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『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part11 (最終回)




『あらからもう3年かぁ。 早いもんだなぁ、月日の経つのなんて。 アッ!? という間(ま)だ』

俺はそんな事を思い出しながら信号が青に変わるのを待っていた。
麻美はまだ俺の存在に気付いてはいないようだった。

信号が青に変わった。

その瞬間、それまで止まっていた時間が一気に動き出した。
まるで100m走の、スタート合図のピストルが撃たれたように。
サッカーの試合開始の審判の笛が吹かれたように。
それまで止まっていた車や人々が一斉に動き出した。
みんな夫々(それぞれ)のリズムとスピードで。
ある者は足早に、ある者はユックリと。
直進車は徐々に加速し、左折車は歩行者が途切れるのを待ち、右折車は対向車に止められている。
それらを俺は肌で感じ取っていた。

初めてだった。
こんな当たり前の事を改めて感じたのは。
否、
当たり前過ぎて見過ごしていたのか?
光や空気や水と同じで、それが余りにも当たり前の存在過ぎて気付かないでいるように。

しかもいつの間(ま)にか日が射している。
強烈な日差しだ。
つい今しがたまでどんよりと曇っていたはずなのに。
そんな事さえも気付かずにいるなんて・・・?
全てがあまりにも当たり前すぎるせいか・・・?

だが・・・

その中にたった一つだけ当たり前じゃない存在があった。
麻美だった。

一歩一歩、確実に俺達の歩く道は近付いた。
俺の歩く道と麻美の歩く道。
あの消化不良の別れから3年。
あの頃の俺達は間違いなく同じ道を歩(ある)いていた。
しかしそれから3年。
今の俺達は全く別々の道を歩(あゆ)んでいる。
その別々の道が今、後ほんの僅(わず)かの時間で再び交わろうとしていた。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)


俺の足音。


(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


麻美の足音。

徐々に狭まる道と道。


(ゴクッ!!)


俺は生唾を飲み込んだ。


(ジトッ!!)


手に汗がにじむ。
緊張している。


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)


胸の鼓動を感じる。
まるで初めて麻美と出逢った時のように。
初めて出逢った女じゃないのに。
昔の恋人のはずなのに。

しかし俺は緊張していた。

『声を掛けるか、掛けざるべきか? ウ~ム』

ハムレットの心境だ。

『掛けるとすればなんて言おぅ?』

こぅか?

『やぁ、麻美。 久しぶり』

それとも昔みたいに、

『俺のベィビィはハッピーかい』

ってか?

ここで俺は歩きながら一回、深く大きく深呼吸をした。
あの最後の電話の時と同じように。


(スゥ~~~。 ハァ~~~)


麻美はもう目前まで来ていた。
伏目がちに歩いている。
まだ俺に気付いた様子は見せない。


(カツッ、カツッ、カツッ、・・・)

(コツッ、コツッ、コツッ、・・・)


俺達の距離は後僅(あと・わず)か・・・3メートル位か?
このまま歩けば俺は麻美の左側を、麻美も俺の左側をおおよそ1メートル間隔ですれ違う。
麻美は顔を伏せている。

『どうする? 気付かぬ振りしてすれ違うか? それとも・・・』

もう後2メートル。

『ウ~ム。 良し!!』

俺は麻美に声を掛けようと空いている方の左手を上げようとした正にその瞬間、

『エッ!?』

俺は驚いた。

麻美がニッコリと微笑んだのだ。
しかし、
それは俺にではなかった。
その視線の先には乳母車(うばぐるま)がある。
麻美が両手で押している乳母車が。
そしてその中には赤ん坊が。
その赤ん坊の顔を覗(のぞ)き込んで、麻美がニッコリと微笑んだのだ。
赤ん坊もそれに気付いたようだ、振り返って麻美の顔を見ながらニコニコ笑っている。
恐らく麻美の子供だろう。

それが麻美の答えだった。
麻美はとっくに俺の存在に気付いていたのだ。
もしかすると俺より先に。
そして俺が声を掛けようとした正にその瞬間、

『来る!!』

その気配を感じ取り、我が子に目を落とし微笑んだのだ。
つまり、
その時麻美は無言で俺にこう告げたのだ。

『ほら、見て健ちゃん。 アタシは幸せなのょ。 今のアタシはこんなに幸せなのょ』

と。

この3年の間。
麻美に一体何があったのか俺は全く知らない。
又、知る必要もない。
知ったところで何の意味もないからだ。
旦那はどんな人で、半身不随の父親はどうしたか等・・知ったところで・・何の意味も。

俺はそれを良く承知していた。

だがそれは又、麻美も同じだった。
俺がどこで何をどうしているか等、知る由(よし)もなければ知る必要もなかったのだ。

3年という月日が二人をそう変えてしまっていた。
二人はもう、既に別々の世界に生きていたのだ。

そして俺達はすれ違った。
目を合わせる事なく。
言葉を交わす事なく。
お互い気付かぬ振りをして。
ジリジリ照り付ける強烈な日差しの中。
そのまま振り返らずに、歩調を変えずに、二人の距離を遠ざけるために、俺達は歩き続けた。
互いに待つ人の許(もと)に向かって。

そぅだ!!

実は俺も又、麻美同様、既に一児の父となっていたのだ。
もっとも、まだなり立てのホヤホヤではあったんだが。
生後一ヶ月の男の子の父親に。

現地に着いて2年目に俺は結婚した。
相手は日系三世のブラジル人。
支社長補佐就任1年目に出会い、恋に落ちた。
そして2年目、俺の支社長代理昇格と同時に俺達は結婚した。
支社長代理という立場上、俺は独身という訳には行かなかった。
俺にとって結婚は必須(ひっす)だったのだ。
その一ヶ月後に妻は身ごもり、つい一ヶ月前に男の子を産んだ。
元気ないい子だ、俺に似て。
なかなかハンサムだ。
当然、俺に似て・・・ってな。

ハハハハハ・・・。。。

そして今、俺はその愛する妻と子の待つブラジルへ飛び立つため成田に向かう途中だった。
本社に於(お)ける営業実績報告、並びに対ブラジル投資の戦略会議のため3年ぶりに戻った日本。
久しぶりに再会した両親と兄貴の元気な姿。
そして今日フライト。
当分戻ってくる事のないであろう我故郷(わが・ふるさと)日本。
その日本を離れる前にどうしても立ち寄りたかった場所。
それがこの道。

そぅだ! そうなのだ!!

ここは3年前、俺の元から逃げ帰って行く麻美の後ろ姿を見送ったあの道だった。
最後に麻美の姿を見たあの道だったのだ。
そして今日。
俺はわざわざ遠回りをしてここに立ち寄った。
それは想い出・・麻美との想い出・・それを捨て去るために。
明日(あした)のため過去の想い出とサヨナラをするために。

だが、なんと言う運命の悪戯(いたずら)。

『こ、こんな事があるのか!?』

嘘のような麻美との再会。
まるで絵に描いたような、誰かに仕組まれたかのような、麻美との再会。

『コレが天の采配(さいはい)か? 見えざる神の手か?』

そうとしか思えないような偶然の出会い。

『フッ。 まるでマリオネットじゃん。 俺達って。 ・・・。 否、きっと人間全てが・・・』

『運命の出会い・・・か? きっとこういうのを言うんだろうな』

『しっかし幸せそうな麻美の姿も見れたし、もう何も心残りはなくなった』

『最後の最後も又、結果オーライ・・・ってか!?』

 ・・・

頭の中を徒(いたずら)に取り止めのない言葉だけが駆け巡る。

そして今、3年前麻美が俺の元から走り去っていったのと全く同じコースを辿(たど)り、今度は俺が麻美に背を向けたままその道を渡りきった。
信号はまだ青のままだ。

俺は立ち止まった。
腕時計を見た。

針は、

12時03分00秒丁度を告げている。

『フッ。 たったの3分・・・か!? しかもジャストだ』

これがその瞬間の俺の思いだった。

そぅ・・・

12時00分00秒から始まり12時03分00秒に終わった物語。
たった3分間の物語・・・再会という名の。

それから俺は・・・

ユックリと左手を上げた。
右手はバックを持っているのでその替わりに。
そして振り返る事なく手を振った。
やはり振り返る事なく歩き続けているであろう麻美の後ろ姿に向けて。

こう思いながら、

『俺、今日フライト。 じゃ、な、麻美。 ・・・。 サ、ヨ、ナ、ラ』






と。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 お・す・ま・ひ





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『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part10

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part10




『来るわきゃないか』

成田空港。
フライト直前。
俺は、来るはずのない麻美の姿を人込みの中に探していた。
ついにタイムリミット。
いよいよ搭乗アナウンスに従って、ゲートをくぐる事に。
見送りは親父とお袋の二人。
兄貴は仕事の都合でこらんなかった。

「じゃ、父さん、母さん。 行って来るょ。 兄貴にヨロシク」

「あぁ、体に気を付けてな」

と、親父。

「頑張ってネ」

と、お袋。

そして足元に置いてあったハンディ・パソコン入りのブリーフ・ケース(書類カバン)を持ち上げるため屈(かが)もうとしたその時、
お袋が言い難(にく)そうに声を掛けて来た。

「健一」

「なんだい、母さん?」

「お前ホントにいいのかい?」

「何が?」

「麻美ちゃんの事」


(ドキッ!!)


一瞬、

俺は言葉に詰まった。
きっとそれが顔に出たのだろう、今度は親父が、

「朝霧さんがあんな事にさえならなければなぁ・・・」

と感慨深げに言った。
俺は思いっきり虚勢を張った。

「なんだい、父さんも母さんも。 俺の栄転に水差すような事言って。 それにもぅ、俺と麻美は終わったの。 だからそんな心配しなくてもいいんだょ」

「あぁ、そうだな」

「あぁ、そうネ」

「じゃ、俺行くから。 着いたら直ぐ連絡入れるから。 今日はアリガト」

そう言って、俺は床に置いてあったブリーフ・ケースを右手で持ち上げ、親父とお袋に背を向けた。


(スタスタスタスタスタ・・・)


何歩か歩いた。
ゲートをくぐる直前、俺は振り返った。
親父とお袋の姿を見た。
二人とも手を振ってくれていた。
俺もあいている方の左手で二人に手を振った。

しかしその時俺が振り返ったのは、親父とお袋を見るためじゃなかった。
否、
それもあった。

が、本当は・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・麻美。

そぅ、今振り返ったらそこに麻美の姿が・・・

そんな最後の悪あがき。
淡い期待を込めての事だった。

しかし現実は、

『フッ。 やっぱ、来るわきゃないか』






だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part9

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part9




「はい。 朝霧です。 お電話を有難うございます。 ただ今留守にしております。 ピーという音に続けてお名前、ご用件、お電話番号をお話下さい。 折り返しこちらからご連絡させて頂きます。 それではどうぞ。 (ピー) 」

渋谷で会ったあの日以来、俺達は一度も顔を合わせなかった。
というのも麻美が俺を避け続けたからだ。

携帯の電源は切りっぱなし。
尋ねて行っても出てこない。
つーか、いない。
居留守使ってんのか、ホントにいないのか?
必ずいるはずのオヤッさんは半身不随だから出るに出られない。
俺もフライト準備のためそんなに麻美に時間は掛けらんない。

そして麻美に会えぬまま、終にフライト前日。
その夜。
俺は麻美に最後の電話を掛けた。

案の定、留守電のままだった。
メッセージが流れた。
なつかしい麻美の声だった。
チョッと甲高くって、綺麗で、済んでいて、・・・。

それから 「ピー」 っていう音。
その音を聞いてから、

「スゥー。 フゥ~」

俺は一度、深く深呼吸をした。

そしてユックリと一言一言ハッキリと、こうメッセージを残した。
もしかしたら電話の向こうにいてこれを聞いているかも知れない麻美に向かって。

「俺、明日フライト。 じゃ、な、麻美。 ・・・。 サ、 ヨ、 ナ、 ラ」

と。


(ガチャ!!)


