなの前で言って下さい、センセの旧姓」 (←これ、覚えてる? 『#67 http://00comaru.blog.fc2.com/blog-entry-3842.html 』参照)

「だから! そんな物ないって言ってるでしょ!! さっきから・・・」

「いぃえ、ありますよ」

「ないわよ!!」

「ありますよ」

「ないったら、ないわよ!! ホントにしつっこい娘ねぇ!! ったく」

「冬島 拳代」

「え!?」

「センセのホントの、じゃなかった、前のお名前ですよね。 冬島 拳代」

「・・・」

予想外の少年の問い掛けに意表を突かれ、拳代は何も答られなかった。
そんな拳代に容赦なく少年が畳み掛けた。

「これって、センセの前のお名前ですよね」

「・・・」

「センセにはお兄ちゃんがいますよね、一人。 有名な人」

「・・・」

「冬島 竜兵(ふゆしま・りゅうへい)さんです。 あのお笑いタレントの。 ですよね、センセ」

ここで、

「冬島 竜兵って、あのリアクション芸人の・・・? 『がちよーんクラブ』の冬島 竜兵か?」

横からイチが嘴を突っ込んで来た。

「そ」

「冬島 竜兵・・・あれって、本名だったんだ、芸名じゃなくって」

次は、有森だった。

「そ」

「緒方先生が冬島 竜兵の・・・。 ど、どういう事だ?」

最後は、御布施が興奮気味に。

「こういう事です。 さっき言いましたよね、ワタシお友達全部にメールして皆さん達の事、色々お調べしちゃったの」

「うんうん」

「うんうん」

「うんうん」

 ・・・

みんなが頷いた。

「そしたら、お友達の知り合いの人が、吃驚(びっくり)するような事に気付いちゃったんです。 そのお友達の知り合いの人って、お笑い番組見るの大好きな人らしくって、その人、大人の男の人なんだヶど、特に、屁頭 2:51(へがしら・2時51分)とか屁川 哲郎(へがわ・てつろう)とか、今ここで問題んなってる冬島 竜兵みたいなリアクション芸人大好きで、よくテレビなんか見ちゃう人で、その人が昔見た『いつみても波乱万才(はらん・ばんざい)』っていう、タレントの売れてない時の貧乏時代の苦労話でお涙頂戴の長寿番組、それを20年位前たまたま見てたら、その時のゲストがその頃売れ始めていた冬島 竜兵だったんだそうです。 で!? その人が言うには、冬島は早~くに両親死んじゃってて、肉親は妹が一人いて、その妹と一緒に施設に入ってて、幼い頃別れ別れになっちゃってて・・・。 って、いうのも、その妹がどっかのお家(うち)に引き取られたからで。 で!? 冬島が有名になったのとほぼ同時に、偶然ってあるもんなんですね。 その妹も芸能界入りしたそうなんです。 もっとも、お笑いじゃなくってアイドルとして。 って、いうのもその妹ったら、冬島 竜兵とは似ても似つかぬ凄~い美人だったからで。 そしてその人が言うには、恐らく、その妹の所属してた事務所の方針で、その番組に冬島 竜兵にも知らせない吃驚ゲストとして出演させて、感動のお涙頂戴を利用して、その妹を売り出そうっていう戦略ぽくって・・・。 で!? ハプニングご対面が仕組まれたみたいなんです」

「フ~ン。 で?」

イチが聞いた。

「はい。 でも、その妹の所属してたっぽい芸能事務所は、その時はタレントとしてじゃなくって、単なる一般人として出演させて、お涙頂戴しておいてから、それから売り出すつもりだったらしくって、その番組・・・つまり『いつみても波乱万才(はらん・ばんざい)』の中では本名を名乗らせちゃったらしいんです。 そしてその時、冬島 竜兵の妹の名乗った名前が・・・」

「緒方 拳代だった」

透かさずイチが言った。

「はい。 その通りです。 特徴的な名前だったから覚えてたんだって、言ったそうです、その人」

ここで少年(すくね)が拳代を見た。


(ヮナヮナヮナヮナヮナ・・・)


拳代は何も言わず、ただ静かに震えていた。
恐怖からとも、怒りからとも、なんとも表現の仕様のない様子で。
その拳代に少年が声を掛けた。

「センセ。 何、震えてるんですか?」

相変わらず、深大寺 少年は容赦ない。
更に、そんな拳代に全く構わず、

「続けていいですか?」

追い討ちを掛ける少年であった。

「・・・」

最早、拳代は何も喋(しゃべ)れない。

「センセ、黙っちゃったんで、勝手にお話、続けちゃいますね」

「ぉ、おぉ。 続けろ続けろ」

ここでお約束の尻餅登場。

「はい。 その半年後、緒方センセは 『秋元 爽邪苛(あきもと・さわやか)』 という芸名で戦列デビュー。 その時、センセ18才。 一気にアイドルへ。 そしてその1年後、同じくアイドルの 『広井 玉子(ひろい・たまご)』 との熱愛発覚。 その直後から半年間、ナゾの入院。 病名は 『 tintinkayuikayuibyou 』。 でも、実は妊娠したんじゃないかっていうお噂。 そして半年後、芸能界復帰。 但し、広井 玉子とは破局。 センセもこれを機会に脱アイドル。 本格的に女優の道を歩き出しちゃいました。 そしてその3年後、舞台事故に遭って、それ原因で芸能界引退。 その後、一念発起(いちねんほっき)して大学入学。 教員試験合格。 私立御不動山学園に教師として採用。 現在に至る。 ですよね、センセ?」

「・・・」

拳代は黙ったままだった。
が、
代わりに尻餅が言った。

「ホゥ~。 大したもんだ。 良くそこまで調べ上げたもんだ。 でも、いつ調べたんだ?」

珍しく、あの傲慢な尻餅が感心し切りだ。
ここからは尻餅との会話になる。

「はい。 昨日一日掛かっちゃいました。 だから睡眠不足で、今、少し眠たいです」

「え!? たった、一日? たったの一日で、そこまで・・・」

「そうですよ。 でも、ワタシ一人の力じゃなくって、お友達みんなで協力し合って・・・なんだヶど。 さっき言った。お友達の知り合いのお笑い大好きな人からの情報を元に、みんなで力合わせてお調べしちゃいました。 『20ch』  やら、 『taboo知恵袋』 やら、 『人力検索さてな』 やらにどんどん質問出したりして。 ワタシも皆さんの給仕の合間を縫って、お調べしちゃいました」

「ネット刑事(デカ) 否 ネットでか?」

「はい。 ネットでです。 ぜ~んぶ、ネットでです」

「そうかぁ・・・。 恐ろしいもんだなぁ、ネットの能力(ちから)は・・・」

「潜在能力、凄いですよね、ネットって」

「ウムウム」

ここまでは尻餅に向かって話していた少年が、体の向きを有森の方に変えた。
今度は、有森との会話になる。

「有森さん」

「ん!?」

「さっき、聞いた冬島 月子さんのお父さんのお名前って、知りたくないですか?」

「知りたい知りたい!! 勿論、知りたい!! 勿論、知りたいさ。 分かってんのか?」

「はい」

「だ、だ、誰だ、誰なんだ? 月子の親父は?」

「冬島 竜兵」

「え!? 冬島 竜兵?」

「はい。 冬島 竜兵が月子さんのお父さんです」

「じゃ、じゃぁ、母親は? 母親は誰だか知ってるのか?」

「はい」

「だ、誰だ?」

「緒方センセ」

「え!?」

有森は仰天した。


(ピクピクピクピクピク・・・)


お顔が引き攣っている。

「お、お、お、緒方先生!? バ、バ、バ、バカ言え!! そ、そ、そ、それだったら・・・。 それだったらそれだったらそれだったら冬島 竜兵と緒方先生、近親相姦したことになるじゃないか!? そ、そ、そ、そんな事そんな事そんな事・・・」

「いぃえ、近親相姦なんかじゃないですよ」

「だって、そうなるゎ、あなたの言った通りなら」

横から、美雪が言った。

「いぃえ、なりません」

「な~にを、ぁ、言っていやがる~~~。 な~っちまうじゃねぇか~、ぁ、近親相姦に~。 オメエの言った通りなら・・・」

尻餅だ。

「いぃえ、なりません」

「『いぃえ、なりません』 って・・・。 じゃぁ、その説明してくれよ」

久しぶりにイチ登場。

で!?










少年が続けた。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #71

#71




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「でも、ナゼ、靴、片っぽだけしか履かせなかったのかしら?」

美雪が疑問を呈した。

少年がそれに答えた。
今度は美雪との会話になる。

「それは多分、靴にみんなの注意を惹(ひ)き付けるため」

「どういう事?」

「はい。 靴跡に目が行き易いようにするためにです。 靴、見ちゃえば、きっと誰かが靴跡の存在に気付くでしょ。 そうすればみんな、桐生さんは窓からここまで一人で来たって思っちゃうでしょ。 だから・・・」

「ぁ、そっか」

「服装あんなで他殺に見せ掛け、靴跡一つで今度は自殺を演出。 そうやって事態を混乱させて、キラは歌月という人物からワタシ達の注意を遠ざけようとしたんだと思います」

「でも、何のために?」

「歌月はあくまでもキラが自らの存在をカモフラージュするためにでっち上げた架空の存在。 だから、そこにみんなの目が行くの嫌ったんだと思います。 歌月が架空の存在だってばれるのやだから」

「そのために注意を逸らした・・・」

「うん」

「そ、そんなトコまで考えて・・・」

「はい。 キラは事(こと)殺人に関しては天才です。 こんな人間にもしストーカーになられたら、ワタシ、逃げ切れる自信ありません」

「アタシも」

美雪が同意した。

ここで、


(キリッ!!)


少年の表情が引き締まった。
そして一言一言ユックリと、それらを噛み締めるようにジックリと、話し始めた。

「そして・・・。 いよいよ本殺人事件のクライマックス。 『キラがあえて死喪田 歌月として人前に姿を現し、その死喪田 歌月をこの世界から消し去る』 という、キラ、一世一代の大芝居の始まり始まり~~~・・・です」

「ゴクッ」

「ゴクッ」

「ゴクッ」

 ・・・

全員が生唾を飲み込んだ。
これに対し、平然と少年が続けた。

「ここまでのお話で、もう大体の見当、皆さん付いちゃってますよね、これからワタシが言う事」

一旦、念を押した。
皆、体を乗り出して少年の言う、一言一言を聞き逃すまいと聞き耳を立てている。
それを、


(グル~)


一渡り見回して、少年が断言した。
キッパリと。

「そうです。 キラは死喪田 歌月を海の中に消し去る事により、この殺人劇を終了させたんです。 つまり・・・。 完全犯罪を成立させちゃったんです 否 成立させたはずだったんです」

と!?

少年がここまで言った時、大声でほざいたヤツがいた。

「チョッと待ったれゃー!! 小娘!!」

って。

そ、れ、は・・・

尻餅だった。
尻餅が横から嘴を入れて来たのだ。
ここからは尻餅との会話になる。

「ま~だ、一人残ってるじゃねぇかー!! キラが殺さなきゃなんねぇヤツが・・・」

「誰がですか?」

「『誰がですか?』って・・・。 そ、それは・・・」

尻餅が口ごもった。
流石にその名前は口にしたくはなかったのだ、本人を目の前にしては。

「もう、誰も残ってませんよ。 殺人劇は日高さんと桐生さんを殺して終わっちゃってますよ」

「んなこたぁない。 いるだろ、もう一人」

「いませんよ、もう誰も」

「ぬぁ~にぃ~。 い、い、いるじゃねぇか、もう一人」

「いません」

少年がキッパリと否定した。

“キリ!!”

ってして。

その予想外の少年の迫力に、

『ウッ!?』

尻餅がチョッとたじろいだ。

そこへ、

「早乙女 京子」

御布施が出しゃばった。

「おぅ、そうだそうだ!! 言い難(にく)い事を良ー言ぅた。 褒めて使わす」

尻餅だ。

「いーえ~。 殺人劇はもう終わってますよ。 だから必要なくなった歌月をキラは消し去ったんです」

「こ、こ、このアマー!! し、し、しつけーぜ。 なら、その理由をほざきやがれー!!」

って、尻餅。

「そんな、カッカしなくってもいいですよ、刑事さん」

尻餅にそう言ってから、少年がみんなに聞いた。

「皆さんに聞いちゃいますね。 もし、皆さんが最愛の人を自殺に追いやられたとしたら、その自殺に追いやった人を一番どうしたいと思いますか?」

「そりゃ、勿論、殺したいと思うに決まってんだろ」

尻餅がムキになってほざいた。
再び、尻餅との会話になる。

「違います」

「へ!?」

「ワタシは “一番” どうしたいかと聞いているんです」

「だーから~、殺したい・・・」

「いーえ~。 一番したい事は他にありますよ」

「ねぇよ!」

「あります!」

「ねぇよ!!」

「あります!!」

「ねぇったら、ねぇよ!!」

「あります、ったら、あります!!」

「しっつヶーなぁ、このアマー!! ねぇったらねぇのー!!!」

「あるったら、あるのー!!!」

「じゃぁ、言ってみろー!!」

「苦しめる」

「え!?」

「“苦しめる” 事です」

「ん!? 苦しめる?」

「はい。 もし、ワタシの最愛の人が自殺に追いやられたとしたら、ワタシはその人、絶~~~対、同じ目に合わせたいと思うはずです、きっと。 殺しちゃえばそれまでです。 なんの苦しみもありません、死んじゃうんだから。 でも、生きてれば、その間中ズッとです。 ズッと苦しみます。 ズッとズッと、ズ~~~ッと。 つまり生かして苦しめる。 そして自殺に追い込む。 月子さんとおんなじ自殺にです。 これです。 これが一番です。 一番の復讐です。 一番したい事です。 違いますか?」

「ぉ、おぅ。 うん。 確かに・・・」

「だから理科準備室事件の主犯、早乙女さんだけは殺さなかった。 あえて生かして置いたんです。 先ず、日高さんを殺して、次に桐生さん。 そうすれば当然、『次は自分だ!?』。 早乙女さんはそう思っちゃいます。 だからそう思わせて、早乙女さんを恐怖のどん底に突き落としちゃいました。 そして脅迫文書いて、歌月に変装。 その上からファントムの衣装着て、あえて皆さんの前にお姿現しました。 早乙女さんを襲って殺すフリするためにです。 早乙女さん襲って殺すの失敗しちゃったフリするためにです。 そしてその失敗は、わざとです。 わざと失敗したフリしたんです。 でも、何のために? 何のためにわざと失敗したフリなんかしたんでしょうか?」

少年が尻餅に振った。

「何のために、わざと失敗したフリ? ・・・。 ウ~ム。 分らん」

ここで少年は少し間を取り、尻餅の表情を伺った。
その少年の視線を受け止めたまま尻餅は考え込んでいる。
自分の言っている意味を尻餅がまだ理解していないのを知った少年が、キッパリと言い切った。

「死喪田 歌月を殺すために」

「ぬゎに~? 『死喪田 歌月を殺すために』 だ、とぅ~?」

「そうです。 死喪田 歌月を殺すためにです。 そこであえて真犯人だと思わせておいた架空の人間、死喪田 歌月を殺して事件を一見、一件落着させちゃうためにです。 そして今回の殺人劇が下火になって、捜査の手が自分に及ばないと判断出来るまで時を待つ。 それからいよいよこの計画の最終ステージ開始です。 キラの復讐劇の総仕上げはユックリとジックリと、早乙女さんを “死の恐怖” に陥れる。 そのための何らかの手を打っちゃいます。 ジワジワと苦しめる何らかの手を。 例えば上から物が落ちて来るとか、危うく事故に遭いそうになるとか、あるいは駅で突き飛ばされちゃって、危うく線路に落ちそうになるとか、早乙女さんが身の危険を感じるような事ならなんでも執拗にし続けちゃいます。 それを早乙女さんがノイローゼに、引きこもりに、鬱(うつ)に、あるいは自閉症になるまでし続けちゃって。 そうして苦しめるだけ苦しめて自殺に追い込む。 これがキラの仕組んだ復讐劇の総仕上げ、最終章です」

「ウム。 言われてみればその通りだ。 うん。 確かに、その状況なら俺もそうするかも・・・」

「ウムウムウム」

「ウムウムウム」

「ウムウムウム」

 ・・・

みんながそれを認めた。

ここで少年が拳代を見た。
念を押した。

「違いますか? 緒方センセ?」

「な、何で・・・。 何で、そこで私に話を振るのよ」

「だって、センセが復讐してるから」

「だから! 違うってさっきから言ってるでしょ~!! しつっこい娘ね、ったく」

「惚(とぼ)けても無駄なんだヶどなぁ」

「クッ!?」

苦虫を噛み締める・・・










拳代であった。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #70

#70




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





少年が続けた。

「今ので分ってもらえたと思うヶど、キラは脚立に乗る前、先ず桐生さんの着てた服と靴、脱がしちゃいました。 そして、予(あらかじ)め首絞めたロープの反対側の端を木の枝に投げ掛け、桐生さんを負ぶって脚立に乗って、その状態で枝に掛けたロープを引っ張って、ピーンと伸ばしてから、もう一度、枝に投げ掛けたんです。 つまりロープを木の枝に一巻きしちゃったって事です。 そして脚立から降りてロープを木にきつく結んじゃえば全てオヶです。 ワタシはそう思ってます」

イチが聞いた。

「なら地面に脚立の跡が残っていたはずだ。 だが、そんな物は何も、残ってはいなかった。 消した形跡さえ。 それはどう説明するんだ?」

ここからは暫し、イチと少年の会話になる。

「それも簡単です」

「簡単?」

「はい。 超~~~簡単です。 地面にシート敷いちゃえばいいんです。 それが厚さが8ミリもあって、しかも超~~~軽~~~いアルミ製のキャンピングシートかなんかだったら、多分1枚でオヶです。 2枚以上あれば尚、可(か)です。 加えてその上に、桐生さんの着てた服載せれるでしょ、だから問題なしです。 使った後、今度はそのシートをぬかるみの上に敷いちゃえば、足跡消すのにも利用出来ちゃうし。 一石二鳥です」

「ウ~ム。 なるほどなるほど」

「後は、それらを海に投げ捨てちゃえば証拠はどこにも残りませんよね」

「ウムウム」

「ウムウム」

「ウムウム」

 ・・・

みんなが納得した様子を見せている。
だが、イチはそれを認めない。

「まぁ、それっぽい説明だが、やっぱり無理があるよな」

「どこがですか?」

「キャンピングシートは海に浮くんジャマイカ? だから海に投げ捨てたとして、そんなに簡単に波が攫(さら)って行くか、いくらこの大波でも? 捨てる場所にもよるが、この島に打ち付けて来る波の角度に寄っちゃ、一晩位なら一箇所に漂ったまんまジャマイカ? そんな証拠が残りそうな真似、こんなに用意周到なキラがするとも思えん。 それに脚立だが、女の力で果たしてそんなに上手く登れんのか、それも死人負(しにん・お)んぶした状態で? 今だって少年ちゃん、脚立の一段目がやっとっぽかったじゃん。 死人の負んぶって、生きてんの負んぶするよっか大変なんジャマイカ? 寝た子の負んぶと一緒で」

「全然、問題ないですよ。 上手く行っちゃいますよ。 キャンピングシートはそれになんか重い物くるんじゃえば、沈んじゃうし。 そうじゃなければ、チョッと時間掛かっちゃうヶど、探せば、この島に波が打ち寄せないトコだって見つかるし。 だから上手く行っちゃいますよ。 それにキャンピングシートじゃなかったかも知れないし、使ったの。 毛布みたいのだったかも知れないし、厚手のコートだったかも。 死喪田 歌月に変装してた時、着てたヤツだってあったはずだし。 それから脚立だって・・・。 脚立だってね、金田一さん。 この犯人は・・・キラはね、この日まで2ヶ月間も用意周到に準備、進めて来たんですよ。 それは分かってくれてます?」

「あぁ」

「人殺し決心するのって並大抵の事じゃないはずです。 そのキラの執念計算してみて下さい。 重たい物背負(しょ)って脚立登る訓練位しちゃうと思うし、その時間もタップリあったはずだし・・・」

