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怒れるオサーンBLOG 『怨霊バスター・破瑠魔外道』
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いささか思う所があり、当ブログを一時的に政治ブログに変えちゃいます。 因みに管理人の立ち位置は “愛国保守” DEATH。

『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #145 最終回 『豹変』

#145 最終回 『豹変』




(センちゃん) 「ダ、ダイジョブだよ、雪ちゃん。 あの先生に限って・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

(ブッちゃん) 「そ、そうだよ、雪ちゃん。 ダ、ダイジョブだよ。 あの先生なら・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

(コウちゃん) 「ワ、ワシもダイジョブだと思うよ。 げ、外道先生に限って・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

(雪) 「だといんだけど・・・」

(脇役3人衆) 「・・・」

脇役3人衆は黙った。
暗く落ち込んでいる雪の発するオーラに押され、何も言えなくなったのだ。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

息苦しい沈黙が続く。

ところが、
ところがである。

「アッ、アー!! もうー!! ホ~~~ントに何やってんだー! 外道のヤツー!! 人にぃ! こ~~~んな心配掛けてぇ!!」

突然、雪が虎変(こへん)した。

普段はおしとやかで貞淑。
その上、
スラッとして、色白、美形、チャーミーでボインボインの “ナイスバ雪” が、突然、虎変(こへん)したのだ。

その表情が凄まじい。

目は釣りあがり、
かみ締めた唇から八重歯が出ている。
それがまるで牙だ。
振り上げられた長い髪が真ん中から二つ分かれている。
それはあたかも角だ。

この雪の形相。

まるで・・・般若(はんにゃ)だ!?

突然の雪の形相の変化に驚き、

(3人揃って) 「ゆ、雪ちゃん!?」

一言そう言ったっきり後は何にも言えず、
瞬(まばた)き一つせず、
否、
出来ず。
ただ呆然としてその姿を見つめるだけの、
脇役3人衆だった。

すると、


(プチッ!!)


音がした。
何かが切れる。

(センちゃん) 「ン? なんか今、音がしたような」

(ブッちゃん) 「ウン。 何かが切れたような」

(コウちゃん) 「あぁ。 ワシにもそう聞こえた」

3人はキョロキョロ辺りを見回した。
だが何事もなかった。

それもその筈、
音は雪のいる所から聞こえていたからだ。
それは雪が “キ・レ・タ” 音だった。

(脇役3人衆) 「ま、まさか!?」

それに気付き、3人は揃って、恐々(こわごわ)、恐る恐る、そーっとそーっと振り返って雪を見た。

その瞬間、

(脇役3人衆) 「ヒ、ヒェ~~~!?」


(ドサッドサッドサッ!!)


揃って一気に、
仰天(ぎょうてん)して腰を抜かした。
豹変(ひょうへん)した雪の姿を見て。

 ・

 ・

 ・

一方、不良の診察室では。

「ハハハハハハ・・・」

相変わらず不良の心地よい笑い声が響いている。
その笑いは止みそうもない。

その横にはその笑いの意味が全く理解できずに、キョトンとして突っ立っている事しか出来ない秀吉がいる。
唯、ひたすらキョトンとして突っ立っているだけの秀吉が。

そして、
ベッドの上では、今何が起こっていようが一切関係なし。
気持ち良さそ~~~に、気持ち良さそ~~~に外道が眠っている。

何か良い夢でも見ているのか?

実に幸せそうだ。

そぅ・・・

きっと何か良い夢を見ているに違いない。
デカチチかなんかの。

 ・

 ・

 ・

そうだ外道、
今は静かに眠れ・・・






次のために。。。











『怨霊バスター・破瑠魔外道』 お ・ す ・ ま ・ ひ





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『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #144 『こんな愉快な話』の巻

#144 『こんな愉快な話』の巻




「その女が化けて出る。 いや、その女に祟られる」

ニヤニヤしながら不良がそう言った。
今にも笑い出しそうだ。

秀吉はこんな不良を見るのは初めてだった。
いつもはクールと言うか無愛想と言うか高ビーというか、そんな不良しか見た事がなかったからだ。

「化けて出る? 祟られる?」

「あぁ。 そうだ。 ㌧でもない女だ。 コイツも異常だが、その女も只者じゃぁない。 良~く見えるぞ、 良~く。 俺には見えるぞ、その少女が。 その㌧でもない少女の姿が。 ワハハハハハ」

とうとう不良が笑い出した。

相変わらず目をパチクリするだけの秀吉であった。
その笑いの意味が全く掴めなかったのだ。

「ど、どういう事ですかな」

「知りたいか?」

「ハ、ハィ!!」

「コイツには年若(としわか)い女が付いている。 そしてその女から逃げられんという事だ。 一生な。 一生コイツはその女の尻に敷かれ続けるという訳だ。 他にこんな愉快な話が有ると思うか。 こんなタフで人間離れした、化け物みたいな奴を尻に敷く女。 しかもまだ10代半ばだ。 女子高生位か。 この化け物が10代半ばの女の子の尻に敷かれるんだぞ、それも一生敷かれ続けるんだ。 こんな愉快な話が他にあると思うか、他に。 ワハハハハハ」

終に不良が腹を抱(かか)えて笑い出した。

「ハッ、ハァ~。 ・・・?」

秀吉には何が何だかサッパリだった。

だが、
そんな事にはお構いなし。

「ハハハハハハ・・・」

それまで全く無感情だった不良が笑っている。
腹を抱えて笑っている。

「ハハハハハハ・・・」

診察室の中には不良の心地よい笑い声が響き渡っている。

「ハハハハハハ・・・」

それは中々止みそうにない。

だが、
外道の耳にその笑い声は入っては来なかった。
全く入っては・・・

なんとなれば、
その時既に外道、
衰弱し切っていた体に安定剤が効いて、深い眠りに就いていたからだ。






ところがその頃・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #143 『若い女』の巻

#143 『若い女』の巻




「コイツは遅くとも三日後には家に帰さねばならん」

相好(そうごう)を崩したまま不良が言った。

「ナ、ナゼでしょうか?」

怪訝(けげん)そうな表情で秀吉が聞いた。

「フッ」

再び不良が笑った。
そして言った。

「女だ」

「女?」

秀吉が聞き返した。

「そうだ女だ。 それも若い。 少女と言ったほうが良(い)いか」

「ど、どういう事ですかな、それは?」

「俺には見える。 コイツには若い女が付いている。 ソイツがコイツの身を案じている、死ぬ程にな。 それが俺には良~く見える」

「・・・?」

秀吉には全く意味不明の表現だった。

いつになく、不良の話が止まらない。
有り得ない程多弁だ。
いつもなら二言三言(ふたこと・みこと)で止めてしまうのに。
秀吉が目をパチクリしている。
こんなに明るく良く喋る不良の姿に驚いたのだ。

その初めて見た不良のスマイル、プラス、饒舌(じょうぜつ)に驚き・・・






鳩に豆鉄砲状態の秀吉であった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #142 『始めて相好を崩した瞬間』の巻

#142 『始めて相好を崩した瞬間』の巻




(コンコン、ギー)


「失礼する」


(パタン!!)


不良(ぶら)がぶらっと診察室に戻って来た。

「時間だ。 話は済んだか?」

相変わらず言葉に感情がない。

「はい。 たった今」

不良の方を向き、そそくさと外道の寝ているベッドから離れて秀吉(ひできち)がそれに応じた。

「それじゃぁ羽柴さん。 さっきの件宜しく」

そんな秀吉に外道が声を掛けると、

「はい。 確かに」

振り返って秀吉がそう答えた。
そのやり取りを完璧に無視し、


(ガチャ!!)


不良は棚から注射器とアンプル剤を取り出して足早にベッドに近づき、

「安定剤を打っておく。 少し眠れ」

そう言って外道の腕を取り、
サッっとガーゼでぬぐり、


(チクッ)


安定剤を打った。
迅速に素早く手際良く。
その一連の流れが不良が只者でない事を示していた。

直ぐに外道が目を閉じた。
眠った様だ。
それは安定剤が効いたのではなく、外道がまだ衰弱し切っていたからだった。
秀吉との短いやり取りだったが、今の外道にはそれが限界だったのだ。
その外道の様子を見ている不良に、背後から秀吉が聞いた。

「先生、あとどの位で破瑠魔殿は・・・?」

「三日だ」

秀吉の言葉を遮り、振り向きもせず、一瞥(いちべつ)もくれず、不良が言った。

「この男の事だ。 あと三日もあれば十分。 その頃にはピンピンしている筈だ」

「そ、そうですか。 た、たった三日で?」

不良の言葉に秀吉は驚いた。
俄か(にわか)には信じられなかった。
三日前には死に掛けていた外道が、たったの一週間足らずで元気に成れるなど秀吉にはとても信じられなかったのだ。

「あぁ。 例えもし、回復しなかったとしてもコイツは家に帰さねばならん」

「ナ、ナゼですか?」

「フッ」

不良が笑った。
あの不良が。
その登場以来クールであり続けた不良孔雀(ぶら・くじゃく)が笑った。

これが・・・

常にクールな男、ドクター不良孔雀が始めてその相好(そうごう)を崩した・・・






瞬間だった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #141 『頼み』の巻

#141 『頼み』の巻




「ところで羽柴さん。 頼みが有るのですが」

外道が秀吉に言った。

「何ですかな? ワシに出来る事なら何なりと。 なにせ破瑠魔殿は我が最愛の娘ナナの命の恩人ですからなぁ。 ワシに出来る事なら何なりと仰(おっしゃ)って下され」

「ありがとうございます。 それでは大至急あの井戸を攫(さら)って下さい」

「おぉ、そんな事なら造作(ぞうさ)もない事。 しかし、攫ってどうされます?」

「おそらく蝦蟇法師の死骸が」

「おぉ、そうですなそうですな。 死骸ですな死骸ですな。 しかし、死骸が出たらどうしたら良(い)いでしょう?」

「丁重に供養してやって下さい。 出来ればあの井戸の近くに埋葬してやって頂ければ・・・」

「承知しました。 しかと心得申した」

「有難うございます。 ちなみに墓碑銘はこうです。 『最強の戦士 千年蝦蟇法師 ここに眠る』。 と」

「墓碑銘? 最強の戦士? 化け物に墓碑銘ですか?」

瞬間、


(ギン!!)


外道の目が鋭く光った。
化け物と言う言葉にとうとう反応してしまった。
外道は蝦蟇法師をもうこれ以上、化け物呼ばわりされる事が許せなかったのだ。


(ビクッ!!)


秀吉は突然の外道の目付きの変化に恐怖した。
傷つき倒れているとは言え、外道は達人。
その達人の “氷の一瞥(いちべつ)” の前に、凡人の秀吉が普通でいられる訳がない。
体を硬直させ、その場に凍てついている。
秀吉のそのリアクションを見て、外道は即座に気分をシフトした。
平静を取り戻したのだ。
瞬時に感情を “甲(こう)” から “乙(おつ)” に切り替える。
達人にのみ許される芸当だ。

その外道の変化に秀吉はチョッとホッとした。

「ハ、ハィ!! 『最強の戦士 千年蝦蟇法師 ここに眠る』 ですな。 『最強の戦士 千年蝦蟇法師 ここに眠る』。 ハィハィハィ、承知しました承知しました。 仰せの通に。 ハィハィハィ」


(ツゥー)


秀吉の額から冷や汗がたれた。
それを拭いながらまだ若干緊張した面持ちで、恐る恐る秀吉が続けた。

「と、ところで破瑠魔殿。 お、教えて頂きたい」

「何でしょう?」

外道が穏やかに聞き返した。
その言葉を聞いて安心したのだろう。
秀吉が落ち着きを取り戻した。

「はい。 あの井戸は? あの井戸は如何(いかが)致したら・・・?」

「『如何致したら』 とは?」

「はい。 果たして埋め立てて良(よ)いものかどうか?」

「あぁ、そういう事ですか。 それなら埋め立て良(い)いんじゃないですか」

「し、しかし・・・。 あのー、も、もし。 そのー、た、祟りが?」

「その心配は要りません。 埋め立てた上に祠(ほこら)を立てれば宜しい。 岩清水八幡(いわしみず・はちまん)様の御分霊を勧請(かんじょう)して」

「祠を? 岩清水八幡様の御分霊を勧請して? ナゼ又、岩清水八幡様の御分霊を」

外道の口から出た “祠”、 “岩清水八幡” と言う思いも掛けなかった言葉を聞き、
秀吉がキョトンとして聞き返した。

「蝦蟇法師の話に寄れば、昔あの井戸のあった所は岩清水八幡様の池だったそうです・・・」

ここで外道は言葉を切った。
何かを思い出しているのだろうか、感慨深げだ。
目線を秀吉から天井に移し、一点をジッと見つめて考え込んだ。
秀吉は黙ったまま外道を見ている。
外道の次の言葉を待っていたのだ。

しかし、

「・・・」

なかなか外道が言葉を口にしない。
チョッとじれて、秀吉が外道に声を掛けた。

「破瑠魔殿」

それで、

『ハッ!?』

外道が我に返った。

「アッ!? こ、これは失礼」

「どうされました? どこか具合でも?」

「いや、なに、何でもありません。 チョッと思い出した事が・・・」

外道は蝦蟇法師とのやり取りを懐(なつ)かしんでいたのだ。
命を懸けたやり取りだったのだが。
いや、むしろ命を懸けたからこそ却(かえ)って懐かしめたのかも知れない。
たった三日前の出来事だった筈なのに、今の外道にはそのやり取りがナゼか遠い過去の出来事の様に思われていた。
千年という永きを生き抜き、死人を蘇生させる等という神にも劣らぬ途轍(とてつ)もない通力を身に付け、その圧倒的パワーで死の淵まで外道を追い詰めた千年蝦蟇法師に対する尊敬の念が、恐らくそうさせたのだろう。

外道が続けた。

「あそこは昔、神泉の湧き出る池だったそうです。 岩清水八幡様が御降臨される。 だから岩清水八幡様の御分霊を祀っておけば良いのです」

これを聞いて秀吉の表情が一気に明るくなった。
胸のつかえが落ちたに違いない。

「そうですか。 ハィ!! 分かり申した。 その言葉を伺ってホッと致し申した。 早速、井戸を攫ってみる事に。 ハィ!!」

「宜しく」

外道が言った。






そこへ・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #140 『あの晩の出来事』の巻

#140 『あの晩の出来事』の巻




(フゥー)


「そーですか。 そんな事が有ったのですか」

秀吉が 短足 嘆息(たんそく)して言った。
何とか記憶を整理し、あの晩の出来事を外道が語ったのを聞き終えた後に。

それから続けた。

「千年蝦蟇法師ですか~?」

「はい」

秀吉の目を見ながら外道が答えた。

「恐ろしい話ですな~。 あの井戸に、あの井戸の中にそんな恐ろしい化け物が住んでおったとは。 正に知らぬが花でしたな~」


(ピクッ)


秀吉の言った 『恐ろしい化け物』 という言葉に外道はチョッと引っ掛かった。
が、
黙っていた。

「じゃぁ、何ですな~ その呪いとやらは今、破瑠魔殿の体のどこかに?」

「否、その心配はないでしょう」

「ナゼですかな? その化け物が死ぬ前に掛けたんじゃぁ・・・」

コレを聞き、外道は一瞬、目を閉じた。

『化け物かぁ・・・』

やはり外道には化け物という言葉が引っ掛かかったのだ。

その圧倒的強さ故、外道最強の敵、千年蝦蟇法師。
化け物という言葉は余りにも侮辱が過ぎた。

『ま、一般人には無理か。 やっぱ化け物・・・そうなるか』

外道は、そう思い直して目を開けた。
そして秀吉に向かってキッパリと言った。

「否、彼にはワタシに呪いを掛ける時間はありませんでしたよ」

「どういう事でしょう?」

怪訝(けげん)そうに秀吉が聞き返した。

「千年蝦蟇法師はあの井戸の番人の彼の傷を治す事に精一杯で、ワタシに呪いを掛ける暇は無かったのです。 もっとも、そうなる様にワタシが仕向けたのですが。 だから心配は無用なのです」

この言葉を聞いて合点がいったのだろう、秀吉の表情が一気に明るくなった。

「あぁ、そういう事ですか。 そうですかそうですか、流石(さすが)は破瑠魔殿。 一石二鳥の見事な作戦勝ちと言う訳ですな、一石二鳥の作戦勝ち。 ワハハハハハ」

「そういう事です」

視線を秀吉から天井に移して外道は思った。

『千年蝦蟇法師よ。 アンタはヤッパリ・・・。 蝦蟇だった』











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #139 『絶対安静』の巻

#139 『絶対安静』の巻




(トントン。 カチャ!!)


