#80 【登場人物】
深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短~いスカート パンツは白
金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才
深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー
深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻
深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男
深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻
死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物
名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員
御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役
有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員
銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員
緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ
亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員
早乙女 京子(さおとめ・きようこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役
尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)
幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)
幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風
「色々ご面倒、お掛けしました」
美雪が公園(まさぞの)に詫びた。
時は、翌日午後2時。
所は、島の埠頭。
この民宿は基本的に 『チェックインは午前10時以降、チェックアウトは午前10時まで』 となっている。
だが、ここは本土から少し離れた孤島。
従って送り迎えの必要がある。
そのための便は原則・・・
送りは、午前10時00分に島の埠頭からこの民宿のプレジャーボートで。
迎えは、そのプレジャーボートが帰る時に本土の埠頭から。
というのが決まりなのだが、今回は色々あった事と他に予約がなかったため、公園が特別に昼食をサービスしていた。
又、美雪達も帰りの列車の切符を予め買ってあった訳ではなかったので、時間に縛られる心配は全くなかった。
それ故、公園の厚意を安心して受ける事が出来た。
だから現在の時刻は、原則通りなら午前10時00分でなければならないのだが、そうではない午後2時だったのだ。
そして島の埠頭でたった今、美雪が帰りの便に乗船する直前、自分達を見送りに来ていた公園、卒婆、少年に向かって詫びた所だった。
「色々ご面倒、お掛けしました」
と。
「なんの、なんの。 皆様にはなんの落ち度も・・・。 これに懲りずに、宜しかったら又お越し下さい」
公園がそれに答えた。
その公園に、今度は早乙女が詫びた。
「ごめんなさい。 ホントにごめなさい。 ワタシの所為(せい)で、ご面倒お掛けして」
早乙女の眼(め)をジッと見つめて公園が優しく語り掛けた。
「発端(ほったん)は嫉妬からのイジメですか? 褒められた話ではありませんが、今回の事を良い教訓とされてこれからは逆に、イジメを受けている子達の良き理解者になって上げて下さい。 それが冬島 月子さんへの一番の償いになるのではないでしょうか?」
「はい。 もう二度と誰も苛(いじ)めたりなんかしません」
「ウムウム」
公園が静かに頷いた。
次に早乙女は、少年に目を向けた。
「深大寺 少年(じんだいじ・すくね)さんでしたよね?」
「はい」
「ありがとう。 貴女のおかげでワタシ・・・救われたし、目が覚めたゎ。 ホントにありがとう」
「うん」
言うべき事は既に公園が言っているので、少年は早乙女にこれ以上何も言う必要はないと思い、ただ黙って頷いた。
少年にイチが近寄り、声を掛けた。
「少年ちゃん」
『ん?』
少年がイチを見た。
「今回は俺の完敗だ。 でも、君は一体どんな娘(こ)なんだ? 推理小説マニア? それとも親が探偵とか?」
「うぅん。 違いますよ。 普通の女の子ですよ」
「でも、推理は普通じゃなかったぜ」
横から御布施が割り込んで来た。
御布施は少なからず少年に気があるのだ。
それから強引にイチをヘッドロックして、おどけて言った。
「ま。 こんなヤツが相手なら俺でもな。 カッ、カッ、カッ、カッ、カッ・・・」
せせら笑った。
「や、止めてくれよ、先輩」
イチが、もがきながら御布施のヘッドロックを外そうとしている。
すると、
「謙遜しなくたっていいんだよ、少年ちゃん。 大したモンだったよ、君の推理。 それにありがとな、月子の事、色々調べてくれて。 なんか俺、チョッと恥ずかしいよ。 付き合ってた俺よっか、ズッと詳しいんだもんな、君の方が」
有森だった。
「テヘッ」
少年が照れくさそうに笑った。
それから有森に優しく語り掛けた。
「でも、有森さん」
「ん? 何?」
「気を落とさないで下さいね」
「ぁ、あぁ。 ・・・。 うん」
少年の言葉がチョッと心に響いた有森だった。
「ウムウム」
「ウムウム」
銭湯と亀谷は黙って頷いてそのやり取りを見ていた。
「少年ちゃん」
最後に美雪が声を掛けた。
「はい」
「お世話んなっちゃったゎね」
「いぃえ。 ウチ(オペラ座館)として当然の事、したまでですよ」
「うぅん。 素晴らしかったゎ、少年ちゃん。 貴女の推理」
「テヘッ」
少年がチョッと照れた。
「お礼に一つ、いい事教えて上げるね」
「いい事?」
「そ」
「?」
「実はね、少年ちゃん」
ここで美雪がイチを指差した。
そして徐(おもむろ)に勿体(もったい)を付けて、こう言った。
「この金田一 一ったらね。 見掛けによらず IQ が180もあるのよ。 俗に言う大天才なのよ」
と。
だが・・・
美雪のこの言葉を聞いた瞬間、
「エェー!? ウッ、ソーーー!!」
「エェー!? ウッ、ソーーー!!」
「エェー!? ウッ、ソーーー!!」
・・・
美雪を除く演劇部員全員が、凄まじい形相で驚いた。
早乙女までもだ。
そして、
まるで驚天動地(きようてんどうち)の大騒ぎが始まった。
否、
ちゃぶ台返しの大さわぎが始まった・・・と言った方がいいか?
御布施達が大はしゃぎだ。
まるで、今、世界中で話題沸騰中のあの “日本マクドナルドのCM
http://www.youtube.com/watch?v=frl7jR_2hv8 ” に出て来るガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。
そぅ。
あの殆(ほとん)ど病気としか思えないような、画面の中で “基地外” 起こしているあのガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。
これには当の美雪も逆にビックラこいた。
「そ、そ、そ、そんなに驚かなくってもー!?」
一瞬、言葉に詰まった。
それから 『興奮冷めやらぬ』 といった状態でどもりどもり続けた。
「でっ、でっ、でも・・・。 そっ、そっ、それってホントなのよ。 ホッ、ホッ、ホントの話なのよ。 ね。 イッチャン」
「ぁ・・・あぁ。 まぁな」
イチが照れくさそうに口ごもりながらそれを認めた。
「そんなイッチャンに勝っちゃったのよ、貴女。 大したものなのよ、それって。 ・・・。 あ!?」
突然、美雪が何かを思い出したようだった。
「どうかしましたか?」
『不可解だ』 という表情を浮かべ少年が聞いた。
「もしかして・・・。 『オペラ座の怪人』 の仮装舞踏会のシーン。 そこでファントムが床に叩き付けるスコア・・・ファントム自身の手による 『ドンファンの勝利』 っていう名の付けられたスコアなんだけどね。 あれって、もしかして、貴女の勝利の予言かも・・・。 ナンチャッテね」
この言葉にどう反応して良いか分からず、
「あたしの勝利の予言だなんて・・・。 別にそんなぁ・・・」
少年が少し困惑気味に言った。
その時・・・声がした。
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つづく