「ウ~ム。 かもな・・・。 少年ちゃんの言う通りかもな」

「はい。 そうです。 ワタシの言った通りです」

キッパリそう断言してから少年が続けた。

「そうやって一旦自分のお部屋に戻った・・多分、お部屋の窓からだと思うヶど・・キラはそこで足と体を奇麗にしてからもう一度、108号室に裸足で入り、今度は桐生さんの靴履いて、窓からあの木の下までワザと靴跡をしっかり残して歩き、靴片(くつ・かた)っぽ桐生さんに履かせ、もう片っぽ地面に置いて、前とおんなじ方法で自分のお部屋に戻ったんです。 緒方センセの足なら、多分問題なく桐生さんの靴履けちゃえそうだし。 後は自分のお部屋入る時、窓や床なんかに付いちゃった泥なんかも綺麗に拭き取って、自分はシャワーすれば完了です。 最後に使った脚立。 もし自分で持って来てたんなら、海に捨てちゃえばオヶ。 あのでっかいトランクなら、結構おっきいの入っちゃうし」

それから横にある、今使った脚立を指差した。

「もしウチの使ったんなら、これに付いちゃった泥や水滴、奇麗に拭いてから誰にも見られないように元に戻しちゃえばいいだけです。 これって、梯子と一緒で、照明替えたりするのに必要になるかも知れなかったので、用意しといたヤツです。 だから、みなさん来る前に一応、奇麗にしといたから、泥や雨水なんかを拭いた形跡、もしあっても、全く分(わ)かんないし。 だから・・・ね」

少年がかわゆ~く小首を傾げた。

「な~る(程)」

「な~る(程)」

「な~る(程)」

 ・・・

この説明に、皆、納得した。

だが、










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #69

#69




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「次は、桐生さんです。 桐生さん、殺されたお話です。 繰り返しんなっちゃうヶど、いいですか?」

「オヶ」

「オヶ」

「オヶ」

 ・・・

みんなが同意した。

「ありがと、皆さん。 じゃ、ワタシの推理続けちゃいますね。 先ず、一昨日の深夜、緒方センセは・・・。 否、センセはまだ犯人だと決まった訳じゃないから、キラですね。 キラは108号室、つまり桐生さんの泊まってるお部屋に行きました。 ドアをノックしました。 当然、桐生さんは来たの誰だか確認したはずです。 で!? もしキラと桐生さんが余り知ってない人同士ならドアは開けなかったと思います。 でも、良く知ってる人が来たら、多分開けちゃいます。 それが男の人だったらチョッと躊躇(ためら)っちゃったかも知れないヶど・・・。 ま、いっか。 ここで桐生さんはドアを開けちゃったんだと思います。 そしてキラは言葉巧みに桐生さんを外へ連れ出しちゃいました」

「あの激しい雨ん中をか?」

イチが聞いた。
ここからは、暫しイチと少年の会話となる。

「はい。 そうです」

「あんな雨ん中、連れ出すって、チョッとムリポだろ。 その推理チョッと強引過ぎやしないか?」

「いーえ~。 連れ出すのって、超簡単ですよ」

「超簡単?」

「はい」

「理由は?」

「だって、昨日は普通の日と違うから。 日高さん、殺された次の日だから。 だから、と~~~っても簡単なんです。 ワタシだって出来ちゃう位」

「言っている意味が、良ぅ見えん」

「あのね。 ワタシがもしキラならきっとこう言ったと思いますよ。 『日高 五里絵殺しと理科準備室での冬島 月子の事でチョッと話があるゎ。 あの木の下でね』 これでオヶ。 桐生さんは必ず付いて来ちゃいます、例えどんな大雨の中だろうと。 自分の拘(かかわ)った事件に関する事なんですからね。 それも自殺だヶじゃなくって殺人事件まで起きちゃった。 しかも殺されたのが仲間の一人だったっていう、その直後ですから・・・。 その時の精神状態考えたら一発です」

「フムフム。 なるほどなるほど。 あ!? でも、それには無理が・・・。 緒方先生は、ぁ、否、キラは、理科準備室での事を知ってなきゃなんないだろ。 どうやってあの事件の事、キラは知ったんだ?」

「それも超簡単。 だって、あれはガッコが調査してるはず。 ですよね、センセ?」

ここで拳代に話を振った。

「当たり前でしょ」

拳代が吐き捨てるように言った。
それを平然と受け、

「ね」

少年が 『ね』 って、みんなに言った。

「『ね』 って? どういう意味?」

横から美雪が聞いて来た。
少年が美雪を見た。
そして、詮索するような目付きで言った。

「緒方センセはガッコ側の人ですよ。 事件の事、知ってないと思います?」

「あ!? そっか」

アッサリ美雪が納得した。
まだ、緒方 拳代がキラだと決まった訳でもないのに。
その反応を見て、少年が続けた。

「お話し戻しちゃいますね。 上手(うま)~く桐生さんを呼び出せればあとは簡単、タイミングの問題だけです。 不意に、後ろから首にロープ巻き付けちゃうだけでいいんですからね。 そして絞め殺す」

「だが、待てよ。 もし仮にキラが少年ちゃんの言う通り女で・・・。 しかもそうやって、首にロープを巻き付けて冬美を絞め殺したとして、一体どうやって自殺に見せかける高さまで冬美の体を引っ張り上げたんだ。 普通、無理だろ、女の力じゃ」

イチが言った。
ここから再び、イチと少年の会話になる。

「はい。 無理です」

「へ!? じゃ、じゃぁ、君の推理はダメポになっちゃうじゃんか」

「でも、小道具使えばダイジョブです。 ワタシにも出来ちゃいます」

「小道具?」

「はい。 そうです」

「小道具って?」

「脚立です」

「脚立?」

「そうです。 脚立使って、持ち上げたんです」

ここで少年が霊園に近寄り、


(ごにょごにょごにょごにょごにょ・・・)


何かを耳打ちした。
それを聞き、

「良し、分かった」

霊園が頷いた。
そして食堂から、足早に出て行った。
その後ろ姿を目で少し追ってから、少年が美雪に聞いた。

「名無さん、チョッとお手伝い頼んでもいいですか?」

「手伝い? うん。 いいけど、どんな?」

「チョッとこっち、来て下さい」

黙って美雪が、少年の直ぐ側まで来た。

「チョッと待ってて下さいね。 直ぐですから」

「うん。 いいけど」

少年がもう一度、霊園が出て行った大食堂の出入り口に視線を向けた。
丁度その時、霊園が早足で戻って来た。
両手で脚立を持っている。
その脚立は高さが2メートル位あったが、アルミ製らしく然程(さほど)重くはなさそうだった。
霊園が少年の脇の床の上に、脚立を横にして置いた。

「ホィ!? 持って来たよ。 これでいいのかな?」

「うん。 いいよ、これで。 ありがと、霊園兄(よしぞの・にい)ちゃん」

「あぁ」

少年がその脚立を、右手指先で引っ掛けるようにして持ち上げた。
流石に女の子にはチョッと重かった。
それでも何とか持ち上げる事が出来た。
そのまま2、3歩(ぽ)歩いて見せた。

「コレっ、チョッと重いヶど・・・。 ね。 アタシでもなんとか持てちゃいます」

そう言ってから、


(カタッ!!)


脚立を床の上に立てて、


(カチャ!! カチャ!! カチャ!! ・・・ カチャ!!)


組み立てた。
再び、美雪に視線を向けた。

「じゃ、名無さん。 お手伝いお願いしちゃいます」

そう言って、少年が床に片膝付いてしゃがんだ。
付けたのは右膝だった。
その少年を見下ろして、

「ん? アタシ何すれば?」

美雪が聞いた。

「ワタシに負ぶさって下さい」

「へ!? 負ぶさる?」

「はい」

「?」

訳分らんつー顔こいて、美雪が少年に負ぶさった。

すると、プルプル震えながらも、

「ントー!!」

一言、気合を入れ、少年が美雪を負ぶって立ち上がった。
そのままの状態で、今立てた脚立を両手でつかんだ。
ユックリと右足を一番下の段に乗せた。

それから、

「ファ、ファイト~~~」

情けな~~~い掛け声を出し、思いっきしリキを込めて左足を持ち上げ、右足の乗っている一番下の段に乗せた。
それから、一通り、グルーっと周りを見回して言った。

「ね。 こうやってキラは脚立の上に上(のぼ)り、桐生さんを木に吊ったんです」

次に、少年は今行なったのと逆の手順で脚立から下りた。
再び、床に片膝付いた。
先程同様、右膝を。

そして、

「ヨッコラショ!!」

美雪を下ろした。

「フゥ~。 重かったぁ~。」

一息付いた。

それから、

「ありがと、名無さん」

美雪に礼を言った。

「ぉ、重かったぁ~って、アタシってそんなに重い?」

少年の言葉にチョビっとショックを受けた美雪であった。

「うぅん。 ワタシ力ないから・・・それで」

と!?

少年がアッサリそれを否定した。










そして・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #68

#68




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





少年が言った。

「3度目の今回、先ず、金田一さん達が来る前の日、死喪田 歌月としてキラはここ来ました。 そして、お部屋に誰も来させないように手を打ったその日の深夜か、翌日早朝、ワタシ達に気付かれないよう注意して、コッソリこの島を離れました。 恐らくドライスーツ着て、アクアラングして、泳いで。 そしてその朝・・・。 移動時間を考えたら、多分キラは使ったアクアラングとドライスーツ、本土のどっかに隠しちゃってからみなさんと約束の場所で合流。 何食わぬお顔してここ戻って来ました。 そして到着したその日、日高さん殺しちゃいました。 この辺は金田一さんの推理通りだと思ってます。 先ず、誰にも分かんないよう、日高さん一人をあのミニシアターのステージに呼び出して、不意打ち食らわせて、何か固い物で日高さんの後頭部を殴っちゃって・・・。 で!? この時点でまだ日高さんの意識があったかどうか分かんないヶど、ステージの上に仰向けに寝かせて、その上にシャンデリア落としちゃいました。 普段なら、そう簡単にあのシャンデリア吊ってあったトコ登れません。 でも、今回は演劇部の皆さんが来る事になってたんで、ウチ(オペラ座館)としても、もし必要なら照明を演劇用に替(か)えなくちゃなんないから・・それは皆さんが来てからのお話になっちゃうヶど・・そのための梯子なんかも用意してあったんで、誰でもその気になれば登れちゃいます」

ここで少年は公園に確認した。

「だよね、おじちゃん」

公園が答えた。

「あぁ、そうだよ。 その通りだよ」

そう言ってから、公園はイチ達の方を向いた。

「あの~。 予(あらかじ)め照明、替えて置かなかったのは、このような事を申し上げるのは誠に心苦しいのですが・・・。 何分、照明を替えるとなりますとそれはそれは大変な時間と労力が必要でして。 皆様のご滞在期間を考えた時、そこまでするのは・・・。 などと思いまして。 はい。 でも、もし替えて欲しいとリクエストされた時のため、一応、準備だけはして置いた次第です。 はい」

それを聞き終り、少年が話し始めた。

「そうです。 だから用意してあった梯子使えば出来ます。 素人(しろうと)でも・・チョッと高くて面倒だヶど・・あのシャンデリア吊ってあったチェーンのとこまで行こうと思ったら、何とか行けちゃいます。 後は吊ってあったチェーンとコード切るための金鋏(かなばさみ)か金鋸(かなのこ)なんかがあればオヶです。 道具は切った後、海に捨てちゃえば証拠なんかなくなっちゃいますしね。 そうやって、キラは日高さん殺したんです。 そしてあの日・・・。 つまり、日高さんが殺されたあの日、あの時。 そう、あの日、あの時・・・。 一番最後に食堂入って来たの、誰だか覚えてますか?」

ここで少年は拳代を見た。

「センセ、覚えてますか?」

「さぁ、誰だったかしら・・・」

「惚(とぼ)けてもムダですよ、センセ。 アタシちゃんと覚えてますから。 最後に食堂入って来たの・・・。 緒方センセ、貴女ですよ」

「だ、だから何よ!? ぇー? だから私がキラ? 最後に入って来たから私がキラだって言うの? まぁ、大した推理だ事。 フン。」

「そうですよ、センセ。 センセがキラですよ」

「ホ、ホ、ホ、ホ~~~ントに・・・。 こ、こ、こ、この小娘は~」


(プルプルプルプルプル・・・)


拳代が怒りで震えている。
構わず、少年が続けた。

「怒ったんですか、センセ? お顔、真っ赤ですよ」

「クッ!?」

怒りで言葉の出せない拳代であった。

「あのね、センセ。 センセの出勤簿見ちゃえばセンセが歌月としてここ来た事、直ぐ分っちゃうんですよ。 歌月ここ来た日とセンセがガッコお休みした日、見比べるだけでね」

そこまで拳代に言ってから、尻餅を見た。

「それって刑事さんのお役目ですよね。 分ってます?」

「ぉ、おぅ!? 分かっちよる分かっちよる、分かっちよるでぇ。 んなこたぁ当然、分かっちよるでぇ」

少年に急に話を振られ、チョビっとビックラこいた尻餅であった。

「では、又、お話続けちゃいますね」

少年が言った。

そして始めた・・・










次の推理を。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #67

#67




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「金田一さん、刑事さん、皆さん、こっからはワタシの推測んなっちゃいますヶど、続けてもいいですか? 聞いてくれますか?」

少年(すくね)がその場の全員に問い掛けた。

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オッチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、アンチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オレラも聞いちゃる」

最早、恒例になった感のある反応だ。
当然、これをほざいたのは尻餅、イチ、御布施の順であるのは言うまでもない。

「ありがと、皆さん。 じゃ、遠慮なく続けちゃいますね。 うん」

一言、礼を言って少年が続けた。

「あのね・・・。 この事件は、遡(さかのぼ)る事、今から2ヶ月前。 ろくがつ・にじゅう・ろくんち(6月26日)の土曜日。 キラが死喪田 歌月として、初めてここ来た時から始まっちゃいます」

ここで少年はイチを見た。

「金田一さん。 6月って言えば、何か心当たりって、ありますか?」

「6月かぁ、6月と言えば・・・。 ウ~ム。 ・・・」

イチが考え込んだ。


(ピッ、コーーーン!!)


閃いた。

「あ!? 冬島 月子が自殺したのが確か6月」

そして美雪に確認した。

「だったよな、確か?」

「うん、6月19日だよ。 月子、死んだの・・・」

透かさず、少年が反応した。

「ピンポ~ン!! ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!! はい。 正解です。 そうです、冬島 月子さんは今年の・ろくがつ・じゅう・くんち(6月19日)の土曜日にお亡くなりです、自殺して。 勿論、皆さんご存知ですよね」

「あぁ、知っちょるで、勿論」

って、御布施。

「俺なんかその場面に遭遇したんだからな、あのショッキングな・・・」

亀谷がそこまで言って、

『ハッ!?』

直ぐに気付いた。
その軽率な発言が、冬島 月子の恋人だった有森の神経を逆撫(さかな)でする事を。

「す、済まん、有森」

亀谷が素直に詫びた。
有森はジッと俯(うつむ)いて床を見つめている。
冬島 月子の事を思い出しているのだろうか?
その有森が顔を上げた。
そして亀谷の眼(め)をジッと見つめた。

「あ!? ぁ、あぁ・・・。 いいんだ。 俺の方こそ、返ってみんなに気を使わせて申し訳ない」

もう、有森は完全に立ち直っていた。

「でも、何で今更、冬島 月子の自殺なんかを持ち出すんだ? ん? 何で? 否、それより、どうして冬島の自殺の事、君が知ってんだ? 確か、学校が揉み消したっちゅお噂ゃで・・・」

イチが少年に聞いた。

「みたいですね。 でも、マスコミさん達には手を回せても・・・。 今はネットで・・・2chの書き込みからブログへ飛べば、なんでも分かっちゃう時代です。 はい」

「そうか!? ネットかぁ・・・」

「そうです。 ネットです。 冬島 月子さんみたいな不審死(ふしんし)は、必ず誰かがその情報を発信しちゃいます。 するとそれに呼応して、色んな人達が情報交換し始めます。 そこには・・・興味本位の人もいたり、あるいは関係者からコッソリ情報提供があったり、たまたまその場に居合わせて目撃した人のリークだったり、・・・、色々です。 確かに冬島さんの件は情報統制がきつい所為(せい)か、あんましネットでも騒がれてはいないヶど、それでも結構色んな事、お調べ出来ちゃいました」

「な~る(程)。 でも、何で? 何で今、冬島 月子なんだ?」

イチが聞いた。

「それをお話する前に、確認して置きたい事があります」

ここまではイチに向かって話していた少年が、今度は有森の方に向きを変えた。

「有森さん」

「ん!? 何だ?」

「はい。 冬島さんの恋人だった有森さんなら、冬島さんのお父さんのお名前って、知ってますよね」

「え!? 月子のお父さん?」

有森が冬島 月子を単に “月子” とだけ言った。
それを受け、これ以後、少年も冬島 月子を単に “月子” と呼び始める事になる。

「はい。 月子さんのお父さんです」

「ウ~ム。 誰だっけ・・・。 済まん、聞いた事ない。 誰だか知ってない」

「そうですか、知ってませんか? でも、謝る必要ないですよ。 無理ないから・・・。 あのね、有森さん。 あ!? そうだ!! その前にもうイッコ確認しとかなくっちゃ」

ここで再び少年は拳代を見た。

「緒方センセ」

「あ~ら、今度は私? 何かしら?」

「はい。 センセのホントのお名前・・・。 ってゆーかぁ、旧姓教えて下さい」

「え!?」

一瞬、拳代はギョッとした。
そして矢継ぎ早(やつ・ぎ・ばや)に、早口で喋った。

「な、な、な、何の話かしら!? きゅ、きゅ、きゅ、旧姓って・・・!?」

拳代が取り乱している。

「センセ、隠さずにチャ~ンと言って下さい」

「・・・」

少年のこの突然のエグイ突込みに答えられず、拳代は黙ってしまった。
何も語ろうとはしなかった。

代わりに、


(ピクピクピク)


引き攣(つ)った顔が痙攣している。
その表情から拳代の心理状態を読み取り、少年が言った。

「言えないみたいですね。 代わりにワタシが言っても・・・。 ま、いっか。 それは後回しにしちゃいますね。 他に言う事いっぱいあるし・・・」

そしてイチを見た。

「あのね、金田一さん」

「ん?」

「キラが死喪田 歌月として初めてここ来たの、月子さんがお亡くなりになって一週間後の事です。 2泊3日してます。 2度目は3週間前、やっぱし2泊3日してます。 今回も2泊3日の予定で予約入ってます。 これは今回の殺人が実に綿密に、しかも2ヶ月も前から計画されていた事を意味しちゃってます。 その実行現場は、勿論、ここ。 でも、なんでここ選んだかは分かりません。 前に来た事、あったのも知れません。 あるいは、口コミかなんかで・・・。 で、ここ選んじゃった。 ホント迷惑なお話なんだヶど・・・。 しかし、ここです。 間違いなくここです。 そしてそのための事前調査と、あたかもここのお馴染になる振りするのと、死喪田 歌月が実在の人物である事をでっち上げるためと、そのでっち上げた死喪田 歌月が男であるという印象を与えるためと・・・。 そのために過去2回来たんです。 それも、態(わざ)といっつもおっきなトランク持って・・・。 それは多分、今回のフェイクのため。 そして3回目の今回、終にその殺人計画、実行したんです。 そのためキラはここ来るたんび、いっつもご飯、お部屋で食べてたんです。 あたかも、それが習慣ででもあるかのように見せ掛けるために。 ・・・。 ホ~ント用意周到ですよね、怖い位です。 そして・・・」

「あ!? チョっと待った」

イチが少年を遮った。

「じゃ、もし・・・。 もしもだよ。 そんな事信じたくないけど、もしも、緒方先生がキラなら、なんで酷いビッコの振りなんかしたんだ。 酷いビッコの振りした以上、その行動にはなんらかの理由があるはずだ」

「はい。 勿論、あります。 でも、それはあとでキチンとお話します。 緒方センセがキラだって証明した後に」

少年がそう言った。

そして・・・

再び、謎解きを開始した。










エグイまでに鋭く・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #66

#66




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





深大寺 少年が、緒方 拳代の眼(め)をジッと見つめながら静かに語り始めた。

「昨日、ワタシは知ってるお友達全部にメールして協力してもらっちゃいました。 ここにいる全員の情報を、インターネットでお調べ出来るだけお調べしてね、って」

動詞 “調べる” に “お” を付け、 “お調べ” と体言化する、いつもの少年のしゃべり癖がここでも出た。

ここまで言ってから公園のいる方を向いた。

「おじちゃんがあんまり落ち込んでるから・・・。 何とかしなくっちゃ、って、思って・・・」

不意に少年の優しい言葉を聞き、

「うんうん、うんうん、うんうん、・・・」

何も言わず、でも、とても嬉しそうに何度も頷きながら公園が少年を見つめた。
再び、少年が拳代の顔を見た。

「すると、その中に幾つか吃驚(びっくり)しちゃうような情報がありました。 ワタシも直ぐにネットでその情報をお調べしました。 そして確信したんです。 緒方センセ、センセがこの事件の真犯人だという事を・・・」

「あ~ら。 どんな情報かしらぁ~? フン」

拳代が軽~く鼻で笑った。

「はい。 ホントに吃驚しちゃうような情報です。 緒方センセ、センセに関する情報ですよ」

「だから、どんな情報か聞いてるでしょ!! 一々もったい付けず、早く言ったらどうなの!? イッ、ライラする娘ね、ったく。 チッ」

マタ~リした少年の話し方に少々、イラっと来た拳代だった。
その拳代の眼をジッと見つめ、チョビっとふくれっ面をして少年が言った。
相変わらずマタ~リと。

「別にぃ、もったい付けてる分けじゃないヶどぉ・・・。 でも、言っちゃいますね。 うん」

瞬間、


(ギラン!!)


