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引き続き





『怨霊バスター・破瑠魔外道シリーズ第3弾!!』

『死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― 』(その内、うpするヨン。 鹿~~~し、先に違うヤツうpすっから・・・)

を!?

読んでね。

Please...







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「激闘流転編」 外道外伝 “妖女(あやしめ)” 「番外編」 #377 『補足』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 外道外伝 “妖女(あやしめ)” 「番外編」 #377 『補足』の巻




補足です。

作者は 『不動心呪』 を、あえて 『慈救咒』 と書きました。
これらは同義です。

そして、 『慈救“咒”』 を 『慈救“呪”』 と書く流儀もあります。
どちらでも良いみたいですね。

『不動心“呪”』 も同様、 『不動心“咒”』 でも OK のようです。

又、

慈救咒真言を

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン」

と書きました。

しかし、不動行者、あるいは不動信仰を持つ修験者達がこの真言を上げるのを聞いていると、

「ノウマク サーマンダー バーザラダンセンダン マーカロシャダー ソワタヤ ウンタラター カンマン」

と、聞こえます。

実際その方が言い易いのは確かでせぅ。

『もし読者の中で違和感を感じる人がいたら・・・?』

と思ひ、蛇足ながら補足してみますた。



蛇足ながら補足・・・・・・・・・・ホントはコレが言いたかったのでアリンス



そして、補足の補足。

慈救咒(じくじゅ)

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン」

の意味は、

ノウマク = 帰命(きみょう)

サマンダ = 普遍(ふへん)

バサラダン = 諸金剛(しょこんごう)

センダ = 暴悪魔障(ぼうあくましょう)

マカロシャダ = 大忿怒者(だいふんぬしゃ)

ソハタヤ = 摧破(さいは)

ウン = 恐怖(きょうふ)

タラタ = 忿怒聖語(ふんぬ・せいご)

カンマン = 不動明王(ふどうみょうおう)

と!?

なるらすい。


そしてその意訳は、

確かワタイの記憶が正しければ、

「普(あまね)く諸金剛に帰依(きえ)し奉(たてまつ)る、暴悪の相・大忿怒をなせる金剛尊よ、願わくば我が心中の魔性の障(さわ)りを尽(ことごと)く摧破したまえ」

だったと思われるのだめカンタービレ。



更に、補足の補足の補足。

作者はかつて数多くの修験者、密教者(否、密教屋あるいは密教君と言ふべきか・・・?)の類(たぐい)に会ったり見たりする機会がありました。

その数たるや、結構な数だピョン。

大は新興宗教の教祖様(損し 否 尊師つった方が良いノン・・・?)から、小は殆(ほと)んどダメポの占い師に至るまで、数多くです。
その中には、結構デッカイ教団のそんでもって恥を後世に残すとも知らんと、い~~~っぱいツマラン本なんか書いちょる、自称教祖の愚かなジッちゃんもいましたし、寺の坊さんなんかもイラッシャリますた。

ソイツ等って結構有名な “ヤー、ツー、ラ~~~” だピョン。

み~んな、慈救咒をカッチョ良く上げておったでござる。

but 

その意味を語った 否 語る事が出来た者は、唯の一人もおり申さなんだのでアリンス。

そぅ、たったの一人も自分が唱えている真言の意味を述べる事が出来た者がオジャラなかったチュゥ訳ですネン。

そいつ等全員とクッチャべった訳ではなかったので、皆そうだとは断言出来ないザンスが、恐らくその殆んどが意味を知らなかった 否 それどころか意味を考えた事すらなかったのではないかと思われマンモス。

もっとも、これは宗教で飯を食ってる連中の絶対多数に見られる事で、取り立てて言うまでもありませんヶどネ。。。


まぁ、

「真言は不思議なり、読呪すれば即ち通ず・・・」

っポイ言葉を何処かで見た希ガス。

もしかすたら、単に其奴等(そやつ・ら)は、この言葉に素直なだけかも知れませヌが・・・


・・・・・・ by コ・マ・ル







「激闘流転編」 【最終回】 #376 『女切刀の夜明け』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 【最終回】 #376 『女切刀の夜明け』の巻




ただ・・・

目に涙を浮かべている事だけだった。
その時、中道達に出来た事は。
何も出来ずに、ただ、目に涙を浮かべて外道の姿を見つめている事だけだった。
その時、中道達に出来た事はといえば。

外道がしゃがんだ。
倒れている母・死頭火の右横に。
そして掛けた。
両肩の痛みに堪えながら引きずるようにしてそこまで運んで来た死頭火の羽織袴を、うつ伏せのまま裸で倒れている死頭火の上に。

外道は知っていた、既に死頭火が死んでいる事を。
死頭火の黒い鉢巻が舞い落ちた時にそれを感じ取っていた。
外道はあの時・・それを・・確かに。
それでも外道は雪女と戦い続けた。
決して止めようとはしなかった。
そして打ち破った。

それこそが戦士。
真の戦士。
それこそが魔性と戦う事を運命付けられた女切刀の真の戦士の姿であり、父・内道、母・死頭火から受け継いだ外道の戦士としての血であり、行く行くは里の総領とならねばならぬ者としての本分だった。

その外道が死頭火にソッと語りかけた。

「かー様。 雪女は外道が・・・。 外道が倒しました」

そこへ中道達が集まって来た。
中道は13人の内の一人に脇を抱えられていた。
軍駆馬とその鞘を戦士の一人が拾い上げ、持って来た。
中道がそれを受け取り、脇を抱えられた不自然な体勢のまま鞘に収めた。
そして全員が輪になって外道と死頭火を囲んだ。

だが、

誰も何も言わなかった。
否、言えなかった。
中道も戦士達も皆、ただ黙って死頭火と外道を見ている事だけしか出来なかった。

死頭火はうつ伏せの状態で、顔を右に向けている。
外道がまだ痛む右腕の、その手の甲で死頭火の右頬をソッと撫(な)でた。
死頭火の頬は、ヒンヤリと冷たかった。
しかし、外道の手も冷え切っていたため、それを感じ取る事はなかった。
ジッと死頭火の顔を見つめたまま、外道が死頭火の右頬を右手の甲で繰り返し何度も何度も撫でた。
万感の思いを込め・・ソッと・・そしてユックリと・・繰り返し何度も・・何度も。

外道のその姿を見つめながら、中道が外道に詫(わ)びた。

「済まぬ、外道。 許せ。 堪(こら)え切れずワシが咳いたばかりに・・・」

突然、


(ポロ。 ポロ。 ポロポロポロポロポロ・・・)


外道の目から涙が溢れ出した・・・それまで必死に流さないように我慢していた涙が。
中道の一言が切っ掛けとなり、抑えていた感情が一気に爆発したのだ。

冷たくなった死頭火の背中に覆(おお)い被(かぶ)さり、すがるように死頭火の体を何度も何度も何度も揺(ゆ)すりながら外道が叫んだ!!

「かー様、かー様、かー様ーーー!! ゥワーーー!!」

外道の叫び声が女切刀の里中に響き渡った。

そして外道は泣いた。

「ウッ、ウッ、ウッ、ゥワーーー!! かー様、かー様、かー様ーーー!! ウッ、ウッ、ウッ、ゥワーーー!! ・・・」

声の限り泣いた。
悲しくて泣いた。
母・死頭火のために泣いた。
父・内道のためにも泣いた。
泣いて泣いて涙が枯れるまで泣き続けた。

そして、この日を限りに外道は涙を捨てた。

そこへ品井山 孟是と里人の何人かが一足先に帰って来た。

事情を何にも知らない孟是達は、走ってその輪に近付いた。
急いだのだろう皆、息を切らせている。
しかし、気が気でなかったため一番手前にいた13人の戦士の内の一人を捕まえて、孟是が聞いた。

「ハァハァハァハァハァ・・・。 ど、ど、どうじゃった、どうじゃった、どうじゃった? 本当に、本当に、本当に雪女に勝ったのじゃな? 白玉(しろだま)が上がった故、勝ったのじゃな? 本当に、本当に、本当に勝ったのじゃな? ハァハァハァハァハァ・・・」

聞かれた方(ほう)は黙ったまま、ただ頷(うなづ)く事しか出来なかった。

それに歯がゆさを感じた孟是が、輪の中に一歩足を踏み入れた。
瞬間、孟是がその場で立ち竦(すく)んだ。
絶句している。
言葉を出せずにいる。
死頭火と外道の姿が目に入ったからだ。

孟是と一緒に来た里人の何人かも又、孟是に続き、全く同様の反応を示した。
輪の中に入れば、否応なしに外道と死頭火の姿を見る事になったからだ。

そこへ次々と里人達が帰って来た。
皆、意気揚揚としている。
当然だ。
勝利の白玉を見て戻って来たのだから。
その気配に気付き、13人が輪を広げた。
そこに一人、又、一人と入って来た。
そして皆、一様に孟是達と全く同じリアクションをした。
嫌でも、その輪の中心に横たわっている二人の姿を見なければならなかったからだ。

気分は一転して全員の気持ちが、それまでとは打って変わって暗くなった。
皆、目に涙を浮かべ、ただ黙って死頭火と外道を見つめた。
中にはすすり泣く者達もいた。
外道の気持ちを慮(おもんばか)っての事だった。

だが、
外道は既に泣き止んでいた。
否、
もう泣く事が出来なくなっていた。

外道はその時、雪女との死闘で疲労困憊しきっている上、まだ癒えぬ両肩の激痛。
加えてそれ以上の痛み・・・母・死頭火を失った悲しみ。
その悲しみで既に気を失っていたのだ。
母・死頭火の背中にすがるように覆い被さったまま。

すると、


(スゥー)


急に辺りが明るくなった。

ン!? 夜明け・・・か?

そうだ!! 夜明けだ!!

日が差して来たのだ!!

その眩(まばゆ)いばかりに輝く朝日は、間髪(かんはつ)を入れず一気に女切刀を・・女切刀の里を・・里全体を、


(サァー!!)


眩(まぶ)しく照らし出した。
空には雲一つなかった。
晴天だ。
否、
青天だ。
青天白日だ。
完璧なまでの青天白日だ。

そして、何処(どこ)までも澄み切り、限りなく透明な空気の中。
女切刀の里を・・里全体を・・女切刀の里全体を覆っている木々が目覚め、俄(にわ)かに活気付き、息吹を開始した。
その木々の葉も又、キラキラと鮮やかに、そして美しく輝き始めていた。
まるで何事も起こらなかったかのように。
先程までの “アレ” が全く嘘だったかのように。

この瞬間・・・

女切刀呪禁道1400年・・・

幾多の魔性との激しい戦いの歴史の中・・・

その一番長い夜が・・・

終に・・・

明けたのである。


時に外道、若干四歳。
まだ年端(としは)も行かぬ幼子。
その真夏のある良く晴れた暑い日の・・・

夜明け前の出来事であった。










「そうだ、外道。 今は静かに眠れ。 明日(あした)のために・・・」











外道外伝 “妖女(あやしめ)” お・す・ま・ひ (パチパチパチパチパチーーー)






「激闘流転編」 #375 『勝利の白球』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #375 『勝利の白球』の巻




(シュ~~~!! シュルシュルシュルシュルシュルーーー!! バーーーン!!)