さらば俺の初恋。

さらば俺の青春。

さらば俺の恋人。

さらば俺の・・・






あ、さ、ぎ、り、あ、さ、み。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part8

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part8




秒読みだった。

そぅ、秒読みだった。
今更ながらだが、俺と麻美が俗にいうゴール・インするのは秒読みだったのだ。

そしてこの頃では、

「いつまで今のままでいる気?」

双方の親達からもそんな事を言われる始末だった。
もっとも、言われなくても本人達が一番良~~~く分かってはいたんだが。

実を言えば・・・

俺も麻美もそのタイミングを窺(うかが)っていた。
そして俺がそろそろ切り出さなくっちゃと思い始めていたそんな矢先だった、麻美の両親が事故に遭ったのは。
母親は即死。
父親は半身不随。
麻美は一人っ子。
父親の面倒を見なきゃなんない。

『結婚したら一緒に面倒見りゃいいさ』

俺はそう思っていた。

しかし、その時の状況が状況なだけに俺としては、

『結婚話を今切り出すのは間が悪い。 チョッと伸ばそう』

こんな感じだったし、麻美としても、

『ゴメン。 チョッと伸ばしてネ』

そんな風だった。
つまり、麻美の家庭事情がそんななのにこんな言い方はチョッと不謹慎ではあるが、

『ま、焦る事ないか。 今更』

ぐらいの気持ちで、お互い結婚に関しては余裕のヨッチャンこいていた。

だが・・・

そこに突如、降って湧いた俺の転勤話。
状況が一気に逆転。
思いも寄らぬ方向へ。

当然、俺はこの話を受けた。
否、受けざるを得なかった。
断われば失業間違いなし。
ハロー・ワーク通い決定。
かといって新しい働き口がそんなに簡単にホイホイみっかる保障なし。
だから俺はこの話を受けた。

とすれば・・・

当然、そこに待っていた結果は・・・別れ。
そぅ、別れだった。






麻美との・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part7

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part7




「朝霧クンだったっけ」

「はい」

「今日、予定ある? 帰り」

「ないヶど」

「じゃ、一緒に帰んない? 俺と」

「ウン。 いいょ」

「ヨッシャー!! 作戦通りー!!」

「エッ!? 作戦・・・?」

「アッ!? い、いや。 こ、こっちの事こっちの事。 こ、言葉のアヤだょ言葉のアヤ」

「そ」

『フゥ~。 あっぶねぇあっぶねぇ』

「じゃ、さ。 4時、校門。 OK ?」

「ウン。 OK 」

『ナイス!!』

 ・・・

このやり取りが俺と麻美の本編の開始だった。
そしてその日の内に恋人宣言。
以来ズゥ~っと。

しっかし、こうして思い返してみると結構俺達って・・・青春してたじゃん。

それからの10年間、紆余曲折(うよきょくせつ)色々あった。
とはいえ、取りあえずは平穏無事・・全て世は事もなし・・だった。
もっとも、途中何度か別れの危機っぽい事もあるにはあったんだが。
それにコイツはチョッとまぁ言い難いんだが・・・

俺とて木石(ぼくせき)には非(あら)ず。

適当に “ツ・マ・ミ・食・い” な~んかも・・・

エヘヘへへ。

って、まぁな!!

オトコじゃけぇ、ナンせ。
しゃーあんめ。

麻美のヤツはどうだったかな?

多分なかったんじゃないかな。
淡白なヤツだし。
俺にゾッコンだし。

って、甘いか?

おぃおぃ、

「知らねぇトコで、な~にやってっか分かんねぇーゾ!? 女は子宮で考える!!」

な~んて言うんじゃねぇーゾ。
麻美は俺と違ってしっかり者(もん)だし、保守的だからその心配は無用さ。

た・ぶ・ん・・・






かな???

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part6

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part6




「先輩、三中ですょネ? 出身」

「エッ!?」

「三中サッカー部ですょネ? 出身」

「エッ!? ど、どうしてそれを? き、君も三中?」

先ほどのショックから、まだ立ち直れないままの俺。
しどろもどろ状態が続いている。

「ウゥン。 アタシは二中」

「・・・」

「アタシ見てました。 2年前の春の県大会の決勝」

「エッ!? み、見てた?」

「はい」

『ヤ、ヤバッ!!』

俺は一瞬言葉を失った。
というのも、2年前まだ俺が中学3年だった時の事。
サッカー春の県大会に俺は出場していた。
高校受験を控えている俺にとって、それは中学最後の大会だった。
ポジションは、もち FW (フォワード)。
しかもワントップ。
ゼッケンはエース・ストライカーでキャプテンだったから中村俊輔と同じ “10” でも良かったはずだが、残念ながらナゼか “3”。

“エース・ストライカーでキャプテン” ←ここポイント・・・な、ここポイント。

ま、いっか。
“インテル永久欠番3” のジャチント・ファケッティと同じじゃけぇ。
もっともファケッティは FW じゃなく DF (ディフェンダー)だったヶど。

そして俺たちは順当に勝ち上げり・・もち、俺の・・この俺様の活躍もあって。
って、チョッと手前味噌。
しっかしその通り。
そして終に決勝進出。

その決勝戦。

相手は二中。
そぅ、麻美の出身中学だ。

だが、
得点は0対1。
俺達は前半開始早々1点入れられて負けていた。
何度かチャンスはある事はあったんだが、決定打が放てないまま後半戦に。
その後、押しつ押されつの膠着状態(こうちゃく・じょうたい)が続き、終に後半ロス・タイム。
最早、俺達の負けは決定的だった。
俺の中学最後のサッカーが終わりを告げようとしていた正にその時。
残り時間、後数秒。

『これが最後の攻撃になる!!』

誰もがそう思ったその瞬間。
やっと俺は、フォワードとしての責任を果たす事が出来た。
終了間際に放った一か八かの40ヤード超のロングシュート。
これが見事な曲線を描いてゴールに


(パサッ!!)


終に同点。


(ガックリ!!)


うな垂れている相手チームをよそ目に、

「ガッデム!?」

「やったゼ!!」

「やったー!! やったー!!」

 ・・・

オオハシャギする俺達。

当然、延長戦に突入。
だが、両者一歩も引かず無得点。
結局、勝利の行方は PK 戦へ。

俺は PK には絶対の自信があった。
それまで試合で一度も外した事がなかったからだ。
なにせ誰にも真似できない必殺技があったんだからな、その当時の俺様には。
そぅ、必殺技が。
秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 が。
かつて一度たりとも外した事のない、秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 が。
これは今で言うなら日本代表 MF (ミッドフィルダー)、ガンバ大阪・遠藤保仁の 『コロコロゴール』 っぽい。

そして PK 戦開始。
相手が先攻。
アッサリと5人全員に決められた。
だが、コッチだって負けちゃぁいない。
既に4人が決めていた。
俺が5人目だ。
いよいよ真打登場。
秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 炸裂!!

の!?

はずだった。

確実にこれを決め、

『 PK 延長』

に!?

なるはずだった。

それは俺自身も、又、チームメイト達も全く疑ってはいなかった。
もっとも俺を含めて全員が、ドキドキではあったんだが。

しか~し、

事件はそこで起こった。
って、チョッと大袈裟(おおげさ)か。
その時、誰もが信じられない、勿論(もちろん)この俺自身もどうしてそうなったのか、未だに理解出来ない事件が起こった。
春先の椿事(ちんじ) 否 珍事が。

“ほとんど空振りの打ち損じ”

俺が自信たっぷりに振り切った右足が見事に空を切った。
否、
ボールの脇をかすった。
そして俺はズッコケタ。
まるで FRISK の CM のように。
当然、ボールはゴールには飛ばない。
飛んだ方向はアサッテ。
地面に尻餅(しりもち)をついたまま愕然としてゴールを見つめる俺。
泣き崩れるチーム・メイト。

そんな俺等をよそ目に歓喜の胴上げをする相手チーム。
中学生のクセに胴上げだ・・・生意気にも。

それを俺はただ呆然と見つめていた。
不思議と涙は出なかった。
チーム・メイト達は皆、うな垂(だ)れて泣きじゃくっていたのに。

ヒーローが一転してアンチ・ヒーローになった瞬間だった。
バツが悪いったらありゃしない。

『こんな事なら同点ゴールなんか決めるんじゃなかった』

とさえ、思った位だ。

そしてコレがトラウマとなり、俺はもう二度とサッカーボールを蹴る事はなかった、体育の授業以外では。
つまりその日以来、俺はサッカーから完全に足を洗ったっていう訳だ。
なんつったって得意の必殺技。
その名も、秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 を一番大事な試合で物の見事に外しちまったんだからなぁ。
それもみんなの見ている前で。

「ゥゥゥゥ、ウッ・・・」

つ、辛(つれ)えゼ・・・

だが、

事はそれだけでは済まなかった。
その件は卒業までの半年・・・とチョッとの間。
俺様自慢の秘技 『おっとっとゴール・俺様バージョン』 は、

ケンの

『おっとっとゴール・無様(ぶざま)バージョン』

やら

『おっとっとゴール・俺様バカじゃん』

やら

『おっとっとゴール・俺様ダメじゃん』

やら

 ・・・

やら

 ・・・

やら

 ・・・

ナ~ンつって、揶揄(やゆ)され続けちまう破目に。

「クッ!?」

か、悲しいぜ・・・

「ゥゥゥゥ、ウッ・・・」


アッ!?

そぅそぅ。
俺、加藤健一でニックネームは “ケン” な、 “ケン”。
実に単純だ。
いかにもってか?
なんせ中学生だから、コレ付けたの。
そして、当然俺は学校一の有名人。


 ★ ★ ★


否、
後で分かった事だが、それ以後俺は・・というより俺の蹴り損じは・・他所(よそ)の中学でも結構有名だったらしい。
これは後日、麻美から聞いた事だ。

「健ちゃん、超有名だったのょ。 あの蹴り損じで」

って、麻美が大笑いしながら教えてくれた。
つーか、
からかわれた。


 ★ ★ ★


ガーーーン!!

『こ、この娘(こ)はよりによってあの過去の忌わしい大事件の目撃者だったとは・・・』

トホホ。

だが、これが結果的に大正解の結果オーライ。
もう俺はな~んにも怖くなくなった。
だから変に自分を良く見せよう、な~んて余計な気持ちはその瞬間一気に吹き飛んじまった。






そして・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part5

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part5




『良し、完璧!! リハーサル通り』

俺は思った。

ここは通学バスの中。
時は、例の件があった翌週月曜日の午前8時。
俺はこの前と同じ、初めて麻美を見つけたバスに乗った。
定期券挿入口に定期を出し入れして顔を上げた。

その瞬間、

『ハッ!?』

仰天した。

目の前に麻美が立っていたのだ。
ジッとコッチを向いて。
まるで俺を待っていたかのように。
否、
待っていたかのようにではなく、間違いなく麻美は俺を待っていた。

一瞬、俺はこの予想外の展開にうろたえた。

『あの娘ともしかしたら同じバスに乗り合わせるかなぁ?』

つー予感。
つーか期待ぐらいは確かにあった。
しかしホントにそうなる確信は全くなかった。
その日その時の俺には。
だからホントにいたので超ビックリ。
しかも目の前に。

だが、俺だって。
俺だって、そういう事があってもいいようにチャ~ンと作戦ぐらい・・・。
そぅ、チャ~ンと。

そして俺は出来るだけ平静を装い、ジッと麻美の目を見つめて挨拶した。

「おはよう。 こないだはゴメン」

と。

『良し、完璧!! リハーサル通り』

俺は思った。

「おはよう。 こないだはゴメン」

何回言っただろうこの言葉。
俺だって次に顔会わせたらどうすべきか位の事は確(しっか)りと考えてあったって訳だ。

「おはよう。 こないだはゴメン」

「おはよう。 こないだはゴメン」

「おはよう。 こないだはゴメン」

 ・・・

俺には確信があった。

『慌てず騒がずハッキリと。 そして爽やかに』

そぅ、ここポイント。

“さ、 わ、 や、 か、 に”

「おはよう。 こないだはゴメン」

って言えたら間違いなく俺はあの娘をゲット出来る。
という確信が。
そしてその通りに言えた。
リハーサル通りだ。

完璧!!