少年の瞳が怪しく輝いた。
そして、確信を持って聞いた。

こぅ。

「緒方センセ、センセにはお子さんが一人いますよね」

この言葉を聞き、一気に拳代の顔が引き攣った。
驚愕の表情だ。
同時に、声を荒げていた。

「きゅ、急に何を言い出すかと思ったらこの娘(こ)は・・・!? 私はずっと独身よ!! ずっとシングルだったのよ!! こ、子供なんて!! 子供なんている訳ないじゃない!! フン。 失礼しちゃうゎね、全く」

「そうでしょうか?」

「き、き、き、決まってるでょよ!! 何が 『そうでしょうか?』 よ、涼しい顔して。 ホッ、ントにイライラする娘ね!? ったくぅ!!」

「センセ、何そんなに慌ててるんですか? そんなに慌ててると返って認めてるようなもんですよ」

「ぅ、うるさい娘ねー!? 一々! 慌ててなんかいないゎよー!! だ、第一!! 私に隠し子なんている訳ないでしょ!!」

ここで再び、


(ギラン!!)


少年の瞳が怪しく輝いた。
そして、徐(おもむろ)に言った。

「センセ。 語るに落ちちゃいましたね」

「ん!? 語るに落ちたぁ? ど、どういう意味よ?」

「だって、ワタシさっき、 『センセにはお子さんが一人いますよね』 とは言ったヶど、 “隠し子” だなんて一言も言ってませんよ」

「クッ!?」

拳代は、言葉に詰まった。
自爆を認めたのだ。

「だ、だから・・・。 そ、それは・・・」

「どしたんですか、センセ? お顔の色、お悪いですよ。 真っ青ですよ。 それに汗もイッパイかいちゃって。 それって、きっと、図星指されちゃったからですよね」

「ホッッッッッ、ントに貴女って娘ゎぁ・・・!?」

拳代が焦っている。
それ以上、二の句が継げない。
怒りで体がプルプルしている。
拳も固く握り締めている。
今にも殴り掛からんばかりにだ。

「センセ、続けてもいいですかぁ?」

「クッ!?  な、な、な、な~にそんなに勝ち誇ってんのよ!? ぇー? ・・・。 まるで自分こそが、ファントムの書いた楽曲 『勝ち誇ったドン・ジョバンニ』 のモデルだとでも言いたそうに!? 第一、そんな事ー!! 一々、アタシに断らなくったっていいじゃない!! いいから、さっさと続けなさい!! ったく、今日はとんだ厄日ね!! フン」

拳代が言葉を吐き捨てた。

しかし、拳代のこの焦り具合・・・やはり少年の言った通り、拳代は図星指されたのだろうか?

そして、

この後も少年の謎解きは、まだまだ続くのであった。

そ、れ、も、・・・










情け容赦なく・・・











つづく






深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #65

#65




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「死喪田 歌月は 否 キラは・・・貴女です!!」

深大寺 少年がキッパリと言い切った。
更に、もう一言だけ、付け加えた。

こぅ・・・

「緒方センセ!!」

と。

そぅ。

少年が対峙した相手は・・・緒方 拳代だった。
ここで少年は、体の向きをイチ達の方に変えた。

「だからさっき言い掛けて止めちゃったお話、ここでしちゃいますね。 あの時・・・つまりキラが有森さんと、亀谷さんと、銭湯さんのお部屋のドア叩いたあの時です。 あの後キラのお姿、消えちゃいました。 どこにでしょうか? どこだと思いますか? 名無さん」

「え!? アタシ・・・?」

「はい」

「ントー・・・。 分かんない」

「超簡単なんだヶどなー。 分かんない?」

「うん」

「有森さんはどうですか?」

「え!? 俺!?」

「うん」

「ウ~ム。 分らん!?」

「そうですか~、分りませんか~。 皆さんはどうですか?」

少年が全員に振った。
しかし、

「ウ~ム。 分らん!?」

「ウ~ム。 分らん!?」

「ウ~ム。 分らん!?」

 ・・・

分かる者は誰もいなかった。
勿論、イチもだ。

「じゃ、しゃーない。 ワタシが言っちゃいますね。 銭湯さんのお部屋の隣のお部屋です。 隣のお部屋に入ったんです、銭湯さんの。 そん中、入っちゃえば分かんなくなっちゃうでしょ」 

「ぁ、そっかー」

美雪が納得した。
だが、直ぐに気付いた。

「あ!? で、でも、銭湯君の隣の部屋って言ったら・・・。 亀谷君と・・・」

一瞬、美雪はその先を言うのを躊躇(ためら)った。
みんなも、美雪が何を躊躇ったのかを瞬時に理解していた。
そして何も言わず、拳代の顔を見た。
美雪達が気付いたのを見て、代わりに少年が言った。

「そうです。 キラが逃げ込んだ銭湯さんの隣のお部屋、それは101号室です。 つまり、緒方センセのお部屋です。 そう・・・。 キラは緒方センセのお部屋に逃げ込んだんです。 そしてそこでお着替えして、何食わぬお顔してあそこに・・あの窓の側に・・お姿、現したんです。 そうだとすれば辻褄(つじつま)合っちゃうでしょ。 ね」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

みんなが頷いた。
皆、納得、得心しているのが良く分かった。

それを見て、


(スゥ~)


少年は拳代のいる方に、再び向きを変えた。
ジッと拳代の眼(め)を見つめ、再度ダメを押した。

「じゃぁ、なんで101号室か? ・・・。 そ、れ、は・・・。 センセがキラだから」

その言葉を聴き、

「アァッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ。 何を言い出すかと思えば、この娘(こ)は・・・。 何を根拠にそんな事? いい加減にしなさい!! 子供のクセに探偵ごっこだなんて!! アッァ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ」

拳代が少年を嘲笑(あざわら)った。
スッゲー態(わざ)とっぽく。
それから尻餅を見た。

「刑事さんも刑事さんです。 さっきから黙って見てれば、こんなオコチャマの言う事、真顔でお聞きになって。 恥ずかしくないんですか? え~? 大の大人が、こんな小娘の言う事・・・。 フン」

それまで自分を指差してキラだと言われた時でさえ、黙って少年達のやり取りを見ていた緒方 拳代がお冠(かんむり)だ。
無理もない、全員の目の前で自分が殺人犯呼ばわりされたのだから。

だが、

そんな拳代に御構いなし。
少年がキッパリと言い切った。

「はい。 センセの言う通り根拠はないですよ。 でも緒方センセ・・・。 やっぱりセンセがキラです。 キラはセンセです」

「チッ。 まだ言うの? しつっこい娘ねぇ。 ・・・。 あっ、そ。 じゃ、私がキラだという事を証明してみなさい!! その代わり、出来なかった時は酷いゎよ、いい事? 客を殺人犯呼ばわりしたんですからね」

拳代が少年を睨み付けた。

「はい。 覚悟は出来てます」

「なら、俺がその審判官を買ってやろう」

尻餅だった。
一歩前に出て、そう言っていた。
それも驚くなかれ、思わず、

「カッケー!!」

って、言いたくなっちゃう位・・・カッチョ良く。。。
右半身に構えちゃったりして。
勿論、斜め七三の角度に。

そ、れ、も・・・

少女マンガかなんかで良く見る、長髪・ハンサム・十頭身の超カッチョぇぇオスが、その自慢の長髪をキザ~~~に下から上にかき上げながらほざく、

「ハン」

つー感じの二枚目ポーズみたいの取ったりなんかしちゃったりして。。。
全く、似合っとらんかったヶど・・・



そして今・・・

いよいよこのドラマのクライマックス・・・

深大寺 少年による・・・

この事件、最後の謎解きが・・・

終に・・・

開始されたのである。



・・・出るか?

・・・必殺!?










『深大寺 少年!! 容赦なし!!』











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #64

#64




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「いぃえ、女です」

少年がキッパリと言い切った。

「でもね、少年ちゃん。 キラが女という事になると候補者は・・・。 ぇえーっと・・・。 イチ、ニー、サン、シー、ゴー、ロクっと。 6人しかいないのよ。 貴方達、この民宿の従業員さん3人と、アタシと緒方先生と幽鬼先生の奥さんの・・・合計6人しか、襲われ掛けた早乙女先輩除くと。 でも、ここの従業員さん達は関係ないでしょ? とすると3人。 たったの3人しか・・・」

美雪が、その場にいる自分を含めた早乙女を除く女達全員を、一人一人指差して数(かぞ)えて反論した。
少年がその美雪の目を覗き込むようにジッと見つめた。
そしてキッパリと断言した。

「間違いありません。 キラは女です」

「ホゥ~。 大層な自信だな。 その根拠は?」

尻餅登場。

「ありません」

「なーに~? ありません~。 ぁ、あ~~~りません、だと~~~!!」

ま~た始まった、いつもの尻餅だ。

「あくまでもワタシの推測です。 でも、間違いないと思ってます」

「なら、少年ちゃんにはもう、真犯人が誰だか分かってるってゆう訳?」

美雪が聞いた。

「はい。 分かってます。 もうズッと前から・・・」

「なら、早くソイツの名を言え!!」

尻餅だ。

「はい。 さっき、金田一さんが言ったように、歌月に化けたキラは・・移動時間を考えたら、多分、使ったアクアラングとドライスーツを本土のどっかに隠し・・何食わぬお顔して金田一さん達と一緒にこの島に上陸してます。 そして、今までワタシが話して来た全ての条件を満たしている人は、たったの一人・・・」

少年がユックリと体を回した。
ある人物と相対峙するために。

そして、


(スゥ~)


静かに伸ばした右腕を上げ始めた。
右手は拳を握っている。


(ピタッ!!)


腕を止めた。
それからユックリと人差し指を・・・人差し指だけを伸ばし始めた。

最後に、その伸ばした人差し指で、


(ピッ!!)


ある人物を指差した。
そして、こう言い切った。

「死喪田 歌月は 否 キラは・・・貴女です!!」

と。










キッパリ・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #63

#63




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「え?」

少年にはイチの言った言葉の意味が分からなかった。
だから、思わず反復していた。

「チチ?」

それを受け、イチが真顔で大真面目に少年に言い切った。
キッパリと。

こぅ。

「そうだ! チチだ!! 歌月のチチはタップリ腫れていたか?」

って。

先程の “マンスジ” の時と違い、心の準備がないままいきなりHな事を聞かれたため、お顔を赤らめ、恐る恐る、恥ずかしそうに少年がイチに聞き返した。

「チチって、ぁ、ぁ、ぁ、あの~、胸の事ですか?」

「えっへん!! そうに決まっとる!!」

イチが鼻息荒く答えた。
このやり取りを見ていて、堪らず美雪が、横から慌ててイチを窘(たしな)めた。

「も、もうイッチャンたらぁ、変な事聞いて」

そして少年に視線を向けた。

「ごめんね、少年ちゃん。 変な事聞いちゃって。 この人ったら、いっつもこうなのよ。 ホントにごめんね」

「ぃ、いぇ、ダイジョブですよ。 ぃ、いきなりだったから~。 ア、アタシ、チョ、チョッと吃驚(びっくり)しちゃって・・・。 だ、だからダイジョブですよ」

だが、イチは変わらない。
追い討ちを掛けた。

「で、どうなんだ、少年ちゃん。 歌月のチチは腫れていたのか、タップリと?」

「うぅん。 それは分かりませんでした」

最早、少年はたじろがない。
ガッツリこれを受け止めた。
ここが、女のツオイ所だ。

「ナゼ?」

イチが聞いた。

「はい。 この暑さなのに、ぶかぶかのロングコート着てたから」

「ロングコートを?」

「はい」

「そうか~。 そんなカッコしてまで・・・。 う~む。 ヤツは、歌月は 否 キラはどこまでも用意周到なヤツ。 だが、ここまでの情報だけではキラを女と断定するのはまだ無理があるな。 性別に関しては取り敢えず、『保留』という事に・・・」

イチが考え込みながら言った。

だが・・・










これに対し・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #62

#62




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「おぅおぅおぅおぅおぅ~、小娘~。 オメェの言うこた~、ぁ、良~く分かった~」

尻餅がほざいた。
勿論、いつもの歌舞伎調なのは言うまでもない。
それから有森を指差した。

「こいつが死喪田 歌月 否 オメェ流に言ゃ、キラだったけか。 (ここまでは普通に、後は歌舞伎調で) そのキラじゃねぇーんなら~、一体だ~れが、ぁ、キラなんだーょ~」

「はい。 それを言う前に、死喪田さ・・・ 否 死喪田 歌月という人物についてのワタシの考え聞いてもらえますか」

一瞬、死喪田を “様” 付けで呼びそうになった少年であった。
この少年の言葉を聞き、

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オッチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、アンチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オレらも聞いちゃる」

尻餅、イチ、御布施が、順にほざいた。
それを聞き、

「うん」

少年が軽く頷いた。
そして話し始めた。

「先ず、死喪田 歌月の人となりについてです。 えっとー、死喪田 歌月のお姿をご覧になった方に聞いちゃいますね。 死喪田 歌月は男でしょうか? それとも女でしょうか? どっちでしょうか?」

「そんなもん、オメェ、言うまでもなく決まってるじゃねぇか。 男に・・・」

尻餅がエッラそうにほざいた。
それも珍しく普通に。

「勿論、あの姿、男に決まってるゎ。 ねぇ、先輩?」

美雪が早乙女に同意を求めながら言った。
既に、早乙女は落ち着きを取り戻していた。

「ぇ、えぇ。 美雪の言った通り、男だと思うゎ、アタシも」

イチは考え込んでいた。

「う~む」

そして少年に聞いた。

「君はまさか死喪田 歌月が女だとでも・・・?」

「はい。 そのまさかです。 ワタシは死喪田 歌月は女の人じゃないかなって、思ってます」

「ど~いう事だか~、詳しく~、ぁ、話し~やーがれ~~~」

尻餅だ。

「はい。 こういう事です。 ワタシが始めて死喪田 歌月に・・ぁ・・そうだ・・死喪田 歌月って、チョッと長すぎちゃうので、これからは単に “歌月” って呼ぶ事にしますね。 いいですか?」

「おぅおぅおぅおぅ、構わん構わん構わんでー」

これも尻餅だ。

「じゃ、 “歌月” って言っちゃいますね。 ワタシが始めて歌月のお姿見た時、歌月は酷いビッコひいてました。 でも、そのお姿見て、ワタシ、チョッと変!? って、思っちゃいました。 だって、酷いビッコひいてる歌月がシークレットブーツ履いてたから」

「な、な~にー? シークレット、ぁ、ブーツだってぇ~~~」

尻餅だ。

「そうです、シークレットブーツです。 シークレットブーツ履いてたんです、歌月は。 それも高さが10cm近くもありそうなヤツ。 足がお悪いのにシークレットブーツ? って、思っちゃいました、その時」

「つー事は、歌月の身長は、あの感じじゃ、170cmない事になるな」

イチが言った。

「はい。 多分」

「でも、ナゼ、シークレットブーツなんか? う~む」

イチが少年に聞くとでもなく、考え込みながら、独り言のように言った。

「それは歌月の正体が女の人だから。 だからシークレットブーツで背を高く見せて・・・ それにトランクもワザとおっきいのを・・・。。 男の人と思わせるために」

少年のこの言葉を聞き、イチが考え込んだ。

『歌月は、女・・・。 女女女女女・・・』

突然、


(ピッ、コーーーン!!)


イチが何かを閃いた。
透(す)かさずほざいていた。


こぅ・・・










「チチは?」











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #61

#61




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





イチは黙っていた。

「・・・」

黙って何かを考えているようだった。
そのイチに有森が近寄った。
有森は疾(と)っくの昔に立ち上がっていた。

「な!? 金田一、ホントにゴキだったろ。 な!? 俺、ゴキ、超超超、超ーーー、苦手なんだ」

「ぁ、あぁ。 済まん、有森。 疑ったりして・・・」

「あぁ、ホントだぜ、ったく・・・。 って、文句の一つも言いたいとこだが、疑われるような真似した・・・ボーガンなんか持って来た俺も悪かったんだ。 許してやるよ。 それに月子との事、告白出来たし、結果オーライだったかもな」

背後から有森に早乙女が近付いて来た。
力なく有森に声を掛けた。

「有森君・・・」

「ん!?」

有森が振り返った。

「ごめんなさい、有森君。 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・」

早乙女が有森に詫(わ)びた。
目に大粒の涙を湛(たた)え、『ごめんなさい』を繰り返した。
徐々に感情が高まって来た。
そして、

「ワァーーー!!」

終に泣き出した。


(ドサッ!!)


床にへたり込んでしまった。
両手で顔を塞(ふさ)ぎ、頭(こうべ)を垂れ、泣きながら叫んだ。

「ワァーーー!! ま、まさか。 まさかまさかまさか、ぁ、ぁ、ぁ、あんな事に、あんな事になるとは思わなかったのよーーー!! ワァーーー!!」

その惨めな姿を有森が複雑な面持ちで眺めている。
拳を固く握り締めて、こう思いながら、

『クッ!? つ、月子はこんなヤツに・・・。 こんなヤツらに・・・。 こんな惨めなヤツらに・・・。 でも、懸命にコイツらを許そうとしてたんだ、こんなヤツらを・・・。 だが、俺は・・・。 俺は俺は俺は、コイツらを・・・。 く、くそっ』

と。

それを余所目(よそめ)に、

「先輩・・・」

美雪が早乙女の足元に歩み寄って声を掛けた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・」

早乙女は再び、小声で『ごめんなさい』を繰り返していた。

そこへ、


(タタタタタ・・・)


少年が戻って来た。
きっと手を洗ったのだろう、掛けていたエプロンで手を拭っている。

「お待たせしちゃいましたぁ」

「おぅ!? おぅおぅおぅおぅおぅ!? 待ちかねたぜ~。 あ~ん、小娘~~~」

透かさず尻餅登場。
勿論、いつも通り大見得切っての。

「済みませ~ん」

少年が尻餅に “ニカッ” ってして謝った。
その “ニカッ” を見て、尻餅は思った。

『ぉ、おぅ・・・。 カ、カワユイじゃねぇか・・・』

って。

お顔をポッて・・・










赤らめて。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #60

#60




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ところで金田一さんは、気付いていますか?」

少年がイチに聞いた。

「何を?」

「時間です」

それを聞いた瞬間、

『ハッ!?』

イチは思い出した、自分が推理したボーガン発射予定時刻を。
そのイチの顔色をうかがって、少年が言った。

「そうです。 もう、時計は7時20分を大きく回っちゃってます。 つまり、ファントム最後のトリック遂行予定時刻の7時を、疾(と)っくに過ぎちゃってます。 でも・・・でも、何にも起こりませんでした、何にも・・・。 ボーガンの矢なんてどっからも・・・」

だが、少年がそう言ったまさにその瞬間・・・

突然、


(サッ!!)