白玉(しろだま)が上がった。
勝利の白球が。
13人の戦士の内の一人がそれを上げたのだ。
戦士達は皆、既に身を起し、立ち上がっていた。
勿論(もちろん)、中道も。

だが、

誰一人その場を動こうとする者はいなかった。
否、動けなかった。
今、彼等に出来た事はといえば・・外道を・・外道の姿を・・ただ黙ってジッと見つめている事だけった。

外道はユックリと歩いていた。
しかし、その方向は母・死頭火の倒れている所ではなかった。
外道は死頭火の脱いだ羽織袴に向かって歩いていたのだ。
死頭火が変わり身の術を使った時に脱いだ、あの羽織袴に向かって。

13人の戦士と中道が見つめる中、外道が死頭火の羽織袴を拾い上げた。


(ズキズキズキズキズキ・・・)


両肩の痛みはまだ全く和(やわ)らいではいなかった。
左肩からの出血は、既に止まってはいたのだが。

死頭火の羽織袴は溶け始めた雪を吸い、重くなっていた。
その重さは今の外道には辛い物があった。
両肩の痛みがまだ全く和らいではいない上、雪女との激戦で疲労困憊(ひろうこんぱい)していた、今の外道には・・・とても辛い物が。
それでも外道は母・死頭火の羽織袴を拾い上げ、引きずりながら再び歩き始めた。

母・死頭火の元に向かって。

一歩ずつ、一歩ずつ・・・










ユックリとユックリと・・・











つづく






「激闘流転編」 #374 『完全決着』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #374 『完全決着』の巻




『ハッ!?』

雪女が我に返った。

既に大道の幻影は消えていた。
外道の秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法によって生み出された大道の幻影は。

そぅ・・・

たった今起こった不可解なこの一連の出来事は、死頭火が自らの命と引き換えに行った現身(うつしみ)の術による導きの元、外道の修した “秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法” が生み出した幻影だったのだ。

そして雪女の目の前には、既に大道は消え、その代わりにその秘術を修した外道が立っていた。
先程同様、外道はまだ根本印を組み、必死の形相で、

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

根本陀羅尼を上げ続けている。
外道にしてみれば、まだ雪女との戦いは終わってはいないのだ。

“決着が付くまで、決して攻撃の手は緩めない”

これが、サラブレット外道の持って生まれた本能だ。
その本能が、外道にまだ攻撃の手を緩めさせなかったのだ・・・完全決着が付くまでは。

だが、

状況は一変していた。
それは誰の目にも明らかだった。
顔ががらりと変わっていたのだ、雪女の顔が。
ホンのチョッと前とは全く別人の顔だった。

それに雪女がそうしたのではないにもかかわらず、何時(いつ)しか吹雪も止んでいた。
その代わりに、


(ポロポロポロポロポロ・・・)


雪女の目からは大粒の涙が溢れ出ていた。
それが頬を伝って、流れ落ちている。
その流れ落ちる涙は止まらない、止まろうとはしない。

静かに、そしてユックリと雪女が外道に歩み寄った、軍駆馬に胸を刺し貫かれたまま。
既に雪女の顔からは、一切の怒りと苦しみが消えていた。
肉体の結晶化も完全に収まり、元の姿に戻っている。

外道はまだ緊張した面持で、自分に近付いて来る劇的に顔形(かおかたち)が変化した雪女の眼(め)をジッと見つめていた。
だが、真言は上げ続けている。
勿論、印も結んだままだ。

外道の顔はたった今、雪女が見た大道の顔その物だった。
外道は大道に瓜二(うり・ふた)つだったのだ。

その大道に瓜二つの外道に向かい、雪女が言った。

「もぅ良い。 もぅ良いのじゃ、外道。 ソチの勝ちじゃ」

雪女のこの言葉に反応し、


(スゥー)


外道の体から力が抜けた。
緊張が解けたのだ。
それまでの張り詰めていた緊張が。

顔も、それまでの必死の形相から不思議そうな表情に変わっている。
雪女に何が起こったのか、まだ理解出来ていない所為(せい)で。

何が何だか訳が分からぬまま外道が真言を止め、印を解いた。
その瞬間、信じられない事が起こった。


(ズルッ!! ボトッ!!)


軍駆馬が雪女の体から抜け落ちたのだ。
誰も何もしなかったのに。
あれほど深く雪女の胸を刺し貫いていた筈なのに。
なのに軍駆馬が雪女の体からボトッと抜け落ちたのだ。
それも自然に、そして簡単に。

その刃の色も元の鋼色(はがねいろ)に戻っている。

足元に落ちた軍駆馬を左手でソッと横にどけ、右膝を雪面に突き、雪女がしゃがんだ。
目線を外道と同じ高さにするために。

外道に動く気配は全く見られなかった。
最早、外道は雪女を恐れてはいなかった。
戦う相手とも見てはいない。
雪女に全く殺気が感じられなくなっていたからだ。

相変わらずその場に突っ立ったまま、不思議そうな表情で自分を見つめている外道に向かって、


(スゥー)


雪女が両手を伸ばした。

そして、


(グィッ!!)


外道を引き寄せ、


(ギュッ!!)


抱きしめた。

まるで・・・

母が愛する我が子を抱きしめるように。
恋する乙女がその愛しい恋人を抱きしめるように。
しかも両目から溢れ出ている涙は、まだ止まらない。

その雪女が外道の耳元で、静かに、そして一言一言ハッキリと語り始めた。
あたかも何かを外道に教え諭(さと)そうとでもするかのように。

「外道。 ソチはワラワの大道様じゃ。 もう離さぬ。 もう離さぬぞ、外道。 ソチはワラワの大道様じゃ。 もう離さぬ、もう決して離さぬ。 良いか、外道。 良く聞くのじゃ。 何時(いつ)か・・・何時の日にかワラワはオナゴに、人間のオナゴに再び生まれ変わってソチの元に参る。 そしてソチと添(そ)い遂(と)げる。 ワラワはこの世でソチと添い遂げるのじゃ。 そのためにオナゴに、人間のオナゴにワラワは生まれ変わる。 ソチとこの世で添い遂げるためにワラワは生まれ変わるのじゃ、人間のオナゴに。 もう離さぬ、もう決して離さぬ。 忘るるでない、忘るるでないぞ、外道。 ソチは、ソチこそはワラワの、このワラワの大道様じゃ。 ワラワの物じゃ。 ワラワの外道じゃ。 もう離さぬ、もう離さぬ、もう決して離さぬ。 ・・・」

そう言う雪女のその顔は、つい先程までのあの残忍で狂暴で凶悪な雪女のそれではなく、元の妖の姫御子・雪の顔に戻っていた。
あの優しく、優雅で美しく、何処までも健気(けなげ)で気高い妖の姫御子・雪の顔に。

そして、

強く外道を抱きしめたまま・・優しく外道に語り掛けながら・・雪女 否 妖の姫御子・雪が、


(スゥー)


まるで氷が溶けるようにその一部を外道の体に・・肩に・・左肩に・・残したまま、溶けて消えた。
音もなく静かに溶けて消えた。
成仏したのだ、雪女は 否 妖の姫御子・雪は。

外道の足元の雪面には雪女が残した水溜りがあった。
だが、それも直(す)ぐに雪に飲まれて消え去った。
この地上に、全く雪女の痕跡を残す事なく消え去った。
何時(いつ)しか雪女の身に着けていた白衣(しらごろも)も、雪の中に溶けて消えていた。
やがてその雪も静かに蒸発し始めた。
雪女の名残(なごり)、その全てを飲み込んだ雪も。
真夏の・・・例えまだ夜が明けてはいないとはいえ真夏日の暑さで。

この瞬間、
終に、
史上最強の妖怪・雪女は消え去ったのである。

神剣・軍駆馬の真の使い手、破瑠魔外道の手に掛かり・・・

この世から・・・










完全に・・・











つづく







「激闘流転編」 #373 『心の叫び』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #373 『心の叫び』の巻




「大道様ーーー!!」

雪女が叫んだ。


(スゥー)


ニッコリ微笑んだまま大道が消えて行く。

その後を追うように、崩れ落ちたまま、まだ完全に指が復元していない右手を力の限り前に伸ばし、叫び続ける雪女。

「大道様ー!! 大道様ー!! 大道様ー!! 雪も!! 雪もご一緒に!! ご一緒にお連れ下さーーーい!! 大道様ーーー!!」


(スッ)


大道は消えた。
空の果てに。
虚空の中に。

雪女は、まだ叫び続けている。

「大道様ー!! 大道様ー!! 大道様ー!! ・・・」

そして最後に一言、

「イヤーーー!!」

悲鳴とも思える叫び声を上げた。
その声は雪女の心の叫びだった。

無間(むげん)の孤独の中に・・・

ただ一人生きる・・・

雪女の発した・・・

心からの叫び声だったのである。










その声は・・・











つづく







「激闘流転編」 #372 『ユックリと・・・確実に・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #372 『ユックリと・・・確実に・・・』の巻




信じる事が出来なかった。

誰も全く信じる事が出来なかった。
雪女のそんな姿を誰も全く信じる事が出来なかった。
雪女のそんな姿を中道及び13人の戦士達は全く信じる事が出来なかった。


(ポロ。 ポロ。 ポロポロポロ・・・)


雪女の両目から涙が溢れ出ていたのだ。
そのままその涙が頬を伝わる。


(プルプルプルプルプル・・・)


雪女の体は小刻みに震えていた。
前歯で下唇を噛み締めている。

たった今、雪女の眼前でまるで走馬灯のように繰り広げられた物語は、既に全て消えていた。
その代わりに雪女の前には、再び大道が立っていた。

大道は何も言わず、雪女の眼(め)をジッと見つめていた。
雪女も黙ったまま瞬(まばた)き一つせず、大道を見つめ返していた。

雪女が大道に向かって口を開いた。
何かを大道に語り掛けた。

だが、

「・・・」

言葉は空しく風になった。

その雪女に大道が優しく語り掛けた。

「そぅじゃ、雪殿。 それで良いのじゃ。 それこそワシに、このワシに心底愛(しんそこ・いと)ほしいと思はしめた雪殿じゃ。 それこそが雪殿の真の姿じゃ。 何処(どこ)までも優しく、美しく、素直な雪殿じゃ。 あの心から花鳥風月(かちょうふうげつ)を愛(め)でる雪殿じゃ。 これでワシも成仏出来そぅじゃ。 心置きのぅ成仏出来そぅじゃ」

もう一度、雪女が大道に何かを告げた。
やっと聞き取れるほどの大きさで。

「た・・い・・ど・・う・・さ・・ま」

と。

そぅ。

やっと聞き取れるほどの・・・大きさで。

しかしそこから先は、

「・・・」

再び風に変わった。

大道がニッコリと微笑んだ。
そして一言、

「さらばじゃ、雪殿」

雪に別れを告げた。

それと同時に、


(スゥー)


静かに大道の姿が消え始めた。

ユックリと、ユックリと・・・










確実に、確実に・・・











つづく







「激闘流転編」 #371 『済まぬ』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #371 『済まぬ』の巻




空間念写!?

空間念写に似ていた、その時の光景は。
空間念写の術に似ていたのだ、その時の光景は。

これが・・・

外道行ずる所の “秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法” のもたらす成果である。


場面が転換する。
次々と。

外道から大道。
大道から変わり果てた妖の姫御子・雪の姿。

次に場面は一転して、魔王明神本殿に。

本殿は燃えていた。
その中で大道が鋭い気合一閃、軍駆馬を振るった。
妖の姫御子・雪の身代わりとなった女神像の首を刎ねたのだ、涙を呑んで。
大道の表情に、愛する者を手に掛けねばならぬ悲壮感が溢れ出ているのが、一目で分かった。

再び場面は転換し、大道行なう所の秘術・大炎城結界へと変わった。

そこに見た物は、大火炎城の中で悲鳴を上げながら逃げ惑い、絶叫しながら生きたまま焼け死んで逝く人々の姿だった。
皆、雪女の知っている顔だった。
その中からユックリと大道が歩み出て来た。
すると、重磐外裏(えばんげり)の里を覆い尽くしている大火炎城は突如出現した大竜巻に包み込まれ、更にそれを大門扉が飲み込み、未知の空間へと消え去った。

更に場面は、重磐外裏庵へと変化した。

そこには、妖 玄丞(あやし・げんじょう)、妖一族、そして妖の姫御子・雪の供養のため、一心不乱に荒行に励む大道の姿があった。
それは実に一千日にも及ぶ過酷な物で、生きていられるのが不思議な程だった。
その一千日の間、大道は殆んど眠る事なく経典を誦し、滝に打たれ、護摩を焚き続けていた。
しかも、五穀断ちさえしていたのである。
雪女には、その荒行が自分達の供養のためであり、それに大道が命を懸けているのがハッキリと分った。
雪女にはそれがハッキリと分かった。

最後は、いよいよ大道入定の場面だった。

そこには悟り切った大道の姿があった。
しかし大道はやつれていた。
過酷な断食により、既に骨と皮だけに成り果てていた。
それでも一心不乱に鈴を鳴らしながら読経を止めなかった。

だが、

それを止めなければならない瞬間が、終にやって来た。
大道入場の瞬間である。


(ガクッ!!)