後は彼女。
彼女がどう出るかだ。

既に賽(さい)は投げられた。
次に彼女がどう出るか?
全てはそれに掛かっていた。

「アタシの方こそゴメンなさい。 急に飛び出したりして」

『良し!! いい返しだ』

「否、君が謝る必要ないょ。 やっぱ、あの状況じゃ悪いの俺の方だから。 女の子突き飛ばしちゃったんだから」

「ウゥン。 そんな事ない。 お互い様だょ」

『ヨッシャー!! 作戦通り!! いい流れだ。 この雰囲気を壊さず、かつ、速やかに。 しかし慌てず、騒がず、爽やかに・・・』

俺は思った。
そしてチラッとバスの中を見た。

『良し!! 周りに知った顔はない。 奥の方に何人かいるだけだ。 この会話は聞かれない。 安全だ』

「あぁ、そうだ。 自己紹介まだだったね。 オイラ、アッ!? い、否、お、俺。 い、否、ぼ、僕、・・・」

『ウッ!? し、しまったー!!』

「かかか、加藤健一」

『マ、マズったー!!』

「クスッ」

『ヤ、ヤバ!? わ、笑われたー!!』

「アタシは・・・朝霧麻美。 新入生です。 ヨ、 ロ、 シ、 ク。 加藤先輩」

「エッ!?」

『ナ、ナニー!? こ、この口ぶり!? も、もしかして俺の事知ってんのかぁ!?』

その時俺はかなり動揺していた・・・ようだった。
そんな俺の表情を読み取った上でか?
次に麻美は、

「クスッ」

と笑って一言こう言った。

「か~わぃ」






『クッ!? ななな、何なんだこの展開は~!?』

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part4

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part4




その時、


(ジリジリジリ・・・)


ベルが鳴った。
授業開始のベルだ。

『ハッ!? ヤバッ!? 遅刻だ!?』

俺達は同時に我に返った。
掛ける言葉が見つからず、というより何も言えなかった俺をジャストタイミングで始業のベルが助けてくれたのだ。

「じゃ!!」

逃げるように俺はその場を後にした。

否、正直に言おう。

逃げるようにじゃなくって俺はその場から “逃げた”。
もちろん怖かったからだ。

今思えば妙な話だ。

仮にその時俺がその場で麻美を抱きしめても、恐らく麻美はそれを拒まなかったハズだ。
それどころか抱き返して来たかも知れない。
俺にはソレがチャンと分かっていた。
しかし俺は逃げた。
否、
だからこそ逃げた。
が、正しい・・・か?

ただ、

『初めての出会いは美しくありたい』

そんな淡い思いが先立っちまったって訳だ。

『・・・』

否、違う!!

それは誤魔化しだ。

『怖くてどうしていいか分からない』

こっちが正解だ!!

・・・・・・・・・・って。

「フッ」

昔は、結構俺も純情してたもんだ。
笑っちまうゼ、全く。

さて、話を戻そう。

この出会いは序章だった。
お互いがお互いの存在を認識するためのホンの序章に過ぎなかった。
だが、充分過ぎる序章だった。

そして次だ!!

次の出会いこそが俺と麻美の物語の本編の開始。

そぅ。

俺達の物語の本編の開始は次の出会いからだった。






土・日を挟んだ翌週月曜日の・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part3

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part3




「次は~、○○高校前。 ○○高校前」

バスの車内アナウンス。
俺はそこで降りるため、それまで読んでいた文庫本を手早くリュックに詰め込んだ。
『ボードレール詩集』だ、柄にもなく。
バスが停留場で止まった。
俺は立ち上がろうと顔を上げた。

その瞬間、


(ドキッ!!)


俺はその場で固まった。
目の前にとんでもなく奇麗な娘(こ)がいたからだ。
スリムで背は女子にしては高め。
抜けるような色白。
それを紺系の制服がより一層引き立てている。
パッチリオメメに高い鼻。
プッくらとした唇、そのラインが上品だ。
それらが瓜実型(うりざねがた)の顔の中に実にバランス良く収まっている。
長めの髪を当時も今も珍しいポニーテールに。
かえってそれが新鮮だった。

その娘は丁度俺の反対側に座っていた。
そして俺より一瞬早く立ち上がっていた。
だから間一髪、目は合わなかった。

良かったのか悪かったのか?

つまりその娘は俺の存在に全く気付いてはいなかった・・・ハズだ。

だが、俺は・・・

そぅ、俺は・・・

『なんて奇麗な娘なんだ!?』

これが俺の麻美に対する第一印象だった。
もっとも、その時その娘の名前が 『朝霧麻美』 で、俺よりイッコ年下だという事はまだ全く知らなかったのだが。

しかしその出来事は、

『オンナは奇麗だというただそれだけで、オトコを殺せる』

― そんな感じの言葉をどこかで見聞きした覚えがある ―

正にその言葉を実感した瞬間でもあった。

それから何日か過ぎたある日。

それが起こったのは、校舎の玄関、下駄箱のある所だった。
その日俺は遅刻しそうだった。

『ヤバッ!! 急がなきゃ!!』

そう思いながら大急ぎで下駄箱の蓋を開け、上履きを取り出し、それに履き替え、靴をしまい、蓋を閉じた。
そして左手で教科書やら体操服の入ったデカイバッグをムンズと掴(つか)み、猛然とダッシュ。
下駄箱前に敷かれているスノコから廊下に飛び移った。

その瞬間、

並んで置かれている下駄箱の角から女の娘が小走りに飛び出して来た。
その娘も俺同様焦っていた。
そこは俺からしてみると、勿論彼女からもだが、丁度死角になっていた。

当然、お互い予期せぬ出来事。
不意打ち食らって互いに、

『ハッ!?』

となったが後の祭り。


(ドシン!!)


俺達は激しくぶつかった。
体力の優る俺が右上腕部で彼女の左肩を突き飛ばす格好になった。
信じらんない事に、その娘は弾みで3メートル位ふっ飛んだ。
右肩に濃いブルーのやや大き目のスポーツバッグをかけたまま、それと一緒にだ。
そして半身(はんみ)の体勢で両手を床に着け、両足を揃えて投げ出し、顔を伏せた “オネェ座り” 状態になっている。
幸い怪我はなさそうだった。
それに服装の乱れも。
つまり短めのスカートは無事、めくれてはいなかった。
チョッと残念な気もするが・・・って不謹慎かなっ?
でも、ムッチムチの色白太ももはバッチリだった。

「アッ!? ご免!!」

俺は急いでその娘に駆け寄った。
その娘の足元まで来た時、その娘が顔を上げた。
その瞬間、


(ドキッ!!)


俺はその場で固まった。
その娘は・・・麻美だった。

「アタシの方こそご免なさい」

その時麻美はそう言った。
理由はどうあれ突き飛ばした俺を非難するのが当然のシチュエイションでだ。
そして自力でユックリと立ち上がった。
俺は手を貸すつもりだったのになんにも出来なかった。
ただ黙っていた。

否、

ただ黙ってジッと麻美の目を見つめていた。
そう、その時俺に出来たのはただ黙ってジッと麻美の目を見つめている事だけだった。
思いもよらない出来事に何も考える事が出来なかったのだ。
ただ呆然としてその場に立ち尽くす以外。
もし、周りに他の誰かがいたら又違ったリアクションをしたかも知れない。
だが、こういう時に限って誰もいない。
俺と麻美の二人だけ、そこにいたのは。

運命ってヤツは時々そういう悪戯(いたずら)をする・・・ってか?

もう麻美は立ち上がっていた。
手を伸ばせば届く位置に麻美の顔がある。
目が合った。
俺は動けなかった。
だが、両手でスポーツバッグを持ったまま麻美も又動こうとはしなかった。

それは、

俺がなんにも出来ずにその場で固まったまま、ただ黙ってジッと自分の目を見つめている訳を理解していたからだった。

その時の麻美もまた、思いは同じだったのだ。






俺と。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part2

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part2




「何? 健ちゃん、話って?」

「ウン。 ・・・」

チョッと口ごもる俺。
そんな俺の様子を不可解そうに見つめる麻美。

しばし続くぎこちない間(ま)。

ここは東京は渋谷にあるとあるビルの中にある喫茶店。
駅からさほど遠くない上、窓越しに眺める景色が好きで待ち合わせするには最高の場所。
俺の、否、俺達の秘密の隠れ家・・・って、チョッと大袈裟か。
それでも、まぁ、秘密基地ってトコかな?

その秘密基地で今俺は恋人の朝霧麻美とデート中。
時間は夜の7時。
俺達お気に入りの窓際の4人掛けのテーブル。
俺がベンチシートで麻美が椅子。
向かい合って座っている。
いつも通りだ。
どっちが先に来ようと関係なし。
このテーブルに着ける時はいつも、決まって麻美が椅子で俺がベンチシート。
二人だけの暗黙のルールってヤツだ。

丁度そこへ頼んだコーヒーが運ばれて来た。
慣れた手つきで俺の前にカップと伝票を置いてウェイトレスが戻って行く。
俺よっか早く来ていた麻美の前にはティーカップ。
中には飲みかけのレモンティ。

「ごゆっくりどうぞ」

一言、そう言って立ち去るウェイトレスの後ろ姿を見送ってから、

「ウン。 実は、いい話つーかぁ、困った事になったつーかぁ。 ・・・」

と、またまた口ごもる俺。

「何? 意味分かんない? 分かるように言って」

「ウン。 あのさぁ、麻美。 俺達って結婚すんのかなぁ?」

「エッ!? 突然どしたの、結婚だなんて? 今日の健ちゃん、なんか変だょ」

「ウン。 俺、今日専務に呼ばれちゃって・・・」

「・・・」

「ブラジル行けって言われちゃって・・・」

「ブ、ブラジル!?」

「ウン」

「ど、どういう事?」

「栄転て事。 つまり出世。 それも大出世。 専務は三階級つったけど、五階級位特進の」

「どの位行ってるの?」

「たぶん最低でも3年、いや5年は・・・。 あるいはもっとかも」

「エェー!? そ、そんなに~!?」

「たぶん」

「・・・」

「行ったら行きっぱなしになると思う。 なんせ地球の反対側だし」

「じゃ、じゃぁ、あたし達。 ・・・」

「そ。 一緒に行くか、遠距離恋愛か、それとも・・・」

「・・・」

「・・・」

「い、いつ行くの?」

「明日、返事して。 今月中」

「エェー!? そ、そんな直ぐ~!? あ、あと2週間もないじゃない!?」

「ウン」

「・・・」

「・・・」

「あたし・・・。 あたし行けないょ・・・」

「ウン」

「・・・」

「・・・」

「断われないの?」

「断わったら、俺、会社止めなきゃなんない。 たぶん」

「・・・」

「・・・」

「あたしダメだょ、行けないょ。 ・・・。 パパ、パパの・・・」

「・・・」

「・・・」

「ウン。 分かってる」

「・・・」

「俺も、行けばダイダイ大出世。 行かなきゃ辞表」

「・・・」

「親は兄貴が見てくれてるから、その心配は要らないんだけど・・・。 会社は止めらんない」

「・・・」

「俺、行かなきゃなんない」

「・・・」

「・・・」

「わ、悪いけど、あたし帰るネ」


(ガタッ!!)


椅子を引く大きな音を立て、隣の椅子に置いてあったバッグを引っ手繰(たぐ)るように取り、それを開け、財布を取り出し中から千円札をつかみ出し、テーブルに置くと逃げるように麻美は店を出て行った。
俺の顔を見る事もなく。

突然の麻美のこの行動に一瞬俺は呆然となった。
ただ、麻美を見つめている事だけしか出来なかった。
だが直ぐに、

『ハッ!?』

我に返った。
そして、

「麻美!!」

俺は大声で麻美の名を呼び、横に置いてあったカバンを慌ててつかみ。
伝票をわしづかみにし、急いで会計を済ませ、麻美の後を追った。
店内にいた客の殆(ほと)んどが、何事だという表情を浮かべて俺の様子を好奇心丸出しで見ていた。
しかし、その時の俺にとってそんな事はどうでも良かった。
どうでも良くないのは大切な人。

そぅ。

その時の俺にとって両親の次に、否、それ以上に大切な人の後を追う事だった。


(タタタタタ・・・)


店の外に出た。
麻美が小走りに道を横断していた。
信号は既に赤。
信号無視して俺も渡ろうとした。
一歩足を踏み出した。

その時、


(ププゥーーー!!)