有森が、再び後ろに飛んだ。
しかし、


(グラッ!!)


バランスを崩した。


(ドテッ!!)


床に倒れこんだ。

「ゴ、ゴキー!?」

と、叫びながら。

その時、


(ガサゴソ、ガサゴソ、ガサゴソ、・・・)


“何か” が有森の足元付近に姿を現した。


そぅ。


“何か” が・・・




ハイ!! ここで作者から読者の皆様に問題です。

【問題】上記の姿を現した “何か” とは、一体なんでしようか?


正解・・・は?

懸命な読者の皆様なら・・・

ケッ!!

つー位、簡単ですよね。

そうです。

【正解】ゴキブリ

ですたぁ。




「ヒッ、ヒャ~~~!!」

悲鳴を上げ、


(ゴロン!!)


有森がその場にでんぐり返った。

「ゴキゴキゴキゴキ、ゴキブリーーー!!」

つー悲鳴こいて。

だがその瞬間、


(プチッ!!)


少年が目にも留まらぬ 否 目に留まる速さでそのゴキブリを足で踏んだ。
素早く、掛けていたエプロンのポケットからティッシュを取り出し、そのティッシュで床と、踏んだ上履きの底に付いた潰れたゴキの汁を拭き、踏みたてホヤホヤのゴキブリを摘(つま)み取った。
それから公園を見た。

「ダメだよ、おじちゃん。 ここゴキいるよ。 折角のこの民宿の格、落としちゃうよ、台無しだよ」

向きを変え、ティッシュを見せ、みんなに言った。

「チョッとこれ、捨てて来ちゃいますね」

って。

そして、


(タタタタタ・・・)


少年は走った。
調理場のゴミ捨て場まで。










ゴキ入りティッシュを捨てるために・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #59

#59




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「仮面とマントと帽子と靴、窓から捨てただけ、という金田一さんの推理、ワタシも支持します。 だから軽~い帽子は風で飛んじゃったヶど、重た~い仮面とマントはキラの狙い通り、海の上に落ちて浮いてたんです。 靴は沈んじゃって。 でも、その後が少し違う気がしてます」

少年が言った。
マタ~リと。

「どう?」

イチが聞いた。

「はい。 ファントムに化けたキラは、仮面なんかを急いで窓から投げ捨てた後、その場には留まんないで、そのまま逃げたんじゃないかなって、思ってます。 着ていたお洋服に浸み込んでいた雨水、用意してたタオルかなんかでササッと一通り拭いて、床に水滴が滴(したた)り落ちないように」

「じゃ、じゃぁ、イッチャンが最初にぶつかった有森君の説明は?」

相変わらずの少年の物言いのマタ~リさに耐え切れず、反射的に横から美雪が嘴(くちばし)を入れた。

「はい。 金田一さんの推理は、有森さんが廊下に出てた時にだけ当てはまります。 もし、自分のお部屋にいたらどうでしょうか。 キラが有森さんのお部屋の前を通り過ぎた後に有森さんがお部屋出ていたら・・・有森さんのお部屋は104号室です。 あの窓に一番近いお部屋です」

「そ、そうなんだよ!? よ、良くぞ!! 良くぞ、それに気付いてくれた!! 良くぞ、それに・・・。 あの時、誰かが俺の部屋のドアをノックしたんだ。 丁度その時、たまたま俺はドアの近くにいたんで、割と直ぐドアを開けたんだ。 そしたらやけに騒がしかったんで、部屋を出て音の聞こえる方に早足で歩いていたら、突然目の前に金田一、お前が現れたんだ」

「そ、そう言えば、俺の部屋のドアも誰かがノックしたぞ」

103号室の亀谷が言った。

「俺の部屋もだ」

102号室の銭湯も。

それを受け、少年が言った。

「それが真相です。 この事件の真犯人は、あの時自分のお部屋にいた3人の人達を巧みに利用して、トリックを仕掛けたんです」

「何のために」

美雪が聞いた。

「恐らく挟み撃ちのフェイク」

「え!? 挟み撃ちのフェイク?」

「はい。 挟み撃ちになってるはずなのにキラは消えていた。 そうすれば誰もが、間違いなくキラは窓から海に、あの怒涛の海の中に窓から飛び込んだ。 きっとそう思うからです」

「ウ~ム。 でも、それは変だな」

今度は有森だった。

「どこがですか?」

少年が聞き返した。

「それなら俺達はキラの足音を聞いているはずだ。 でも、俺はノックの音以外、な~んも聞いちゃいない」

「お、俺も何も・・・」

と、亀谷。

「そういや、俺も足音らしいのは聞かなかったなぁ」

と、銭湯。

ここで突然、

「それはどう説明すんだ?」

と、


(ニュ~)


いきなり少年の目の前に、大アップで尻餅登場。
その尻餅の突然の大アップの登場に、

「アハハハハ。 それはと~っても簡単ですよ。 アハハハハ」

思わず少年は笑ってしまった。
無理もない、少年はまだ16。
『鉛筆が転がっただけでも、可笑しいお年頃』なんだから。

「簡単?」

『ん? な~にがそんなに可笑しい』つー、お顔して尻餅が聞き返した。

「はい。 簡単です。 笑っちゃう位簡単です。 理由はこうです。 この建物、殆(ほとん)ど全部、廊下には絨毯(じゅうたん)敷いてます。 そしてキラは裸足です。 だからチョッとしか足音はしなかった。 裸足で絨毯だったからです」

そう、素早く素に返って少年が答えた。

「おっ!? な~る(程)」

尻餅が納得して言った。

「ね。 簡単だったでしょ。 ここの絨毯は厚手のペルシャ織だから、余程、妙な走り方しない限り、裸足なら足音殆(ほと)んど無しです」

「な~る(程)」

「な~る(程)」

「な~る(程)」

 ・・・

今度はみんなが納得した。

「あ!? なら、キラは? キラはどこに消えちゃったのかしら?」

不意に、美雪がそれに気付いた。

「そうだそうだ。 なら、キラはどこへ・・・?」

と、御布施。

「どこ行っちゃんたんだ?」

と、亀谷。

「ワープしちゃったのか? 異次元にでも・・・」

と、銭湯。


(ジー)


全員が少年の顔を覗き込んだ。
少年がなんと言うか興味津々なのだ。

すると、少年が爽やか~に、最後に言った銭湯の問い掛けに答えた。

「うぅん。 違いますよ。 異次元なんか行ってませんよ」

って。

「じゃ、どこ?」

美雪が聞いた。

「はい。 あのね・・・」

一瞬、少年がキラの逃げ込んだ場所を言おうとした。
が、
躊躇(ためら)った。
まだ、先に言わなければならない事があったからだ。

「でも、それ言うの後回しです。 後回しにしちゃいますね。 その前に、まだ確認しなきゃなんない事、あるし・・・」

そう言って・・・










少年が続けた。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #58

#58




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「桐生さんがお部屋出る時、カギ掛けていようがいまいがキラにしてみれば、犯行後桐生さんのお部屋入るの簡単です。 掛けてなければそのまんま、掛けてても殺された桐生さんがカギ持ってるからです。 殺してから奪っちゃえばいいからです」

少年の推理は続いていた。

「フムフム。 なるほどなるほど」

みんな納得して聞いている。
ここで、久しぶりに尻餅登場。

「だが、害者のあの時のあの格好・・・あれは? ん? アレはどう説明すんだ? あのマンスジクッキリの、あの格好」

御布施も登場。

「そうそう、それそれ。 あのマンスジクッキリの・・・」

きっと、既に心の準備が出来ていたのだろう、女の子の少年がこの手の言葉に対して全く恥ずかしさを出さず、真正面から受けて立った。

「目を逸らしちゃうためにです」

「え?」

「え?」

「え?」

 ・・・

みんなが『意味分らん』つー、お顔をした。
少年が続けた。

「あのカッコにしておけば金田一さん同様、誰しもが室内での殺人だと思うからです。 あのカッコの時殺されて木の下まで運ばれた、そう思うからです。 決して刑事さんへのサービスなんかじゃありません」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

 ・・・

今度はみんな納得した。

「そうしておいて、キラは桐生さんの靴脱がして、それ持って、さっきの金田一さんの推理みたく桐生さんのお洋服使ったり、芝の上や水溜り、あるいは土の固いトコなんかをかなり大回りして、足跡残さないように注意して、自分のお部屋戻って、体綺麗にして。 それから、もう1回108号室、つまり桐生さんのお部屋入って、カギとチェーン掛けて、持って帰ったヤツかそれとも別のかは分かんないヶど、桐生さんの靴履いて、窓から出て、木の下まで来ちゃって。 後は金田一さんの推理の通り・・・になっちゃう筈なんだヶど。 でも、・・・」

ここで少年は一旦、言葉を切った。
そして、徐(おもむろ)に言った。

「ここでもし、真犯人が有森さんだとするなら、イッコ問題があります」

それから、視線を尻餅に向けた。

「何だと思いますか?」

「ぅ、うん? 俺にか・・・?」

「はい」

「ウ~ム。 分からん」

「皆さんはどうですか?」

「ウ~ム」

「ウ~ム」

「ウ~ム」

 ・・・

みんな考え込んだ。
聞かれてる事の意味が良く分からなかったのだ。

「質問の意図が読めないゎ」

素直に美雪が聞いた。

「そっかー、意図読めませんか?」

「うん」

「じゃぁ、ワタシが言っちゃいますね。 それはね。 有森さんが桐生さんの靴履くの少し無理があるという事です。 ナゼかと言えばサイズ・・・そう、足のサイズが違い過ぎちゃうような気がするからです。 有森さんが桐生さんの靴履くとするなら、その履き方はたったの一つ。 どうすればいいか? それは靴の踵(かかと)を踏む。 これだけです。 これ以外、有森さんが桐生さんの靴履く方法考えられません、他には足を切る事位しか。 でも、あの靴、踵踏まれた跡なかったです。 でしたよね、刑事さん」

「おぉ。 そうだそうだ、そうだったそうだった。 確かに踵を踏んだ跡は見られなかった。 確かそんな気がする。 良し、後でもう一遍確認してみんべぇ。 県警が来るまで靴や現場はそのまんまだからな。 害者の死体以外は」

「それともうイッコ・・・」

更に、少年が続けた。

「もし、金田一さんの推理通り、犯人が窓で桐生さんの首を吊るそうと計画した場合なんだヶど。 もし失敗したらどうなっちゃうでしょうか。 犯人誰だか直ぐばれちゃいますよね。 それに、例え成功したって、携帯の通話記録から怪しまれちゃう可能性だってあるし。 つまり日高さん殺したのが誰か、疑われちゃう可能性です。 これだけ用意周到な犯人が、失敗したら直ぐ犯人ばれちゃうような真似(まね)、果たしてするでしようか?」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

 ・・・

「これで有森さんがキラであるという金田一さんの根拠、崩れちゃいました。 ですよね、皆さん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

「それからキラがファントムのカッコして名無(美雪)さんのお部屋覗いたのは、金田一さんの推理の通りだとワタシも思ってます」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

「じゃ。 いよいよ、この事件の核心部分・・・。 つまり、キラはどこに消えちゃったかを推理しよっかと思います」

ここで少年は一呼吸置いた。

キラ即ち、死喪田 歌月。

否、

真犯人がどこに消えたかを・・・










語るために。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #57

#57




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「日高さん殺した殺し方は、金田一さんの推理通りだと思ってます。 きっと犯人は、日高さん一人だけ上手に舞台に呼び出して、撲殺しちゃってからシャンデリア切って落としたんだと思ってます。 もち(勿論)、日高さんの上に。 だから異論は有りません。 でも、桐生さんの殺害方法は・・・」

ここで少年は口ごもった。
尻餅が、そんな少年の尻を叩いた。

「オィ!? どうした、娘っ子!? な~に黙ってんだ、この~。 早く続きを言え」

って。

「うん。 でも~、あの~。 金田一さんの~、・・・。 あの~、さっきの金田一さんの推理~、・・・。 否定しちゃう事になるんでぇ・・・」

これを聞き、尻餅があたかも鬼の首でも取ったかのような、上を下への大喜びこいた。
それも、オモイッキシ力強く右手人差し指でイチを“ピッ”って指差し、そんでもって、まるで動物霊に憑依されたオサーンが阿波踊りこいてるみたく、万歳した両手を頭上で激しく振り回しちゃったりなんかしたかと思ったら、今度は、応援団の正拳突きっぽい仕種まで交えちゃって・・・だ。

こんな具合に・・・

「な、な、な、な~にーーー!? コ、コ、コ、コイツのコイツのコイツの推理、否定しちゃうだとー!! んな事、んな事、んな事、・・・。 いいぞー、やれーやれー、ドンドンやれー。 ガンガン行けーーー!!」

って。

これには、それまで散々恥をかかされて来た御布施も一緒んなって大喜びだ。
最早、応援団長の域だ。

「ヨッシャー!! 許す!! 俺が許す!! ドンドンだーーー!! ドンドン行けー!! 行け行けドンドンだーーー!! フレ~~~、フレ~~~、す! く! ね!! フレ~~~、フレ~~~、す! く! ね!! ホレッ!! フレッ、フレッ、すくね!! フレッ、フレッ、すくね!!」

って。

一方、イチはと言えばムスッとしているだけであった。
それを受け、少年が自分の推理を語り始めた。

「金田一さんのあの推理には、幾つか無理があるような気がしてます」

「例えば?」

イチが聞いた。
暫(しば)し、少年とイチの会話となる。

「はい。 先ず、桐生さんがお部屋の中で殺されたという点です」

「どうして? 部屋のカギはシッカリ掛けられてたんだぜ、チェーンまでシッカリと」

「でも、もし、桐生さんのお知り合いの人がお部屋に尋ねて来たら?」

「ん!? どういう事かな?」

「はい。 こうです。 ワタシの考え、最初からお話しちゃいますね。 仮に犯人を“キラ”って、呼んでみたいヶど、いいですか?」

「あぁ、いいよ。 オヶ」

「はい。 じゃ、これから犯人の事、キラって呼んじゃいますね。 で!? もし、金田一さんの推理が正しければ、桐生さんの首、ロープの痕(あと)二つ付いちゃいます。 イッコ目は窓の所で、ニコ目は木に吊った時にです。 どんなに上手にイッコに見せ掛けようとしても、ムリポだと思います」

『ハッ!?』

イチがショックを受けた。
なるほど、その通りだったからだ。

これにはイチ同様、

「フムフム、なるほどなるほど」

「フムフム、なるほどなるほど」

「フムフム、なるほどなるほど」

 ・・・

尻餅以下、みんなも納得して聞いていた。

一呼吸入れてから少年が続けた。

「でも、付いてたロープの痕は一つだけ。 ですよね、先生?」

幽鬼が答えた。

「うん、そうだねぇ。 いい所に気が付いたね」

って。

「と、すれば、桐生さんの首吊った場所はたったの一ヶ所。 それは木の下。 絶対、木の下です。 それ以外、考えられません」

ここで美雪が割り込んで来た。

「それだとすると、さっきイッチャンが言ったように部屋のカギはどうなるの?」

「はい。 それもワタシがさっき言ったみたく、キラと桐生さんが顔見知りならば全然問題なしです。 だって、もし、キラと桐生さんが顔見知りだったら、その顔見知りが部屋に来たんだから、当然、桐生さん、カギ開けちゃうでしょ。 そうなれば、後は簡単です。 後は、キラが言葉巧みに桐生さん、部屋から外、連れ出しちゃって、地面に靴跡付かないようなトコ・・・チョッと遠回りすればそんなトコ結構あるし、あの木の近くには。 どうしても付いちゃった靴跡は、後で消せばいいし。 靴跡、上から足でギュってしちゃえば、後は雨がやってくれるし。 だから、なるべく靴跡付き難いトコ選んで歩いて、あの木の下まで来て、不意打ち食らわせて、首吊っちゃったと考えたらどうですか?」

「フムフム。 なるほどなるほど」

少年の謎解きに納得頻(しき)りの・・・










尻餅達であった。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #56

#56




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「ところで、オメェ、さっき言ってたな。 死喪田 歌月が男であるという印象をより一層強くするためとか何とか、ありゃ、どういう意味だ?」

尻餅が少年に聞いた。
これを切っ掛けに、尻餅と少年の会話が始まった。

「それはね。 それは、後での説明です。 その前にエンジン付きゴムボートです」

「おぅ、そうか。 ゴムボートじゃなきゃ、何だ? ん? 何使ったんだ」

「はい。 何にも使ってません。 ボートみたいなヤツは」

「へ!? 何にも?」

「はい」

「するってーと、何か? 死喪田は泳いで渡ったとでも言うんか、オメェは? あ~ん?」

「その通りです。 泳いで渡ったんです」

「バ~カかオメェは、こんな大嵐の中、どうやってヤツは・・・」

「殺された日高さん達、ここ来た時、まだ天候は良好でした」

「やっぱ、オメェはバカだ」

「え?」

「そん時はたまたま晴れてたってだけじゃねぇか。 こんな用意周到な犯人が、昨日やオトツイみてぇな暴風雨時の事、考えてねぇ分(わ)きゃねぇだろ。 ここを泳いで渡るなんて事、計画するはずねぇじゃねぇか」

「フッ」

少年がほくそ笑んだ。
笑顔が眩しかった。
そして言った。

「アクアラングです。 アクアラングがあれば暴風雨の時でもオヶです」

「アクアラング?」

「はい、そうです。 アクアラングです。 きっとお洋服の上から防水のドライスーツかなんか着て、そしてアクアラングして。 つまり犯人は潜って海を渡ったんです。 アクアラング位ならエンジン付きゴムボートよりズッと軽いから、仮に犯人が女性でもダイジョブです。 運べちゃいます。 それにここから本土までそんな遠くないし、本土までの海には所々、デッカイ岩が海面の上に飛び出してるから、泳ぎの上手なダイバーならチョッと深めに潜れば多少危険でも、岩を頼りに渡れちゃいます。 だからあ~んなおっきなトランク、たった2泊3日のお泊(とま)りにもかかわらず持って来たんです。 長期なら分るけど、たった3日位の旅行に女の人があんなの持って来ないでしょ、よっぽど特殊な事情がない限り。 ワタシもワタシのお友達も、3日位であ~んなおっきいの使いませんよ、絶対。 あれ見ただけでもトランク持ってる人、男の人、って思い込んじゃいますよ、大抵。 だって、男の人のカッコしてるし。 それにあれならアクアラングの他にも、今回の殺人に必要な小道具入れられちゃうし。 一挙両得です」

「な、な~る(程)」

これにはその場の全員が納得した。
尻餅がほざいた。

「う~む。 おい、小娘。 オメェやるじゃねぇか。 ん。 チョッピリ見直しちまったぜ、オッチャン」

って。
一方、イチはチョビっち冷や汗もんだった。

『コ、コヤツ・・・一体、何に者(もん)?』










って。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #55

#55




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「金田一様の言った通りだと思います」

少年が静かに語り始めた。

「死喪田 歌月様は架空の人物。 わたしもそう思います。 でも、『この島をゴムボートで抜け出した』というのはチョッと違っちゃいます」

ここで尻餅がしゃしゃり出た。

「どういう事だ?」

「はい。 エンジン付きのゴムボートだと重過ぎちゃいます。 一番軽いヤツだって30キロ位かなぁ? その位はあると思います。 重いのんなると40~50キロ位あります。 そんなの一人で運ぶの大変です。 仮にあのスーツケースに入ったとしてもです。 それに死喪田様がここ来た時、あのスーツケースそんなに重そうには運んで来なかったって、見た者が言ってます」

ここで少年は公園を見た。

「そうだよね、おじちゃん」

「はい。 確かに、エンジン付きのゴムボートが入ってる程重そうには・・・。 はい」

少年がカワユク小首を傾(かし)げた。

「ね」

って。

「なら、あのばかでかいスーツケースは何のために?」

尻餅が聞いた。

「はい。 あれはね、あれは・・・ワタシ達に死喪田様が男であるという印象をより一層強くするための物」

「男であるという印象をより一層強くするため? そりゃ、どういう意味だ。 オットー!? その前に言っとかねぇとな。 あのな~、オメェな~、死喪田 “さー、まー” つって、 “様” 付けんの止めれや。 架空の人物だろうがなかろうが、ヤツはな~、真犯人なんだぜ。 だから “様” 付けんの止めれや。 聞いててイライラすっからよう。 だから、な。 止めれや」

尻餅が眉間に皺をよせ、不機嫌そうに言った。

「でも~、死喪田様はお客様だからぁ・・・。 事件が解決するまでは呼び捨てするのチョッとぉ・・・」

ここでイチが割って入った。

「少年ちゃんだったね。 いいんじゃないかな、呼び捨てしても。 “まっくろくろすけ”なんだしさ、死喪田は。 それに俺に “様” 付けんのもチョッとな~。 ま、俺の場合呼び捨てされんのもチョッとなんで、 “さん” 付け位でいいよ」

「あぁ、俺達だって “さん” 付けでいいぜ。 なぁ、みんな」

ここで御布施がリーダーシップを発揮した。
カワユイ少年にいいトコ見せたかったのだ。
これを受け、少年がニッコリ笑って言った。

「ありがとうございます、皆様」

「ほーら、又、言った」

透かさず御布施が。

「ァハッ。 言い直しますね。 ありがとうございます、皆さん」

「そうそう、それで・・・オヶ」

と、やはり御布施が。

この一連のやり取りで、一時的にではあったがその場がソフトな空気に包まれた。










すると・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #54

#54




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





声がした。

「そうです! その人の言う通りです!!」

と、言う声が。

『ハッ!?』

『ハッ!?』

『ハッ!?』

 ・・・

一斉に、みんなが声のする方を向いた。
そこへ、一人の少女が進み出た。
少年だった。

そぅ。

声の主は、何を隠そう深大寺 少年だったのだ。

少年が続けた。

「真犯人は他にいます」

「ほ、他にいるだって? だ、誰だ!? ソイツは? ぇー??? あ!? ぃ、否、その前に・・・。 あー、あー、あー、うん。 ヨッシャー!! 声の調子、バッチリ! 絶好調ーーー!!