大道が事切れた。

だが、

事切れる寸前、


(クヮッ!!)


両目を大きく見開いた。

そして一言、こう言い放った。

「雪殿!! 済まぬ!!」










と・・・











つづく







「激闘流転編」 #370 『大道が・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #370 『大道が・・・』の巻




大道が・・・

あの破瑠魔大道が・・疾(と)っくの昔に死んだ筈の、あの破瑠魔大道が立っていたのだ・・雪女の眼前に。
雪女がかつてただ一人思いを寄せた、あの破瑠魔大道その人が・・外道の代わりに・・そこに・・雪女の眼前に・・立っていたのである。

「おのれ大道ー!! 化けて出おったかぁ!! ハァハァハァハァハァ・・・」

有らん限りの怒りを込め、憎しみを込め、恨みを込め、雪女が叫んだ。
荒い呼吸と共に。

「ハァハァハァハァハァ・・・。 ここで逢(お)ぅたが百年目。 ワラワの恨み、この恨み、今こそ晴らしてくれよーぞ!! 覚悟するのじゃ、大道ー!! ハァハァハァハァハァ・・・」

もう一度叫んだ。

だが、大道は顔色一つ変えない。
悲しい面持(おももち)でジッと雪女の眼(め)を見つめたまま立っている。

そんな大道に雪女が又しても罵声を浴びせ掛けた。

「クッ!? よくもよくもよくも、我が父・玄丞をー、里人をー、一族をー!! この人非人がー!! ハァハァハァハァハァ・・・」

平然とこれを受け止め、悲しい眼差しで変わり果てた妖の姫御子・雪の醜く歪んだ顔をジッと見つめ、大道が静かに口を開いた。

「雪殿。 止めるのじゃ。 もう、止めるのじゃ」

「ヌッ!? なぁ~にをホザクかぁ。 ハァハァハァハァハァ・・・」

「聞くのじゃ、雪殿。 聞くのじゃ」

「だ~れが聞くかぁ。 ソチ如(ごと)きのホザク戯言(ざれごと)ー。 ハァハァハァハァハァ・・・」

「じゃが、雪殿。 聞くのじゃ」

「くどい!! ハァハァハァハァハァ・・・」

「いぃや。 聞くのじゃ、雪殿。 ソナタは聞かねばならぬ」

ここで雪女はチョッと黙った。

勿論、

「ハァハァハァハァハァ・・・」

呼吸は荒いままだ。

そのままジッと大道の眼を見つめた。
そして言った。

「フン。 ハァハァハァハァハァ・・・。 それほど言うなら聞いてやるー。 申してみよー。 ハァハァハァハァハァ・・・」

大道が静かな口調で、しかし一言一言ハッキリと、雪女に語り始めた。

「確かにワシはソナタから受けた恩を仇で返した。 だが、憎(にく)ぅて仇で返したのではない。 天命じゃ。 天命故じゃ。 そしてそれがワシらの運命じゃった。 決して変える事の出来ぬ運命じゃったのじゃ、それが。 ワシはソナタが愛(いと)ほしい。 ソナタだけじゃ、ワシが心底愛ほしいと思うたオナゴは。 ソナタただ一人じゃ。 今でも変わらぬ。 昔も今も全くそれは変わらぬ。 だからもう止めるのじゃ。 そして戻るのじゃ。 元の雪殿に。 ワシが生涯ただ一人愛したあの雪殿に」

「愛(いと)ほしい? 愛ほしいじゃとぉ? どの口でホザクかぁ、そのような戯言ー!! あのような非道を平気で働いたソチが、どの口でホザクかぁー!! ハァハァハァハァハァ・・・」

「そうじゃ、非道じゃ。 確かにワシはソナタ達に非道を働いた。 じゃが決して平気で働いてなどおらぬ。 信じてくれ、雪殿。 ワシは決して平気でなどおらなんだ。 ワシは今でも悔いておる。 ワシの行いは未来永劫許されぬと思ぅておる。 しかしそれはワシの宿命じゃ。 それから逃げるつもりはない、毛頭ない。 最早このワシに成仏はない。 即身仏となった今もこのワシに成仏はないのじゃ、雪殿。 ワシは今、冥府魔道の世界を彷徨(さまよ)ぅておる。 じゃが、ソナタまでそうなってはならぬ。 だから止めるのじゃ、雪殿。 もぅこれ以上魔性の世界におってはならぬ」

と、ここまで言ったその時、


(キラッ!!)


大道の両目が輝いた。
そして一言続けた。

「見よ! これを!!」

瞬間、大道の姿が雪女に変わった。

その姿は・・・

顔は狂気に狂って醜く歪み、
口はガクッと下顎が大きく右にズレた鬼女口(きじょ・ぐち)となり、
目は怒りのあまり常軌を逸して残忍な光を浮かべ、
かつての、あの優しく、素直で、美しかった妖の姫御子・雪とは、とても似ても似つかぬ化け物の様(ざま)を呈していた。

その姿を見て雪女は、

『ハッ!?』

っとした。










そして・・・











つづく







「激闘流転編」 #369 『信じられない光景が』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #369 『信じられない光景が』の巻




「キィィィィィー!! リィィィィィー!!」

雪女は七転八倒の苦しみを味わいながら絶叫していた。


(ドロドロドロドロドロ・・・)


体の溶解もユックリとではあったが、しかし確実に進行している。
そして軍駆馬の高温化により、最早、体の結晶化は出来なくなっていた。
否、むしろこれ以上結晶化を続けていると取り返しが付かなくなる危険性があった。
気化させる事が出来ずに、体が解けてしまうという。

雪女は、気化から肉体を再構成する事は既に学習済み。
しかし現段階ではまだ、  妖怪  溶解から元に戻る事を経験してはいない。
従って、如何(いか)に類稀なる能力を有する雪女とはいえ、この状況下ではまだ、未経験の事は行いたくなかったのだ。
外道と死闘を演じているこの状況下では・・未経験の事は・・まだ。

よって、雪女は結晶化を止めた。

その所為(せい)か?

「ヒグァー!!」

再び雪女の体にこれまで以上の激痛が走った。

だが、倒れない。
必死で踏ん張って軍駆馬を引き抜こうともがいている。

外道も外道で、未(いま)だ癒えぬ両肩の激痛に耐えながら歯を食い縛り、


(キッ!!)


雪女の目を下から見上げ見据え、睨み付けたまま、手に秘密主根本印、口に、

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

秘密主根本陀羅尼を唱え続けている。

その外道の上体は既に血塗れだ。
着ている白い戦闘服が真っ赤に染まっている。
左肩から流れ続けている鮮血で。

もし、外道の左肩に食い込んでいるのが冷たい氷柱でなければ、その出血量たるや計り知れない物があっただろう。
恐らく、幼子なら意識が遠くなっても不思議でないほどだったに違いない。
しかし、実際の出血量は外道が意識を失うほどではなかった。
血液の凝固作用に加え、氷柱の冷たさが止血の役目を果していたのかも知れない。
更に、サラブレット外道の恐ろしいまでの自然治癒能力もこれに加わっていた。

そして、

両手で印を組んでいる以上、外道は軍駆馬の柄を握ってはいない。
雪女も又、外道の左肩を掴んだ指は崩れ落ち、既に外道から手を放している。

今、

雪女と外道。
外道と雪女。
その距離、大凡(おおよそ)2メートル。

雪女が一歩、二歩外道に近付いた。
激痛に顔を歪め、荒い息で怒鳴り散らした。

「ハァハァハァハァハァ・・・。 おのれおのれおのれ、ワッパー!! 小賢(こざか)しい真似をー!! ハァハァハァハァハァ・・・」

そして醜く顔を歪めたまま、


(ギン!!)


改めて外道を睨み付けた。

だが、

その瞬間、

『ハッ!?』

雪女は驚愕(きょうがく)した。

前に・・目の前に・・自分の目の前に・・今の今まで確かにいた筈の外道の姿が忽然として消えてなくなり、その代わりに、雪女の眼前に信じられない光景が浮かび上がって来たからである。

そぅ・・・

信じられない光景が・・・

雪女の眼前に・・・










驚愕するほどの。











つづく







「激闘流転編」 #368 『現身(うつしみ)の術』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #368 『現身(うつしみ)の術』の巻




黒くて細長い布が、


(パサッ)


外道の足元に舞い落ちた。

それは・・・鉢巻だった。
しかも黒い。

それは死頭火の鉢巻だったのだ・・・黒い。

死頭火は最後の力を振り絞り、現身(うつしみ)の術を使っていたのだ。(注:“現身”は本来『うつせみ』と読みます。『うつしみ』と読むのは作者の当て字です)
死頭火は外道に阿尾捨の法を伝えるためその最後の力を振り絞り、うつ伏せのままではあったがそれまで頭に巻いていた黒い鉢巻をほどき、それに念を込めて自らの “分身” に変え、そして外道の元へと飛ばしたのだった。
これが現身の術だ。

そして術の終了と同時に、それは元の鉢巻に戻り外道の足元に舞い落ちた。

『パサッ』

っと、小さく、音を上げて外道の足元に・・・今。

その瞬間、


(ガクッ!!)


死頭火の体から力が抜けた。
呼吸も止まった。
加えて、脈も。

死頭火は死んだ・・・静かに。

顔に満足そうに笑みを浮かべて。
最後の最後に外道の成長を見届ける事が出来た安心感からだろう、実に安らかな死顔(しにがお)で。

「クッ!? し、死頭火ー!!」

それを見て声を詰まらせ、目に涙を浮かべ、中道が息絶えた死頭火の名を叫んだ。
最早、二度と動く事のない死頭火の名を叫んだ。
目に涙を浮かべ、中道は力の限り叫んだ。

「死頭火ー!! 死頭火ー!! 死頭火ー!! ・・・」

と。

そぅ・・・

最後に死頭火は残る力全てを振り絞り、自らの命と引き換えに我が子外道に秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法を伝えたのである。

時に破瑠魔死頭火、享年28歳。

その余りにも早過ぎる・・・










死であった。











つづく







「激闘流転編」 #367 『根本印と根本陀羅尼』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #367 『根本印と根本陀羅尼』の巻




突然・・・

外道の背後に人が立った。
そしてその右手で外道のダランと垂れ下がった右手を、その左手で外道の軍駆馬の柄(つか)を掴(つか)んでいる左手を優しく包むようにして取った。
その手に導かれ、外道は軍駆馬の柄から手を離した。

その手は外道に金剛秘密主根本印(こんごうひみつしゅ・こんぽんいん)を結ばせた。
そして背後から外道の耳元で金剛秘密主根本陀羅尼(こんごうひみつしゅ・こんぽん・だらに)を上げ始めた。
上品で、優雅で、美しい声で。
外道の良く知っている声で。

声の主は・・・死頭火だった。

死頭火が、美しく、済んだ、良く通る声で金剛秘密主根本陀羅尼を唱えている。

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

という、根本陀羅尼を。

“金剛秘密主の根本印と根本陀羅尼”

今、死頭火はその最後の力を振り絞って我が子外道に “秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法” を伝授しているのだ。

死頭火は唱えた、根本陀羅尼を。

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

と。

外道も死頭火に合わせて根本陀羅尼を唱和し始めた。

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

と。

始めは覚束(おぼつか)ない口調だった。
しかし、徐々に正しく唱えられるようになった。

そして今、

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

「ЩЭ%$#♪★?£ё・・・」

破瑠魔死頭火、外道親子が金剛秘密主根本陀羅尼を一心不乱に唱和している。

外道は雪女の眼(め)を下から見上げ見据え、睨み付けたまま、左肩には雪女の指先が食い込んでいるために起こる激痛を、右肩にも相変わらずの痛みを感じながら、それでも必死にそれに耐え、両手で金剛秘密主根本印を組んでいる。
死頭火は、その根本印を組んでいる外道の手を両手でソッと優しく包んでいる。