既に車が走り始めていた。
俺は慌てて渡るのを止めた。
一旦クラクションに反応してその音のする方に移した目線を、再び麻美の後ろ姿に向けた。
そして思った。

『もうダメだ!? 追いつけない!!』

渡りきった道の人込みの中に麻美の姿が消えて行く。
俺はその消えて行く後ろ姿を黙って見ていた。
駅まで追い掛ければ追い掛けられたのだが、それをしなかった。
麻美が駅とは反対方向に走って行ったからだ。
だがそれだけではなかった。
俺が最後まで麻美を追わなかった理由、それは・・・。
分かっていたからだ。
麻美が俺に涙を見せたくなかった気持ちが。
そして俺にレモンティ代をおごらせる事なく、ツリさえも無視して立ち去った訳が。

麻美には半身不随の父親がいる。
半年前、交通事故にあった。
同乗していた母親は即死。
運良く生き残った父親は、不遇な体に。
一人娘の麻美は働きながら献身的に父親の介護をしていた。
否、
しなければならなかった。

俺も麻美の両親は良く知っている。
否、俺だけじゃない。
俺の両親、兄貴さえもだ。
何せ付き合い長いから。
もうかれこれ10年位・・・かな?
俺達が付き合い始めて。
そうだ、10年だ。
早いもんだなぁ、月日の経つのって。

そうかぁ、アレからもうそんなに・・・。

俺達が出会ったのは、俺が高校2年、麻美が同じ高校1年の春。
通学途中のバスの中。

そぅ。

あれは俺が高2で、麻美が高1の春の事だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part1

(第五話) 『道 ― 3は想い出そしてサヨナラの数字―』 Part1

以下は、2008/7/31~2008/08/10に当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ da ピョ~~~ン。。。
これは恋愛物なのじゃ。
そ、れ、も、・・・た~ったの3分間の。。。




「12時・・・ジャストか~。 フゥ~」

それはどんよりと曇った、しかし蒸し暑い7月ある日の事だった。

『イャー。 しっかし暑い。 言いたかないが、イャー暑い。 こんな時にゃ、よっく冷(ひ)えた冷(つめ)た~~~いビールをグビィーっと一杯・・・。 ってムリか


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

ムリか』

俺、加藤健一。
28歳。
リーマン。
一応、知ってる人は知っているっぽい会社の企業戦士。
出世街道にはナントか乗れている・・・ようだ。

今、俺のいるここは信号待ちの交差点。
場所は渋谷。
チッっとバッっか広っぽい道路。
特に何かしてる訳でもないのに、ただ立ってるだけでポタポタ滴(したた)り落ちる汗を拭き拭き、俺は信号が青になるのを待っていた。
手持ち無沙汰だったので何気(なにげ)に腕時計を、チラ見したって訳だ。
すると腕時計の針はジャスト12時00分00秒を告げていた。
気ン持ちいぃーーーぐらいジャストだ。
それからユ~~~ックリと俺は顔を上げた。
そして見るとはなしに道の反対側を見た。
大勢人がいる。
大人に子供、日本人に外国人、老若男女(ろうにゃく・なんにょ)様々だ。
皆、一様に信号が青になるのを待っている。

だが次の瞬間・・・

「アッ!?」

時間が止まった。

俺は思わず声を上げ、その場に立ち尽くしていた。
その大勢の中にいるたった一人の女の姿に目が釘付けになったままで。

『ア、アレは~・・・。 ま、まさか!?』

俺は前に大きく身を乗り出し、もう一度良~~~っく目を凝らしてその女を見つめた。

『否、違う!! まさかなんかじゃない!! アレは~、麻美。 そうだ! 麻美だ!! 間違いない! 麻美だ!!』

俺の目の前、道を挟んだ反対側おおよそ10メートル程先にかつての恋人、朝霧麻美(あさぎり・あさみ)の姿があった。
信号は赤。
偶然の出会いだ。
だが、気付いたのは俺だけ。
麻美はまだ俺の存在には全く気付いてはいないようだった。
俺は一目で分かったのに。

『こ、こんな事があるなんて!?』

俺はまるで絵に描いたような、誰か目に見えない演出家がいて巧みに仕組まれたような、この信じられない再会に驚きと共にある種の感慨めいた物・・つまり運命・・そぅ、運命。

俺はその時運命を感じ取っていたのだ、俺達の過去の回想と共に。
俺と麻美の過去の物語、人生という壮大なドラマの回想と共に間違いなくそれを感じ取っていたのだ・・その時俺は・・確かに。

そして、それが起こったのは今から3年前。
それは今から丁度3年前の7月ある日の事だった。


(トントン。 ガチャ)


「失礼します」

俺は一言(ひとこと)そう言い、


(ギィー、パタン)


伏し目がちに第一会議室に入室し、一礼して顔を上げた瞬間、


(ドキッ!?)


『な、なんだコリャ!? 重役連、揃い踏みジャねぇかぁ。 ま、まいったなぁ』

俺は顔を上げた途端(とたん)大いにビビッタ。
何せ社長を中心に、専務、常務、それに殆(ほと)んどの取締役連中が目の前にデーンと構えているのだ。
丁度、新入社員採用試験の面接時のように。

『ま、まるで面接試験だ!?』

そう思いながら

「第一営業部の加藤です。 部長の加山からこちらへ来るように言われてまいりました」

と俺が言うと。

突然、

「ファーラポルトゥゲス」

と大山専務が訳の分からぬ言葉を口走った。

「エッ!?」

思わず驚きの言葉が口を突いて出た。
すると専務が再び、今度はややユックリ目に同じ事を言った。

「Fala portugues? (ファーラ ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語が話せるか?)

『ン!? ポルトガル語か?』

俺は聞き返した。

「Portuges? (ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語ですか?)

「Sou sim. (ソゥ スィン)」 (そうだ)

「Falo um pouco. (ファーロ ゥン ポゥコ)」 (チョッとだけなら)

「Por que aprendeu o portugues? (ポルケ アプレンデゥ ォ ポルトゥゲース)」 (ポルトガル語を覚えた理由は?)

「Para Copa do Mundo. De 2002. (パラ コッパ ド ムンド。 ジ ドィス ミゥ ィ ドィス)」 (サッカーワールドカップです。 2002年の)

「Copa do Mundo?」 (ワールドカップ?)

「Sou sim. (ソゥ スィン)」 (そうです)

 ・・・

 ・・・

 ・・・

というような、そんなポルトガル語のやり取りがしばらく続いた。
そして最後に専務が一言こう言った。

「Bem, voce fala portugues, nao esta mal. (ベン ボセ ファーラ ポルトゥゲース ナゥン エスタ マゥ)」 (よろしい。 君のポルトガル語は悪くない)

「Muito obrigado. (ムィント ォブリガード)」 (有難うございます)

ここで専務が意味有り気に社長に目配せ。
すると社長が、

「以上だ。 ご苦労。 下がって宜しい」

そう言った。

「ハッ!! 失礼致します」

俺は訳も分らず、狐にでもつままれたような気分で一礼してその場から退出した。

『今のは一体何だったんだ? ポルトガル語の試験か? しっかし専務があれほど堪能だったとは・・・? それにしても俺が片言とは言えポルトガル語を話せるのを一体ドッから? ・・・』

と、そんな事を思いながら。

あぁ、そぅだ!?

子供ン時からサッカー少年だった俺は、一時は本気で将来はブラジルにサッカー留学したいなんゾと真剣に思い込み、むか~しポルトガル語をチョッとかじった事があった。
それが2002年、日本でワールドカップが行なわれたのを契機に会話位はと思い、暇な時に会話の練習らしき事を始めていた。
まぁ、忙しい身だから本格的にという訳にはゆかず趣味程度ではあったんだが。
その成果が今日チョッと出た・・・かな?

しかしアレは、さっきのアレは一体何だったんだろうか?

そしてその日はそれで何事もなく終わった。
次の日も。
その又、次の日も。

だが、3日後。
再び、今度は専務室に呼ばれた。


(トントン)


「第一営業部の加藤です」

中から声がした。

「入りたまえ」

専務の声だった。


(ギィー)


「失礼致します」


(パタン)


ドアを閉めて一礼してから専務に聞いた。

「何か御用でしょうか?」

「あぁ。 まぁ、楽にしたまえ」

「はい。 有難うございます」

「単刀直入に言おう。 君には至急ブラジルに飛んでもらう事になった」

「エッ!?」

「君の事は調べさせてもらった。 その上での決定だ。 実は、一週間ほど前。 我が社のブラジル支社の支社長が交通事故に遭ってな。 幸い命に別状はなかったのだが、当分現場復帰は難しいとの報告があったんだ。 よって至急、後任を送らねばならなくなった。 ポルトガル語の出来る社員をな。 何人か候補がいた中で君にその白羽の矢が立ったという訳だ。 君のコレまでの実績を評価しての事だ。 それにマァマァ言葉にも不自由はなさそうだしな。 当面は支社長補佐という肩書きになるが・・・。 どうだ? この話受けてくれるな?」

「は、はぁ。 し、しかし・・・」

「何だ? 嫌なのか?」

「い、否。 あ、あまりに突然だったものですから・・・」

「あぁ、そぅか。 まぁ、ムリもない。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

もない。 だが事は緊急を要す。 モタモタしている暇はない。 この人事は異例の大抜擢だ。 三階級特進とでも言った所か・・・。 君にとっても悪い話ではないはずだ。 今すぐにとは言わない。 良く考えて返事は明日中でいい。 我が社は今 BRICs(ブリックス)、取り分けブラジルに一番注目している。 それに見合う投資もしているし、これから更に倍増する予定でもある。 その支社長補佐ともなれば本社の営業部課長、否、次長格だ。 否、もっと上か。 いずれにしてもそこを良く考えるように。 この話受けてくれるようなら今月中にはフライトしてもらう。 速やかに身辺整理をしておくよう。 以上。 下がって宜しい」

「は、はい。 失礼致します」

「ウム」


(ギィー。 パタン)


一礼して部屋を出て直ぐ、俺は思った。

『ブラジルかぁ・・・。 それにしても何て急な。 だが・・・』

会社人間の俺に取ってこの話は、正に青天の霹靂(へきれき)、

『ダルマさんが転んだ』

あ、違うか!?

『幸運の女神様が微笑んだ』

だ!?

そぅ。
それ以外の何物でもない。
何せ、異例の大出世なんだからな。
エヴァ(エヴァンゲリオン)に例えるなら、ヤシマ作戦で初号機が第5の使徒ラミエル(新劇場版では第6の使徒)に対して放った、ポジトロン・スナイパーライフル(陽電子砲)3発分位の威力だ。
もぅ、気分は最高。
ウハウハ状態。
躍り上がらんばかりだ。
問題なんてありゃしない。
断る理由なんて、ナァ~ンも・・・な。

『アッ!?』

あった!?

たったの一つ。
そぅ。
たったの一つがあった!?

そしてそのあった、たったの一つが・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・問題だった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』

(第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』




ある真夏のとっても暑い日のチョッピリ暖かい・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、は、な、し~~~


そのヒトはサンタクロースでした。
そしてそれは夢だったのです。

私は朝霧麻美(あさぎり・あさみ)。
ジャスト二十歳(はたち)の女子大生。
子供の時から読書が好きで、気が付いたら国文科に・・・。

私は今、大学の近くのカフェテラスでティータイム中です。
このお店はオープンカフェになっていて、私は歩道の中に出ているテーブルの内の一番端っこのテーブル・・いつものお気に入りのテーブル・・に座っています。
その私の直ぐ脇を色んな人達が通り過ぎて行きます。
サラリーマンにOL、学生に子供、年配の老夫婦に若いカップル、白人に黒人、西洋人に東洋人、etc.・・・。
それこそ様々な人種の色んな人々が私の直ぐ脇を、ある人はユックリと、ある人は早足で、ある人は小走りに・・・、通り過ぎて行きます。
みんな夫々(それぞれ)に人生という長~い旅の中のほんの一瞬の光を受け、影を落として行くのです。
ここに・・・私の座っている直ぐ側に。

って、私ったら今日はチョッピリ哲学者・・・かな?

「(クスッ)」

なんか変、自分でも少し可笑しいです。

今、私は左手にモカの入ったマグカップを持っていて丁度一口すすったところです。


(ゴクッ!!)