ドアをノックする音。
続いてドアノブの回る音がした。

それから、


(ギー、 パタン!!)


誰かが入って来た。
様子を見ながらユックリと近付いて来る。
寝ている男と立っている男、
二人の男の様子を見ながらユックリと。

そして寝ている男に向かってこう言った。

「オォー!? 破瑠魔殿!? 気が付かれましたか?」

秀吉だった。

破瑠魔殿と言われた以上、
やはりそこに寝ている男は・・・外道だった。

秀吉が医者だと言った男に聞いた。

「先生。 如何(いかが)ですか? 破瑠魔殿の具合は?」

「絶対安静だ」

「そうですか。 じゃぁ話す事も?」

「否、話位なら良(い)いだろう。 ただし10分。 良いな。 10分だ」

「はぁ、10分ですな。 承知しました」

そう言うと秀吉は寝ている外道に言葉を掛けた。

「教えて下され破瑠魔殿。 あの晩一体何が有ったのですか?」

「・・・」

だが、外道は黙っていた。
それを見て何かを感じたのだろう。
医者だと言った男が、

「俺は失礼したほうが良さそうだ。 何か有ったらベルを押すように。 緊急連絡用のベルを。 コレだ」

秀吉にベルの場所を指し示し、
表情一つ変えずに部屋から出て行った。

秀吉は軽い会釈で見送り、
再び外道の方に向き直った。
その秀吉に外道が聞いた。

「今の人は?」

「あぁ。 不良(ぶら)先生。 不良孔雀(ぶら・くじゃく)先生。 うちの旅館の専属医です。 客や使用人に何か有った時のためにと、お願いしていてもらっております。 凄腕ですぞー。 チョッと気難しいのが玉に瑕ですが・・・。 アハハハハハ。 兎に角、腕の立つ先生です。 大袈裟な様ですがゴッドハンドという言葉は正にあの方のために有る言葉、お世辞抜きで世界に二人といない名医です。 こんな事を言うのもなんですが、うちの旅館には全く持って勿体無い逸材です」 

「と、いう事は、ココは?」

「はい。 うちの旅館据え付けの診察室です。 実は、ワシの屋敷の裏手は旅館になってましてなぁ。 はい。 ココはその旅館の方です」

「診察室? 旅館に?」

「はい。 何せうちは湯治やリハビリのために来る客が多いものでして・・・。 もっともそれが売りの一つでもあるんですが。 はい」

「あぁ、そうですか~。 ・・・。 なーるほど~」

ここで一旦外道は言葉を切った。
こう思っていた。

『そう言えば確か、蝦蟇法師も言ってたっけ。 湯治に来た客が井戸でなんとか・・・。 そんな事を・・・』

それから続けた。

「しかし、何で又そんな名医が?」

外道は自分の置かれている状況が徐々に分かって来た。
それと同時に、不良に少し興味を持った。

「はぁ。 それには色々と訳が・・・」

秀吉が言葉に詰まっている。
何やら言いにくい訳がある様子だ。

「言いにくそうですな。 野暮な事は聞きますまい」

「はぁ。 申し訳ござらん・・・。 そんな事より破瑠魔殿。 お聞かせ下され。 あの晩一体何が?」

秀吉は再び外道に同じ質問をした。

しかし、
外道は直ぐには答えなかった。
目覚めて間もないため、まだ上手く考えが纏(まと)められなかったのだ。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #138 『出会い』の巻

#138 『出会い』の巻




新たな物語は・・・

この言葉から始まった。

その言葉とは・・・

「気が付いたか?」

誰かが話し掛けて来たのだ・・寝ている男に・・男の声で。
それは寝ている男にとって、全く聞き慣れない声だった。

と、

同時に、


(カチッ!!)


何かのスイッチが入る音がした。

ややあって、


(ピカッ、ピカッ、ピカッ)


部屋の明かりが点った。

この部屋の照明は天井にではなく、壁に取り付けられていた。
天井から30センチ位下に奥行き20センチ位の棚があり、
その棚に天井向きに蛍光灯が据え付けられている。
明かりが直接目に入らないための工夫の様だ。
さほど強くはないが、それでも読書をしても目が疲れない程度の光量はあった。

再び同じ声がした。

「気分はどうだ?」

そう言いながら、ユックリとその声の主が視界に入って来た。
長身でスリム。
優に190cm以上あるだろう。
白衣を着ていた。
整った顔立ちで999.9(フォーナイン)のメガネを掛けている。
軽いパーマの掛かった髪は黒々として長く、うなじが隠れていた。
それを頭の真ん中から分けている。
年齢は30半ば位か?
まだ40には達してはいない様に思われた。

「アナタは?」

男が聞いた。

「医者だ」

そう言いながら、その長身の男が覆い被さるようにして寝ている男の目を覗き込んだ。
具合を見る為に。

正にこの時・・・

長身の男と寝ている男。
竜虎相見(りょう・こ・あい・まみ)えた瞬間である。

途轍(とてつ)もない男達が・・今・・始めて視線を交えたのだ。

だが、
その時はまだ、
二人共全くその事に気付いてはいなかった。

「たいした生命力だ。 普通ならとっくに死んでいたぞ、その傷じゃ」

「ここはどこですか?」

「俺の診察室だ」

「診察室? 一体何が・・・?」

「それはこっちの台詞(せりふ)だ。 お前は三日三晩意識不明だったんだぞ、ここで」

「三日三晩!?」

「あぁ、そうだ」

「アッ!? か、彼は!? 彼はどうしていますか?」

突然、男は何かを思い出した。

「お前と一緒に連れ込まれた男か?」

「はい。 多分」

「あの男の事なら心配はいらん。 チャンと輸血はして置いた。 お前が大河内さんに言付(ことづ)けたようにな」

この言葉から察するに、寝ている男は・・・恐らく外道。
否、
間違い無く外道だ・・・話の流れからして。

「じゃ、じゃぁー。 彼は生きているんですね? 助かったんですね?」

外道と思われる男が興奮して起き上がろうとした。

だが、


(ズキッ!!)


「ウッ!?」

全身に激痛が走った。

「ダメだ、無理をするな!! お前はまだ動けるような体じゃないんだ」

医者だと言った男が叱り付けた。
それから諭(さと)すように続けた。

「心配するな。 何があったかは知らんが。 不思議な事に全身血塗(ぜんしんちまみ)れだったくせに傷一つなかったぞ、あの男。 もっとも、傷がなかった代わりに血がなかったがな」

「そうですか、それは良かった」

外道はあの大男が無事だと聞いてホッとした。
だが、
直ぐに、

『ハッ!?』

気付いた。
井戸番人の大男はかなりの時間、心臓の機能が停止していた。
つまり全身に血液が全く回っていなかったという事になる。
とすれば、脳や内臓の細胞が壊疽している筈。
それに気付いたのだ・・外道は・・その時。
即座に外道が聞いた。

「い、意識は? 彼に意識はありますか?」

「あぁ、意識はハッキリしている。 もっとも完全回復までにはもう少し時間が必要では有るがな」

「脳に異常は? チャンと会話は・・・」

「脳に異常?」

「はい」

「そんな物は全くない。 衰弱が少々酷いだけだ。 だがそれも時間の問題だ」

「そうですか、それは良かった。 ・・・」

そう言って外道は黙った。
安心したのだ、大男が無事だと聞いて。
だが、
それだけではなかった。
それと同時に、
外道は改めて蝦蟇法師の能力(ちから)に驚いていた。
一度死んだ筈の人間を蘇生させてしまった、あの蝦蟇法師の能力(ちから)に。
それは神のみに許される事だからだ。
否、
神すら持ち合わせてはいないかも知れない能力(ちから)だ。
外道の頭の中には今更ながらこの言葉が思い出されていた。

「・・・。 ワレは、ワレこそは自(みずか)らのエネルギー体を意のままに操(あやつ)れる生命体。 究極の生命体。 即ち、 “神” ゾ。 ・・・」

蝦蟇法師の言ったこの言葉が・・・
そのため外道は黙ったのだった。
だが、
そんな外道に、

「フン。 妙なことを聞くヤツだ」

男が言った。
その言葉を聞き、

『ハッ!?』

外道が現実に返った。
と同時に、
ナナともう一人の井戸の番人の事が閃いていた。
閃いた時には言葉になっていた。

「アッ!? ほ、他の、他の二人は?」

「あぁ、皆(みんな)無事だ。 今、別室で安静にしている。 まだ点滴が必要な状態だが命に別状はない。 ところで何があった?」

「・・・」

外道は答えなかった。
一瞬、表情が険しくなった。
目の前にいる医者だと言った男。
もしかすると自分の命の恩人かも知れない。
その恩人かも知れない男の問い掛けだ。
だが、
外道は頑な(かたくな)に答えようとはしなかった。

『守秘義務を全うする。 だから喋らない』

その覚悟、決心が眼(め)に現れていた。
医者だと言った男は素早くそれを読み取り、

「言いたくなければそれでも構わん。 余計な詮索(せんさく)は好まん。 (もう一度、具合を見る為に外道の両目を覗き込んで) フン。 ヘテロクロミアか。 妙な奴だ」 《ヘテロクロミア : アニメで言う金銀妖瞳の事。 医学用語では虹彩異色症(こうさいいしょくしょう=オッド・アイ)と言う》

そう言った。
クールに、そして、ドキッとするほど冷ややかに。
この男には感情がないのか?
そう思われても仕方がない程冷淡に。

だが・・・偶然か?

それとも・・・必然か?

奇妙な事にこの医者だと言った男の目も又、
オッド・アイ 《=虹彩異色症、即ち、金銀妖瞳(ヘテロクロミア)》 だった。
その眼色が寝ている男とは左右対称の。

その時・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #137 『部屋』の巻

#137 『部屋』の巻




「ゥ、ゥ~ン」

男は静かに目を明けた。
部屋は暗かった。
意識がボンヤリしている。
再び目を閉じた。
別に眠るためではなかった。
目を開けているのが辛かっただけだ。
そのまま何も考えずにボーっとしていた。
暫(しばら)くそのままでいると、音がしている事に気が付いた。
その音に注意を払った。


(チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、・・・)


置時計が秒を刻む音のようだった。

『時計・・・か?』

男は思った。

そして、


(チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、・・・)


何も考えずにその音を聞いていた。
頭の中がボーっとしていて何も考えられなかった。
全身の感覚が麻痺している様だった。
まるで雲の上にでも寝ている様な、
そしてそのまま虚空を漂(ただよ)ってでもいるかの様な、
全くの無感覚。

唯、
時計の秒を刻む音だけが耳の奥で反響している。
男は暫(しばら)くジッとその音に耳を傾けていた。

突然、


(ポッ!!)


体の中で何かが弾けた。

すると、
それまで思考が停止していたのが嘘のように一気に記憶が甦(よみがえ)って来た。
まるで真夏の夕立。
いきなり降り出す雷雨のように。

『ハッ!?』

男は素早く目を開けた。
起き上がろうとした。

しかし、


(ズキッ!!)


「ウッ!?」

全身に激痛が走った。
あまりの痛さに起き上がるどころか動く事さえ出来なかった。

『クッ!? な、何がどうなっているんだ? こ、ここは? ここは一体?』

男は部屋の中を見回すため頭を動かそうとした。

だが、
又しても、


(ズキッ!!)


「ウッ!?」

痛みが走ってそれすら出来ない。
仕方がないので目だけで見える範囲をチェックした。

自分は今、どうやらベッドに寝ている様だ。
顔中包帯が巻かれているらしい。
出ているのは目、鼻、口、耳だけの様だ。
この分なら、まるでミイラ男か透明人間のように全身巻かれているかも知れない。

目線を動かしてみた。

天井は白かった。
壁は淡いクリーム色をしている。
この状態では床の色までは分からなかった。
他に見えた物と言えば、
あまり大きくない窓が1つ。
それは出窓の様だ。
その窓から見える外の日差しは強そうだった。
それを清楚な感じの空色のカーテンが適度に和らげている。
部屋の広さは20畳位か?
目視(もくし)だけではハッキリした広さまでは分からなかった。

『ここは・・・一体?』

男は再びそう思った。






その時・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #136 『夢』の巻

#136 『夢』の巻




(タタタタタタタタ・・・)


今、

一人の女子高生が、
短~~~いスカート姿の女子高生が、
額に汗を掻(か)きながら、
こっちに向かって走って来る。

相変わらずパンツは見えそうで見えない。
だが、
色は想像がつく。
 
          ノ´⌒`ヽ 
      γ⌒´      \
     .// ""´ ⌒\  )
     .i /  \  /  i )    
      i   (・ )` ´( ・) i,/    
     l    (__人_)  |      
     \    `ー'  /       
.      /^ .~" ̄, ̄ ̄〆⌒ニつ  白だ!? (キリッ!!) 
      |  ___゙___、rヾイソ⊃   
     |          `l ̄     
.      |         |         


多分。。。

否、

ベェージュって手も有るか?