暫らくその状態が続いた。

死頭火は思った。
もう外道一人でも大丈夫だと。

「フッ」

死頭火が満足そうに笑った。

そしてそれを最後に、


(スゥー)


死頭火の姿がヒッソリとその場から消え去った。
まるでそれが蜻蛉(かげろう)ででもあったかのように。

ヒッソリと・・その場から・・  死頭火に  静かに。










それと同時に・・・











つづく







「激闘流転編」 #366 『ならぬ死頭火!!』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #366 『ならぬ死頭火!!』の巻




「な、ならぬ死頭火!! そ、それをやってはならぬ!!」

中道が死頭火に向かって叫んだ。
声を大にして叫んだ。
我が身の危険を顧みる事なく。
雪女にその存在を知られてしまう危険を顧みる事なく。

最早中道、雪女の事など眼中に全くなし。
有るのはただ、死頭火の身を案ずる一念のみ。

中道は死頭火に駆け寄りたかった。
しかし、出来なかった。
先ほど死頭火に突き飛ばされた時、魔王権現大社の階段にしたたか体を打ち付けていたからだ。
加えて吹雪による寒さで全身が硬直し、死頭火同様体に殆(ほと)んど力が入らない所為(せい)もあった。

「な、ならぬ死頭火!! そ、その体でそれをやってはならぬ!!」

だから言葉を掛けるのが精一杯だった。
ただ、それだけだった。
今の中道に出来る事といえば。

一方外道は、声変わり前の甲高いボーイソプラノで叫び続けている。

「かー様!! かー様!! かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? かー様!! かー様!! かー様!! ・・・ 」

と。

だが、

外道の必死の叫び空しく、それはただ、辺りに響き渡るだけだった。








ところが・・・











つづく







「激闘流転編」 #365 『奇跡なんてない』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #365 『奇跡なんてない』の巻




『奇跡なんてない』

かつて作者は言葉は古いがネットサーフィン、あるいはブログサーフィン中にこの言葉に出会った事がある。

その時、

『そのとーりぃ!!』

そぅ、思った。

残念ながら作者はまだ奇跡を体験、あるいは経験した事がないからだ。
勿論、見聞きした事も・・・

もっとも、俗に言う “超自然現象” っぽいヤツならば結構経験しておる de アリンスが・・・


しか~~~し、

『奇跡なんてない』

確かにその通りだ。




だが・・・

奇跡は起こった。

「ゥ、ゥ~ン」

死頭火が静かに目を開けた。
意識が戻ったのだ。
瀕死の重傷で、既に虫の息だったあの破瑠魔死頭火の意識が・・・今。

その死頭火の耳には・・耳の奥には・・この言葉が木霊していた。

「かー様!! かー様!! かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? かー様!! かー様!! かー様!! ・・・ 」

変声期前の甲高(かんだか)いボーイ・ソプラノで必死に叫び続ける我が子外道の声が。

『げ、外道ー!? 外道が!! 外道が!! 外道が!! ・・・』

死頭火は思った。

しかし、


(ズキズキズキズキズキ・・・)


全身に激痛が走る。

『クッ!?』

体が全く動かない。
全然、力が入らない。

その間も、

「かー様!! かー様!! かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? かー様!! かー様!! かー様!! ・・・ 」

外道が叫び続けている。

『クッ!? げ、外道ー!!』

死頭火は体を動かそうと踏ん張った。
外道のために必死で踏ん張った。










我が子を思う母の一念で・・・











つづく







「激闘流転編」 #364 『真の使い手』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #364 『真の使い手』の巻




『ヌッ!? 金剛秘密主・阿尾捨の法とな?』

中道は思った。

加えて、こうも・・・

『ウ~ム。 どうも妙じゃ。 先ほどから外道の様子が変じゃ・・・』

13人の戦士達も又、訝(いぶか)っていた。

『外道様の様子がおかしい・・・』

『一体どうされたんだ、外道様は・・・』

『外道様に、今、何が起こっているんだ・・・』

 ・・・

そして、

中道と13人が同時に気付いた。

『ハッ!? も、もしや外道は・・・!?』

『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?』

『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?』

『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?』

 ・・・

『軍駆馬の声を聞いておるのでは・・・?』

『外道様は軍駆馬の声を・・・?』

『声を聞いておられるのか・・・?』

『軍駆馬の声を外道様が・・・?』

 ・・・

そうだ!? そうだったのだ!?

あの声は・・・
あの声こそは・・・
4度外道に語り掛けたあの声こそは・・・
正に、神剣・軍駆馬がその真の使い手と認めた者にのみ語り掛ける声だったのだ。

それは破瑠魔天道以下、内道、死頭火に至るまで、かつて名だたる如何(いか)なる達人といえども決して聞く事の出来なかった軍駆馬の声だった。
間違いなく、軍駆馬の声だった。

だが今、

それを・・その声を・・軍駆馬の声を・・外道が聞いている。
幼子とはいえ、今、確かに外道がその声を聞いている。

そぅ・・・

あの神剣・軍駆馬は終に、その真の使い手を見つけ出したのである。

破瑠魔外道という名の真の使い手を・・・

今・・・










ここに。











つづく







「激闘流転編」 #363 『秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #363 『秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法』の巻




“秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法” とは何か?


解説しよう。



と、思ったがぁ・・・

めんどぅっちぃので代わりに google 君に解説させよう。

とも、思ったがぁ・・・

google 君も大した事ないザンス。

でも、

まぁこんなもんだよ程度の事は分る物もあるので、以下にアクセスしてチョ。。。


『阿尾捨法』 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E9%98%BF%E5%B0%BE%E6%8D%A8%E6%B3%95&lr=

『阿尾奢法』 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E9%98%BF%E5%B0%BE%E5%A5%A2%E6%B3%95&lr=


注 : “阿尾捨” は “阿尾奢” と書いても間違いではありまっしぇ~ん。 当て字だからだピョン。。。


又・・・

この阿尾捨法には作者のチョッとしたオモスロイ経験もあるので・・といっても作者にとってオモスロイだけではアリンスが・・チャンスがあればいつの日にか一稿を上梓したいと存じておる次第ではありまする・・・ウン。。。



だが、

一応言うべき事は言っておかなければならない。

そぅ。

阿尾捨法を一言(いちげん)以って言うならば、

そ、れ、は、

即ち、

『神降ろし(かみ・おろし)の秘法』

である。










・・・・・・ by コ・マ・ル











つづく







「激闘流転編」 #362 『4度目』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #362 『4度目』の巻




4度目だった!?

それが起こったのは4度目だった。

声だ!? 例の声だ!?

あの声が今度は外道にこう命じた。
厳(おごそ)かに、厳粛に、重々しく・・・こう。

「金剛秘密主(こんごう・ひみつ・しゅ)・阿尾捨(あびしゃ)の法を修せよ」

と。


エッ!? 阿尾捨の法?

声は阿尾捨の法と言ったのか?

そぅだ、言った!!

声は確かにそぅ言った!!

『金剛秘密主・阿尾捨の法を修せよ』

と。

しかし、外道にはこれが何を意味するのか全く分らなかった。
知らなかったのだ “金剛秘密主・阿尾捨の法” とは何かを・・・外道はその時にはまだ何も。

慈救咒真言は父・内道、母・死頭火が日頃唱えているのを聞き知っていた。

『門前の小僧習わぬ経を読む』

の例え通りに。

だが、

秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法は、今の外道にはまだ全く未知の分野だったのだ。
無理もない、外道はまだホンの幼子。
未(いま)だ、初歩の体術ですら伝授は受けてはいない。
女切刀の戦士達が訓練しているのを遠目から見て、それを見様見真似でチョッとやっていた位だ。
ましてや秘術の伝法など、更々(さらさら)だ。

しかし、声は命じた。
それを修せよと。

声が命じた以上、それを修さねばならない。
感覚で外道はそれを理解した。
それでも全く意味不明に変わりはない。
考えても埒が明かない。
今の外道が考えても何の答えも出てこない。
当然だ、それについて何も知らないのだから。

一瞬、外道は途方に暮れた。

そして、何が何だかわからぬまま咄嗟(とっさ)に叫んでいた。

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

 ・・・

外道は声変わり前のボーイ・ソプラノの甲高い声で、必死に叫び続けた。
瀕死の重傷、既に虫の息の母・死頭火に向け、必死になって。

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」

 ・・・

と。

軍駆馬の柄(つか)を掴み、
雪女の顔を下から見上げ見据え、


(キッ!!)


必死の形相でその眼(め)を睨み付けた・・・










まま。











つづく







「激闘流転編」 #361 『止まらない』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #361 『止まらない』の巻




突然・・・


(ピキピキピキピキピキ・・・)


体が溶け出すと同時に、氷柱(つらら)に変えられ外道の左肩に食い込んでいた雪女の右指にヒビが入り始めた。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


それも、食い込んでいる5本の指全部にヒビ割れが。

やがてそれらは、


(パリン、パリン、パリン、パリン、パリン、・・・)


外道の左肩に食い込んでいる先っぽのみを残し根元から砕け散った。
しかしまだ、そこから流れ落ちる真っ赤な鮮血は止まらない。

その痛みに耐えながらも、外道は慈救咒を上げ続けている。

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン。 ・・・」

必死の形相で痛みを堪(こら)え、慈救咒を止めない外道。

しかし、


(ドクドクドクドクドク・・・)


外道の左肩から流れて出て来る血は、止まる気配を全く見せない。

だが、

止まらないのはそれだけではない。

「キィィィィィー!! リィィィィィー!!」

雪女の悲鳴も又・・・










止まらない。











つづく







「激闘流転編」 #360 『一体何が?』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #360 『一体何が?』の巻




(ドロドロドロドロドロ・・・)


よく見なければ気が付かないほどユックリではあるが、雪女の体が溶け始めた。

気化が始まったのか?

否、違う。

蒸気が上がってはいない。
ただ溶けているだけだ。

この異変は一体何だ?

な、何が起こっているんだ・・・雪女に?

雪女の体に一体・・・










何が!?











つづく







「激闘流転編」 #359 『新たな焼き入れ?』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #359 『新たな焼き入れ?』の巻




再び・・・


(ピカッ!!)


軍駆馬が光った。

「ヒグァー!!」

同時に雪女が顔を醜く歪め、苦悶の表情浮かべ、絶叫した。

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン。 ・・・」

慈救咒を上げる外道の声が一層大きくなった。
外道も必死だ。
最早、両肩の痛みなど構ってはいられない。

突然、


(ジジジジジ・・・)


音を立てて刃(やいば)が・・軍駆馬の刃が・・それまでの暗く冷たい鋼(はがね)色から鮮やかなオレンジ色に変わり始めた。
あたかも雪女の胸を貫通したまま、新に焼入れが始まりでもしたかのように。

同時に、


(モァモァモァモァモァ・・・)


空間が歪む、軍駆馬を中心としたその周りの空間が。
まるで真夏の蜃気楼の様に。


(ジージージージージージー・・・)


より一層大きな音を上げ軍駆馬の擬似(ぎじ)焼入れは進む。
みるみる温度は上がり、刃のオレンジ色が白っぽくなる。


(ゴゴゴゴゴ・・・)


終に刃の色は・・軍駆馬の刃の色は・・白光色となる。

瞬間、


(ピカーーー!!)


刃は輝き、辺りを照らす。
中天に眩(まばゆ)い太陽のように。

終に・・・

神剣・軍駆馬・・焼き入れ・・完了・・か?










その時・・・











つづく







「激闘流転編」 #358 『正に鬼の形相で』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #358 『正に鬼の形相で』の巻




瞬間・・・


(ピカッ!!)


神剣・軍駆馬が光る。

「ヒグァー!!」

雪女が悲鳴を上げた。
そして髪を逆立て、眉間に皺を寄せ、外道を睨み付け、凄まじい顔付きで、雪女がまだ結晶化していない右手で外道の左肩を掴み・・・叫んだ。
正に鬼の形相で。

「おのれ外道ー!! 何をしたー!?」

雪女が、外道の肩を掴んでいる右手の指を氷柱に変えた。
それが外道の左肩に食い込んだ。


(タラ~)


そこから血が流れ始めた。

同時に、外道の顔が益々歪む。

『痛いー!!』

痛みを堪えているのだ・・・必死の思いで。

だが、

外道は止めない。
止めようとはしない。

当然だ!!