ミルクとシュガーでマイルドになっているとはいえチョッピリほろ苦いリキッドが、口の中から食道経由で胃までの間を3秒掛けて、ユックリとしかし短い旅をして行きます。

『フゥ~。 おいしい・・・』

コーヒー大好き人間の私にとって正に至福の一時です。
特に、最初の一口目は・・・。

その美味しいコーヒーの入ったマグカップを持つ反対の手には、一冊の文庫本が握られています。
ナゼかそれは詩集。
著者はポール・ヴェルレーヌ。
本当は源氏物語の一巻目だったはずなのに・・・。

そんな私ですが、今朝夢を見ました。
それも私の夢を。
そこには誰もいなかったのに。
でも私の夢でした。
見知らぬ場所にある、見覚えのない、奇麗で小さい部屋の中に姿の見えな私はいました。
姿の見えない子供の私が・・・。

「おゃ!? どぅしたんだい、お嬢ちゃん? 元気ないネェ」

不意に背後から声が。
太く大きな大人の男の人の、それでいて優しさに満ち溢れた声が。


(スゥ~)


反射的に振り返った私は、チョッとビックリしました。

ナゼかって?

「(フッ)」

簡単です。

私の目の前には真っ白なヒゲを豊かに生やした、お相撲さんのように大きくてデップリしたサンタさんが立っていたからです。
サンタさんは、所々白の入った真っ赤な服と帽子を被(かぶ)ってジッと私を見つめていました。
とても慈愛に満ちた目で。
そしてニッコリと微笑(ほほえ)んだのです。
その姿を見て姿の見えない私も思わずニッコリと微笑み返(がえ)しをしていました。

変ですネ。
姿が見えないのに。
でも、チャンと微笑み返しをしたんですょ。

そしてこう言いました。

「ウン。 独りぼっちで寂しいの」

するとサンタさんは、

「元気をお出し、お嬢ちゃん。 おじさんがいい物を上げよう」

そう言いながら白くて大きな袋の中から、花模様の奇麗な包み紙でキチンと包装された手の平サイズの小箱を取り出し、私の両手の上にソッと乗せてくれました。

「これはなぁに?」

「これはネ。 幸せの魔法の小箱だょ」

「幸せの魔法の小箱?」

「あぁ、そぅだょ」

「開けてもい~ぃ?」

「あぁ、いいょ。 開けてご覧」

私は急いで真っ赤なリボンを解き、包んである奇麗な包装紙を破かないように注意深く開き、その小箱の蓋を開けました。
ワクワクドキドキしていたのを覚えています。

蓋を開けた時、

「チチンプイプイ  アブダカダブラ  ホーヤレホー」

と一言、声が聞こえました。
否、聞こえたような気がしました。

でも・・・

箱の中には何も入ってはいませんでした。
その箱は空っぽだったのです。

「おじちゃん。 ナンにもないょ、空っぽだょ」

不意に私は悲しくなり、半べそをかいてそう言いました。
サンタさんはそんな私を慰めるように、

「いいゃ、チャンと入っていたょ。 何か声が聞こえなかったかい?」

優しくそう聞き返しました。

「ウン。 聞こえた」

「そぅ。 それがプレゼントだょ。 もぅお嬢ちゃんは独りぼっちじゃないょ。 いいかい、幸せを放しちゃ駄目だょ。


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

だょ」

最後にそう言い残してサンタさんはソリに乗って空高く飛んで行き、やがて姿は空の彼方に。
私は八頭立(はちとうだ)てのトナカイに引かれるソリに乗ったサンタさんの後ろ姿が、空の果てへと消えて行くのをただ呆然として見上げているだけでした。

そこで目が覚めました。

6月なのにサンタさん。

「(フッ)」

お、 か、 し、 い、 ・・・。

そんな夢を今朝、私は見たのです。

目が覚めた後、チョッピリ私はセンチになっていました。
そんな事をボンヤリ思い出しながら、ヴェルレーヌの詩集を一旦テーブルの上に置き右手でパラパラとページを繰(く)っていました。

『「言葉なき恋唄」 巷(ちまた)に雨の降るごとくわが心にも涙ふる かくも心ににじみ入る このかなしみは何やらん? ・・・。 か。 フーン』

詩の一節を目で追いながら、二口目のコーヒーをすすろうと左手に持ったマグを口元に持ってきた正にその時です。

「あれ!? もしかして・・・?」

不意に誰かに声を掛けられました。
その声に引っ張られ、私は顔を上げました。

「ヤッパリそぅだ!! 君だ君だ!!」

「エッ!? 貴方は?」

「ホラッ!? 僕ですょ、僕。 今朝、新宿の○○書店でぶつかった」

「あぁ、あの時の・・・」

私はチョッとムッとしました。
その人は今朝、私が源氏物語の文庫本を買った書店で私を突き飛ばすようにぶつかり、たった一言、

「ご免!!」

そう言っただけで、ぶつかった弾みで床に落とした本の入ったその書店の紙袋を自分の分だけササッと拾い上げ、逃げるように立ち去って行った無礼なヤツだったからです。

「アッ!? その本その本!! それ!! 僕のですょネ。 僕の」

そう言いながらソヤツは持っていた○○書店の紙袋から源氏物語の文庫本を取り出して私に差し出しました。

「これ、君のでしょ」

「アッ!?」

確かに私が買った本です。
否、だと思います。
状況からして。

「いやぁ。 さっきはホンッッッッットご免。 超急いでたモンで。 君を突き飛ばしちゃったのに、散らばった君の手荷物拾うの手伝いもしないで。 それに間違えて君の袋拾っちゃって。 ホンッッッッットご免」

『私の源氏物語の文庫本を両手で挟んで拝まれた日ニャ、勘弁せぬ訳には行かぬ。 コイツいい奴かも・・・』

「いいですょ。 もぅ済んだ事だし。 じゃぁ、交換しましょ」

そう言って私はヴェルレーヌを彼に差し出しました。
彼も源氏物語を私に。

「あの~。 今一人? 待ち合わせ?」

「一人」

「なら、チョッとここいっ? 貴女とお話しがしたい。 これもきっと何かの縁じゃないかと・・・」

って、チョッと強引。

でも、


(コクッ)


成り行き上、私は無意識に頷いていました。
ま、思ったほど悪い人でもなさそうだったので。

「じゃ、失礼して」

私は彼が俯(うつむ)きがちにテーブルの反対側の椅子に座るのを見ていました。
そして彼が顔を上げました。

その時です。


(ドキッ!!)


突然の出来事にやはり少しばかり取り乱していたのでしょうか、平静さを取り戻し、間近で見る彼の顔はとても美形だったのです。
それまで全く気付きませんでした。
それにスリムで長身。
年齢は24、5位・・・かな?
紺のスーツが良く似合っていて、深くて濃い赤っぽいシルクのネクタイが純白のワイシャツにセンス良く引き立てられています。
それらがバランスよくマッチングしていて彼をモダンな都会っ子に仕立てていました。

一方、私は紺のデニムのジーンズにオレンジのティーシャツ。
それにかかとの高い赤いパンプス。
一見ドコにでもいる普通の女の子ルックです。

『ハ、ハンサム!? チョ、チョッと負けソ』

予想外の展開に付いて行けず私の胸はドキドキしていました。
でも次の瞬間、私は目が “点” になったのです。
彼のこの一言で。

「ワシっ。 あ!? いいい、否、ぼ、僕。 ・・・」

どぅやら私だけではなく、彼もまた緊張していたようです。
強引だった割には。

「プッ!?」

思わず私は吹き出してしまいました。

「(フッ)」

彼も照れ笑いを浮かべています。
この短いやり取りが、二人の間に有った何とも言えない緊張感を一気に吹き飛ばしてくれました。

「僕、加藤健一。 リーマン。 君は?」

「朝霧麻美。 学生、大学生」

「ウ~ム。 朝霧麻美さんかぁ」

「はい」

「実はこの本もう諦めてたんだ。 だから買い直すつもりだったんだ。 でも・・・」

彼はチョッと口ごもりました。

『ン!? でも?』

ここで一旦会話が途切れました。

「何になさいますか?」

ウエイトレスが注文を取りに来たからです。

「あぁ。 コーヒー。 モカ、なければ・・・。 ウ~ン。 彼女と同じの」

そう言って、私の左手にあるマグを右手人差し指で指さしました。

「あの~、これ。 モカなんだヶど」

マグを指差された弾みでそんな余計な言葉が口を突いて出てしまいました。

『ハッ!? し、しまった!? 揚げ足取っちまったゼ』

この時、既に私は彼に何となく好意を寄せ始めていたのです。

『マ、マズイ!?』

彼の心証を害してしまったのではないかと一瞬不安になりました。
下手をすると空気が・・・。

すると彼は、

「ビンゴ!!」

もう一度、今度は力強く弾みを付けて私のマグを指さしてそう言い、

「じゃ、ないかと思ったんだ」

と付け加えました。
そして改めてウエイトレスに向かって一言、

「モカ」

キッパリとそう言い直したのです。

「はい。 モカお一つですネ」

「ウン」

彼のこのチョッと気の利いたって言うかぁ、イナセなって言うかぁ、見事な切り返しのお陰で私は救われました。
空気が悪くならずに済んだのです。
それと同時にそんな彼に完全に心を開いてしまいました。
完全武装解除です。
つまり無防備になっちゃったって事ですネ。
だから、立ち去るウエイトレスの後ろ姿を見送ってから再び私の方を向いた彼に、素直にこう聞くことが出来ました。

「『でも』 って?」

「でも? ・・・。 あぁ!? でも奇遇だねって言うつもりだったんだ。 違う?」

「ウゥン、違わない」

既にわだかまりは全くなし。
会話はもう自然。
たった今出会ったばかりなのに。

『アッ!? 違うか? 二度目だった』

そして・・・

それから30分が過ぎました。
それもアッという間に。
それ程会話が弾んだのです。

でも、そろそろ私は午後の授業に。
彼はもう10分、そこで時間を潰してから得意先との約束の場所に。
お互い行かねばなりません。

その別れ際です。

「麻美さん。 今夜開いてる?」

この時既に、苗字ではなく名前にさん付けです。
早いでしょ。
もう、いい感じになっちゃてたんです。

『アッ!?』

でも断わっとくけど、私はそれ程軽くはありませんょ。
二人の波長がぴったんこカンカンだっただけですょ。
それにお互い付き合ってる人もいなかったし。

「ウン。 開いてるょ」

「良かった。 あのさぁ、食事に誘いたいんだけど・・・。 駄目?


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

駄目?」

「ウゥン。 いいょ」

「ヨッシャー!! デート決定!!」

「(クスッ) ドコで?」

「ウ~ム。 それはまだ考えてはオラヌ。 取りあえず7時にここ。 じゃ、なくってぇ。 新宿の○○書店。 初めてワシラが出会ったトコ。 どう?」

「ウゥン。 初めて出会ったトコは嫌」

「エッ!?」

「(クスッ) 初めて “ぶっかった” トコ。 なら・・・おk」

「ナイス!! それ、採用!!」

「(フッ) なら、7時。 ○○書店。 アチキラがぶっかったトコネ」

「そ」

「最高のハンサムさんで待っててくれる?」

「あぁ。 トビっきりの笑顔で来てくれるんならネ」

「(クスッ) ・・・。 じゃ、ネ。 バーィ」

「ウン。 バーィ」

手を振りながら立ち去る私に向かって手を振る彼に見送られ、私は大学に戻りました。
気分は最高。
もぅ、ルンルンです。
そこでの30分で恋人宣言はまだでした。

ヶど、今夜それは間違いなく・・・。

そして思い出したのです。

何をかって?

そ、れ、は、・・・・・・・・・・今朝の夢。

サンタさんの夢。
幸せの魔法の小箱の夢。

そう、あれは・・あの言葉は・・小箱を開けた時に聞こえたあの言葉は、きっと 『恋の・ジ・ュ・モ・ン(呪文)』。

そうです!!