ウ~ム。




さて、


(タタタタタタタタ・・・)


どんどんどんどんどんどんどんどん・・・近づいて来る。
自転車置き場からココまで。
そして、

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

息を切らせてこう言った。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・。 センちゃんさん!! ブッちゃんさん!! コウちゃんさん!! 先生は~? 先生ー! もう帰って来た~? まだ~? ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

そぅ・・・

その女子高生の名は、雪。

そしてココは、
日本のとある 痴呆 地方にある 『女木戸(めぎど)の丘公園』 という立派な名を持つ公園内に勝手に作られたテント村。
あのブルー・シャンティだった。

このブルー・シャンティのボス、センちゃんが言った。

「ヤー、雪ちゃん。 こんにちは。 どうしたのそんなに慌てて? 先生まだだよ」

その一の子分、ブッちゃんが言った。

「ヤー、雪ちゃん。 こんにちは。 ウン。 まだだよ、先生」

その二の子分、コウちゃんが言った。

「ヤー、雪ちゃん。 こんにちは。 まだねー、先生帰って来ないんだよ~」

「あ。 ごめんなさい。 センちゃんさん、ブッちゃんさん、コウちゃんさん。 こんにちは。 そっかー、まだか~」

粗い呼吸を整えて、遅れた挨拶を済ませたと同時に、雪の表情が曇った。
空(す)かさずそれを見て取って3人が言った。

(センちゃん) 「大丈夫だよ、雪ちゃん。 心配しなくても」

(ブッちゃん) 「そうだよ、雪ちゃん。 まだあれから三日しか経ってないんだから」

(コウちゃん) 「心配性だな~。 雪ちゃんは~」

それらに対し、雪はこう答えた。

(雪) 「ウン。 普通ならね、心配しないんだけどぉ・・・。 でもね、三日続けておんなじ夢見たんだ~、アタシ」

(3人声を揃えて) 「どんな?」

(雪) 「ウン。 先生ー、死ぬ夢。 先生がねー、化け物に食べられて死んじゃう夢。 でっかいガマガエルに食べられて先生死んじゃうンだよ。 こ~んなでっかいガマガエルに食べられて。 こ~んな・・・。 そんな夢」

雪が大袈裟な手振りを交えてそう言った。

(3人声を揃えて) 「おんなじ夢? 三日続けて? でっかいガマガエルに食べられちゃう? ・・・」

(雪) 「ウン。 アタシの夢見、当たるんだ。 だからね、だからアタシ心配で心配で、もう死にそう・・・」

(センちゃん) 「ダ、ダイジョブだよ、雪ちゃん。 あの先生に限って・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

(ブッちゃん) 「そ、そうだよ、雪ちゃん。 ダ、ダイジョブだよ。 あの先生なら・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

(コウちゃん) 「ワ、ワシもダイジョブだと思うよ。 げ、外道先生に限って・・・。 アハ、アハ、アハハハハハ」

ナンゾと笑って誤魔化してはみたものの、
急に不安になっちまった・・・
脇役3人衆なのであった。






ひょうきんモンの・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #135 『事件現場』の巻

#135 『事件現場』の巻




― ある TV のワイドショー番組に於いて ―


(レポーター) 「こちら現場からの中継です。 昨夜、ココ、ペケペケ県ポコポコ市にある高圧鉄塔の送電線が何者かによって全て断ち切られるという事件が起こりました。 その影響でこの付近一帯、全戸が停電した模様です。 原因は現在、警察と電力会社が調査中ですが、ハッキリした事はまだ分かっておりません。 あ。 丁度ここに、現場付近にお住まいの方がいらっしゃる様なのでチョッとお話を伺ってみたいと思いま~す」 

レポーターが近くにいるオッサンにマイクを向けた。

(レポーター) 「すみませ~ん。 あのー、チョッとお聞きしても宜しいでしょうか?」

オッサンが振り向いた。

(オッサン) 「ハィハィハィなんでしょうか? ハィハィハィ。 (テレビの取材だと気付いて) オッ!? こ、これはテレビですかな?」

(レポーター) 「はい」

(オッサン) 「ど、どこの局ですかな? どこの局?」

(レポーター) 「はい。 今日も元気だ捏造(ねつぞう)だ。 捏造一直線でお馴染(なじ)みの “NHTBSK 夕日” でーす」

(オッサン) 「オーオーあの捏造で有名な。 知ってます知ってます知ってます。 あの嘘こき放送局ですな。 古舘 伊痴呆(ふるたち・いちほう)や鳥肥 糞太郎(とりごえ・ふんたろう)なんかのいる。 あの大嘘つきで有名な。 知ってます知ってます知ってます。 ところで今ワシ写っとるンですか? ワシ今テレビに写っとるンですか?」

(レポーター) 「はい。 チャ~ンと写ってますよー」

(オッサン) 「そ、そうですかそうですか~」

そう言うとオッサンは、レポーターから無理矢理(むりやり)マイクをもぎ取り、姿勢を正すとカメラに向かってこう言った。

眼(め)~~~輝かせて。。。

(オッサン) 「エー、コホンコホン(軽い咳払い)。 ウ~ン(痰を切って)。 有権者の皆様コンヌツヮ。 ワシが羽柴 精巣 秀吉(はしば・せいそう・ひできち)であります。 次期衆議院議員選挙に立候補予定の 『は・し・ば・せ・い・そ・う・ひ・で・き・ち』 であります。 サンギインではありまっしぇん。 シュウギインに立候補予定の 『は・し・ば・せ・い・そ・う・ひ・で・き・ち』 であります」

そのオッサンは秀吉だった。
慌てて秀吉からマイクを取り返してレポーターが言った。

(レポーター) 「す、済みません。 そ、そんな事じゃなくって、あの送電線の事をお聞きしたいのですが」

再びマイクをもぎ取って、

(秀吉) 「そうですかそうですか。 送電線の事ですか送電線の事ですか。 ハィハィハィ。 分かりまスた分かりまスた分かりまスた。 ハィハィハィ。 ワシが羽柴 精巣 秀吉であります。 次期衆議院議員選挙に立候補予定の・・・」

再びマイクを取り返して、

(レポーター) 「す、済みませ~ん!! みのさんみのさん、みのもんちっちさ~~~ん!! な、なんか勘違いこいてるオヤジがいるので一旦マイクをお返ししま~~~す」



― 画面がスタジオに切り替わる ―


(みの) 「ハィハィハィ。 滝川さ~ん。 滝川クリキントンさ~ん。 分かりましたー。 ご苦労さまーン。 取材の続き頑張って下さ~~~い。 (改めてカメラに向き直って) いやー驚きましたねぇ。 ナンですかあれは? 衆議院に立候補予定だそうですよ、奥さん。 参りましたねぇ、全く。 世の中には変わった人がいるモンですな~。 ホ~ントに。 ワタシだってねぇ、このワタシだってねぇ。 実は今回の選挙出たかったンですよ罠醜党(みんしゅとう)から。 でもねぇ、待てど暮らせどそのお誘いがなかったモンですからねぇ、諦めたのにねぇ。 『肝炎だー!! 肝炎だー!!』 って、訴訟起して大騒ぎこいた、あの肝炎直(かんえん・なお)って大酒呑みの河豚田 衣里子(ふぐた・えりこ)な~んて河豚(ふぐ)女なんかが出てんのにねー。 あぁ~ぁ。 やってらんねぇょ、全く」

手元に置いてあったコップの水を一口飲んで、
大きく息を吸って、
みのもんちっちが叫んだ。

「チッキショー!! 何で俺が選挙出れねんだー!! こんちくしょー!! ふざけんなー!! 大ッ嫌いだ真っ赤な太陽なんてー!! 夕日のバカヤロー!! ガッデム!!」

って。。。

その時・・・

突然、
画面がコマーシャルに切り替わった。






不自然に。。。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #134 『一体何が?』の巻

#134 『一体何が?』の巻




「シ、シッカリなされよ、破瑠魔様!!」

大河内が地面に倒れこんでいる外道を抱き起こした。

「大河内さんか?」

「ハ、ハィ!! 大河内です。 (秀吉のいる方に振り向いて) 旦那様ー旦那様ー旦那様ー!! 破瑠魔様がー破瑠魔様がー破瑠魔様がー!!」

大河内が叫んだ。

「い、否、いい、私はいい!! あの人だ! あの人!! 早くあの人に輸血を!! 急いで!!」

大河内に抱き抱え(だ・き・かかえ)られながら、
外道が、たった今、蝦蟇法師が蘇生させた大男を指差してそう言った。
それからナナともう一人の番人が倒れている辺りを順次指差した。

「ナナさん、それから向こうで倒れている人の手当ても!!」

「ハ、ハィ!! 承知致しました」

大河内は後から駆け付けてきた家人達に命じた。

「オィ!! ナナお嬢様とあの二人を急いで不良(ぶら)先生の所へ運んでくれ!!」

その時、


(タタタタタタタタ・・・)


秀吉が小走りにやって来た。
そして外道に話し掛けた。

「オォー!? は、破瑠魔殿!? こ、これは・・・これは一体どうした事ですか? 一体何が?」

だが、
外道は何も答えようとはしなかった。
否、
答えられなかったのだ。






既に意識を失っていて。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #133 『足音』の巻

#133 『足音』の巻




(スゥ~)


外道の全身から力が抜けた。

そのまま、


(ドサッ!!)


地面に崩れ落ちた。

それと相前後して、


(ピカッ!!)


屋敷の明かりが点(とも)った。
庭の所々にある庭園燈も一緒に。

この屋敷にはどうやら補助電源が有った様だ。
誰かがそれを使ったのだろう。
目覚めた誰かが。
無間(むげん)の眠りから覚醒した誰かが。
蝦蟇法師の夢幻(むげん)の呪縛から解放された誰かが。


(ガヤガヤガヤガヤガヤ・・・)


人の話し声がする。

その声が徐々に大きくなる。
声の主がこっちに近づいて来る。

初めのうちは何を言っているのか分からなかった。
だが、
それも次第にハッキリして来た。

こう言っていた。

「ナナー!! 破瑠魔殿ー!!」

「ナナ様ー!! 破瑠魔様ー!!」

「ナナ様ー!! ナナお嬢様ー!!」

 ・・・

秀吉、大河内、使用人達の声だった。


(ドタドタドタドタドタ・・・)


足音が近づいて来る。
数人の足音が。

その内の一人が大声を上げた。

「オォー!? ナナ、ナナ!? こんな所にこんな所に!?」

秀吉だった。


(タタタタタタタタ・・・)


こっちに向かって誰か走って来る。


(ピタッ!!)


足音が止まった。
それと同時に、声が聞こえた。

「は、破瑠魔様!?」

と、恐怖と驚きの入り混じった声が。

その声の主は・・・






大河内だった。 











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #132 『風と共に・・・』の巻

#132 『風と共に・・・』の巻




「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・。 見よ、外道!!」

大男の元に辿(たど)り着いて荒い息で蝦蟇法師が言った。
続けて、

「これが証だ!!」

そう言うと蝦蟇法師は “あの” 不気味なベロをニュ~っと伸ばして大男の傷口を、
心臓を抉(えぐ)り取った時に出来たあの傷口を、


(ベロ~リ)


舐(な)めた。
大男の心臓は無駄だと思いつつも先程、外道が元有った所に戻してあった。

すると、


(ビクッ!!)


大男の体が大きく1回震えた。

死後硬直か?

その瞬間、
胸の傷が見る見る消え始めた。
そして、
直(す)ぐにそれは完全に消えてなくなった。

ホンの数秒で、
蝦蟇法師のたったの一舐めで、
それは完全に消えてなくなった。


(ズズズズズッ!!)


蝦蟇法師の首が地面を擦(こす)りながらユックリと回転して来た。
外道の方に向き直るために。
そして見えない目を見開いて外道を見た。
見えない目で外道を。

だが、
確かに目は見えなくなってはいたが、蝦蟇法師には外道が見えていた。
言葉なくジーっと自分を見つめている外道の姿が。
最早、
尊敬と表現しても過言でない万感の思いを胸に秘め、
ジーっと自分の行動の一部始終を見つめている外道の姿・・それが・・蝦蟇法師の見えない目に、ハッキリと見えていた。

「見たか? 外道」

蝦蟇法師が聞いた。

「あぁ、確かに」

外道が答えた。

「フッ」

満足そうな表情で蝦蟇法師がニッコリと微笑んだ。

そして、
静かにユックリと目を閉じた。
視力を失った両目を・・静かに・・ユックリと・・・。
その瞬間、
蝦蟇法師の動きが止まった。
呼吸も停止した。


(スゥ~~~)


生気が失せ始めた。


(スゥ~)


蝦蟇法師の顔から生気が・・・徐々に・・・消えて行く。


(スゥ~・・・スゥ・・・ス・・・)


終に、
それは完全に消えてなくなった。
この瞬間、
蝦蟇法師は事切(ことき)れたのだ。
外道に最後の攻撃を仕掛ける事無く。

ここを以って、
あの・・無敵の・・千年蝦蟇法師は死んだ。


(サッ!!)


無意識に外道は直立不動の姿勢を取った、事切れた蝦蟇法師の首に向かって。
指先をピンと伸ばした左手を体幹にピタっと付け、
こぶしを握った右手は胸に、心臓の位置に、付けている。
外道最強の敵、千年蝦蟇法師。
その “死” に対し、反射的に外道が見せた敬意の礼だった。

その時、


(ピュ~~~!!)


風だ!?

風が舞っている。

この風は、ただの風なのか?

それとも蝦蟇鼬(がまいたち)の・・・?

そして、


(スゥー)


静かに蝦蟇法師の首が消え始めた。
まるでその風に乗ったかの様に。

静かに・・・静かに、
ユックリと・・・ユックリと、
蝦蟇法師の首が消えて行く。

そのまま、
静かに静かに、
ユックリとユックリと、
蝦蟇法師の首が・・・

やがて、
蝦蟇法師の首は完全に消えてなくなった。
同時に、
あの大鎌も消え去った。
地面に突き刺さっていたあの大鎌も。
蝦蟇法師のアストラル体の一部から成っていたあの大鎌も。

蝦蟇法師は消えたのだ。
この世界から・・・完全に。

千年蝦蟇法師という恐るべき存在のいた事を知るたった一人の生き証人、
互いに全存在を懸けて死闘を演じたその相手、
今、自分に最高の敬意を表しているこの世でたった一人の友、
破瑠魔外道という類稀(たぐいまれ)なる技の使い手に見送られながら、
千年蝦蟇法師は今、この世界から完全に消え去った。

果たして蝦蟇法師はその最後のアストラル体を外道のアストラル体と交叉させたのであろうか?

それとも、
何もせず、
風と共に去ったのであろうか?

それを知る由はない。






全く・・・











つづく




おことわり:

あの~。

首だけの蝦蟇法師がどうやって呼吸を???

肺、ネェーじゃん!?

つー、突っ込みは・・・無し!!!

で!?

オネゲェー致しやす。。。

“構成上の効果”

と言ふヤツでオジャル。。。

ま!?