止める訳がない。
これは遊びではない。
命を懸けた戦いなのだ・・幼子・外道としてではなく戦士・破瑠魔外道として・・親の敵との。
それも差しでの。

外道は、


(キッ!!)


雪女の眼(め)を下から見上げ睨み付けたまま、

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン。 ・・・」

慈救咒真言を上げ続けた。
両肩の激痛に耐えながらも。










すると・・・











つづく







「激闘流転編」 #357 『慈救咒真言』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #357 『慈救咒真言』の巻




中道は思った。

『ヌッ!? 様子が変じゃ。 外道が慈救咒を・・・慈救咒真言を上げておる』

13人の戦士達も皆、訳が分からず不可解だった。

『慈救咒だ!?』

『外道様が・・・慈救咒を?』

『ナゼ、慈救咒を?』

 ・・・

と。

中道及び13人の戦士達が不思議そうに見守る中、

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン ・・・」

外道はボーイソプラノの甲高(かんだか)い声で慈救咒真言を上げ続けた。

軍駆馬の柄を・・・

確(しっか)と・・・










握り締めて。











つづく







「激闘流転編」 #356 『命令に従って』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #356 『命令に従って』の巻




(グィッ!!)


外道が左手で軍駆馬の柄を掴(つか)んだ。


(ギン!!)


雪女が更に形相を険しくし、外道を睨み付けた。

「ヌッ!? な、何をする気じゃ、外道?」

その雪女を、


(キッ!!)


睨み返して外道が口を開いた。
だが、それは雪女に答えてではなかった。

外道はこう言ったのだ・・・その時。

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン ・・・」 

と。

そぅ・・・

外道は慈救咒真言(じくじゅ・しんごん)を上げ始めたのである。 (#15 『不動明王と倶利迦羅竜王』の巻 http://00comaru.blog.fc2.com/blog-entry-2045.html 参照)










声の命令に従って・・・











つづく







「激闘流転編」 #355 『急げ!!』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #355 『急げ!!』の巻




それは・・・

三度(みたび)起こった。

「急げ!!」

声だ!?

あの声だ!?


(サッ!!)


外道が顔を上げた。
声に反応して。

だが、

顔が引き攣っている。
必死に痛みを堪(こら)えているのだ。
軍駆馬にぶち当たった時の激痛を・・・まだ。

しかし、

今はそんな事を言ってはいられない。
そんな悠長な事を言ってはいられないのだ、今は。
外道もそれを良く承知していた。
まだ幼子であるにもかかわらずにだ。

そして、

外道が苦痛に喘(あえ)ぎながらも何とか立ち上がった。
そのまま温度の急上昇で溶け始め掛けている雪の上を、


(ヨタヨタヨタ・・・)


覚束(おぼつか)ない足取りで雪女に近付いた。
右腕はまだ、力が入らずダラリと垂れ下がったままだ。
左手でその力の入らない右肩を抑えている。
顔は相変わらず苦悶の表情。
歯を食い縛って痛みに耐えている。

その状態のまま、


(ヨタヨタヨタ・・・)


外道が雪女の目前、後ホンの2、3歩で懐(ふところ)に入るという所まで歩み寄った。


(キッ!!)


外道が雪女を睨(にら)み付けた。

一方、


(ピキピキピキピキピキ・・・)


雪女の結晶化は既に首の近くまで進んでいた。
左腕は完全に結晶化している。
残すは右腕と首から上のみ。


(ギン!!)


雪女が近付いてくる外道を睨み返した。
雪女は雪女で必死だ。
軍駆馬で傷付いた上、更に体を結晶化しているのだから。
そのエネルギーの消耗たるや想像を絶するものがある。
この軍駆馬による負傷、及び体の結晶化、加えてそれらによる多大なエネルギーの消耗。
これが禍(わざわい)して、今、雪女は全くと言って良いほど身動きが取れない。

そぅ、

雪女は今、殆(ほとん)ど体の自由が利かないのだ。

そこへ、


(ヨタヨタヨタ・・・)


外道が覚束ない足取りで近寄って来た。










そして・・・











つづく







「激闘流転編」 #354 『結晶化』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #354 『結晶化』の巻




それは・・・

つま先から始まった。
雪女のつま先から。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


雪女の体が徐々に氷の結晶に変わって行く。

しかし外道は動けない。
動きたくても動けない。

その間も、


(ピキピキピキピキピキ・・・)


雪女の結晶化は進む。

雪女が完全に氷の結晶と成ってからでは遅い。
気化が開始されてしまうからだ。

それでもまだ、外道は動けない。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


既に、雪女の下半身が完全に結晶化した。

残り時間は後僅(あと・わず)か・・・

しかし、まだ外道は動けない。

さぁ、どうする外道?

雪女が結晶化してからでは遅いゾー!?

さぁ、どうするんだ外道ー!?

だが・・・










その時・・・











つづく







「激闘流転編」 #353 『2度目の出来事』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #353 『2度目の出来事』の巻




それは・・・

2度目の出来事だった。

どこからともなく、それは起こった。

「我を掴(つか)みて慈救咒(じくじゅ) を上げよ」

声だ!?

例の声だ!?

それが再び外道の耳に聞こえたのだ。
例の外道にだけ語り掛ける声が。

だが、

外道は動けない。
今尚(いまなお)、先ほどの激痛に耐えている。
両膝を雪面に突き、蹲(うずくま)り、もろに雪の中に顔を突っ込み、左手で右肩を押さえ、息も出来ずに痛みを堪(こら)えている。


(プルプルプルプルプル・・・)


外道の体が小刻みに震えている。
その姿を見れば必死に痛みを堪えているのがハッキリと分る。

今の外道に出来る事は唯一つ。
必死に歯を食い縛り、声なき声を上げる事。
ただ、それだけだ。

『痛いー!!』

と、一言、声なき声を上げる事。
ただ、それだけだったのだ。
今の外道に出来る事は。

それも、

必死に歯を食い縛り・・・










痛みに耐えながら。











つづく







「激闘流転編」 #352 『天才』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #352 『天才』の巻




雪女は・・・

天才だった。
間違いなく天才だった。
その天才が既に学習済みの事実が一つある。

それは・・・

コレだ!?

『一旦、体を気化すれば軍駆馬から逃れられるのみならず、ダメージを受けている分子を排除して苦痛から解放される』

この事実だ!?

「キィィィィィー!! リィィィィィー!!」

雪女の悲鳴は続いている。

だが、

突然、吹雪が止(や)んだ。

そぅ、
雪女が激痛に喘(あえ)ぎながらも直ちに行動を開始したのだ。
軍駆馬から逃れるための行動を。
自らが起こしている吹雪を止(と)めるという。

今、
季節は夏。
深夜とはいえ真夏日、それも熱帯夜。
吹雪が止(や)みさえすれば、一気に気温は上昇する。
雪女が気化するのに充分な温度まで。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


雪女が自らの体を氷に変え始めた。










気化するために・・・











つづく







「激闘流転編」 #351 『声に』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #351 『声に』の巻




外道が飛んだ!!

自ら意識してではなく。

それは自ら意識してそうしたのではなく、聞こえた声に操られての事だった。
外道にのみ聞こえた声に操られての事だった。
その声が聞こえたと同時に、独(ひとり)りでに外道の体がそれに反応していた。
そぅ、
外道はジャンプしたのだ。
まるで紐にではなく、声に操られるマリオネットのように。
そして、
ジャンプした先にあったのは軍駆馬の柄のエッジ部分、即ち、柄頭(つか・がしら)。
そこを目掛け右肩から・・思いっきりジャンプを・・外道が。


(ドコッ!!)


外道が右肩から軍駆馬の柄頭(つか・がしら)に体当たりした。
その姿は、プロレスやアメフトの試合で良く見るショルダータックルを思わせた。

その外道のショルダータックルをもろに受け、


(ズブッ!!)


軍駆馬が雪女の胸を貫通した。

「ヒグァー!!」

絶叫する雪女。
これは痛い。
雪女の全身に激痛が走る。

だが、

それは外道も同じだった。
まだ体の出来上がっていない外道が、鉄の塊に体当たりしたのだ。
痛くない訳がない。
その場に両膝を突き、蹲(うずくま)った。
顔を真正面から雪面に突っ込み、左手で右肩を抑え、歯を食い縛って外道が痛みを堪(こら)えている。

『痛いー!!』

外道の心の声だ。
幸い、骨に異常はなかった。
骨折もしていなければ脱臼もしていない。
しかし、
その痛みたるや半端ではない。


(プルプルプルプルプル・・・)


外道の全身が小刻みに震えている。
そうやって激痛に耐えているのだ。
今、外道は。

そぅ・・・

外道は今・・・

もろに雪面に顔を突っ込み、息も出来ずに歯を食い縛り、小刻みに体を震わせながらその痛みに耐えている。










必死の形相で・・・











つづく







「激闘流転編」 #350 『外道に・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #350 『外道に・・・』の巻




それは男の声だった・・・

そぅ、男の声だった・・・間違い無く。

その時、声がしたのだ、ハッキリと。

「飛べ!!」

と、一言・・一言だけ・・男の声で・・ハッキリと。

それは・・・

平板で、重厚で、無感情。
だが、
厳(おごそ)かで、神聖で、どこまでも威厳のある、かつて聞いた事もないような声だった。

その声は確かにこう告げた。

「飛べ!!」

と、一言。

外道に・・・










だけ。











つづく







「激闘流転編」 #349 『後僅(あと・わず)か!?』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第五部 「激闘流転編」 #349 『後僅(あと・わず)か!?』の巻




(サッ!!)


雪女が大きく右手を振り上げた。
軍駆馬(いくさかりば)を手刀で叩き落とそうというのだ。

そしてそのまま、


(ヒューン!!)


一気に振り下ろした。

だが、


(ドスッ!!)


一瞬、外道が早かった。

「ヒグァー!!」

雪女が悲鳴を上げ、上体を勢い良く反らせた。

その結果、外道が軍駆馬を手から放した。
否、
手放さなければならなかった。
雪女の激しい動きに弾き飛ばされたのだ。

「キィィィィィーーー!! リィィィィィーーー!!」

軍駆馬を両手で抜こうとガッチリ掴みながらも、嬌声を上げながら体を上下左右に振って苦しみもがく雪女。
その余りの苦しさに顔が醜く歪んでいる。

しかし、

残念ながら今の外道の力では突きが弱い。
無理も無い。
外道はまだ子供だ。
それも幼子。


(グラグラグラ・・・)


雪女の動き回る勢いの激しさに、軍駆馬が今にも抜けそうだ。

もしこれが抜けたら、如何(いか)にサラブレットとはいえ今の外道では話にならない。
到底、雪女の敵ではない。
一瞬にして殺されるのが落ち。


(グラグラグラ・・・)


ァ、アァー!?

もうダメだー!?

軍駆馬が抜ける!? 抜けそうだー!?

もうホンの後僅(あと・わず)か!?

もう後ホンの僅かで軍駆馬が抜けそうだー!?


(ゴクッ!!)

(ゴクッ!!)

(ゴクッ!!)

 ・・・

13人の戦士達が固唾(かたず)を飲んだ。

軍駆馬が抜け落ちたら、もう外道に後はない。
そして、それにはもう後ホンの僅か。

だが・・・










その時・・・











つづく







「戦略編」 【最終回】 #348 『総括6』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 【最終回】 #348 『総括6』の巻




外道!?