恋の呪文・・・それがサンタさんの贈り物だったのです。

今日は6月24日。
夏真っ盛り。
真冬の12月24日のクリスマス・イブまで、まだあと半年。
チッチャイ私達二人を乗せてるおっきな地球の休む事のない旅は、太陽の周りをあと半周分残しています。

でも・・・

でも私は今、胸を張ってこう言いたいし、言わせて欲しい。
だってルンルン気分でハッピーだもン。
だから言います。
感謝を込めて。
天に向かって両手を広げ、たったの一言、大きな声で・・・






「メリー・クリスマ~~~ス!!」






(第四話) 『6月24日のメリー・クリスマス』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その6-(最終回)』

(第三話) 『朝の恋人 -その6-(最終回)』


朝。

JR山手線、高田馬場駅8時17分発、いつもの電車。
ドアが開いたので乗り込んだ。
スゥーっと、引かれるように俺の首、どういう訳か左に振れた。
自分の首のはずなのに。
そしたらそこに彼女がいた。
2m位先だった。

『エッ!? 何で?』

ジッと俺を見つめてる。
悲しみと期待と不安が入り混じったような目をしてた。
しばらくそのまま見つめ合う。
悲しそうな表情に、チョコットばっかズッキンだ。
そして・・・
俺は目を切った。

『参ったなぁ。 ドウしましょ』

な~んて思いつつ、窓から外を眺めていたが、視野に入る彼女の視線が痛い。

少し経ったら目白駅。
着いたら当然ドアが開く。
乗り降りする乗客達を、彼女の視線を感じながら眺めてた。

そしたら、
一人の女性が目に入る。
こっちに向かって走ってる。
ドンドンドンドン近付いて来る。
その娘とドアと競争だ。
どっちが早いか競争だ。

ドアかその娘か?
その娘かドアか?

タッチの差で間に合った。

「エィ!!」

っとその娘は飛び乗った。
そしたら直ぐに、
待ってましたとばかりにドアがガチャン。


(ガラガラガッシャン!! パ~~~ン!!)


ハァハァ~、ハァハァ~、呼吸を整えて、
照れくさそうに微笑んで、
その娘は俺にこう言った。

「フゥ~、間に合ったぁ。 オッハヨー!!」

歳は二十歳の女子大生。
笑顔の可愛い女子大生。

俺はニッコリ笑ってこう返す。

「おはよう」

そぅ。
その娘が俺の新しい
朝の恋人 『その名は菊乃』。

否(いや)、違う。
朝の恋人 『その名は菊乃』 
そんな女は
もういない。

目の前に、今いるその娘は本物の。
俺の恋人 『その名は麻美』。

そう、

『朝霧麻美(あさぎり・あさみ)』

見つけたのは10日(とおか)前。
ゲットしたのは3日前。
出来立てホヤホヤの恋人だ。

「寝坊しっちゃった?」

「うん。 エヘヘ」

しばらくすると池袋。
後ろがチョッと気になるが、
振り返らずにそのまんま、東口で降りました。

そして一緒に改札口。
そこで二人は右左(みぎひだり)。
俺は会社で麻美は私鉄。

今夜7時に池袋。
パルコでデートのお約束・・・

「じゃ、今夜ね」

「あぁ。 7時ジャスト。 又、ダッシュで来んのかな? さっきみたいに・・・」

「うぅん。 そんな事ないょ、ダイジョブだょ。 エヘヘ」

「ホント?」

「うん」

「良し!! じゃ、7時!?」

「うん、7時。 じゃ、ね!?」

「あぁ。 じゃ、な!?」




(第三話) 『朝の恋人』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その5-』

(第三話) 『朝の恋人 -その5-』




次の日、その次と休日だ。
当然、いつもの電車は来なかった。

早く来い来い月曜日。

もっとも、こっちも予定があった。
土曜は、新宿で親睦会。
ニッチョは、渋谷で懇親会。
一杯機嫌で渋谷で乗って、ほろ酔い加減で馬場に着く。
時計の針は、夜の12時丁度を指している。
浮かれ気分で改札口をチョィ千鳥足で出るはずだった。

が、

その場で俺は凍(い)て付いた。

 ・

 ・

 ・

目の前にはこの俺の “朝の恋人 『その名は菊乃』” が立っている。
それも一人ではなく、男と一緒。
そいつと腕を組んでいた。
何をした後かは、ピンと来た。
受けたショックはデカかった。

一瞬、彼女と目が合った。
彼女は、
サッと目を伏せた。
スッと色をなくしてた。
ぎこちなくすれ違う。
知らぬは相手の男ばかりなり。

現実なんて、ソンなもん。

ルンルン気分は直ぐに失せ、その日はそのまま不貞寝(ふてね)した。
こんな時、眠れないのが普通だが、直ぐにぐっすり眠れた事に、目が覚めてから驚いた。
きっと酒の力(ちから)に違いない。

その日の朝は、チョィ気まずい。
だから1本早い電車に乗った。
当然彼女は乗ってない。

その次の日もおんなじだ。

その次も。

 ・
 ・
 ・

ふと、気付いてみれば菊乃の事は、もうドウでも良くなっていた。

『チョッとモッタイなかったなぁ』

位になっていた。
その気分の変化に・・・
我ながら驚いた。

いつの間にやら乗る電車。
高田馬場駅8時17分発が普通になった。
そして、それから一ヶ月。
彼女の事は忘れてた。

駄菓子菓~~~子(だがしか~~~し)!!

本日の・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その4-』

(第三話) 『朝の恋人 -その4-』




今日は嬉しいハナ金だ。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗ってはいたが、
またまた、いつもと違ってた。

彼女がいたのはドアの側(そば)。
いつもは奥のはずなのになのに。
そして俺を見つめてる。
彼女の覚悟が目に出てた。

『ヨッシャー!! 行くぞー!!』

ナンゾと思ってはみたが、
中々彼女に近付けない。
客が邪魔で近付けない。
彼女は彼女で頑張ってる。
俺と引き離されないよう頑張ってる。
その必死さ、ひた向きさが伝わった。

俺は俺で、その日に限って上手くない。
4人組の学生達が、
やったら邪魔で動けない。
挙句の果てに目白駅。
ヤツ等と一緒に降ろされた。
慌てて乗ってはみたものの、
彼女はズ~っと奥にいた。
と言うより、いなきゃならない状況だった。

そんな彼女にナンの気なしに。
否(いや)、 “反射的に” と言うべきか?

チョッピリ照れくさそうに、首をかしげて肩をすくめる、やれやれポーズを取ってみた。
つーよっか、今流行の “クリオネ” ポーズとでも言うべきか?
もちろん相手は彼女だが。
彼女はにっこり微笑んだ。

『ヤッタゼー!!』

初めて心が通じた瞬間だ。

駄菓子菓子(だがしかし)、
無情にも着いちまったぜ、池袋。

「 Oh! No!! 」

見つめる彼女を見つめながら、後退(あとずさ)りしながら降りました。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その3-』

(第三話) 『朝の恋人 -その3-』




次の日。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
しかし、今日は声なき声は出なかった。
それが、いつもと違ってた。

彼女の視線は俺の頭上の中刷り広告。
しか~し、
目以外の目は、俺だった。
確かにコッチに向いている。

『間違いない。 やっぱり菊乃は俺を・・・。 間違いなく意識してる』

俺のチキンな “はぁと” はドキドキで、まともに彼女を見られない。
だけど情けない事に、見たくて見たくて仕様がない。
だからチラッ、チラッとさり気なく。

そう、チラッ、チラッとさり気なく・・・

駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の目線は変わらない。
当然、心の目線も変わっていない。
目白で乗客が乗り降りしても、その状況に変化なし。
とうとう着いちまったぜ、池袋。
再び気分は複雑だった。

そして、
次の日。

ナゼかその日は木曜日。

いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
そして、今日も俺は無言で乗った。
彼女も昨日と同(おんな)じだった。
けれども、昨日と一つ違ってた。
心のつぶやきではなく、言葉に出そう。
そう俺は決めていた。

「やぁ、おはよう」

ってな事を、言ってみようと覚悟を決めて、
人ごみを掻(か)き分け掻き分け近付いた。
なんとか彼女の前に出た。

『来る!?』

彼女も察知したようだった。

『いよいよだ』

そう思って、大きく息を吸った・・・

・・・・・・・・・・その時だった。

彼女がサッと体を翻(ひるがえ)し、近寄る俺から逃げちゃった。
逃げたといっても、まぁ、別に。
走って逃げた訳じゃない。
背中をコッチに向けただけなのだが。

駄菓子菓子(だがしかし)、
ホンの一瞬の出来事だったが、彼女の気持ちが伝わった。

『怖い!!』

その気持ちが伝わった。

もっとも、
出鼻をくじかれちまったとはいえこの俺も、

「フゥ~」

チョッピリ安心したのも・・・

・・・・・・・・・・間違いない。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その2-』

(第三話) 『朝の恋人 -その2-』




「おっ、はようー!! 菊乃ー!! 今日も元気か~い?」

なんて又、
彼女の横顔に、心の中でそう告げる。
いつもの朝のご挨拶。
もちろん菊乃は聞いてない。
声なき声の片道切符。
見ているだけで幸せな。
いつもの朝のセレモニー。

JR山手線外回り、高田馬場を午前8時20分に出る電車。
高田馬場~池袋。
月曜日~金曜日。
4分間の物語。
コイツが俺の日課になった。
全く飽きる事がない。

そんなある日。
いつもの電車に飛び乗った。
今日も彼女は乗っていた。

「やぁ、菊乃。 俺のベイビーはハッピーかい?」

心の中でいつものようにそう告げる。
ところがどっこい、その瞬間。
突然、彼女がコッチを向いた。


(ドキッ!?)


『う!? ヤバ!? め、目が合っちまった!?』

そのまま俺は固まった。
そして彼女は少しだけ。
ほんの少しだけ俺を見て、


(スゥ~)


っと、視線を窓の外。

駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の横顔は間違いなくコッチ向き。
目じゃない目が俺を見る。


(バギューン!!)


瞬間、俺は悟ってた。
確かに確かに悟ってた。
『愛の世界』 に踏み込んじまっていた事を。
『男と女の愛の世界』。
もう後戻りなんか許されない。
そんな事など出来っこない。
『男と女の愛の世界』。
確かに俺は踏み込んだ。

それまでは・・・

窓の外、流れる景色を見ている彼女の横顔を、ただ見ているだけで満足だった。
だーから~、
俺の視線に彼女が気付いた事など無頓着。
考えた事すら一度もない。

でも、現実は・・・

そぅ、現実は・・・

もっとも、その日はそこまでだった。
が、
不安定な気持ちで池袋。
先を急ぐ乗客達に、押されるように降りました。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第三話) 『朝の恋人 -その1-』

(第三話) 『朝の恋人 -その1-』




以下は、 2007/02/14~2007/02/19 にかけて当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ DEATH ょ~~~ん。

チョッピリ手くわえてっヶど・・・                       

内容よっか、リズムで読んでちょ。






(ガラガラガッシャン!! パ~~~ン!!)


「フゥ~、間に合った~」

JR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車内でのハプニング。

俺、加藤健一 (かとう・けんいち)。
25歳。
一応、しがないサラリーマン。

住まいは、東京は新宿の高田馬場。
会社の所在は池袋。
自宅から会社まで、JR山手線高田馬場駅~目白駅~池袋駅間の約4分を加えて、ドア・トゥー・ドアで30分。
朝は決まってJR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車を使う。

それは二ヶ月前の事だった。
その日はチョッと朝寝坊。
家から電車のドアちゃんまで、走りに走って飛び乗った。
危うくセーフでいつもの電車。
チラッと眺めた腕時計。
8時20分を告げていた。

周りの人に息を掻けないように、

「スゥー、ハー。 スゥー、ハー。 ・・・」

下を向いて深呼吸。

お隣、目白駅に着いた頃には治まった。
降りる客が多いので、そこから先はチョッと空(す)く。
顔を上げたら車内刷り、癖になってるいつものチェック。
あちこち眺め回して目線を下げた。
事件が起きたのはその時だ。


(ドキッ!!)


「オットー!?」

おっでれーた。。。

3m先に素敵な女性が立っている。
窓からジーッと、外を流れる景色を眺めてた。
その横顔が美しい。

『綺麗な女性(ひと)だなぁ』

チョッとため息吐いちゃって、そのまま静かに見とれていると、いつの間にやら池袋。
仕方がないので降りました。

次の日、余裕でいつもの電車。
その日も彼女は乗っていた。
さりげな~く車内を見回しちゃって、誰にも見られてないのを確認し、

『チェック完了!!』

ナンゾとそう思い。
ユックリ見惚(みと)れる事にした。

その次の日も同様で、

その次も又同じ。

 ・・・

そんなある日の事でした。
いつものように彼女に見惚れていると、


(ピッ、コーーーン!!)