ふぃくしょんだしサ・・いいよネ・・こん位。。。 ( by コマル)





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #131 『執念?』の巻

#131 『執念?』の巻




(ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ・・・)


蝦蟇法師の首は、
巧みにベロを手足の代わりにして地を這っている。
目指すは血みどろになって倒れている井戸の番人の大男。

先ず、


(ベチャ)


ベロを伸ばして前面進行方向に投げ出し地面に付ける。

次に、


(ズルズルズル・・・)


先っぽを地面に付けたままベロを縮めて首を引っ張る。

そして、
もう一度ベロを伸ばし、それを縮める。

この繰り返しだ。


(ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ・・・)


蝦蟇法師が行く。
大男の元へ。
一度に1メートルずつ。

蝦蟇法師の顔が歪む。
苦しいのであろうか・・・?
蝦蟇法師の顔が苦痛に歪んでいる。

だが、
蝦蟇法師は行く。
大男の元へ。
外道に証を見せるために。


(ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ・・・)


「ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

蝦蟇法師の息が荒い。
苦痛の表情は更に険しさを増している。

しかし、
蝦蟇法師は止めない。

ナゼだ?

理由は分からないが蝦蟇法師は止めようとはしない。


(ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ベチャ。 ズルズルズル。 ・・・)


蝦蟇法師は行く。
大男の元へ。

外道に証を見せるために。
自分の後にユックリと付いて来ているであろう外道に交叉の証を見せるために。
他には何も考えず、唯それだけのために。

蝦蟇法師は行く。
大男の元へ。

蝦蟇法師、
最早、
執念・・・






か?











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #130 『交叉の証』の巻

#130 『交叉の証』の巻




「出来るのか? そんな事が・・・本当に?」

「あぁ。 出来る!! やった事はないがな」

「・・・」

「フン。 信じておらんな」

「信じられるわけなかろう、そんな事」

「だが出来るのだ。 もっとも、ワレとしても初めての経験だがな。 ・・・」

ここで蝦蟇法師が一旦黙った。
一呼吸置いた。
意を決するためにだ。
それから徐(おもむろ)に続けた。

「話が長くなった。 そろそろ終わりにしよう、こんな事は。 ワレのアストラル体が消え果てる前にな」

蝦蟇法師の首が唇を噛み締めた。
目ン玉をひん剥いた。
外道の蛇に突き破られ食い千切られた両目を。
僅(わず)かだがまだ血が滴り落ちている傷だらけの両目を。
そして声を振り絞った。

「外道!! 参る!!」

だがその時、

「待て!! 蝦蟇法師!!」

外道が蝦蟇法師を制した。

「ン!? 何だ!? 臆(おく)したか外道」

「あぁ、その通りだ。 最早今の俺に、お前の攻撃をかわす力は残ってはいない。 まともに喰らうのは必定だ。 だから・・・。 だからせめてその前に、お前の言うアストラル体の交叉とやらの証(あかし)が見たい」

「証~? 証だと~?」

「そうだ。 証だ。 交叉の証だ。 もしそんな事が出来るんならな。 ・・・」

「交叉の証かぁ・・・。 それは無理だ。 方法が分からん」

「そうか・・・」

一瞬、外道は考えた。
直ぐに、

『ン!?』

閃いた。
そして蝦蟇法師に聞いた。

「そう言えばさっきあの娘(むすめ)と合体した後、お前の通力で傷口を塞ぐとか何とか言っていたな。 本当か?」

「あぁ、本当だ」

「ならば・・・。 おぉ、そうだ!? あそこに横たわっている大男。 さっきお前が心臓を抉(えぐ)り取ったあの大男。 あの男を蘇生させてみろ。 出来るか? もしあの男を蘇生させる事が出来たら、そしたら信じてやろう」

外道が血塗(ちまみ)れになって倒れている井戸の番人を指差した。
最早、外道から全く殺気を感じなくなっていた所為(せい)であろうか?
驚いた事に蝦蟇法師が攻撃を思い止まり、この話に乗って来た。

「フン。 容易(たやす)い事。 良いだろう。 見せてやろう」

そう言うと、


(クンクン、クンクン、クンクン、クンクン、クンクン、・・・)


何やら臭いを嗅(か)ぎ始めた。

血だ!?

血の臭いを嗅いでいる。
蝦蟇法師は大男の血の臭いを嗅いでいる。
目の見えない蝦蟇法師はそれを頼りに大男の倒れている場所を確認している様だ。

場所が分かったのだろうか?

突然、

「ウォーーー!!!」

辺り一面を震撼させるあの大声を上げると、
蝦蟇法師の首が再び両目をひん剥いてフェンスから飛んだ。
大男の倒れている方に。

飛んだ方向は正確だった。


(ドサッ)


大男の足元14、5メートルの地点に着地した。






そして・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #129 『呪い』の巻

#129 『呪い』の巻




「お前の勝ちだな。 外道」

沈黙を破ったのは蝦蟇法師だった。

「・・・」

だが、
外道には返す言葉が見つからなかった。
まさかあの蝦蟇法師が素直に負けを認めるとは・・・。
だから、
黙っていた。

「お前は強かった・・・」

「・・・」

やはり外道は黙っていた。

しかし、
蝦蟇法師の次の台詞(せりふ)から思わぬ方向に会話が展開し始めた。
外道が思ってもみなかった方向に。

「だが外道よ。 ワレも千年蝦蟇法師。 一度はその称号を得た身。 このままムザムザやられる訳には行かヌ」

「ン!? どういう事だ?」

初めて外道が言葉を口にした。

「お前を道連れにするという事だ」

「どうやって?」

「呪(のろ)いだ」

「呪い?」

「そうだ、呪いだ」

「・・・?」

「知りたいか?」

「あぁ、知りたい」

「教えてやろう、こうだ。 ワレの命はもう長くはない、残念ながらな。 もはや我がアストラル体は消滅寸前だ。 だからワレが消滅する前に、ワレのこの残りのアストラル体をウヌのアストラル体と交叉(こうさ)させるのよ。 ウヌのアストラル体は強大だ。 遥かに人間離れしておる。 だから支配するのは難しい。 だが、さっきやった様にワレのこの残りのアストラル体をウヌのアストラル体の上に置く事は出来る。 そして、少しずつ少しずつ、確実に確実にウヌのアストラル体に入り込む」 

ここまで言って蝦蟇法師は言葉を切った。
外道の反応を見ているのだ。

「・・・」

外道は無言で聞いていた。
蝦蟇法師の言う意味が理解出来なかったからだ。

「これが何を意味するか分かるか?」

「否」

「フッ」

蝦蟇法師はチョッとだけ笑った。
そして続けた。

「つまり、やがてウヌとワレのアストラル体は融合して渾然一体(こんぜん・いったい)となる・・・と言う事よ」

『ハッ!?』

「分かったようだな」

「ウ~ム!?」

「そうだ。 それがどこになるかは分からんが。 ウヌの体は、ウヌの体の一部は間違いなくワレの意思に従う。 即ち、その一部はウヌの意思に従わないという事になる。 間違い無くな。 間違い無くそうなる」

『クッ!?』

一瞬、
外道の顔に困惑の表情が浮かんだ。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #128 『奇妙な感覚』の巻

#128 『奇妙な感覚』の巻




(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・。 ピタッ!!)


外道が止まった。


(ジィー)


フェンスに囲まれた古井戸を見ている。

その時、
声がした。

「外道か?」

大蝦蟇の声だ。


(サッ!!)


素早く外道が声のした方を向いた。

大蝦蟇の頭は井戸のフェンスの角に乗っていた。
こっち向きに。
若干、不安定だが直角のコーナーの上に巧い具合に乗っている。

偶然乗ったのであろうか?

それとも大蝦蟇の意志か?

勿論、
両目は潰れたままだ。

「あぁ」

外道が返事をした。

「ワレに止めを刺しに来たのか?」

一瞬、外道の口から

『そうだ』

という言葉が出掛かった。
だが、
躊躇(ためら)った。

「・・・」

外道は何も答えなかった。
否、
答えられなかったのだ。
胸の内に不思議な感覚が沸き起こっていて・・・素直に『そうだ』と言えない様な。

二人は無言のまま暫らく対峙した。


(ピュー)


二人の間にあるのは風。
風の音のみ。

外道と蝦蟇法師。
蝦蟇法師と外道。

いつしか二人の間には、
この戦いの中で奇妙な友情が芽生えていた。

確かに蝦蟇法師は残忍だった。
だがそれには、
それなりの理由もあった。
蝦蟇法師も生きなければならないという理由が。
死ぬ訳には行かないという理由が。
外道もそれは分かっていた。

加えて、
蝦蟇法師にはその残忍さを差し引いても尚、余りある何かがあった。
外道の心を惹きつける何かが。

それは、
蝦蟇法師の強さ・・・その圧倒的な強さだった。
その圧倒的な強さに、いつしか外道は一種の尊敬にも似た感情を抱く様になっていた。

そしてそれは蝦蟇法師も同じだった。
外道同様、蝦蟇法師も又、何度傷つき倒されても、その都度立ち上がり反撃して来る外道の並外れた精神力に敬意を抱いていた。

生か死か。
実力伯仲。
お互い全てを出し切った互角の勝負。
命を懸けた全力の戦い。

そのどちらが勝っても全く不思議でない戦いの中で生まれた奇妙な感覚。
その奇妙な感覚が生み出した一時(ひととき)の沈黙。

それが・・今・・だった。


(ピュー)


再び風の音。
一陣の風が舞う・・・二人の間に。


(ピュー)


しかし二人は、

「・・・」

「・・・」

無言のまま。






そして・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #127 『目指すは・・・』の巻

#127 『目指すは・・・』の巻




(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)


重たい足を引きずるように一歩一歩、ユックリユックリ歩く外道の姿があった。
目指すは例の古井戸。

気持ちは焦っている。
だが、
体が付いて来ない。

疲労困憊、満身創痍、エネルギーの枯渇、・・・

どれも今の外道には当てはまる。
それもピッタリ以上に。

しかし、
外道は休めない。
休みたくても休めない。
まだ首が、
大蝦蟇の首がまだ残っている。

その首を消し去るまでは、


(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)


外道は歩みを止められない。

一歩、
また一歩・・・と。

両腕はその重さに耐え切れずだらりと下がり、
脱力感からか?
力の入らない足を引きずりながら、
一歩、
そして・・・また一歩。

外道は古井戸へと向かう。
否、
古井戸付近に飛んだと思われる大蝦蟇の首を目指す。
勝利のために。
大蝦蟇に止めを刺すために。

今の外道のその歩く姿は、

ま・る・で、

ユニバーサル映画 『フランケンシュタイン( Frankenstein 1931 )』 において、
ボリス・カーロフ演ずる “モンスター” が、
山の中にあるフランケンシュタイン博士の研究室の中で、
コリン・クライブ演ずるフランケンシュタイン博士とエドワード・ヴァン・スローン演ずるワルドマン博士のいる前で、
初めて “前に” 歩いた時の様であった。
そぅ。
始めて・・前に・・1、2、3、歩・・と。


(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)


外道は行く。
古井戸に向かって。
大蝦蟇の首目指して。


(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)


外道は行く。
大蝦蟇に止めを刺すために。
大蝦蟇の最後を見届けるために。






(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #126 『地から沸き立つ陽炎の様に』の巻

#126 『地から沸き立つ陽炎の様に』の巻




(ゴゴゴゴゴゴ~~~!!)


空間が歪む。
外道の周りの空間が。
まるで地から沸き立つ真夏の陽炎(かげろう)の様に。


(グングングングングン~~~!!)


一回(ひとまわ)りも二回(ふたまわ)りも外道の体が大きくなって行く。
増幅されたエネルギーで。


(ビリビリビリビリビリ~~~!!)


大気が振動する。
外道の発する “気” に共振して。


(ビシビシビシビシビシ~~~!!)


やがて、
外道の発する気がその頂点に近づく。

そして、


(バリバリバリバリバリ~~~!!)


終に、
その頂点に達した。

その時、

「ひゃっぽ・じゃん・けん!! 哈(ハ)ーーー!!」

外道の鋭い気合が屋敷の庭に響き渡った。


(ピカッ!!)


瞬間、
外道の指先が光る。


(バチバチバチバチバチ~~~!!)


それは、
エネルギーの波に変わり指先から放たれる。
まるで稲妻の様に。

次に、


(ビキビキビキビキビキ~~~!!)


それは、
強大なうねりとなって地を這う様に進む。
まるで脈打つ高波の様に。

更に、


(バリバリバリバリバリ~~~!!)


それは、
凄まじい勢いでそのまま一直線に大蝦蟇へと向かう。
まるで獲物に襲い掛かるライオンの様に。

そして、


(ドッ、カ~~~ン!!)


ついについについに、

命中か!?

外道の百歩雀拳が首のない大蝦蟇に命中か!?

「良し!! 手応えは有った。 さっきとは違う」

外道が技を放ったそのままの格好で呟(つぶや)いた。


(モクモクモクモクモク・・・)


一面、
炸裂煙が舞い上がる。
エネルギー波の引き起こした炸裂煙が。
外道の百歩雀拳の炸裂煙が。


(シューシューシューシューシュー・・・)


外道の手から体から、
百歩雀拳を放った余韻が立ち上(のぼ)る。


(ヒューヒューヒューヒューヒュー・・・)


少しずつ炸裂煙が薄らいで行く。
まだ、
その炸裂煙の中の大蝦蟇の存在は分からない。


(ヒューヒューヒューヒューヒュー・・・)


炸裂煙は更に薄らいで行く。
それは、
前方の景色が薄ボンヤリと見えるまでに。

でも、
まだだ。

まだ、
大蝦蟇の存在は確認出来ない。


(ヒュー、ヒュ、ヒ)


終に、
炸裂煙が消えた。

そして・・・

そこに・・・

大蝦蟇の姿はない!!!

全く、ない!!!


百歩雀拳命中せりー!!!!!


やったぞ外道!!!

この世界から大蝦蟇の胴体は消えてなくなったぞー!!!






完全に。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #125 『ホンの数人であろうと数百万人であろうと』の巻

#125 『ホンの数人であろうと数百万人であろうと』の巻




そのシーンには誰もが言葉を失った。 (つまり、シーンとしていた。・・ナンチッテナンチッテ・・ケケケケケ)

もし、
この戦いを初めから見ている観衆がいたならば。
例えそれが、ホンの数人であろうと数百万人であろうと。

その時、そこで、その場所で・・・
誰しもが予想だにせぬ出来事が・・・
全く予期せぬ出来事が・・・
起こっていた。


(ガクン!!)


外道が飛び乗った衝撃で大鎌の軌道が変わった。
大蝦蟇が大鎌の柄に舌先を絡みつけようとした正にその時に。

『クッ!?』

大蝦蟇は焦った。
恐怖に顔が引き攣った。

『ま、まさか!?』

の、
外道の攻撃。

だが、
時既にお寿司。

次の瞬間、


(スパァー!!)