んパッ!!

ん、じゃま、言ってみべーーー!!

 警視庁に 悪名とどろく 殺人課
 男の魂 背中に背負い
 不撓不屈の 鬼リーダー

 尻餅 胃寒様たぁ、ぁ、俺のこってぇーーー!!


それまで、時々、居眠りっぽいお船漕いだりなんかしながら、なりゆきをジッと見つめていた尻餅が久しぶりに大声でほざいた。
久しぶりの登場なだけに、待ってましたとばかりにだ。
大見得なんか切っちゃったりして。
そしてもう一言付け加えた。

「で!? オメェは誰だっけ?」

って。

「ぁ、はい。 深大寺 少年です。 おとつい言いましたよね、『この民宿のオーナーの姪です。 今、夏休みでお手伝いに来てます』って」

「おぅ、そうかそうか。 そうだったそうだった。 で、真犯人は他にいるだって?」

「はい。 他にいます」

「す、少年ちゃん」

突然の少年の言動にチョッと驚き、且、心配して公園が少年に声を掛けた。

「心配しなくてもダイジョブだよ、おじちゃん」

少年が振り返って、ジッと公園の眼(め)を見つめ、そう言った。
そしてユックリと顔を金田一、尻餅の順に向けて聞いた。

「あたしの考え、聞いてもらえますか?」

その言葉を受け、

『お!? コ、コイツ、チョ、チョコッとカワユイじゃねぇか』

つー、スケベ心丸出しで、尻餅がほざいた。

「ぉ、おぉ。 聞いちゃる聞いちゃる。 オッチャン、聞いちゃる」

って。

少年がイチにも聞いた。

「金田一様はいいですか~?」

「ぁ、あぁ。 聞いちゃる聞いちゃる。 アンチャンも聞いちゃる」

って、イチもほざいた。

最後に、


(グルリ)


一わたり、全員を見回して聞いた。

「皆様も聞いてくれますか~?」

全員が一斉にほざいた。

「おー、聞いちゃる聞いちゃる。 俺らも聞いちゃるで~~~」

って。

「ありがとうございます」

一言、礼を言ってから少年が自分の考えを語り始めた。

先ず始めに・・・










死喪田 歌月に関する事から。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #53

#53




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「も、もしかしてお前、冬島 月子の事・・・」

イチが有森に問い質(ただ)した。

「あぁ、そうだよ、その通りだ。 俺達は・・・俺と月子は愛し合っていたんだ。 ヒッソリとな。 誰にも言わず。 俺達演劇部員は立場上そういう事はご法度(はっと)だからな。 将来、芸能界で生きて行く可能性のある俺達演劇部員はな。 スキャンダルを避けるために・・・」

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

イチ及び演劇部員全員が、有森のこの言葉を聞いて驚いた。
まさか、有森と月子が付き合っていようなどとは、誰も、何も知らなかったからだ。
静かに、有森が続けた。

「月子が理科準備室で顔に酷い大怪我を負ってしまったあの日、俺は・・・」

ここで有森が早乙女 京子を指差した。

「俺は、月子がソイツらに呼び出されたのを知っていた。 そしてあの大怪我の原因がソイツら3人だって事もな。 ソイツらの嫌がらせから身を守ろうとして、誤って戸棚のガラスを割り、顔に二目と見られない程の大怪我を負ってしまった事もな。 でもな~、金田一。 月子はな~、月子はな~、冬島 月子はな~、全てを許そうとしていたんだよ。 何もかも全てをな。 ソイツらにされた何もかも全てをな。 なのにな~、金田一。 なのにな~。 ・・・。 なのに、ソイツらはソイツらは・・・」

ここで一旦、有森が言葉を切った。
悔しさのあまり二の句が継げないのだ。
暫(しば)し絶句した後、僅(わず)かに冷静さを取り戻し、再び語り始めた。
月子の入院していた病院の廊下での回想シーンを交えて。

「ソイツらときたら・・・。 俺が月子を見舞いに行ったあの日・・・


 (有森 裕二郎) 「今日はいい天気だ。 少し、外の風に当たりに行こうか? 気分転換になるよ」

 (冬島 月子) 「うん」


・・・そして、俺達が病院の庭に出ようとしていた、その時。 声が聞こえて来たんだよ、声が。 ソイツらの声が。 病院の片隅から・・・」

ここで有森が、


(クィッ)


今度は、顎をしゃくって早乙女を指し示した。

「ソイツらはな~、ソイツらはな~、金田一。 こんな事を言っていたんだよ、病院の片隅で、こんな事を・・・


 (日高 五里絵) 「良かったぁ、月島さん。 あの事、誰にも喋(しゃべ)ってないらしいゎ」

 (桐生 冬美) 「そうみたいね。 良かったじゃん。 これでばれずに済んじゃいそう」

 (早乙女 京子) 「ね。 アタシの言ったとおりでしょ。 あの子ったら、いい子ぶっちゃってさ。 黙ってるだなんて・・・。 ま、お陰であたし達は助かっちゃったんだけどね」

 (日高、桐生共に) 「うんうん。 そうそう」


・・・って、な~。 それを聞いて、俺は腸(はらわた)が煮えくり返ったよ、怒りでな・・・ソイツらに対する激しい怒りでな。 そして俺はソイツらをぶん殴るつもりでソイツらの前に出て行こうとしたんだ。 でもな~・・・。 でもな~、金田一。 止めたんだよ・・・止めたんだよ、月子が。 月子が俺を止めたんだよ・・・


 (有森) 「くっ!? ァ、アイツらぁ・・・」

 (冬島) 「ま、待って!? 待って、裕ちゃん。 止めて、止めて、そんな事・・・」

 (有森) 「つ、月子。 だって・・・。 だって、悔しいじゃんかよう。 お前を、お前をそんな目に合わせたんだぞ、アイツら・・・。 く、くそっ!?」

 (冬島) 「ぃ、いいのよ。 いいのよ、裕ちゃん。 アタシは・・・。 アタシは、もう・・・」

 (有森) 「で、でも、月子!!」

 (冬島) 「もういいの、もういいのよ、裕ちゃん!! アタシは、もう・・・。 いいの・・・」

 (有森) 「つ、月子!!」

 (冬島) 「ゅ、裕ちゃん!! ェッ、ェッ、ェッ、・・・」


・・・月子は声を上げずに泣いたよ、俺の腕の中で。 微(かす)かに震えながら泣いたんだよ、俺の腕の中で、月子は声を上げずに・・・。 でも、俺はなんにも・・・。 そんな月子に俺はなんにもしてやれなかったんだ。 ただ、ジッと黙って月子を・・・月子の体を抱きしめてやる以外、俺はなんにも。 そんな月子に俺はなんにもしてやれなかったんだ!! 分かるか、金田一? その時の俺と月子の無念さが。 ぇー、分かるか、金田一、お前に・・・。 分かるのか、お前に? あの時の俺と月子の気持ちが・・・。 ぇー、・・・」

ここで有森は何も言えなくなった。
その目に大粒の涙を湛(たた)える以外・・・何も。

「有森・・・」

イチもそれだけしか言葉を掛ける事が出来なかった。


(シーン)


誰も口を開く者はいなかった。
否、
開けなかったのだ、皆、夫々(それぞれ)に心が痛んで。
暫(しばら)くして、有森の気持ちの高ぶりが少し収まった。

気を取り直して、再び有森が話し始めた。

「そして・・・その翌日の夜。 月子は自殺した。 その翌日の夜、自殺したんだよ、月子は・・・。 その翌日の夜、月子は自殺したんだよ!! 巻かれていた顔の包帯を取り、頬に深々と刻まれた醜い傷跡をさらけ出し、ファントムのあのセリフを言いながら・・・。 ファントムのあのセリフを言いながら、月子は自殺したんだよ!!


 呪われろ!
 詮索好きのパンドラ!
 この悪魔
 お前が見たかったのはこの顔か・・・

 呪われろ!
 裏切り者のデリラ!
 恩を仇で返す奴め!
 二度と自由になどさせるものか!
 何て奴だ――呪われろ――

 想像を遙かに超える醜さだろう
 その目で見ることはおろか
 思い浮かべることすら堪え難い顔だろう
 地獄の火に焼かれた
 この忌まわしい怪物は
 それでも密かに、天に焦がれるのだ
 人知れず――人知れず――

 だが、クリスティーヌ――
 恐怖は、愛にも変わりうる
 お前にもやがて、見える時が来る

 怪物の外見の内に隠された
 一人の男の姿が
 目を背けたくなる 骸の如きこの姿
 獣のような男は
 それでも密かに、美を夢見るのだ
 人知れず――人知れず――
 ああ、クリスティーヌ――


って、な!! そう言いながら俺の目の前で・・・。 俺の目の前で月子は病院の屋上から飛び降りたんだ。 分かるか、金田一? ぇー、お前に。 お前に分かるのか、愛する者が目の前で、自分の目の前で死んで行くのを何にもしないで、何にもしないでただ見ている事だけしか出来ない人間の気持ちが。 ぇー、金田一。 お前に分かるのか? あの時の俺の気持ちが・・・。 あの時の俺の無念さが、お前に分かるのか~? く、くそっ。 ・・・。 でもな~、金田一。 月子はな~、月子はな~・・・」

ここで再び、有森が早乙女を指差した。

「そんなソイツらを許そうとしたんだ!! 懸命にソイツらを許そうとしたんだ!! そんな屑共を許そうとしたんだ!! 懸命にそんな屑共を許そうとしたんだ!! その月子の気持ちを考えたら、どうして俺がソイツらを殺せるんだ!? 愛する者が懸命に許そうとしたソイツらを・・・どうすれば俺が殺せるんだ!? ぇー、どうすれば・・・。 俺だってな~、俺だってな~、俺だってな~、金田一。 俺だって、死ぬほどその屑共を殺してやりたかったんだ!! この手で、俺のこの手で・・・」

そう言いながら、


(パッ!!)


有森が自分の両手を開いた。
その開いた両手の平をジッと見つめながら続けた。


(プルプルプルプルプル・・・)


体を小刻みに震わせながら。

「俺のこの手で月子の無念を晴らしてやりたかったんだ!!」

ここで有森は顔を上げ、視線をイチに向けた。
そして両手でイチの両肩をつかんだ。
そのイチの両肩を激しく揺すりながらイチの両目を覗き込み、懇願するように言った。

「でもな~、金田一。 俺じゃないんだ。 犯人は俺じゃないんだ。 本当に俺じゃないんだ。 頼む、金田一。 信じてくれ、本当に俺じゃないんだ。 俺じゃないんだ、金田一。 頼む、信じてくれ・・・」

この有森の心から溢れ出て来る言葉を聞き、イチは何も言えなかった。
出来る事と言えば、自分の両目をすがるように覗き込んでいる有森の両目を瞬(まばた)き一つせず、静かに見つめ返し、ただ黙っている事だけしか・・・ただそれだけしか出来なかった。
そして、それはイチだけではなかった。
その場にいた者達全員が、イチ同様、全く何も出来なかった。
夫々(それぞれ)の心が静まるのを、ただジッと待つ事位しか・・・。

他には・・・

何も・・・

出来なかった。










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #52

#52




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風






再び、

「フフフフフ・・・。 ハハハハハ・・・。 アッ、ハハハハハ・・・」

有森が笑い始めた。
まるで『宇宙戦艦ヤマト』の主要キャラのデスラー総統みたく。

『その通りだ! ヤマトの諸君!!』

とでも、言わんばかりに。

「ハハハハハ・・・。 フゥ~」

一わたり笑い終え、息を整え、有森が頭を掻(か)き掻き立ち上がりながら言った。
照れ笑いっぽいお顔を作って。

こぅ。

「ナイス・ジョーク」

って。

「へ!?」

イチは意表を突かれたようだった、予想外の有森の反応に。
ポケーってした、お顔こいている。
そんなイチに全く構わず、有森が強い口調で厳しく言い放った。
普段はおとなしい有森が、珍しく恐ろしいまでの鬼の形相をして。

「あぁ。 殺したかったさ、俺だって。 俺だって殺したかったさ、あの二人・・・五里絵に冬美を。 そしてもう一人・・・」

有森が早乙女を指差した。

「コイツだ! この早乙女 京子!! コイツも殺したいさ、俺だってな。 だがな、金田一。 俺じゃない、俺じゃないんだ、本当に。 確かにお前の推理を聞いていると、恐ろしいまでに頷ける。 ちゃ~んと筋が通っている。 お前はみんなが言うようなアホじゃない。 今の謎解きを聞いていて良~くそれが分かったよ。 でもな、金田一。 俺じゃないんだ、本当に俺じゃないんだ、ファントムは 否 死喪田 歌月は。 信じてくれ、金田一。 俺を信じてくれ、頼む。 俺の信じるお前が俺を信じろ」

再びイチは意表を突かれた。

「へ!? 『俺の信じるお前が俺を信じろ』。 何じゃ、それ」

これを聞き、興奮して有森が叫んだ。

こぅ。

「ぉ、ぉ、ぉ、お前まさか、お前まさか、『グレンラガン』を知ってねぇのかぁーーー!?」

って。

「グレンラガン? 何じゃ、それ? 知ってね」

「な、な、な、なーに~!? グレンラガンをー!! グレンラガンを知ってねぇのかーーー!!」

「ぁ、あぁ。 知ってね」

不意に、

有森が素に返った・・・スッって。。。
そしてイチに説明した。

「チッ。 知ってねぇとは、しょーのねぇヤッチャなぁ、オメェっつーヤツぁ。 なら、俺が教えちゃる。 いーか~、耳の穴かっぽじって良っく聞けぇ、金田一。 あのなぁ、世に『グレンラガン』つー、超ーーーおもろいアニメがあってだなぁ。 その主役・シモンに、超ーーー主役のカミナ様がほざく名セリフ・・・

『オレを信じろ!お前を信じるオレを信じろ!

 お前を信じろ!オレが信じるお前を信じろ!

 お前を信じろ
 オレが信じるお前でもない
 お前が信じるオレでもない
 お前が信じるお前を信じろ』


つーのがあんだ。

今のは・・・

そ、れ、の、・・・

パロじゃー!! こんバカタレがーーー!!」










って。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #51

#51




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「じゃ、じゃぁ、あたしが見たファントムは・・・? 窓の外からあたしの部屋ん中、覗き込んでたファントムは?」

美雪がイチに聞いた。
そしてこれを切っ掛けに、イチによる美雪に関する事の謎解きが始まった。

「もち、有森だ」

「でも、でも何で? 何でわざわざファントムになんか・・・」

「『オペラ座の怪人』を暗示するため」

「え!? 『オペラ座の怪人』を暗示するため?」

「そ。 『オペラ座の怪人』を暗示するため。 そのために有森はわざわざそんな手の込んだ真似をしたのさ」

「けど、そんな真似したら、足が付いちゃうでしょ? それこそ足跡が、窓の外に?」

「お!? オマー。 今、洒落たんか?」

「うん。 チョッとね。 でもさ、靴跡付いちゃうじゃん」

「いんや付かん」

「どして? どしてそう言い切れる?」

「うむ。 その答は、簡単過ぎる位、簡単じゃ」

「簡単過ぎる位、簡単?」

「あぁ、と~ってもな。 お前の部屋の窓の直ぐ下の地面、ぬかるみだろ、グチャグチャの。 だから靴跡付いても直ぐ雨で分かんなくなっちゃうだろ。 それに有森の事だから靴跡分かんなくするため、同じトコ何回も踏んだだろうし」

「ぁ、そっかぁ。 ・・・。 じゃ、つまりは、こういう事? 『オペラ座の怪人』を暗示するために、盗んだ衣装着てファントムに変装して、あたしの部屋覗いた」

「その通りー」

ここでイチは有森を見た。
今度は、イチと有森のやり取りになる。

「そうやってお前は、実に巧妙に異常な殺人鬼・死喪田 歌月という架空の人物を見事に作り上げたんだ。 な。 そうだろ?」

「ば、ばかばかしい。 ヤツは・・死喪田 歌月は・・海に落ちて死んだんだろ? みんなそう言ってたじゃないか。 な、なのに何で俺がヤツなんだ? しかも既にヤツは死んでいる」

「それもトリックだ!! お前はヤツを殺す事によって、自分のアリバイを完成したんだ!! だが、皮肉な事に・・・。 そのトリックこそが、逆に、お前が真犯人だと言う事を証明してしまったんだ」

「ど、どういう事だ、金田一!? チャンと分かるように説明してみろ」

「あぁ、言われなくてもしてやる。 あのな~有森。 良っく聞けよ。 あの時・・あの死喪田 歌月を追い掛けた時・・俺達はヤツを中庭で挟み撃ちにした。 覚えてるよな」

「ぁ、あぁ。 なんかそんな展開ぽかったな」

「そうだ。 だが、俺はヤツを追って中庭の角を曲がった瞬間、思いっきり誰かとぶつかったんだ。 思いっきり誰かとな。 そしてその誰か・・・それはお前だった。 だったよな」

「ぁ、あぁ」

「なら、犯人は一体どこに? 結果的に挟み撃ちにしたはずなのに犯人は消えた。 なら、一体どこに?」

「・・・」

有森は黙っていた。

「その答はな・・・床にあった。 あの窓の下まで続く床にな。 否、その上に敷かれていた絨毯の上にだ。 お前も見たよな、あの絨毯。 あの上には微(かす)かにではあったが、靴跡が付着していたよな。 ファントムの物と思われる靴跡が」