閃(ひらめ)いた。

『ナンテ名前かな?』

って。

当然、俺には分からない。
だから、適当なのを付けてみた。
いろんな名前を試してみたが、中々いいのが浮かばない。
なんかないかと考えた。

ケイコ、 ユキエ、 ミキ、 ヒロミ、 ・・・。

『ウ~ム』

結局いいのが浮かばない。
そんなこんなで池袋。
着いちゃったので諦めた。
ドアが閉まったその瞬間、


(ピッ、コーーーン!!)


もう一回、閃いた。

『菊乃 (きくの)!?』

ナゼか分からないが、そう閃いた。
そしてコイツが気に入った。

『そうだ! 菊乃!? うん、菊乃。 コレがいい。 良~し、決めた。 菊乃だ! 菊乃!! ホニャララ・菊乃!!』

その瞬間、

彼女は俺の朝の恋人 『菊乃』 になった。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

つづく





『ミルキー・ウェイ』 (第二話) 『ホワイト・クリスマス』 チョッと薀蓄

(第二話) 『ホワイト・クリスマス』 チョッと薀蓄

2006/12/25のコマルのコラム


チョッと薀蓄 Part 2


前回投稿した “ミルキー・ウェイ (第二話) 『ホワイト・クリスマス』” の挿入歌に使った 『クリスマス・イブ』 ですが、実はコレではなく、タイトルと同じ 『ホワイト・クリスマス』 にしようかなって思ってました。


このホワイト・クリスマスという歌は、映画 『スイング・ホテル』 の中の挿入歌で大ヒットした曲です。

「『ホワイト・クリスマス』 って曲、ご存知の方多いですょネ」

な~んてホザイタラ

「バカヤロ~~~!?」

って、言われちゃいそうな位ポピュラーですネ。
そしてとってもいい曲です。

「だったらナゼ、コレにしなかったの?」

って、思う人もいるかもしれません。
その訳は簡単です。

“映画 『スイング・ホテル』 に、チョコッとだけど引っかかるトコがあったから”

いい映画でハッピー・エンドなんだヶど、最後の方でビング・クロスビー演じる 『ジム』 がほんのチョッと女々しくて。

だ・か・ら・!!

でも、競演の清水圭みたいな顔してるフレッド・アステアのタップダンスは、とっても良いですょ。

あ!?

勘違いしないでネ。
ビング・クロスビー “演じる” ですよ、ビング・クロスビー “演じる”。
ビング・クロスビーの甘い歌声は、中々のモン。

特に、

『ホワイト・クリスマス』 を歌ってる時にクリスマスツリーの飾り付けのベルを叩くシーンと口笛は・・・

とっても・ス・テ・キ・!!


以上

軽い薀蓄ですた


あ!?


それと、 『スイング・ホテル』 の DVD は、500円で売ってますょ。

画質悪いヶど・・・





『ミルキー・ウェイ』 (第二話) 『ホワイト・クリスマス』

(第二話) 『ホワイト・クリスマス』




以下は、2006/12/24(クリスマスさん家のイブちゃん)に当ブログ管理人が今は無き Doblog にうpしちゃったヤツ DEATH ょ~~~ん。



業務連絡、業務連絡


読者の皆さんへ


今日は
嬉しい
『クリスマス・イブ』

だから

日頃の
ご愛読に
感謝して

『コマル』
から

ささやかな
『クリスマス・プレゼント』

チョコット
ですが
心を
温めて
下さい。

フトコロは
無理
ですけど。

 ・

 ・

 ・

コ・レ・で・↓・(今夜、新宿に雪が降っちゃいますように エイメン)






私は・・・知っていたのです。

次の列車だと、新宿アルタ前に着くのが9時になってしまうのを。
私は確かに・・・知っていたのです。

私の名前は朝霧麻美(あさぎり・あさみ)。
25歳。
OLです。
社命で、 “半年だけ” という条件で地方支社に出張して来ました。
女性の手が必要だったため、男性ではなく女性の私が行く事になったのです。

そして今日。
12月24日。
クリスマス・イブが出張最後の日でした。
夜6時に新宿アルタ前に着けるように列車の手配は済んでいました。

私には恋人がいます。
加藤健一(かとう・けんいち)君と言います。
私は 「健ちゃん」 って呼んでいます。
同い年で幼馴染(おさななじみ)。
そして小、中、高と通して同じクラス。
それに大学まで同じ。
更に、同じ会社に一緒に入社。
嘘のようなホントの話です。

健ちゃんはいい人です。
でも、
何の取り柄もありません。
見た目は平凡。
チョッと大柄で、短足胴長。
動きも鈍くって、スポーツは全然ダメ。


つー、まー、りー、・・・


「駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

頭もそんなに良くはありません。
一言で言うなら。
“ドンくさいヤツ”
そんな感じです。

そんな健ちゃんですが、たった一つだけ “いい所” があります。
そしてそのたった一つのいい所。
それこそが決定的ないい所なのです。
それは “心の温かさ”。
そうです。
健ちゃんは優しくて、思いやりがあって、親切。
そして、誰よりも心の温かい人なのです。

健ちゃんは携帯電話を持っていません。
必要ないからです。
仕事も事務職なので、特に持っていなくても差障(さしさわ)りありません。
その健ちゃんと今夜6時、新宿アルタ前でデートする約束をしていました。
半年前、駅に私を見送りに来てくれた時に決めていたのです。
この半年間、連絡を取り合った事は一度もありませんでした。
普通の恋人同士ならあり得ない事だと思います。
でも私達にはそれが普通でした。
きっと、付き合いの長さがそうさせているのかも知れません。

振り返ってみて、この半年間。
色んな事がありました。
慣れない環境。
初めての長期出張に馴染めない仕事。
等など。
悪戦苦闘の毎日でした。
でも、一つだけ。
そぅ、一つだけいい事がありました。

支店長との出会いです。
支店長といってもまだ32歳で独身。
長身でハンサム。
成績優秀でスポーツ万能。
エリートでジェントルマン。
話題豊富で話し上手。
全てにおいて健ちゃんとは正反対です。
女性なら誰もが、こう思うような人です。

『素敵な人だなぁ』

当然、私もそう思いました。

その支店長に、私はプロポーズされたのです。
それも今日。

「結婚を前提に付き合って欲しい」

そう言われました、ついさっき。
私のために開いてくれた送別会が終わり、私を駅まで送ってくれる途中での話です。
駅までもう目と鼻の先、という所でタクシーを止め、喫茶店に誘われ、そこで。

私の心は揺れました。

だって・・・

だって、そうでしょ。
歳は少し離れてるヶど、将来有望なエリート紳士が。
私に・・この私に・・恋しているのだから。
私だって大学では一応ミスキャンパスでした。
だから健ちゃんと一緒にいると、みんなにこう言われたものです。

「“美女と野獣” ならぬ “美女とカッペ” だね」

もし、支店長と一緒ならきっとこうでしょう。

「『お似合い』 だね」

だから、

「チョッと考えさせて下さい」

と、即答を避けたもののとても楽しい一時(ひととき)でした。
そして、時が過ぎるのを忘れてしまいました。
そうです。
健ちゃんの存在を忘れてしまっていたのです。

『ハッ!?』

と、気付いた時には乗るはずだった列車は既に駅を後にしていました。

『終わっちゃったのかな、アタシ達』

とか。

『私の小指に繋がってるのは、健ちゃんじゃなくって支店長?』

そんな事を考えながら、支店長に見送られて次の列車に乗りました。
東京駅まで3本列車を乗り換えます。
それもローカル線。
本数が少ないうえに連絡が悪く。
一本の差が下手をすると、何時間にもなります。
まして、休日だから尚更です。
更に悪い事に、途中、列車事故に巻き込まれ一時停止による足止め。
幸い、事故列車は私の乗っている列車ではなかったけれど。

私の家は吉祥寺にあります。
だからもう、新宿を素通りして帰るつもりでした。
私の腕時計の針は9時を指しています。
約束は6時。

『もう、いないょね』

そう思ったからです。
でも、体は気持ちと裏腹でした。
気が付いたら、新宿駅を出てアルタの前にいました。
私がアルタに付いた頃から小雪が降り始めました。
粉雪です。
だから、とっても寒いです。
人込みをかき分けて健ちゃんを探したヶどいませんでした。

『そうだょね。 当たり前だょね』

そう思って、帰ろうと振り返ったその瞬間。


(ドシン!!)


誰かとぶつかってしまいました。
すぐに私は。

「あ!? 御免なさい」

相手も。

「こっちこそ、ゴメンネ」

その時お互いの目が合いました。

「あ!? 健ちゃん!?」

「あ!? 麻美ちゃん!?」

お互いを認識したのは、ほとんど同時でした。

「エェ~!? な、何でー!? な、何でいるのー!?」

「『エェ~!? な、何でー!? な、何でいるのー!?』 って、麻美ちゃんと約束したから」

「ズ、ズーッと待ってたの!? ズーッと!? 3時間も!?」

「ウン。 待ってた。 あ、でも麻美ちゃんに会えると思うと嬉しくって2時間前に着いちゃったから、5時間だね。 立ちっぱなしだと寒いから動き回ってたんだ。 (ヴッ、ヘークショーン) 風邪引いちゃったかな? ウー、さぶ」

「ウッ!?」


(ポロポロポロポロポロ・・・)


私は涙が止まりませんでした。

「どうしたの麻美ちゃん? 急に泣き出したりして。 雪が本降りになりそうだね。 風邪引くといけないょ。 さ、どっか入ろ」

「バカ!!」

気が付いたら、そう叫んで。
私は健チャンの胸に飛び込んでいました。

その時初めて、アルタからでしょうか?
山下達郎の 『クリスマス・イブ』 が聞こえている事に気が付きました。
今夜はクリスマス・イブだったんですね。




 『クリスマス・イブ』

 ♪

 雨は夜更け過ぎに
 雪へと変わるだろう
 Silent night, Holy night

 きっと君は来ない
 ひときりのクリスマス・イブ
 Silent night, Holy night

 心深く 秘めた想い
 叶えられそうもない

 ♪




雪が積もり始めて、辺りは段々白くなって行きます。
私は・・・健ちゃんの体に抱きついたまま一言もしゃべれません。
言葉が出てこないのです。
涙は止まらないのに。
健チャンの体は寒さのため冷え切っていました。
手袋をはめていないせいで、まるで氷のように冷たい手をしています。


でも・・・




 ♪

 必ず今夜なら
 言えそうな気がした
 Silent night, Holy night

 まだ消え残る 君への想い
 夜へと降り続く

 街角にはクリスマス・ツリー
 銀色のきらめき
 Silent night, Holy night

 ♪




 A Merry Christmas to you...






ミルキー・ウェイ (第二話) 『ホワイト・クリスマス』 お・す・ま・ひ





『ミルキー・ウェイ』 (第一話) 『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』チョッと薀蓄

(第一話) 『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』チョッと薀蓄

2006/12/07 のコマルのコラム




Lynn Anderson の 『 Rose Garden 』 は、youtube で聞けますょん。

URL は、 

https://www.youtube.com/watch?v=2-eclUz-RYI

と~~~ってもいい曲だぉ。

で?

 歌詞 ↓


『 Rose Garden 』 Lynn Anderson

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime
When you take you gotta give so live and let live and let go oh oh oh oh
I beg your pardon I never promised you a rose garden

I could promise you things like big diamond rings
But you don't find roses growin' on stalks of clover
So you better think it over
Well, if sweet talking you could make it come true
I would give you the world right now on a silver platter
But what would it matter
So smile for a while and let's be jolly love shouldn't be so melancholy
Come along and share the good times while we can

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime
I beg your pardon I never promised you a rose garden

I could sing you a tune and promise you the moon
But if that's what it takes to hold you I'd just as soon let you go
But there's one thing I want you to know
You'd better look before you leap still waters run deep
And there won't always be someone there to pull you out
And you know what I'm talking about
So smile for a while and let's be jolly love shouldn't be so melancholy
Come along and share the good times while we can

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime.....

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime.....



で!?

この曲・・・

チョッピリ南沙織のデビュー曲に似てるでアリンス。

『17歳』 

に!?