大蝦蟇の首が飛んだ。
大蝦蟇の首だけが飛んだ。
大蝦蟇の胴体から離れて首だけが飛んだ。
大鎌に切られたのだ。
外道が飛び乗った大鎌に。
大蝦蟇の大鎌に。


(ビューーーン!!)


大蝦蟇の首は、切られた時の衝撃で・・・か?
それとも自らの大鎌で顔を切られない様、避けようとして・・・か?
あるいは自らの意思で・・・か?
それは信じられない勢いで飛んで行く。
まるで 『平将門(たいらのまさかど)の首』 の様に。

飛んだ方角は井戸。

間違いない。
あの古井戸のある方角だ。


(ビューーーン!!)


大蝦蟇の首はあの古井戸目掛けて飛んで行く。

その時、


(ズサッ!!)


大蝦蟇の首を刎ねた大鎌が地面に突き刺さった。


(ドサッ。 ゴロンゴロンゴロンゴロンゴロン・・・)


その反動で外道が地面に投げ出された。
外道は慌てて起き上がり、


(ジィ~~~)


首の行方をしっかりと見定めた。

だが、
外道は後を追わない。
追おうとはしない。
まだやらなければならない事が有るからだ。
今しなければならない事が。
それがまだ残っているからだ。

目の前には首のない大蝦蟇がいる。
四つん這いのままで。
こっちを向いたままで。
首のない大蝦蟇が。

そして、
この大蝦蟇は普通の生命体とは違う。
蝦蟇法師のアストラル体の実体化した姿だ。

だから、
そんな事が出来るかどうかは全く分からないが、
もし、
あの首が戻って来て、
これに繋がるような事が有ったら、それこそ厄介だ。

“アストラル体の実体化”

これは外道にとって未知の領域。
何がどうなるのか全く掴(つか)めない。
大蝦蟇の完全復活が起こりうるという事も否定できない。
だから、
外道が真っ先にやるべき事は唯一つ、

“一つ一つ始末する”

それだけだった。


(ピクッピクッピクッピクッピクッ・・・)


首のない大蝦蟇が痙攣している。


(プシュー!! ドクドクドクドクドク・・・)


首から血が噴水の様に飛び散り、滴(したた)り落ちている。
真っ赤な血が。

見るに耐えない不気味さだ。
この気色の悪さを表現する言葉が見当たらない。
それ程だ。

もし今、
この光景を目撃する者がいたら、
その余りの気持ち悪さのため間違いなく全員顔を背ける事だろう。
たったの一人を除いて全員が。

そぅ。

たったの一人を除いて・・・

全員が・・・

そして、
そのたったの一人が呼吸法を始めている。
百歩雀拳の呼吸法を。
残っている気力、その全てを振り絞って。

出るか?

百歩雀拳!?






外道、渾身の・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #124 『外道最後の攻撃』の巻

#124 『外道最後の攻撃』の巻




(ニュ~~~)


戻って来た大鎌を大蝦蟇が、
長くて気持ちの悪~い “あの” ベロを伸ばして受け止めようとしている。
シュルシュルシュルっとベロの先を大鎌の柄に巻きつけようと伸ばしている。

その時、

「ジョヮッチ!!」

外道が大ジャンプして来た。

そして、


(ドン!!)


大鎌の刃の上に飛び乗った。


(ガクン!!)


瞬間、

大鎌の軌道が変わった。
外道のメタポッコリの体重分と飛び乗った時の衝撃分、それは下に下がったのだ。

これは大蝦蟇にとって予想外の出来事だった。
両目の潰れた大蝦蟇にとって・・・
既に両目の視力を失っている大蝦蟇にとって・・・






これは全く予想外の出来事だったのである。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #123 『妙案?』の巻

#123 『妙案?』の巻




(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌が迫って来る。
激しく空気を切り裂きながら。
大きくカーブを描きながら。

だが、
外道に焦りの様子はない。

それどころか、


(ジィ~~~)


大鎌の動きを見ている。
外道が大鎌の動きをジィーっと見ている。
それまで逃げ回ってばかりいた外道が。

どうした外道?

居直ったか?

それとも何か妙案でもあるのか?


(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


激しく回転しながら大鎌が外道の目前まで迫って来た。


(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


もうあと一回転で外道の首が飛ぶ。

その時、


(サッ!!)


外道が屈(かが)んだ。
それまでの様に地面に這いつくばらず、屈んだだけだ。
そしてこれを避けた。

この瞬間終に、外道は大鎌の動きを完全に見切った。

だが、それには前がある。
それまで、唯、逃げ回っていたのではなかったのだ・・・外道は。
大鎌をかわす度にそのタイミングを計っていた。
つまり、大鎌をかわしながらその軌跡と自身の身の置き所の間合いを計っていたのだ。
そして大鎌の軌跡を見切ったと確信した時、外道は捨て身の勝負に出たのだった。

“肉を切らせて骨を絶つ”

という捨て身の勝負に。

実は、
先程グラついた様に見えたのは、

“わざと”

だった。
外道はわざとグラついたのだ・・・二つの目的を持って。

自分の計った計算を試すために。
そぅ、大鎌の軌跡を見切った事を試すために。
そして大鎌が胸を掠(かす)めた時、その時外道はハッキリとその軌道を、大鎌の軌跡を見切った事を確信したのだった。
しかも体もそれに付いて行く事が出来た。
これが一つ目。

更に、
それが故意にで有るにせよ、何にせよ。
大鎌をその身に受けるという事は、同時に、今、外道のいる正確な位置を大蝦蟇が知るということを意味する。
とすれば、大蝦蟇は次も同じ軌跡で大鎌を投げつけて来る・・・筈。
言い換えれば、大蝦蟇は同じ攻撃をして来る・・・筈。
という事になる。
これが二つ目の目的。

そして外道の思惑通り、大蝦蟇は前回と殆んど同じ攻撃をして来た。
殆んど変わらぬ軌跡で大鎌が飛んで来たのだ・・・外道に向かって。

とすれば・・・

飛んで返る軌跡も殆んど同じ・・・筈。


(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌が外道の頭の僅か上を掠めて飛んで行く。

そして、
大蝦蟇の元へと返って行く。
大蝦蟇の頭上2メートルへと。

例によって、


(ニュー)


大蝦蟇が長くて気持ちの悪~い “あの” ベロを伸ばして大鎌を受け止めようとした。

だが、
正にその瞬間、

「キェーィ!!」

鋭い気合一閃(きあいいっせん)、


(シュッ!!)


外道が飛んだ。
大ジャンプだ。

度重なる念力技の使用に加え、
強力な蝦蟇法師の攻撃を受け続け、
最早エネルギーは尽き果て、
体力の限界に達している外道が信じられない大ジャンプを見せた。
歯を食いしばり、
残された気力の限りを尽くした大ジャンプを。

もう、外道に後はない。

これから外道が見せるであろう一連の攻撃は、
その全存在を賭けた、
命を懸けた、






外道、最後の攻撃である。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #122 『容赦なしの連続攻撃』の巻

#122 『容赦なしの連続攻撃』の巻




「どうした外道? 動いてみよ」

「・・・」

外道は無言のまま答えない。

「来ぬようだな。 ならばこっちから!!」

そう言うか言わない内に大蝦蟇は大鎌を吐き出し、


(グルン、グルン、グルン、グルン、グルン、・・・)


ベロを使って素早く回転させ始めた。
そして、


(ビヒューン!!)


外道がいるであろうと思われる方向へそれを投げ付けた。


(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌はブーメランの様に回転しながら・・カーブを描きながら・・外道に向かって飛んで来る。
しかも、
相変わらず狙いは正確だ。


(ササッ、サッ!!)


横に飛び、地面に身を伏せ、何とかそれをかわす外道。
だが、
動きが鈍い。

疲労のためか?

しかし、
外道の動きなどお構いなし。

大蝦蟇は攻撃の手を緩めない。
容赦(ようしゃ)なしだ。

三度(みたび)、これが始まった。
大鎌を投げ付けては受け止め、投げ付けては受け止め、の連続攻撃が。

その度に、


(ササッ、ササッ、ササッ、ササッ、ササッ、・・・)


ひたすら避け続ける外道。

だが、
何度目かの攻撃を受けた時、


(グラッ!!)


外道がバランスを崩した。
体勢が崩れ、チョッと天を仰(あお)ぐ形でのけぞった。

石にでもつまずいたのか?
それともワザとか?
何か考えでも有っての事か?

そこに大鎌が飛んで来た。
そして、


(パスッ!!)


終に、
大鎌が外道の体を掠(かす)めた。
僅(わず)かだが、
間違いなく外道の胸を掠めた。

「ヌッ!? そこかー!!」

大蝦蟇はそう言ったが速いか、
戻って来た大鎌を受け止め、
空かさず大鎌を外道目掛けて投げ付けた。


(グルン、グルン、グルン、・・・。 ビヒューン!!)


大鎌が外道を襲う。


(ブヮーン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌が外道目掛けて飛んで来る。
外道の首目掛けて飛んで来る。
狙いは正確だ。
避け切れなければ間違い無く首が飛ぶ。

どうする外道!?

これをどうする!?

果たして外道はこれを避け切れるのかー!?











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #121 『最後の攻撃?』の巻

#121 『最後の攻撃?』の巻




「目など見えずとも良い。 外道よ。 ワレには分かるぞ、ウヌの居場所がな。 ウヌの息づかい、体温、動く気配。 それら全てで確実にウヌの居所が分かるというものよ」

「・・・」

「どうだ外道。 動けまい」

『クッ!?』

「ここまでは良くやった。 褒(ほ)めてやろう。 だが、外道よ。 既にウヌは満身創痍(まんしんそうい)。 その上、切絵ナンタラの蛇も潰(つぶ)れてしまった今となっては・・・もう他に打つ手はあるまい」 

「・・・」

外道は何も言わない。
だが、
何もしていない訳ではない。
考えていたのだ。
次の一手を。

大蝦蟇の言う通り、既に外道は精(せい)も魂(こん)も尽き果てていた。
恐らく、
次の一手。
次の攻撃。
それが最後になるであろう。

外道はそれを良く承知していた。

大蝦蟇もそれを感じ取っていた。

次が・・・






外道最後の攻撃になるであろう事を。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #120 『逆襲』の巻

#120 『逆襲』の巻




「おのれおのれおのれ外道ー!! よくもよくもよくもこんな真似をー!!」

一頻(ひとしき)りのた打ち回ってから、元の様に座り直して大蝦蟇が怒鳴った。
全身に怒りのパワーが満ち満ちている。


(ビシビシビシビシビシ・・・)


それが周囲の空間を震撼させる。
凄まじいパワーだ。


ウ~ム。 蝦蟇法師恐るべし!?


だが、
大蝦蟇の両目からは真っ赤な血が滴(したた)り落ちている。
既に、
大蝦蟇の両目は使えない。

「だーから言ったろ~。 お前は惨(みじ)めにも、紙切れ一枚に敗れ去るんだ・・・とな」

相変わらず腕を組み、
スックと立ったまま外道が言った。

「クッ!? 抜(ぬ)かったわ」

大蝦蟇はもう落ち着きを取り戻している。
この辺りの立ち直りの速さは流石(さすが)だ。
伊達(だて)に千年生きてはいない。

更に、

「目など見えずとも、お前ゴトキ倒してくれるわー!! 喰らえー!!」

突然、そう叫んだかと思うと、


(ガバッ!!)


大蝦蟇が大口開けて大鎌を吐き出した。
それを、


(グルン、グルン、グルン、グルン、グルン、・・・)


巧みにベロを操って素早く頭上で何度か回転させた。
そして、


(ビヒューン!!)


外道に向かって投げ付けた。
否、
外道のいると思われる方に向かってだ。


(ブヮーン、シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


それは、
正確に外道に向かって飛んで来る。
信じられない程正確に。
視力を失ったのが嘘の様に。
これが蝦蟇法師の底力。
下等生物の持つ・・否・・下等生物だからこそ返って持ち合わせている能力。
人間には無い・・否・・仮に有ったとしても既に失われてしまった能力。
その名を “野生の本能” という。


『ウッ!?』

外道は驚いた。
その余りの正確さに。
だが、
感心している暇は無い。
これをかわさねばならない。
しかし後に飛んだのでは当たってしまう。

本能的に、


(バタッ!!)


外道は地面に平伏(ひれふ)してこれをかわした。


(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


激しい切り裂き音を上げて大鎌は、
大蝦蟇の元へと返って行く。
大鎌に実体化させたとは言え、
元々は蝦蟇法師のエネルギー体。
操るのは自在だ。

再びこの、


(グルン、グルン、グルン、グルン、グルン、・・・)

(ビヒューン!!)

(ブヮーン、シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


が始まった。
前と全く同じ様に。
まるでビデオテープでも見ているかの様に。
大蝦蟇が目を失ったのが嘘の様に。
唯一の違いは、外道の体を大鎌が掠(かす)らなくなった事だけだ。
やはり、大蝦蟇の目を奪ったのは正解だった。

暫しの間、これが何度か繰り返された。
その度に外道は前後左右に飛び回り、地面に身を伏せてこれをかわした。

そして最後の一投がそれまで同様、外道の体を僅かに外して飛んで行った。
それが同じ様に、


(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


激しい切り裂き音を上げて大蝦蟇の元へと返った。
しかし、今回は違った。


(ガブッ!!)


それを大蝦蟇が飲み込んだのだ。

そして・・・






こう言った。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #119 『油断』の巻

#119 『油断』の巻




『油断』
 と言う言葉がある。

“相手を見くびって気を緩める事”

“高(たか)を括(くく)って気を許す事”

“不注意”

等の意味だ。 




外道の切絵の蛇は不細工(ぶさいく)だった。
異様に頭がでかかった。
これには以下の二つの狙いがあった。

一つ目は、
外道は端(はな)っから大蝦蟇のただ一点のみを狙っていた。
それは “目” だ。
影留めも百歩雀拳も通用しない対大蝦蟇戦に勝機を見出すには、これしかないと判断したからだった。
念力技が効かない相手には力技で挑まなければならない。
だが、
力技で歯が立つような相手ではない・・・大蝦蟇は。
そのため外道は大蝦蟇の目を奪う事により、圧倒的に格上の相手を互角のレベルに引き下げ様としたのだ。
将棋で、下位の者でも飛車角抜きなら上位の者ともやり合えるのと同じ理屈だ。

もっとも、
セッカチな外道は、なかなか勝負の付かない将棋は好まなかったのだが。

しかし、
そんな外道でも、将棋に非常に良く似てはいるが比較的短時間で勝負の付くチェスは好きだった。
そしてチェス用語にこういうのがある。

『一点突破、全面展開』

これは、
序盤の布局が済んだ中盤以降に於(お)いて、いち早く相手の弱点を見出してそこを突き、一気呵成に畳み掛ける。
という様な事を意味する。

外道はこれに倣(なら)った。
即ち、
目を潰す・・・これが一点突破。
その結果互角の戦いに持ち込み、倒す・・・これが全面展開。

そのためには、
蛇の “牙” は出来るだけ大きくなければならなかった。
だから、
必然的に頭がでかくなってしまった。
しかもお結び型。
つまり毒蛇。
それも強毒性。
普通の人間ならこれに噛まれたら一溜まりも無い。
生命の危機・・・命が無い。
もっとも人間よりも遥かに強い生命力を持ち、実体化してはいたが基本的にシンプルな肉体構成の蝦蟇、それも毒蛇に比べて巨大な蝦蟇には残念ながらこの蛇の毒は余り効果は無かったが。

二つ目は、
こっちの方が今回の戦術上より重要なのだが、
蛇を敢(あ)えて不細工に見せる必要があった。

ナゼか?