「うん」

有森が黙って頷いた。

「そしてあの絨毯に付着していた靴跡は窓に向かっていた。 崖に面したな。 あの断崖絶壁に面した窓に向かっていたんだったよな、あの靴跡は・・・シッカリと。 そして遥か下の海の上にはファントムの仮面とマントが浮いていた。 だから、みんなてっきり、犯人は海に飛び込んだ物だとばっかり思い込んでしまった。 見事なまでのトリックだ。 だが、それが返って裏目に出てしまったのさ。 あそこでお前は重大なミスを犯したんだ」

「ミ、ミスだって?」

「あぁ、そうさ、重大なミスだ」

「?」

「分からんようだな。 だったら教えてやる。 枠だよ、窓の。 窓の枠だよ」

「?」

「ま~だ、分かんねぇのか? いいか、有森。 確かに、微(かす)かにではあったが窓の直ぐ下の絨毯の上には、チャ~ンと犯人の物と思われる靴底の泥が付いていた。 でもな、あの窓の枠は奇麗なもんだったんだ。 犯人がそこから海へ飛び込んだはずのあの窓の枠はな。 あの窓枠には、ま~ったく泥なんて付いてやしなかったんだよ。 ま~ったくな。 なかったんだよ、靴で踏んだ形跡が、あの窓枠には。 そしてあの窓の高さを考えれば、窓枠に足を掛けずに外に出るのは難しい。 ましてやビッコの犯人には・・・。 オットー!? ヤツのビッコは演技だったよな、お前の。 これは取り消す。 いいか、つまりはこういう事だ。 犯人は窓から海になんか飛び込んでやしなっかったんだ。 飛び込んだと見せ掛けて、実はそのまま廊下にいたんだ。 そう。 あの時ヤツは、窓に近付き素早く着ていた仮面にマント、それに帽子を脱ぎ・・この中には当然履いていた靴もあったはずだ・・それらを海に投げ捨てる事によって、海に飛び込んだかのように見せ掛けた後、用意してあった靴に履き替えた。 そして中庭の角の所で俺達が来るのを待ち受け、あたかも逆方向から来た振りをして俺にぶつかったんだ。 ヤツが窓から外に出ていないんなら、姿を晦ますトリックはこれ以外にはない。 と、すれば・・・。 犯人は、俺が中庭の角を曲がった時、その最初に出会った人物・・・という事になる。 つまり、あの時、あの場所で、俺が最初に出会った人物・・・それこそが正に真犯人、死喪田 歌月なんだ。 そしてその最初に出会った人物・・それが有森・・お前だった・・って訳だ。 ・・・。 結局。お前は作り過ぎた自分のトリックに自分自身が引っ掛かってしまったのさ」

これを聞き、即座に有森が反論した。

「だ、だけど、あの時、窓が開いてて、雨が振り込んでたじゃないか、窓枠の上にも。 そ、それで消えちゃったんじゃないのか、靴跡が・・・」

「うんにゃ、あん位で靴跡は消えん。 あの窓枠は木製だからな。 しかも白。 壁と同じ白。 床や手すりは黒なのにな。 だから人が飛び乗ってこすり付けた靴跡は、それが、例えいくら強くったって雨に当たった位じゃ消えん。 意図的に拭き取らない限りはな。 つまりはそういう事。 もういい加減、とぼけるのは止めて、素直になれよ。 素直になって認めちゃえよ、自分が死喪田 歌月ですって・・・。 な!? 有森」

と、イチが言った。










すると・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #50

#50




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





突然、

「フフフフフ・・・。 ハハハハハ・・・。 アッ、ハハハハハ・・・」

有森が笑い始めた。
まるで『宇宙戦艦ヤマト』の主要キャラのデスラー総統みたく。

『その通りだ! ヤマトの諸君!!』

とでも、言わんばかりに。

「ハハハハハ・・・。 フゥ~」

一わたり笑い終え、息を整え、有森が頭を掻(か)き掻き立ち上がりながら言った。
照れ笑いっぽいお顔を作って。

「じよ、冗談だろ、金田一。 椅子からコケタだけで真犯人だなんて。 そんな事で犯人扱いされたらたまったもんじゃねぇーぜ、ったく。 第一、冬美ん時はどうなるんだよ? えー? あのぬかるみには冬美の“足跡”しかなかったじゃないか? あれはどう説明するんだ? ん? どう? お前の事だ、まさか俺が催眠術でも使ってそうするように仕向けたとか言うんじゃないだろうな? えー?」

「アハハハハ・・・」

今度はイチが笑った。
じっつに、わざとっぽく。

「催眠術なんて必要ない。 アレは簡単なトリックだ。 それに今、お前は“足跡”と言ったな。 だが、それは間違いだ」

「間違い?」

「あぁ、そうだ。 あれは、足跡じゃなく、“靴跡”だ」

「ん!? どういう意味だ?」

「ま、それは俺の話を最後まで聞けば自然と分かる。 だからこれから言う俺の話を良く聞け。 先ず、冬美は部屋で殺された。 首を絞められたんだ」

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

みんなが驚きの声を上げた。
解(げ)せぬというお顔をして幽鬼がイチに言った。

「それはおかしい。 わたしが検死した時、彼女の首に手で絞められたような痕はなかった。 あったのはロープの痕だけ。 あの木に吊るされていた時のロープの痕だけだ。 それに他に死因となりそうな外傷も体のどこにも見られなかった。 だから部屋で首を絞められたという君の説には無理がある」

「い~や、無理なんてどこにもないさ。 窓だ!!」

「窓?」

幽鬼が聞き返した。

「あぁ、そうだ。 窓だ、窓を使ったんだよ、有森は」

「どういう事かね?」

「こういう事さ」

ここまで幽鬼に言ってから、イチは一渉(ひとわた)り、周りを見回した。
そして続けた。

「みんな、この建物の南側には一本の大きな木があるのは知ってるな」

「大きな木? そういや、そんなのあったな」

と、御布施。

「言われてみりゃ、あるある・・・」

と、銭湯

「あぁ、そういや、あったな・・・」

と、亀谷。

 ・・・

皆、口々にそう言った。

「あの木を使えばこの建物の屋根に登る位、簡単な事だよな」

「うんうん」

「うんうん」

「うんうん」

 ・・・

みんながイチの言うことを認めた。

「有森はアレを使って屋根に登り、あのロープで窓を囲む位大きな輪を作った。 部屋の中からそのロープが見えないようにな。 そして自分の携帯から冬美の携帯に電話したんだ。 『窓の外を見るように』って。 この建物の窓は特殊な造りで、ガラス窓を下から上に押し上げて開けるという変則的な造りだ。 なにせ建っている場所が場所だけに、それだけ頑丈な造りになっている。 もっとも、映画なんか見てるとそんな造りは欧米ではポピュラーのようではあるが・・・。 それを犯人は 否 有森は利用したんだ。 そして窓から冬美が顔を出した。 その瞬間、一気にロープを引いた。 当然、ロープは冬美の首に喰い込む。 そうやって有森は冬美を殺したんだ。 これ即ち『パンジャブの輪』なり、って訳だ」 (この『パンジャブの輪』というのは劇中、怪人エリックがウバルド・ピアンジを殺す時に、そして最後の最後、殺しはしないがラウル・ド・シャニー子爵を脅すシーンで出て来る物です : 作者)

「で、でも。 でもどうやって、有森は冬美の部屋に入ったんだ。 カギ掛かってたんだぞ、シッカリと」

御布施が聞いた。

「簡単な事さ。 屋根から別のロープを下ろしたんだ。 この建物には、玄関に暖炉があるだろ。 あの暖炉の煙突にそのロープを巻き付けて、それを伝って下りればいい、冬美の首を縛ったロープと一緒にな。 そして地面に下りないよう気を付けて、窓から冬美の部屋の中に入った。 あるいはこうも考えられる。 冬美の首に掛けたロープを煙突に引っ掛けて、そのまま下りて来る。 つまり冬美の体重を利用して、それを反対側の錘代わりにしたって事だな。 後は、長過ぎるロープを適当な所で切ればいい。 あの首吊りに使ってあったロープはそんなに長くはなかったからな。 もっとも、あのロープには刃物で切った痕跡はなかったから、コッチはないと思われるが。 ま、そんなやり方も考えられるって事だ」

「な~る(程)」

御布施が納得した。

「そうやって窓から部屋に入り、冬美の靴を履き、冬美の死体を担いで木の下まで行った。 そうすれば冬美以外の靴跡はどこにも付かない。 つまりはそういう事、足跡なんか残ってやしない、残ってたのは靴跡だ。 もっとも、その靴跡は人二人分(ひと・ふたりぶん)にしては些(いささ)か浅い気もしないではないが・・・。 ま!? あんなもんかも知れないしな。 分かったかい先輩。 で、後は知っての通りだ。 別の方のロープは犯行後、片付けりゃいい」

「なら、イッチャン。 屋根にロープのキズ跡残っちゃうでしょ。 確かめてみた」

美雪が聞いた。
ここからイチと美雪の会話となる。

「い~や、そんな無意味な事はしちょらんよ」

「む、無意味って・・・」

「だって無意味じゃん。 小道具作んの得意な有森がそんなキズ跡残す訳ないじゃん。 厚い布挟むとか、厚紙かなんかで屋根の傷付きそうな部分のカバー作ってロープをその上で引っ張るとかすりゃ、な~んも跡は残らん」

「ぁ、そっかぁ」

ここでイチが右手人差し指で、


(ピッ!!)


有森を指差し、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「総括する!! そうやって冬美を木に吊るしたお前は、靴を片っぽだけ冬美に履かせ、もう一方は下に置き、冬美の上着を脱がし、自分は裸足で、ぬかるみには足跡が付かないように冬美の着ていた上着を敷いてその上を歩き、なるべくぬかるんでいない芝や地面の固い部分、あるいは水溜りの中を歩くようにして、それこそ“足”跡を残さないよう注意して建物まで戻り、もう一度、南側の木を伝って屋根に上り、ロープを解き、屋根にキズを付けないための何かを外したんだ。 それから再び、地面に降り立った。 後は、同様に、冬美の上着を使ったり、地面の固い部分や水溜り、あるいは芝の上を足跡を付けないように注意して歩き、予(あらかじ)めカギを掛けずにいた自分の部屋に窓から戻ったのさ」

って。

「ウムウムウム」

「ウムウムウム」

「ウムウムウム」

 ・・・

イチのこの素晴らしい推理をその場にいた者達の全部とは言わないまでも、その殆(ほとん)どが感心しながら聞いていた。

だが、

こんな素晴らしい推理を全く無視いている者もいた。
尻餅だった。
この間、尻餅は、初めはそうではなかったのだが、途中からズ~~~ッと腕を組み、目を閉じ、ジッと押し黙っていた。

まるで・・・










居眠りこいてるみたいに。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #49

#49




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「お前のボーガンと、この民宿のカウンターの上にあった置時計がなくなったと聞いた時、俺は直観した」

イチが謎解きを始めた。

「ボーガンと置時計、この二つを組み合わせると何が作れるかを。 それはボーガンの時限発射装置だ。 その仕組みは簡単だ。 先ず、誰にも見られない時を狙って、それがどこかはまだ分からないが、この大食堂のどっか目立たない場所にボーガン本体をセットする。 お前に狙いを定めてな。 否、たったの今までお前が座っていた場所に座っている者目掛けてな。 次に、矢の発射装置を糸で縛り、矢を固定する。 最後に、盗んだ秒針のないアンティーク時計の時針(じしん)にカミソリの歯を取り付ける。 あるいは角度によっては、分針と時針の上下を逆にして分針の上に時針が来るように改良し、その時針にカミソリの歯を取り付け、その糸の下に置く。 そして時が来ると・・それはさっきも言ったように午前7時丁度だったが・・時針に取り付けられた歯が矢の発射装置を固定してある糸を切る。 当然、その矢は発射される。 これも又、俺の直観なんだが、その矢には恐らく毒が塗られてある。 かすっただけでも殺せるようにな」

ここでイチはチョッと間を取った。
そして呼吸を整えて、謎解きの続きを始めた。
その場にいた者達みんな、息を殺してイチの謎解きに耳を傾けている。

「有森。 お前は小道具なんか作るの得意だったな。 その程度の仕掛け作んのなんか簡単だよな。 ボーガンはそのために持って来たんだろ・・・な。 そしてこの民宿の朝食は7時。 座る席順も毎回同じ。 そして7時前にはみんな既に席に着いている。 だからここは・・この大食堂は・・お前の手の込んだ計画で早乙女先輩を殺すにはおあつらえ向きの場所って事だ。 だが、食事が始まってからでは遅過ぎる、食べ物を口に入れる時に若干前屈(じゃっかん・まえかが)みになるため、外れる可能性が高くなるからな。 それでお前が選んだ発射予定時刻はジャスト7時。 しかし、有森。 今朝、お前が座った席は本来、早乙女先輩が座るはずの席だった。 だが、今日に限って席順が変わっていた。 俺がそうするように美雪に言って、マスターに頼んでおいたからだ。 そのため、やむなくお前は早乙女先輩の席に座らざるを得なくなった。 だから発射予定時間の7時になった時、お前は転んでその場から離れたんだ、ボーガンの矢をかわすために。 それはイコールお前が真犯人だという事の証明となってしまったって訳だ。 つまり、お前の仕組んだトリックを見破った俺が、逆にお前にトリックを仕掛けたって訳さ」

「・・・」

有森は無言で聞いている。
そんな有森にイチが続けた。

「美雪に命じて、お前以外の宿泊者全員を早めにここに来させ、席に着かせた。 そして、な~んも知らないお前が部屋を出るのを確認して、わざと廊下に飛び出してお前にぶつかった。 あれはわざとだったんだ」

「わざと?」

「あぁ、わざとだ。 何のためだと思う? ん?」

そう言ってイチは右ポケットに手を入れ、何かをつかんで取り出した。
その手を有森の目の前で、


(パッ!!)


広げ、つかんでいる物を見せた。
イチの手の平の上には有森の腕時計が乗っていた。

「そ、それは俺の・・・」

「そうだ。 お前の腕時計だ。 あの時・・・お前にわざとぶつかったあの時、俺はお前のこの腕時計を掏(す)ったんだ。 今回のこの時間トリックを成功させるためにな。 俺が手先が器用なのはお前も知ってるよな。 だから俺にとってこんな腕時計掏る位、朝飯前だ。 そうやって俺はお前に時間トリックを仕掛け、お前を席に着けさせたのさ、早乙女先輩の席にな」

みんな黙って聞いている。


(シーン) 


誰一人、声を出そうとする者はいなかった。

だが、










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #48

#48




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「なら、金田一」

尻餅が聞いた。

「ん!? 何だ?」

イチが聞き返した。
暫(しば)し、イチと尻餅の会話となる。

「死喪田は、死喪田 歌月は一体、あの時、どこへ行ったんだ? ん!? どこへ、どうやって?」

「それは時が教えてくれる」

「へ!? 時が?」

「あぁ、そうだ。 時だ、時が教えてくれる」

「ど、どういう事だ?」

「まぁ、そう焦らなくてもチャ~ンと分かるさ、時がくればな。 言ったろ、真犯人は必ず名乗り出るって。 だからさ、オッサン。 アンタはただ待ってりゃいいんだ、犯人が名乗り出るのをな。 ただじっと座って待ってりゃ。 それで全て解決さ」

「ま、待つ? 待つって、いつまでだ?」

「チッ。 気の短いヤッチャなぁ、オッサンは~。 いーか~、犯人はあの時、自らが生み出した死喪田 歌月という架空の人物の死を演出したんだ。 もっとも、この判断は単なる俺の直観なんだが。 だが、この判断は間違いじゃない、絶対に。 前にも言ったように、俺の直観は外れない!!」

「ケッ。 な~にが俺の直観は外れないだ。 チッ」

「そうだ、外れない。 絶対にな。 いーか~、オッサン。 死喪田 歌月の死、それはヤツが最後の殺人を完成させるために巧妙に仕掛けたトリックなんだ。 自らのアリバイを完璧にするためのな。 そして俺の推理が正しければ、架空の怪人・死喪田 歌月の仕掛けたワナによって、今、ここで・・この大食堂で・・最後の殺人が行なわれるんだ」

「こ、ここがそんなに危険なトコなら、ば、場所を移動せにゃならん」

「まぁ、落ちつけよ、オッサン。 大丈夫だ。 手は打ってある」

それを聞き、御布施がほざいた。

「ホ、ホントだな金田一? そ、その言葉信じていいんだな?」

美雪も。

「ィ、イッチャ~ン・・・」

銭湯も。

「き、金田一~~~」

その他も。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

みんなが不安に怯えていた。

「あぁ、心配しなくても大丈夫だ。 俺を信じろ」

自信タップリにイチがそう言った。

「ぁ、あぁ。 うん」

と、御布施が。

「うん」

と、美雪が。

「あぁ」

と、銭湯が

「・・・」


「・・・」


「・・・」

 ・・・

と、その他が。

そして緊張のあまり、


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)


夫々(それぞれ)の心臓が高鳴っている。


(チッ、チッ、チッ、・・・)


各自の持っている腕時計も秒針を刻む。


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


その時、


(ボーン、・・・)


柱時計が鳴り始めた。

そぅ。

7回鳴るための1回目が。
つまり午前7時を告げたのだ。

突然、


(ガタッ!!)


素早く、有森が立ち上がった。


(ドサッ!!)


凄い勢いで、床に倒れこんだ。

「ゴ、ゴ、ゴ、ゴキ~~~!?」

と、悲鳴にも似た声を張り上げた。

「ど、どうしたんだ、有森いきなり?」

亀谷が驚いて有森に近付き、引き起こそうと手を差し出した。

「し、心配ない。 ゴ、ゴキだ! ゴキ!! ゴキブリが今俺の足元を・・・」

床にしゃがみ込んだまま、有森がそう言った。
有森はテーブルの下を覗き込んで何かを探しているようだった。
その有森の足元に近付き、イチが毅然として言い放った。

「終に、正体を現したな・・・。 死喪田 歌月」

イチの突然のこの言葉に、

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

その場のみんなが驚いた。
そして席を立ち、口々に、

「い、今、なんってった?」

「し、死喪田 歌月だって?」

「有森がか?」

 ・・・

等とほざきながら有森に近付き、取り巻いた。
その有森は、全く合点が行かないという表情をしてイチを見上げている。
そして、有森とイチの会話が始まった。

「へ!? 死喪田 歌月? 死喪田 歌月だって、この俺が?」

「あぁ、そうだ。 お前がファントム・死喪田 歌月だ」

「な、なにを言い出すかと思えば、おっかしな事を・・・」

「とぼけても無駄だ、有森。 


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』



だ、有森。 お前の正体は分かっている」

「と、とぼけるも何も・・・。 とぼけてんのはお前の方だ、金田一」

「い~や、有森。 お前は自分で証明してしまったんだよ、自分が真犯人だとな!! 死喪田 歌月は自分だとな!!」

「じ、自分で証明?」

「そうさ。 自分で証明したんだ」

「ふ、ふざけた事言うな!!」

「じゃ、ナゼ、7時の時報と共に床に転がったんだ? ナゼ?」

「そ、それはゴキが俺の足元に・・・」

「違う!! お前は自分の仕掛けたワナから逃げたんだ」

「ワ、ワナ?」

「そうだ、ワナだ!!」

「な、何を言ってるんだ金田一。 お前さっきから変だぞ。 頭に蛆虫湧(うじむし・わ)いてんじゃねぇのか? それともファントムの恐怖で可笑しくなったんじゃ・・・」

「・・・」

イチは黙った。
腕を組んだ。
そしてまだ立ち上がらず床に両膝着いている有森を、上から下目使いで見下(みお)ろし見下(みくだ)し、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「安心しろ有森、ボーガンの矢はまだ飛んでは来ない!!」

「え!? ボーガンの矢?」

「あぁ、そうだ!! ボーガンの矢だ!! お前がどこかに仕込んだな。 ある程度の予想はしていたが正確な所までは分からなかった発射予定時刻・・もっともたった今、俺が予想していた通り7時キッカリだと分かった所ではあるが・・それをお前が身を以って教えてくれたんだからな。 しかし、時はまだ7時になってはいない。 さっき、お前が床に身を伏せたあの時、あの柱時計は6時40分を告げたんだ」

「?」

ここでイチが徐(おもむろ)に柱時計を指差した。
針は7時5分を差している。
イチが物知り顔で言った。

「あの時計は20分進めてある。 美雪にそうするようマスターに頼んでもらったんだ」

「・・・」

有森は黙っていた。
床に座ったままジッとイチの眼(め)を見つめている。
その有森にイチが言った。

キッパリと・・・

こぅ。

「俺の勝ちだな、有森」

ここで一旦、イチが言葉を切った。
そして、


(スゥ~)


徐(おもむろ)に右腕を上げた。


(ピッ!!)