そぅ・・・破瑠魔外道。

それは幼子の外道だった。

外道は母・死頭火との約束を破り、現身隠しの呪符を捨て、雪女の前に自ら進んでその姿を現した。
母・死頭火を守るために。
雪女を倒すために。

外道は死頭火が既に抜いていた神剣・軍駆馬をまるで子猫か子犬を抱くように抱(かか)え持ち、ワンフェイク入れて雪女を欺き、雪を踏みしめるのではなく雪面を滑るように走った。
否、滑った。
そしてそのまま一気に、雪女の懐に飛び込もうとしていた。
軍駆馬で雪女を刺し貫くために。

一方、雪女はその外道に背を向け、不覚にも再び我慢しきれず咳払いをしてしまった中道を探していた。
しかし、現身隠しの呪符を持つ中道は雪女には見えない。
確かにその辺りにいるのは分っているのだが、それが何処(どこ)かは雪女には分らない。

そして、雪女にモタモタしている余裕はなかった。
背後に外道が迫っているのは確かだったからだ。
もっとも、迫っているとは言っても所詮(しょせん)外道は子供、雪女にしてみれば焦ったり心配したりする程の事は全くない筈だった。

だが・・・

「まぁ良い。 何ヤツ(なにやつ)かは知らぬが、ソチの始末は後じゃ」

咳き込んだ相手に話し掛けるというよりも、自分が納得するかのようにボソッと一言そう呟(つぶや)いて、雪女は外道の迫り来る方向に振り返った。

だがその瞬間、

『ヌッ!?』

雪女の顔が引き攣(つ)った。
有り得ない事が起きていた。

そぅ、有り得ない事が・・・

まだ遥か先にいる筈の外道が・・まるで子猫か子犬を抱くような覚束(おぼつか)ない手つきで軍駆馬を抱(だ)き抱(かか)えていたはずの外道が・・軍駆馬を槍のように構え、既に目前、後一歩(あと・いっぽ)という所まで迫って来ていたのだ。

それも自分に向かって振り返った雪女の目を “キッ” と・・・










下から見上げ見据えて。











第四部 「戦略編」 完







「戦略編」 #347 『総括5』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #347 『総括5』の巻




達人・破瑠魔死頭火・・・

その存在を。

雪女が復活を遂げ、女切刀に念を飛ばして探った時、死頭火は伊賀に、実家のある伊賀の里に外道を連れて一時帰省していた。
そのため、雪女は死頭火の存在を全く感知出来なかった。

そしてその死頭火の焚く “雪女調伏護摩” に感応して再びこの女切刀の里へやって来た。
そこで待ち受けていた死頭火と相対峙し、その存在を始めて知った。

そして雪女は、この “無双のくノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火の次々に繰り出す恐るべき秘術に翻弄(ほんろう)されながらも、激しい死闘の末、漸(ようや)く今、死頭火を打ち倒した所だった。

この時、死頭火は・・・

現身隠(うつしみ・がく)しの呪符でガードはしていたものの、あまりの寒さに耐え切れず不覚にも思わず咳き込み、その存在を雪女に知られてしまった義父中道、そしてその隣にいた我が子外道を守るため、雪女の放った氷柱に変えられた5本の指をまともにその背中に受け、今や瀕死の重傷、虫の息。

そして、雪女がその死頭火の髪を掴み、首を刎ねようと手を振り上げた正にその瞬間。

決然、雪女の前に立ちはだかった者がいた。

その者・・・










その名は・・・











つづく







「戦略編」 #346 『総括4』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #346 『総括4』の巻




再び、

雪女が・・・復活した。

だが、復活するまでの間、雪女は一体何処で何をしていたのであろうか?

実は、雪女は重磐外裏の里に舞い戻っていたのだった。
そして厨子の中に身を隠していた。
その中で眠っていたのだ。
それは、体を・・傷を・・軍駆馬から受けたダメージを・・癒すためだった。
まるで夜間に動き回り、昼間は日の光を避けると同時に体を休めるために棺桶の中で眠る吸血鬼ドラキュラのように。

そして、

雪女が重磐外裏の里に身を隠してから3年経ったある日、再び雪女は目覚めた。
目覚めた時には既に、軍駆馬から受けた傷は癒えていた。
しかしエネルギーの補充は必要だった。
そのため手当たり次第に相応(ふさわ)しいエネルギーを持つ者達を襲い、首を刎ね、エネルギーを吸収していた。

だが、前回復活の時には死体を隠したのに、今回の復活に際してはナゼ死体を放置したのだろうか?

それは雪女が又しても悪い癖を出し、狩を楽しもうとしたからだ。
もっとも狩を楽しむと言っても、その相手は首を刎ねた人間達ではなく破瑠魔一族、即ち、女切刀の里人全員だった。

雪女は直感していたのだ。

内道亡き後、女切刀に、破瑠魔に、自分に手向かえる者が最早たったの一人もいないという事を。
よって、敢(あ)えて自分の存在をそれとなく分からせ、女切刀の里人全員を恐怖のどん底に突き落とす。
そして自らの天時である冬を待ち、女切刀を襲い、皆殺しにする。
それも気の済むまで、残虐の限りを尽くして。
そのために首を刎ねた死体をわざと放置したのだ。

しかし、それは間違いだった。

雪女は全く知らなかった。
全く知らなかったのだ、自分に立ち向かう事の出来るもう一人を。
そぅ、
内道に負けるとも劣らないもう一人の達人の存在を。

女切刀にいるもう一人の達人・・・










その存在を。











つづく







「戦略編」 #345 『総括3』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #345 『総括3』の巻




雪女は消えた。

地面には内道によって投げられ雪女の胸を刺し貫いた、神剣・軍駆馬(しんけん・いくさかりば)が転がっているだけだった。
あの猛吹雪もいつしか完全に収まっていた。
当然だ。
季節は夏真っ盛り、真夏の夜の出来事だったのだから。

時は午前3時丁度。
丑の刻から寅の刻への境目。
辺りはまだ暗い。

崖から落ちた破瑠魔内道の遺体が見当たらない。
落ちた先は深い渓谷。

「内道様ー!!」

「内道様ー!!」

「内道様ー!!」

 ・・・

内道に随従した女切刀の戦士達が必死になって探している。
だが、見つからない。
暗い上に足場が悪い。
しかし、諦めるものは誰一人いない。
全員が内道の無事を祈る気持ちで探し続けた。

「内道様ー!!」

「内道様ー!!」

「内道様ー!!」

 ・・・

午前5時を回ったのか?
徐々に夜が開け始めて来た。
空が白々し始めた。

そこへ、この戦いのために避難していた里人達を破瑠魔中道が引き連れて戻って来た。
中道達は、使いとして走り、そして一足先に再びこの場所に戻った13人の戦士の内の一人から、一言、『終わりました』とだけ告げられていた。
従って、まだ詳しい状況は把握出来てはいなかった。
使いの戦士が何も語らなかったのは、結果が曖昧で現場を見なければ理解し難(にく)かったからだった。

そして、一人ここに残り番をしていた戦士に中道が聞いた。

「勝ったのか?」

「はい。 恐らく」

「恐らく? 恐らくとはどういう事じゃ?」

「はい。 雪女は内道様の軍駆馬に胸を突き抜かれ七転八倒の苦しみを味わった後消滅いたしました」

「ならば勝ったのではないのか?」

「それが少々腑(ふ)に落ちない点が」

「腑に落ちない点?」

番をしていた戦士が、軍駆馬が転がっている辺りの地面を指差して言った。

「はい。 いかに妖女(ようじょ)とはいえ、その死に際して何らかの痕跡を残す筈。 しかしアレ。 アレをご覧下さい。 雪女はなんら痕跡を残す事なく消滅致しました。 それが少々不自然に思われまして・・・。 ですから、勝利の狼煙(のろし)も上げられず又、軍駆馬も中道様に見て頂くまではとそのままにしてあります」

「じゃが、雪女の引き起こす吹雪は収まっておるではないか?」

横から品井山 孟是が聞いた。

「はい。 確かに吹雪は雪女消滅と同時に・・・」

中道が辺りを見回した。

「内道は? 内道はどこにおる?」

「はい。 ・・・」

戦士は口ごもった。
表情が暗い。
それを見て中道は状況を察した。

「そ、そうか・・・」

「い、いや。 まだハッキリ死んだとは・・・。 今、我等残りの者皆で全力で探しております」

「済まぬのぅ。 頼む」

中道はガックリと肩を落とした。
そしてユックリと軍駆馬に近づき拾い上げ、慎重にその周辺を見て回った。
辺りには戦士の言ったように雪女の痕跡は全くなかった。
一渡(ひとわた)り調べた後で、恐らく内道が軍駆馬を抜いた時そうしたのであろう、崖っぷちの地面に刺さっている鞘を引き抜きそれに軍駆馬を収めた。

そして・・・

それから・・・










3年後。











つづく







「戦略編」 #344 『総括2』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #344 『総括2』の巻




もし、雪女が余裕のヨッチャンかまさなければ疾(と)っくに勝負は付いていた。
これは事実だ。

だが、

実は内道にもビッグなチャンスがあったのだ。

それは何時(いつ)か?

雪女を岩石破砕波で撃ち落した直後だ。

あの時内道は、大岩盤城結界で勝負に出た。
しかしあそこは、本来なら軍駆馬で雪女の首を一気に刎(は)ねに行くべき所だったのだ。
だが、内道はそれをしなかった。

ナゼか?

内道は雪女 否 妖の姫御子・雪の境遇に同情していたからだった。
同情、即ち、情けを掛けてしまっていたのだ、内道は妖の姫御子・雪に。
それが内道も気付かぬほど僅か、識閾下(しきいき・か)で影響し、自分でもそうとは分らぬ内に、直接雪女の首を刎ねるという選択肢を忌避(きひ)してしまっていたのだ。

つまり、内道が掛けた妖の姫御子・雪への憐憫(れんびん)の情が却って災いし、同じ自らの手で仕留めるにしても直接ではなく間接に、という選択をさせてしまったのだった。

全く、内道も余計な真似をしたものだ。
この余計な真似のために、みすみすたった一度きりの勝機を逃してしまったのである。

そぅ・・・

女切刀呪禁道1400年にして随一の使い手と謳(うた)われた男・・・破瑠魔内道。

その・・・

一世一代の・・・










不覚であった。











つづく







「戦略編」 #343 『総括1』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #343 『総括1』の巻




ナゼ、内道は潰されて見えない筈の目で雪女を見る事が出来たのであろうか?

その理由は・・・

それまで内道は必死で逃げ回っていた。
しかしそれは、ただ徒(いたずら)に逃げ回っていたのではなかった。
逃げ回りながら、内道は空間念写を試みていたのだ。

知っての通り、空間念写とはエネルギーを見る技。

ならば、それは何処(どこ)で見るのか?

心眼だ。
それは心眼で見るのだ。
目で見るのではない。
実は、空間念写はエネルギーを視角で捕らえるのではなく、第三の目・・・そぅ、第三の目。
即ち、眉間にある “神秘の眼(め)” で見るのだ。

然(しか)らば、その眉間にある “神秘の眼” とは何か?

これは漢方で言う所の “印堂穴” に当たり、
インドのヨガではこれを “アジナー・チャクラ” と呼ぶ。


内道は雪女の執拗な攻撃を受けながらも、音を頼りに空間念写の時間差を必死で詰めていたのだった。
これには雪女が狩りを楽しんだ事も幸いした。
もし、そんな事をしないで一気に止(とど)めを刺しに来ていたら、その時点で既に内道は倒れていた筈だ。
しかし、雪女がお調子こいて余裕のヨッチャンかまして攻撃を楽しんだため、内道は徐々に時間差を詰める事が出来るようになり、終には現実と空間念写を同期出来るまでになったのだった。
それもこんな短時間に。
これは内道の類稀(たぐい・まれ)なる天分に加え、この危機的状況が生んだ 『火事場の馬鹿力の結果』 とも言えよう。

だが、

何という運命の皮肉。
この境地に達した時、既に内道は崖っぷちに立たされていたのだ。
文字通り、崖っぷちに。

もし、後僅(あと・わず)か。
ホンの1メートル 否 50センチ崖から離れていれば結果は全く違った物になっていた筈だ。
その50センチが勝負の明暗を分けたのである。

しかし・・・










一方で・・・











つづく







「戦略編」 #342 『渓谷の奥へ』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #342 『渓谷の奥へ』の巻




(ギラン!!)