それは、
大蝦蟇の油断を誘うため。

加えて、
最初、この蛇はトグロを巻いていた。

ナゼか?

簡単だ。

この蛇はA4版の白紙を切った物だった。
このサイズの紙に普通に蛇を切ると長さを取れない。
だが、
狙いは身の丈3メートルの大蝦蟇。
だから、
長さを増すために、外道は敢(あ)えてトグロを巻いた蛇を切ったのだ。

しかし、
トグロの理由はそれだけではなかった。

蛇にトグロを巻かせた真の理由。

それは、
“大蝦蟇にこの蛇の尻尾を見られたくなかった”
からだ。

つまり、
この蛇がその頭部のみならずにもう一つ。

そぅ。

もう一つ尾部にも頭(こうべ)を持つ蛇、
即ち、
常山両頭の蛇である事を外道は大蝦蟇に知られたくなかったのだ。

結果は、
外道の目論見(もくろみ)通りになった。
相手は、
千年と言う永きを生き抜いてきた強(したた)かな千年蝦蟇法師。
一筋縄(ひとすじなわ)で行くような相手ではない。

だが、
流石(さすが)の蝦蟇法師も、切絵の蛇の不細工さについ “ゆ・だ・ん” してしまった。
加えて、
散々外道の心理戦に揺さ振られ、冷静さを失っていた。
そのため、
後先(あとさき)考える事なく、襲ってきた蛇を安易に一刀のもとに両断してしまったのだ。
つまり、
まんまと外道の策に嵌(はま)ってしまったという訳だ。

正に、
孫子の兵法 『兵は詭道なり』 【戦(いくさ)と言うものは、如何(いか)に相手の裏をかき欺(あざむ)くか】 を地(ぢ)で行(ゆ)く、
外道、会心(かいしん)の・・・






タクティクス(戦術・駆け引き)だった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #118 『常山の蛇』の巻

#118 『常山の蛇』の巻




解説しよう。


“孫子 九地篇第十一” には、以下の件(くだり)がある。

即ち、

『故善用兵者 譬如率然 率然者常山之蛇也 撃其首則尾至 撃其尾則首至 撃其中則首尾倶至 ・・・』

『故(ゆえ)に善(よ)く兵(へい)を用(おこ)なうとは、 譬(たと)えば率然(そつぜん)の如(ごと)し。 率然とは常山(じょうざん)の蛇(へび)なり。 其(そ)の首(しゅ)を撃(う)たば則(すなわ)ち尾至(び・いた)り、 其の尾を撃たば則ち首至り、其の中(ちゅう)を撃たば則ち首尾倶(しゅ・び・とも)に至る。 ・・・』

『故に、戦(いくさ)の際(さい)の上手な兵(へい)の動かし方と言うのは、率然に譬えられよう。 率然と言うのは常山に住んでいたとされる “両頭の蛇” の事である。 この蛇はその頭(こうべ)が攻撃されると即座にその尻尾(しっぽ)が襲って来る。 又、その尻尾が攻撃されると即座にその頭が襲って来る。 更に、その腹を攻撃するとその頭と尻尾が同時に襲って来る。 ・・・』


(注)

常山とは・・・

支那(シナ=現在のユーラシア大陸の一部)五岳、
即ち、

東岳泰山(とうがく・たいざん)
中岳崇山(ちゅうがく・すうざん)
南岳衡山(なんがく・こうざん)
西岳華山(せいがく・かざん)
北岳常山(ほくがく・じょうざん)

の一つ、
支那河北省曲陽県にある北岳常山の事である。




以下は余談だが・・・

聞く所によると、

今、
中国では深刻な環境汚染並びに破壊が進み、

日々、
数々の奇形生物が誕生しているそうだ。
(この中には人間も含まれている)

http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2523.html (ショッキング ア~ンド Hな画像注意 : 以下 同)
http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2562.html
http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2556.html
http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2553.html
http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2545.html
http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2542.html

etc.etc.etc.etc.etc.・・・


ひょっとすると近い将来、
頭部・尾部共に頭を持つ常山両頭の蛇の出現も有るかも知れない。

現に・・・

浙江省で両頭のヤモリ : http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2522.html

四川省で双頭の牛 : http://chiquita.blog17.fc2.com/blog-entry-2580.html

etc.etc.etc.etc.etc.・・・

が発見されているそうだ。


【オススメ and 参考ブログ】

『 HEAVEN 』 さん : http://chiquita.blog17.fc2.com/











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #117 『雷鳴の様な悲鳴』の巻

#117 『雷鳴の様な悲鳴』の巻




(ギン!!)


大蝦蟇は怒りに任せて蛇に視線を向けた。

その瞬間、


(シュッ!!)


外道の足元付近(あしもと・ふきん)から何かが飛んだ。

“何か” が・・・

・・・・・・・・・・確かに。

しかし、
怒りの余り冷静さを失っている大蝦蟇はそれに気付かなかった。
そして、
親指の働きをしている指先を食い千切(ちぎ)られた手で掴(つか)んでいる蛇を、握り潰そうと力を入れた。

その時、


(ヒュー!!)


空気を切り裂く鋭い音が聞こえた。
慌てて大蝦蟇が音のする方に目を向けた。

そして、

『ハッ!?』

仰天した。

大蝦蟇の右目目前(みぎめ・もくぜん)に何かが迫っていた。
それは、
既に、目の前30センチにまで接近している。
反射的に大蝦蟇は掴んでいた蛇を投げ出し、
両手を上げ、
それを叩き落そうとした。

だが、
一瞬遅かった。


(ズボッ!!)


大蝦蟇の目に。
大蝦蟇の右目に。
それは突き刺さった。

それは何か?

勿論、白蛇の下半分。
外道の蛇の尻尾だったのだ、それは。

「グギャー!!」

一声、
凄まじい雷鳴(らいめい)の様な悲鳴を上げ、
両手で右目に突き刺さっている蛇を引き抜き、


(グチャ!!)


それを一気に握り潰(つぶ)した。

その時、

「シャー!!」

今度は、
今、投げ出された蛇の上半分が鋭い威嚇音(いかくおん)を上げ、再び大口を開けて大蝦蟇に襲い掛かった。
大蝦蟇は握り潰した蛇の下半分を握ったまま威嚇音のする方に振り向いた。

だが、
その瞬間。


(ガブッ!!)


それは大蝦蟇の左目にかぶりついた。
そして、


(ブチッ!!)


大蝦蟇の左目を食いちぎった。

「グギャー!!」

地面にもんどり打つ大蝦蟇。
両手で両目を覆っている。

大蝦蟇は、

「ヒグァーーー!!!」

凄まじい悲鳴を上げながら、


(ゴロンゴロン、ゴロンゴロン、ゴロンゴロン、・・・)


地面の上を転(ころ)げ回っている。


(ドドドドドドドド・・・)


その度(たび)に地響きがする。
否、
地鳴りと言ったほうが良いか?

この時、


(ブチッ!!)


蛇の頭が潰れた。
転げ回る大蝦蟇の下敷きになったのだ。

しかし大蝦蟇はまだ、

「グギャー!!」

悲鳴を上げ続けている。
大地を転げ回っている。

そして今、
辺りには誰もいない。
これの目撃者は誰もいない。
外道の他には誰も。

ただ一人・・・外道のみ。
外道のみが、冷静にこの一部始終(いちぶしじゅう)を見ているだけだった。
仁王立ちした外道が、腕組みをしたまま全く動こうとはせず。

その光景を、ただジッと見つめている・・・






だけだった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #116 『悲鳴』の巻

#116 『悲鳴』の巻




「グギァ~~~!!」

大蝦蟇が大声で悲鳴を上げた。
その大声は辺り一面に轟き渡(とどろ・き・わた)った。

そして、


(ドドドドドド・・・)


大地を揺るがせた。
まるで大地震だ。

その凄まじさは宛(さなが)ら、
“ GIBSON のベースギター THUNDER BIRD ” の一弦を “ Marshall の 200W ベースアンプ Model:5522” に繋(つな)ぎ、
ボリューム全開で目一杯チョッパーした時の様であった。




解説しよう。


チョッパーとは?

別名 『スラップ』 と言い、弦をひっぱたいて音を出すエレクトリック・ベースギター奏法の事である。

その演奏法は、

基本的に、

1.親指で弦を垂直に振動させる様にタタク。
 手首には力を入れず、団扇(うちわ)で扇(あお)ぐカンジ。
 力加減としては、弦の反動で親指が跳ね返されない程度。
 
2. 右手の人差し指を鉤状(かぎじょう)に曲げ、弦を垂直に振動させる様に引っ張る。
 
この2つの組み合わせが基本・・・らスい。




(ガブッ!!)


蛇が、自分を握っている大蝦蟇の左前足の親指の働きをしている一番上の指に噛み付いた。
さらに、


(ブチッ!!)


その指を食いちぎったのだ。
大蝦蟇の柔らかい指が災(わざわ)いして、
それは簡単に食いちぎられてしまった。

そして、

「ペッ!!」

蛇は食いちぎった指を吐き捨て、

「シァー!!」

鋭い威嚇音を上げ、
大蝦蟇に握られながらも逆に襲い掛かろうとしていた。


(ギン!!)


顔面に怒りを露(あらわ)にして大蝦蟇が握っている蛇を睨み付けた。
そして、
そのまま握り潰そうとした。

だがその時! その時だ!!

もし・・・
この場所が古代ローマの “殺せ有無” 否 “コロセウム(Colosseum)” だったとして、
超満員の観衆がいて、
この戦(たたか)いを観戦していて、
それまでこの攻防に大声援を上げていたとする。
まるでハリウッド映画 『ベンハー』 や 『グラディエーター』 の戦いのシーンの様に。

その大観衆が、
一瞬、シーンと静まり返るであろう。

と、

思われる出来事が・・・






起こった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #115 『四本指の前足で』の巻

#115 『四本指の前足で』の巻




「シャー!!」

鋭い威嚇音を発しながら、
さっきの白蛇が空から舞い降りて来ていたのだ。

本来、一刀両断された片割れが外道の足元付近に落ちた以上、もう片方も例え飛んだとしても落下までにこれ程の時間を要する訳はない。
この様な事は起こりえない筈。
しかしそれは起こった。

ナゼか?

実はこれも外道の “手” だったのだ。
というのも、この蛇は普通の蛇ではない。
外道分身の蛇。
つまり、外道の意志で動かす事が出来る。
否、
正確には外道の “念” で動いている。
念で動かしている以上、外道は切断された頭部と尾部を自在に操る事が出来る。
そして蛇の頭部と尾部の落下時間差を設ける事により、蝦蟇法師の蛇の頭部への注意力を削いだのだ。
これ程の時間差が有れば、さしもの蝦蟇法師と言えども流石に蛇の頭部が空中高く飛んでいた等とは思いもしなかった。
どこかその辺に転がった位にしか思っていなかったのだ、大いに油断して深く考える事無く、反射的にアッサリと一刀両断してしまったあの時の蝦蟇法師なら。
そして外道が蝦蟇法師を二度言葉で制したのは、この蛇の落ちて来るタイミングを見計らっての事だった。

加えて、
蝦蟇法師をおちょくり回したのも又、外道の策略であり、蝦蟇法師の平静さを失わせるためだった。
まんまとその策に嵌(はま)り、外道の思惑通りに蝦蟇法師は頭に血が上ってしまった。
これは、蝦蟇法師がこれから起こるであろう出来事に対し、冷静さを失ったまま当らなければならない事を意味している。
つまり外道はこの点でも蝦蟇法師を上回っていた。
仕掛けた心理戦にも外道は勝利していたのである。




「シャー!!」

バッサリと胴体を切られた蛇が、
大蝦蟇目掛けて舞い降りて来る。
上半分だけの外道の蛇が、
大蝦蟇の顔目掛けて舞い降りて来る。

否、

顔じゃない!?

目だ!?

大蝦蟇の目だ!?

蛇は大蝦蟇の目を狙っているぞー!!!


「シャー!!」

猛然と白蛇が大蝦蟇の左目に襲い掛かった。

蛙のベロのスピードは速い。
だから、
ベロを使えばこんな物は簡単に振り払える。

だが、
今大蝦蟇のベロは口の中だ。
そして、
皮肉にも実体化した大鎌がその上に乗っている。
だから、
ベロが上手く使えない。
だからベロで対処出来ない。

大蝦蟇は急いで上体を起こして両前足を振り上げた。
四本指の前足を。
その前足で蛇を振り払う心算(つもり)だ。

「シャー!!」

蛇はもう目前に迫っている。


(ブヮーン!! ブヮーン!! ブヮーン!! ・・・)


大蝦蟇は急いで両前足を振り回した。
その動きは大柄な図体からは想像出来ない程素早い。


(ブヮーン!!)


そして、
左前足が蛇に掛かった。
そのまま、
掴(つか)もうとした。

その時、


(シュッ!!)


蛇が体をくねらせた。

そして、


(スッ!!)


そのまま身を捩(よじ)って大蝦蟇の手をかわした。

だが、


(サッ!!)


大蝦蟇が素早く手首を返した。
イキナリ180度手首を回転させたのだ。
蛙の手首の軟らかさのなせる技だ。


(ガシッ!!)


終に、
大蝦蟇が蛇を掴まえた。


(ギュ!!)