南沙織のこの曲は1971年に大ヒットしちゃいました。

これも youtube で聞けちゃいますょん。


『17歳』
作詞・有馬三恵子
作曲・筒美京平
唄・南沙織


【一番】

誰もいない海 二人の愛を 確かめたくて あなたの腕を すりぬけてみたの 走る水辺の まぶしさ 息も出来ないくらい 早く強く つかまえに来て 好きなんだもの 私は今 生きている


【二番】

青い空の下 二人の愛を 抱きしめたくて 光の中へ 溶けこんでみたの ふたり鴎になるのよ 風は大きいけれど 動かないで おねがいだから 好きなんだもの 私は今 生きている


あつい生命に まかせて そっとキスしていい 空も海も みつめる中で 好きなんだもの 私は今 生きている 私は今 生きている・・・



と、こ、ろ、で、・・・


この 『17歳』 は、

作曲家・筒美京平が上記 『 Rose Garden 』 をパクって作っちゃったそうです。

↓ こんなエピソードが・・・

筒美と南が初めて会った時、

の!?

会話。 (内容は、聞きかじりを適当にアレンジ : コマル)

筒美 : どんな曲知ってる?

南 : 『 Rose Garden 』

筒美 : なら、『 Rose Garden 』っポイのを作っちゃえー

で!?

出来たのが、

『17歳』。

だから、

とっても似てるンですね。


ついでにもう一個。

今は、俳優・江口洋介のカァちゃんになっちまってる森高千里が昭和天皇崩御の後、

『17歳』


を!?

カバーしたそうです。

売れたかどうかは分かんないヶど。

以上。

軽い薀蓄ですた。

・・・・・・・・・・・・・・ written by コマル





『ミルキー・ウェイ』 (第一話) 『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』

(第一話) 『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』




そこは・・・

・・・・・・・・・・レストランに変わっていました。

私は朝霧麻美(あさぎりあさみ)。
25歳。
独身。
恋人なし。
デザイナーです。
子供の頃から絵が好きで、美大に進学しました。
今は東京のデザイン事務所で働いています。



それは・・・

・・・・・・・・・・私が高校2年生の終わりに起こりました。

当時、私の両親は小さな “バラ園” を経営していました。
さほど裕福ではなかったものの、両親、私、弟の4人暮らしの明るい家庭でした。
ところが突然、父が倒れたのです。
病名は “すい臓癌”。
三ヵ月後に亡くなりました。
母は立ち行かなくなった “バラ園” を手放し、私と弟を連れて実家に帰る事に決めました。

その当時、私には恋人がいました。
幼馴染(おさななじみ)でイッコ年上の加藤健一(かとう・けんいち)君です。
私は 「健ちゃん」 と呼んでいました。

私は健ちゃんが大好きでした。
健ちゃんは成績優秀でスポーツ万能。
加えてハンサムでお金持ち。
女の子達の憧れの的でした。
でも健ちゃんは、私以外の女の子には全く関心を示しませんでした。
私だけ・・そぅ、この私だけ・・を見ていてくれました。
生意気なようですが、私達は将来を誓い合った仲だったのです。

その健ちゃんのお父さんがウチのバラ園を買ったのです。
その時からです、二人の間に亀裂が入ったのは。
お互い気まずくなってしまいまいした。
私は九州にある母の実家に引越しました。
健ちゃんは地元の国立大学に合格していたので、多分進学したと思います。
私達は離れ離れになりました。
それ以来、一度も連絡を取り合った事はありません。
もう私たちは、終わってしまったのです。



そして今日、私は・・・

私のふるさと、私の生まれ故郷に帰って来ました。
休暇を利用して近くの温泉に一人で保養に来た帰りに寄ってみたのです。
余り時間がないのですぐに帰るつもりでいました。

ふるさとは7年前とあまり変わってはいませんでした。

でも、一つだけ・・そぅ、一つだけ・・変わっていました。
私達のバラ園です。
レストランになっていたのです。
私は呆然とそのレストランを見つめていました。
涙が止まりません。

だって・・・

だって、私が生まれて育ったバラ園が、
私が育てていたバラ達が、
消えていたんだもの。

自分の思い出が全て消えてしまった時の悲しみ、分かりますか?
その時の私の悲しみが。

ほんの2~3分位の出来事だったヶど・・・

その間、時間が止まっていました。
それから 「ハッ!?」 っと我に返り、急いで立ち去ろうと思いました。

でも・・・

でも、心と裏腹に体は。
私の体は、まるで引き込まれるようにそのレストランに向かっていました。
中に入ると、バッハのバイオリン曲 『シャコンヌ』 が流れていました。

『そう言えば健ちゃん、バッハが好きだったな・・・』

そんな事を思い出しながら店内を見渡すと、お客さん結構入っています。
でも、知っている顔はありませんでした。

『入った以上何か飲もう。 あればローズ・ティー。 なければ紅茶でも』

そう思いながら適当な席を探しました。
すると、壁に掛けてある一幅の絵が目に留まったのです。

次の瞬間・・・

私は愕然としてその絵に見入っていました。
目から出る涙は止まらず、金縛りにでもあったかのように体が動きません。
どの位そのままだったでしょうか?
不意にウエイターさんに声を掛けられ、我に返りました。

「お客様。 どうぞこちらへ」

突然だったので、何も考えずに付いて行きました。

『どしたのかな? 今日は涙もろいな・・・』

そう思いながら案内された席はその絵の掛かっている壁際で、テーブルには奇麗で可愛い一輪挿しの花瓶に挿した、

“あなたを愛します”

という花言葉を持つ一本の赤いバラの花と、

“ Reserved (予約席)”

のカードが置かれていました。
私が怪訝そうな顔をしていると、テーブルから椅子を引き、そのウエイターさんがこう言ったのです。

「どうぞお掛け下さい。 ただ今、ローズ・ティーをお持ち致します」

「で、でも、私。 何も・・・」

「いえ、チャンと当店の主(あるじ)から仰(おお)せ付かっております」

「エッ!? 何を?」

「はい。 もしこの絵をご覧になられて先程お客様がお見せになられました、あのようなご様子をされる方がいらしたら、このお席にご案内してローズ・ティーをお出しするようにと」

「・・・」

何も言わず、訳も分からぬまま私は手に下げていた旅行用の、でも少し小さ目のボストンバッグを横に置き、その椅子に座りました。
その時の私に出来た事はと言えば、

「ここはお客様のためのみに、当店の主が御用意致しておりましたお席でございます」

そう言い残して奥に引っ込むウエイターさんの後ろ姿を、ただジッと見つめている事だけでした。
きっと私の顔は、鳩が豆鉄砲でも食らったようだったと思います。
そして何がなんだか分からないうちに、先程のウエイターさんが戻って来ました。
手にしたトレィの上にローズ・ティーとチョコを乗せて。

「特別なお客様にのみお出しする、当店自慢のローズ・ティーでございます」

そう言いながら、ウエイターさんが私の前にティーカップを置きました。
それを見て、一瞬、私は驚きました。
そのセンスの良さと高級さにです。

だって・・・

出されたカップとソーサーはとってもシンプルで涼しげな、まるで霧を含んだように見える柔らかな発色の、ロイヤルコペンハーゲン・ブルーフルーテッドのプレイン。
スプーンは、クリストフルスターリングシルバー925のティースプーン。
だったんですょ。
この組み合わせは私的に見て、ローズ・ティーが一番映えると思われるコンビネーション。
だから昔、健ちゃんが私の家に遊びに来た時、よくこの組み合わせのカップとソーサーそれにティースプーンで、ローズ・ティーを入れて上げた物でした。
今でも時々、引っ張り出しては一人で飲んでいます。

加えて・・・

そのローズ・ティーには、綺麗なそして形の整った淡いピンクのバラの花びらが1枚入っていて、とても甘い香りがしました。
チョコは最高級の黒トリュフのショコラです。

『まぁ、なんてセンスのいい・・・』

そう思いながら、目の前に置かれたティーカップに手を伸ばそうとしました。
その時です。
背後から私の名前を呼ぶ大きな声が聞こえたのは。

「麻美ちゃん」

聞き覚えのあるとっても懐かしい声です。


(ドキッ!!)


一瞬、私の心臓は止まるかと思いました、突然の事に驚いて・・・。

そして、私はそのままそこで固まっていました。
怖くて振り返れません。
誰の声か分かっていたからです。

「麻美ちゃん」

もう一度、今度はもっと大きな声で。
店中に響き渡る位大きな声で私の名前を・・・。

そういう時って不思議です。
自然と体が動いて振り返っていました。
そこにいたのは紛れもなく健ちゃんでした。

「ケ・・・ン・・・ちゃん?」

すっかり大人っぽくなっていました。
当たり前です。
健ちゃんはもう26なんだから。
そして、きちんと櫛(くし)の入った髪からは “グリース” の香りが漂っていました。
私の体から “シャネル” が香るようになったのと同じように。

健ちゃんは紺のタキシードにオレンジのカマー&チョウタイ姿。
手にはバラの花束。
私は普段着のティーシャツとジーンズなのに。

そして店中に響き渡る声でこう言ったのです。

「麻美ちゃん。 僕は・・・。 僕は今でも君が好きだ。 だからもう一度。 もう一度やり直そう。 僕の元に帰って来てくれ」

そう言って、手に持ったバラの花束を差し出しました。

「・・・」

私の口からは言葉が出て来ません。

そしてもう一度。

「麻美ちゃん。 僕は君が好きだ。 今でも君が・・・大好きだ」

「ウッ!? 健ちゃん!!」

気が付いたら椅子から立ち上がり、健ちゃんの胸に飛び込んでいました。

「ウッ、ウッ、ウッ、・・・」

私には他には何も出来ませんでした。
ただ泣く事だけしか。

その時・・・

店中から拍手と歓声が沸(わ)き起こったのです。
それまで全く気付きませんでした、居合わせた人達全員が私たち二人の言動を固唾を飲んで見守っていた事に。
お店のお客さん達もウエイターさん達も、それからコックさん達までもが奥から出て来て拍手と歓声を上げてくれました。
その場に居合わせた人達全員に私達は祝福されたのです。

気が付いたら・・・

もうバッハは流れていませんでした。
代わりに、私がバラを育てながらいつも口ずさんでいた曲。
リン・アンダーソンの 『ローズ・ガーデン』。
そぅ、リン・アンダーソンの 『ローズ・ガーデン』 が流れていました。
きっと健ちゃんの指示で。

余りに突然の出来事で私はどうしていいか分からず、ズーッと健ちゃんの胸の中で泣いていました。

そして・・・

溢(あふ)れる涙を拭くためにハンカチを取ろうとボストンバッグに手を伸ばしたその時、初めてテーブルの上のメニューに目が留まりました。
そのメニューの表紙には、さっき私が見つめていた絵が印刷されてあったのです。
その絵にはハッキリとサインも書き込まれていました。

ハッキリと・・・こぅ。


“ Congratulations! to Kenichi from Asami ”


そうです。
その絵は、健ちゃんの大学合格祝いとして私が描いて贈った “バラの絵” だったのです。

それと、その時気付いた事がもう一つ有ります。
その時まで店の名前なんて全く気にしていませんでした。
でも、メニューには私の描いた絵の他に、店名も大きく印刷されてあったのです。
私が書いたサインの上に、私のサインと重ならないように店名が大きく。

そしてそのメニューに印刷された “店の名”。

それは・・・

・・・・・・・・・・こうなっていました。











『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』






『 Rose Garden 』 Lynn Anderson  https://www.youtube.com/watch?v=2-eclUz-RYI

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime
When you take you gotta give so live and let live and let go oh oh oh oh
I beg your pardon I never promised you a rose garden

I could promise you things like big diamond rings
But you don't find roses growin' on stalks of clover
So you better think it over
Well, if sweet talking you could make it come true
I would give you the world right now on a silver platter
But what would it matter
So smile for a while and let's be jolly love shouldn't be so melancholy
Come along and share the good times while we can

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime
I beg your pardon I never promised you a rose garden

I could sing you a tune and promise you the moon
But if that's what it takes to hold you I'd just as soon let you go
But there's one thing I want you to know
You'd better look before you leap still waters run deep
And there won't always be someone there to pull you out
And you know what I'm talking about
So smile for a while and let's be jolly love shouldn't be so melancholy
Come along and share the good times while we can

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime.....

I beg your pardon I never promised you a rose garden
Along with the sunshine there's gotta be a little rain sometime.....




(第一話) 『 Rose Garden (ローズ・ガーデン)』 お・す・ま・ひ





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