右手人差し指で有森の鼻っ面(つら)を指差した。
カッチョ良~~~く、決め台詞を言うために。

こんな感じのヤツを・・・










「お前はもう・・・こけている」











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #47

#47




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「そうだ! そのまさかだ!! 犯人は・・真犯人は・・今・・この中にいる!!」

イチが凛々し~くそう言い切った。

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

少年を除く全員が驚いた。
信じられないという表情で互いに顔を見合わせている。

「じゃ、じゃぁ、五里絵は? 五里絵はどうやって殺されたんだ? どうやったらあんな真似(まね)が出来るんだ? あんなに都合良くシャンデリアを五里絵の上に・・・。 逃げる暇も与えず真上から直撃させるなんて・・・あれは一体どうやって? あの五里絵の殺され方を説明してくれよ」

横から御布施が早口でそう聞いて来た。

イチが顔を、


(スゥ~)


御布施に向けた、一度大きく、

「スゥ~」

息を吸い、

「フゥ~」

そして吐いた。
それからもったいを付けてこう言った。

「先ず、五里絵の死因、それが問題だ。 だが、それは五里絵の傷跡・・・五里絵の体に残された傷跡がその答えを教えてくれている。 そしてその答えとは・・・」

ここで一旦、イチが言葉を切った。

「・・・」

黙ったまま、しかし、興味津々と言った表情で身を乗り出して御布施が聞いている。
その御布施の目をジッと見つめて、イチが言い切った。

こう。

「首筋の打撲傷」

と。

「首筋の打撲傷? 何で? 何でそう言える?」

御布施が畳み掛けるように聞いた。
これを受け、尻餅が幽鬼に問題点を振った。

「おぃ、そこのヤブ。 どうだったんだ? え?」

幽鬼は驚いた。

「ャ、ヤブ~!?」

「そうだ!! ヤブだ! ヤブ!!」

ここで尻餅がイチを指差した。

「あいつの言ってる事は本当なのか?」

チョッとムッとしながら幽鬼が答えた。

「確かに、被害者の首筋には何かで殴られたような痕が・・・。 しかしあれは転んだ時に付いた物かもしれませんし、仮に殴られたとしてもそれが致命傷になったと言い切るには少し無理が・・・」

その幽鬼の説明をイチが否定した。

「い~や、あの床は平らだった。 しかも五里絵は仰向けに倒れていた。 そして床の上には首筋に殴られたような痕が付くような物は何もなかった。 つまり、五里絵はシャンデリアの直撃を受ける前に何か鈍器のような物で殴られ、仰向けにされた上にシャンデリアを落とされたんだ。 もし、シャンデリアの頭上からの直撃を受けたんなら、あんなに奇麗に仰向けで倒れる訳がない」

ここまで幽鬼に向かって言ってから、イチが尻餅に確認した。

「だろ、オッサン」

「ぁ、あぁ、言われてみりゃ、そん通りかもな。 少なくても膝は曲がってんだろうな」

「おぉ、確かに、確かに!? 頭頂部には、傷跡一つありませんでした。 顔面直撃だったので」

と、即座に幽鬼が同意した。

「な。 だろ」

イチが再度、尻餅に確認した。

「ウ~ム」

尻餅が顎に手をやり、考え込んだ。
イチの推理の見事さに押されたのだ。

突然、


(ガタッ!!)


御布施が立ち上がった。
顔色が真っ青だ。
興奮してイチに食って掛かった。

「オ、オィ! 金田一!? な、なら、犯人は・・・犯人は一体誰何だよ!?」

(ガタッ!!)

(ガタッ!!)

(ガタッ!!)

 ・・・

釣られてみんな席から立ち上がろうとした。

「動くな!!」

イチが厳しく言い放った。


(ビクッ!!)

(ビクッ!!)

(ビクッ!!)

 ・・・


イチの迫力に押され、全員がその場にその状態のまま固まった。
それを一わたり見回してイチが、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「みんな座れ! 椅子に座ったままジッと待つんだ!! 時が来ればヤツは・・・犯人は、自分から名乗り出る!!」

って・・・










カッチョ良く。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #46

#46




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「死喪田 歌月はトリックだ!!」

イチが凛々しく言い切った。

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

少年を除く全員が驚いた。

「トリック~!? トリックだと~!?」

大声で、尻餅がイチに聞き返した。
殆(ほと)んど喧嘩腰だ。

「そうだ! トリックだ!!」

イチも負けずに言い返した。

「どういう事だ!? 言ってみろ!!」

「良っく聞けよ、オッサン。 こういう事だ。 俺達がこの民宿に来る前に、犯人は予め『死喪田 歌月』という偽名を使ってここに宿泊した。 次に、俺達がここに来る前日、ソイツは絶対に部屋に入らないようマスターに指示した後、部屋の壁にあの落書きを残し、密かにこの島を抜け出した」

「抜け出した? どうやって? まさか泳いで渡ったとでも言うのか?」

「ゴムボートを使ったのさ」

「ゴムボート!?」

「エンジン付きのゴムボートなら空気を抜けばあのスーツケースに入るだろ。 そうやって犯人はまんまとこの島を抜け出したんだ。 つまり、俺達がここに来た時には、ヤツは 否 死喪田 歌月は、死喪田 歌月という存在は、もうここにはいなかったのさ」

「じゃ、じゃぁ、あのどでかいスーツケースは・・・ゴムボートを持ち込むための物だったのか!?」

納得したように尻餅が大声を上げた。

「そうだ! その通りだ!! 全ては死喪田 歌月という男をでっち上げるためのトリック、トリックだったんだ。 そうやってこの島を抜け出した犯人は、再び、何食わぬ顔でここを訪れた」

横から美雪が嘴を入れた。

「ィ、イッチャン。 ま、まさか・・・」

イチが凛々し~く言い切った。

「そうだ! そのまさかだ!! 犯人は・・真犯人は・・今・・この中にいる!!」










って。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #45

#45




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「あれぇ? おっかしいなぁ、俺の席がない」

有森が小首をかしげた。

「まぁ、なんだ。 空いてっとこにでも座っときゃいいじゃん」

イチが言った。

「あぁ。 そうだな。 しょうがない」

な~んか解(げ)せないっつー顔こいて、有森が一つしかない空いている席に着いた。
その席は本来、早乙女 京子が座るはずだったのだが、どういう訳か今日に限って早乙女は別の席に着いていた。

イチが席に着くや否や、銭湯が聞いた。

「金田一、何だよ話って?」

吊られてその横に座っていた亀谷も。

「あぁ、俺らに何の話があんだよ? ん?」

残りの全員もそれに同意したように、

「うんうん」

「うんうん」

「うんうん」

 ・・・

頷いている。
その中には尻餅もいたが、珍しく黙っていた。
何か考えているのだろうか腕を組み、目は閉じたままだ。

公園、卒婆、霊園、深沙、それに少年の5人の深大寺ファミリーは奥の壁際に並んで立っている。
全員が、先程自分の部屋でイチに頼まれた美雪に呼び集められて、その場にいたのだった。

その全員を、


(グル~ッ)


一わたり見回し、両手掌(りょうて・てのひら)をテーブルに着け、


(スッ)


イチが徐(おもむろ)に立ち上がった。
そして身を乗り出してこう言った。

「みんな聞いてくれ、これから俺が話すのは今回のこの事件の全貌だ。 もっとも全て俺の推測ではあるんだが」

ここでやっと目を明け、腕組みを解き、両手をグーにしてテーブルの上に置き、鼻先三寸でせせら笑いながら、いつものように尻餅がエッラそうにほざいた。

「フン。 なーにかと思ぃや~、オメェの推測話か。 ケッ!! 期待はずれもいいとこだぜ、ったく。 あのなぁ、金田一。 死喪田 歌月が死んでもうこの事件の幕は下りたんだよ。 おー、りー、たー、のー、分かる? おー、りー、たー、のー。 だから後は、もう直ぐやって来る県警に任せりゃいんだ。 ったく、飯も食(く)わせねぇで変な期待持たせやがって。 結果がオメェの推測話か。 そんなもん聞きたくもねぇ。 さ!! 飯だ飯だ!! 大将ー!! 飯ー!!」

「い~や、オッサン! 幕はまだ下りてなんかいないぜ!!」

イチが本気で言い返した。

「へん。 な~にをほざいてやがるー!! ヤツは、死喪田 歌月は海に飛び込んで死んだんだよ。 オメェだって見たじゃねぇか、現場。 おっちんじまったヤツにな~にが出来るってんだ、え? な~にが?」

「い~や、オッサン。 死喪田 歌月は死んでなんかいない。 否!? そもそも、この死喪田 歌月なる人物の存在自体がこの事件の胆(きも)、今回の事件の核心部分なんだ!!」

イチが、

“キリ!!”

ってしてそうほざいた。

「あったりめーじゃねぇか、犯人なんだから。 なーにをほざくかと思ぃや、胆だの核心部分だのー、もったいつけやがって。 あったりめーの事じゃねぇか。フン」

ここでイチが、


(ギン!!)


尻餅の目を見据えた。
そしてユックリと、それこそもったいを付けてこう言った。

「オイ! オッサン!!」

「何だ?」

「“もし、死喪田 歌月なる人物がこの世に存在しなかった”としたら・・・アンタどうする?」

「ん!? どういう意味だ? 言ってる事の意味が分かんねぇぞ」

「分かんねぇ?」

「あぁ」

「そうか、分かんねぇか。 ・・・。 なら言い方を変えてやろう。 “もし、真犯人が別にいて、ソイツが死喪田 歌月なる架空の人物を作り上げていた”としたら、アンタどうする?」

「ま~たまた、な~にをほざいていやがるー!! 俺もオメェもチャーンと見たじゃねぇか、ヤツを、死喪田 歌月を。 それにこの民宿の従業員だって」

ここまで言ってから尻餅は公園達、深大寺ファミリー5人のいる方に顔を向けた。
そして公園に言葉を投げ掛けた。

「なぁ、大将」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

少年を除く4人が頷いた。
そして口々にこう言った。

先ず、公園が、

「はい。 確かに」

次に、卒婆が、

「わたくしも、お会い致しました」

霊園も、

「うん。 確かに、俺も」

最後に深沙が、

「はい。 わたしも」

と。

だが、少年だけはジッと押し黙っていた。
何か考えているようだった。


そぅ・・・


少年は少年なりに疑問をもっていたのだ。
死喪田 歌月という人物の存在に・・・










イチ同様。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #44

#44




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ファ~。 あぁ、ねむ・・・」

有森が廊下を眠そうに歩いている、欠伸(あくび)をしながら。
向かうは大食堂。
自分の部屋、即ち、104号室からたった今、出たばかりだ。

そこへ・・・

突然、104号室前の中庭の角からイチが飛び出して来た。
二人共、避けきれず、

「オッとぉ!?」

「ォワっち!?」

イチと有森が共に声とも付かぬ声を上げて、


(ドシン!!)


ぶつかってしまった。
床に尻餅をついたまま、有森が顔を上げた。

「ぉ、おぅ!? 金田一か!?」

イチも同じだった。

「あ!?  おぅ、有森!?」

そして、二人とも立ち上がった。
立ち上がると同時に、イチが言った。

「丁度良かった。 今、お前を呼びに行こうとしてた所だ」

「ん!?」

「早くしろよ。 もう直ぐ7時んなっちまうぜ。 みんな食堂で待ってんだぞ」

「え!?」

まだ時間はタップリあると思って暢気(のんき)していた有森が、驚いて腕時計に目をやった。

が、

「あれぇ、変だな。 俺の腕時計がない」

「え!?」

「おっかしいなぁ、俺の腕時計がない。 さっき確か、腕に嵌めたと思ったんだがなぁ」

「ま、時計は後にして取りあえずは食堂だ。 みんなもう待ちくたびってんだからな」

「ぁ、あぁ。 そうか、そうだな」

首をひねりひねり有森はイチに従った。


そして二人は・・・










大食堂へと向かった。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #43

#43




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」


(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」


(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」

109号室のドアを激しく叩く音と共に、名無 美雪の名前を呼ぶ声がした。
声の主は、金田一 一だった。


(ガチャ!!)


ドアが開いた。

「ファ~。 眠い~」

中から眠気眼(ねむけ・まなこ)の美雪が顔を出した。
イチと目が合った。

「ィ、イッチャン!? な、なぁに、こんな朝早くから・・・」

「美雪!! 頼みがあるんだ!! 聞いてくれ!!」

「ん!? 頼み?」

「うん。 チョッと耳貸せ。 あのな・・・」


(ひそひそひそひそひそ・・・)










イチが何やら美雪に耳打ちをした。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #42

#42




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「な~んだ、まだ誰も来てないのか?」

イチが、頭を掻(か)き掻きボソッと呟(つぶや)いた。
ここは、大食堂。
そこにイチがブラっと入って来たのだ、頭を掻きながら。

翌日、早朝6時の事である。

そこでは霊園、深沙、少年の3人が朝食の支度をしていた。
霊園がイチに気付いた。

「おはようございます、金田一様。 また、随分とお早いですね」

深沙、少年も振り返ってイチに挨拶した。

「おはようございます」

「おはようございます」

イチが少年達に言葉を返した。

「おはようさん」

それから霊園に聞いた。

「いや~、ゆんべは良く眠れなくって・・・。 すんません、コーヒーもらえますか?」

「ぁ、はい」

イチに返事をしてから、霊園が少年に頼んだ。

「少年ちゃん。 金田一様にコーヒーお願い」

「は~い。 今、直ぐ」

少年が調理場に入って行き、入れたてのコーヒーの入ったポットと一組のカップとソーサをトレイに乗せて戻って来た。
既にイチはいつもの自分の席に着き、両手をテーブルの上に乗せ、ぼんやりと窓から見える外の景色を眺めている。
少年がイチに近付いた。
イチの直ぐ横まで来て、持って来たトレイをテーブルの上に置いた。


(ジュポ、ジュポ、ジュポ、・・・)


ポットのコーヒーをカップに注いだ。
注ぎ終えると直ぐに、手際良くコーヒーの入ったカップをソーサに乗せ、


(カチャ!!)


それをイチの前に差し出した。

「さ。 どうぞ」

「はい。 ありがとう」

一旦、一礼して、少年がテーブルを離れ掛けた。
が、思い止まった。
何かを思い出したようだった。
そしてそれをイチに告げた。

「あ!? そうそう。 お天気回復しそうなので、県警来れるそうですよ。 お天気の回復状況にもよるけど、10時頃にはダイジョブなんじゃないかって。 さっき連絡がありました」

「10時頃?」

「はい。 多分その頃までにはって」

「そっか、それは良かった。 でも、チョッとややっこしい事になるかもね」

「はい。 そうですね。 面倒な事、やだけど・・・仕方ないですね」

「あぁ、そうだね。 ・・・」

そう言いながら、イチが少年の顔を繁々(しげしげ)と見た。
そのままチョッと見つめてから言った。

「フ~ン。 君、可愛いね」

意表をつかれ、少年が照れた。

「ァハッ。 そんな事ないですよ」

「いぃや、あるよ。 名前聞いていいかなぁ?」

「はい。 深大寺 少年です」

「“じんだいじ・すくね”さん?」

「はい」

「どんな字書くの?」

「“じんだいじ”はトウキョの調布市にある深大寺の深大寺です。 “すくね”は、少年(しようねん)って書きます。 少年って書いて・・す・・く・・ね・・って読みます」

「少年で“すくね”さん・・・かぁ。 フ~ン。 ありそうで、ない名前だね」

「はい。 だから気に入ってます。 で・・・お客様は? お客様のお名前、聞いてもいいですか?」

少年がイチの名前を聞いた。

しかし、実を言えば、イチの名前を少年はチャンと知っていた。
否、知らない訳がなかった。
ナゼなら、イチは今回の殺人劇において、際立って目立つ存在だったからだ。
本来なら、親戚の経営している民宿のバカンスを兼ねた単なるお手伝いという少年の立ち位置からすれば、名前まで覚える必要はなかったのだが、こんな事件が起こった以上、宿泊者全員の顔と名前と部屋番号はキチンと頭に入れて置く必要があった。
それでイチの顔、名前、宿泊部屋番号はチャンと頭の中に入っていた。
だが、その場の話のなりゆき上、少年は自己紹介という形でイチの名前を聞いた方がいいと判断したのだった。

「あ!? 俺!? 俺は、“きんだいち・イチ”」

「“きんだいち・イチ” 様?」

反射的に、少年は聞き返していた。
その時、少年はこう思ったのだ。

『あ!? アレは “イチ” って読むんだ!? “ハジメ” じゃなくって・・・。 やっぱ聞いて良かった』

と。

そぅ。

少年はイチの名前を宿泊者名簿で確認していた。
しかし、名簿に書き込まれてあった名前にはルビが振ってなかった。
そのため少年の中で、イチの名前は “きんだいち・ハジメ” だったのだ。
だから反射的に聞き返していたのだった。

「“きんだいち・イチ” 様?」

と。

それにイチが答えた。

「様って程のもんじゃないけど・・・。 “きんだいち” は、あの金田一ね。 「座敷わらし伝説」で有名な金田一温泉郷の金田一。 それとも金田一 耕助の金田一、って言った方が分かりいいかな? ま!? あの金田一・・・ね。 そして、イチは漢数字の一って書いて “イー、チー”」

「ァハッ。 『漢数字の一って書いて “イー、チー”』って・・・。 そのまんまですね」

「まぁね。 でも、嫌いじゃないよ」

「うん。 いいお名前です。 一番いいのイチですもんね」

「一番悪いのイチでもあるけどね」

「ァハハハハ。 金田一様、切り返しお上手ですね。 下手な事言えませんね。 ァハハハハ」

少年が愛らしく笑った。

「ま!? それが俺の取柄・・・かなっ? やっぱ。 ァハハハハ」

イチも釣られて笑っていた。
その時、


(チラッ!)


カウンターがイチの目に入った。

「ん!?」

なんか変な感じだった。
イチは良く目を凝らしてカウンターを見つめた。

「どうかなさいましたか?」

不思議そうな顔をして少年が聞いた。

「あぁ、あのカウンターなんだけどさ、な~んか変なんだよな」

そこまで言った時、イチがある事に気が付いた。

「あ!? そっか。 時計だ、時計!? 時計がないんだ。 そっかそっか。 な~んか変だと思ったら時計がないんだ」

イチがカウンターの上を指差して、少年に聞いた。

「昨日までさ、あっこに時計、あったよね」

「はい、ありました。 でも、今朝方見たらなくなっちゃってました。 みんなに聞いても、誰も知らないって。 だから、お話してたんです。 ひよっとしてファントムが取ってっちゃたんじゃないか? って」

「そう、ファントムがねぇ」

「はい」

ここでイチがコーヒーを一口すすった。
少年がその場を離れようとして、


(コクッ)


イチに一礼した。

イチも軽い会釈を返した。
そしてボンヤリと考えた。

『そういや、有森のヤツもボーガン取られたって言ってたよな・・・。 でもな。 有森のヤツ・・・。 なんでボーガンなんか? いくらアレがあると気分が落ち着くからったって、あんな荷物んなるもん、わざわざこんなトコまで・・・』

瞬間、


(ピッ、コーーーン!!)


イチが閃いた。

『ん!? ボーガン!? ボーガンボーガンボーガン・・・。 時計にボーガン・・・。 そ、そうか!? そうかそうかそうか!? そういう事だったのか!?』


(ガタッ!!)