4本ある指のうちの一番上の指を親指のように巻きつけて、
蛇の頭(こうべ)から頭(あたま)二つ分下を握っている。
その柔らかい手で確(しっか)りと。

そして、

「ニヤッ」

目線を下げ、
外道を見下ろし、
勝ち誇った様子で薄ら笑いを浮かべた。

しかし、

その時・・・






その時突然・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #114 『目の前の・・・』の巻

#114 『目の前の・・・』の巻




大蝦蟇の視線は、外道の右手人差し指に向けられていた。

その指は・・外道の指は・・外道の右手人差し指は、
天を指差すためにユックリと・・ユックリと・・ユックリと・・・
上がって行く。

それに連れて大蝦蟇の顔もユックリユックリユックリ上向きになった。
当然、
目も天を見る事になる。

そして、
外道の人差し指が頂点を差した時。

『ヌッ!?』

大蝦蟇は目を見張った。

それと同時に、

『ギョッ!?』

かつてない驚きを味わった。

目にした真実。

目前の事実に。

瞬間、

大蝦蟇の顔が恐怖に引き攣(つ)った。
目の前の現実に・・・






驚愕して。。。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #113 『天を指差すために』の巻

#113 『天を指差すために』の巻




「待て! 蝦蟇法師!! 今からお前に兵法を教えてやる!!」

『ヌッ!?』

大蝦蟇は大鎌を吐くのを思い止まった。
これで二度目だ。
それから聞き返した。

「兵法~!? 兵法だ~?」

「あぁ。 そうだ! 兵法だ!! お前の好きな孫子の兵法だ!!」

「フン。 孫子の兵法などお前に聞かずとも分かっておるゎ」

「いいや。 お前は分かっちゃいない。 な~んにも分かっちゃいない」

「ナーニ~? な~んにも分かっちゃいない~? な~んにも分かっちゃいないだと~?」

「あぁ、そうだ」

「ならば聞いてやる。 お前の講釈とやらをな。 だから早く言え」

「そう焦らずとも言ってやる」

「・・・」

「オィ! 蝦蟇法師!!」

「チッ!!」

大蝦蟇が舌打ちをした。
いい加減イライラしている。

そして、
半分怒鳴る様に聞き返した。

「エ~ィ! 何だ!?」

そんな様子など全くお構いなしに外道が続けた。

「孫子 『九地篇』 を思い出して見ろ」

「孫子~? 孫子 『九地篇』 だ~?」

「あぁ、そうだ!! 孫子 『九地篇第十一』 だ!!」

『九地篇第十一? ・・・』

大蝦蟇はチョッと考えた。
何が書かれてあったか思い出している様だった。

そして、
一瞬、顔色が変わった。

『ハッ!? ま、まさか!?』

その変化をハッキリと見て取って、
余裕のヨッチャンこいて外道が言った。

「フッ。 どうやら分かった様だな蝦蟇法師。 そうだ! その通りだ!! あの蛇は・・・。 あの蛇はな~、蝦蟇法師。 初めっからお前に切らせる心算(つもり)だったんだよ」

そう言って、
外道はニャッっと笑った。

それから、
ユックリと右腕を上げ始めた。

人差し指を伸ばして。
他は握って、人差し指だけを伸ばして。

ユックリと・・・

ユックリと・・・

ユックリと・・・

 ・・・






天を指差すために。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #112 『二枚目の・・・』の巻

#112 『二枚目の・・・』の巻




「待て!! 蝦蟇法師!!」

外道が言った。

「話は最後まで聞け!!」

そう、もう一言(ひとこと)続けた。

「フン。 話~!? 話だ~? まだ何かあるのか?」

大鎌を吐き出すのを止めて大蝦蟇が聞いた。

「あぁ、ある」

「なら、言ってみろ。 だが、これが最後だ。 いいな。 これが最後だ」

「あぁ。 そう来なくっちゃな。 やっぱ、最後は二枚目の台詞(せりふ)で決めたいもんな~。 二枚目の台詞で」

「フン。 誰が二枚目だ」

「俺に決まってるだろぅ」

「茶化すのは止めろ。 言いたい事があるのなら早く言え」

「まぁ、そう慌(あわ)てるな」

「良(い)いから早く言え!!」

大蝦蟇が怒鳴った。

「チッ。 気の短い奴だ。 良いだろう。 言ってやろう。 オィ! 蝦蟇法師!!」

「何だ?」

「お前の敗因はな~。 お前の敗因は・・・」

「エ~ィ!? 又それか!? もう良(よ)い! 聞き飽きた!!」

大蝦蟇が大口を開け様とした。
大鎌を吐くために。
だが、
その前に外道が言い放った。

「否、良くない!! 最後まで言わせろ!! お前の敗因はナァ~、蝦蟇法師。 ヤッパリお前は蝦蟇だった・・・だ!!」

「いい加減にしろー!!」

怒りに狂った大蝦蟇が大鎌を吐こうととうとう大口を開けた。

だが・・・






再び、外道が言葉でそれを制した。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #111 『勝者が敗者に・・・』の巻

#111 『勝者が敗者に・・・』の巻




(ニャッ)


外道が笑った。
勝ち誇った様に。

今、外道は・・・

スックと立ち、
両腕を組み、
顎を上げ、
下目使いで、
大蝦蟇を見下(みお)ろし見下(みくだ)している。
自分より遥かに大きい相手の、
座った状態で3メートルもある大蝦蟇を、
1メートル75センチの外道が、
バッチリ見下ろし見下している。

「な、何の真似(まね)だ!? それは?」

大蝦蟇が聞いた。

「分からないのか?」

外道が答えた。

「あぁ、分からん、何だ?」

再び大蝦蟇が聞いた。

「この俺の姿を見て・・・本当に? ン!?」

外道がチョッと茶化した。

「だから何だ?」

大蝦蟇は苛(いら)ついている。

「蝦蟇には無理か。 やはり蝦蟇には分からない様だな」

「クッ。 さっきから聞いておれば蝦蟇蝦蟇とー。 ナメくされおってぇ」

大蝦蟇が怒り心頭に発して言った。
その姿を楽しむ様に半分ニタニタ笑ながら外道が言い返した。

「オィ! 蝦蟇法師!! 人間様の世界ではな。 こうやって腕を組み、下目使いで見下して相手を見るのはな。 勝者が敗者に対する時の態度なんだよ。 良~く覚えておけ」

「なーに~? 勝者が敗者に~? 勝者が敗者にだと~?」

「あぁ、そうだ」

「誰が勝者だ?」

「決まってるだろ~、俺に」

「フン。 世迷(よまよ)い事を。 もう良い。 茶番はここまでだ。 食らえ外道!!」

そう言ったかと思うと、
大蝦蟇が大蝦蟇口を開けて大鎌を吐き出そうとした。

だが、






その時・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #110 『答えよ! 外道!!』の巻

#110 『答えよ! 外道!!』の巻




『ヌッ!?』

大蝦蟇はチョッと驚いた。
外道の姿に。
そして聞いた。

「それは何だ?」

「・・・」

だが、
外道は答えない。

もう一度大蝦蟇が聞いた。

「それは何かと聞いておる」

「・・・」

やはり外道は答えない。

痺(しびれ)れを切らせて、
大蝦蟇が怒鳴った。

「それは何の真似(まね)かと聞いておる!! 答えよ! 外道!!」


(ビシビシビシビシビシ・・・)


その声量の凄まじさに、その辺り一面が振動した。
まるで一寸した地震だ。

だが、

「・・・」

相変わらず外道は答えようとはしない。






だが、不意に・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #109 『一刀両断』の巻

#109 『一刀両断』の巻




(シュルシュルシュル・・・!! ビヒューン!!)


切絵の蛇が、
外道の蛇が、
外道の分身の白蛇(はくじゃ)が飛んで行く。
素早く身をくねらせながら大蝦蟇に向かって飛んで行く。

「シャー!!」

それは、
鋭い威嚇音を上げ、
宙を飛び、
大蝦蟇目掛けて突進する。

しかし、

「シャー!!」

今、
正に外道の蛇が大口を開け、
大蝦蟇に襲い掛かろうと牙をむいたその瞬間。


(スパー!!)


一瞬にして、
一刀両断だ。
大蝦蟇の大鎌で、
大蝦蟇が口から吐き出した大鎌で、
一刀両断だ。


(パカッ!!)


蛇は真っ二つ。
上半身は勢い余って大きく宙を舞い、
下半身は、


(ドサッ!!)


地に落ちた。
外道の足元近くに。

それは、
呆気(あっけ)なく片が付いた。
余りにも呆気なく。

これぞ正に逆剋である。

大蝦蟇は、
再び大鎌を飲み込んだ。
そして笑いながら言った。
その重低音の声で辺りを震撼させながら。

「フッ、フ、フフフフフフ。 ウッ、ハ、ハハハハハハ。 ウ、ヮハハハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ。 笑止(しょうし)!! 外道よ これは一体何の冗談だ。 ン? その切絵ナンタラとは、こんな茶番だったのか? 大仰(おおぎょう)な名前の割には何とせこい技よのぅ。 フッ、フ、フフフフフフ。 ウッ、ハ、ハハハハハハ。 ウ、ヮハハハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ」

一わたり笑い終えてから、


(ギロッ!!)


大蝦蟇が外道を睨み付けた。

そして、
大蝦蟇のその眼(め)には、

『外道よ。 愈々引導(いよいよ・いんどう)を渡してくれようぞ』

ハッキリとそう出ていた。






だが・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #108 『逆剋』の巻

#108 『逆剋』の巻




『逆剋』 と言う言葉がある。




解説しよう。


方術家(ほうじゅつか)は言う。

「世(ヨ)ニ “五行(ゴギョウ)” ト言フ概念アリ」 と。

即ち、

“木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)” 是(これ)なり。


又、言う。

「相生(ソウショウ)、相剋(ソウコク) ナル考ヘアリ」 と。

即ち、

『木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を・・・夫々(それぞれ)生じる』

これを相生(そうしょう)といい、

『木は土を、土は水を、水は火を、火は金を、金は木を・・・夫々(それぞれ)剋(こく)す』

これを相剋(そうこく)という。


以上が相生・相剋の一般的概念だ。

今回。
相生は捨て、
相剋のみを見る。

剋の関係は、
剋す側の力量が剋される側と比較した時に同等もしくはそれ以上。
あるいは、
仮に劣ったとしても多少と看做(みな)せる場合に於(お)いて成立する。

だが、
剋す側が本来剋される側よりも圧倒的に劣っている。
即ち、
剋される側の力量が剋す側を遥かに上回る。
というケースも存在する。

この場合、

『本来、剋す筈の物が剋され、剋される筈の物が剋す』

という事になる。

これを・・・






逆剋と言う。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #107 『切絵生動』の巻

#107 『切絵生動』の巻




「ウ~ム!! 念法! 切絵生動(きりえ・せいどう)!! 哈(ハ)ーーー!!」 

大蝦蟇が大鎌を投げ付けようとしたその瞬間。
一瞬早く、外道が仕掛けた。




解説しよう。


切絵生動とは・・・

切った紙絵に外道の念を込める事によりその2次元の切絵を3次元の立体に変え、
且(かつ)、
それに生命を与える。

これが・・・・・・切絵生動である。

影留めの五寸釘のチッチャイ外道同様、
切絵を外道の “分身化” する技だ。

但し、
分身化すると言っても、姿形(すがたかたち)は外道とはならず “切った物” その物になる。
そこが、
チッチャイ外道とは違う。
技の原理は同様なのだが。




(ビヒュ~~~ン!!)


切絵の蛇が、
外道の分身の蛇が、
A4版の白い紙に切った白蛇(はくじゃ)が、
切った時には巻いていたトグロを解いて、外道の手から離れて飛んで行く。
大蝦蟇目掛(おおがま・めが)けて飛んで行く。

A4サイズの紙に切った蛇とはいえ、
トグロを解くとその長さは1メートル程になった。

しかし、
大蝦蟇は座った状態で3メートル。

勝負は見えていた。
誰の目にも・・・明らかに。

本来、
“蛇 対 蛙”
の戦いなら、圧倒的に蛇有利。

だが、
これだけサイズが違えば、
いくら蛇とはいえ蛙には勝てない。

勝負は見えていたのだ・・・






初めから。









つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #106 『この一撃』の巻

#106 『この一撃』の巻




「フン。 下らん。 詰(つ)まらん見世物(みせもの)に時間の無駄をした。 お前にはガッカリだ、外道。 もう良い。 もう、こんな茶番(ちゃばん)は終わりにしてくれようぞ」

そう言うと、


(ニュ~~~)


再び、大蝦蟇は大蝦蟇口を開け、
長~~~いベロを巻きつけた大鎌を吐き出した。

そして、


(グルングルングルングルングルン・・・・・・)


その大鎌を頭上で回転させ始めた。


(ギロッ)


大蝦蟇が外道に一瞥(いちべつ)をくれた。
見たのは・・・首だ!?

大蝦蟇が外道の首を見た。
狙いを戻したのだ。
外道の首に。

本気だ!?

大蝦蟇はこの一撃で決着を付ける心算(つもり)だ。
それが眼(め)に、
大蝦蟇の眼に出ている。

『この一撃。 この一撃でお前の首を飛ばしてやる』

ハッキリと “そう” 大蝦蟇の眼は告げていた。

『この一撃で決着を付けてやる』

大蝦蟇の眼はハッキリとそうも告げていた。

だが、






その時・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #105 『蛇』の巻

#105 『蛇』の巻




「フッ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ。 何だ、それは? 何の心算(つもり)だ? フッ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ」

大蝦蟇が呆れ果てたと言う表情で腹を抱え、
大笑いしながらそう言った。
外道が切り終えた紙を見て。

それは切絵(きりえ)だった。

そしてその切絵は・・・トグロを巻いた蛇だった。
外道は切絵の輪郭をハサミで切り抜き、たった今、大蝦蟇の大鎌に切られた傷口から滲(にじ)み出ている自らの鮮血をハサミの先に着け、それでその切絵の蛇の目や鼻の穴それにトグロを巻いた部分など、手を加えなければならない所を巧みに書き込んでいた。
しかもそれをホンの数秒で。

だが、
その切絵の蛇は頭が異様にデカかった。
その為、
見ようによっては巻きグソに乗ったオムスビに見えなくもなかった。
否、
そう見えた。

それが、
大蝦蟇には滑稽(こっけい)だったのだ。

しかし、
外道は真顔(まがお)だ。

否、
その表情には余裕さえ伺(うかが)える。
まるで、
勝利を確信してでもいるかの様な。

どっから来るんだこの自信は?

一体どっから?

外道念法秘奥儀 “切絵生動(きりえ・せいどう)”。

果たして・・・

ハッタリや・・・






否(いな)や?