終に、内道が手にした軍駆馬を引き抜いた。

既に満身創痍で瀕死状態、且、両目は潰され気力のみで立っている内道が、逃げ回りながらも決して放そうとはしなかった神剣・軍駆馬を、終に抜いたのだ。
長さおよそ1メートル、重さ約5キロの軍駆馬を。

そればかりか、次に内道が信じられない行動に出た。


(クヮッ!!)


それまで瞑(つむっ)っていた両目を、雪女に潰されまだ血が滴り落ちている両目を 『クヮッ!!』 っと見開き、飛んで来る氷柱を睨み付けた。
最早、見えないはずの両目で氷柱を睨み付けたのだ。

そして、

「キエィ!!」

気合一閃(きあいいっせん)、


(ブヮーン!!)


抜いたばかりの神剣・軍駆馬を素早く振るい、


(カンカンカンカンカン)


飛んで来た五指氷柱を全て跳ね返すと、直ぐさま軍駆馬を持ち替えた。
刃を上に向け、その中央部近くを下から掴み、残った気力を振り絞り、

「キエィ!!」

再び鋭い気合と共に、軍駆馬を雪女目掛けて槍投げの槍のように投げ付けた。


(ビヒュ~~~ン!!)


軍駆馬が飛ぶ、雪女目掛けて。
それは一直線に雪女の胸目掛けて飛んだ。
雪女は五指氷柱を投げ付けた直後ゆえ、まだ体勢が整ってはいない。

そこへ、


(ビヒューン!!)


激しい唸り音を上げ、軍駆馬が一直線に信じられない速さで飛んで来た。
まるで軍駆馬その物が意思を持ち、その意思が自分自身が飛ぶ事を意図したかの如く。

『クッ!? は、速い!! か、かわせぬ!!』

雪女は思った。

次の瞬間、


(ドスッ!!)


胸に突き刺さった。
雪女の胸に。
チチとチチの間に。

「ヒグァーーーーー!!!!!」

雪女が悲鳴を上げた。
そのまま悲鳴を上げながら雪女がのた打ち回る。
ボインボインのチチをプルンプルン揺すりながら、いや、ブルンブルン振り乱しながら雪女がのた打ち回っている。
着ている白衣(しらごろも)から右チチがハミチチだ。 先っぽまで見えてるぞーーー!!



          ノ´⌒`ヽ 
      γ⌒´      \
     .// ""´ ⌒\  )
     .i /  \  /  i )    
      i   (・ )` ´( ・) i,/    
     l    (__人_)  |      
     \    `ー'  /       
.      /^ .~" ̄, ̄ ̄〆⌒ニつ   ピンクだ!? (キリッ!!)
      |  ___゛___、rヾイソ⊃   
     |          `l ̄        奇麗な・・・  
.      |         |         



妖女・雪女(ようじょ・ゆきおんな)。
その傷口からは一滴の血も流れ出ない。
だからエロい、このスチィエーションは。
そのハミチチを激しくブルンブルン振り乱して雪女がのた打ち回っている。
雪女がブルンブルンと激しくハミチチを振り乱してのた打ち回っているのだ。

雪女は必死に軍駆馬を抜こうとした。
だが、
相手は神剣。
普通の剣とは違う。
例え雪女と言えども、簡単に扱えるような代物(しろもの)ではない。
加えて雪女の右手の指は抜けたまま、まだ完全に復元されてはいなかった。
だから、
抜こうにも抜けないのだ。

「キィィィィィーーーーー!!!!! リィィィィィーーーーー!!!!!」

甲高(かんだか)い声で悲鳴を上げながら、ボインボインのハミチチをブルンブルン振り乱してのた打ち回る雪女。




ウ~ム。 エ~~~チチや。

雪女と言えば “抜けるような色白、黒々とした長髪、スラッとして美形、そして純白無地の和服の似合ういい女” と相場が決まっている。

加えて “チチプリン”。

しかも “さきっぽハミチチ”。

それを “ブルンブルン”。

クッ!? タ、タマラン!!

こ、このスチィエーションは・・・!?




だが、

残念ながら内道は、こんな美味しい光景を見る事はなかった。

なんとなれば・・・

その時内道、


(ズルッ!!)


太刀を・・・神剣・軍駆馬を投げた弾みで足を滑らせ、

「ゥアーーーーー!!」

そのまま崖から真っ逆様(ま・っ・さかさま)、渓谷の奥へ奥へと落ちてしまったからだった。










だが・・・











つづく







「戦略編」 #341 『満身創痍』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #341 『満身創痍』の巻




『ハッ!?』

13人の戦士達が・・・息を呑んだ。

終に内道が追い詰められたのだ。
崖っぷちに。

だが、

幸か不幸か?

内道はそれに気付いてはいなかった。
両目を潰され周りが全く見えない、今の内道にそんな物は何も。

しかし既に内道、満身創痍(まんしんそうい)。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

肩で息をしている。
殆(ほと)んどエネルギーを使い果たし、残るは気力のみ。

猛吹雪の中・・・雪女の引き起こしている猛吹雪の中。
その内道に、余裕のヨッチャンかましているヤツがユックリと近づいて来た。


(ニヤニヤニヤニヤニヤ・・・)


内道を見下(みお)ろし見下(みくだ)し含み笑いを浮かべ、そいつが実に嬉しそうにこう言った。

「破瑠魔内道とやら、ワラワを相手に良くぞココまで戦(たたこ)ぅた。 褒めて遣わす。 じゃが、それもこれで仕舞いじゃ」

そう言うが早いか雪女は、五指を鋭い氷柱(つらら)に変えた右手を左肩まで振り上げた。
そのまま内道に向け、一気に振り下ろした。
氷柱に変わった指は雪女の手から抜け、


(ビューン!! ビューン!! ビューン!! ビューン!! ビューン!!)


吹き矢の矢のように、矢継ぎ早に素早く内道目掛けて飛んで来た。
狙いは内道の胸。
それも心臓。
そのど真ん中。
そこに、それは正確に飛んで来る。

『ダ、ダメだ!? よ、避け切れん!?』

『ダ、ダメだ!? よ、避け切れん!?』

『ダ、ダメだ!? よ、避け切れん!?』

 ・・・

それまで固唾(かたず)を飲んで見守っていた、この戦いのために内道に付き従った女切刀の里選り抜きの戦士13人全員がそう思って顔を背けた。
内道の負けを見るに忍びなかったのだ。

だが、

誰もが雪女のこの五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)が正確に内道の胸を、心臓を、捉(とら)える。










そう思った次の瞬間・・・











つづく







「戦略編」 #340 『まるで鬼畜』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #340 『まるで鬼畜』の巻




内道は逃げ回った。

逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて・・・逃げ回った。

既に、雪女は勝ち誇っている。
余裕も余裕。
余裕綽綽(しゃくしゃく)丸出しヨッチャンこいている。

今、雪女は・・・

ユックリと、
ジックリと、


(ニヤニヤニヤ・・・)


笑いながら、
楽しみながら、
じわりじわりと内道を追い詰め、いたぶり続けて殺すつもりだ。

「フフフフフ・・・」

雪女の然(さ)も楽しげに含み笑う声が聞こえる。
獲物を追う、狩を楽しむ、雪女の含み笑う声が。

その姿はまるで、

「捕鯨はダメだ!! 残酷だ!! 捕鯨反対反対!!」

等と、大騒ぎするクセに。
自分達は全く悪びれる事なく、涼しい顔でチャッカリと “狐” や “ウサギ” 我利 否 狩りを楽しんだり、 “カンガルー” や “犬” を暴力的で残酷、残虐に笑顔で殺しまくる。 あるいは “人間の堕胎児” をスープにしてそれを舌なめずりしながら美味そうに食う 『下種張(げす・ば)りの低能鬼畜』 を思わせた。

そぅ・・・

雪女は、今。
獲物を追い詰め、ジックリいたぶり殺しちゃうぞモードに入っているのだ。

その雪女が言った。

「ホレ。 如何(どう)した、内道? 何時まで逃げ回っておるつもりじゃ」

しかし、

「・・・」

内道は何も答えない。
答えようとはしない。
ただ、ジッと現状に耐えている。
必死に音を頼りに、音だけを頼りに逃げ回っている。

再び雪女が言った。

「ホレ、内道。 何か申してみよ。 逃げ回るのが精一杯で何も申せぬか? ン!? じゃが、何時まで逃げ切れるかのぅ」

そして雪女が言うように、

終にその時が・・・










やって来た。











つづく







「戦略編」 #339 『勝ち目』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #339 『勝ち目』の巻




(ゴロン、ゴロン、ゴロン、・・・)


内道は間一髪、回転してこれをかわした。

それを見て、ニヤッと笑って雪女が言った。

「ホゥ!? 最後の悪あがきか? ムダじゃムダじゃ。


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』



じゃ。 最早ソチはこのワラワから逃れる事は出来ぬヮ」

そして然(さ)も嬉しそうに、今度は左手を振り上げた。
当然、その五指は既に氷柱。

その手を一気に振り下ろした。


(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)


五指が飛ぶ。
内道目掛けて。
今度も又、正確に。

だが、


(ゴロンゴロンゴロン・・・)


再び回転して、何とか内道はこれをかわした。
内道の顔が硬直している。
必死の形相だ。

そして、

耳だけだ!?

今、内道は耳だけを頼りに戦っている。
音を聞いているのだ。
雪女の呼吸音。
五指の飛ぶ音。

それを・・それらを・・それらの音を・・それらの音だけを頼りに戦っているのだ、内道は・・・今。

こんな事は透徹した達人のみにしか許されない。
これが内道の本領である。

だが、

こんな状態では、到底雪女とは戦えない。
そんなに簡単に倒せるような相手ではないのだ、雪女は。

しかし、

今の内道に出来る事はたったの一つ。
音を頼りに逃げ回る事だけ。

そして、

そうする過程で、今一度勝機を見出す事。
ただ、それだけ。

しかし、

内道の最大奥儀は、既に破られている。

そんな内道に・・・










果たして勝ち目はあるのだろうか?











つづく







「戦略編」 #338 『内道目掛けて』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #338 『内道目掛けて』の巻




「だ~から申したであろう、ソチの負けじゃと」

雪女が然(さ)も楽しそうに言った。

「・・・」

内道は黙っていた。

「目を失(うしの)ぅては如何(いか)にソチとはいえ、戦えまい。 既にワラワの敵ではないという事じゃ」

「・・・」

「ホレ、何か申してみよ」

「・・・」

相変わらず内道は黙っている。
その内道を余裕のヨッチャンこいて見下し、ジックリと観察しながら雪女が嬉しそうに言った。

「フフフフフ・・・。 哀れなヤツじゃ。 冥土の土産じゃ聞いてやる。 最後に命乞いの一つでもしてみよ。 ン!? どうじゃ、内道。 何か申してみよ。 聞いてやる、聞いてやるぞ、内道。 ホレ、何か申してみよ。 命乞いの一つでもしてみよ。 ・・・」

徐々に雪女のテンションが上がって来た。

「このワラワに命乞いの一つでもしてみよ。 せぬか内道、命乞いを。 ワラワに命乞いをするのじゃ。 このワラワに命乞いをするのじゃ、内道。 早ようせぬか、早よう。 待ちくたびれたぞ。 アーハハハハハ・・・」

「・・・」

内道は雪女の勝ち誇った戯言(ざれごと)を黙って聞いていた。
そんな内道に一笑い笑い終えてから雪女が言った。
元の残忍な、それでいてあの余裕のヨッチャンこいて人を見下したような表情に戻ってから・・・こう。

「さらばじゃ、破瑠魔内道。 精々(せいぜい)あの世で大道に愚痴るが良い」

そして、


(サッ!!)


雪女が右手を大きく振り上げた。
五指は既に氷柱(つらら)と化している。

「死ね!!」

雪女が無感情に、冷徹に、表情一つ変えずに、乾いた言い方でそう言った。
その次の瞬間には、既に右手は振り下ろされていた。


(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)


五指が飛ぶ。
雪女の右手五指が。
五指氷柱が。
正確に。
的確に。
堅確に。

内道目掛けて・・・










一直線に。











つづく







「戦略編」 #337 『ゆる~ぃ理科のお勉強』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #337 『ゆる~ぃ理科のお勉強』の巻




■ 雪女はかつて一度気化した事があるよね。 覚えているかい?