突然、音を立ててイチが立ち上がった。
驚いて、少年が振り返った。
慌ててイチに近寄った。

「ど、どうかなさいましたか? 金田一様?」

イチが少年の顔を見た。


(パチッ!!)


右目でウインクした。
そしてこう言った。

「ナゾは解けたよ、ワトソン君!!」










って。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #41

#41




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「オメェらの言った通りになっちまったな」

尻餅がイチ達に言った。

「ん!?」

「ん!?」

「ん!?」

 ・・・

イチ達にはその言葉の意味が全く分からなかった。
その空気を読んで尻餅が続けた。

「水死だよ、水死。 オメェら言ってたじゃねぇか、3人目は水死だって」

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

オペラ座の怪人の原作を知っている者達は皆、その事に気が付いた。
勿論、イチも。

『そ、そうかぁ!? そう言えばそうだった』

という感じで。

不意に公園の顔色が、


(パッ!!)


明るくなった。

「それならこれで・・・これで、もうこれ以上の殺人が起こる事はないんですね? 犯人が死んだ以上」

「あぁ、そういうこった」

尻餅が自信タップリに断言した。
イチに向かっても。

「な、金田一。 そういうこったよな?」

「・・・」

だが、イチは何も答えなかった。
イチにはしっくり来なかったのだ、この呆気(あっけ)ない幕切れが。
だから、ただ黙って考え込んでいた。
開けられていた窓のサンを右手人差し指でなぞり、そのなぞった指先をジッと見つめたまま。
イチはその時、死喪田 歌月の逃走経路に思いを馳せていたのだった。


こんな感じで・・・



『廊下の絨毯に油、それも揮発油と思われる物まで予(あらかじ)め仕込んでいた程、用意周到なあの死喪田 歌月が、簡単に窓からあの大荒れの海に飛び込んでアッサリ死んでしまうものなんだろうか? それにこの窓のサン。 ここには何も・・・。 それに・・・日高、桐生の二人を殺した時のあの手の込んだ仕込やトリック。 あれ程抜け目のない犯人が、こんなに簡単に・・・。 しかも・・・早乙女はまだ生きている。 なのに・・・。 う~む』










と。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #40

#40




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「あ!? あれは何だ?」

尻餅が大声を出した。
霊園が持って来た、強力なスポットライトで海面を照らしての事だった。

「ファントムの仮面とマントだ!?」

イチも驚いた様子で叫んでいた。

そぅ。

民宿の窓の真下の波打ち際の海面には、崖に打ち寄せる激しい大波の上に浮いたまま、ファントムの物と思われる仮面とマントが行ったり来たりしていたのだ。

それを見つめながら尻餅がボソッと呟(つぶや)いた。

「ヤツは逃げられんと観念して、海に飛び込んだのか?」

「そ、そんなぁ。 そんな事をしたら、命の保障が・・・。 と、すれば・・・。 とうとう3人目の死者が・・・」

公園が落胆の声を上げた。
『これでもうこの民宿は終わりだ』とでも言わんばかりの表情だった。
尻餅が分かったようなお顔をしてその公園に言った。

「だが、そうとしか・・・」

しかし、ここまで言った所で言葉を切った。
公園の落胆した姿に、珍しくチョッと引いてそれ以上は言葉を慎んだのだ。
あの高ビーな尻餅がだ。
代わりに、イチに高圧的に確認した。

「俺らとこのガキ共とで挟み撃ちにしたんだ。 しかしここで見失った。 そうだな小僧」

「あぁ」

イチが同意した。
尻餅が窓から下の絶壁を指差した。

「見てみろ、この崖。 身を隠せるような所はどこにもない。 否、足場すらない。 こんな足場のない崖、どうやって伝って降りられる。 しかもこんな短い時間で、それもビッコを引いてたヤツが」 

イチが上を見上げた。
そして尻餅に聞いた。

「ロープで屋上ってのは?」

「否、そいつぁ、無理だろな、この風じゃ。 よっぽど体重のあるヤツか腕力がなきゃぁ、とてもとても体が安定せん。 やっぱ飛び込んだと見るべきだろうな」

「う~む」

イチが唸った。
死喪田 歌月が海に飛び込んだかどうかまでは、まだ自信をもって判断出来なかったのだ。
その時のイチには、まだとても・・・そこまでは。

「しっかし、こっから飛び込んだ以上、大将の言った通り、ヤツはもう生きちゃいねぇだろうなぁ・・・」

尻餅が公園に話を振った。
公園が海面を指差して答えた。

「は、はい、確かに。 この下の海は、ゴツゴツの岩場。 満潮時でもここから飛び込むのは危険な上に、あの大波。 この酷い風雨で激しく打ち付けているあの大波に飲まれたら、先ず間違いなく命は・・・。 はい」

ここで、

「だが、まだ死体は上がってはいない」

やっとイチが口を開いた。

「バ、バッカかオメェは!? こっから飛び込んで、無事に済むわきゃねぇだろ。 それにこの断崖、この絶壁、この断崖絶壁の一体どこに死体の上がる場所があるってんだ!? えー、一体どこに?」

「ウムウム」

「ウムウム」

「ウムウム」

 ・・・

その場にいる者の殆(ほと)んど全員が納得したように首を縦に振った。
イチと少年を除いた全員が。
それを余所目(よそめ)に再び海面を見つめて、イチがポツリと独り言を言った。

「簡単過ぎる」

「ん!? 『簡単過ぎる』!? 簡単過ぎるたぁ、どういう意味だ?」

イチの独り言を小耳に挟んだ尻餅が聞き返した。

「俺の直感だが、この連続殺人のエンディング、つまり死喪田 歌月のこの死に方。 あまりにも簡単過ぎると思うんだ」

これを聞き、尻餅がイチを思いっきし小バカにしてほざいた。

「ケッ!? ま~た直観か。 オメェの直感は外れてバッカじゃねぇか。 さっきも『最後に・・この殺人にはトリックの他に・・これは俺の直感なんだが・・何らかのメッセージが隠されている!?(#29)』とか何とかほざいてやがったがじゃねぇか。 ぁ~ん、忘れたんか? ぁ~ん。 フン。 だが、これの一体どこにオメェの直観とやらの『何らかのメッセージ』とやらがあるんじゃ。 えー、これの一体どこに?」

って。

そんな尻餅を、


(キッ!!)


イチが真正面から見据えた 否 睨んだ。
そしてキッパリとこう言い切った。

「否(いや)、俺の直観は外れない!!」

と・・・










自信タ~~~ップリに。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #39

#39




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「これ」

少年が右手人差し指で、床に敷いてある絨毯を指差した。
そこには、微(かす)かにではあったが靴跡らしい物が見られた。
イチがしゃがんでその靴跡を観察した。
それは美雪の部屋の方から続いていた。
ただし、美雪の部屋からここまで結構な距離があるため、始めは濃い靴跡だったが、その場所では誰かに指摘されなければ殆(ほと)んど気付かれない程度まで薄くなっていた。
そしてその靴跡は、イチの部屋と有森の部屋の間にある窓の所まで来て消えていた。
しかも、誰が開けたか知らないが、外は大雨だというのに窓が開いている、僅(わず)かにではあったが。
その窓の形状は各室内の窓と異なり、建物の中から外に向かって開く観音開きになっていた。
もっとも、片側の扉1枚だけだったのだが、その時開いていたのは。
風向きの関係だろうか、大雨の割には廊下への吹き込みは少ない。
だからだろう、窓を吹き開くでもなく、又、バタンと閉じるでもなかったのは。
普通ならそのどちらかのはずなのだが。
だがそうせずに風は、僅かに空いている窓をカタカタ揺らしているだけだった。

又、その窓はこの民宿の北側に位置している。

そぅ、北側に。

そしてこの民宿の北側は断崖絶壁になっていた。(← これ覚えてる・・・#1の『その島の北面は断崖絶壁であり、その際(きわ)に民宿は建っている。』ってトコ : 作者)

イチが急いで窓から外に首を出した。
激しい雨と風がモロにイチの顔面を直撃した。

「絶壁!?」

イチは驚いた。
尻餅も覗いていた。

「ぉ、おぃ!! 大将!! ライトだライト!! ライトを持って来い!!」

公園が、遅れてその場に駆け付けて来た霊園に、顎をしゃくってライトを持って来るよう指示した。

「ぅ、うん」

一言頷いて、霊園がミニシアター兼ホールに向かって走り出した。
取りに行ったのだ、ライトを。
勿論、ダッシュで、

「ダァーーーーー!!!」










って。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #38

#38




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ま、待てー!!」

イチがファントムを追う。


(サッ!!)


既にファントムは、中庭の角を曲がっていた。
イチの泊まっている部屋(105号室)の前をだ。
その反対側は有森の部屋(104号室)。


(サッ!!)


少し遅れてイチも曲がった。
その途端、

「ゥォッチ!?」

イチが声を出した。
目の前に人がいたのだ。

「おっ、トー!?」

相手も声を出していた。
だが、イチも相手も体をかわせない。


(ドン!!)


ぶつかってしまった。


(ドタッ、ドタッ)


弾みでイチとイチのぶつかった相手が共に床に倒れて尻餅をついた。
イチが相手の顔を見た。

「ぁ、有森!?」

ぶつかった相手は有森だった。
イチは出会い頭、有森とぶつかっていたのだ。

「き、金田一!?」

目を真ん丸くして有森が言った。
突然の事にビックリして、有森は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。

「ぃ、今、ここをファントムが・・・」

イチが言った。

「え!?」

その言葉の意味が理解出来ず、有森が声を上げた。

「ファントムだよ、ファントム!! 今ここをファントムが曲がったんだよ!!」

「ファントム? ファントムって?」

「だからファントムの仮面を被った死喪田 歌月が今ここを曲がったんだよ!! ホンのチョッと前に!!」

「し、し、死喪田 歌月だってー!?」

「あぁ」

「で、でも、俺、な~んも見てないぜ」

「そんなわきゃねぇ、確かにヤツは今ここを・・・」

その時、


(ガチャ!! ガチャ!!)


亀谷の部屋(103号室)と銭湯の部屋(102号室)のドアが開いた。
中から二人がほぼ同時に顔を出した。
ユックリと出て来た。
物音に気付いたからだろうか?
二人が中庭の角を曲がって、イチ達の所までやって来た。

「おぅ、どうした? なんかあったのか?」

亀谷が不思議そうな顔で聞いた。

「何だ? 今の物音は?」

こんどは銭湯だった。

「死喪田だ! 死喪田 歌月が現れたんだ!! ファントムの仮面に衣装を着けて・・・」

イチが有森、亀谷、銭湯の3人に事情を話し始めようとした。
そこへ、


(ドタドタドタドタドタ・・・)


遅ればせながら尻餅が、逃げたファントム、それを追ったイチのルートとは逆回りでやって来た。

「こらぁ! 金田一~~~!! ファントムはどうした、ファントムは?」

「そ、それがどこにも・・・」

「な、な、な、なーに~? 逃げられたんかぁ?」

「す、済まん」

「す、す、す、済まんで済むと思っとんのか~!? ゴルァー!!」

「・・・」

イチは何も言えなかった。
ファントムが突然、忽然(こつぜん)と消えた理由が分からなかったからだ。

そこへ、


(ゾロ、ゾロ、ゾロ、怪傑ゾロ、ナンチャッテ・・・)


人が集まり始めた。
そこには公園や少年の姿もあった。
当然、美雪に拳代、幽鬼夫妻の姿も。

「な、何事ですか?」

公園が聞いた。
尻餅が振り返って公園を見て言った。

「否、な、大将。 死喪田だ、死喪田 歌月が姿を現したんだ、ファントムの格好でな。 それもたった今。 それを俺達が追ってここまで来たんだが」

ここで既に立ち上がっていたイチを、

“ピッ”

って力強く指差した。

「このバカがここでそれを見失ったんだ!! このバカが!!」

「し、死喪田様が・・・」

「そうだ!! ファントムのお面なんぞ、被りやがってな」

次に、早乙女を指差した。

「そんでソイツを殺そうとしやがったんだ」

最後は美雪を。

「ソイツの部屋で」

そして再びイチを、

“ピッ”

ってした。

「運良く近くにいたコイツと俺がが、その場に入って行って未遂に終わらせてやったって訳よ」

「そ、それは・・・それはご苦労さまでございました。 いやぁ、流石、警視庁の刑事さん。 ご立派でございます」


アッ、チャ~~~!?


迂闊(うかつ)にも公園が尻餅を褒めてしまった。

と、すれば・・・

当然、ア、レ、が・・・

そぅ・・・

アレだ! アレ!! アレが出る!!

待ってましたとばかりに、尻餅がいつものアレをやり始めた。


 ぉ、お~よ。

 無茶で無謀と笑われようと
 意地が支えの喧嘩道!!

 壁があったら殴って壊す!
 道がなければこの手で作る!!

 俺を・・この俺を・・この俺様を・・一体・・誰だと思っていやがるー!!


って・・・ヤツを。

それを少年が軽~く、いなした。

「刑事さん」

って。

「ヘッ!?」

その少年のリアクションで、“カクッ!!”って、なっちゃった尻餅であった。
そんでもって、興奮した尻餅が少年に食って掛かろうとした。

だが・・・










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #37

#37




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





(バタン!!)


ドアが開いた。

「み、美雪!? 何だ何だ何だ!? 何が起こった!?」

異変に気付いたイチが、部屋の中に飛び込んで来た。
尻餅も一緒だ。

ファントムが、

『ハッ!?』

っとして、振り返ってイチ達を見た。

瞬間、

『お!?』

『お!?』

イチと尻餅が同時に驚いた。

「た、助けてー!! ィ、イッチャーン!!」

美雪が叫んだ。
それとほぼ同時に、尻餅も叫んでいた。

「で、で、出たな死喪田 歌月!? つ、つ、終に出おったな!? ぉ、ぉ、ぉ、お前を・・・お前をお前をお前をーーー!! 殺人容疑及び殺人未遂の現行犯で逮捕しちゃうぞ!!」

って。

そしてファントムにつかみ掛かろうとした。

だが、その時、

「クッ!?」

一声呻いて、


(ダァーーー!!)


いきなりファントムが走り出した。

ドアだ!? ドアに向かってだ!?

イチ達がたった今入って来たばかりのドアに向かって走り出だしたのだ、ファントムが。
酷いビッコを引きながら。


(ドン!!)


ファントムが、突然の事にまだ心の準備が出来ていなかったイチを強烈に突き飛ばした。

「ぅお、ットー!?」

イチが吹っ飛んだ。


(ドン!!)


尻餅にぶつかった。

「ぅお、ッチー!?」


(ドカ、ドカ)


二人が床にこけちゃいました。

「ィ、イッチャン!?」

美雪がイチに駆け寄った。

「だ、大丈夫だ! 美雪!!」

イチはもう立ち上がり、ファントムの跡を追おうとしていた。

「ク、クソー!!」

勿論、尻餅も。

そうこうしている間も、


(タタタタタ・・・)


ファントムが廊下を走って逃げている。
ビッコを引きながら。
靴跡を残して。

「ま、待てー!!」

「ま、待ちやがれー!!」

イチと尻餅がその後を追う。

突然、


(タッ!!)


ファントムが立ち止まった。


(サッ!!)


振り返った。


(シュポッ!!)


いつの間にか手に握り締めていたジッポ(ライター)に火を点けた。


(トン!!)


床に投げ捨てた。

すると、


(ボヮッ!!)


予(あらかじ)め床の絨毯に仕込んであったらしい油か揮発油のような物に、ジッポの火が点いた。
恐らくそれは、ビッコを引いているというハンディを事前に計算しての仕込みだったに違いない。
ファントムに化けた死喪田 歌月は、チャンと逃走経路を用意していたのだ。

「ウッ!?」

いきなり点った火に驚きイチが呻いた。

「ォワッチ!?」

尻餅も。

「クッ!? こ、こんな物まで」

と、イチが。

「んなろぉーーー!!」

尻餅も。
二人が上着を脱いで火を消し始めた。

だが、

「ここは俺に任せろ! お前はヤツを追え!!」

尻餅が叫んだ。

「ぁ、あぁ!? 分かったオッサン! 後は頼んだ!!」

「ぃ、いいから、は、早く! 早く行けー!!」


(ダァーーー!!)


イチが一人でファントムを追った。

廊下にはファントムの靴底の泥が靴跡となって残っていた。
降り続いている大雨で、屋敷の外の地面がグチャグチャだったからだ。
その上を歩いて美雪の部屋に侵入した以上、靴底が泥だらけなのは自明の理だった。










そして・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #36

#36




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「先輩、心配しなくても大丈夫ですよ」

美雪が早乙女に言った。
ここは、109号室。
美雪のお部屋。
美雪が続けた。

「イッチャンって・・・パッと見、さえないけど。 いざとなったら、あれで結構頼もしいんですよ。 だって、イッチャンてば・・・あの超有名(?)な大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫なんですから」

その時、

それまで美雪の顔を黙って見つめて話を聞いていた早乙女の顔が、

『ハッ!?』

突然、引き攣った。

そ、れ、は・・・

ナゼか?

その答は美雪の背後にあった。

そぅ、

美雪の背後の窓の外にそれはあったのだ。

そこに、歌月・・・歌月だ、歌月!?
死喪田 歌月がいる!?

否、

死喪田 歌月と思(おぼ)しき人物が・・・

それまで行方を晦ましていた、あの死喪田 歌月と思われる人影が美雪の背後の窓の外に突然姿を現したのだ。
それもファントムの仮面を付け、ファントムの衣装を身に纏(まと)い、笑うセールスマンっぽいアストラカン・ファーの帽子を被って。
それは帽子を除けば、御布施の盗まれた物と全く同じ衣装。
恐らく盗まれた御布施の衣装だろう。
全身ずぶ濡れだ。
外はまだ、多少勢力は弱まったとはいえ、昨夜来の暴風雨が吹き荒れている。
その所為(せい)でだ。

そのファントム姿の死喪田 歌月らしいヤツが、


(ガッ、シャーーーン!!)


両手拳で外から窓ガラスを叩き割った。


(タン!!)


部屋の中に飛び込んだ。

狙いは早乙女 京子か?

「キャーーー!!!」

「キャーーー!!!」

美雪と早乙女が同時に悲鳴を上げた。

二人のその反応を全く意に介さずファントムが、


(ザクッ、ザクッ、ザクッ)


恐怖に顔を引き攣らせ、抱き合って震えている二人に3歩近付き、


(ギロッ!!)


早乙女を睨みつけた。


(スゥ~)


胸元に仕込んであった短剣・・・あるいは包丁か?
刃物を抜いた。


(ギラン!!)


怪しく光る短剣らしき刃物。


(サッ!!)


それを振りかざした。

美雪と早乙女・・・二人共微動だにしない 否 出来ない。
恐怖のあまり体が動かない。
まるで不動金縛りにでも掛かっているかのようだ。

だが、










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #35

#35




 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「う~む」

尻餅が考え込んでいる、廊下をイチと一緒に歩きながら。
当然、向かう先は109号室。
つまり美雪の部屋だ。
尻餅が続けた。
真っ当な言い方で。

「恐らく死喪田 歌月は冬島 月子ってヤツの家族、あるいはかなり近い親族・・・。 否、待てよ。 恋人って可能性もあるか・・・。 う~む」

更に続けた。

「冬島の自殺の真相を何かで知った死喪田が復讐を思い立った。 そして密かにそのチャンスを狙っていた・・・。 そんでもって終にそのチャンスが訪れた。 ここはそれに絶好の場所だからな。 島全体としてみればここはある種、密室とも言えるんだからな。 そしてお前らの来る前にチェックイン。 そこで計画を練り、それを実行ってか? このホテルの大将に聞いた話しじゃ、死喪田は前にも何度かここに来たっていう話しだし。 つまり地の利ってヤツも心得ている」

「ん!? 前にも何度か?」

「あぁ、2度程、来た事があるそうだ」

「なら、今回で3度目?」

「という事になるな」

「ウ~ム」

今度はイチが考え込んだ。
勿論、歩きながら。

そして、2人の目指す109号室はもう・・・










目と鼻の先だった。











つづく







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