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #104 『秘奥儀』の巻

#104 『秘奥儀』の巻




「蝦蟇法師よ。 良~く見るが良(い)い。 我が念法を。 我が外道念法秘奥儀(げどう・ねんぽう・ひおうぎ) “切絵生動(きりえ・せいどう)” を」


(ワクワクワクワクワク・・・)


相変わらずのワクワク感丸出しで蝦蟇法師が聞いた。

「ホゥ。 秘奥儀・・・切絵生動!? とな」

「あぁ。 そうだ。 秘奥儀・切絵生動だ」

そう言うと外道は、
手にした紙を縦にしてハサミを入れた。
そして何かを切り始めた。
それも素早く。
まるで寄席の高座で見る 『紙切り』 の様な手付きで。
それも、目にも留まらぬ速さで。


(ワクワクワクワクワク・・・)


大蝦蟇は何が起こるのか期待しながら外道を見つめている。
不気味な姿で。
不気味なワクワク感丸出しの姿で。

だが、

そんな事にはお構いなし。


(チョキ、チョキ、チョキ、チョキ、チョキ、・・・)


外道は、無心で何かを切り上げた。

何かを・・・






一気に。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #103 『そんなせこい』の巻

#103 『そんなせこい』の巻




「フッ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ。 何かと思えばハサミに紙切れ一枚か。 外道よ。 気でも違ったのか? そんな物で何をする気だ? ン? そんな物で? そんな物でワレを倒す気か? 倒せるとでも思っておるのか、ワレを? そんなせこいハサミと紙切れ一枚で。 ン? フッ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ウ、ヮハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ」

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・。 あぁ。 思っているさ。 お前はこのせこいハサミと紙切れ一枚に敗れ去るんだ。 惨(みじ)めにもな。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

外道が内ポケットから取り出した物。
それは、
小さな手のひらサイズのハサミと一枚の紙だった。

紙の大きさは、四つ折にされたA4版の白い紙。
井戸の番人の心臓を受け止めた時に受けた返り血は付いてはいなかった。
内ポケットに有ったのが幸いしたのだろう。

外道は素早く、しかし大切そうにその紙を広げた。

外道のその姿を、


(ニヤニヤニヤニヤニヤ・・・)


面白可笑(おもしろ・おか)しそうに。

否、


(ワクワクワクワクワク・・・)


何が始まるのかワクワクしながら、
身を乗り出し、
ジッと外道の動きに見入る大蝦蟇。

その姿は、ヤッパリ不気味だ。

紙を広げ終わると外道が言った。
大蝦蟇の目をキッと見据(みす)えて、

「フゥー、フゥー、フゥ~~~」

荒い呼吸を整えて、

こぅ・・・

「蝦蟇法師よ。 良~く見るが良(い)い。 我が念法を。 我が・・・」











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #102 『“何か”を』の巻

#102 『“何か”を』の巻




(キッ!!)


蝦蟇法師の目を見据(みす)え、
外道が言った。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・。 まさかコレを俺に使わせるとは・・・。 大した奴だ、蝦蟇法師。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」 

「ン?」

「蝦蟇法師よ。 今こそ見せてやろう。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

「何を?」

「我が念法を。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

「ホ~? まだ何かあるのか? 影留めやら百歩ナンたらの他にも?」

「あぁ。 ある!! (キリッ!!) ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

外道は一人目の井戸の番人の返り血をバッチリ浴びていた。
そしてその血で真っ赤に染まった服の内ポケットから、
何かを取り出した。

そぅ・・・

何かを。

次に繋(つな)がりそうな・・・






“何か” を・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #101 『秘策?』の巻

#101 『秘策?』の巻




大蝦蟇は戻って来た大鎌を受け止め、
例の如(ごと)く柄にベロの先を巧みに巻き付けた。

だが、
又しても頭上で振り回すかと思われたその大鎌を、


(ガブッ!!)


今度は、
ナンと、
そのまま飲み込んだ。
大蝦蟇口(おおがまぐち)を開けて。

その様子は見るに耐えない・・・余りの不気味さ故に。

そして、
大蝦蟇が言った。

「ホゥ。 その眼(め)!? ガッツを取り戻したと言う訳か? だが、何時(いつ)まで逃げ切れるかな? 外道よ」

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

外道は肩で息をしている。
息が上がっている。


(カクカクカクカクカク・・・)


膝も笑っていた。

無理もない。
外道は今、圧倒的に強力な蝦蟇法師の攻撃を受け続け、最早(もはや)立っているのさえ不思議な程、満身創痍(まんしんそうい)だったからだ。

だが、

そんな外道のその眼(め)には、
アニメの主役張(しゅやく・ばり)の虹彩異色症(ヘテロクロミア)の外道のその眼には、
ハッキリと光が戻っている。

一度は諦めた様に見えた外道だったが、
今のその眼には、 “やる気” という光がハッキリと出ている。

コレは良(い)い!!

コレは良いぞ! 外道!!

そのやる気。

何かあるのか、秘策でも?

ン?

ありそうだ!?

何かありそうだ!?

何か秘策がありそうだ!?

外道には何か秘策がありそうだ~~~~~~~~~~!?











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #100 『まるでブーメランの様に』の巻

#100 『まるでブーメランの様に』の巻




外道の腹を切り裂いた大鎌は、
まるでブーメランの様に大蝦蟇の元へと飛んで返った。
回転しながら、
大蝦蟇の頭上2メートルへと。

突然、

大蝦蟇は “ベロ” をにゅーっと伸ばした。
そのベロの色と形が不気味だ。

淡い紫色をした花が醜(みにく)く枯れた時の様な、
一度見たら二度とは見たくない、
実に気色(きしょく)の悪い色だ。

形も肉厚の腐ったチューリップと言った感じだ。
それが、
ニューっと伸びたから堪(たま)らない。


(ゾクゾクゾクゾクゾク・・・)


何ともはや、寒気のする光景だった。

次に大蝦蟇は、
飛んで返って来た大鎌の柄の部分をその伸ばした醜いベロの先を巧(たく)みに巻きつけて受け止めた。

そして、
そのまま、


(グルングルングルングルングルン・・・)


頭上でベロを何回か旋回させたかと思うと、


(ブヮーーーン!!)


外道に向けて大鎌を投げ付けた。
今度の狙いは外道の首だ。
これが当たったら一溜(ひとた)まりもない。
間違いなく首が飛ぶ。
外道の首が。


(ビヒューーーン!!)


大鎌は再び、
意思を持ったブーメランの様に外道に向かって回転しながら飛んで来る。
外道の首を刎(は)ねようと飛んで来る。


(ブ~~~ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


激しく空気を切り裂いて飛んで来る。
その切り裂き音が凄まじい。

『クッ!?』

外道は焦った。
大蝦蟇の大鎌は既に目前。
かわしそこねたら首が飛ぶ。
しかし体は動かない。
蝦蟇法師から受けた度重(たびかさ)なるダメージのため、
体が上手(うま)く動かない。
思う様に動いてくれない。


(シュルーン!!)


鋭い切り裂き音を上げ、あと一回転で大鎌が外道の首を刎ねる。

その時、


(スッ!!)


外道が首を引いた。
間一髪よけた。
だが、
紙一重(かみひとえ)、紙一重だった。
そぅ、紙一重でかわすのがやっとだったのだ・・・外道は。


(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌は又、ブーメランの様に大蝦蟇の元へと返って行く。
外道の首を皮一枚分外して。

それを先程同様、
大蝦蟇が巧みにあの気色の悪いベロを使って受け止めた。
そのベロの動きはまるで人間の腕の様だ。
それを頭上で旋回させ、大鎌を外道に向けて投げ付ける。
別にベロを使って振り回さなくても、蝦蟇法師自身のエネルギー体なのだから念力だけでも充分大鎌を飛ばす事は可能だ。
それでもやはり弾みを付けた方が遥かに威力がある。
念で飛ばすよりも遥かに・・・。
威力が違う以上、蝦蟇法師は当然そうする。

そして・・・

今度の狙いは外道の胸だった。
蝦蟇法師は先程の首への攻撃をかわした時の外道の動きを見て、即座に胸に狙いを変えたのだ。
外道の動きを見切っての事だった。
首だから避け切れたが胸らなそうは行かない・・・という。

ウ~ム

蝦蟇法師・・・恐るべし。


(ブ~~~ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


再び、外道に襲い掛かる大鎌。


(サッ!!)


必死の形相で体を引いて、これをかわそうとする外道。
今度も何とか食らわずに済んだ。
外道は外道で、先程の大鎌の攻撃をかわした時、既にその速度と軌跡を不完全ながら見切っていたのだった。
大蝦蟇は忘れていたのだ、外道が達人である事を。(作者も・・・)

だが、
如何(いか)に外道が達人とはいえ、
大鎌の動きを不完全ながら見切ったとはいえ、
流石にこれまでに受けたダメージは如何(いかん)ともしがたかった。


(スパー!!)


今回は僅(わず)かに・・・
僅かにだが外道の胸を掠(かす)っていた。
やはり大鎌の軌跡を完全に見切れてはいなかった事に加え、
描いたイメージ通りに体をコントロール出来なかったのだ。
自分が思った通りには体が付いて来なかったのだ。

その切り傷から血が滲(にじ)む。
深手(ふかで)ではなかったが。

そして、
大鎌は大蝦蟇の元へと飛んで返る。

これを何度か繰り返した。
その度に外道の体を掠(かす)って大鎌は大蝦蟇の元へと返った。
しかも、与える傷口は1回毎に深くなっていた。
大蝦蟇のオフェンスが外道のディフェンスを上回っているのだ。

既に、
外道の体は傷だらけだった。
致命傷とまでは行かなかったが。

そして、
もう一度同じ事が繰り返された。
手順通りに。

先ず、


(ブヮーーーン!!)


から始まり、


(ブ~~~ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


と来て・・・外道の体を、


(スパー!!)


そのまま、


(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)


大鎌が大蝦蟇の元へと返る。
ブーメランの様に。

これが・・・手順通りに。






ところが・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #99 『真の蝦蟇鼬(がまいたち)』の巻

#99 『真の蝦蟇鼬(がまいたち)』の巻




解説しよう。


知っての通り、
外道の腹部にはまだ蝦蟇法師のアストラル体の一部が付着していた。
蝦蟇法師が自由に操(あやつ)れるエネルギー体が。
蝦蟇法師にしか自由に操(あやつ)れないエネルギー体が。
蝦蟇法師はそれを使ったのだ。
即ち、
外道の腹部に付着している蝦蟇法師のアストラル体を実体化させたのだ・・・大鎌に。

という事は、

こ・れ・は、

“大蝦蟇(おおがま)” の “大鎌(おおがま)” だ!?

否、

大鎌の大蝦蟇?

ン?

大蝦蟇の大鎌?

ン?

ドッチだー!?

??????

ウーーーン、分かんないょ~~~!!




さて、

これが、
真の “蝦蟇鼬(がまいたち)” だった。


ならば、

前回の蝦蟇鼬は一体・・・?

先程、蝦蟇法師の 否 蝦蟇法師が憑依した大男の腕がまるでアームストロング・オズマの見えないスイングの様に高速回転している様に見えたのは、
実は大男の腕その物が高速回転していたのではなく、それにオーバーラップしていた蝦蟇法師のアストラル体の一部が竜巻の様に高速旋回していたからだった。
だが、
その時既に、
蝦蟇法師のアストラル体はホンの僅(わず)かずつではあったが実体化を始めていた。
それも、
蝦蟇法師自身でさえそれに気付かぬ位僅かずつ。
だから、
本来、見えない筈のエネルギー体であるアストラル体が目視可能となり、大男の腕その物が回転している様に見えたのだ。
そして、
その実体化しかけたアストラル体が竜巻の様に高速旋回していたため、その一部にチョッと触れただけでもまるで鋭利な刃物にでも切られたかの様になったのだった。

これが、
前回の “蝦蟇鼬(がまいたち)” の正体・・・






だったのである。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #98 『幸運のメタポッコリ』の巻

#98 『幸運のメタポッコリ』の巻




『クッ!? ど、どっから!?』

外道は焦った。
突然目の前に大鎌が現れたと思ったら、
瞬時に自分の腹を切り裂いたからだ。
しかも、
その大鎌を操(あやつ)った者の姿は全く無く、
その大鎌それ自体がまるで意思を持ってそうしたかの様に、
外道の腹を切ったのだった。

幸い出血したとは言え、
“メタポッコリの外道腹(げどう・ばら)” のお蔭でダメージは然程(さほど)大きくはなかった。
傷口は死亡 否 脂肪止まりだったのだ。
そしてこれが幸いした。

この攻撃を受け、外道の目が覚めた。
そぅ。
外道の眼(め)に生気が戻ったのだ。

だが誰が?

ドコから?

こんな大鎌を?

しかも、

出所が腹部?


ン!?


腹部?

腹部?

腹部?


も、もしや・・・











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #97 『大鎌』の巻

#97 『大鎌』の巻




「蝦蟇鼬(がまいたち)ーーー!!」

大蝦蟇の声が響き渡った。
重低音のあの声が。


(ビシビシビシビシビシ・・・)


それは辺(あた)りを震撼(しんかん)させる。

突然、


(スゥ~!!)


外道の腹部に大鎌(おおがま)が出現した。
西洋画等で良く見る 『死神』 が手にしている様な大鎌が。
その刃(やいば)の長さだけでも1メートルはありそうな大鎌が。

次の瞬間、


(スパー!!)


それが外道の腹を横一文字に切り裂いた。

一拍置いてから、


(パシュー!!)


外道の腹から血が飛び散った。
まるで噴水のように。

「グハッ!!」

外道の呻(うめ)き声だ。

ど、何処から現れたんだ、この大鎌は!?

イ、イキナリ現れたぞー!?

そ、それも、まるで瞬間移動でもされて現れたかの様にだー!?


この大鎌の突然の現れ方。
それはまるで、
アニメ 『宇宙戦艦ヤマト Part1』 の “七色星団の戦い” に於(お)いて、
ガミラス帝国の名将、あの宇宙の狼・ドメル将軍が初めて使った、 “瞬間物質移送器” によって転送でもされたかの様だった。




解説しよう。


七色星団の戦いに於ける瞬間物質移送器とは・・・

宇宙の狼・ドメル将軍率いるドメル艦隊旗艦(ドメルかんたい・きかん) “ドメル艦(ドメラーズ2世)” から発射された “ワープビーム” により、密集隊形のガミラス軍戦闘機を宇宙戦艦ヤマトの周囲にいきなりワープさせた “奇襲攻撃用兵器” である。

この兵器使用による利点は、その出所(でどころ)が相手に全く分からぬため圧倒的優位に立てる所にあった。











つづく





『怨霊バスター・破瑠魔外道』 #96 『まるで木偶(でく)』の巻

#96 『まるで木偶(でく)』の巻




「フン。 哀れな姿よのぅ、外道~」

「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」

外道は応えない。
相変わらず俯(うつむ)いて何か訳の分からない事を小声でブツブツ言っているだけだ。

「敗北を認めたという訳か。 さっきまでが嘘の様だ。 ホレッ、こっちを向いて何か言ってみろ」

「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」

外道は全く反応しない。

「まるで木偶(でく)だな」

「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」

外道の様子は変わらない。

「フン。 つまらん!! いつまでも木偶を相手にする訳にもゆかん」

「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」


(ギョロ!!)


無気力な外道に不気味な一瞥(いちべつ)をくれて、
蝦蟇法師が言った。

「外道よ! 今こそ引導を渡してくれようぞ!! ・・・。 これで!!」

と。

そして、
次に大蝦蟇は・・・






驚くべき行動に出た。











つづく





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