□ ウン。 覚えてる。

■ という事は、既に雪女は体を気化する事を学習済みという事になるね。

□ ウン。 なる。

■ 知っての通り雪女は達人だ。

□ ウン。 そう、達人。

■ そして天才でもある。

□ ウンウン。 天才天才。

■ これらを合わせ考えれば答えは自然と出て来るよね。

□ ン!? どういう事?

■ 雪女は再び体を気化したという事だよ。

□ エェー!? 何だってー!? 再び体を気化しただってー!?

■ そう。 再び体を気化したんだよ。 これが雪女の凄い所なんだ。

□ で、でもどうやって?

■ 熱だよ。 熱を利用したんだ。

□ 何の?

■ 摩擦熱・・・天井落下の摩擦熱。

□ 天井落下の摩擦熱?

■ そう、天井落下の摩擦熱。
あれだけの規模の天井が50メートル以上の高さから落下した場合、壁との間に生ずる摩擦熱は計り知れない物があるんだよ。 雪女はその熱を利用したんだ。

□ でも、でもどうやって?

■ 大道との戦いを覚えているかい?

□ ウン。 覚えてる。

■ あの時と同じさ。 体を氷に変えたんだ。

□ 体を氷に?

■ そう。 体を氷に。
雪女は残っている全ての力を使って落下して来る天井に飛び移り、そこで体を氷に変えたんだ。
そして天井落下が生み出す膨大なエネルギーを利用して体を気化させたのさ。
こんな事は誰からも教えられた訳ではなかったんだけど、天性の天才ゆえ雪女はこれを直感的にやってのけたんだ。
これが雪女の凄いトコなんだよ。

□ ウンウン。 凄い凄い。
でもどうやって脱出したの? 密封状態の大岩盤城結界の中から? いくら気化してても密封状態の中からは出られない筈だよ?

■ ウン。 そうだね。 いい所に気が付いたね。
でもね。 出られるんだなぁ、これがぁ。

□ どうやって?

■ あぁ。 それはね。 この城は確かに密封状態ではあったけど、完全密封ではなかったからだよ。

□ どういう事?

■ ウム。 もしこの城が完全密封だったら、天井は完全には落下出来ないんだ。

□ 何で?

■ それはね空気の抵抗を受けるからだよ。

□ 空気の抵抗?

■ そう、空気の抵抗。 完全密封だと空気の逃げ場がないため、ある高さまで天井が落下してもそれ以上はムリなんだ。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』



なんだ。 下から空気に押し返されるからね。 これを浮力というんだ。 そして、重力と空気抵抗による浮力が等しくなった所で天井は止まってしまうんだ。 でも、今回天井は完全に落下したよね。

□ ウン。

■ という事は、天井と壁との間にはホンの僅(わず)かだけど隙間(すきま)が有ったという訳さ。 そしてそこから気化した雪女は脱出したんだ。

□ そっかー。 そういう事かぁ。

■ 分ったかい?

□ ウン。 分った。 でも、なんでダメージからも回復できたの? 立ち上がる事も出来ない位酷いダメージだったのに。 それに吹雪も止んだよね、何で?

■ あぁ、それはね。 雪女が気化に成功した時点でダメージも消えてしまったんだよ。 体を分子レベルまで分解した事によってダメージも消えたんだ。 痛みを感じさせる分子を排除する事によってね。
それと吹雪はね、雪女が気化するためには摩擦熱以外にも膨大なエネルギーが必要なんだ。 だから雪女は一時的にそれを止めたんだよ。

□ そっかー。 

■ 納得かい?

□ ウン。 納得納得。。。











つづく







「戦略編」 #336 『無傷での脱出』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #336 『無傷での脱出』の巻




「だ~から申したであろう、ソチの負けじゃと」

宙に浮かんでいる雪女の首が言った。

それがあたかもその合図ででもあったかのように、


(スゥ~~~)


雪女の首から下が徐々に形をなし始めた。
そしてホンの数秒後には元通り完璧に復元した。
純白の着物姿の雪女にだ。
あの岩石破砕波から受けた強烈なダメージからも完全に回復している。
アレほどまでに酷いダメージを受けていた筈なのに。

だが、ナゼ雪女は結界崩しから無傷で脱出できたのであろうか?

本当に・・・ナゼか?

その理由は簡単だ。

ン!? 簡単?

そぅ、簡単だ。










それは・・・











つづく







「戦略編」 #335 『真の恐ろしさ』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #335 『真の恐ろしさ』の巻




目だ!?


(タラ~)


目から・・両目から・・内道の両目から・・液体が・・垂れた。

内道の両目から液体が垂れてるぞー!?

無色透明の液体がー!?

真っ赤な鮮血と共に・・・

「クッ!? し、しまった」

内道が呻きながら口走った。

その時内道の両目には、その瞳の中心を抉(えぐ)るように氷針が深々と刺さっていたのだった。
雪女の口から鋭く吐き出された氷針が。

そして振り返った内道の3メートル先の空間に、雪女の頭だけが不気味に漂っていた。
否、浮いていた。

気が付けば何時(いつ)しか再び、


(ビュービュービュービュービュー・・・)


吹雪き始めてもいた。
それも前よりも一層強く。

13人の戦士達は呆然としてその状況を見つめていた。
全く信じられないと言う表情だ。
当然だ。
たったの今、内道の勝利を確信した筈なのに、次の瞬間には一転して内道が窮地に陥っている。
それを目(ま)の当たりにしたのだから。


(ゾクッ!!)

(ゾクッ!!)

(ゾクッ!!)

 ・・・

13人全員に悪寒が走った。
雪女の恐ろしさを今更ながら思い知らされていた。
自分達の眼前で女切刀呪禁道1400年最強の戦士が今戦っている、その相手の恐ろしさを今更ながら思い知らされていた。
全員愕然(がくぜん)としている。

だが、

この13人は更に、雪女の真の恐ろしさの生き証人となるのだ。










この直後に・・・











つづく







「戦略編」 #334 『小さな・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #334 『小さな・・・』の巻




(バババババ・・・)


何かが飛んで来た。
内道目掛けて何かが。
内道の顔目掛けて何かが。

素早く内道が両腕を上げ、ガードした。

だが、


(ブスッ、ブスッ、ブスッ、ブスッ、ブスッ、・・・)


一瞬遅かった。

「グハッ!?」

内道が呻(うめ)いた。
そしてガードを下げた。
内道の顔が現れた。

その顔中、小さな針のような物が刺さっている。
氷で出来た小さな針のような物が・・・その顔中に。

ン!?

氷で出来た針のような物!?

も、もしやそれは・・氷針・・か?

そうだ!? 氷針だ!?

紛(まぎ)れもなく、それは氷針だ!?

という事は氷針息吹か?

そうだ!? 氷針息吹だ!?

雪女の氷針息吹だ!?

じゃ、じゃぁ。 雪女はまだ・・・!?

その通り。
まだ死んではいない。

そして今、内道は顔中血だらけになっている。
深々と刺さっている無数の氷針にやられて。

だが、

事は・・・










それだけでは済まなかった。











つづく







「戦略編」 #333 『何処(どこ)からともなく』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #333 『何処(どこ)からともなく』の巻




突然、

「フフフフフ・・・」

笑い声が・・女の含み笑う声が・・そんな内道達を嘲笑(あざわら)うかのような女の含み笑う声が・・聞こえて来た。

その笑い声は、初めは何処(どこ)からともなく聞こえていた。
皆、体を硬直させ一斉に聞き耳を立てた。
出所を探った。

「フフフフフ・・・」

暫らくジッと聞いていた。
そして分った。

「フフフフフ・・・」

その笑い声は、内道の背後からだった。


(クルッ!!)


反射的に内道が振り返った。










その時・・・











つづく







「戦略編」 #332 『勝った』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #332 『勝った』の巻




雪が・・吹雪が・・止んだ。

否、止んでいた。
何時(いつ)の間(ま)にか。

内道はそれに気付くと同時に思った。

『ン!? 吹雪が止んでいる。 雪女の引き起こす吹雪が。 と、いう事は・・・。 勝ったのか!?』

戦況を固唾を飲んで見守ってきた13人の戦士達も皆同様に、何時の間にか吹雪が止んでいる事に気が付いた。

『ン!? 吹雪が・・・』

『ン!? 雪女の引き起こす吹雪が・・・』

『ン!? 何時の間にか吹雪が・・・』

 ・・・

『と、いう事は・・・勝ったんだ!? 内道様が勝ったんだ!!』

『勝った勝った!! 内道様の勝ちだ!!』

『そうだそうだ! 内道様が勝ったんだ!!』

 ・・・

そして、皆が一斉に立ち上がろうとした。

正に・・・










その瞬間・・・











つづく







「戦略編」 #331 『完了』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #331 『完了』の巻




それは・・・天井から始まった。

結界崩しという名の壮大なドラマが・・今・・天井から。


(ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、・・・)


天井から・・大岩盤城の天井から・・大岩盤城結界の天井から・・激しい崩壊音が上がり始めた。


(ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、・・・)


崩壊音が更に激しくなる。
天井が落下し始めたのだ。
大岩盤城結界の天井が。


(ゴゴゴゴゴォーー!!)


崩壊音が加速し始める。


(ゴゴゴゴゴォーーー!!!)


更に勢いを増して行く。

そして、


(ゴゴゴゴゴォーーーーー!!!!!)


終にそれは・・・


(ゴゴゴゴゴォーーーーーーーーーー!!!!!!!!!! ズッ、シーン!!)


落下音に変わる。

天井が落ちたのだ。
大岩盤城結界の天井が・・・地面に。
激しい落下音を上げて。

だが、それはこのドラマの序章に過ぎなかった。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


今度は壁が・・・壁にヒビが入り始めた。


(ピシピシピシピシピシ・・・)


それがヒビ割れに代わる。

そのまま一気に、


(ピキピキピキピキピキ・・・)


ヒビ割れが走る・・・四方の壁に。


(ピキピキピキピキピキ・・・)


更に、城全体に・・・大岩盤城全体に。


(ビシビシビシビシビシ・・・)


終にそれは亀裂となって大岩盤城全体に走る。


(ビシビシビシビシビシ・・・)


亀裂が砕く・・・城の壁を。


(ビシビシビシビシビシ・・・)


最後に壁が、


(ビシビシビシビシビシ・・・!! ドッ、カーン!!)


崩れ落ちた。
凄まじい崩壊音と共に。
天井の上に。

そして、


(パラパラパラパラパラ・・・)


辺りに数個の小石が転がり、


(シーン)


一瞬の静寂が訪れた。

念法・結界崩し・・・










完了。











つづく







「戦略編」 #330 『結界・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #330 『結界・・・』の巻




(クヮッ!!)


突然、内道が大きく目を見開いた。

更に、


(ギュッ!!)


結んだ印に力を込めた。

そのまま一度(ひとたび)唸って一気に叫んだ。

「ウ~ム。 結界崩し!! キエィ!!」










瞬間・・・











つづく







「戦略編」 #329 『大地震に・・・』の巻

外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #329 『大地震に・・・』の巻




(サッ!!)


内道が印を結んだ。
再び、如来拳印を。

「スゥー、フゥー」

大きく深呼吸を始めた。

「スゥー、フゥー」

「スゥー、フゥー」

トータル3回繰り返した。 
目を半眼にして。

そして、

「ウ~ム」

念を込めた。

すると・・・


(ギギギギギ・・・)


城が・・大岩盤城が・・大岩盤城結界の城が激しい音を立て始めた。
鋭い軋(きし)み音だ。

「ウ~ム」

内道が更に念を込めた。

すると・・・


(グラグラグラグラグラ・・・)


今度は城が揺れ始めた。


(グラグラグラグラグラ・・・)


揺れは次第に大きさを増して行く。


(グラグラグラグラグラ・・・)


終にその揺れは、大地震に遭(あ)っているのではないかと思われるほどにまで達した。










そして・・・











つづく






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コマル

Author:コマル
ジョーク大好き お話作んの大好き な!? 銀河系宇宙の外れ、太陽系第三番惑星『地球』 の!? 住人 death 。

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